(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080571
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ボール状の遊具
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240606BHJP
A63B 23/16 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A63B37/00 700
A63B23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067085
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2022193069の分割
【原出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】507147079
【氏名又は名称】ログイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 志郎
(57)【要約】
【課題】利用者が指の腹側で把持することも、爪を立てるようにして指先を食い込ませるように握ることもでき、且つ床等に放り投げたときに適度に転がるボール状の遊具を提供する。
【解決手段】ボール状の遊具1Aは袋体10と、袋体10の内部に充填される充填部材20と、を備える。充填部材20は、各々柔軟で且つ互いに絡まり合って1つの塊となる複数の部材210により形成され、袋体10とともに面上を転がる。充填部材20が袋体10内で占める体積は、袋体10の最大容積よりも小さい。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体と、
前記袋体の内部に充填される充填部材と、
を備え、
前記充填部材は、各々柔軟で且つ互いに絡まり合って塊となる複数の部材により形成され、
前記充填部材は前記袋体とともに面上を転がり、
前記充填部材の塊の外形が前記袋体内で占める体積は、前記袋体の最大容積よりも小さい、
ボール状の遊具。
【請求項2】
前記複数の部材の各々は、編み物、織布、不織布、又は紙、の切れ端である、
請求項1に記載のボール状の遊具。
【請求項3】
袋体と、
前記袋体の内部に充填される充填部材と、
を備え、
前記充填部材は、柔軟なシート状の部材を丸めて、又は折り畳んで塊として形成され、
前記充填部材は前記袋体とともに面上を転がり、
前記充填部材の塊の外形が前記袋体内で占める体積は、前記袋体の最大容積よりも小さい、
ボール状の遊具。
【請求項4】
前記袋体は、前記充填部材が内部に充填される内側袋体と、前記内側袋体を収納する外側袋体と、から構成される、
請求項1乃至3のうちの何れか1項に記載のボール状の遊具。
【請求項5】
前記充填部材が充填された前記内側袋体を複数備える、
請求項4に記載のボール状の遊具。
【請求項6】
前記内側袋体は、網目を持つネット状の部材である、
請求項4又は請求項5に記載のボール状の遊具。
【請求項7】
前記外側袋体には、前記内側袋体を出し入れするための孔が設けられる、
請求項4に記載のボール状の遊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボール状の遊具、に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者或いは障害者のリハビリ向けに、又は幼児等の児童向けにボール状の遊具が種々提案されている。特許文献1には、8面体のカバー体と、当該カバー体の内部に充填される充填物とから構成されるボール状の遊具が開示されている。特許文献1に開示の遊具における充填物は、綿状、塊状、バラ状、又は粒状の物体である。また、特許文献1には、充填物の充填度合をカバー体の内容積に対して25%~100%とすることが記載されている。特許文献2には、多数の布片を相互に縫合して略凸多面体状の被覆体を形成し、当該被覆体内に布団綿を充填して構成される布ボールが開示されている。特許文献3には、シート体の中に多数の粒状部材を収納して構成されるお手玉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-118951号公報
