IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-生成物製造装置 図1
  • 特開-生成物製造装置 図2
  • 特開-生成物製造装置 図3
  • 特開-生成物製造装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080542
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】生成物製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/02 20060101AFI20240606BHJP
   C01C 1/10 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C01C1/02 A
C01C1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193845
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】河目 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西野 優希
(57)【要約】
【課題】常温常圧で、効率的に生成物を製造することができる生成物製造装置を提供する。
【解決手段】原料を水中で化学反応させて、常温常圧でアンモニアを生成する反応器10と、反応器10から移行された、前記アンモニアが溶解したアンモニア水及び窒化鉄から、前記窒化鉄を除去可能な固液分離機20と、前記固液分離機20から移行された前記アンモニア水を濃縮する精製機30と、前記アンモニア水の移行のタイミングを制御可能な制御装置70と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を水中で化学反応させて、常温常圧で生成物を生成する反応器と、
前記反応器から移行された、前記生成物が溶解した水溶液及び固体の副生成物から、前記副生成物を除去可能な固液分離機と、
前記固液分離機から移行された前記水溶液を濃縮する精製機と、
前記水溶液の移行のタイミングを制御可能な制御装置と、
を具備する生成物製造装置。
【請求項2】
前記精製機へ移行される前の前記水溶液の濃度を検出可能な第一濃度検出部を具備し、
前記制御装置は、
前記第一濃度検出部の検出結果が第一濃度未満である場合は、前記固液分離機から前記反応器へ前記水溶液を移行し、
前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第一濃度よりも大きい第二濃度以上である場合は、前記固液分離機から前記精製機へ前記水溶液を移行する制御を実行可能である、
請求項1に記載の生成物製造装置。
【請求項3】
前記精製機から移行された前記水溶液を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の前記水溶液の水位を検出可能な水位検出部と、
を具備し、
前記制御装置は、
前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第一濃度以上であり、かつ前記第二濃度未満である場合であって、
前記水位検出部の検出結果が所定水位未満である場合は、前記固液分離機から前記精製機へ前記水溶液を移行し、
前記水位検出部の検出結果が所定水位以上である場合は、前記固液分離機から前記反応器へ前記水溶液を移行する制御を実行可能である、
請求項2に記載の生成物製造装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第二濃度以上である場合であって、前記水位検出部の検出結果が前記所定水位以上である場合、前記精製機による前記生成物の濃縮を停止させる制御を実行可能である、
請求項3に記載の生成物製造装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第一濃度以上であり、かつ前記第二濃度未満である場合であって、
現在時刻が所定時間帯である場合は、前記固液分離機から前記精製機へ前記水溶液を移行し、
現在時刻が前記所定時間帯でない場合は、前記固液分離機から前記反応器へ前記水溶液を移行する制御を実行可能である、
請求項2に記載の生成物製造装置。
【請求項6】
前記第一濃度検出部は、前記反応器の内部の前記水溶液の濃度を検出するものであり、
前記制御装置は、
前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第二濃度以上である場合、前記反応器から前記固液分離機へ前記水溶液及び前記副生成物を移行する制御を実行可能である、
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の生成物製造装置。
【請求項7】
前記反応器の内部において、前記原料に含まれる気体原料の濃度を検出可能な第二濃度検出部を具備し、
前記制御装置は、
前記第一濃度検出部の検出結果が前記第二濃度未満であり、かつ前記第一濃度検出部の検出結果の変化量が所定の基準に満たない場合であって、
前記第二濃度検出部の検出結果が第三濃度以上である場合は、前記反応器から前記固液分離機へ前記水溶液を移行し、
前記第二濃度検出部の検出結果が前記第三濃度未満である場合は、前記反応器に前記気体原料を補充する制御を実行可能である、
請求項6に記載の生成物製造装置。
【請求項8】
前記反応器は、
前記生成物としてアンモニアを生成する、
請求項1に記載の生成物製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成物製造装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学反応により生成物を製造する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、ルテリウム等による触媒を用いて、所定の温度及び圧力の条件下で窒素と水素とを反応させることで、アンモニアを生成する方法が記載されている。上記方法によれば、例えば、ハーバー・ボッシュ法のように高温高圧の条件下で窒素及び水素を反応させる方法とは異なり、比較的低い温度及び圧力の条件下で、アンモニアを生成することができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法でも、常温常圧の状態と比較して高い温度及び圧力の条件下で生成を行う必要がある。このため、生成のためのエネルギーを削減する観点から、更なる改善が望まれる。
