(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080570
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】方法、及びコンテナ
(51)【国際特許分類】
A23L 3/36 20060101AFI20240606BHJP
A23L 3/37 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
A23L3/37 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063358
(22)【出願日】2023-04-10
(62)【分割の表示】P 2022193145の分割
【原出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002129
【氏名又は名称】住友商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 哲史
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LA06
4B022LB05
4B022LF06
4B022LJ04
4B022LJ06
4B022LP05
4B022LS04
4B022LT09
(57)【要約】
【課題】食品の腐敗リスクを軽減しつつ、その際の食品の凍結リスクをも低減することが可能な、物体の輸出入や移動を行う際の保管、並びに包装の方法を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態による方法の一例は、コンテナ本体3と、コンテナ本体3の内部を冷却する冷却装置10と、コンテナ本体3の内部に電界を形成する電極20と、を備えるコンテナ1を用いて、複数の食品を搬送又は保管する方法であって、コンテナ本体3の内部に形成された複数の空間のそれぞれに対して食品の種類に応じた個数以下の食品を配置した状態で、コンテナ本体3の内部を、冷却装置10で冷却し、かつ、電極20で電界を形成すること、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ本体と、
前記コンテナ本体の内部を冷却する冷却装置と、
前記コンテナ本体の内部に電界を形成する電極と、を備えるコンテナを用いて、複数の食品を搬送又は保管する方法であって、
前記コンテナ本体の内部に形成された複数の空間のそれぞれに対して前記食品の種類に応じた個数以下の食品を配置した状態で、前記コンテナ本体の内部を、前記冷却装置で冷却し、かつ、前記電極で電界を形成すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の空間は、前記コンテナ本体に収容されるケースにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の食品は、前記ケースの底面に配置されるとともに、前記ケースに配置される他の食品及び前記ケースの側面には接触しないように配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の空間は、前記コンテナ本体に収容されるケースの内部に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の空間は、仕切体によって形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の空間は、略同量の容積であり、かつ、略同量の同じ種類の食品が配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の空間のそれぞれは、当該空間の容積に占める当該空間に配置される食品の体積の割合が所定閾値以下であり、
前記所定閾値は、当該空間に配置される食品の種類によって異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記食品の種類は、豚ヒレ肉を除く食肉であり、
前記所定閾値は、65%であり、
前記複数の空間のそれぞれは、単位量毎に包装された2つ以下の食品が配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記食品の種類は、豚ヒレ肉であり、
前記所定閾値は、65%であり、
前記複数の空間のそれぞれは、単位量毎に包装された6つ以下の食品が配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記食品の種類は、魚肉であり、
前記所定閾値は、70%であり、
前記複数の空間のそれぞれは、2つ以下の食品が配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の空間のそれぞれは、食品が1つ配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の食品のそれぞれは、当該食品を包装材で被覆するとともに当該食品の鮮度を維持する処理を行うことにより形成された食品包装体により包装される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の食品は、電解質の飽和水溶液が注入されたケースに配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の食品は、水よりも低い凝固点を有する液体が注入されたケースに配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の方法により食品を搬送又は保管する、コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、方法、及びコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の世界的な生鮮食料品等(以下まとめて「食品」という)の需要の高まりがあり、かつ、その中で冷凍していない商品は高付加価値で需要が高く、従って、チルド状態又はそれに近い状態を維持しつつその鮮度を長く保つ技術が注目されている。例えば特許文献1には、食品が保持されるコンテナと、その内部に配置される電極と、電極に電圧を印加する電源とを備える電界技術を用いた冷凍庫が記載されている。この冷凍庫では、電源からの電圧の印加により、コンテナの内部に静電界が形成されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食品の鮮度保持のためには、腐敗の原因となる食品中の細菌の増殖を抑制することが重要である。そのためには、特に、生産直後の細菌数が極力少ない状態を維持することが非常に重要と考えられ、食品の生産地から消費地までの輸送環境を改善するべく、特許文献1に記載されたような電界技術を活用する取り組みが提案又は模索されつつある。
【0005】
一方、電界技術を用いた食品の鮮度保持効果(賞味期限)は、食品の保管温度と密接に関わっており、氷点下よりも低い温度帯(0℃未満)で食品を可能な限り凍らせずに保管することが、経時的な菌数の増加の抑制に寄与すると推察される。
【0006】
しかし、長距離の海上輸送のように輸送時間が長くなればなるほど、食品の商品価値が毀損される可能性が高まる。例えば、鮮度保持効果を最大化するために、凍結しないぎりぎりの温度で管理しようとすると、外的要因(外気温や食品の個体差、輸送日数(長いほど凍結し易くなる。)、コンテナ内の積載量の多寡等)に起因して、凍結又は凍結に近い状態になってしまい、食品本来の商品価値の毀損を招くおそれがある。つまり、電界技術を用いた従来の食品保管及び輸送技術では、非凍結状態を確実に維持しにくいという難点がある。
【0007】
一方、凍結のリスクが少ない保守的な(比較的高温の)温度帯で管理した場合には、腐敗や凍結に至らずに輸送することができたとしても、食品中の細菌数が比較的多くなり、賞味期限が短くなってしまう。こうなると、その食品を輸入地で販売する事業者は、そのような商品を再度凍結させて冷凍品として流通させざるを得なくなる。この場合でも、食品本来の商品価値が毀損されてしまう上に、冷凍コストの発生、冷凍過程による温室効果ガスの発生、及び、場合によっては食品廃棄の発生(フードロス)といった問題につながってしまう。従って、電界技術を用いた従来の食品保管及び輸送技術は、未だに十分に実用化されていないのが実情である。