【特許文献2】実用新案登録第3262932号
【特許文献3】特開2017-22153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボール状遊具を捕球したり、拾い上げたりするときは、掌と指の腹でボール状遊具を包み込むように握って保持するが、幼児、高齢者等においては保持動作が難しい場合があった。例えば、向かってくるボール状遊具を掴む捕球動作においては、弾かれたり落としたりすることが多い。このとき、ボール状遊具が柔らかければ、把持動作に応じて、その形状が撓むので保持し易くなる。さらに、爪を立てるように指を曲げ、指先がボール状の遊具に食い込むようになれば、保持性はさらに向上し、力のない人、反射神経が弱った人でもボール遊びを楽しむことができる。これは、ボール状遊具を拾い上げる場合も同様である。
【0005】
従来の樹脂やスポンジ等で形成されたボール状の遊具では、一定の柔軟性はあるものの、内部が空気や樹脂素材等で満たされているため、爪を立てるように握ろうとしてもめり込む指先が押し返され、指先を食い込ませて保持することができない。これに対して、お手玉は、爪を立てて握られたときに、めり込む指先を受け入れるように変形はするが、充填物が小豆等の粒体であるため、指先を粒体間に分け入らせるために力を要する。また、ボール状の遊具については、利用者の興味を引くという観点では、転がして遊べることが重要であるが、転がりすぎてしまうと、そのスピードに幼児等が対応できなかったり、あるいは、転がっていったボール状遊具を取りに行くのが大変になったりする。この場合、転がるという振る舞いがある程度抑止されることが好ましい。スポンジ等で形成されたボール状の遊具は、スピードよく遠くまで転がり、壁面等にぶつかってもバウンドして転がっていくため、移動範囲が大きく取りに行くのが大変である。一方、お手玉は、床面等に放り投げられたときにほとんど転がらず、転がして遊ぶことができない。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑み、利用者が指の腹側で把持することも、爪を立てるようにして指先を食い込ませるように握ることもでき、且つ床等に放り投げたときに適度に転がるボール状の遊具を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本開示の第1の態様に係るボール状の遊具は、袋体と、前記袋体の内部に充填される充填部材と、を備える。前記充填部材は、各々柔軟で且つ互いに絡まり合って1つの塊となる複数の部材により形成される。前記充填部材は前記袋体とともに面上を転がる。前記充填部材が前記袋体内で占める体積は、前記袋体の最大容積よりも小さい。第1の態様のボール状の遊具は、爪を立てて握られたときに、遊具にめり込む利用者の指先を避けるように複数の部材の各々が袋体内部で移動し、めり込んだ指を受け入れるように変形する。加えて、第1の態様のボール状の遊具では、充填部材を形成する各々柔軟な複数の部材は互いに絡まり合って1つの塊となり、当該充填部材は袋体とともに面上を転がるため、当該遊具は床等に放り投げたときに適度に転がる。
【0008】
より好ましい第2の態様に係るボール状の遊具では、複数の部材の各々は編み物、織布、不織布、又は紙、の切れ端であってもよい。第2の態様によれば、編み物、織布、不織布、又は紙の切れ端を用いて第1の態様のボール状の遊具を構成することが可能になる。
【0009】
上記課題を解決するために本開示の第3の態様に係るボール状の遊具は、袋体と、前記袋体の内部に充填される充填部材と、を備える。前記充填部材は、柔軟な1枚のシート状の部材を丸めて、又は折り畳んで形成される。前記充填部材は前記袋体とともに面上を転がる。前記充填部材が前記袋体内で占める体積は、前記袋体の最大容積よりも小さい。第3の態様のボール状の遊具は、第1の態様のボール状の遊具と同様に、利用者が爪を立てるように握ったときにめり込む指先を受けいれるように変形し、且つ床等に放り投げたときに適度に転がる。
【0010】
