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特開2024-80550ガラスフリット、ガラスフリット製造方法、銀ペースト、銀ペースト製造方法、積層セラミックコンデンサ、および積層セラミックコンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080550
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ガラスフリット、ガラスフリット製造方法、銀ペースト、銀ペースト製造方法、積層セラミックコンデンサ、および積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240606BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240606BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20240606BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240606BHJP
   H10K 30/81 20230101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L31/04 264
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G9/20 111D
H01G9/20 115A
H01B1/22 A
H10K30/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193857
(22)【出願日】2022-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】506198827
【氏名又は名称】アートビーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】新井 傑也
(72)【発明者】
【氏名】新井 康哲
(72)【発明者】
【氏名】菅原 ミエ子
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 秀利
(72)【発明者】
【氏名】松井 正五
(72)【発明者】
【氏名】錦織 潤
(72)【発明者】
【氏名】森 尚久
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 遼
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5F151
5F251
5G301
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AF06
5E082EE23
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ13
5E082JJ23
5F151CB13
5F151CB27
5F151CB29
5F151FA13
5F251CB13
5F251CB27
5F251CB29
5F251FA13
5G301DA03
5G301DA34
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【目的】本発明はガラスフリット、ガラスフリット製造方法、銀ペースト、銀ペーストの製造方法、積層セラミックコンデンサ、および積層セラミックコンデンサの製造方法に関し、鉛(鉛ガラス)を含まなく、かつ太陽電池などの製造に必要な低温で溶融する、10μm程度あるいはそれ以下の幅の銀電極(フィンガー電極など)を形成するガラスフリット、その製造方法、銀ペースト、積層セラミックコンデンサ、および積層セラミックコンデンサの製造方法を実現することを目的とする。
【構成】ビスマス酸化物26から30wt%、ボロン酸化物3.3から3.7wt%、亜鉛酸化物11から13wt%を主材料とし加熱して溶融ガラスを生成し、これを急速冷却した破片を1μm以下に粉砕して製造した400℃以下で溶融することを特徴とするガラスフリットである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布・焼結して導電性電極を形成する導電性ペーストに混入するガラスフリットにおいて、