【0008】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、チルド状態又はそれに近い状態を維持して食品の鮮度保持効果を高めることを追求して食品の腐敗リスクを軽減しつつ、その際の食品の凍結リスクをも低減することが可能な方法及びコンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態による方法の一例は、コンテナ本体と、コンテナ本体の内部を冷却する冷却装置と、コンテナ本体の内部に電界を形成する電極と、を備えるコンテナを用いて、複数の食品を搬送又は保管する方法であって、コンテナ本体の内部に形成された複数の空間のそれぞれに対して食品の種類に応じた個数以下の食品を配置した状態で、コンテナ本体の内部を、冷却装置で冷却し、かつ、電極で電界を形成すること、を含む。
【0010】
また、本開示の一実施形態によるコンテナの一例は、本開示の一実施形態の方法により食品を搬送又は保管する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】容器に食品を配置する方法の一例を示す図である。
【
図2】容器に食品を配置する方法の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るコンテナの概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るコンテナの内部の概略構成の一例を示す断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係るコンテナに保管するケースの一例の概略構成を示す斜視図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るコンテナに保管するケースの一例の概略構成を示す斜視図である。
【
図7】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図8】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図9】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図10】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図11】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図12】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図13】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図14】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図15】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図16】ケースの内部に食品を配置する一例を示す図である。
【
図17】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図18】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図19】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図20】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図21】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図22】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図23】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図24】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図25】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図26】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図27】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図28】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図29】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図30】ケースの内部に複数の空間を形成する一例を示す図である。
【
図31】ケースの内部に液体を注入する一例を示す図である。
【
図32】ケースの内部に液体を注入する一例を示す図である。
【
図33】ケースの内部に液体を注入する一例を示す図である。
【
図34】本開示の一実施形態に係る方法を説明するためのフローチャートである。
【
図35】本開示の一実施形態に係る方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.発明の概要]
本実施形態に係る方法の発明は、コンテナ本体3と、コンテナ本体3の内部を冷却する冷却装置10と、コンテナ本体3の内部に電界を形成する電極20と、を備えるコンテナ1を用いて、複数の食品を搬送又は保管する方法であって、コンテナ本体3の内部に形成された複数の空間のそれぞれに対して食品の種類に応じた個数以下の食品を配置した状態で、コンテナ本体3の内部を、冷却装置10で冷却し、かつ、電極20で電界を形成すること、を含む。
【0013】
本実施形態に係る発明によれば、単に電界技術を活用した冷凍庫を用いて食品を保管する場合と比較して、さらに高い品質を維持したまま食品を保管又は輸送することができる。
【0014】
上述したとおり、低温環境下で食品の品質を維持するめには、食品を非凍結状態のまま保管することが重要である。低温環境下にある食品は、高い圧力がかかる場合(例えば、
図1のように、大量の食品をひとつの容器に山積みにして収容した場合等)に凍結する確率が高まる。これは、過冷却状態になった食品にエネルギーが加わることで凍結が開始しやすくなること及び既に凍結してしまった食品が他の食品に押し付けられることで温度が伝播しやすくなること等が原因として考えられる。すなわち、電界技術を用いるだけではなく、食品に作用する圧力を所定圧力以下にしたまま保管することで、食品が凍結するリスクを低減し、低温環境下でも長期間に渡って品質を維持することが可能になる。
【0015】
ここで、所定圧力とは、典型的には、食品を2つ重ねて載置した場合において食品同士の間に作用する圧力以下の圧力である。例えば、1kgの食品を2つ重ねて載置した場合において食品同士の接触面積が10cm2であるとき、食品同士の間に作用する圧力は100g/cm2である。この場合、所定圧力を例えば100g/cm2の50%である50g/cm2として、当該所定圧力以上の圧力が食品に作用しないように食品を配置してもよい。他にも、所定圧力は、食品を任意の個数(例えば、3つ以上)重ねて載置した場合において食品同士の間に作用する圧力以下の圧力であってもよい。
【0016】
食品に作用する圧力が所定圧力以下になるようにするためには、食品が保管される場所を複数の空間に分割し、それぞれの空間に少量の食品(例えば、食品の種類や大きさに応じて1つから6つ程度)を配置することが有効である。例えば、一つの容器に食品を山積みにした場合には容器の下部に入った食品には強い圧力がかかるが(
図1参照)、容器の中に複数のケースを入れ、それぞれのケースに対して食品を整然と配置した場合にはいずれの食品に対しても過剰に強い圧力はかからない(
図2参照)。すなわち、コンテナに食品を保管する場合にも、コンテナ本体3の内部に複数の空間を形成し、それぞれの空間に少量の食品を配置することが望ましい。なお、
