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特開2024-80538チップ放熱面積を拡大する方法と構造と製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080538
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】チップ放熱面積を拡大する方法と構造と製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240606BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L23/36 A
H01L23/46 B
H01L23/36 Z
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193837
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 慎二
(72)【発明者】
【氏名】大場 隆之
【テーマコード(参考)】
5F044
5F136
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044RR17
5F044RR18
5F044RR19
5F136BA04
5F136BA06
5F136BC01
5F136BC02
5F136BC03
5F136CC12
5F136CC14
5F136DA14
5F136DA17
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】チップ放熱面積を拡大する方法と構造と製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、チップ基板122の第1面側に回路が形成され、チップ基板122の第1面とは反対の第2面側に、チップ基板本体の基板材料の比率を第1面側よりも減らして基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えた遷移構造126が一体化された半導体チップ120と、半導体チップ120の第2面に接合された、基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導体130と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ基板の第1面側に回路が形成され、前記チップ基板の前記第1面とは反対の第2面側に、チップ基板本体の基板材料の比率を前記第1面側よりも減らして前記基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えた遷移構造が一体化された半導体チップと、
前記半導体チップの前記第2面に接合された、前記基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導体と
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記熱伝導体を前記半導体チップの前記第2面に鉛直な方向に投影した投影面積は、前記半導体チップの前記第2面の面積よりも大きい請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記遷移構造は、前記チップ基板本体の第2面側に形成された複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造に、前記熱伝導材料が充填された構造を有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記遷移構造は、前記熱伝導材料の充填前に、前記複数のトレンチ、前記複数の非貫通孔、または前記ポア構造の表面に、前記熱伝導材料の拡散を防止する拡散防止層を有する請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記拡散防止層は、Ta、TaN、SiO、またはSiのうちの少なくとも1つを含む請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記遷移構造は、前記第2面の表面において前記基板材料を含まない請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップを搭載するパッケージ基板と、
前記熱伝導体および前記パッケージ基板の間における前記半導体チップが存在しない空間に第1アンダーフィル材料が充填された第1アンダーフィル構造と
を更に備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップおよび前記パッケージ基板の間に第2アンダーフィル材料が充填された第2アンダーフィル構造を更に備える請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1アンダーフィル材料は、前記第2アンダーフィル材料と比較してフィラー粒子の含有率が高い請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記熱伝導体は、ベイパーチャンバーを有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記熱伝導体における前記半導体チップとは反対の面側に設けられたヒートシンクを更に備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
チップ基板の第1面側に回路が形成された半導体チップにおける、前記チップ基板の前記第1面とは反対の第2面側に、チップ基板本体の基板材料の比率を前記第1面側よりも減らして前記基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えた遷移構造を一体化することと、
前記基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導体を前記半導体チップの前記第2面に接合することと
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記遷移構造を形成することは、
前記チップ基板本体の前記第2面側に、複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造を形成することと、
前記複数のトレンチ、前記複数の非貫通孔、または前記ポア構造に前記熱伝導材料を充填することと
を有する請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記遷移構造を形成することは、前記熱伝導材料の充填前に、前記複数のトレンチ、前記複数の非貫通孔、または前記ポア構造の表面に、前記熱伝導材料の拡散を防止する拡散防止層を形成することを有する請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
