(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080556
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】皮膚外用剤用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20240606BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20240606BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20240606BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240606BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240606BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240606BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240606BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240606BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240606BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K31/07
A61P17/16
A61K31/455
A61K9/08
A61K47/14
A61K47/32
A61K8/37
A61K8/67
A61Q19/00
A61Q19/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022203736
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】高田 紗都子
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝夫
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076DD07F
4C076DD45
4C076DD46
4C076EE09
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF52
4C076FF63
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB04
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
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4C086NA09
4C086ZA89
4C206AA01
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4C206MA83
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA09
4C206ZA89
(57)【要約】
【課題】パルミチン酸レチノールに起因する変臭を抑え、格段に優れた製剤の保存安定性を有するとともに、塗布時の刺激感のない皮膚外用剤用組成物の提供。
【解決手段】
下記成分A、下記成分B、下記成分C並びに下記成分Dを含有し、前記成分Dの含有量が、0.25質量%以上であることを特徴とする皮膚外用剤用組成物とする。
成分A:ニコチン酸および/又はその誘導体
成分B:レチノールおよび/又はその誘導体
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:δ-トコフェロール
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有し、
前記成分Dの含有量が、0.25質量%以上であることを特徴とする皮膚外用剤用組成物。
成分A:ニコチン酸および/又はその誘導体
成分B:レチノールおよび/又はその誘導体
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:δ-トコフェロール
【請求項2】
前記成分Bに対する前記成分Dの含有量比(成分D/成分B)が、0.5~10の範囲を満たすことを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項3】
さらに、下記成分Eを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤用組成物。
成分E:カルボキシビニルポリマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキンケア製剤に求められる主な機能の一つに「抗老化」があり、抗老化作用を発揮する様々な薬剤が提案されている。このような薬剤の中でも、ニコチン酸アミドやパルミチン酸レチノールは、抗老化作用を有する成分として注目を浴びており、両成分を併用する技術の提案が増えてきている(例えば、特許文献1~2を参照)。
【0003】
このように、抗老化作用の発揮を目的にニコチン酸アミドとパルミチン酸レチノールを併用する利点はあるものの、パルミチン酸レチノールは光や空気により酸化され分解し易く、変臭を引き起こすことで製剤の保存安定性が悪化するといった欠点や、塗布時に刺激を感じ易くなるといった欠点がある。そのため、光や空気による酸化の抑制を目的に酸化防止剤が汎用されるが、その種類や量によっては十分に抗酸化作用を発揮できないといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-063076号公報
【特許文献2】特開2021-098655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上記技術に鑑みてされたものであり、パルミチン酸レチノールに起因する変臭を抑え、格段に優れた製剤の保存安定性を有するとともに、塗布時の刺激感のない皮膚外用剤用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有し、前記成分Dの含有量が、0.25質量%以上であることを特徴とする皮膚外用剤用組成物を提供する。
成分A:ニコチン酸および/又はその誘導体
成分B:レチノールおよび/又はその誘導体
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:δ-トコフェロール
【0007】
上記成分Bに対する上記成分Dの含有量比(成分D/成分B)が、0.5~10の範囲を満たすことが好ましい。
【0008】
さらに、下記成分Eを含有することが好ましい。
成分E:カルボマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤用組成物は、上記構成要件を満たすことにより、上記成分Bに起因する変臭を抑えて格段に優れた製剤の保存安定性を維持し続けるとともに、塗布時の刺激感を著しく抑えるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膚外用剤用組成物は、下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有し、前記成分Dの含有量が、0.25質量%以上であることを特徴とする。
成分A:ニコチン酸および/又はその誘導体
成分B:レチノールおよび/又はその誘導体
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:δ-トコフェロール
【0011】
以下、本発明の皮膚外用剤用組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0012】
[成分A]
上記成分Aは、ニコチン酸および/又はその誘導体である。すなわち、上記成分Aは、ニコチン酸およびニコチン酸誘導体の一方又は双方である。本発明では、上記成分Aを用いることにより、優れた抗老化作用を発揮させることができる。
【0013】
具体的な成分Aとしては、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸メチル、ニコチン酸エチルなどが挙げられる。これら成分Aは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記成分Aの中でも、より良好な抗老化作用を発揮させる観点から、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、ニコチン酸および/又はニコチン酸アミドを用いることがより好ましく、ニコチン酸アミドを用いることが最も好ましい。
【0015】
本発明において上記成分Aは、市販品を用いることもできる。上記成分Aの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0016】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Aの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、良好な抗老化作用を発揮させる観点から、組成物100質量%中、1質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~7質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0017】
[成分B]
上記成分Bは、レチノールおよび/又はその誘導体である。すなわち、上記成分Bは、レチノールおよびレチノール酸誘導体の一方又は双方である。本発明では、上記成分Bを用いることにより、優れた抗老化作用を発揮させることができる。
【0018】
