(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080569
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】タッチセンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240606BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240606BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/041 495
G06F3/044 120
H05K3/06 F
H05K3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054175
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】202211533312.X
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】リン チアジュイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ウェイチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ロンユン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジュンフア
【テーマコード(参考)】
5E339
【Fターム(参考)】
5E339AA01
5E339AA02
5E339AB02
5E339AD01
5E339BB01
5E339BC01
5E339BE13
5E339CC02
5E339CD01
5E339CE13
5E339CE19
5E339CF07
5E339EE10
5E339GG10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】周辺回路の材料に銀ペーストを使用し、柔軟性と狭ベゼル設計の要求を満たし、周辺回路の安定性を向上させるタッチセンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】可視領域及び周辺領域を有するタッチセンサは、基板110、金属ナノワイヤ層120、過渡絶縁部140及び銀層130を含む。金属ナノワイヤ層は、基板上に配置され、可視領域に相当する複数の電極部と、周辺領域に相当する複数の配線部Tと、を画定し、隣り合う配線部は、スペース領域SRによって間隔を空けて配置されている。過渡絶縁部は、スペース領域に配置され、各配線部の側壁125に隣接して接続され、隣り合う配線部にそれぞれ接続された2つの過渡絶縁部の間に間隙Sがある。銀層は、配線部の上面に配置され、銀層と配線部は共にタッチセンサの複数の周辺トレースを構成する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域とを有するタッチセンサであって、
前記タッチセンサは、
基板と、金属ナノワイヤ層と、過渡絶縁部と、銀層と、を備え、
前記金属ナノワイヤ層は前記基板の主表面に配置され、前記金属ナノワイヤ層は前記可視領域に相当する複数の電極部を画定すると共に、前記周辺領域に相当する複数の配線部を画定し、前記配線部は前記電極部にそれぞれ接続され間隔を空けて配置され、前記配線部のうち隣り合う2つの配線部は、スペース領域によって間隔を空けて配置されており、
前記過渡絶縁部は前記スペース領域に配置され、前記過渡絶縁部は各配線部の側壁に隣接して接続され、前記配線部のうち隣り合う2つの配線部に隣接してそれぞれ接続された2つの前記過渡絶縁部の間に間隙があり、及び、
前記銀層は前記配線部上に配置され前記配線部の上面に接触しており、前記銀層と前記配線部とが共に前記タッチセンサの複数の周辺トレースを構成する、
タッチセンサ。
【請求項2】
前記過渡絶縁部が複数の孔を有する、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記スペース領域に配置された絶縁部をさらに備え、前記過渡絶縁部は前記絶縁部の上面に配置され前記絶縁部の上面と接触している、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記絶縁部の前記上面の表面粗さが、前記過渡絶縁部の上面の表面粗さよりも大きい、請求項3に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記金属ナノワイヤ層と前記過渡絶縁部がマトリックスを含み、前記金属ナノワイヤ層は前記マトリックス中に分布する複数の金属ナノワイヤを含む、請求項3に記載のタッチセンサ。
【請求項6】
前記過渡絶縁部の幅が0.25μm以上3.5μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項7】
前記過渡絶縁部が前記銀層の側壁まで延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項8】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域とを有するタッチセンサの製造方法であって、
前記製造方法は、
基板の主表面上に前記可視領域及び前記周辺領域に相当する金属ナノワイヤ材料層を形成することと、
前記金属ナノワイヤ材料層上に前記周辺領域に相当する銀材料層を形成することと、
前記金属ナノワイヤ材料層及び前記銀材料層を覆うフォトレジスト層を形成することと、
前記フォトレジスト層をパターン化するための露光工程及び現像工程を行うことと、
ここで、パターン化された前記フォトレジスト層は前記周辺領域に相当する配線パターンを画定するものであり、
前記配線パターンを介して前記銀材料層をエッチングする第1エッチング工程を行い、それによって銀配線構造を形成することと、
前記配線パターンを介して前記周辺領域に相当する残留樹脂の少なくとも一部を除去する表面処理工程を行い、前記残留樹脂は第1エッチング工程を経た前記銀材料層によって残され、前記周辺領域に相当する前記金属ナノワイヤ材料層の一部を除去することと、
前記配線パターンを介して前記金属ナノワイヤ材料層をエッチングする第2エッチング工程を行い、それによって複数の配線部と、隣り合う2つの配線部の間のスペース領域と、スペース領域内にあり、前記配線部のそれぞれの側壁に隣接して接続される過渡絶縁部と、を形成することと、並びに、
前記フォトレジスト層を除去することと、を含む、
タッチセンサの製造方法。
【請求項9】
前記銀配線構造の幅が前記配線パターンの幅よりも小さくなるように前記第1エッチング工程を行う、請求項8に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項10】
前記表面処理工程は、前記過渡絶縁部の上面と前記配線部の上面とが同一平面になるように、前記第1エッチング工程を経た前記銀材料層が残した前記残留樹脂を完全に除去する、請求項8に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項11】