図2では各ケースに1つずつ食品が配置されているが、これに限られない。例えば、各ケースに4つ程度の食品を配置した場合であっても、大量の食品が山積みになっている
図1の状況と比較すると、各食品に作用する圧力を抑制しやすい。
【0017】
なお、空間に少量の食品が配置されている状態とは、空間の容積と比較して食品の体積がある程度小さい状態(例えば、食品の体積が空間の容積の30―70%程度である状態)をいう。例えば、詰め込めば8つの食品が入る空間に対して4つの食品を配置することは、少量の食品を配置することの一例である。
【0018】
複数の空間は、保管する食品の量及び性質等によってどのように形成してもよいが、典型的には、コンテナに保管するケース又は当該ケースの内部の仕切体によって形成される。具体的には、ケースの内部には空間があるため、複数のケースをコンテナに保管することによってコンテナの内部には複数の空間が形成される。また、ケースの内部に仕切体を設置することで、ケースの内部の空間が分割され、ケースの内部(さらには、当該ケースが収容されるコンテナの内部)に複数の空間が形成される。このようにして形成される複数の空間に食品を配置することで、食品に作用する圧力を分散させ、食品が凍結するリスクを低減し、低温環境下でも長期間に渡って品質を維持することができる。
【0019】
以下、本開示の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図ではない。すなわち、本開示の一例は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造性のある行為を必要とせずに得られる他の実施形態は、いずれも本開示の保護範囲に含まれる。さらに、本開示において、例えば1つの「工程」、「ステップ」、「部」、「体」、「室」、「装置」、「機」、「器」、「手段」、「機構」、「システム」、及びそれらの一部や全部の機能や構成が、それらの2つ以上によって実現されてもよく、或いは、それらの2つ以上が、1つによって実現されてもよい。
【0020】
[2.コンテナ1及びケース2の構成例]
図3-6を参照しながら、本開示の一実施形態に係るコンテナ1及びケース2の一例について説明する。
図3は、コンテナ1の一例の概略構成を示す図である。
図4は、コンテナ1の内部の空間について説明するための図である。
図5-6は、コンテナ1に保管されるケース2の一例の概略構成を示す図である。
【0021】
<コンテナ1について>
図3は、本開示の一実施形態に係るコンテナ1の一例の概略構成を示す斜視図であり、垂直方向を矢印Z、水平方向を矢印X及びYで示す。特に、矢印Xはコンテナ1の幅の方向と平行であり、矢印Yはコンテナ1の奥行の方向と平行である。
【0022】
コンテナ1は、複数の食品を保管する機能を有する容器である。コンテナ1は、固定型コンテナとして使用されてもよく、輸送(移動)用コンテナとして使用することもできる。固定型コンテナとしては、食品の加工工場や建屋等の屋内に設置される形態や、それ自体が倉庫として機能する形態が挙げられる。また、輸送用コンテナとしては、船舶に積み込まれる海上輸送用コンテナの他、飛行機、車両等の移動体に積み込まれるコンテナ等が挙げられる。
【0023】
コンテナ1は、正面に開口部1aを有する矩形箱状に形成された箱体1bと、箱体の正面の開口部1aを閉塞する一対の扉部1cとを含む。コンテナ1は、後述する冷却装置10及び電極20を備え、これらが取り付けられる箱体1b及び扉部1cを含む部分を特に「コンテナ本体3」ということもできる。すなわち、コンテナ1は、コンテナ本体3と、冷却装置10と、電極20と、を備えるものであるということもできる。なお、箱体1b及び扉部1cは、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料により形成されるとともに、電気的に接地されている。
【0024】
コンテナ1は、冷却装置10を備える。冷却装置10は、コンテナ本体3の内部を冷却する。冷却装置10は、コンテナ本体3の内部又は外部に設けられた電源(図示せず)に接続されており、電力供給によって駆動され、コンテナ本体3の内部に冷風を供給することにより保管された食品を冷却する。このように、本実施形態のコンテナ1は、冷却装置10によりコンテナ本体3の内部の温度を調整することが可能な、いわゆるリーファーコンテナである。
【0025】
冷却装置10は、設定温度と、コンテナ本体3の内部の気温とに基づいて出力を変更してもよい。例えば、設定温度が-3度であるところ、コンテナ本体3の内部の気温が20度である場合には、コンテナ本体3の内部の空気を急速に冷却するように出力を変更してもよい。他にも、例えば、設定温度が-3度であるところ、コンテナ本体3の内部の気温も-3度である場合には、少なくとも一時的に運転を停止してもよい。このように、冷却装置10は、コンテナ本体3の内部の気温を設定温度のとおりに保つように動作してもよい。
【0026】
冷却装置10は、コンテナ本体3の内部の空間全体に均等には冷却しなくてもよい。例えば、コンテナ本体3の内部の空間の一部と、他の部分との温度が異なるように冷却してもよい。他にも、例えば、食品が配置される空間を中心に冷却してもよい。
【0027】
冷却装置10は、空気を冷却すること以外の機能を有するものであってもよい。例えば、ペルチェ素子を用いた熱電効果によってコンテナ本体3の内部を冷却するものであってもよい。他にも、例えば、空気を加熱する機能を有するものであってもよい。
【0028】
なお、本実施形態において示すコンテナ1の形状等は一例であり、コンテナ1の形状は、国際規格(例えば、ISO 668)の規定を満たす形状であってもよい。
【0029】
図4は、コンテナ1のα-α断面図を示す図である。断面図の外枠は、箱体1bの上壁部、側壁部及び底壁部に相当する。外枠の内側は、コンテナ本体3の内部の空間を表す。
【0030】
コンテナ1は、吸気口100及び吹出口102を備える。冷却装置10は、吸気口100を介してコンテナ本体3の内部の空気を吸入する。冷却装置10は、さらに、吸入した空気を冷却した後に吹出口102からコンテナ本体3の内部に吹き出す。
【0031】
コンテナ1には、複数のケース2が保管される。ケース2については、
図5-6を用いて後述する。
【0032】
コンテナ1は、電極20を備える。電極20は、コンテナ本体3の内部に電界を形成する装置である。電極20は、絶縁部材と、直流電源又は交流電源に接続された電極部材とを備える。電極20は、箱体1bの上壁部の所定の面積を覆うように設置されていてもよい。なお、電界を形成することとは、電磁波を照射することを含む。
【0033】
電極20は、コンテナ本体3の内部の空間全体に均等には電界を形成しなくてもよい。電極20は、例えば、ケース2が保管してある空間を中心に電界を形成してもよく、コンテナ1の内部の空間の少なくとも一部(例えば、食品が凍結する割合が高い空間、食品が多く保管されている空間等)に強く作用するように形成されていてもよい。また、電界は、電場ということもできる。
【0034】
電極20は、コンテナ本体3の内部に電界を形成するために好適な形状であってもよい。電界を形成するために好適な形状とは、例えば、シート状、棒状及び板状等を含む。また、電極20は、コンテナ1に複数個備えられてもよい。この場合、複数の電極20をまとめて電極20と称することもできる。また、電極20は、電界形成部又は電場形成部ということもできる。
【0035】
コンテナ1には、載置台4があってもよい。載置台4には、ケース2のほか、コンテナ1に保管される様々な物品が載置されてもよい。
【0036】
<ケース2について>
図5-6は、本開示の一実施形態に係るケース2の一例の概略構成を示す図である。ケース2は、内部の空間に食品を配置することができる容器である。以下では、ケース2の内部の空間に食品を配置することを、「ケース2に食品を配置する」という。また、ケース2をコンテナ本体3の内部の空間に保管及び収容することを、それぞれ「ケース2をコンテナ1に保管する」、「ケース2をコンテナ1に収容する」という。ケース2には、食品に作用する圧力が所定圧力以下となるように食品が1つから4つ程度配置される。ケース2は、上面に開口部202があるケース200であってもよく(
図5参照)、側面に開口部302があるケース300であってもよい(