パッケージ基板に前記半導体チップを搭載することと、
前記半導体チップに接合された前記熱伝導体および前記パッケージ基板の間における前記半導体チップが存在しない空間に第1アンダーフィル材料を充填することと
を備える請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第1アンダーフィル材料の充填において、前記熱伝導体に設けられた貫通孔を介して前記空間に前記第1アンダーフィル材料を注入する請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記熱伝導体は、前記半導体チップが接合される面にアラインメントマークを有し、
前記熱伝導体を前記半導体チップの前記第2面に接合することは、前記熱伝導体の前記アラインメントマークを用いて前記熱伝導体および前記半導体チップの位置合わせを行う請求項12に記載の製造方法。
【請求項18】
キャリア基板の表面に前記熱伝導体として用いられる熱伝導層を貼り合わせることを備え、
前記熱伝導体を前記半導体チップの前記第2面に接合することは、
複数の前記半導体チップの前記第2面を前記キャリア基板の表面の前記熱伝導層に接合することと、
前記複数の前記半導体チップが接合された前記熱伝導層を、前記キャリア基板から剥離することと、
前記複数の半導体チップが接合された前記熱伝導層を、前記半導体同士の間で切断することにより個片化することと
を含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項19】
前記熱伝導体を前記半導体チップの前記第2面に接合することは、
前記熱伝導体に含まれるべきベイパーチャンバーの内壁面の一部のみを有する熱伝導体部品を前記半導体チップの前記第2面に接合することと、
前記半導体チップおよび前記熱伝導体を含む半導体装置のリフローまたは熱硬化に伴う加熱の後に、前記ベイパーチャンバーの内壁面の他の部分を有する部品を前記熱伝導体部品に接合することにより前記ベイパーチャンバーとなる密封空間を形成することと
を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
パッケージ基板上に、第1の前記遷移構造が形成された第1の前記半導体チップおよび第2の前記遷移構造が形成された第2の前記半導体チップを実装することと、
前記第1の半導体チップおよび前記第2の半導体チップの前記第2面側から前記第1の前記遷移構造および前記第2の前記遷移構造を研磨することにより、前記パッケージ基板に対する前記第1の遷移構造および前記第2の遷移構造の高さを合わせることと、
1つの前記熱伝導体を、前記第1の半導体チップの前記第2面および前記第2の半導体チップの前記第2面に接合することと
を含む請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ放熱面積を拡大する方法と構造と製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「熱伝導繊維2は…銅…であってもよい。…伸縮性生地2は、ヒートシンク8との接着界面に近い側ほど熱伝導性繊維2が降温時においては密になるように収縮、昇温時においては疎になるように膨張し、熱応力の緩和に寄与する」と記載されている。特許文献2には、「冷却構造体Xは、ヒートシンク10と、熱伝導部20と、封止材30とを備え、半導体素子40などの電子部品に付設されている。…熱伝導部20は、メッシュ材21と、これに担持されている液体金属22とからなる」と記載されている。非特許文献1は、ヒートシンクやLidが半導体とThermal Interface Materials(TIM)を介して接することを開示する。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005-232207号公報
[特許文献2] 特開2003-332505号公報
[非特許文献]
[非特許文献1] Xiaopeng Huang, Vadim Gektin, LIDDED VS. LIDLESS: A THERMAL STUDY, Proceedings of the ASME 2018 International Technical Conference and Exhibition on Packaging and Integration of Electronic and Photonic Microsystems InterPACK2018, August 27-30, 2018, San Francisco, CA, USA
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、チップ基板の第1面側に回路が形成され、チップ基板の第1面とは反対の第2面側に、チップ基板本体の基板材料の比率を第1面側よりも減らして基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えた遷移構造が一体化された半導体チップと、半導体チップの第2面に接合された、基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導体とを備える半導体装置を提供する。
【0004】
上記の装置において、熱伝導体を半導体チップの第2面に鉛直な方向に投影した投影面積は、半導体チップの第2面の面積よりも大きくてよい。
【0005】
上記のいずれかの装置において、遷移構造は、チップ基板本体の第2面側に形成された複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造に、熱伝導材料が充填された構造を有してよい。
【0006】
上記のいずれかの装置において、遷移構造は、熱伝導材料の充填前に、複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造の表面に、熱伝導材料の拡散を防止する拡散防止層を有してよい。
【0007】
上記のいずれかの装置において、拡散防止層は、Ta、TaN、SiO、またはSiのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0008】
上記のいずれかの装置において、遷移構造は、第2面の表面において基板材料を含まなくてよい。
【0009】
上記のいずれかの装置は、半導体チップを搭載するパッケージ基板と、熱伝導体およびパッケージ基板の間における半導体チップが存在しない空間に第1アンダーフィル材料が充填された第1アンダーフィル構造とを更に備えてよい。
【0010】
上記のいずれかの装置は、半導体チップおよびパッケージ基板の間に第2アンダーフィル材料が充填された第2アンダーフィル構造を更に備えてよい。
【0011】
上記のいずれかの装置において、第1アンダーフィル材料は、第2アンダーフィル材料と比較してフィラー粒子の含有率が高くてよい。
【0012】
上記のいずれかの装置において、熱伝導体は、ベイパーチャンバーを有してよい。
【0013】