前記表面処理工程は、前記過渡絶縁部の上面が前記配線部の上面よりも高く、前記過渡絶縁部が前記銀配線構造の側壁まで延在するように、前記第1エッチング工程を経た前記銀材料層が残した前記残留樹脂を部分的に除去する、請求項8に記載のタッチセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチセンサ及びタッチセンサの製造方法に関する。
【0002】
<関連技術の説明>
近年、携帯電話、ノートパソコン、衛星ナビゲーションシステム、デジタルオーディオビジュアルプレーヤーなどの携帯電子製品において、ユーザーと電子機器との間の情報伝達経路として、タッチセンサが広く使われている。
【0003】
狭ベゼルの電子製品の需要が徐々に高まる中、業界では電子製品の曲げやすさを向上させ、電子製品のベゼルを小さくすることで、ユーザーのニーズに応えていこうとしている。一般的に、タッチセンサには、可視領域に配置されたタッチ電極と、周辺領域に配置された周辺回路を含んでおり、タッチパネルの曲げ要求から、現在、周辺回路の材料として銀ペーストが好んで使用されている。銀ペースト材料は、印刷工程を行うことで銀ペースト材料から銀層を形成し、その銀層をパターニングすることで周辺領域に周辺回路を形成することが一般的である。また、周辺領域に設計された周辺回路は、狭ベゼル製品へのタッチパネルの適用に影響を与える。そのため、周辺回路の材料に銀ペーストを使用することを前提として、柔軟性と狭ベゼル設計の要求を満たし、周辺回路の安定性を向上させるタッチセンサをどのように提供するかは、現在、検討に値する。
【0004】
<概要>
本開示のいくつかの実施形態によれば、可視領域と可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域とを有するタッチセンサは、基板、金属ナノワイヤ層、過渡絶縁部(transitional insulating portion)、及び銀層を備える。金属ナノワイヤ層は、基板の主表面に配置され、金属ナノワイヤ層は可視領域に相当する複数の電極部を画定すると共に、周辺領域に相当する複数の配線部を画定し、配線部は電極部にそれぞれ接続され間隔を空けて配置され、配線部のうち隣り合う2つの配線部は、スペース領域(間隔を空けた領域、spaced region)によって間隔を空けて配置されている。過渡絶縁部はスペース領域に配置され、当該過渡絶縁部は、各配線部の側壁に隣接して接続され、配線部のうち隣り合う2つの配線部に隣接してそれぞれ接続された2つの過渡絶縁部の間に間隙がある。銀層は配線部上に配置され当該配線部の上面に接触しており、銀層と配線部とが共にタッチセンサの複数の周辺トレースを構成する。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態では、過渡絶縁部は複数の孔を有する。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態では、タッチセンサは、スペース領域に配置された絶縁部をさらに備え、過渡絶縁部は絶縁部の上面に配置され、絶縁部の上面と接触している。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態では、絶縁部の上面の表面粗さは、過渡絶縁部の上面の表面粗さよりも大きい。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態では、絶縁部と過渡絶縁部は共に階段状構造を構成する。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態では、過渡絶縁部の材料は絶縁部の材料と同じであり、絶縁部は複数の孔を有する。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ層と過渡絶縁部とがマトリックスを含み、金属ナノワイヤ層はマトリックス中に分布する複数の金属ナノワイヤを含む。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態では、過渡絶縁部の幅は0.25μm以上3.5μm以下である。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態では、過渡絶縁部は銀層の側壁まで延在している。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態では、タッチセンサは、間隙に充填され、金属ナノワイヤ層、過渡絶縁部、及び銀層を覆う保護層をさらに含む。
【0014】
本開示の他のいくつかの実施形態によれば、可視領域と、可視領域の少なくとも一方の側に隣り合う周辺領域を有するタッチセンサの製造方法は、基板の主表面上に可視領域及び周辺領域に相当する金属ナノワイヤ材料層を形成することと;金属ナノワイヤ材料層上に周辺領域に相当する銀材料層を形成することと;金属ナノワイヤ材料層及び銀材料層を覆うフォトレジスト層を形成することと;フォトレジスト層をパターン化するための露光工程及び現像工程を行うことと、ここで、パターン化されたフォトレジスト層は周辺領域に相当する配線パターンを画定するものであり;配線パターンを介して銀材料層をエッチングする第1エッチング工程を行い、それによって銀配線構造を形成することと;配線パターンを介して周辺領域に相当する残留樹脂の少なくとも一部を除去する表面処理工程を行い、残留樹脂は第1エッチング工程を経た銀材料層によって残され、周辺領域に相当する金属ナノワイヤ材料層の一部を除去することと;配線パターンを介して金属ナノワイヤ材料層をエッチングする第2エッチング工程を行い、それによって複数の配線部と、隣り合う2つの配線部の間のスペース領域と、スペース領域内にあり、配線部のそれぞれの側壁に隣接して接続される過渡絶縁部と、を形成することと、並びに;フォトレジスト層を除去することと、を含む。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態では、銀配線構造の幅が配線パターンの幅よりも小さくなるように第1エッチング工程を行う。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態では、表面処理工程は、過渡絶縁部の上面と配線部の上面とが同一平面になるように、第1エッチング工程を経た銀材料層が残した残留樹脂を完全に除去する。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態では、表面処理工程は、過渡絶縁部の上面が配線部の上面よりも高くなり、過渡絶縁部が銀配線構造の側壁まで延びるように、第1エッチング工程を経た銀材料層によって残された残留樹脂を部分的に除去する。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層は、マトリックスと、マトリックス中に分布する複数の金属ナノワイヤとを含み、表面処理工程は、パターン化されたフォトレジスト層の垂直投影領域に位置しない金属ナノワイヤ材料層のマトリックスを完全に除去し、これにより金属ナノワイヤの間に基板が露出されるようにする。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態では、過渡絶縁部は基板の主表面まで延在している。