図6参照)。なお、ケース200及びケース300のいずれにおいても、開口部を閉じるための蓋部又は扉部等があってもよい(図示しない)。
【0037】
ケース2の内部には空間があるため、複数のケース2をコンテナ1に収容することによってコンテナ1の内部には複数の空間が形成される。すなわち、複数の空間は、コンテナ本体3に収容されるケース2により形成されるということもできる。
【0038】
また、ケース2の内部に仕切体ptを設置した場合には、ケース2の内部の空間が分割され、ケース2の内部(さらには、当該ケース2が収容されるコンテナ1の内部)に複数の空間が形成される。すなわち、複数の空間は、コンテナ本体3に収容されるケース2の内部に形成されるということもできる。ケース2の内部の複数の空間は、典型的には、仕切体ptよって形成される。ケース2の内部に仕切体を設置する例については、
図17-30を用いて後述する。なお、
図17-30を用いて後述する仕切体pt1-9は、仕切体ptの一態様である。
【0039】
ケース2は、内部の空間に食品を配置できるものであればどのような形状であってもよい。ケース2の形状は、例えば、箱状、円筒状及び球状等であってもよい。また、ケース2は、内部の食品をある程度安全に輸送することができる材料であるならば、どのような材料であってもよい。ケース2の材質は、例えば、プラスチック、ゴム、断熱材(例えば、発泡スチロール)、緩衝材、段ボール及び木材等である。
【0040】
ケース2の内部に保管される食品の種類は、特に制限されず、例えば、牛肉や豚肉等の食肉、魚や貝等の魚介類、鶏卵、魚卵、牛乳やチーズ等の乳製品、小麦粉やそば粉等の穀物の粉体から作られる麺類、いちごやりんご等の果物、キャベツやトマト等の野菜、及び、それらの加工食品が挙げられる。これらのなかでも、牛肉や豚肉等の食肉、魚や貝等の魚介類、鶏卵、魚卵、牛乳やチーズ等の乳製品等の動物性食品は、長期の保管や輸送における鮮度保持効果が特に渇望される食品であり、本開示に係るケース2に配置される対象として好適である。
【0041】
ケース2の内部に保管される食品は、包装材で被覆するとともに当該食品の鮮度を維持する処理を行うことにより形成された食品包装体に含まれてもよい。包装材とは、例えば、熱収縮性フィルム等である。熱収縮性フィルムの種類は、特に制限されず、熱収縮温度(例えば70~110℃)における熱収縮時の収縮率が1~70%であり、所定の引張弾性率を有するフィルムが挙げられる。また、熱収縮性フィルムは、延伸されていても延伸されていなくてもよい。さらに、熱収縮性フィルムの種類として、より具体的には、公知の熱可塑性樹脂によるフィルムを使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等が挙げられる。また、熱収縮性フィルムを構成する樹脂中に、適宜の顔料、充填剤、染料、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。さらに、ここでの包装材は、熱収縮性フィルムに非熱収縮性フィルムが積層された複合フィルムであってもよい。この非熱収縮性のフィルムも特に制限されず、組み合わせて使用される熱収縮性フィルムよりも、同温度での熱収縮率が低いものであれば制限されず、例えば、70~110℃の加熱温度における熱収縮率が1%未満であるものが挙げられる。また、食品の鮮度を維持する処理とは、例えば、食品を包装材で被覆した後に当該包装材に含まれる空気抜いて真空状態にすること、食品を包装材で被覆した後に当該包装材に窒素ガス等を充填すること及び包装材の内部(すなわち、包装材と当該包装材により包装される食品の間)に食品の腐敗を進行させる細菌の増殖を防止する物質を塗布したうえで食品を包装すること等を含む。食品の腐敗を進行させる細菌の増殖を防止する物質は、例えば、脱酸素剤、殺菌剤及び食品の腐敗を進行させない細菌(例えば、乳酸菌等の善玉菌)を含む液体等を含む。
【0042】
[3.複数の空間に対する食品の配置の一例]
以下では、
図7-30を参照して、コンテナ本体3の内部に形成された複数の空間に対する食品の配置方法の一例について説明する。
図7-16は、ケース2の内部に仕切体ptを設置しない場合におけるケース2に対する食品の配置方法の一例を説明するための図である。
図17-30は、ケース2の内部に仕切体ptを設置する場合におけるケース2に対する食品の配置方法の一例を説明するための図である。
【0043】
なお、「複数の空間」とは、コンテナ本体3の内部に形成された複数の空間のうち、ほぼすべての空間(例えば、95%以上)であってもよく、一部の空間(例えば、50%程度)であってもよい。すなわち、本実施形態において説明する食品の配置方法は、コンテナ本体3の内部に形成された複数の空間のすべてに対しては適用されなくてもよい。例えば、コンテナ本体3の内部に形成された複数の空間が100個ある場合において、そのうち95個程度は本実施形態において説明する食品の配置方法が適用されたものであり、残り5個程度は任意の配置方法が適用されたものであってもよい。なお、この割合はコンテナ1に保管する食品の種類、食品の輸送の要件及び食品を輸送する事業者等に応じて適宜変更可能である。
【0044】
<ケース2の内部に仕切体ptを設置しない場合>
図7-12は、ケース2の内部に仕切体ptを設置しない場合における食品の配置の一例を示す図である。
図7―12は、ケース200を開口部202側から見下ろした場合の食品の配置方法の一例を示す。すなわち、
図7―12の枠は開口部202の縁に相当し、枠の内部はケース200の内部の空間を表す。
【0045】
図7―9は、3つの食品をケース200に配置した場合の図である。
図7は、3つの食品が互いに接触しておらず、
図8はわずかに接触しており、
図9は一部が重なるように配置されている。
【0046】
食品を凍結させることなく保管又は輸送するためには、上述したとおり食品に作用する圧力を所定圧力以下に抑えることに加えて、食品に対して他の凍結した物体(例えば、凍結した食品及び氷等)が接触しないこと、食品が配置される空間に占める当該食品の体積の割合を低く抑えること及び食品が熱容量の大きい他の冷却された物体(例えば、他の食品等)と互いに冷やし合わないようにすることが重要になる。
【0047】
以上から、食品にかかる圧力という観点からすると、この3つのパターンの中では
図7の配置方法が好ましい。すなわち、ケース200内に配置される複数の食品は、ケース200の底面に配置されるとともに、ケース200に配置される他の食品及びケース200の側面には接触しないように配置されることが望ましい。特に、輸送過程において食品がケース200内で移動してしまう可能性及びケース200内の空気の循環のしやすさの観点から、食品とケース200の側面との距離及び食品同士の距離は、0.25cmから1.5cm程度離すことが望ましい。しかしながら、
図8―9の配置方法であっても、食品にかかる圧力を十分所定圧力以下にまで抑えることができるならば、このような配置方法を採用してもよい。すなわち、ケース200内に配置される複数の食品は、ケース200の底面に配置されるとともに、(他の食品とは接触するものの)ケース200の側面には接触しないように配置されることが望ましい。なお、食品にかかる圧力とは、食品の少なくとも一部に作用する力の大きさということもできる。
【0048】
図10は、1つの食品をケース200に配置した場合の図である。
図10は、
図7の場合と比べて、ケース200の内部の空間に占める食品の体積の割合が小さいため、ケース200の内部の空気の流れ(例えば、対流)がよりスムーズになる。すなわち、
図10のような配置方法によれば、ケース200の内部の空気の一部が過度に冷却されることを防ぎ、食品の凍結を抑制することができる。
【0049】
また、
図10の配置方法は、食品が他の凍結した物体と接触するリスク及び他の物体と互いに冷やし合うリスクも低減することができる。具体的には、
図7の配置方法のように互いに接触しないように食品を配置したとしても、輸送の過程で接触するようになる可能性がある。仮に凍結した食品が他の食品と接触すると、当該他の食品にも凍結が伝播する。すなわち、他の食品と接触するリスクが無い
図10の配置方法は、
図7の配置方法と比較しても食品が凍結する確率が低い。
【0050】