【0005】
アンモニアの生成のためのエネルギーを削減可能な方法としては、原料である窒化鉄と二酸化炭素とを水中で反応させることでアンモニアを生成する方法がある。上記方法によれば、常温常圧でアンモニアを生成することができる。そこで、上述のような常温常圧で生成物を生成可能な方法を用いて、効率的に生成物を製造可能な装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-194094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、常温常圧で、効率的に生成物を製造することができる生成物製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、原料を水中で化学反応させて、常温常圧で生成物を生成する反応器と、前記反応器から移行された、前記生成物が溶解した水溶液及び固体の副生成物から、前記副生成物を除去可能な固液分離機と、前記固液分離機から移行された前記水溶液を濃縮する精製機と、前記水溶液の移行のタイミングを制御可能な制御装置と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記精製機へ移行される前の前記水溶液の濃度を検出可能な第一濃度検出部を具備し、前記制御装置は、前記第一濃度検出部の検出結果が第一濃度未満である場合は、前記固液分離機から前記反応器へ前記水溶液を移行し、前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第一濃度よりも大きい第二濃度以上である場合は、前記固液分離機から前記精製機へ前記水溶液を移行する制御を実行可能であるものである。
【0011】
請求項3においては、前記精製機から移行された前記水溶液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の前記水溶液の水位を検出可能な水位検出部と、を具備し、前記制御装置は、前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第一濃度以上であり、かつ前記第二濃度未満である場合であって、前記水位検出部の検出結果が所定水位未満である場合は、前記固液分離機から前記精製機へ前記水溶液を移行し、前記水位検出部の検出結果が所定水位以上である場合は、前記固液分離機から前記反応器へ前記水溶液を移行する制御を実行可能であるものである。
【0012】
請求項4においては、前記制御装置は、前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第二濃度以上である場合であって、前記水位検出部の検出結果が前記所定水位以上である場合、前記精製機による前記生成物の濃縮を停止させる制御を実行可能であるものである。
【0013】
請求項5においては、前記制御装置は、前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第一濃度以上であり、かつ前記第二濃度未満である場合であって、現在時刻が所定時間帯である場合は、前記固液分離機から前記精製機へ前記水溶液を移行し、現在時刻が前記所定時間帯でない場合は、前記固液分離機から前記反応器へ前記水溶液を移行する制御を実行可能であるものである。
【0014】
請求項6においては、前記第一濃度検出部は、前記反応器の内部の前記水溶液の濃度を検出するものであり、前記制御装置は、前記第一濃度検出部の検出結果が、前記第二濃度以上である場合、前記反応器から前記固液分離機へ前記水溶液及び前記副生成物を移行する制御を実行可能であるものである。
【0015】
請求項7においては、前記反応器の内部において、前記原料に含まれる気体原料の濃度を検出可能な第二濃度検出部を具備し、前記制御装置は、前記第一濃度検出部の検出結果が前記第二濃度未満であり、かつ前記第一濃度検出部の検出結果の変化量が所定の基準に満たない場合であって、前記第二濃度検出部の検出結果が第三濃度以上である場合は、前記反応器から前記固液分離機へ前記水溶液を移行し、前記第二濃度検出部の検出結果が前記第三濃度未満である場合は、前記反応器に前記気体原料を補充する制御を実行可能であるものである。
【0016】
請求項8においては、前記反応器は、前記生成物としてアンモニアを生成するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、常温常圧で、効率的に生成物を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るアンモニア製造装置の構成を示した模式図。
図2】アンモニア製造装置の構成を示したブロック図。
図3】(a)アンモニア水等を、反応器から固液分離機へ移行させる制御の処理を示したフローチャート。(b)各センサの検出結果と、図3(a)の処理における判断と、の関係を示す表。
図4】(a)アンモニア水を、固液分離機から精製機又は反応器へ移行させる制御の処理を示したフローチャート。(b)各センサの検出結果と、図4(a)の処理における判断と、の関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係るアンモニア製造装置1の構成について説明する。
【0020】
アンモニア製造装置1は、アンモニアを製造するものである。アンモニア製造装置1は、常温常圧でアンモニアを製造することができる。ここで、常温常圧とは、外気温(例えば25℃)程度の温度、標準大気圧(1気圧)程度の圧力の温和な条件下であることを指す。アンモニア製造装置1は、原料である窒化鉄と二酸化炭素とを水中で反応させることで、アンモニアを生成する。
【0021】