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層は、マトリックスと、マトリックス中に分布する複数の金属ナノワイヤとを含み、表面処理工程は、パターン化されたフォトレジスト層の垂直投影領域に位置しない金属ナノワイヤ材料層のマトリックスを部分的に除去し、除去されないマトリックスが第2エッチング工程中に絶縁部を形成するようにする。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態では、絶縁部が複数の孔を有するように第2エッチング工程が行われる。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態では、表面処理工程は、化学洗浄工程とアルゴンプラズマ処理工程とを順次含む。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態では、アルゴンプラズマ処理工程は、配線パターンをマスクとして、基板の主表面に垂直な方向に行われる。
【0024】
本開示の前述の実施形態によれば、本開示のタッチセンサの設計は、タッチセンサの電気的効果を低下させることなく、小さな線幅と線間隔で周辺トレースを形成するのに役立つ。電極部と配線部を一体的に形成して、タッチ電極と周辺トレースとの電気的接続を直接形成することにより、タッチセンサ用の追加の重複構造を設計する必要がない。このため、周辺領域に相当する重複構造が占める領域を節約でき、重複公差が発生しないため、タッチセンサの狭ベゼル設計を実現する上で有益である。また、過渡絶縁部の設計により、配線部と銀層の重なりによって形成される周辺トレースをより安定的に提供することができる。さらに、本開示のタッチセンサの積層構造設計に基づき、タッチセンサの製造工程において、1回の露光工程及び現像工程でタッチ電極と周辺トレースを一度に形成することにより、エッチング中の銀材料層のサイドエッチング特性を考慮して、適切な幅のパターン化されたフォトレジスト層で銀材料層をエッチングし、エッチング工程後に銀材料層に残った残留樹脂を除去することにより、製造工程のステップを減らし、コストを削減し、エッチング精度を向上させて、線幅と線間隔の小さい周辺トレースの形成を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示は、以下の添付図面を参照して、以下の実施形態の詳細な説明を読むことによって、より完全に理解することができる。
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサを示す概略部分平面図である。
【
図1B】線A-A′に沿って切断された
図1Aのタッチセンサを図示する概略断面図である。
【
図1C】
図1Bのタッチセンサの領域R1を示す部分拡大図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3A】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3B】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3C】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3D】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3E】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3F】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3G】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図3H】
図1Bのタッチセンサの製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、
図1Bのタッチセンサの領域R2の集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)画像である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、
図1Bのタッチセンサの領域R2の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図6A】本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサの概略断面図であり、断面位置は、
図1Aに示す線A-A′に沿って切断した位置に対応する。
【
図6B】本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサの概略断面図であり、断面位置は、
図1Aに示す線A-A′に沿って切断した位置に対応する。
【
図6C】本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサの概略断面図であり、断面位置は、
図1Aに示す線A-A′に沿って切断した位置に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本開示の実施形態について詳細に説明し、その例を添付の図面に示す。しかし、これらの詳細は、本開示を制限することを意図するものではないことを理解されたい。また、読み手の便宜を図るため、図面中の各要素の大きさは実際の縮尺に合わせて図示していない。本明細書では、図に示すように、ある要素と別の要素との関係を表すために、「下(lower)」や「底(bottom)」、「上(upper)」や「上(top)」などの相対的な用語を使用できることを理解されたい。相対的な用語は、図に示されているもの以外のデバイスの異なる方向を含むことを意図していることを理解する必要がある。
【0027】
図1A~
図1Cを参照すると、
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100を示す概略部分平面図であり、
図1Bは、線A-A′に沿って切断された
図1Aのタッチセンサ100を示す概略断面図であり、
図1Cは、
図1Bのタッチセンサ100の領域R1を示す部分拡大図である。タッチセンサ100は、基板110、金属ナノワイヤ層120、銀層130、及び過渡絶縁部140を含む。いくつかの実施形態において、タッチセンサ100は、可視領域VA及び可視領域VAの少なくとも一方の側に配置された周辺領域PAを有する。基板110は、金属ナノワイヤ層120、銀層130、及び過渡絶縁部140を運ぶように構成された主表面111を有する。いくつかの実施形態において、基板110は、例えば、硬質透明基板又は可撓性透明基板であってもよく、基板110の材料は、ガラス、アクリル、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無色ポリイミド、又はそれらの組み合わせなどの透明材料を含むことができるが、これらに限定されない。
【0028】