より好ましい第4の態様に係るボール状の遊具では、前記袋体は、前記充填部材が内部に充填される内側袋体と、前記内側袋体を収納する外側袋体と、から構成されてもよい。第4の態様によれば、内部に充填物が充填された内側袋体を外側袋体に収納することで、第1の態様、第2の態様、又は第3の態様の遊具を構成することができる。
【0011】
更に好ましい第5の態様に係るボール状の遊具では、前記充填部材が充填された前記内側袋体を複数備えてもよい。第5の態様によれば、各々に充填部材が充填された複数の内側袋体を外側袋体に収納することで、第4の態様の遊具を構成することができる。
【0012】
更に好ましい第6の態様に係るボール状の遊具では、前記内側袋体は、網目を持つネット状の部材であってもよい。第6の態様によれば、ネット状の内側袋体に充填部材を充填し、当該内側袋体を外側袋体に収納することで、第4の態様、又は第5の態様の遊具を構成することができる。
【0013】
更に好ましい第7の態様に係るボール状の遊具は、前記外側袋体には、前記内側袋体を出し入れするための孔が設けられてもよい。第7の態様によれば、充填部材が充填された内側袋体を、外側袋体に設けられた孔から当該外側袋体の内部に押し込むことで、第4の態様、第5の態様、又は第6の態様の遊具を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態による遊具1Aの斜視図である。
【
図2】遊具1Aを
図1とは別の角度から見た斜視図である。
【
図5】遊具1Aが有する袋体10の構成例を示す展開図である。
【
図6】遊具1Aの構成例における組み立て状態を示す斜視図である。
【
図7】袋体10に収納される充填部材20の一例を示す図である。
【
図8】遊具1Aが床面等を転がるときの袋体10及び充填部材20の挙動を説明するための図である。
【
図9】爪を立てるように握ったことにより変形した遊具1Aの一例を示す図である。
【
図10】爪を立てるように摘まみ上げたことにより変形した遊具1Aの一例を示す図である。
【
図11】本開示の第2実施形態による遊具1Bの構成例を示す断面図である。
【
図13】内側袋体120が外側袋体110の内部に収納されている状態を示す図である。
【
図14】内側袋体120に充填部材20とは異なる物が収納されている状態を示す図である。
【
図15】本開示の第3実施形態による遊具1Cの外観を示す図である。
【
図16】内側袋体120を外側袋体110から引き出す状態を示す図である。
【
図17】外側袋体110に設けられる孔を示す図である。
【
図18】孔110aを閉じた状態で固定する留め具の例を示す図である。
【
図19】変形例(1)による充填部材20の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1~
図4は、本開示の第1実施形態による遊具1Aの外観を示す図である。より詳細には、
図1は、床面等の平面上に置かれた遊具1Aの斜視図であり、
図2は遊具1Aを
図1とは別の角度から見た斜視図である。以下では、遊具1Aが置かれた平面の法線方向(例えば、鉛直方向)はZ軸方向と称される。遊具1Aが置かれた平面に沿い、且つZ軸方向と各々直交する2つの方向のうちの一方はX軸方向と称され、他方はY軸方向と称される。
【0016】
図3は遊具1AをZ軸方向から見た平面図であり、
図4は遊具1AをY軸方向から見た正面である。
図1~
図4に示されるように、本実施形態における遊具1Aは、ボール状の遊具であり、扁平且つ縁の丸まった略円筒形状の外観を有する袋体10を有する。遊具1Aの利用者の具体例としては、幼児等の児童、未成年或いは成人の障害者、又は高齢者が挙げられる。袋体10は、利用者が片手で握れる大きさに形成されればよい。なお、遊び方に応じて袋体10の大きさを変えてもよい。ピンポン玉程度からサッカーボール大、あるいは平均的直径が数メートル程度でもよく、要は、遊び方に応じた大きさに設定すればよい。
【0017】
図5は袋体10の構成を説明するための展開図である。袋体10は、野球における硬式球と同様に、長辺の中央がへこんだ角丸長方形状を有する部材11A及び部材11Bの各々をU字状に折り曲げて互いにほぼ直交するように組み合わせ、各々の外周を縫い合わせることで構成される。部材11A及び部材11Bは、編物、織物、又は不織布等のシート状の柔軟な素材により形成される。遊具1Aは、