アンモニア製造装置1は、例えば火力発電のボイラー等の燃料となるアンモニアの製造に使用される。アンモニア製造装置1は、反応器10、固液分離機20、精製機30、貯留槽40、バーナー50、流路60及び制御装置70を具備する。
【0022】
反応器10は、窒化鉄と二酸化炭素とを水中で反応させるためのものである。反応器10の内部には、適宜の原料供給装置(不図示)から窒化鉄及び二酸化炭素が供給される。反応器10の内部には、反応に用いられる水が溜められている。上記水としては、二酸化炭素が溶け込んだ「炭酸水」が望ましい。炭酸水を採用した場合には、反応器10内の反応をより早く進めることができる。
【0023】
反応器10内の水に窒化鉄及び二酸化炭素を供給することで化学反応が起こり、アンモニアが水中に生成される。上記アンモニアは、反応器10内の水に溶け込むことでアンモニア水となる。上記アンモニアの生成は、常温常圧で行われる。上記アンモニアの生成に伴い、副生成物(副産物)として炭酸鉄及び水素が発生する。反応器10としては、攪拌機やボールミル、振動ミル等の原料の接触効率を上げるための動作を行うものを採用可能である。
【0024】
上記アンモニアの生成が行われた結果、反応器10内には、アンモニア水(液体)、副生成物の炭酸鉄及び未反応のまま残った窒化鉄(固体)、副生成物の水素及び未反応の二酸化炭素(気体)が存在する。
【0025】
図2に示すように、反応器10内には、アンモニア濃度センサ11及び二酸化炭素濃度センサ12が設けられている。アンモニア濃度センサ11は、反応器10内のアンモニア水に対するアンモニア濃度を検出可能なものである。また、二酸化炭素濃度センサ12は、反応器10内の二酸化炭素の濃度を検出可能なものである。
【0026】
固液分離機20は、反応器10から移行された液体及び固体(アンモニア水や炭酸鉄等)を、液体と固体とに分離するものである。固液分離機20によれば、アンモニア水(液体)と、副生成物の炭酸鉄及び未反応のまま残った窒化鉄(固体)と、から炭酸鉄及び窒化鉄を除去することができる。固液分離機20としては、例えば遠心分離機やスクリューコンベヤ、沈殿槽等を採用可能である。
【0027】
精製機30は、固液分離機20によって分離されたアンモニア水から、アンモニアを濃縮(精製)するものである。以下では、精製機30により濃縮されたアンモニア水を、「液化アンモニア」と称する。精製機30としては、例えばアンモニアストリッピング装置(蒸留装置)を採用可能である。
【0028】
貯留槽40は、液化アンモニアを貯留するものである。貯留槽40としては、液化アンモニアを貯留するための圧力を保持できるタンクを採用可能である。図2に示すように、貯留槽40内には、水位センサ41が設けられている。水位センサ41は、貯留槽40内の液化アンモニアの水位を検出可能なものである。
【0029】
バーナー50は、貯留槽40に貯留された液化アンモニアを燃焼させるものである。バーナー50としては、アンモニア専焼用又は混焼用バーナーを採用可能である。必要に応じて、貯留槽40とバーナー50の間に、アンモニアを気化するための装置を追加してもよい。このように、本実施形態では、貯留槽40に貯留された液化アンモニアを燃料として使用することができる。
【0030】
流路60は、アンモニア製造装置1を構成する各機器の間においてアンモニアが通過するものである。流路60は、第一流路61、第二流路62、第三流路63、第四流路64、第五流路65、第一バルブ66及び第二バルブ67を具備する。
【0031】
第一流路61は、反応器10及び固液分離機20を接続するものである。第一流路61には、反応器10からのアンモニア水や炭酸鉄、窒化鉄が通過する。
【0032】
第二流路62は、固液分離機20及び精製機30を接続するものである。第二流路62には、固液分離機20により分離されたアンモニア水が通過する。
【0033】
第三流路63は、第二流路62の途中部分、及び反応器10を接続するものである。第三流路63には、第二流路62を通過していたアンモニア水が通過する。第三流路63は、固液分離機20により分離されたアンモニア水を、反応器10に戻す際に使用される。
【0034】
第四流路64は、精製機30及び貯留槽40を接続するものである。第四流路64には、精製機30により濃縮されたアンモニア(液化アンモニア)が通過する。
【0035】
第五流路65は、貯留槽40及びバーナー50を接続するものである。第五流路65には、貯留槽40からのアンモニアが通過する。
【0036】
第一バルブ66は、第一流路61の開閉を切替可能なものである。第一バルブ66は、第一流路61を開放する開放状態と、第一流路61を閉塞する閉塞状態と、に切り替えられる。開放状態の第一バルブ66は、反応器10から固液分離機20へのアンモニア水等(アンモニア水、炭酸鉄、窒化鉄)の移行を許容する。一方、閉塞状態の第一バルブ66は、反応器10から固液分離機20へのアンモニア水等の移行を規制する。
【0037】
第二バルブ67は、第二流路62及び第三流路63の開閉を切替可能なものである。第二バルブ67は、第二流路62及び第三流路63の接続部に設けられる。第二バルブ67は、第一開放状態、第二開放状態及び閉塞状態の3つの状態に切り替えられる。
【0038】
第一開放状態は、第二流路62を開放する一方、第三流路63を閉塞する状態である。第一開放状態の第二バルブ67は、固液分離機20から精製機30へのアンモニア水の移行を許容する。第二開放状態は、第二流路62を閉塞する一方、第三流路63を開放する状態である。第二開放状態の第二バルブ67は、固液分離機20から反応器10へのアンモニア水の移行(アンモニア水を戻す際の移行)を許容する。閉塞状態は、第二流路62及び第三流路63を閉塞する状態である。閉塞状態の第二バルブ67は、固液分離機20から反応器10及び精製機30へのアンモニア水の移行が規制される。
【0039】
制御装置70は、各種の情報の処理を実行可能なものである。制御装置70は、CPUやメモリ等を備える。図2に示すように、制御装置70は、アンモニア製造装置1の各センサ(アンモニア濃度センサ11、二酸化炭素濃度センサ12及び水位センサ41)や、各バルブ(第一バルブ66及び第二バルブ67)に電気的に接続されている。また、制御装置70は、アンモニア製造装置1の各機器(反応器10、固液分離機20、精製機30、貯留槽40及びバーナー50)や、原料供給装置に電気的に接続されると共に、上記各機器等の動作を制御可能である。