また、
図7の配置方法は、同じケース200に熱容量が空気よりは大きい他の食品が配置されているため、ケース200の内部の気温が一度過度に下がってしまったら元の気温に戻りづらい。すなわち、他の食品と互いに冷やし合うリスクが無い
図10の配置方法は、
図7の配置方法と比較しても食品が凍結する確率が低い。
【0051】
したがって、
図10の配置方法は、食品が凍結するリスクを可能な限り排除した配置方法であり、電場を作用させつつマイナス温度環境下で食品のチルド状態を維持したまま保管又は輸送するための特に好適な態様である。
【0052】
図10のような配置方法を採用すると、コンテナ本体3の体積に対する食品の量の割合が小さくなるため、慣例的に、既存の輸送産業において採用されることは少ない。しかしながら、
図10のような配置方法は、上記の観点からすると効果的に食品の凍結を防止することができ、食品の品質を維持したまま食品を輸送することができる。なお、
図10ではケース200に食品が1つのみ配置されているが、数量はこれに限られない。具体的には、ケース200の内部の容積に占める食品の体積の割合が所定閾値(例えば、50%)以下であれば食品の数が2つ以上であっても同様の効果を得ることができる。すなわち、複数の空間のそれぞれは、当該空間の容積に占める当該空間に配置される食品の体積の割合が所定閾値以下である場合には、より高い品質を維持したまま食品を保管及び輸送することができる。
【0053】
図11は、1つの食品をケース200に配置した場合の図であり、
図10の場合と比較すると食品の単位あたりの量が多い。食品の単位あたり量は、典型的には、多いほど凍結しやすく、少ないほど凍結しにくい。これは、食品の個数が1つであっても、食品の量が多い場合には当該食品と他の物体(例えば、ケースの底面や壁面)との間に生じる圧力が大きく、その部分から凍結が開始する確率が上昇するからである。そのため、
図11の配置方法によれば、
図10と比較すると食品が凍結する確率は上昇する場合がある。ただし、
図11は
図10と比較するとコストパフォーマンスが優れるため、食品の凍結する温度や外気温その他条件に応じて採用してもよい配置方法である。
【0054】
図12は、食品同士が接触しないように、かつ、ケース200の内部の空間をできるだけ有効に活用できるように食品を配置した場合の図である。
図12の配置方法によれば、高いコストパフォーマンスを維持しつつ、食品の凍結確率を低く抑えることができる。
【0055】
図7―12のように、各空間には、食品の性質や体積に応じて1つから4つ程度の食品が配置されていることが望ましい。また、各空間に配置する食品の個数は、空間の容積と、空間に配置される食品の体積とに応じて決定することが望ましい。具体的には、食品の個数は、複数の空間のそれぞれに対する、当該空間の容積に占める食品の体積の割合が所定閾値を超えない範囲の個数であってもよい。例えば、空間の容積が1000cm
3、食品1つあたりの体積が300cm
3、所定閾値が70%である場合には、当該空間には2つの食品を配置する(すなわち、空間の容積に占める食品の体積の割合が60%となるような配置)というように決定してもよい。
【0056】
所定閾値は、食品の種類等に応じて決定してもよい。所定閾値は、例えば、35%、65%及び70%等である。
【0057】
図7―12の食品の配置方法は、使用するケース2や食品の種類によって適宜変更することができる。また、複数の配置方法を組み合わせてもよい。
【0058】
なお、
図7-12では各空間に4つ以下の食品を配置する方法について説明したが、食品の性質や体積によってはそれ以上の個数であってもよい。例えば、豚ヒレ肉のように、慣習的に他の食肉(例えば、豚バラ肉及び豚肩ロース肉等)と比較して食品1つあたりの大きさ(食品の梱包の大きさを含む)が小さい食品は、各空間に6つ程度配置してもよい。このように食品の大きさが小さい場合には、5つ以上の食品を各空間に配置しても複数の食品が互いに過剰に強い圧力を掛け合うことが少ないからである。
【0059】
図13-16は、コンテナ1に保管されたケース2毎の食品の配置方法の一例を示す図である。コンテナ1には、ケース230、ケース232及びケース234がそれぞれ複数個保管され、それぞれの種類のケースには食品30、食品32及び食品34が配置されている(
図13参照)。
【0060】
すべてのケース230には、
図14のように食品30が配置されている。すなわち、
図9と同様の配置方法により食品が配置されている。
【0061】
すべてのケース232には、
図15のように食品32が配置されている。すなわち、単位量は食品30と同じ食品32が、2つ配置されている。
【0062】
すべてのケース234には、
図16のように食品34が配置されている。すわなち、単位量が食品30及び食品32より多い食品34が、1つ配置されている。
【0063】
このように、複数の食品は、第1空間に配置される第1食品と、第1空間とは異なる第2空間に配置される第2食品とを含み、第1食品は、第2食品と略同量であってもよい。
図13の例では、あるケース230の内部の空間(第1空間に相当)と、それとは異なるケース230の内部の空間(第2空間に相当)にはそれぞれ食品30が
図14の配置方法により略同量配置されている。
【0064】
特に、複数の空間は、同じ種類の食品が配置された複数の第3空間を含み、複数の第3空間のそれぞれは、略同量の食品が配置されてもよい。
図13の例では、すべてのケース234の内部の空間(同じ種類の食品が配置された複数の第3空間に相当)には、食品34が
図16の配置方法により略同量配置されている。
【0065】
このように各ケース2に食品を略同量配置することにより、食品の凍結を抑制しつつ、効率的に食品を輸送することができる。例えば、合計で100kgの食品を輸送する場合、あるケース2に70kg及び別のケース2に30kgという分け方と、両方のケース2に50kgずつという分け方では、前者の70kgの食品は後者の50kgの食品と比較して凍結する確率が高い。上述したとおり、食品は大きければ大きいほど、重ければ重いほど凍結する確率が高くなる傾向にあるからである。すなわち、輸送すべき食品の合計の量が同じであるという条件下では、可能な限り均等に食品を分割して複数の空間に配置することが望ましい。
【0066】
また、空間に占める食品の体積の割合が所定閾値以下であることが望ましいことは
図10を用いて上述したが、当該所定閾値は、複数の空間のそれぞれに配置される食品の種類によって異なってもよい。例えば、食品30が配置されるケース230と、食品32が配置されるケース232とでは、所定閾値が異なってもよい。例えば、ケース230には、ケース230の内部の空間に占める食品30の体積が50%以下になるように食品30を配置し、ケース232には、ケース232の内部の空間に占める食品32の体積が40%以下になるように食品32を配置してもよい。具体的には、所定閾値は、配置される食品の種類が食肉(例えば、豚肩ロース肉又は豚バラ肉等)である場合には65%であってもよい。この際、複数の空間のそれぞれには単位量毎に包装された食品が配置されてもよい。
【0067】
<ケース2の内部に仕切体ptを設置する場合>
図17-18は、ケース200の内部に仕切体pt1を設置し、複数の空間(空間sp1―2)を形成する方法の一例を示す図である。
図18は、
図17に示されるケース200の内部の空間を図示したものである。
【0068】
仕切体pt1は、空間sp1及び空間sp2に配置される食品に作用する圧力が所定圧力以下となることを補助する部材である。仕切体pt1は、ケース200に初めから(例えば、製造時点から)取り付けられているものであってもよく、後で(例えば、食品を配置する時点で初めて)取り付けられるものであってもよい。また、仕切体pt1の材質は、例えば、プラスチック、ゴム、断熱材(例えば、発泡スチロール)、緩衝材、段ボール及び木材等である。また、仕切体pt1は、ケース200に対して固着されたものでなくてもよく、ただ置いただけのものであってもよい。
【0069】
仕切体ptを用いることによって、食品に作用する圧力をより効果的に分散することができる。例えば、1つのケース2内に複数の食品を配置した場合、仕切体ptが設置されていなければ輸送の過程で食品がケース2内の一方に寄ってしまい、一部の食品に所定圧力以上の圧力がかかる可能性がある。すなわち、仕切体ptを設置することにより、食品に強い圧力が偶発的にかかることを防ぐことができ、食品が凍結する確率を低下させることができる。
