(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080554
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】鉄道車両に於ける天井板を反射板に兼用した照明天井構造
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/43 20170101AFI20240606BHJP
B60Q 3/74 20170101ALI20240606BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240606BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20240606BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240606BHJP
F21W 106/00 20180101ALN20240606BHJP
【FI】
B60Q3/43
B60Q3/74
F21V7/00 320
F21V7/04 100
F21Y115:10
F21W106:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022202615
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】591265840
【氏名又は名称】横浜製機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関根 宗平
(72)【発明者】
【氏名】寺田 聡理
(72)【発明者】
【氏名】霜田 純一
(72)【発明者】
【氏名】當摩 貴
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】内田 英樹
【テーマコード(参考)】
3K040
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040BA00
3K040CA05
3K040EA01
3K040FB05
3K040GC01
(57)【要約】
【課題】LEDを照明に使用して、美観を持った照明装置と鉄道車両用天井構造を提供する。
【解決手段】鉄道車両車内の天井板を反射板として使用してLED光源を照明とする。その際に反射板表面の凹凸はRa0.8~Ra6.3とすることにより、美観を維持した拡散反射を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の客室内に於いて、
1)照明の光源がLED列である。
2)天井板が光源の反射板である。
3)反射板である天井板の表面には印刷技術による微細な凹凸が構成されている。
以上を備えていることを特徴とする車両の間接照明天井構造。
【請求項2】
請求項1において3)の天井板の表面凹凸が表面性状Ra0.8~Ra6.3であることを特徴とする鉄道車両の照明天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両の天井構造とその照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の天井構造は車両の側面側から、側天井、灯具部位、中央天井、とそれぞれ独立したユニットになっており、これらをつなげて天井を構成している。照明の光源として蛍光灯、LED等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鉄道車両の天井構造は、車内の側面から、側天井、灯具部位、中央天井、とそれぞれ独立したユニットをつなげて天井を構成する構造になっている。また灯具は光源の反射板を兼ねている。特許文献1では天井板を反射板に兼用し間接照明とすることで灯具部の部品点数の削減と組立工数削減を図っている。一方、特許文献1の光源には蛍光灯が使用されているが、現在家屋や施設では照明装置として、蛍光灯より消費電力が少なく寿命が長いLEDの採用が増えている。また鉄道車両は常時点灯の環境にあるため上記特徴を持ったLEDが光源として適している。
【0005】
しかしLEDは光源のサイズが蛍光灯よりもはるかに小さく、広範囲を照らすためには複数個使用する必要がある。また光の指向性が蛍光灯よりも強く、各光源が粒子として目立ち眩しく感じられるため、そのままでは直接光として使用することができない。よって半透明様のカバーで覆うなどして光を減力、拡散させることが必須となり、部品点数の増加を招く。
【0006】