【0040】
制御装置70は、上記各センサの検出結果を取得すると共に、検出結果に基づいて、アンモニア製造装置1の各機器(反応器10、固液分離機20、精製機30等)を動作させて、アンモニアの製造を行う制御を実行可能である。制御装置70は、アンモニアの製造を行う際に、第一バルブ66及び第二バルブ67の切り替えを行うことで、各機器(反応器10、固液分離機20、精製機30等)の間のアンモニア水等の移行を可能とする。
【0041】
以下では、アンモニア製造装置1によるアンモニアの製造の様子について説明する。
【0042】
まず、図1を用いて、アンモニアの製造の概略について説明する。なお、以下の説明では、反応器10内には水のみが入っている状態であり、第一バルブ66及び第二バルブ67は閉塞状態であるものとする。
【0043】
制御装置70は、反応器10内に、原料となる窒化鉄及び二酸化炭素を供給する。制御装置70は、原料供給装置(不図示)を動作させることで、原料の供給を行うことができる。反応器10内に窒化鉄及び二酸化炭素が供給されると反応が起こり、アンモニアが水中に生成される。
【0044】
制御装置70は、上述のように反応器10内で生成されたアンモニア(アンモニア水)の濃度がある程度高まると、上記アンモニア水を、炭酸鉄や窒化鉄と共に第一流路61を介して固液分離機20へ移行する。この際には、制御装置70は、第一バルブ66を開放状態に切り替える。
【0045】
上記アンモニア水は、固液分離機20で炭酸鉄や窒化鉄が取り除かれる。制御装置70は、第二流路62を介して、炭酸鉄等が取り除かれたアンモニア水を精製機30へ移行する。なお、制御装置70は、精製機30に移行する前にアンモニア水のアンモニア濃度を更に高める必要がある場合は、第三流路63を介して、上記アンモニア水を反応器10に戻すことも可能である。制御装置70は、固液分離機20で分離されたアンモニア水を精製機30又は反応器10へ移行する際には、第二バルブ67を第一開放状態、又は第二開放状態に切り替える。
【0046】
制御装置70は、精製機30で濃縮されたアンモニア(液化アンモニア)を、第四流路64を介して貯留槽40へ移行する。また、制御装置70は、貯留槽40の液化アンモニアを、需要に応じて第五流路65を介してバーナー50へ移行する。
【0047】
上記アンモニア等の移行のタイミングは、各センサの検出結果に基づいて、制御装置70により決定される。なお、上記アンモニア等の移行は、種々のポンプ(不図示)の動力や、重力等を利用して行うことができる。
【0048】
次に、図3を用いて、反応器10から固液分離機20への移行タイミングを決定する制御を説明する。なお、図3(a)は、上記制御の処理を示すフローチャートであり、図3(b)は、各センサの検出結果と、上記フローチャートの判断と、の関係を示す表である。制御装置70は、反応器10に設けられた各センサ(アンモニア濃度センサ11及び二酸化炭素濃度センサ12)の検出結果に基づいて制御の処理を行う。
【0049】
以下の処理では、アンモニア濃度センサ11の検出結果が、「A上限濃度」以上であるか否か、及びアンモニア濃度センサ11の検出結果の「変化の有無」の判定結果が用いられる。
【0050】
ここで、上記「A上限濃度」とは、予め設定されたアンモニア水のアンモニア濃度の上限値である。本実施形態では、A上限濃度を25%に設定している。反応器10のアンモニア水の濃度が25%以上となった場合には、反応器10内に未反応の原料が存在している場合であっても反応が進み難くなる(反応効率が低下する)。このように、A上限濃度はアンモニアの反応効率に基づいて設定される。
【0051】
また、上記「変化の有無」とは、反応器10におけるアンモニア水のアンモニア濃度の変化の有無である。本実施形態では、10分間でアンモニア濃度センサ11の検出結果が0.003%以上変化した場合は、アンモニア濃度に変化があると判定し、10分間で上記検出結果が0.003%以上変化しなければ、アンモニア濃度に変化はないと判定する。
【0052】
また、以下の処理では、二酸化炭素濃度センサ12の検出結果が、「C下限濃度」以上であるか否かの判定結果が用いられる。
【0053】
ここで、上記「C下限濃度」とは、反応器10における二酸化炭素濃度の下限値である。本実施形態では、C下限濃度を40%に設定している。反応器10の二酸化炭素濃度が40%未満である場合は、反応器10内に未反応の原料が存在している場合であっても反応効率が低下する。このように、C下限濃度はアンモニアの反応効率に基づいて設定される。
【0054】
図3(a)に示すステップS101からステップS104までの処理において、制御装置70は、反応器10の「気相交換」に関する処理を実行する。ここで、「気相交換」とは、反応器10内の気体(気相)を交換することである。「気相交換」を行う場合、制御装置70は、原料供給装置(不図示)を動作させて反応器10内に新たな二酸化炭素を補充する。
【0055】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果が、A上限濃度未満であり(ステップS101:NO)、アンモニア濃度センサ11の検出結果に変化がなく(ステップS102:NO)、二酸化炭素濃度センサ12の検出結果が、C下限濃度未満(ステップS103:NO)である場合、「気相交換」を行う(ステップS104)。
【0056】
このように、反応器10内のアンモニア濃度がA上限濃度に達しておらず、かつアンモニア濃度に変化がなく、二酸化炭素濃度がC下限濃度未満である場合は、反応器10内の二酸化炭素が不足しているために反応が進んでいないと推定される。このような場合に、「気相交換」(ステップS104)を行うことで、反応器10内に二酸化炭素を補充して反応効率を向上させることができる。
【0057】
また、ステップS101、ステップS102及びステップS105の処理において、制御装置70は、反応器10の「反応継続」に関する処理を実行する。ここで、「反応継続」とは、反応器10内において、アンモニアの生成のための反応を継続させることである。
【0058】