具体的な成分Bとしては、例えば、レチノール、パルミチン酸レチノール、水添レチノール、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、リノール酸レチノールなどが挙げられる。これら成分Bは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記成分Bの中でも、より良好な抗老化作用を発揮させる観点からレチノール、パルミチン酸レチノール、水添レチノールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、レチノールおよび/又はパルミチン酸レチノールを用いることがより好ましく、パルミチン酸レチノールを用いることが最も好ましい。
【0020】
本発明において上記成分Bは、市販品を用いることもできる。上記成分Bの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0021】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Bの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、良好な抗老化作用を発揮させる観点から、組成物100質量%中、0.001質量%~1質量%であることが好ましく、0.01質量%~0.5質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0022】
[成分C]
上記成分Cは、非イオン性界面活性剤である。本発明では、上記成分Cを用いることにより、組成物中に上記成分Aと上記成分Bを安定に配合させることができる。
【0023】
上記成分Cとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。これら成分Cは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記成分Cの中でも、上記成分Aと上記成分Bをより安定に配合させる観点から、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0025】
本発明において上記成分Cは、市販品を用いることもできる。上記成分Cの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0026】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Cの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、上記成分Aと上記成分Bをより安定に配合させる観点から、組成物100質量%中、0.5質量%~5質量%であることが好ましく、1質量%~3質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0027】
[成分D]
上記成分Dは、δ-トコフェロールである。上記成分Dを用いることにより、上記成分Bの酸化分解を抑えることで変臭を抑制し、製剤の保存安定性を維持し続けるとともに、塗布時の刺激感を著しく抑えることができる。本発明においては、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロールといった他の構造類似成分よりも格段に優れた効果を発揮させることができる。
【0028】
本発明において上記成分Dは、市販品を用いることもできる。上記成分Dの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0029】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Dの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、上記成分Bに起因する変臭を抑え、製剤の保存安定性を維持し続ける観点、並びに、塗布時の刺激を抑える観点から、組成物100質量%中、0.25質量%~0.8質量%であることが好ましく、0.3質量%~0.6質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0030】
本発明においては、上記成分Bに起因する変臭を抑え、製剤の保存安定性をより一層高める観点、並びに、塗布時の刺激感を著しく低減させる観点から、上記成分Bに対する上記成分Dの含有量比「成分D/成分B」は、0.5~10の範囲を満たし調製することが好ましく、1~7の範囲を満たし調製することがより好ましい。
【0031】
[成分E]
本発明の皮膚外用剤用組成物には、成分Eとして、カルボキシビニルポリマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを更に含有させることが好ましい。本発明では、上記成分Eを用いることにより、塗布時の肌馴染みと延展性を更に高めることができる。
【0032】
上記成分Eは、通常、塩基性物質で中和して用いられる。塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられる。また、塩基性物質の添加量は、上記成分Eを中和するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0033】
本発明において上記成分Eは、市販品を用いることもできる。上記成分Eの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0034】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Eの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、塗布時の肌馴染みと延展性を更に高める観点から、組成物100質量%中、0.01質量%~1質量%であることが好ましく、0.1質量%~0.8質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Eの含有量は、純分に換算した量である。
【0035】
[その他成分]
本発明の皮膚外用剤用組成物には、上記した成分の他に、上記成分Aおよび上記成分B以外の有効成分、上記成分C以外の界面活性剤、油剤、上記成分E以外の増粘剤、多価アルコール、紫外線吸収剤、香料、pH調整剤、皮膜形成剤、キレート剤、低級アルコール、収れん剤、上記成分D以外の酸化防止剤、防腐剤、着色料、植物抽出エキス、植物発酵エキス、精製水などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0036】
本発明の皮膚外用剤用組成物の剤型は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などの様々な剤型へと調製することができる。本発明では、格段に優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点、並びに使用感の観点から、ジェル状、乳液状、クリーム状へと調製することが好ましく、中でも、乳液状、クリーム状といった乳化剤型へと調製することがより好ましい。
【0037】
また、本発明の皮膚外用剤用組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて撹拌する方法などが挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0038】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤用組成物を適用する部位は、特に限定されないが、一例として、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、デコルテ、脇、背中などに用いることができる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0040】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~5および比較例1~3の皮膚外用剤用組成物を常法に準じてクリーム剤型へと調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に併記する。なお、表中の配合量は、全て純分に換算した値である。
【0041】
(試験例1:製剤の保存安定性)
実施例および比較例で得られた各試料を50mL容のガラス製のマヨネーズ瓶に充填後、40℃の恒温槽にて4週間保存し、経過後の「変臭」の有無を確認した。
【0042】
変臭の有無は、マヨネーズ瓶口から直接各試料のにおいを嗅ぎ、酸敗臭がするかしないかを確認し、以下の基準に従って評価した。
【0043】
<変臭の有無の評価基準>
○(良好):変臭は一切感じ取れない
△(不十分):僅かに酸敗臭が感じ取れる
×(不良):明らかに酸敗臭が感じ取れる
【0044】
(試験例2:塗布時の評価)
実施例および比較例で得られた各試料0.1gを手の甲へ塗布して使用試験を実施し、塗布時の「刺激感」について官能評価を行い、下記1点~5点の評価点に従ってスコア付けをした。各評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価結果から平均点を算出して以下の判定基準に従って決定した。なお、「刺激感」の評価は、チクチク、ヒリヒリするような刺激がないものほど高得点とした。
【0045】
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0046】
<判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0047】
【0048】
【0049】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた本発明の皮膚外用剤用組成物は、各比較例で得られたものと対比して、上記成分Bに起因する変臭が認められず、製剤の保存安定性を持続し続けていることが分かる。また、塗布時の刺激がなく安全なものであることが分かる。即ち、本発明の皮膚外用剤用組成物は、上記構成要件を満たすことにより、格段に優れた効果を存分に発揮できるものであると言える。