金属ナノワイヤ層120は、基板110の主表面111上に配置され、可視領域VAと周辺領域PAに相当する。金属ナノワイヤ層120は、可視領域VAに相当する複数の電極部Eを画定する。すなわち、電極部Eは、少なくともタッチセンサ100のタッチ電極ETを構成することができる。いくつかの実施形態において、電極部Eは、基板110上に配置された片面単層、両面単層、又は片面二層構造であってもよい。
図1Aに示す実施形態では、電極部Eは、基板110の片面(側面)に配置された単層電極構造の一例であり、複数の電極部Eが非インターレース状に配置されている。例えば、電極部Eは、第1方向D1に沿って延在し、第2方向D2に沿って間隔を空けて配置された帯状の電極であってもよく、第1方向D1は、第2方向D2に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態において、各電極部Eは、並列に配置され接続された複数の電極線Lを含み得る。例えば、
図1Aに示す実施形態では、各電極部Eは、並列に配置され接続された3本の電極線Lを含む。
【0029】
金属ナノワイヤ層120は、周辺領域PAに相当する複数の配線部Tを画定しており、配線部Tはそれぞれ相当する電極部Eを接続し、隣り合う2つの配線部Tはスペース領域SRによって間隔を空けて配置されている。金属ナノワイヤ層120の詳細な構造的特徴について、
図1Cに示すように、金属ナノワイヤ層120は、マトリックスMと、マトリックスMに分布する複数の金属ナノワイヤSNWとを含んでもよく、マトリックスMは、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル材料を含んでもよく、金属ナノワイヤSNWは、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。銀層130は、基板110の主表面111上に配置され、配線部Tに接触して積層されている。いくつかの実施形態において、銀層130は、配線部Tの上面TS上に接触して積層され、タッチセンサ100の複数の周辺トレースPTを形成している。換言すると、本開示の周辺トレースPTは、金属ナノワイヤ層120が基板110の比較的近くに配置され、銀層130が金属ナノワイヤ層120の基板110とは反対側の面に積層された二層構造を有する。いくつかの実施形態において、銀層130は配線部Tに完全に重なってもよい。すなわち、基板110上の銀層130の垂直投影が、基板110上の配線部Tの垂直投影と完全に重なってもよい。
【0030】
上記の金属ナノワイヤ層120と銀層130の構成に基づき、電極部Eと配線部Tを一体的に形成することで、タッチ電極ETと周辺トレースPTとの電気的接続を直接的に形成することができる。したがって、タッチ電極ETと周辺トレースPTとの電気的接触を実現するための追加の重複構造の設計を必要とせず、周辺領域PAに相当する重複構造が占める領域を節約でき、重複公差が発生しないため、タッチセンサ100の狭ベゼル要件を満たすのに有益である。また、周辺トレースPTは、金属ナノワイヤ層120上に銀層130が重なることにより、周辺トレースPTのトレース抵抗が低減する。補足すると、周辺トレースPTは互いに絶縁され、間隔を空けて配置されるように設計されているため、本開示の銀層130は配線部Tの上面TSにのみ配線部Tと重なるように配置され、これにより銀層130の側壁133と配線部Tの側壁125とが互いに一列に並ぶように設計されている。換言すると、配線部T上に銀層130を積層した場合、配線部Tの側壁125を銀層130が覆わないため、周辺トレースPTの線幅Wの拡大を防ぐことができる。他の視点(例えば上から)から見た場合、銀層130と配線部Tは実質的に同じパターンを有する。
【0031】
本開示のタッチセンサ100の製造方法は、1回のマスクエッチング工程を含む。すなわち、周辺領域PAと可視領域VAとが同一のフォトレジスト層(マスク)を介して加工(パターン化)され、周辺領域PAに同一のフォトレジスト層を介して金属ナノワイヤ層120及び銀層130が形成される。したがって、周辺領域PAに位置する二層構造(すなわち、金属ナノワイヤ層120上に銀層130が積層された構造)の製造工程では、エッチング時の銀材料層(すなわち、銀層130を準備するために使用される材料)のサイドエッチング特性を考慮して、比較的幅の広いパターン化されたフォトレジスト層を用いて銀材料層をエッチングし、さらに周辺領域PAにおいて、エッチング工程後に二層構造の上層の銀材料層が残した残留樹脂を除去する表面処理工程が行われると(詳細は以下の段落を参照)、本開示のタッチセンサ100は、下層の金属ナノワイヤ材料層(すなわち、金属ナノワイヤ層120を準備するために使用される材料)によって形成される配線部Tの側壁125に制御された構造的特徴を備えることになる。より詳細には、本開示のタッチセンサ100では、隣り合う2つの配線部Tが、スペース領域SRを介して間隔を空けて配置されており、タッチセンサ100は、スペース領域SR内に位置し、配線部Tのそれぞれの側壁125に隣接する過渡絶縁部140を有し、隣り合う2つの配線部Tに隣接する過渡絶縁部140の間に間隙Sがある。すなわち、間隙Sは、同じスペース領域SR内に位置する隣り合う過渡絶縁部140の間にある。本実施形態では、過渡絶縁部140の設計により、銀層130上に金属ナノワイヤ層120を積層して形成された周辺トレースPTをより安定的に提供することができる。このため、タッチセンサ100が曲げ等の外力を受けても二層構造が剥がれることがなく、銀層130のベースとしてより良いものを提供することができる。
【0032】
図1Cに示すように、過渡絶縁部140は金属ナノワイヤ層120と同じマトリックスMを含んでもよく、過渡絶縁部140は複数の孔O1(第1孔O1とも呼ぶ)を備えてもよい。過渡絶縁部140の理由及び関連する構造的特徴については、以下の段落でさらに説明する。いくつかの実施形態では、タッチセンサ100は、スペース領域SRに配置された絶縁部150をさらに含んでもよい。絶縁部150は、隣り合う配線部Tの側壁125に接触している。過渡絶縁部140は、絶縁部150の上面151上に接触して配置されているため、絶縁部150の上面151は、過渡絶縁部140の上面141よりも低くなっている。絶縁部150はマトリックスMを含んでもよく、又は、絶縁部150の材料は過渡絶縁部140の材料と同じであってもよく、絶縁部150は複数の孔O2(第2孔O2とも呼ぶ)を有してもよい。絶縁部150の理由及び関連する構造的特徴については、以下の段落でさらに説明する。
【0033】
本開示のタッチセンサ100の過渡絶縁部140の構造的特徴は、製造工程の説明を通じて以下にさらに説明される。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100の製造方法を示すフローチャートを示す
図2を参照する。以下の説明では、
図3A~
図3Hに示すステップを例に挙げて、タッチセンサ100の製造方法を説明するが、
図3A~
図3Hは
図1A~
図1Cのタッチセンサ100の製造方法を異なるステップで示した概略断面図である。タッチセンサ100の製造方法は、ステップS10~ステップS18を含み、ステップS10~ステップS18を順次行ってもよい。
【0035】
まず、