上記のいずれかの装置は、熱伝導体における半導体チップとは反対の面側に設けられたヒートシンクを更に備えてよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、チップ基板の第1面側に回路が形成された半導体チップにおける、チップ基板の第1面とは反対の第2面側に、チップ基板本体の基板材料の比率を第1面側よりも減らして基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えた遷移構造を一体化することと、基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導体を半導体チップの第2面に接合することとを備える半導体装置の製造方法を提供する。
【0015】
上記の製造方法において、遷移構造を形成することは、チップ基板本体の第2面側に、複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造を形成することと、複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造に熱伝導材料を充填することとを有してよい。
【0016】
上記のいずれかの製造方法において、遷移構造を形成することは、熱伝導材料の充填前に、複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造の表面に、熱伝導材料の拡散を防止する拡散防止層を形成することを有してよい。
【0017】
上記のいずれかの製造方法において、パッケージ基板に半導体チップを搭載することと、半導体チップに接合された熱伝導体およびパッケージ基板の間における半導体チップが存在しない空間に第1アンダーフィル材料を充填することとを備えてよい。
【0018】
上記のいずれかの製造方法において、第1アンダーフィル材料の充填において、熱伝導体に設けられた貫通孔を介して空間に第1アンダーフィル材料を注入してよい。
【0019】
上記のいずれかの製造方法において、熱伝導体は、半導体チップが接合される面にアラインメントマークを有し、熱伝導体を半導体チップの第2面に接合することは、熱伝導体のアラインメントマークを用いて熱伝導体および半導体チップの位置合わせを行ってよい。
【0020】
上記のいずれかの製造方法は、キャリア基板の表面に熱伝導体として用いられる熱伝導層を貼り合わせることを備え、熱伝導体を半導体チップの第2面に接合することは、複数の半導体チップの第2面をキャリア基板の表面の熱伝導層に接合することと、複数の半導体チップが接合された熱伝導層を、キャリア基板から剥離することと、複数の半導体チップが接合された熱伝導層を、半導体同士の間で切断することにより個片化することとを含んでよい。
【0021】
上記のいずれかの製造方法において、熱伝導体を半導体チップの第2面に接合することは、熱伝導体に含まれるべきベイパーチャンバーの内壁面の一部のみを有する熱伝導体部品を半導体チップの第2面に接合することと、半導体チップおよび熱伝導体を含む半導体装置のリフローまたは熱硬化に伴う加熱の後に、ベイパーチャンバーの内壁面の他の部分を有する部品を熱伝導体部品に接合することによりベイパーチャンバーとなる密封空間を形成することとを含んでよい。
【0022】
上記のいずれかの製造方法は、パッケージ基板上に、第1の遷移構造が形成された第1の半導体チップおよび第2の遷移構造が形成された第2の半導体チップを実装することと、第1の半導体チップおよび第2の半導体チップの第2面側から第1の遷移構造および第2の遷移構造を研磨することにより、パッケージ基板に対する第1の遷移構造および第2の遷移構造の高さを合わせることと、1つの熱伝導体を、第1の半導体チップの第2面および第2の半導体チップの第2面に接合することとを含んでよい。
【0023】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る半導体装置100の構成を示す。
図2】本実施形態に係る遷移構造126の第1例の斜視図を示す。
図3A】本実施形態に係る遷移構造126の第2例の斜視図を示す。
図3B】本実施形態に係る遷移構造126の第2例の断面図を示す。
図4】遷移構造400中の、基板材料および熱伝導材料の間に形成する層構造の一例を示す。
図5】ベイパーチャンバー500の構成を示す。
図6A】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法における半導体チップ120を製造する段階を示す。
図6B】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法におけるトレンチ610を形成する段階を示す。
図6C】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法における熱伝導材料620を充填する段階を示す。
図6D】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法における遷移構造126を形成する段階を示す。
図7A】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第1実施形態におけるパッケージ基板110に半導体チップ120を搭載する段階を示す。
図7B】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第1実施形態における半導体チップ120と熱伝導体130とを接合する段階を示す。
図7C】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第1実施形態における第1アンダーフィル構造160を形成する段階を示す。
図8A】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態におけるキャリア基板800の構造を示す。
図8B】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態における熱伝導層810を形成する段階を示す。
図8C】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態における熱伝導層810と半導体チップ120とを接合する段階を示す。
図8D】本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態における熱伝導層810および半導体チップ120をキャリア基板800から剥離する段階を示す。
図9A】半導体チップ120とベイパーチャンバー500の接合方法における半導体チップ120と第1熱伝導体部品510とを接合する段階を示す。
図9B】半導体チップ120とベイパーチャンバー500の接合方法における第1熱伝導体部品510内に冷却液540を注入する段階を示す。
図9C】半導体チップ120とベイパーチャンバー500の接合方法における第1熱伝導体部品510と第2熱伝導体部品520とを接合する段階を示す。
図10A】複数の半導体チップを含む半導体装置1000の製造方法における第1の半導体チップ1010と第2の半導体チップ1015とをパッケージ基板110に搭載する段階を示す。