図6に示されるように、袋体10の内部に充填部材20を収納することで構成される。部材11A及び部材11Bは、シート状の柔軟な素材により形成されていればよく、素材は限定されない。例えば、織物の具体例としては、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、及び絡み織等が挙げられる。編物の具体例としては、丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、及び挿入組織等が挙げられる。遊具1Aの利用者が触覚過敏である発達障害児である場合、ストレス軽減の観点から、部材11A及び部材11Bは、伸縮性を有する素材で構成されることが好ましい一態様である。
【0018】
図7は、充填部材20の構成例を示す図である。
図7に示されるように、充填部材20は、複数の部材210により構成される。本実施形態における部材210は、編物(より具体的には、包帯生地)の切れ端であるが、部材210は、織物の切れ端であってもよく、不織布の切れ端であっても、紙の切れ端であってもよい。また、柔らかな樹脂片や綿であってもよい。要は、部材210は、部材11A及び部材11Bと同様に柔軟な素材で形成されていればよい。
図7における拡大図に示されるように、本実施形態における部材210は包帯生地を用いているため、その外周は細かな山及び谷を為す凹凸となっている。
図7では詳細な図示を省略したが、部材210の外周には全周に亘って山及び谷を為す細かな凹凸となっている。充填部材20を構成する部材210の数が増えるほど、各部材210の外周の凹凸が互いに絡まり合うこと及び複数の部材210間の摩擦等により、それら部材210は繋がり合い1つの塊として振る舞う。この塊が充填部材20となる。互いに絡まり合って1つの塊となった複数の部材210(即ち、充填部材20)に外力が加わると、この外力に応じたモーメントにより、充填部材20は回転する。利用者が、投球または転がす動作の際に、塊である充填部材20に直接加えた回転モーメントにより、充填部材20は飛翔しながら回転し、また、床面(あるいは地面等)を転がりながら回転する。また、充填部材20に加わる外力の他の例としては、飛翔中もしくは床面上を転がる袋体10の内側面と充填部材20との間に生じる摩擦力が挙げられる。
【0019】
充填部材20は、加わった外力のモーメントにより回転するため、例えば遊具1Aが床面等に放り投げられると、
図8に示されるように、充填部材20は袋体10とともに矢印Cの示す方向に回転する。
図8では、充填部材20を構成する複数の部材210のうちの一つにハッチングが付与されており、充填部材20が袋体10とともに矢印Cの示す方向に回転することにより、当該ハッチングを付与された部材210の位置が回転に応じて変化する(他の部材210も同様の振る舞いとなる)。お手玉では、内部に収納された多数の粒状部材は1つの塊となっていないため、これら粒状部材に外力が加わっても、各粒状部材に個別に力が伝達されるだけで、これら多数の粒状部材が一体の塊となって回転することはなかった。このため、お手玉は、床面等に放り投げられても転がらなかった。これに対して本実施形態の遊具1Aでは、
図8に示されるように、充填部材20は袋体10とともに矢印Cの示す方向に回転するため、床面等に放り投げられた遊具1Aは床面上を転がる。ただし、袋体10および充填部材20によって形成される袋体10の外形は球形に凸凹をつけたひしゃげた部分の多い形状であるため、野球ボールやサッカーボールあるいは内面に空気や樹脂などが充填され球形の従来型のボール遊具に比して、遠くまで転がることはなく、また転がりスピードも遅い。
【0020】
図8に示されるように、充填部材20によって形成される塊の外形が袋体10内で占める体積は、袋体10の最大容積よりも小さい。このため、袋体10は充填部材20の塊を覆う以上の余分な面積をもつので、指の把持力などが加われば、その力に沿って容易に内側にへこむ。充填部材20は柔軟な部材で構成され、その塊も柔軟であるから、利用者が爪を立てるようにして遊具1Aを握ると、袋体10の内部において、各部材210が、めり込んだ指先の移動を許すように移動かつ変形し、その結果、遊具1Aは、
図9及び