図3Aを参照する。ステップS10では、基板110の主表面111上に金属ナノワイヤ材料層220を形成するが、この金属ナノワイヤ材料層220は、可視領域VAと周辺領域PAに相当する。具体的には、スクリーン印刷、ノズルコーティング、ローラーコーティングなどの工程によって、少なくとも金属ナノワイヤとマトリックスを含む分散液又はスラリーを基板110の主表面111上に形成することができ、その後、分散液又はスラリーを硬化又は乾燥させて、基板110の主表面111に配置された金属ナノワイヤ材料層220を形成する。いくつかの実施形態において、基板110の主表面111にコーティングされた分散液又はスラリーが連続的に供給されるように、ロールツーロール工程が行われてもよい。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ材料層220を形成する前に、基板110の主表面111上に前処理を行ってもよい。例えば、基板110の主表面111に表面改質工程(例えば、表面硬化改質工程)を行ったり、機能的コーティング層(例:ハードコート層、接着層、樹脂層)を追加コーティングしたりすることで、基板110と他の層との密着性を高める。いくつかの実施形態において、表面抵抗の要件が30Ω/□のタッチセンサ100の場合、金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1は40nm以上50nm以下に設計することができる。具体的には、金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1が50nmよりも厚い場合、金属ナノワイヤ材料層220の光学特性(例えば、黄色度、Lab色空間のb
*値も指す)が要件を満たすことが困難になる可能性があり、金属ナノワイヤ材料層220とその後に配置される銀材料層230との間の高い接触抵抗につながる可能性がある。金属ナノワイヤ材料層220の厚さH1が40nm未満の場合、タッチセンサ100の紫外線対策機能が不十分となるおそれがある。
【0036】
続いて、引き続き
図3Aを参照する。ステップS11ではスクリーン印刷工程を行い、金属ナノワイヤ材料層220上に銀材料層230を形成する。この銀材料層230は周辺領域PAに相当する。具体的には、周辺領域PAに相当する銀材料層230が周辺領域PAに相当する金属ナノワイヤ材料層220を覆うようにスクリーン印刷工程によって基板110上に銀ペースト材料を形成し、その後、銀ペースト材料を硬化又は乾燥させて銀材料層230を形成することができる。いくつかの実施形態において、銀材料層230の厚さH2を400nm以上600nm以下に制御することができる。そのため、厚さH2が過度に薄いことによる全工程後の銀材料層230の剥離の可能性を低減することができる。また、厚さH2が過度に大きいために、その後のエッチング工程後に銀材料層230が残留樹脂を残留させすぎて、その後、金属ナノワイヤ材料層220をエッチングする際に、金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度が低くなり、周辺トレースPTの線幅W1と線間隔Dを小さくすることができず、タッチセンサ100の狭ベゼル要件の実現に困難を残すことを防止できる。
【0037】
次に、
図3Bを参照する。ステップS12では、基板110の主表面111上に金属ナノワイヤ材料層220と銀材料層230を完全に覆うフォトレジスト層240を形成する。続いて
図3Cを参照する。ステップS13では、フォトレジスト層240をパターン化するための露光工程及び現像工程を行う。具体的には、金属ナノワイヤ材料層220及び銀材料層230上に形成する所望のパターンを、1回の露光工程及び現像工程によって単一のフォトレジスト層240に一度に形成することで、製造工程のステップとコストを削減する。いくつかの実施形態において、フォトレジスト層240は、可視領域VAに相当する電極パターン(不図示)と、周辺領域PAに相当する配線パターンTPを画定する。パターン化されたフォトレジスト層240の電極パターンと配線パターンTPは、その後のエッチング工程で金属ナノワイヤ材料層220と銀材料層230に転写されて、電極部E及び配線部Tを含む金属ナノワイヤ層120と、その後のフォトレジスト層240の除去後に配線部Tに積層されて接触する銀層130を形成することができる(具体的な構成については、
図1Bを参照)。
【0038】
続いて
図3Dを参照する。ステップS14では、周辺領域PAに相当する銀材料層230に所望のパターンがパターン化されるように、第1エッチング工程が行われる。具体的には、配線パターンTPを介して銀材料層230をパターン化し、配線パターンTPのパターンと合致するパターンを設けることにより、複数の銀配線構造135を含む銀層130を形成することができる。
図3Dに示すように、第1エッチング工程の後、銀配線構造135の側壁133は、配線パターンTPの側壁TPSから凹んでいる。いくつかの実施形態では、銀配線構造135の側壁133の凹みの深さ(すなわち、銀配線構造135の側壁133と配線パターンTPの側壁TPSとの間の水平距離d)は、0.25μm以上、3.5μm以下とすることができる。すなわち、第1エッチング工程による銀材料層230のサイドエッチングの程度は、厳しすぎず、なおかつ制御可能である。いくつかの実施形態では、銀材料層230をエッチングするためのエッチング液の主成分は塩化第二鉄を含んでもよく、これは、銀材料層230の下の金属ナノワイヤ材料層220をエッチングすることなく、銀材料層230を選択的にエッチングすることができる。いくつかの実施形態では、銀材料層230の第1エッチング工程のエッチング深さは、例えば時間の制御によって調整することができる。
【0039】
特筆すべきは、
図3Dに示すように、銀材料層230をエッチングした後、通常、エッチング領域Qには樹脂などの残留物250が残存することである。残留物250が後続の金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度に影響を与え、結果として周辺トレースPT間の線幅W及び線間隔Dが要件を満たすように効果的に縮小できなくなることを防ぐために、いくつかの実施形態では、ステップS15を行うことができる。
図3Eを参照する。配線パターンTPを介してパターン化された銀材料層230(銀層130)に前処理を行うための化学洗浄工程が行われる。より具体的には、周辺領域PAに相当する第1エッチング工程を経た銀材料層230が残した残留物250が最初に除去される。概して、銀材料層230の第1エッチング工程後にエッチング領域Qに残された残留物250の厚さH3(
図3D参照)は、銀材料層230の初期厚さH2(
図3A参照)と関連している。一般に、銀材料層230の第1エッチング工程後にエッチング領域Qに残された残留物250の厚さH3は、銀材料層230の初期厚さH2の約20%である。したがって、上述のように、銀材料層230の厚さH2が大きすぎるために、銀材料層230がその後のエッチング工程後に残留物250を残しすぎることを防止するために、銀材料層230の厚さH2を600nm以下に制御する。いくつかの実施形態では、化学洗浄工程において、約0.2MPaのシャワーヘッド圧力、約45℃の環境温度で約40秒間、樹脂を除去できる化学洗浄剤によって銀材料層230の表面処理が行われる。