図10B】複数の半導体チップを含む半導体装置1000の製造方法における第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025の高さを合わせる段階を示す。
図10C】複数の半導体チップを含む半導体装置1000の製造方法における熱伝導体130を第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015に接合する段階を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の構成を示す。半導体装置100は、パッケージ基板110と、半導体チップ120と、熱伝導体130と、TIM140と、ヒートシンク150と、第1アンダーフィル構造160と、第2アンダーフィル構造170とを備える。
【0027】
パッケージ基板110は、半導体装置100を搭載するプリント基板等の基板に電気的に接続される実装面と、半導体チップ120等の半導体装置100の各部品を搭載する部品搭載面とを有する。パッケージ基板110は、実装面側に、半導体装置100を搭載する基板に設けられた複数の電極に接続される複数のバンプ115を有する。複数のバンプ115は、金、銅またははんだ等により形成されてよい。また、パッケージ基板110は、交互に積層された1または複数の絶縁層および1または複数の配線層と、複数の層を貫通する導電性の1または複数の貫通ビアとを有してよい。パッケージ基板110は、1または複数の配線層および1または複数の貫通ビアを介して、複数のバンプ115と半導体チップ120との間を電気的に接続する。なお、パッケージ基板110は、複数の半導体チップ120を搭載してもよい。この場合、パッケージ基板110は、MCM(Multi-Chip Module)となる。
【0028】
半導体チップ120は、パッケージ基板110に搭載される。半導体チップ120は、チップ基板122と、複数のバンプ124とを有する。チップ基板122には、パッケージ基板110側の実装面(「第1面」とも示す。)側に回路が形成される。すなわち、半導体チップ120は、フリップチップ実装により回路面がフェイスダウンとなる向きにパッケージ基板110に搭載される。
【0029】
チップ基板122には、第1面とは反対の第2面側に遷移構造126が基板本体123と一体化される。ここで、チップ基板122の基板本体123は、シリコン等の基板材料で形成される。これに対し、遷移構造126は、チップ基板本体123の基板材料の比率を第1面側(あるいは回路および遷移構造126が設けられていない基板本体123の中央部分)よりも減らして基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えたものである。すなわち、チップ基板122は、チップ基板122の第2面側における遷移構造126が形成された領域において、チップ基板122の第1面側における回路部分以外の領域と比較して、熱伝導材料の比率が高い構造を有する。熱伝導材料は、銅、多結晶ダイヤモンド、またはその他の基板材料と比較して熱伝導率が高い任意の材料であってよい。
【0030】
遷移構造126は、チップ基板本体123の第2面側に形成された複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造に、熱伝導材料が充填された構造を有してよい。ここでトレンチは、鉛直壁を有してよいし、第2面側の開口から奥へと進むにつれてトレンチの幅が狭くなるテーパー状であってもよい。また、非貫通孔は、鉛直壁を有してよいし、第2面側の開口から奥へと進むにつれて孔が狭くなるテーパー状であってもよい。また、遷移構造126は、基板材料と熱伝導材料とを周期的または非周期的なモザイク状に混合配置した構造を有してよい。
【0031】
複数のバンプ124は、チップ基板122の第1面側に配置され、パッケージ基板110の部品搭載面に設けられた複数の電極に接続される。複数のバンプ124のそれぞれは、金、銅またははんだ等により形成されてよい。
【0032】
熱伝導体130は半導体チップ120の第2面に接合され、基板本体123の基板材料よりも熱伝導率が高い。熱伝導体130は、銅、多結晶ダイヤモンド、またはその他の基板本体123の基板材料と比較して熱伝導率が高い任意の材料で形成されてよい。熱伝導体130は、遷移構造126に含まれる熱伝導材料と同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
本図に示したように、熱伝導体130を半導体チップ120の第2面に鉛直な方向に投影した投影面積(すなわち半導体装置100を図中上方から透視したときの熱伝導体130の面積)は、半導体チップ120の第2面の面積よりも大きくてよい。熱伝導体130の厚さは、チップ基板122の厚さの1/10~100倍であってよい。
【0034】
TIM140は、熱伝導体130とヒートシンク150との間に設けられる。TIM140は、インジウム、ガリンスタンのような融点の低い金属および金属合金で形成されてよく、熱伝導性が高いペースト状のグリス等であってもよい。TIM140は、熱伝導体130とヒートシンク150との間の応力を緩和する。
【0035】
ヒートシンク150は、熱伝導体130における半導体チップ120とは反対の面側に設けられる。ヒートシンク150は、半導体チップ120で発生する熱を熱伝導体130およびTIM140を介して受け取って、半導体装置100の外部に放熱する。ヒートシンク150は、放熱効率を高めるために、表面積が大きい構造を有してよい。例えば、ヒートシンク150は、ヒートシンク150に接する面とは垂直に複数のフィン(薄板)を平行に並べた構造、または、ヒートシンク150に接する面とは垂直に複数の棒を並べた剣山状の構造であってよい。ヒートシンク150は、銅またはアルミニウム等の熱伝導性が比較的高い材料で形成されてよい。半導体装置100は、ヒートシンク150の代わりに、ベイパーチャンバーやヒートポンプ、熱交換器などの他の放熱部材を備えてもよい。
【0036】
第1アンダーフィル構造160は、熱伝導体130およびパッケージ基板110の間における半導体チップ120が存在しない空間に設けられる。第1アンダーフィル構造160は、熱伝導体130およびパッケージ基板110の間に第1アンダーフィル材料が充填されることにより形成される。第1アンダーフィル材料は、フィラー粒子を含む熱硬化型樹脂であってよく、後述する第2アンダーフィル構造170の第2アンダーフィル材料と比較してフィラー粒子の含有率が高くてもよい。フィラー粒子は、シリカまたはアルミナ等であってよく、フィラー粒子の大きさは数μm~数十μmであってよい。第1アンダーフィル材料は、フィラー粒子を含むことにより、フィラー粒子を含まない場合と比較して基板本体123の基板材料により近い熱膨張係数を有することができる。
【0037】
第2アンダーフィル構造170は、半導体チップ120およびパッケージ基板110の間に設けられる。第2アンダーフィル構造170は、半導体チップ120およびパッケージ基板110の間に第2アンダーフィル材料が充填されることにより形成される。第2アンダーフィル材料は、熱硬化型樹脂であってよい。第2アンダーフィル材料は、第1アンダーフィル材料と同様にフィラー粒子を含んでもよい。