【0070】
また、仕切体ptを用いることによって、食品同士の接触を防止し、一部の凍結してしまった食品から与えられる衝撃等によって他の食品にまで凍結が伝播することを防ぐことができる。
【0071】
図19-20は、ケース2の内部に仕切体ptを設置する方法の一例を示す図である。
図19-20は、いずれもケース2の内部の空間を図示している。
図19において、仕切体pt2―3は、ケース2の内部で互いに直行して設置され、空間を十字形に分割している。
図20において、仕切体pt4-6は、ケース2の内部で互いに平行に設置され、空間をレーン状に分割するように設置されている。
【0072】
図19-20のように、仕切体ptは、複数の食品をケース2内の空間に略均等に配置することができるように複数の空間を形成してもよい。このように複数の空間を形成することにより、食品の凍結を抑制しつつ、効率的に食品を輸送することができる。上述したように、1つの空間の食品の量が多ければ多いほど、食品が凍結する確率は上昇するため、ケース2あたりに配置する食品の量が同じという条件下では、当該ケース2の内部の複数の空間には均等に食品を配置することが望ましい。
【0073】
図21-24は、ケース200の内部に仕切体ptを設置する方法の他の一例を示す図である。
図21―24は、ケース200のβ-β断面図(
図5参照)を表している。
図21は、ケース200の底面の対角線に沿うように仕切体ptが配置されている場合の図である。
図22は、一部の空間が他の空間と比較して大きくなるように仕切体ptが設置されている場合の図である。
図23は、互いに直行しないように仕切体ptが設置されている場合の図である。
図24は、平面ではない仕切体ptで大雑把に空間を形成するように仕切体ptが設置されている場合の図である。特に
図24のように、仕切体ptは容易に変形する素材(例えば、ダンボール)であってもよく、ケース200の上壁部、側壁部又は底壁部と接触していない部分があってもよい。食品に作用する圧力を下げるという観点から、
図21-24のように、ケース200に配置される複数の食品は、ケース200の底面に配置されるとともに、ケース200に配置される他の食品及び仕切体ptには接触しないように配置されることが望ましい。
【0074】
また、ケース2の内部に形成される複数の空間は、明確に分割されたものでなくてもよい。例えば、
図24のように、それぞれの空間は、仕切体ptによって食品が隣接する空間に移動してしまわない程度に分割されたものであってもよい。
【0075】
図25-27は、ケース300の内部に仕切体pt7を設置し、複数の空間(空間sp11―12)を形成する方法の一例を示す図である。
図26-27は、
図25に示されるケース300の内部の空間を図示したものである。
図27は、複数の仕切体pt8-9を設置し、複数の空間(空間sp13-15)を形成する方法の一例を示す図である。
【0076】
図28-30は、ケース300の内部に仕切体ptを設置する方法の他の一例を示す図である。
図28―30は、ケース300のγ-γ断面図(
図6参照)を表している。
図28は、仕切体ptがXY平面と平行に2つ、YZ平面と平行に1つ設置されている場合の図である。
図29は、ケース300内の空間が2つの三角柱形状となるように仕切体ptを設置した場合の図である。
図30は、コの字形状の仕切体ptを設置した場合の図である。
【0077】
図17-30を用いて説明したとおり、ケース2の内部に仕切体ptを設置する方法は特に制限されず、食品の量及び性質等によって使い分けてよい。このように仕切体ptを設置することにより形成した「複数の空間」(
図17-30参照)には、コンテナ1にケース2を収容することよって形成した「複数の空間」(
図7-16参照)と同様の配置方法により食品を配置してもよい。例えば、
図19の空間sp3に
図7の食品の配置方法を適用し、空間sp4に
図10の食品の配置方法を適用してもよい。他にも、例えば、
図19の空間sp3-6(複数の空間に相当)に略同量の食品を配置してもよい。このように「複数の空間」の形成方法とそれぞれの空間に対する食品の配置方法を組み合わせることで、異なる性質を有する様々な食品のそれぞれに応じた輸送方法を決定することができる。
【0078】
[4.ケース2に食品を配置するとともに飽和食塩水を注入する一例]
図31-33は、ケース200に飽和食塩水400(すなわち、塩化ナトリウムの飽和水溶液)を注入した場合の一例を示す図である。
図32―33は、それぞれ
図31のδ―δ断面図及びε-ε断面図である。
図31-33のケース200には、仕切体ptが2つと、仕切体ptによって形成された3つの空間のそれぞれに食品が配置されている(
図32-33参照)。
図31-33のケース200は、さらに、飽和食塩水400で満たされており、食品は飽和食塩水400に漬けられている。なお、飽和食塩水400は、所定以上の電気伝導性を有し、水よりも低い凝固点を有する。飽和食塩水400は、所定以上の電気伝導性を有する他の液体又は水よりも低い凝固点を有する他の液体の少なくとも一方に置き換えられてもよい。水よりも低い凝固点を有する液体は、例えば、ブライン液である。
【0079】
ケース200に食品を配置するとともに飽和食塩水400を注入することにより、食品が凍結する確率をさらに低下させることができる。これは、飽和食塩水400が空気と比較して高い電気伝導性を有し、電極20が形成する電界を効率的に食品に作用させるからだと考えられる。また、飽和食塩水400が水よりも低い凝固点を有し、食品に作用する力を緩衝するとともに、氷等が食品に接触することで凍結が伝播することを妨げるからだと考えられる。また、飽和食塩水400が食品を覆うことにより、食品の一部に過剰に冷却された空気が当たって凍結が開始してしまうことを防ことができるからだと考えられる。すなわち、
図1-30を用いて説明したような「複数の空間」の形成方法を適用することに加えて、ケース2を飽和食塩水で満たすことにより、さらに効果的に食品の凍結を防止することができる。
【0080】
[5.本実施形態に係る方法の実施手順例]
図34―35は、本実施形態に係る方法の実施手順を説明するためのフローチャートである。
【0081】
<実施手順の概要>
図34は、本実施形態に係る方法の実施手順の概要を説明するためのフローチャートである。まず、コンテナ本体3の内部又はケース2の内部に複数の空間を形成し、複数の食品をコンテナ本体3の内部の複数の空間に配置した状態にする(ステップS10)。ステップS10については、
図35を用いて詳細を説明する。
【0082】
複数の食品を複数の空間に配置した状態にしたあと、コンテナ本体3の内部に電界を形成する(ステップS12)。電界は、電源(図示せず)から電極20に所定の高電圧を印加することにより、コンテナ本体3の内部に形成する。その際、電極20に印加される高電圧は、例えば、時間の経過に伴って周期的に大きさや向きが変化する交番(交流)電圧であってもよいし、時間の経過に伴って大きさや向きが変化しない一定(直流)電圧であってもよい。電極20に印加される電圧は、任意の大きさに設定可能であるが、例えば数百V~数万Vの高電圧に設定される。なお、電極20に印加される高電圧が交番(交流)電圧である場合、上記印加電圧は実効電圧として表され得る。
【0083】
コンテナ本体3の内部に電界を形成した後、コンテナ本体3の内部を冷却する(ステップS14)。電源(図示せず)から冷却装置10に所定の電力を供給することにより、コンテナ本体3の内部に冷風を供給し、コンテナ本体3の内部を、保管された食品の少なくとも一部が凍結寸前の状態(チルド状態)となるように冷却し、その状態を保持する。なお、食品の少なくとも一部とは、一つの食品内の少なくとも一部分、あるいは複数の食品のうちの少なくとも一つの食品を示す。また、凍結寸前の状態には、例えば半冷凍や半解凍のような状態や、若干表面が固くなっている状態、あるいは指で押せば1mm~2mm凹むような完全凍結ではないものの、その一歩手前(解凍の初期段階)等が含まれる。ステップSP12-14から、「電界冷却工程」が構成される。