このように、反応器10内のアンモニア濃度がA上限濃度に達しておらず、かつアンモニア濃度に変化がある場合には、反応器10内においてアンモニアの生成が進んでいると推定される。このような場合には、反応器10内での反応を継続させる。
【0059】
また、ステップS101、及びステップS106の処理において、制御装置70は、「固液分離」に関する処理を実行する。ここで、「固液分離」とは、反応器10のアンモニア水等(アンモニア水や炭酸鉄、窒化鉄)を固液分離機20へ移行して、固体と液体を分離することである。制御装置70は、第一バルブ66を開放状態へ切り替えることで、反応器10のアンモニア水等を固液分離機20へ移行する。
【0060】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果が、A上限濃度以上(ステップS101:YES)である場合、「固液分離」を行う(ステップS106)。
【0061】
このように、反応器10内のアンモニア濃度がA上限濃度に達した場合には、これ以上反応を継続させても反応器10内での反応が進み難くなる。この場合は、精製機30での精製を行うために、アンモニア水等を固液分離機20へ移行するのに適したタイミングであると推定される。
【0062】
また、ステップS101からステップS103まで、及びステップS106の処理においても、制御装置70は、「固液分離」に関する処理を実行する。
【0063】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果が、A上限濃度未満であり(ステップS101:NO)、アンモニア濃度センサ11の検出結果に変化がなく(ステップS102:NO)、二酸化炭素濃度センサ12の検出結果が、C下限濃度以上(ステップS103:YES)である場合、「固液分離」を行う(ステップS106)。
【0064】
このように、反応器10内のアンモニア濃度がA上限濃度に達しておらず、かつ二酸化炭素濃度がC下限濃度以上であっても、アンモニア濃度に変化がない場合は、窒化鉄が不足しているために反応が進んでいないと推定される。このような場合は、反応器10内に新たな窒化鉄を補充するために、アンモニア水等を固液分離機20へ移行するのに適したタイミングであると推定される。すなわち、反応器10内に炭酸鉄等が残っている状態では、新たな窒化鉄を補充し難い。このため、新たな窒化鉄を補充する際には、反応器10内のアンモニア水等を固液分離機20へ移行し炭酸鉄等を除去する。そして、炭酸鉄等が除去されたアンモニア水を反応器10に戻す。これにより、反応器10内に新たな窒化鉄を補充することができる。反応器10内に新たな窒化鉄を補充することで、更に反応を進めることができる。
【0065】
制御装置70は、「固液分離」(ステップS106)の処理を実行した後、図4(a)に示すステップS201の処理へ移行する。
【0066】
次に、図4を用いて、上述のように固液分離機20へ移行されたアンモニア水の、固液分離機20から精製機30への移行タイミングを決定する制御を説明する。なお、図4(a)は、上記処理を示すフローチャートであり、図4(b)は、各センサの検出結果と、上記フローチャートの判断と、の関係を示す表である。
【0067】
以下の処理では、アンモニア濃度センサ11の検出結果が、「A上限濃度」以上であるか否か、及びアンモニア濃度センサ11の検出結果が、「A下限濃度」未満であるか否かの判定結果が用いられる。
【0068】
ここで、「A下限濃度」とは、予め設定されたアンモニア水のアンモニア濃度の下限値である。本実施形態では、A下限濃度を0.1%に設定している。アンモニア水の濃度が0.1%未満である場合は、精製機30での精製に必要な濃度に達していない。このように、A下限濃度はアンモニアの精製の可否に基づいて設定される。
【0069】
また、以下の処理では、水位センサ41の検出結果が、「上限量」以上であるか否かの判定結果が用いられる。ここで、上記「上限量」とは、貯留槽40が貯留可能な水位の上限値である。
【0070】
また、以下の処理では、現在の時刻が、アンモニアの需要のある時間帯であるか否かの判定結果が用いられる。上記時間帯としては、任意の時間帯を設定可能である。
【0071】
図4(a)に示すステップS201からステップS205までの処理において、制御装置70は、「精製」に関する処理を実行する。ここで、「精製」とは、固液分離機20によって分離したアンモニア水を、精製機30で精製することである。「精製」を行う場合、制御装置70は、第二バルブ67を第一状態に切り替えて、精製機30へ移行させる。
【0072】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果がA下限濃度以上であり(ステップS201:NO)、上記検出結果がA上限濃度未満であり(ステップS202:NO)、水位センサ41の検出結果が上限量未満であり(ステップS203:NO)、現在の時刻がアンモニアの需要のある時間帯(ステップS204:YES)である場合、「精製」を行う(ステップS205)。
【0073】
このように、アンモニア水のアンモニア濃度が、A下限濃度以上であり、かつA上限濃度に達しておらず、貯留槽40の水位が上限量に達しておらず、現在の時刻が需要のある時間帯である場合は、アンモニア水を精製機30へ移行するのに適したタイミングであると推定される。
【0074】
また、ステップS201、ステップS202、ステップS206及びステップS207の処理においても、制御装置70は、「精製」に関する処理を実行する。
【0075】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果がA下限濃度以上であり(ステップS201:NO)、上記検出結果がA上限濃度以上であり(ステップS202:YES)、水位センサ41の検出結果が上限量未満(ステップS203:NO)である場合、「精製」を行う(ステップS207)。
【0076】
このように、アンモニア水のアンモニア濃度がA上限濃度以上であり、貯留槽40の水位が上限量に達していない場合は、アンモニア水を精製機30へ移行するのに適したタイミングであると推定される。なお、この場合は、アンモニア水のアンモニア濃度がA上限濃度以上であるため、後述する「循環」を行い反応を継続させたとしても反応効率が低下する。このため、アンモニアの需要のある時間帯であるか否かに関わらず、「精製」を行う。