また特許文献1のように間接光として使用した場合でも、LEDは光の指向性が強い為、反射板の一部分のみが強く光を反射してむらとなり、美観が損なわれると同時に室内全体を均質に照明することが困難である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するための提案であり、LEDを光源とし且つ間接光として使用し、その反射板として、LEDの指向性を減少し光を拡散させ、明るく眩しくなく、且つ美観を持った鉄道車両用天井を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、鉄道車両の天井部分に設けられ、車内を照明する照明構造であって、天井の表面の裏側に、光源となるLEDが車両内の乗客から直視できない位置に設置され、LEDから放射される光を反射し、車内方向に光を向けさせる反射板をLEDの上方に備え、その反射板は天井表面を兼ね、反射面の表面には表面性状Ra0.8~Ra6.3の凹凸が形成されている。表面性状RaとはJIS規格やISO規格で定められている、製品の表面の凹凸を定量的に示す規格であって、ある基準長さの範囲における凹凸の差を平均した値であり、単位はμmである。
【0009】
以上のような本発明によるLEDと反射板を使用すると、反射板の凹凸に当たった指向性の強いLEDからの入射光に対する反射光は、全方向へ拡散反射され、反射板全域が同程度の輝度となる。これにより車内はLEDの強い指向性を感じさせない均質な照明を得ることができる。
【0010】
また反射板の凹凸を具現化する方法は、塗料の吹き付け塗装や凹凸を持った塗料印刷があり、実験の結果、塗料印刷が最も均一に拡散反射した。適切な凹凸の塗料印刷がされた反射板は、吹き付け塗装された表面よりも凹凸が均一であり、より拡散反射しやすく、当発明の目的にかなう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄道車両用の照明として、LEDを光源として使い、蛍光灯を照明として使用するよりも消費電力を押さえ、寿命を長くでき、且つ間接照明として拡散反射をさせることによってLEDの反射光の指向性を減少させ、より眩しくなく均質で明るい車内照明を提供することができる。
【0012】
また実施例で言及するように、従来は灯具部分が天井とは分離されて独立したユニットになっているが、本発明では天井部品と灯具を一体化することにより、部品点数と組立工数の削減になる。
【0013】
更に外観としては、実施例1のように天井全体を反射板とした場合は、天井全部がやさしく発光しているように見え、また実施例2のように天井の一部を反射板とした場合は、反射板が連続することであたかもやさしい光の帯が一直線に線路方向に通ったように見え、いずれもシンプルでハイセンスな照明を得ることができる。よって従来の照明器具を使用した照明装置に比べ、機能、デザイン共に斬新な方向性をもった差別化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
以下添付
図1を参照して本発明の実施例1について説明する。
図1は鉄道車両の天井部分の断面図であり、天井は側天井1、灯具板2、反射板として表面加工した中央天井7、からなり、これが左右に一対として配され車両の天井を構成する。
【0016】
反射板として表面加工した中央天井7は天井中央部を軸に左右対称の形状を成し、反対側の側天井と接続されている。このことにより天井全体が反射板となるように構成されている。
【0017】
側天井1は主にアルミ板等を主材とし、塗装や印刷を施した化粧パネルであり、車体側面から天井に向かって伸延する。
【0018】
側天井1は途中から鋭角を持って曲がり、灯具板2を構成する。灯具板2にはその表面にLEDチップ3が取り付けられている基板4が固定される。LEDチップ3は灯具板に車体軸方向と車体断面方向へ複数個が並べて配置される。
【0019】
側天井1は灯具板2の起点よりもさらに中央に向かって延長されており、ハッチ6を形成する。ハッチ6の先端は、乗客が上方を見上げた時にLEDチップ3が乗客から見えないところまで延長され、先端は上方へ折れ曲がっており、先端断面が乗客から見えないようになっている。当折れはLEDチップ3から反射板として表面加工した中央天井7への入射光を妨げない長さに調整されている。
【0020】
側天井1は上記の鋭角に曲がる起点に回転軸5を持ち、側天井の水平部の延長部であるハッチ6を回転軸5から下方に開くこともできる。ハッチ6が開くことによりLEDチップ3と基板4のメンテナンス及び交換作業の時にアクセスしやすくなる。
【0021】
反射板として表面加工した中央天井7はLEDチップ3からの入射光を反射するため円弧状の曲率が与えられており、反射面は拡散反射をするための表面性状である請求項3の表面性状Ra4.6~Ra5.2が施工されている。
【0022】
反射板として表面加工した中央天井7の一部には空調の為の空気吹き出し口が設けられても良い。
【0023】
次に反射板として表面加工した中央天井7に施工される表面性状の表面凹凸の粗さ別で、入射光の拡散反射の様子にどのような差が生じるか比較する実験を実施した結果を示す。尚、当実験では光源としてLEDに似た指向性を持つハロゲンランプを使用している。
【0024】
実験の模式図を