【0038】
以上の半導体装置100によれば、基板材料の割合を減らして熱伝導材料の比率を増やした遷移構造126を半導体チップ120に設けることにより、半導体チップ120と熱伝導体130との接触面で生じる熱応力を緩和することができ、TIMを介さずにチップ基板122および熱伝導体130を接合することが可能となる。また、半導体装置100は、このような遷移構造126により回路で発生する熱を基板本体123の基板材料から高効率で熱伝導材料へと移動させて、熱伝導体130へと伝導させることができる。
【0039】
また、半導体装置100は、半導体チップ120の第2面からの熱を熱伝導体130により図1の水平方向に拡散して、半導体チップ120の第2面よりも広い面積で熱伝導体130に接するヒートシンク150へと放熱する。これにより、半導体装置100は、基板本体123の第2面にTIMを介してヒートシンク150を接続した場合と比較して、より多くの熱を半導体チップ120からヒートシンク150へと放熱することができる。
【0040】
図2は、本実施形態に係る遷移構造126の第1例の斜視図を示す。本図の紙面下側はチップ基板122の第1面側、紙面上側はチップ基板122の第2面側である。本図の例においては、基板本体123は、第2面を六角格子状に区分した正六角形の各領域について、各領域の中心部においては基板材料200を残し、中心部以外においてはエッチング等によってある程度の深さ(本図の例においては100μm程度)まで基板材料200を除去して熱伝導材料210を充填した構造をとる。本図の例において、各領域の中心部には基板材料200による正六角柱状の柱状部が形成される。
【0041】
このように、遷移構造126は、例えば格子状(三角格子、四角格子、六角格子等)等のように規則的に配列された基板材料200の柱状部の周囲に熱伝導材料210を埋め込んだ構造を採ってよい。これに代えて、遷移構造126は、不規則に配置された基板材料200の柱状部の周囲に熱伝導材料210を埋め込んだ構造を採ってもよい。ここで、基板材料200の柱状部は、第2面に対して鉛直な壁面を有してよく、第2面と平行な断面が多角形、正多角形、円形、楕円形、またはその他の任意の形状を有してよい。また、基板材料200の柱状部は、第2面側から奥へと進むにつれて断面積が大きくなるテーパー状であってもよい。また、遷移構造126は、上記とは逆に、基板本体123の第2面を規則的または不規則的に区分した各領域の中心部以外において基板材料200を残し、中心部をエッチング等によってある程度の深さまで基板材料200を除去して熱伝導材料210を充填した構造をとってもよい。また、紙面上側には熱伝導体130が存在する。熱伝導体130が遷移構造126と接する面に適度なポアを設けることで、熱伝導体130側における遷移構造126の継続を図ってもよい。熱伝導体130に設けられたポアは、第2面と鉛直な壁面を有した柱状のポアであってよく、第2面と平行な断面が多角形、正多角形、円形、楕円形、またはその他の任意の形状を有してよい。また、熱伝導体130に設けられたポアは、テーパー状であってもよい。
【0042】
以上に示した遷移構造126を第2面側に有するチップ基板122は、遷移構造126が形成された領域よりも第1面側では面方向の断面における基板材料の割合が100%であるが、遷移構造126が形成された領域においては面方向の断面における基板材料の割合が100%未満(例えば10~90%、25~75%、40~60%等)、熱伝導材料の割合が0%超(例えば90~10%、75~25%、60~40%等)となる。そして、遷移構造126は、チップ基板122の第2面側において熱伝導体130に接合されて固定される。ここで、熱伝導体130の熱伝導材料の熱膨張率が基板材料の熱膨張率よりも遷移構造126の熱伝導材料の熱膨張率により近ければ、遷移構造126は、遷移構造126が形成されていない領域の基板本体123の熱膨張率と熱伝導体130の熱膨張率との間の熱膨張率を有する。したがって、半導体装置100は、チップ基板122に遷移構造126を設けることによりチップ基板122および熱伝導体130の間に生じる熱応力を緩和することができ、TIMを介さずに直接接合して固定することが可能となる。
【0043】
図3Aは、本実施形態に係る遷移構造126の第2例の斜視図を示す。図3Bは、本実施形態に係る遷移構造126の第2例の断面図を示す。本図の紙面下側はチップ基板122の第1面側、紙面上側はチップ基板122の第2面側である。本図の例においては、基板本体123は、第2面に格子状に形成されたある程度の深さ(本図の例においては50μm程度)の複数の非貫通孔を有し、非貫通孔内に熱伝導材料310を充填した構造をとる。本図の例において、非貫通孔は一辺の長さが5μm程度(対向する頂点間の距離が9μm程度)の正六角形状であり、第2面側から奥へと進むにつれて断面積が小さくなる傾斜構造を有する。すなわち、第2面側から第1面側へと進むにつれて熱伝導材料310の割合(密度)が減少し、基板材料300の割合(密度)が増加する。
【0044】
このように、遷移構造126は、例えば格子状(三角格子、四角格子、六角格子等)等のように規則的または不規則的に配列されたトレンチの内部に熱伝導材料310を埋め込んだ構造を採ってよい。ここで、トレンチ同士は接していても接していなくてもよい。また、トレンチは、第2面と平行な断面が多角形、正多角形、円形、楕円形、またはその他の任意の形状を有してよい。トレンチは、第2面に対して鉛直な壁面を有してよく、断面積が一定であってよい。トレンチは、第2面側から奥へと進むにつれて断面積が小さくなる傾斜構造を有してもよく、途中で断面の形状が変化してもよい。
【0045】
以上に示した遷移構造126を設けることにより、半導体装置100は、図2に関連して説明したように、チップ基板122および熱伝導体130の間に生じる熱応力を緩和することができ、TIMを介さずに直接接合して固定することが可能となる。
【0046】
図4は、遷移構造400中の、基板材料および熱伝導材料の間に形成する層構造の一例を示す。遷移構造400は、図1から図3Bに示した遷移構造126として用いられてよい。遷移構造400は、基板本体123に形成した1つのトレンチまたは非貫通孔等に熱伝導材料を充填した部分の層構造の一例を示す。本図の遷移構造400は、第2面405の表面または表面のコーティングを除く領域において面方向の断面に基板材料410を含まず熱伝導材料420がほぼ100%となる領域を有する。
【0047】
遷移構造400は、基板本体123の第2面405側に複数のトレンチ、複数の非貫通孔、またはポア構造等の表面、すなわち基板本体123の第2面側にこれらの形状を形成することにより露出する基板材料410の表面に、熱伝導材料420が基板材料410側へと拡散するのを防止する拡散防止層430を有する。拡散防止層430は、Ta、TaN、SiO、またはSiのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0048】