ビスマス酸化物26から30wt%、ボロン酸化物3.3から3.7wt%、亜鉛酸化物11から13wt%を主材料とし加熱して溶融ガラスを生成し、これを急速冷却した破片を1μmないし1.3μm以下に粉砕して製造した400℃以下で溶融することを特徴とするガラスフリット。
【請求項2】
添加物として、テルル酸化物30から34wt%、リチウム酸化物3から6wt%、アルミ酸化物1.0から2.0wt%、およびタングステン酸化物を14から22wt%の1つ以上を前記主材料に混入し加熱して前記溶融ガラスを生成したことを特徴とする請求項1に記載のガラスフリット。
【請求項3】
前記導電性ペーストとして、銀ペーストあるいはファイヤースルーする銀ペーストとしたことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載のガラスフリット。
【請求項4】
前記基板に塗布・焼結して導電性電極を形成として、太陽電池の基板に塗布・焼結して導電性の銀電極を形成、あるいは下地の絶縁膜をファイヤースルーして導電性の銀電極を形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のガラスフリット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のガラスフリットを助剤として添加した銀ペースト。
【請求項6】
銀粉末の粒径を1μmないし1.3μm以下としたことを特徴とする請求項5に記載の銀ペースト。
【請求項7】
前記銀粉末の粒径は前記ガラスフリットの粒径以下にして熱容量を等しいあるいは小さくしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の銀ペースト。
【請求項8】
前記銀ペーストについて、アクリル樹脂をベースにした銀ペーストを作成する場合には溶媒であるタービネオール液の濃度を5%±1.5%にし、太陽電池の変換効率特性を良好にしたことを特徴とする請求項3から請求項7のいずれかに記載の銀ペースト。
【請求項9】
請求項5から請求項8に記載の鉛フリーの銀ペーストを積層セラミックコンデンサの外部電極となる部分に塗布・燒結して銀の外部電極を形成したことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
基板に塗布・焼結して導電性電極を形成する導電性ペーストに混入するガラスフリットの製造方法において、
ビスマス酸化物26から30wt%、ボロン酸化物3.3から3.7wt%、亜鉛酸化物11から13wt%を主材料とし加熱して溶融ガラスを生成し、これを急速冷却した破片を1μmないし1.3μm以下に粉砕して製造した400℃以下で溶融することを特徴とするガラスフリットの製造方法。
【請求項11】
添加物として、テルル酸化物30から34wt%、リチウム酸化物3から6wt%、アルミ酸化物1.0から2.0wt%、およびタングステン酸化物を14から22wt%の1つ以上を前記主材料に混入し加熱して前記溶融ガラスを生成したことを特徴とする請求項10に記載のガラスフリットの製造方法。
【請求項12】
前記導電性ペーストとして、銀ペーストあるいはファイヤースルーする銀ペーストとしたことを特徴とする請求項10から請求項11のいずれかに記載のガラスフリットの製造方法。
【請求項13】
前記基板に塗布・焼結して導電性電極を形成として、太陽電池の基板に塗布・焼結して導電性の銀電極を形成、あるいは下地の絶縁膜をファイヤースルーして導電性の銀電極を形成したことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載のガラスフリットの製造方法。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれかに記載のガラスフリットを助剤として添加した銀ペーストの製造方法。
【請求項15】
銀粉末の粒径を1μmないし1.3μm以下としたことを特徴とする請求項14に記載の銀ペーストの製造方法。
【請求項16】
前記銀粉末の粒径は前記ガラスフリットの粒径以下にして熱容量を等しいあるいは小さくしたことを特徴とする請求項10から請求項15のいずれかに記載の銀ペーストの製造方法。
【請求項17】
前記銀ペーストについて、アクリル樹脂をベースにした銀ペーストを作成する場合には溶媒であるタービネオール液の濃度を5%±1.5%にし、太陽電池の変換効率特性を良好にしたことを特徴とする請求項12から請求項16のいずれかに記載の銀ペーストの製造方法。