【0040】
図3Eに示すように、化学洗浄工程後、エッチング領域Qの残留物250を大幅に除去することができる。しかし、化学洗浄工程では化学反応によって残留物250を除去するため、化学平衡に達した後に残留物250を除去することができない。したがって、エッチング領域Qには除去できない残留物250が残っている場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、銀材料層230が約1.5μmの厚さH2で形成されている場合、ステップS14の第1エッチング工程の後、エッチング領域Qに残った残留物250の厚さH3は約300nmであり(
図3D)、ステップS15の化学洗浄工程の後、エッチング領域Qに残った残留物250の厚さは約50nmに減少し得る(
図3E)。
【0041】
次に、残留物250をより完全に除去して金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度を向上させるために、本方法はステップS16に進む。
図3Fを参照する。配線パターンTPを介してパターン化された銀材料層230をさらに処理するために、アルゴンプラズマ処理工程が行われる。より具体的には、第1エッチング工程を経た銀材料層230が残した残留物250を完全に除去されるように、周辺領域PAのエッチング領域Qの残留物250に対してアルゴンプラズマ処理工程が行われる。アルゴンプラズマ処理工程は非選択的であるため、処理環境にさらされたすべての表面が物理的に除去される。その結果、残留物250を完全に除去することができる。別の観点からは、配線パターンTPをマスクとして基板110の主表面111に垂直な方向D3にアルゴンプラズマ処理を行うため、配線パターンTPの垂直投影領域に位置しない残留物250を完全に除去することができる。注目すべきは、配線パターンTPをマスクとして基板110の主表面111に垂直な方向D3にアルゴンプラズマ処理が行われるが、銀配線構造135の側壁133上に残された残留物250は、化学洗浄工程により銀配線構造135の側壁133に残された残留物が既に薄くなっており(例:50nm)、また、銀配線構造135の側壁133に残った残留物250は、わずか0.25μmから3.5μmの厚さでアルゴンプラズマ処理工程の処理範囲の境界に隣接しているため、アルゴンプラズマ処理工程で完全に除去することができる。すなわち、基板110の主表面111に垂直な方向D3において、配線パターンTPの垂直投影領域に位置するが、銀配線構造135に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220も、残留物250の除去により露出する。
【0042】
ステップS16において、アルゴンプラズマ処理工程は、その後の第2エッチング工程を容易にするために、周辺領域PAに位置する金属ナノワイヤ材料層220の一部(例えば、パターン化されたフォトレジスト層240の垂直投影領域に位置しない金属ナノワイヤ材料層220の上部)をさらに除去する。一方、アルゴンプラズマ処理工程は、周辺領域PAの残留物250の除去に加えて、電極パターン(不図示)を介して可視領域VAの金属ナノワイヤ材料層220の一部も除去する。アルゴンプラズマ処理工程によって除去されるのは、金属ナノワイヤ材料層220中のマトリックスだけであることを理解すべきである。したがって、アルゴンプラズマ処理工程の後、
図3Fに示すように、金属ナノワイヤ材料層220の金属ナノワイヤSNWが可視領域VA(不図示)と周辺領域PAに露出していることがわかる。いくつかの実施形態において、銀材料層230によって残された残留物250に対してアルゴンプラズマ処理工程が行われ、アルゴンプラズマ処理工程は、最小真空度が約20mtorr、動作真空度が約200mtorr、出力が約16kW、ロールツーロール工程における基板110の移動速度が2m/分、アルゴン流量が2000sccm(標準立方センチメートル/分)、酸素流量が3000sccmのアルゴンプラズマによって行われる。
【0043】
概して、
図3E及び
図3Fにおいて、タッチセンサ100は、化学洗浄工程(ステップS15)及びアルゴンプラズマ処理工程(ステップS16)を含む表面処理工程を受けて、第1エッチング工程を経た銀材料層230によって残された残留物250を少なくとも部分的に除去し、残留物250は、
図3Fに示された実施形態において完全に除去される。補足すると、化学洗浄工程及びアルゴンプラズマ処理工程は、実際の製造工程におけるエッチング精度の要求に応じて、選択的に調整又は組み合わせることができる。特筆すべきは、単一のアルゴンプラズマ処理工程は、厚さH3(
図3Dを参照)が約100nmの残留物250を除去できることである。したがって、化学洗浄工程とアルゴンプラズマ処理工程をどの順番で組み合わせても、残留物250の厚さH3が約100nmのままであれば、アルゴンプラズマ処理工程によって残留物250を完全に除去することができる。さらに、いくつかの実施形態において、ステップS16のアルゴンプラズマ処理工程によってのみ処理するような表面処理工程を設計することもできる。
【0044】
次に、
図3Gを参照する。ステップS17では、第2エッチング工程を行い、周辺領域PAと可視領域VAに相当する金属ナノワイヤ材料層220をパターン化する。第2エッチング工程によって除去されるのは、マトリックスMの代わりに金属ナノワイヤ材料層220の金属ナノワイヤSNWだけであることを理解すべきである。したがって、第2エッチング工程は、マトリックスMに影響を与えることなく、エッチング領域Qの金属ナノワイヤ材料層220の金属ナノワイヤSNWを完全に除去する。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ材料層220をエッチングするためのエッチング溶液の主成分は、塩化第二鉄を含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ材料層220の第1エッチング工程のエッチング深さは、例えば時間の制御によって調整することができる。また、エッチング工程中の金属ナノワイヤ材料層220のサイドエッチング特性に基づいて、エッチング液は、配線パターンTPの垂直投影領域に位置しているが銀層130に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220を除去する。したがって、第2エッチング工程中に、配線パターンTPの垂直投影領域に位置しておらず露出している金属ナノワイヤSNWが除去され;配線パターンTPの垂直投影領域に位置しておらずマトリックスMに位置している金属ナノワイヤSNWが除去され;配線パターンTPの垂直投影領域に位置し、銀層130に覆われておらず、マトリックスMに位置している金属ナノワイヤSNWが除去され;銀層130に覆われている金属ナノワイヤSNWは除去されない。このようにして、第2エッチング工程により、スペース領域SRによって隣り合う2つの配線部Tを分離でき、導電性を有し互いに絶縁された複数の配線部Tを形成することができる。また、第2エッチング工程により、スペース領域SRにおいて、配線部Tの側壁125に隣接する過渡絶縁部140を形成することができ、隣り合う2つの配線部Tに隣接する過渡絶縁部140の間に間隙Sがある。すなわち、スペース領域SRの隣接する過渡絶縁部140の間に、間隙Sがある。配線部Tについては、第2エッチング工程後も配線部TにはマトリックスMとマトリックスMに位置する金属ナノワイヤSNW(