【0077】
制御装置70は、「精製」(ステップS205またはステップ207)の処理を実行した後、原料供給装置(不図示)を動作させることで、反応器10内に水(炭酸水)、窒化鉄、二酸化炭素を供給したうえで、図3(a)に示すステップS101へ移行する。
【0078】
また、ステップS201、ステップS202、ステップS206及びステップS208の処理において、制御装置70は、「合成ストップ」に関する処理を実行する。ここで、「合成ストップ」とは、精製機30による精製を停止させることである。
【0079】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果がA下限濃度以上であり(ステップS201:NO)、上記検出結果がA上限濃度以上であり(ステップS202:YES)、水位センサ41の検出結果が上限量以上(ステップS203:YES)である場合、「合成ストップ」を行う(ステップS208)。
【0080】
このように、アンモニア水のアンモニア濃度がA上限濃度以上であり、貯留槽40の水位が上限量に達している場合は、「精製」を行ったとしても貯留槽40へ貯留できず、また「循環」を行い反応を継続させたとしても、アンモニアの反応が進み難いため非効率的である。このため、「合成ストップ」を行いアンモニアの精製を停止させる。この場合は、制御装置70は、精製機30の動作を停止させる制御を実行可能である。また、制御装置70は、例えば第一バルブ66及び第二バルブ67を閉鎖状態に切り替えて、固液分離機20からのアンモニア水を、精製機30や反応器10へ移行させないようにする制御を実行可能である。
【0081】
また、ステップS201及びステップS209の処理において、制御装置70は、「循環」に関する処理を実行する。ここで、「循環」とは、固液分離機20によって分離したアンモニア水を、反応器10へ戻すことである。「循環」を行う場合、制御装置70は、第二バルブ67を第二状態に切り替えて、アンモニア水を反応器10へ再び移行させる。
【0082】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果がA下限濃度未満(ステップS201:YES)である場合、「循環」を行う(ステップS209)。
【0083】
このように、アンモニア水のアンモニア濃度がA下限濃度未満である場合は、「精製」に必要なアンモニア濃度に達しておらず、アンモニア水を精製機30へ移行するのに適したタイミングではないと推定される。この場合は、「循環」を行うことでアンモニア水を反応器10へ戻し、アンモニア水のアンモニア濃度を高める。
【0084】
また、ステップS201からステップS204まで、及びステップS209の処理においても、制御装置70は、「循環」に関する処理を実行する。
【0085】
具体的には、制御装置70は、アンモニア濃度センサ11の検出結果がA下限濃度以上であり(ステップS201:NO)、上記検出結果がA上限濃度未満(ステップS202:NO)の場合であって、水位センサ41の検出結果が上限量以上(ステップS203:YES)である場合、又は現在の時刻がアンモニアの需要のない時間帯(ステップS204:NO)である場合、「循環」を行う(ステップS209)。
【0086】
このように、アンモニア水のアンモニア濃度がA下限濃度以上であり、「精製」に必要なアンモニア濃度に達している場合であっても、貯留槽40の水位が上限量に達している場合や、アンモニアの需要のない時間帯である場合は、アンモニア水を精製機30へ移行するのに適したタイミングではないと推定される。この場合は、「循環」を行うことでアンモニア水を反応器10へ戻し、アンモニア水のアンモニア濃度を高める。
【0087】
制御装置70は、「循環」(ステップS209)の処理を実行した後、原料供給装置(不図示)を動作させることで、反応器10内に窒化鉄を供給したうえで、図3(a)に示すステップS101の処理へ移行する。
【0088】
上述の如きアンモニア製造装置1によれば、アンモニアの製造のためのエネルギーの削減を行うことができる。すなわち、アンモニアの製造方法としてハーバー・ボッシュ法を採用した場合には、高温高圧の条件下で水素及び窒素を反応させる必要があるため、製造のためのエネルギー消費が大きくなる問題があった。また、ルテリウム等による触媒を用いて、比較的温和な条件下で上記反応を起こさせる方法もあるが、上記方法でも常温常圧の状態と比較して高い温度及び圧力の条件下で生成を行う必要があった。
【0089】
一方、アンモニア製造装置1によれば、常温常圧でアンモニアの生成を行うことができ、アンモニアの製造のためのエネルギーの削減を行うことができる。また、ルテリウム等の高価な触媒を使用する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、反応器10から固液分離機20へのアンモニア水の移行や、固液分離機20から精製機30へのアンモニア水の移行を、効率性の観点から適したタイミングで行うことができる。これにより、効率的にアンモニアの製造を行うことができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、精製機30へのアンモニア水の移行に適したタイミングでない場合は、「循環」を行うことで、精製機30での精製(濃縮)を行う前に、できるだけアンモニア水のアンモニア濃度を高めることができる。これにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。
【0092】
以上、アンモニア製造装置1について説明した。なお、本実施形態に係る制御は一例であり、アンモニア製造装置1が実行する制御は上述した例に限定されるものではなく、任意の処理を追加又は変更してもよい。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0093】