【請求項18】
請求項14から請求項17に記載の鉛フリーの銀ペーストを積層セラミックコンデンサの外部電極となる部分に塗布・燒結して銀の外部電極を形成したことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の表面などに銀電極を形成する銀ペーストに用いるガラスフリット、ガラスフリット製造方法、銀ペースト、積層セラミックコンデンサ、および積層セラミックコンデンサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギー利用の一つである太陽電池は、20世紀の主役である半導体技術をベースにその開発が行われている。人類の生存を左右する地球レベルの重要な開発である。その開発の課題は太陽光を電気エネルギーに変換する効率ばかりではなく製造コストの低減および無公害という課題にも向き合いながら進められている。これらを実現する取り組みは、特に、電極に使用されている銀(Ag)の使用量を削減および鉛(Pb)の使用を無くすことが重要とされている。
【0003】
例えば、太陽電池を構成するシリコン基板(p型)の表面に、鉛入りの銀ペーストを用いてフィンガー電極のパターンをスクリーン印刷して焼結し、下地の絶縁膜をファイヤースルーさせてその下の高濃度電子領域から電子を取り出し、更に焼結した銀焼結膜にリード線を半田付けし、外部に電子を取り出すようにしていた。
【0004】
また、太陽電池の裏面には全面にアルミペーストを塗布・焼結してアルミ電極(p+)を形成し、これに銀ペーストを塗布・焼結し、この銀焼結膜にリード線をハンダ付けしていた。
【0005】
このために、銀ペーストは太陽電池の表面、裏面に多く使用され、特に、表面のファイヤースルーさせる銀ペーストには鉛(鉛ガラス)を用いていたので、銀および鉛を使わざるを得なかった。
【0006】
また、ファイヤースルーする太陽電池のフィンガー電極の幅が数十μmと広く、更に狭くして銀の使用量を削減かつ効率向上させることが要望されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の太陽電池の表面、裏面に銀ペースト、更に鉛(鉛ガラス)の入った銀ペーストを多量に使うという問題があった。
【0008】
そのため、従来の銀ペーストを構成するガラスフリット中に鉛(鉛ガラス)を含まないファイヤースルーし、かつ低温で溶融する新たなガラスフリットの出現が望まれている。
【0009】
また、従来の太陽電池のフィンガー電極などの幅を10μm程度に小さくして銀の使用量を削減かつ太陽電池の効率を向上させることが望まれている。
【0010】
また、従来の積層セラミックコンデンサの外部電極は、3層(下地(銅焼結膜)、ニッケルメッキ層、錫メッキ層)の3層)と工程数が多く、1層にすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鉛(鉛ガラス)を含まなく、かつ太陽電池などの製造に必要な低温で溶融する、主成分がビスマス、ボロン、亜鉛の酸化物からなるガラスフリットの製造を可能、かつ10μm程度あるいはそれ以下の幅のフィンガー電極などを鉛(鉛ガラス)なしで実現すると共に、ガラスフリットの粒径を小さくして太陽電池の電極に使用したときの変換効率を向上させるガラスフリットを実現した。
【0012】
そのため、本発明は、基板に塗布・焼結して導電性電極を形成する導電性ペーストに混入するガラスフリットにおいて、ビスマス酸化物26から30wt%、ボロン酸化物3.3から3.7wt%、亜鉛酸化物11から13wt%を主材料とし加熱して溶融ガラスを生成し、これを急速冷却した破片を1μmないし1.3μm以下に粉砕して400℃以下で溶融するガラスフリットを製造するようにしている。
【0013】
この際、添加物として、テルル酸化物30から34wt%、リチウム酸化物3から6wt%、アルミ酸化物1.0から2.0wt%、およびタングステン酸化物を14から22wt%の1つ以上を前記主材料に混入し加熱して溶融ガラスを生成するようにしている。
【0014】
また、導電性ペーストとして、銀ペーストあるいはファイヤースルーする銀ペーストとするようにしている。
【0015】
また、基板に塗布・焼結して導電性電極を形成として、太陽電池の基板に塗布・焼結して導電性の銀電極を形成、あるいは下地の絶縁膜をファイヤースルーして導電性の銀電極を形成するようにしている。