【0084】
<複数の食品を複数の空間に配置した状態にする方法>
複数の食品を複数の空間に配置した状態にする(ステップS10)方法の詳細について、
図35を参照して説明する。まず、ケース2の内部に複数の空間を形成するか否かを決定する(ステップS100)。決定するにあたっては、食品の凍結しやすさを考慮してもよい。典型的には、同量の食品をケース2に配置するという条件下では、ケース2の内部に複数の空間を形成したほうが凍結の確率を下げることができる。
【0085】
ケース2の内部に複数の空間を形成する場合には(ステップS100 YES)、ケース2の内部に仕切体ptを設置し、複数の空間を形成する(ステップS102)。次に、ケース2の内部の複数の空間のそれぞれに食品を配置する(ステップS104)。仕切体ptの設置方法及び食品の配置方法は、
図7-30を用いて説明した方法であってもよい。
【0086】
ケース2の内部に複数の空間を形成しない場合には(ステップS100 NO)、ケース2の内部に食品を配置する(ステップS106)。食品の配置方法は、
図7-16を用いて説明した方法であってもよい。
【0087】
ステップS104又はステップS106でケース2の内部に食品を配置した後、飽和食塩水を注入するか否かを決定する(ステップS108)。決定するにあたっては、食品の凍結しやすさを考慮してもよい。典型的には、飽和食塩水を注入したほうが凍結の確率を下げることができる。
【0088】
飽和食塩水を注入する場合(ステップS108 YES)には、ケース2の内部に飽和食塩水を注入する(ステップS110)。飽和食塩水を注入する方法は、
図31-33を用いて説明した方法であってもよい。
【0089】
ステップS108又はステップS110の後、ケース2をコンテナ本体3の内部に収容する(ステップS112)。
【0090】
ケース2をコンテナ本体3の内部に収容した後、複数のケース2を収容したか否かを判定する(ステップS114)。ステップS112で収容したケース2が2個目以降のケース2である場合には、フローを終了する(ステップS114 YES)。一方で、ステップS112で収容したケース2が1個目のケース2である場合(ステップS114 NO)には、他のケース2の収容を開始し(ステップS116)、ステップS100に戻る。
【0091】
したがって、ステップS10(ステップS100-116に相当)により、複数の食品のそれぞれに作用する圧力が所定圧力以下となるように当該複数の食品をコンテナ本体の内部の複数の空間に配置することができる。なお、「複数の空間」とは、コンテナ本体3に収容されるケース2により形成されるものと、コンテナ本体3に収容されるケース2の内部に形成されるものとを含む。
【0092】
<実施手順のまとめ>
以上のとおり説明した方法によれば、コンテナ本体3と、コンテナ本体3の内部を冷却する冷却装置10と、コンテナ本体3の内部に電界を形成する電極20と、を備えるコンテナ1を用いて、複数の食品のそれぞれに作用する圧力が所定圧力以下となるように当該複数の食品をコンテナ本体3の内部の複数の空間に配置した状態(ステップS10)で、コンテナ本体3の内部を、冷却装置10で冷却し(ステップS14)、かつ、電極20で電界を形成する(ステップS12)ことができる。
【0093】
なお、
図34-35で説明したフローは、発明の要旨を変更しない範囲で少なくとも一部が変更されてもよい。例えば、ステップS10-S14の順序は異なってもよい。
【実施例0094】
食品として一般的な店舗で市販されている生の豚バラ肉を用い、略同量となるように分割して検体とした。さらに、検体を異なる方法で配置したケースa及びケースbを収容室に収容し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結検体数及び凍結割合を表1に示す。
【0095】
【0096】
なお、配置方法の行に記載された「pc/空間」はケース又は仕切体ptによって形成された「複数の空間」のそれぞれの空間にいくつ検体が配置されているかを示している。例えば、「1pc/空間」は、仕切体ptに形成された複数の空間のそれぞれに対して1つずつ検体が配置されていることを意味する。「pc/空間」の後に続く乗算記号及び数値は、ケースの内部に形成された空間の数を示している。すなわち、「1pc/空間×3」は「3つの空間のそれぞれに1つずつ検体が配置されている」ことを意味し、「2pc/空間×2」は「2つの空間のそれぞれに2つずつ検体が配置されている」ことを意味する。なお、乗算記号及び数値の記載がない場合は、ケースの内部に複数の空間が形成されていない(すなわち、1つの空間のみがある)という意味である。また、凍結割合とは、測定対象となった検体のうち、少なくとも一部が凍結した検体の割合である。
【0097】
両者を比較すると、ケースaは79検体中凍結した検体は0検体だったことに対して、ケースbは20検体の中で1検体が凍結していた。この結果から、1つの空間に配置される食品の量は少ないほうが凍結しにくくなると考えられる。すなわち、同量の食品をケースに配置するという条件下では、仕切体pt等を用いて複数の空間を形成し、当該空間に食品を配置することにより、食品が凍結する確率を低下させることができるといえる。
【0098】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生の豚バラ肉及び豚肩ロース肉を用い、それぞれ略同量となるように分割して検体とした。さらに、検体を異なる方法で配置した豚肩ロース肉のケースc-e及び豚バラ肉のケースf-hを収容室に収容し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表2及び表3に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
なお、「kgs」は1つの空間に配置される検体の重量を表す。例えば、「2.5kgs/1pc/空間」は、「1つ空間あたり1検体が配置されており、当該空間には2.5kgの検体が含まれる」ということを意味する。また、「5kgs/2pc/空間」は、「1つの空間あたり2検体が配置されており、当該空間には5kgの検体が含まれる」ということを意味する。
【0102】
表2のケースc-eを比較すると、検体毎に空間が分割されているケースcは非凍結割合(すなわち、凍結しなかった検体の割合)が100%であることに対して、1つの空間に2以上の検体が配置されいているケースd及びケースeの非凍結割合はいずれも75%であった。また、表3のケースf-hを比較すると、仕切体ptが設置されたケースfは非凍結割合が100%であったことに対して、仕切体ptが設置されていないケースg及びケースgは非凍結割合がそれぞれ0%及び50%である。
【0103】
以上のことから、同量の食品をケースに配置するという条件下では、仕切体pt等を用いて複数の空間を形成し、当該空間に食品を配置することにより、食品が凍結する確率を低下させることができるといえる。
【0104】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生の食肉、具体的には豚バラ肉及び豚肩ロース肉を用い、それぞれ略同量となるように分割して包装し、検体とした。さらに、豚肩ロース肉をパターンi-lにしたがって、豚バラ肉をパターンm-pにしたがってケースに配置し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表4及び表5に示す。本実験において、食品の体積は、1gあたり1cm3であると近似して計算した。
【0105】
【0106】
【0107】
なお、容積率とは、食品が配置された空間の体積に対する食品の体積の割合である。豚肩ロース肉については、パターンi及びパターンjを比較すると、同じ容積率(65%)であっても、1pc/空間で配置したパターンiと比較して、2pc/空間で配置したパターンjは非凍結割合が低い。パターンk及びパターンlも同様に、同じ容積率(30%)である場合に、1pc/空間で配置したパターンlと比較して、2pc/空間で配置したパターンkは非凍結割合が低い。また、パターンj及びパターンkを比較すると、いずれも2pc/空間であっても、容積率が65%であるパターンjと比較して、容積率が30%であるパターンkは非凍結割合が高い。他方、パターンi及びパターンlを比較すると、いずれも100%非凍結である。両者は、容積率が異なるものの、いずれも1pc/空間である点で共通する。したがって、豚肩ロース肉は、輸送効率と非凍結割合を両立する上では、容積率が65%以下かつ1pc/空間(すなわち、複数の空間のそれぞれに単位量毎に包装された食品が1つ配置されている状態)であるパターンi及びlに相当する状態が好ましいと考えられる。