本図の例において、拡散防止層430は、絶縁層432とバリアメタル層434を有する多層構造をとる。絶縁層432は、基板材料410とバリアメタル層434との間に形成されてよい。絶縁層432は、一例として50nm~100nmの厚さを有してよい。絶縁層432は、SiO、Si、またはその他の絶縁材料を含んでよい。絶縁層432を設けることにより、半導体チップ120の第1面側の回路と熱伝導体130との間を電気的に絶縁することができ、回路の電位を安定させることができる。
【0049】
バリアメタル層434は、熱伝導材料420と絶縁層432との間に形成されてよい。バリアメタル層434は、一例として20nm~100nmの厚さを有してよい。バリアメタル層434は、TaまたはTaNの少なくとも1つを含んでよい。バリアメタル層434を設けることにより、熱伝導材料420が基板材料410側へと拡散するのを防ぐことができる。
【0050】
遷移構造400は、基板本体123の第2面405側に酸化防止層440を有してもよい。酸化防止層440は、一例として20nm~100nmの厚さを有してよい。酸化防止層440は、Ni等の熱伝導材料420よりも酸化しにくい材料を含んでよい。酸化防止層440は、遷移構造400の表面が酸化するのを防止し、また遷移構造400と熱伝導体130との接合をし易くする役割を有する。
【0051】
図5は、ベイパーチャンバー500の構成を示す。半導体装置100は、図1に示したような板状の熱伝導板に代えて、ベイパーチャンバー500を熱伝導体130として用いてよい。ベイパーチャンバー500は、中空構造を有し、内部に冷却液540を有する。ベイパーチャンバー500の内部は真空であってよい。ベイパーチャンバー500は、第1熱伝導体部品510と、第2熱伝導体部品520と、突起部530と、冷却液540とを有する。
【0052】
第1熱伝導体部品510は、ベイパーチャンバー500の内壁面の一部のみを有する。本図の例において、第1熱伝導体部品510は、冷却液540を収容する容器における底面および側面に対応する内壁面を有する。第1熱伝導体部品510は、冷却液540を収容する容器における内壁面の大半を有してもよい。第1熱伝導体部品510は、銅またはアルミニウムなどの熱伝導性が比較的高い材料で形成されてよい。第1熱伝導体部品510は、遷移構造中の熱伝導材料と接合しやすい材料、例えば遷移構造中の熱伝導材料と同一の材料で形成されてもよい。
【0053】
第2熱伝導体部品520は、ベイパーチャンバー500の内壁面の他の部分を有する。本図の例において、第2熱伝導体部品520は、冷却液540を収容する容器における上面に対応する内壁面を有する。第2熱伝導体部品520は、薄板であってよい。第2熱伝導体部品520は、第1熱伝導体部品510と接合することで、ベイパーチャンバー500の中空構造を形成する。第2熱伝導体部品520は、冷却液540の内壁面側に複数の突起部530を有してよい。第2熱伝導体部品520は、銅またはアルミニウムなどの熱伝導性が比較的高い材料で形成されてよい。複数の突起部530のうちの少なくとも一部は、第1熱伝導体部品510の底面まで延伸してもよい。
【0054】
冷却液540は、ベイパーチャンバー500の中空構造内の底部に封入される。冷却液540は、純水などの液体である。冷却液540は、第1熱伝導体部品510と接する熱源によって熱せられ、蒸発して気体となって空間内に広がった後、冷却されて液体に戻り、突起部530による毛細管現象によって底部に戻る。
【0055】
なお、半導体装置100は、本図のベイパーチャンバー500に代えて、他の構造を有するベイパーチャンバーを用いてもよい。一例として、ベイパーチャンバーは、第1熱伝導体部品510に代えて冷却液540を注入する注入口を有する容器状の部品をベイパーチャンバーの内壁面の一部のみを有する熱伝導体部品として有し、第2熱伝導体部品520に代えて注入口の蓋となる部品をベイパーチャンバーの内壁面の他の部分を有する部品として有してもよい。この場合、注入口の蓋となる部品は必ずしも熱伝導性が高くなくてもよい。
【0056】
図6A~Dおよび図7A~Cは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す。半導体装置100の製造方法は、図6A~Dに示した遷移構造126の形成を含む半導体チップ120自体の製造工程と、図7A~Cに示した半導体装置100の製造工程とを備える。
【0057】
図6Aは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法における半導体チップ120を製造する段階を示す。本工程において、シリコン等の基板材料で形成されたウェハの状態で、チップ基板122(すなわちウェハにおける半導体チップ120の個片化後に図1のチップ基板122となる領域)の第1面側(紙面下側)に回路600を形成し、半導体チップ120(個片化後に図1の半導体チップ120となる構造)を製造する。
【0058】
図6Bは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法におけるトレンチ610を形成する段階を示す。本工程において、チップ基板122の第1面とは反対の第2面側(紙面上側)に、ドライエッチングまたはウェットエッチングによる選択的エッチング等により、複数のトレンチ610を形成する。トレンチ610の深さは、後に接合する熱伝導体130の厚み程度であってよい。
【0059】
図6Cは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法における熱伝導材料620を充填する段階を示す。複数のトレンチ610に熱伝導材料620を充填する。例えば、シード層となる熱伝導材料層をスパッタリングで形成した後、電解メッキを用いて熱伝導材料620を充填する。熱伝導材料620の充填は、トレンチ610の幅の半分程度の厚みがあればよい。熱伝導材料620の充填前に、複数のトレンチ610の表面に、熱伝導材料の拡散を防止する拡散防止層430を形成してもよい。
【0060】
図6Dは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法における遷移構造126を形成する段階を示す。熱伝導材料620の表面を化学機械研磨法(CMP法)等により鏡面研磨する。なお、遷移構造126表面上に酸化防止層440を形成してもよい。これにより、チップ基板の第1面とは反対の第2面側に、チップ基板本体の基板材料の比率を第1面側よりも減らして基板材料よりも熱伝導率が高い熱伝導材料を加えた遷移構造126を一体化する。
【0061】
なお、図6A~Dに示した製造方法によれば、半導体チップ120における基板本体123の第2面側に複数のトレンチ610を形成し、複数のトレンチ610に熱伝導材料620を充填することによって、元の基板本体123と一体である基板材料の構造部分と複数のトレンチ610に充填された熱伝導材料620の構造部分とを含む遷移構造126が一体に形成されたチップ基板122を製造することができる。これに代えて、図6Aに示した工程で第1面側に回路600を形成したチップ基板122の第2面に、図6B~Dと同様の方法によって製造した、遷移構造126を有するが回路600を有しない基板を、接着層を用いた接着、または、プラズマ活性化による接合等によって分離不能に貼り合わせることで、半導体チップ120の第2面側に遷移構造126を一体化させてもよい。