【0016】
また、ガラスフリットを助剤として添加した銀ペーストを製造するようにしている。
【0017】
また、銀粉末の粒径を1μmないし1.3μm以下とするようにしている。
【0018】
また、銀粉末の粒径はガラスフリットの粒径以下にして熱容量を等しいあるいは小さくするようにしている。
【0019】
また、銀ペーストについて、アクリル樹脂をベースにした銀ペーストを作成する場合には溶媒であるタービネオール液の濃度を5%±1.5%にし、太陽電池の変換効率特性を良好にするようにしている。
【0020】
また、鉛フリーの銀ペーストを積層セラミックコンデンサの外部電極となる部分に塗布・燒結して銀の1層の外部電極を形成するようにしている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上述したように、鉛(鉛ガラス)を含まなく、かつ太陽電池などの製造に必要な低温で溶融する、主成分がビスマス、ボロン、亜鉛の酸化物からなるガラスフリットの製造ができ、かつ10μm程度あるいはそれ以下の幅のフィンガー電極などを実現すると共に、ガラスフリットの粒径を小さくして太陽電池の電極に使用したときの変換効率を向上させるガラスフリットができた。これらにより、下記の特徴がある。
【0022】
(1)ファイヤースルーするガラスフリット中から鉛(鉛ガラス)を排除できた。これにより、太陽電池の鉛(鉛ガラス)の含有による公害の悪影響を除去できた。
【0023】
(2)銀ペースト等として使用するために必要な低い溶融点400℃以下で溶融するガラスフリットを実現でき、かつファイヤースルーする機能を持たせたガラスフリットができた。これらにより、低融点で焼結が可能となり、太陽電池の銀電極等の形成およびファイヤースルーさせたフィンガー電極に使える銀ペースト等のガラスフリットが実現できた。
【0024】
(3)ガラスフリットおよび銀の粒径を1μmないし1.3μm程度あるいはそれ以下にして10μm程度あるいはそれ以下の幅のファイヤースルーするフィンガー電極を実現できた。
【0025】
(4)ガラスフリットの粒径(例えば1.2μm)を銀の粒径(例えば1μm)より大きくして熱容量を同じ位にして良好な短時間焼結(1秒なし1分程度)を実現できた。
【0026】
(5)ガラスフリットの粒径を1μmないし1.3μm以下にして銀ペーストにして燒結したときのへたりを少なくして、太陽電池の電極に使用したときの変換効率を向上させることができた(図2とその説明参照)。
【0027】
(6)アクリル樹脂をベースにした銀ペーストを作成して太陽電池のフィンガー電極を焼成した場合に、溶媒であるタービネオール液を5%±1.5%にして行い、再現性のある安定した変換効率特性を実現できた。
【0028】
(7)鉛フリーの銀ペーストを積層セラミックコンデンサの外部電極となる部分に塗布・燒結して銀の1層からなる外部電極を形成し、従来の3層(下地(銅焼結膜)、ニッケルメッキ層、錫メッキ層))から1層にし、鉛フリーの外部電極を形成かつ工程数の削減が実現できた。
【実施例0029】

図1は、本発明の ABSガラス(アートビーム太陽電池用ガラス)の作製フローチャートを示す。
【0030】
図1において、S1は、ガラスの原料を調合して溶融(900℃~1200℃)(電気炉温度が上がったところに入れて1時間置く)する。これは、電気炉の温度を900℃~1200℃範囲の実験で決めた最適な温度にあがったときに、調合したガラスの原料をルツボに入れて挿入し、溶解し、1時間置く。尚、ルツボに入れた原料を電気炉で規定温度に上げて溶融し、1時間置いてもよい。ガラスの原料は、実験では、例えば後述する図2に示す下記などである。
【0031】
・管理番号8A2:ビスマス酸化物Bi2O3 28%
ボロン酸化物B2O3 3.5%
亜鉛酸化物ZnO 12%
アルミ酸化物Al2O3 1.5%
テルル酸化物TeO2 32%
タングステン酸化物WO3 18%
リチウム酸化物Li2O 5%
ここで、%は全てwt%である(以下同様)。また、ガラスを作成するから全ての材料は酸化物である。
【0032】
S2は、ガラス破片(3ー5mm)を作製する。これは、下側に記載したように、S1で作製した溶融ガラスを冷やした金属ローラーに流し込みながら作製する。即ち、溶融ガラスを水冷した回転する金属ローラーの間に流し込み急速冷却して3-5mm程度のガラス破片を作製する。
【0033】