【0108】
同様に、豚バラ肉については、パターンm及びパターンnを比較すると、同じ容積率(65%)であっても、1pc/空間で配置したパターンmと比較して、2pc/空間で配置したパターンnは非凍結割合が低い。また、パターンn及びパターンоを比較すると、いずれも2pc/空間であっても、容積率が65%であるパターンnと比較して、容積率が40%であるパターンоは非凍結割合が高い。これらを踏まえると、豚バラ肉も豚肩ロース肉と同様に、輸送効率と非凍結割合を両立する上では、容積率が65%以下かつ1pc/空間(すなわち、複数の空間のそれぞれに単位量毎に包装された食品が1つ配置されている状態)であるパターンm及びpに相当する状態が好ましいと考えられる。
【0109】
一般的に、食品のチルド状態を維持するにあたって、設定温度が-3.2度である場合と比較して、設定温度が-3.3度である場合は食品が凍結する確率は大きく上昇する。この点、ロースのパターンi及びパターンlを比較すると、パターンlはパターンiより設定温度が低いにも関わらず、容積率を65%より低い30%にすることで非凍結割合を維持することができている。また、豚バラ肉についても同様に、パターンm及びパターンpを比較すると、パターンpはパターンmより設定温度が低いにも関わらず、容積率を65%より低い25%にすることで非凍結割合を維持することができている。すなわち、容積率を下げることは非凍結割合を上昇又は維持するために有効であることがわかる。
【0110】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生の鶏肉を用い、それぞれ略同量となるように分割して包装し、検体とした。これらの鶏肉を、パターンq―rにしたがってケースに配置し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表6に示す。なお、パターンqにおいては、ケースに仕切体を設置することでケースの内部の4つの空間を形成し、それぞれの空間に食品を配置している。本実験において、食品の体積は、1gあたり1cm3であると近似して計算した。
【0111】
【0112】
パターンq及びパターンrを比較すると、パターンrの設定温度(-2.5度)はパターンqの設定温度(-3.0度)よりも高いにも関わらず、パターンqのほうが非凍結割合が高い。
また、パターンqの容積率は約65%であり配置方法は1pc/空間である一方、パターンrの容積率は約95%であり配置方法は6pc/空間である。したがって、鶏肉についても豚バラ肉及び豚肩ロース肉と同様に、容積率が65%以下かつ1pc/空間という状態が凍結の確率を抑制するための好適であると考えられる。
【0113】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生のサーモンのセミドレスを用い、それぞれ略同量となるように分割して包装し、検体とした。これらのサーモンを、パターンs―tにしたがってケースに配置し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表7に示す。なお、パターンtにおいて、1つの空間に配置された3つの食品のうち、1つは他の2つの上に重ねて配置されている。本実験において、食品の体積は、1gあたり1cm3であると近似して計算した。
【0114】
【0115】
パターンs及びパターンtを比較すると、設定温度が同じ(-3.0度)であり、さらに容積率も同程度(約70%及び約80%)であるにも関わらず、非凍結割合が大きく異なる。これは、パターンsの配置方法が2pc/空間である一方で、パターンtの配置方法は3pc/空間であるからだと考えられる。すなわち、輸送の効率と凍結の防止という観点からは、サーモンについては容積率が70%以下かつ空間あたりの検体の数は2つ以下であることが好適であると考えられる。
【0116】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生の豚ヒレ肉を用い、それぞれ略同量となるように分割して包装し、検体とした。これらの豚ヒレ肉を、パターンu―vにしたがってケースに配置し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表8に示す。本実験において、食品の体積は、1gあたり1cm3であると近似して計算した。
【0117】
【0118】
パターンu及びパターンvを比較すると、設定温度が同じ(-3.0度)であり、さらに容積率も同じ(約65%)であるにも関わらず、非凍結割合が大きく異なる。これは、パターンuの配置方法が6pc/空間である一方で、パターンvの配置方法は20pc/空間であるからだと考えられる。すなわち、輸送の効率と凍結の防止という観点からは、豚ヒレ肉については容積率が65%以下かつ空間あたりの検体の数は6つ以下であることが好適であると考えられる。なお、豚ヒレ肉については、検体あたりの大きさが他の食肉(例えば、豚バラ肉及び豚肩ロース肉等)と比較して小さいため、空間あたりに配置する検体の数が比較的多くても非凍結状態を維持することができたと考えられる。
【0119】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生の豚ロース肉を用い、それぞれ略同量となるように分割して包装し、検体とした。これらの豚ロース肉を、パターンw―xにしたがってケースに配置し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表9に示す。本実験において、食品の体積は、1gあたり1cm3であると近似して計算した。
【0120】
【0121】
パターンw及びパターンxを比較すると、設定温度が同じ(-3.0度)であり、さらに容積率も同じ(約65%)であるにも関わらず、非凍結割合が大きく異なる。これは、パターンwの配置方法が1pc/空間である一方で、パターンxの配置方法は3pc/空間であるからだと考えられる。すなわち、輸送の効率と凍結の防止という観点からは、豚ヒレ肉については容積率が65%以下かつ空間あたりの検体の数は1つ程度であることが好適であると考えられる。
【0122】
次に、食品として一般的な店舗で市販されている生の豚ウデ肉を用い、それぞれ略同量となるように分割して包装し、検体とした。これらの豚ウデ肉を、パターンyにしたがってケースに配置し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、収容室から取り出した。そして、取り出し直後の検体を目視により食品の凍結の程度を観察した。各ケースの食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、食品の種類、保管日数、検体の配置方法)、凍結割合及び凍結状態を表10に示す。本実験において、食品の体積は、1gあたり1cm3であると近似して計算した。
【0123】
【0124】
パターンyの結果によると、他の食肉と同様に、豚ウデ肉についても容積率が65%以下かつ空間あたりの検体の数は1つ程度とした配置方法において非凍結状態を維持できることが確認できる。
【0125】
一般的に、食肉は、当該食肉が含有する脂質の量、部位、肉質等の特性によって凍結のしやすさが異なる。しかしながら、以上の実験の結果、それぞれ異なる特性を有する豚バラ肉、豚肩ロース肉、鶏肉、豚ロース肉はいずれも容積率が65%以下かつ1pc/空間という配置方法が他の方法と比較して凍結を防止するために効果的であった。例えば、豚ウデ肉についても当該配置方法によって非凍結状態を維持することができた。すなわち、他の食肉についても同様に、容積率が65%以下かつ1pc/空間という配置方法が好適であると考えられる。また、食品の大きさによっては、例えば、豚ヒレ肉のように容積率が65%以下かつ6pc/空間という配置方法が好適な場合もあると考えられる。