【0062】
図7Aは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第1実施形態におけるパッケージ基板110に、個片化した半導体チップ120を搭載する段階を示す。本工程においては、まず、図6Dに示したウェハ状態の半導体チップ120を個片化し、回路面の各電極にバンプ124を形成する。次に、部品搭載面側に半導体チップ120の各バンプ124に接続されるべき電極パッドを有し、実装面側に複数のバンプ115を有し、各電極パッドおよび対応するバンプ115を電気的に接続する配線層を有するパッケージ基板110を準備する。そして、パッケージ基板110の部品搭載面に、半導体チップ120を搭載する。半導体チップ120の各バンプ124は、パッケージ基板110の部品搭載面における対応する電極パッドへと接合される。さらに、パッケージ基板110と半導体チップ120の間に第2アンダーフィル材料を注入して、第2アンダーフィル構造170を設けてよい。
【0063】
図7Bは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第1実施形態における半導体チップ120と熱伝導体130とを接合する段階を示す。本図の工程において、半導体チップ120および熱伝導体130の表面をプラズマ処理によって活性化してから、熱伝導体130を、半導体チップ120の第2面、すなわち遷移構造126が形成された面に接合する。熱伝導体130は、半導体チップ120が接合される面にアラインメントマークを有してよい。これにより、熱伝導体130を半導体チップ120の第2面に接合する際に、熱伝導体130のアラインメントマークを用いて熱伝導体130および半導体チップ120の位置合わせを行うことができる。熱伝導体130は、半導体チップ120と対面する側であって半導体チップ120と接しない面に各種の捺印、例えば、熱伝導体部材の情報を記載した捺印を設けてもよい。これにより、半導体装置100の製造者または製造装置は、目視あるいは機械的読み取りによって、熱伝導体130として正しい部品を選択することが容易になる。
【0064】
図7Cは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第1実施形態における第1アンダーフィル構造160を形成する段階を示す。必要に応じて、半導体チップ120に接合された熱伝導体130およびパッケージ基板110の間における半導体チップ120が存在しない空間に第1アンダーフィル材料を充填し、第1アンダーフィル構造160を形成する。空間への第1アンダーフィル材料の注入は、熱伝導体130に設けられた貫通孔を介して行われてもよい。
【0065】
図8Aは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態におけるキャリア基板800の構造を示す。本工程において、キャリア基板800を準備する。キャリア基板800は、ウェハ形状であっても、矩形形状であってもよい。キャリア基板800は、シリコン、ガラス、またはその他の板状の剛体であってよく、プラスチックフィルム等の可撓性を有する板状の基体であってもよい。
【0066】
図8Bは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態における熱伝導層810を形成する段階を示す。本工程において、キャリア基板800の表面に熱伝導層810を形成する。本工程においては、一例としてキャリア基板800の表面に接着材を塗布した後に、薄膜の熱伝導層810を貼り付けてよい。熱伝導層810は、図1に示した熱伝導体130となる。熱伝導層810は、一例として0.2mm厚程度であってよい。
【0067】
図8Cは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態における熱伝導層810と半導体チップ120とを接合する段階を示す。本工程において、熱伝導層810および半導体チップ120の表面をプラズマ処理によって活性化してから、個片化した複数の半導体チップ120の第2面をキャリア基板800の表面の熱伝導層810に接合する。半導体チップ120は、隣り合う半導体チップ120同士が接触しないよう、間隔をあけて接合されてよい。このことにより、後述の個片化後に、熱伝導体130を半導体チップ120の第2面に鉛直な方向に投影した投影面積を、半導体チップ120の第2面の面積よりも大きくすることができる。
【0068】
図8Dは、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の第2実施形態における熱伝導層810をキャリア基板800から剥離する段階を示す。本工程において、複数の半導体チップ120が接合された熱伝導層810を、半導体チップ120同士の間で切断してキャリア基板800から剥離することにより個片化する。これにより、キャリア基板800は、半導体チップ120が接合されて剥離されなかった領域のみに熱伝導層810が残った状態となる。なお、キャリア基板800としてプラスチックフィルムを用いる場合には、キャリア基板800は、熱伝導層810を切断する際に熱伝導層810と共に切断されてよい。半導体チップ120と半導体チップ120の間にモールドを充填してもよい。この場合、モールドは第1アンダーフィル構造160の一部となってよい。
【0069】
図9Aは、半導体チップ120とベイパーチャンバー500の接合方法における半導体チップ120と第1熱伝導体部品510とを接合する段階を示す。本工程において、第1熱伝導体部品510および半導体チップ120の表面をプラズマ処理によって活性化し、第1熱伝導体部品510を半導体チップ120の第2面に接合する。
【0070】
図9Bは、半導体チップ120とベイパーチャンバー500の接合方法における第1熱伝導体部品510内に冷却液540を注入する段階を示す。本工程は、不図示であるが、半導体チップおよび熱伝導体を含む半導体装置のリフローまたは熱硬化に伴う加熱の後に行う。
【0071】
図9Cは、半導体チップ120とベイパーチャンバー500の接合方法における第1熱伝導体部品510と第2熱伝導体部品520とを接合する段階を示す。本工程において、第1熱伝導体部品510および第2熱伝導体部品520の間の中空空間を真空としつつ第1熱伝導体部品510と第2熱伝導体部品520とを接合することにより、ベイパーチャンバー500となる密封空間を形成する。
【0072】