S3は、粗粉砕(粉末2-3mm),粉砕(~50μm)する。これは、S2で急速冷却した3-5mmのガラス破片を、粗粉砕して2-3mmの粉末にし、これを更に粉砕して~50μm程度の粉末にする。
【0034】
S4は、微粉砕(1μm以下)(ビーズミル装置)を行う。これは、ビーズミル装置を用い、S3の~50μmの粉末を更に微粉砕して1μm以下の粉末(ガラス粉末、ガラスフリット)にする。尚、2μm程度の粉末は、ジェットミル装置で粉砕できるが、これ以下はビーズミル装置で粉砕して1μm以下の粉末、例えば0.8μmの粒径のガラスフリットを本発明では作成した(図2の8A2参照)。
【0035】
S5は、太陽電池銀電極用の焼結助剤のフリットを完成する。
【0036】
以上のように、原料を規定温度(900℃~1200℃)に上げて溶解して溶融ガラスを作製し、この溶融ガラスを急速冷却してガラス破片(3-5mm)を作製し、これを粗粉砕、粉砕、微粉砕して1μm以下のガラスフリット(ガラス粉末)を作製した(図2図10の(a)を参照)。
【0037】
図2は、本発明のABSガラスの作製サンプル例を示す。
【0038】
図2の(a)は、サンプルの管理番号を表す。これは、サンプルに一意に付与した番号である。
【0039】
図2の(b)は、開発番号を表す。これは、サンプルに一意に付与した開発番号である。
【0040】
図3の(c)は、粒径を表す。これは、各サンプルのガラスフリットの平均粒径(μm)を表す。
【0041】
図3の(d)は、mass%を表す。これは、各サンプルのガラス材料のmass%(wt%)を記載したものである。
【0042】
例えば管理番号8A2は、図示記載の下記の組成で、下記の粒径のガラスフリットを作成する(図1参照)。そして、作成したガラスフリットを用いて銀ペーストを作成し(図5参照)、太陽電池のフィンガー電極を燒結(図6参照)したときに、下記の変換効率(18.00%)が得られた。
【0043】
・管理番号8A2
・mass%(wt%):
Bi2O3(ビスマス酸化物) 28%
B2O3(ボロン酸化物) 3.5%
ZnO(亜鉛酸化物) 12%
Al2O3(アルミ酸化物) 1.5%
TeO3(テルル酸化物) 32%
WO3(タングステン酸化物) 18%
Li2O(リチウム酸化物) 5%
・粒径:0.8μm(ここで、粒径は、平均の粒径を表す)
・ガラス軟化点:331℃
・変換効率:18%
・その他:図2に図示の通り
図3は、本発明のABLガラスの要求/概要事項例を示す。これは、太陽電池の例えば表面に銀ペーストを塗布・焼結してその下の絶縁膜(窒化膜など)をファイヤースルーした銀電極(フィンガー電極)を形成などする場合に、当該銀ペーストに混入するガラスフリットに必要とされる要求・概要と、本発明が解決する手段とを対応づけて表にしたものである。
【0044】
図3の(a)は、ファイヤースルー機能と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、ビスマス、ボロン、亜鉛を主体とし、アルミ、テルル、タングステン、リチウムを添加し、鉛なしでファイヤースルー機能を実現している(ここで、ビスマス等は全て酸化物である、以下同様)。これは、従来の鉛(鉛ガラス)入りの銀ペーストを用いていたものを代替えするものであって、鉛(鉛ガラス)なしの銀ペーストを用いて実現したものである。Bi成分はTe成分(更にリチウム、アルミ成分)によるファイヤースルー機能を促進する。
【0045】
図4の(b)は、低軟化点化(400℃以下)と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、Li成分、Bi成分により低軟化点化(400℃以下で溶融)を実現した。ここで、Li成分、Bi成分により低軟化点化したが、多すぎると結晶化してガラス(非結晶質)ではなくなってしまう。
【0046】
図4の(c)は、粒子径を示す。粒子径が1.6μm(特に1μm)以下になると変換効率が高くなる(図2の管理番号8A2の粒子径0.8μm、図7を参照)。
【0047】
図4の(d)は、基本的骨格と、本発明の解決手段とを示す。本発明は、既述したように、ビスマスBiO3、ボロンB2O3、亜鉛ZnOの主成分を下記の範囲で含むガラスである(既述した図2参照)。
【0048】
・ビスマスBiO3:26-30wt%
・ボロンB2O3:3.3-3.7wt%
・亜鉛ZnO:11-13%(ZnOが多すぎると異物になる)