図1C参照)が含まれているため、配線部Tは電気的機能を維持することができる。また、エッチング工程における金属ナノワイヤ材料層220のサイドエッチング特性から、第2エッチング工程によって形成される配線部Tの幅W3は配線パターンTPの幅W1より小さくなり、配線部Tの幅W3は銀配線構造135の幅W2とほぼ等しくなる。すなわち、配線部Tの側壁125と銀層130の側壁133とが一直線上に並んでおり、配線部Tの側壁125は配線パターンTPの側壁TPSから0.25μm~3.5μm凹んでいる。
【0045】
また、過渡絶縁部140については、配線パターンTPの垂直投影領域に位置しているが銀層130に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220によって過渡絶縁部140が形成されており、そのような位置にある金属ナノワイヤ材料層220の金属ナノワイヤSNWは第2エッチング工程で除去されるため、過渡絶縁部140にはマトリックスMは含まれるが、金属ナノワイヤSNWは含まれない(
図1C参照)。さらに、硬化して成形されたマトリックスMから金属ナノワイヤSNWがエッチングされて除去されるため、過渡絶縁部140は、金属ナノワイヤSNWの除去によって形成されたマトリックスMに複数の第1孔O1が残ることになる。すなわち、第1孔O1の量は、除去される金属ナノワイヤSNWの量と等しく、第1孔O1のサイズ及び形状も、金属ナノワイヤSNWのサイズ及び形状に相当する。より具体的には、細長い第1孔O1の断面寸法(例えば直径)は、500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは30nm以上50nm以下としてもよく、細長い第1孔O1の縦横比は、10超、好ましくは50超、より好ましくは100超とすることができる。
【0046】
同様に、過渡絶縁部140は、銀層130に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220によって配線パターンTPの垂直投影領域に形成されており、銀層130の側壁133は、同側の配線パターンTPの側壁TPSから0.25μm~3.5μm凹んでいるため、過渡絶縁部140は、金属ナノワイヤ材料層220によって形成された配線部Tの側壁125に沿って延在し、過渡絶縁部140の幅W4は、0.25μm以上3.5μm以下であってもよい。また、前述のアルゴンプラズマ処理によって、銀材料層230に残された残留物250(銀配線構造135の側壁133に残された残留物250を含む)が完全に除去されるため、配線パターンTPの垂直投影領域に位置しているが銀配線構造135に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220の上面が露出し、過渡絶縁部140の上面141は配線部Tの上面TSと実質的に同一平面上にある。
【0047】
前述のアルゴンプラズマ処理工程のステップにおいて、金属ナノワイヤ材料層220については、パターン化されたフォトレジスト層240の垂直投影領域に位置しない金属ナノワイヤ材料層220の上部が部分的に除去され、金属ナノワイヤ材料層220の下部(基板110に近い部分)はアルゴンプラズマ処理後も保持される。したがって、金属ナノワイヤ材料層220の下部に位置する金属ナノワイヤSNWは第2エッチング工程で除去され、金属ナノワイヤ材料層220に残ったマトリックスMが絶縁部150を形成する。詳細には、絶縁部150はスペース領域SRに位置し、一方の配線部Tの側壁125から隣り合う配線部Tの側壁125まで延在し、配線部Tの側壁125と接触している。以上の構造構成により、絶縁部150と過渡絶縁部140は階段状構造を形成している。すなわち、絶縁部150と過渡絶縁部140との間には段差がある。いくつかの実施形態では、段差(すなわち、絶縁部150の上面151と過渡絶縁部140の上面141との垂直距離d1)は100nm以上150nm以下である。具体的には、本開示のいくつかの実施形態による、
図1Bのタッチセンサ100の領域R2の集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)画像である
図4を参照する。FIB-SEM画像の測定によると、絶縁部150の上面151と過渡絶縁部140の上面141との垂直距離d1は137.9nmである。
【0048】
一方、硬化して成形されたマトリックスMから金属ナノワイヤ材料層220の下部に位置する金属ナノワイヤSNWがエッチングされて除去されるため、絶縁部150は、金属ナノワイヤSNWの除去によって形成されたマトリックスMに複数の第2孔O2が残ることになる。また、第2孔O2の量は、除去される金属ナノワイヤSNWの量と等しく、第2孔O2のサイズ及び形状は、金属ナノワイヤSNWのサイズ及び形状に相当する。注目すべきは、絶縁部150を形成するために使用される金属ナノワイヤ材料層220の上面はアルゴンプラズマ処理工程を受けるため、絶縁部150の上面151は比較的粗い。これに対し、過渡絶縁部140を形成するために使用される金属ナノワイヤ材料層220の上面はアルゴンプラズマ処理工程を受けないため、過渡絶縁部140の上面141は比較的滑らかである。概して、過渡絶縁部140の上面141の表面粗さは、絶縁部150の上面151の表面粗さよりも小さい。具体的には、本開示のいくつかの実施形態による
図1Bのタッチセンサ100の領域R2の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である
図5を参照する。SEM画像から、絶縁部150の上面151は粒状性が大きく、過渡絶縁部140の上面141は粒状性が小さいことが分かる。すなわち、過渡絶縁部140の上面141は比較的滑らかである。
【0049】
図3Hを参照する。ステップS18では、フォトレジスト層240を除去する。周辺領域PAについては、フォトレジスト層240を除去した後、間隔を空けて配置されたパターン化された金属ナノワイヤ材料層220(すなわち、金属ナノワイヤ層120)により形成された複数の配線部Tと、パターン化された銀材料層230により形成された配線部T上に積層された銀層130とが形成され、隣り合う2つの配線部Tはスペース領域SRによって間隔を空けて配置されており、過渡絶縁部140はスペース領域SR内に位置し、配線部Tの側壁125に隣接して接続され、間隙Sは、同じスペース領域SRに位置する隣り合う過渡絶縁部140の間にある。
図3Hに示す実施形態では、タッチセンサ100はさらに絶縁部150を含む。絶縁部150の具体的な構造的特徴は上記で参照することができ、以下では繰り返さない。
【0050】