図3に示す。吹き付け塗装または塗料印刷が施工された反射板を水平に設置し、垂直方向から-30°傾けた固定方向から投光器で反射板に対して光を入射し、反対側の垂直位置0°から水平位置90°まで1°刻みの各角度位置で、その反射板からの反射光の光強度を検出器で計測した。
【0025】
まず基準として、完全拡散反射いわゆるランバート拡散反射特性を持つ標準白色板の反射光強度を測定した。標準白色板は任意の光の入射角度において、反射面の見た目の明るさ(輝度)はどの角度から見ても一定となっていることを特徴とする。
【0026】
水平に設置された標準白色板に向けて、垂直方向から-30°傾けた方向より投光器で反射板に対して光を入射し、反対側の垂直方向からの各角度位置で反射光の強度を計測し、垂直位置0°での光強度を1として各反射角度での光強度を換算した。各反射角度での光強度を示したグラフを
図4に示す。
図4中に破線で示されたものが標準白色板に於ける反射角度と反射光の光強度の関係である。
【0027】
標準白色板の反射光の光強度は反射角度が0°から90°になるにつれて徐々に減少した。標準白色板は反射面の見た目の明るさ(輝度)はどの角度から見ても一定となっていることを特徴とするため、この光強度の特性に近似していると、どの方向から見ても見た目の明るさは均一になる。従ってこの標準白色板の反射特性に近似した反射光強度を呈する表面を持つ表面状態が当特許の目的に適すると考えられる。
【0028】
次に同様に表面性状として以下を施工した反射板の光強度を測定した。
No.1 Ra0.5~Ra0.7(塗料印刷)
No.2 Ra4.6~Ra5.2(塗料印刷)
No.3 Ra6.4~Ra16.7(吹き付け塗装)
(表面性状は表面の粗さが小さいものからNo.1<No.2<No.3と粗さが大きくなる。)
結果を
図4に示す。
【0029】
図4より、No.1は角度30°付近で光強度が過剰に突出しており、他の角度では最も低下している。
【0030】
No.2は0°から30°間は標準白色板に対して光強度は20%ほど減少しているが、30°から90°にかけては標準白色板に近似している。
【0031】
No.3は60°以降の角度では光強度は標準白色板に近似しているとみなせるが、0°から60°にかけては低下している。
【0032】
この結果から、No.1は30°付近が強く反射して輝度にむらがあるが、No.2とNo.3はなだらかに拡散反射していて標準白色板に近い特性であることがわかる。
【0033】
また、No.2のほうがNo.3よりも拡散反射の状態が標準白色板により近似していることがわかる。
【0034】
No.2とNo.3に実際にLED列を光源として反射させた場合の主観評価においては、No.3の表面性状では輝度のむらが目立った。
【0035】
以上よりNo.1とNo.3は輝度のむらが生じた為、このふたつの表面性状の範囲を除外した表面性状Ra0.8~Ra6.3が施工された反射板は、むらのない拡散反射を呈する。よって当表面性状範囲を請求項3とした。
【0036】
以上の形態により、実施例1では、LEDの間接光のやわらかな拡散反射光により、天井部全体があたかも発光しているような美観を得ることができる。
側天井1は途中から鋭角を持って曲がり、灯具板2を構成する。灯具板2にはその表面にLEDチップ3とLEDチップ3が取り付けられている基板4が固定される。LEDチップ3は灯具板2に車体軸方向と車体断面方向へ複数個が並べて配置される。
側天井1は灯具板2の起点よりもさらに車体中央に向かって延長されており、ハッチ6を形成する。ハッチ6の先端は、乗客が上方を見上げた時にLEDチップ3が乗客から見えないところまで延長され、先端は上方へ折れ曲がっており、先端断面が乗客から見えないようになっている。当折れはLEDチップ3から反射板として表面加工した側天井11への入射光を妨げない長さに調整されている。
側天井1は上記の鋭角に曲がる起点に回転軸5を持ち、側天井1の水平部の延長部であるハッチ6を回転軸5から下方に開くこともできる。ハッチ6が開くことによりLEDチップ3と基板4のメンテナンス及び交換作業の時にアクセスしやすくなる。
反射板として表面加工した側天井11はLEDチップ3からの入射光を反射するため円弧状の曲率が与えられており、反射面には拡散反射をするための表面性状が施工されている。
反射板として表面加工した側天井11に施工されている表面性状は実施例1の反射板として表面加工した中央天井7に施工されている表面性状と同じRa4.6~Ra5.2が施工されている。
反射板として表面加工した側天井11の円弧は側天井1と同じ程度の高さまで下降し、最下点で水平に折れ曲がり、さらに上方へ折れ曲がることでキセ8を形成し、乗客が上方を見あげたときに風道10の下端面が見えないように隠す働きを兼ねる。
以上の形態により、実施例2では、天井部中央に風道があり、その両側の線路方向に反射板として表面加工した側天井11が並んでいるため、LEDの間接光のやわらかな拡散反射光による光の帯が一直線に伸びているような美観を得ることができる。