図4の(e)は、添加物と、本発明の解決手段とを示す。本発明は、既述したように、アルミAl2O3、テルルTeO2、タングステンWO3,リチウムLi2Oを添加し、下記の範囲で含むガラスである(既述した図2参照)。
【0049】
・アルミAl2O3:1.0-2.0wt%
・テルルTeO2:30-40wt%
・タングステンWO3:14-22wt%
・Li2O:3-6%
図4は、本発明の銀ペーストの説明図を示す。これは、銀ペーストの構成成分の1例であって、例えば図示の下記である。これら構成成分を混合して銀ペーストを製造する(後述する図5参照)。
【0050】
(1)銀粉末:
・純度:99.9%以上
・平均粒度:0.8~5μm
・形状:球状、楕円球状
(2)本発明のガラス粉末(ガラスフリット):
・粒径:0.5~1.6μm
・銀ペースト全体の重量比0.1~2%
(3)樹脂:
・銀ペースト全体の重量比0.1~3%
・エチルセルローズ類、ニトロセルローズ類等
(4)溶剤:
・銀ペースト全体の重量比~25%位(スクリーン印刷等に適する粘度)
・ジエチレングリコール、モノブチルエーテル等
図5は、本発明の銀ペーストの製造フローチャートを示す。
【0051】
図5において、S21は、溶剤と樹脂を混合機で混ぜる(有機ビヒクル)。これは、既述した図6の(4)溶剤と(3)樹脂とを混合機に入れて良く混合し、有機ビヒクルを製造する。
【0052】
S22は、有機ビヒクルにガラスを混ぜる。これは、S21で製造した有機ビヒクルに、既述した図4の(2)の本発明のガラス粉末(ガラスフリット)を混合機に入れて良く混合する。
【0053】
S23は、銀粉末を混ぜる。これは、更に、既述した図4の(1)の銀粉末を混ぜる工程であって、図4の(1)の銀粉末100重量部に対して、有機ビヒクル1.5~100重量部(好ましくは30~50重量部)となるように当該(1)の銀粉末を混合する。
【0054】
S24は、銀ぺースト完成する。
【0055】
以上のS21からS24の手順により、既述した図4の(4)溶剤と(3)樹脂、(2)本発明のガラス粉末(ガラルフリット)と、更に(1)銀粉末を混合機で順番に良く混合し、銀ペーストを製造することが可能となる。
【0056】
図6は、本発明の銀ペーストの焼成フローチャートを示す。これは、既述した図5で製造した銀ペーストを、太陽電池の表面に塗布・乾燥・焼成し、銀電極(ファイヤースルー有のフィンガー電極、無のバスバー電極など)を形成するときの焼成フローチャートの1例を示す。
【0057】
図6において、S31は、太陽電池セルの表面の窒化膜面に塗布する。例えば5~13mg/cm2の厚さで塗布する。これは、銀電極(ファイヤースルー有)を形成する対象の例えば太陽電池セルの表面の窒化膜面に塗布する(スクリーン印刷により塗布する)。
【0058】
S32は、乾燥する。これは、S31で塗布した銀ペーストを例えば100~300℃の乾燥炉に1分~10分入れて溶剤を飛ばして乾燥する。また、熱風を送って乾燥してもよい。
【0059】
S33は、銀焼結する。これは、例えば500~900℃程度(必要あれば1200℃)の焼結炉に1~600秒入れて焼結し、銀電極を太陽電池セルの窒化膜面に形成(同時にファイヤースルーによりその下部の高電子濃度領域との銀の貫通路を形成)する。また、赤外線ランプで赤外線を直接に照射して焼結してもよい。この焼結の際、助剤の特に本発明のガラスが溶融して太陽電池セルの窒化膜に強固に固着すると共に銀粉末に強く固着し、更に、窒化膜をファイヤースルーしてその下部の高電子濃度領域に銀の経路を貫通させた電極(フィンガー電極)を形成することができる。
【0060】
この本発明の焼結は、銀電極の幅が約10μm程度ないし、それ以下の非常に狭い幅の銀電極(ファイヤースルー電極)を形成でき、そのために粒径を10分の1程度ないしそれ以下の、例えば銀粒子の粒径を0.8μmから1.6μm程度、ガラス粒子の粒径を0.8μmから1.6μm程度にするとよい。ここで、銀粒子の粒径はガラス粒子の粒径よりも小さくして、熱容量をほぼ同じあるいは小さくすると更によい。これにより、銀粒子と、ガラス粒子との熱容量がほぼ同じで短時間焼成してもほぼ均一かつ同じ程度に加熱されて良好で均一な焼成を行うことができる。更に、ガラス粒子を小さくしたことで、燒結時のへたりを少なくしたフィンガー電極を形成し、これらの結果として太陽電池の変換効率を高くできた(図2の8A2参照)。
【0061】
ここで、焼結は下記のように行われる。
【0062】