上記のステップS13~S18をまとめると、フォトレジスト層をパターン化して配線部の想定幅より少し広い幅の配線パターンを形成する1回のマスクエッチング工程を行い、2回のエッチング工程の間に(化学洗浄工程とアルゴンプラズマ処理工程を含む)表面処理工程を行う。このため、エッチング精度を向上させることができ、配線部の側壁に制御された構造的特徴(過渡絶縁部)を形成することもできる。全体の工程は「現像(development)」、「第1エッチング(first etching)」、「化学洗浄(chemical cleaning)」、「アルゴンプラズマ処理(argon plasma treatment)」、「第2エッチング(second etching)」、「剥離(stripping)」と呼ばれ、これをさらに短縮して「DECEPS工程」と呼ばれ、実際の必要に応じて化学洗浄工程を省略することができる。
【0051】
図1Bに戻り、参照する。いくつかの実施形態において、タッチセンサ100は、基板110の主表面111に配置され、金属ナノワイヤ層120、銀層130、及び過渡絶縁部140を完全に覆う保護層160をさらに含んでもよい。保護層160は間隙S内に充填され、過渡絶縁部140の側壁145に接触しており、保護層160の上面161は、過渡絶縁部140の上面141よりも高くなっている。
図1Bに示す実施形態では、保護層160は、絶縁部150の上面151とさらに接触している。いくつかの実施形態では、保護層160は絶縁性樹脂、有機材料、又は無機材料を含んでもよい。例えば、保護層160は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリスチレンスルホン酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、セラミック、又はそれらの組み合わせなどの材料を含んでもよい。
【0052】
本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100aの概略断面図である
図6Aを参照する。
図6Aの断面位置は、
図1Aに示されたA-A′線に沿って切断した位置に相当する。
図6Aに示すタッチセンサ100aと
図1Bに示すタッチセンサ100との少なくとも1つの相違点は、
図6Aのタッチセンサ100aにおいて、過渡絶縁部140がさらに銀層130(銀配線構造135)の側壁133の一部まで延在していることである。詳細には、本実施形態では、アルゴンプラズマ処理工程(
図3E及び
図3F参照)の間、アルゴンプラズマ処理工程は、第1エッチング工程の後に残った銀材料層230を部分的にしか除去できない。より具体的には、アルゴンプラズマ処理工程は、銀配線構造135の側壁133に隣接する残留物250を完全には除去することはできない。したがって、第2エッチング工程(
図3Gを参照)の後、銀配線構造135の側壁133に隣接する残留物250は保持され、配線パターンTPの垂直投影領域に位置しているが銀配線構造135に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220のマトリックスMと共に過渡絶縁部140が形成され、配線部Tの上面TSより高い上面141を有する過渡絶縁部140が形成される。
【0053】
本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100bの概略断面図である
図6Bを参照すると、
図6Bの断面位置は、
図1Aに示す線A-A′に沿って切断された位置に相当する。
図6Bに示すタッチセンサ100bと
図1Bに示すタッチセンサ100との少なくとも1つの違いは、
図6Bのタッチセンサ100bには絶縁部150が存在しないことである。したがって、過渡絶縁部140間の間隙Sによって基板110が露出し、過渡絶縁部140が基板110の主表面111に達するまで、配線部Tの側壁125に沿って過渡絶縁部140がさらに延在する。詳細には、いくつかの実施形態において、表面処理工程(少なくとも1回の化学洗浄工程及び少なくとも1回のアルゴンプラズマ処理工程を含む。
図3E及び
図3Fを参照可能)は、エッチング領域Qに金属ナノワイヤSNWを残したまま、パターン化されたフォトレジスト層240の垂直投影領域(配線パターンTP)に位置しない金属ナノワイヤ材料層220中のマトリックスMを完全に除去することができる。したがって、エッチング領域Q内の金属ナノワイヤSNWの間に、エッチング領域Qに相当する基板110を露出させることができる。次に、第2エッチング工程(
図3G)において、配線パターンTPの垂直投影領域に位置するが銀配線構造135に覆われていない金属ナノワイヤ材料層220のマトリックスMが、過渡絶縁部140を形成することにより、配線部Tの側壁125に沿って配線部Tの上面TSから基板110の主表面111まで延在する過渡絶縁部140が形成される。
【0054】
また、本実施形態では、基板110と過渡絶縁部140も階段状構造を形成している。さらに、本実施形態では、間隙Sに充填された保護層160は、さらに基板110の主表面111に接触している。本実施形態では、第2エッチング工程の前にエッチング領域Qに位置するマトリックスMを除去しているため、第2エッチング工程においてエッチング領域Qに位置する金属ナノワイヤSNWを直接露出させることができ、より容易に除去することができ、不完全なエッチングによる短絡の確率を低減することができる。
【0055】
本開示の他のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100cの概略断面図である
図6Cを参照すると、
図6Cの断面位置は、
図1Aに示す線A-A′に沿って切断された位置に相当する。
図6Cに示すタッチセンサ100cと
図1Bに示すタッチセンサ100との少なくとも1つの違いは、
図6Cのタッチセンサ100cにおいて、過渡絶縁部140が銀層130(銀配線構造135)の側壁133の一部までさらに延在していることである。このような形成の理由は、前述した
図6Aの説明で参照することができ、以下では繰り返さない。
【0056】
前述の本開示の実施形態によれば、本開示のタッチセンサの設計は、小さな線幅および線間隔で周辺トレースを形成し、タッチセンサの狭ベゼル設計を実現するのに役立つ。また、過渡絶縁部の設計により、配線部と銀層の重なりによって形成される周辺トレースをより安定的に提供することができる。さらに、本開示のタッチセンサの積層構造設計に基づき、タッチセンサの製造工程において、1回の露光工程及び現像工程でタッチ電極と周辺トレースを一度に形成することにより、製造工程のステップを削減し、コストを削減し、エッチング精度を向上させて、線幅と線間隔の小さい周辺トレースの形成を容易にすることができる。
【0057】
本開示は、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明されているが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、ここに含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0058】
本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示の構造に様々な修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。上記を考慮して、本開示は、以下の特許請求の範囲内であれば、本開示の修正及び変形を範囲として含むことが意図される。