例えば、図4(a)に示す処理のステップS208において、精製機30による精製を停止させる処理(「合成ストップ」)を実行する際には、反応器10の制御として、図3(a)に示す処理とは異なる処理を行うようにしてもよい。具体的には、「合成ストップ」の処理が行われた場合は、アンモニア濃度センサ11や二酸化炭素濃度センサ12の検出結果に関わらず、アンモニアの生成のための処理(「気相交換」、「反応継続」及び「固液分離」)を行わないようにしてもよい。この場合は、反応器10の動作や、原料供給装置による原材料の供給を停止させるようにしてもよい。
【0094】
以上の如く、本実施形態に係るアンモニア製造装置1は、
原料(窒化鉄及び二酸化炭素)を水中で化学反応させて、常温常圧で生成物(アンモニア)を生成する反応器10と、
前記反応器10から移行された、前記アンモニアが溶解した水溶液(アンモニア水)及び固体の副生成物(炭酸鉄)から、前記炭酸鉄を除去可能な固液分離機20と、
前記固液分離機20から移行された前記アンモニア水を濃縮する精製機30と、
前記アンモニア水の移行のタイミングを制御可能な制御装置70と、
を具備するものである。
【0095】
このように構成することにより、常温常圧で、効率的にアンモニアを製造することができる。すなわち、上記アンモニア製造装置1によれば、反応器10、固液分離機20及び精製機30にアンモニア水等を移行させることで、常温常圧で、効率的にアンモニアを製造することができる。これによれば、常温常圧でアンモニアの生成を行うことができるため、生成のために加熱加圧等を行う必要のあるものとは異なり、エネルギーの削減を行うことができる。
【0096】
また、本実施形態に係るアンモニア製造装置1は、
前記精製機30へ移行される前の前記アンモニア水の濃度を検出可能な第一濃度検出部(アンモニア濃度センサ11)を具備し、
前記制御装置70は、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が第一濃度(A下限濃度)未満である場合は、前記固液分離機20から前記反応器10へ前記アンモニア水を移行し(ステップS201、ステップS209)、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が、前記A下限濃度よりも大きい第二濃度(A上限濃度)以上である場合は、前記固液分離機20から前記精製機30へ前記アンモニア水を移行する(ステップS201~ステップS205)制御を実行可能であるものである。
【0097】
このように構成することにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。すなわち、アンモニア水のアンモニア濃度が、基準値(A下限濃度)未満である場合は、精製機30での精製(濃縮)を効率的に行うことができない可能性がある。このような場合に、固液分離機20からのアンモニア水を精製機30へ移行させずに反応器10へ戻す(循環させる)ことができる。これによれば、精製機30での精製(濃縮)を行う前に、できるだけアンモニア水のアンモニア濃度を高めることで、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。
【0098】
また、本実施形態に係るアンモニア製造装置1は、
前記精製機30から移行された前記水溶液(液化アンモニア)を貯留する貯留槽40と、
前記貯留槽40の前記液化アンモニアの水位を検出可能な水位検出部(水位センサ41)と、
を具備し、
前記制御装置70は、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が、前記A下限濃度以上であり、かつ前記A上限濃度未満である場合であって、
前記水位センサ41の検出結果が所定水位(上限量)未満である場合は、前記固液分離機20から前記精製機30へ前記アンモニア水を移行し、
前記水位センサ41の検出結果が所定水位(上限量)以上である場合は、前記固液分離機20から前記反応器10へ前記アンモニア水を移行する(ステップS201~ステップS203、ステップS209)制御を実行可能であるものである。
【0099】
このように構成することにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。すなわち、アンモニア水のアンモニア濃度が、基準値(A下限濃度)以上である場合であっても、貯留槽40の水位が上限量に達している場合は、アンモニア水を精製機30へ移行するのに適したタイミングではない。このような場合に、固液分離機20からのアンモニア水を精製機30へ移行させずに反応器10へ戻す(循環させる)ことができる。これによれば、貯留槽40の水位が下がるまで、できるだけアンモニア水のアンモニア濃度を高めることで、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。
【0100】
また、前記制御装置70は、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が、前記A上限濃度以上である場合であって、前記水位センサ41の検出結果が前記上限量以上である場合、前記精製機30による前記アンモニアの濃縮を停止させる(ステップS201、ステップS202、ステップS206、ステップS208)制御を実行可能であるものである。
【0101】
このように構成することにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。すなわち、アンモニア水のアンモニア濃度がA上限濃度以上であり、貯留槽40の水位が上限量に達している場合は、精製機30による濃縮を行ったとしても貯留槽40へ貯留できず、非効率的である。このため、上述のような場合にはアンモニアの濃縮を停止させる。
【0102】
また、前記制御装置70は、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が、前記A下限濃度以上であり、かつ前記A上限濃度未満である場合であって、
現在時刻が所定時間帯である場合は、前記固液分離機20から前記精製機30へ前記アンモニア水を移行し(ステップS204、ステップS205)、
現在時刻が前記所定時間帯でない場合は、前記固液分離機20から前記反応器10へ前記アンモニア水を移行する(ステップS204、ステップS209)制御を実行可能であるものである。