ここで、上記のベイパーチャンバー500の接合方法に代えて、ベイパーチャンバー500の密封空間内で冷却液540が注入された後に加熱工程を行う場合には、冷却液540が過度に熱されて完全に沸騰し、密封空間が高圧となってベイパーチャンバー500が破裂する可能性がある。以上に示したベイパーチャンバー500の接合方法によれば、半導体装置100の製造において必要となるリフロー等の加熱工程の後に第1熱伝導体部品510に冷却液540を注入して第2熱伝導体部品520を接合することで、加熱工程でベイパーチャンバー500が破裂することを防ぐことができる。
【0073】
図10Aは複数の半導体チップを含む半導体装置1000の製造方法における第1の半導体チップ1010と第2の半導体チップ1015とをパッケージ基板110に搭載する段階を示す。半導体装置1000は、図1に示した変形例であるから、以下相違点を除き説明を省略する。半導体装置1000は、複数の半導体チップ(本図の例においては第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015)を搭載するMCM(マルチチップモジュール)である。
【0074】
本工程において、まず、第1の遷移構造1020が形成された第1の半導体チップ1010、第2の遷移構造1025が形成された第2の半導体チップ1015、およびパッケージ基板110を準備する。第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015は、図1に示した半導体チップ120と同様の構造を有してよい。第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015には、同じ機能を有する回路が形成されてよく、互いに異なる機能を有する回路が形成されてもよい。
【0075】
第1の遷移構造1020は、第1の半導体チップ1010のチップ基板本体の第1面側に余分に形成されたマージン領域1030を含む。同様に、第2の遷移構造1025は、第2の半導体チップ1015のチップ基板本体の第1面側に厚めに形成されたマージン領域1035を含む。マージン領域1030およびマージン領域1035は、熱伝導材料の割合が100%かつ基板材料の割合が0%の領域であってよく、基板材料の割合が0%を超え100%未満の領域であってもよい。
【0076】
本工程において、パッケージ基板110上に、第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015を実装する。パッケージ基板110への第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015の搭載は、バンプ124を介してよい。パッケージ基板110と第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015との間に第2アンダーフィル材料を充填して、第2アンダーフィル構造170を設けてよい。
【0077】
図10Bは、複数の半導体チップを含む半導体装置1000の製造方法における第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025の高さを合わせる段階を示す。ここで、パッケージ基板110の部品搭載面に対する第1の半導体チップ1010の第1面および第2の半導体チップ1015の第1面の高さは、バンプ124の大きさの誤差、第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015のチップ基板本体の厚みの誤差、第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025の厚みの誤差等の影響により若干異なっている場合がある。本工程においては、第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015の第2面側から第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025をCMP法等によって研磨して、パッケージ基板110に対する第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025の高さを合わせる。この工程において、第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025のマージン領域1030およびマージン領域1035の少なくとも一部が研磨されてよい。
【0078】
図10Cは、複数の半導体チップを含む半導体装置1000の製造方法における熱伝導体130を第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015に接合する段階を示す。第1の半導体チップ1010、第2の半導体チップ1015および熱伝導体130の表面をプラズマ処理によって活性化してから、1つの熱伝導体130を、第1の半導体チップ1010の第2面および第2の半導体チップ1015の第2面に接合する。必要に応じて、パッケージ基板110および熱伝導体130の間における第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015が存在しない空間に第1アンダーフィル材料を充填し、第1アンダーフィル構造160を形成してもよい。
【0079】
以上の製造方法によれば、第1の半導体チップ1010および第2の半導体チップ1015等のように複数の半導体チップを備える半導体装置1000の製造において、複数の半導体チップの遷移構造(第1の遷移構造1020および第2の遷移構造1025等)の高さを合わせる工程を含むので、各半導体チップと熱伝導体130との間の接続不良を防ぐことができる。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0081】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0082】
100 半導体装置、110 パッケージ基板、115 バンプ、120 半導体チップ、122 チップ基板、123 基板本体、124 バンプ、126 遷移構造、130 熱伝導体、140 TIM、150 ヒートシンク、160 第1アンダーフィル構造、170 第2アンダーフィル構造、200 基板材料、210 熱伝導材料、300 基板材料、310 熱伝導材料、400 遷移構造、405 第2面、410 基板材料、420 熱伝導材料、430 拡散防止層、432 絶縁層、434 バリアメタル層、440 酸化防止層、500 ベイパーチャンバー、510 第1熱伝導体部品、520 第2熱伝導体部品、530 突起部、540 冷却液、600 回路、610 トレンチ、620 熱伝導材料、800 キャリア基板、810 熱伝導層、1000 半導体装置、1010 第1の半導体チップ、1015 第2の半導体チップ、1020 第1の遷移構造、1025 第2の遷移構造、1030 マージン領域、1035 マージン領域
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
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図9C
図10A
図10B
図10C