(1)太陽電池の基板の表面の例えば窒化膜面に本発明の銀ペーストを塗布・乾燥した後に、焼結を開始すると、約400℃以下で銀ペースト中のガラスが溶融を始める。この際、本発明の銀粒子の粒径はガラスフリットの粒径よりも小さくして両者の熱容量がほぼ同じようにしてある。そして、400℃に到達した後、銀粒子の均一で効率的な焼結を完遂する(例えば赤外線ランプ照射による1秒ないし60秒の短時間焼成の場合にもガラス粒子が溶融した後、均一な焼結が行われる)。
【0063】
(2)(1)で完全に溶融したガラスは、下方(窒化膜)に向かうと共に同時に銀粒子に向かう。ここで、(3)になる前に、ガラスが完全に溶融(つまり銀粒子の開始前にガラスが完全に溶融)しないと、(3)の銀粒子同士の焼結が始まり、そのために溶けないガラス粒子部分は閉じ込められてしまうか、又は、導電性の悪い部分が発生し、全体として不完全な銀焼結体(理想的な低抵抗値にならない高抵抗の銀焼結体)となってしまう大きな原因となることが実験で確認された。この際、ガラス粒子を1μm以下(例えば0.8μm)にすると、更に良好な理想的な低抵抗の銀焼結体となり、太陽電池の変換効率を高くできた(図2の8A2参照)。
【0064】
(3)更に温度が上がると、銀粒子と他の銀粒子との焼結が始まる(約600℃)。
【0065】
(4)銀焼結した後、冷却(自然冷却)し、銀電極を形成できる。
【0066】
(5)尚、本発明のガラスがファイヤースルー機能を持ったガラスの場合には、(2)で完全に溶けたガラスが下方の窒化膜を覆い本発明のガラス中のテルルTe,ビスマスBiの相互作用によりファイヤースルーして貫通し、その下部の高電子濃度領域にまで銀経路を形成するので、I/V特性を測定したときに従来の銀ペースト(鉛ガラス入り)と同等のI/V特性が得られ、良好なファイヤースルーが本発明のガラス(図2図3)で実現できた。この際、ガラスフリットの粒径を1μm以下、例えば0.8μmにすると、更に太陽電池の変換効率を高くすることができた(図2の8A2参照)。
【0067】
S34は、室温冷却し、完成する。これは、S33で銀焼結した後、室温冷却し、太陽電池の表面の窒化膜面、シリコン面、アルミ焼結面に銀電極の形成を完了する。
【0068】
以上のように、本発明のガラス粉末を助剤として添加した銀ペーストを、太陽電池セルの絶縁膜(窒化膜など)、シリコン面、アルミ焼結膜に塗布し(S31)、乾燥(S32)し、次に焼成(S33)することににより、太陽電池セルの絶縁膜面、シリコン面、アルミ焼結膜面に、従来の銀ペースト(鉛ガラス有、無)と同等に強く固着した銀電極およびファイヤースルーした銀電極を形成することが可能となった。
【0069】
尚、アクリル樹脂をベースにした銀ペーストを用いる場合には、溶媒であるタービネオール液を、5%±1.5%にして行うと再現性のある安定した太陽電池の変換効率特性を有するものが得られた。溶媒のタービネオール液が少ないと、ガラスの分散性が悪く安定した再現性が得られなかった。一方、溶剤のタービネオール液が多過ぎると、ペーストの断面形状が「だれ」た状態となり、裾野を引いた形状となってしまい、フィンガー電極の面積が大きくなり変換効率を悪化させることが判明した。
【0070】
図7は、本発明のガラスフリットの粒子径による変換効率の差と焼成到達温度例(図2の8A2)を示す。ここで、図7は、図2の8A2の材料をもとに図5図6の手順により銀ペーストを作成して太陽電池のフィンガー電極を焼成した場合のものであって、横軸は焼成到達温度℃を表し、縦軸は変換効率%を表す。
【0071】
図7において、□で表す実測結果は、ガラスフリットの粒子径D50(0.8μm)について、焼成到達温度を変えた場合の太陽電池の変換効率を実測した値である。そして、□の実測値を結んだ上側の実線は、その平均値を表す。
【0072】
△で表す実測結果は、ガラスフリットの粒子径D50(1.35μm)について、焼成到達温度を変えた場合の太陽電池の変換効率を実測した値である。そして、△の実測値を結んだ下側の点線は、その平均値を表す。
【0073】
これらの上側の実線と、下側の点線との差分は、図示のように、0.25%(太陽電池の変換効率の差が0.25%)となることが本実験で確認された。
【0074】
以上のことから、太陽電池のフィンガー電極を燒結した場合にガラスフリットの粒子径が0.8μm(平均)のときに1.35μm(平均)の粒子径に比して0.25%だけ、太陽電池の変換効率を高くすることができた(図2の8A2参照)。
【0075】