【0103】
このように構成することにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。すなわち、アンモニア水のアンモニア濃度が、基準値(A下限濃度)以上である場合であっても、現在時刻が例えばアンモニアの需要がない時間帯であれば、アンモニア水を精製機30へ移行するのに適したタイミングではない。このような場合に、固液分離機20からのアンモニア水を精製機30へ移行させずに反応器10へ戻す(循環させる)ことができる。これによれば、アンモニアの需要がある時間帯になるまで、できるだけアンモニア水のアンモニア濃度を高めることで、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。
【0104】
また、前記アンモニア濃度センサ11は、前記反応器10の内部の前記アンモニア水の濃度を検出するものであり、
前記制御装置70は、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が、前記A上限濃度以上である場合、前記反応器10から前記固液分離機20へ前記アンモニア水及び前記炭酸鉄を移行する(ステップS101、ステップS106)制御を実行可能であるものである。
【0105】
このように構成することにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。すなわち、反応器10の内部のアンモニア水の濃度がA上限濃度以上となった場合に、精製機30による精製(濃縮)を行うために、固液分離機20へアンモニア水を移行させることができる。
【0106】
また、本実施形態に係るアンモニア製造装置1は、
前記反応器10の内部において、前記原料に含まれる気体原料(二酸化炭素)の濃度を検出可能な第二濃度検出部(二酸化炭素濃度センサ12)を具備し、
前記制御装置は、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が前記A上限濃度未満であり、かつ前記アンモニア濃度センサ11の検出結果の変化量が所定の基準に満たない場合であって、
前記二酸化炭素濃度センサ12の検出結果が第三濃度(C下限濃度)以上である場合は、前記反応器10から前記固液分離機20へ前記アンモニア水を移行し(ステップS101~ステップS103、ステップS106)、
前記アンモニア濃度センサ11の検出結果が前記C下限濃度未満である場合は、前記反応器10に前記二酸化炭素を補充する(ステップS101~ステップS104)制御を実行可能であるものである。
【0107】
このように構成することにより、より効率的にアンモニアの製造を行うことができる。すなわち、反応器10内のアンモニアの生成が進んでいない場合であって、二酸化炭素の濃度がC下限濃度未満である場合は、原料のうち二酸化炭素が足りていないと推定して二酸化炭素を補充することができる。また、反応器10内の二酸化炭素の濃度がC下限濃度以上である場合は、原料のうち窒化鉄が足りていないと推定される。この場合は、固液分離機20で反応後の炭酸鉄等を取り除き、新たな窒化鉄を反応器10に供給することができる。
【0108】
また、前記反応器10は、
前記生成物としてアンモニアを生成するものである。
【0109】
このように構成することにより、アンモニアの製造のためのエネルギーの削減を行うことができる。
【0110】
なお、本実施形態に係るアンモニア製造装置1は、本発明に係る生成物製造装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る窒化鉄は、本発明に係る固体原料の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る二酸化炭素は、本発明に係る気体原料の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るアンモニアは、本発明に係る生成物の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るアンモニア濃度センサ11は、本発明に係る第一濃度検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る二酸化炭素濃度センサ12は、本発明に係る第二濃度検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る水位センサ41は、本発明に係る水位検出部の実施の一形態である。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0112】
例えば、本実施形態では、貯留槽40の水位が上限量に達している場合には、アンモニア水を「循環」させたり、「合成ストップ」を行う例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、貯留槽40に加えてサブタンク等を設け、貯留槽40の水位が上限量に達している場合には、サブタンクにアンモニア水を貯留させるようにしてもよい。
【0113】
また、本実施形態では、アンモニア製造装置1にバーナー50を設けた例を示したが、このようなバーナー50を設けないようにしてもよい。
【0114】
また、本実施形態では、アンモニア製造装置1で製造したアンモニアを燃料として使用する例を示したが、このような態様に限定されない。アンモニア製造装置1で製造されるアンモニアの用途としては、種々の用途を採用可能である。
【0115】
また、本実施形態では、アンモニア製造装置1の各バルブ等の動作や原料の供給等を自動で行う例を示したが、上記動作等を手動で行うようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、生成物としてアンモニアを採用した例を示したが、このような態様に限定されない。生成物としては、固体原料を水中で反応させることで生成される種々の生成物を採用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 アンモニア製造装置
10 反応器
20 固液分離機
30 精製機
40 貯留槽
70 制御装置
図1
図2
図3
図4