図8は、本発明の鉛フリーガラスの成分効能例を示す。これは、図2の作成サンプル例で用いた材料の特性およびその有用な範囲wt%の概要を記載したものである。
【0076】
Bi2O3:ファイヤースルー性や耐水性を高める成分
特に26~30wt%
B2O3 :ガラス形成成分、光電変換効率を低下させる。
【0077】
20wt%以下、実質的に含有しないことが望ましい。
【0078】
耐失透性向上の観点から0.1%wt以上添加した方がいい場合がある。
【0079】
特に3.3~3.7wt%
ZnO :熱的安定性を高める。熱膨張係数を低下させずに軟化点を低下させる。
【0080】
特に11~13wt%
Al2O3:ガラスネットワークを安定化する成分、耐酢耐酸を高める。光電変換効率 を高める。
【0081】
0~15wt%。特に1~2wt%
TeO2 :網目形成成分
25~90wt%、特に30~33wt%
WO3 :ガラス化範囲を拡大。増えると徐々にFF値は増大するが、過剰になると 減少に転じる。
【0082】
特に14~22wt%
Li2O :n+層に対するドーバンドになりうる。電気的特性の低下はなく軟化点を 下げる。増えるとFFは徐々に増大し、過剰になると徐々に減少する。
【0083】
特に3~6wt%
図9は、本発明の応用例(積層セラミックコンデンサの断面構造図)を示す。これは、公知の積層セラミックコンデンサの模式断面図であって、本願発明は、2つの外部電極3を本願発明の鉛フリーの銀ペーストの1層で形成したものである。
【0084】
図9において、誘電体層(チタン酸バリウム)1は、コンデンサの容量を発生させる誘電体であって、ここでは、公知のチタン酸バリウムである。従来のチタン酸バリウムは、粒径が0.6μm程度と大きかった。本願発明では、超臨界水熱合成したチタン酸バリウムは、100nm以下、特に、10nm前後を用い、その充填度を高めて容量を増大した。
【0085】
内部電極(ニッケル)2は、誘電体層1に形成した電極(ニッケル)である。
【0086】
外部電極3は、図示のように、内部電極2を並列接続し、かつ外部に取り出す電極であって、本願発明は既述した鉛フリーの銀ペーストを印刷・焼成して形成して1層の銀燒結層である。従来は、3層(下地(銅、銅ペーストを塗布焼結)、ニッケルメッキ層、錫メッキ層の3層)から構成していた。本願発明では、鉛フリーの1層の銀焼結層にし、従来の3層に比して工程数を削減できた。本発明の鉛フリーの銀ペーストは、チタン酸バリウム、ニッケル等に強く固着した焼結が可能であり、かつ1層の銀燒結膜の低抵抗の外部電極3を形成できた。
【0087】
図10は、本発明のガラスフリット等のサンプル例を示す。
【0088】
図10の(a)は、鉛フリーガラスフリット(D50:0.85μm)のサンプル例を示す。鉛フリーガラスフリットは、粒径が0.85μmと小さいため、図示のように、密閉容器に保存するようにしている。
【0089】
図10の(b)は、チタン酸バリウム(D50:100nm以下)のサンプル例を示す。チタン酸バリウムの粉末は、ここでは、粒径が100nm以下(実際は10nm前後)と小さいため、図示のように、密閉容器に保存するようにしている。図示の100nm以下のチタン酸バリウムは、既述した図9で使用したものであり、公知の超臨界水熱合成により製造したものである。超臨界水熱合成は、チタン酸バリウムを構成する複数の材料(水溶性の複数の材料)を超臨界状態にして水熱合成し、製造したものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】本発明のABSガラスの作製フローチャートである。
図2】本発明のABSガラスの作製サンプル例である。
図3】本発明のABLガラスの要求/概要事項例である。
図4】本発明の銀ペーストの説明図である。
図5】本発明の銀ペーストの製造フローチャートである。
図6】本発明の銀ペーストの焼成フローチャートである。
図7】本発明のガラスフリットの粒子径による変換効率の差と焼成到達温度例(図2の8A2)である。
図8】本発明の鉛フリーガラスの成分効能例である。
図9】本発明の応用例(積層セラミックコンデンサの構造断面図)である。
図10】本発明のガラスフリット等のサンプル例である。
【符号の説明】
【0091】
1 誘電体層(チタン酸バリウム)
2 内部電極(ニッケル)
3 外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10