図10に示されるように、食い込んだ指先部分がへこみ、利用者によって確実に保持される。なお、充填部材20の充填率としては、例えば、50~95%程度が挙げられる。この充填率では、実験により好ましい結果が得られたが、もちろん、袋体10と充填部材20の大きさや材質によって他の充填率を採用しても構わない。充填率とは、袋体10の最大容積に対する充填部材20の塊の体積の比のことをいう。
【0021】
本実施形態では、利用者が爪を立てて遊具1Aを握ったときに各指先から加わる力は、上述のように作用する。一方、充填部材20と袋体10の内側面との間の摩擦力のように充填部材20の全体に対して働く力に対しては、充填部材20を構成する複数の部材21
0は1つの塊として振る舞う。このため、本実施形態によれば、利用者が爪を立てるように握ることにより、食い込む指先を受け入れるように変形し、且つ床等に放り投げたときに適度に転がるボール状の遊具1Aが提供される。
【0022】
<B:第2実施形態>
図11は、本開示の第2実施形態による遊具1Bの構成例を示す断面図であり、
図12は遊具1Bの製造工程を示す図である。遊具1Bは、袋体10と充填部材20とにより構成される点では遊具1Aと同一である。遊具1Bは、袋体10が内側袋体120と、内側袋体120を内部に収納する外側袋体110とにより構成され、充填部材20は内側袋体120に収納される点において遊具1Aと異なる。外側袋体110及び内側袋体120は、夫々、編物、織物、又は不織布等のシート状の柔軟な素材により形成される。内側袋体120は網目を有したネット状の部材であってもよい。なお、内側袋体120がネット状の部材である場合、内側袋体120における網目は、内側袋体120の内部に収納される複数の部材210のうちの最小の部材210よりも小さいことが好ましい。
【0023】
図11に示す遊具1Bでは、外側袋体110の内部に内側袋体120が1つ収納されているが、各々内部に充填部材20を収納した複数の内側袋体120が外側袋体110の内部に収納されてもよい。
図13に示される遊具1Bでは、各々内部に充填部材20を収納した4個の内側袋体120が外側袋体110の内部に収納されている。各々内部に充填部材20を収納した複数の内側袋体120を外側袋体110に収納することにより、第1次実施形態と同じ効果を実現しつつ、当該遊具を握ったときの感触を豊富に楽しむことができる。
【0024】
各々内部に充填部材を収納した複数の内側袋体120を外側袋体110の内部に収納して遊具1Bを構成する場合、複数の内側袋体120の各々に収納される充填部材の種類が異なってもよい。
図14に示される遊具1Bでは、外側袋体110の内部に収納された4個の内側袋体120のうちの2個には充填部材20が収納され、他の2個の内側袋体120には充填部材20とは異なる物が収納されている。具体的には、他の2個の内側袋体120うちの一方には乾燥させた大豆又は小豆等の粒状部材220が収納されており、他方には樹脂等で形成された中実又は中空の球状の粒状部材230が複数収納されている。複数の内側袋体120を外側袋体110の内部に収納して遊具1Bを構成する態様では、複数の内側袋体120のうちの少なくとも1つに複数の部材210により構成された充填部材20が収納されていれば、第1実施形態と同じ効果を実現しつつ、当該遊具を握ったときの感触を複雑にすることができる。また、粒状部材220又は粒状部材230は互いにぶつかりあったときに音が発生するため、複数の内側袋体120に粒状部材220又は粒状部材230は複数収納したものを含めておけば、遊具1Bを利用者が握ったとき、又は放り投げたときに複数の粒状部材が互いにぶつかって音が鳴り、利用者の聴覚的な興味を引くことが期待される。
【0025】
<C:第3実施形態>
図15は、本開示の第3実施形態による遊具1Cの外観を示す図である。遊具1Cは、袋体10と、充填部材20とにより構成され、袋体10は、遊具1Bと同様に、内部に充填部材20を収納する内側袋体120と、内側袋体120を収納する外側袋体110とにより構成される。遊具1Cにおいても、遊具1Bにおける場合と同様に、外側袋体110の内部に複数の内側袋体120が収納されてもよい。また、複数の内側袋体120に、複数の粒状部材220を収納した内側袋体120、又は複数の粒状部材220を収納した内側袋体120が含まれてもよい。
【0026】
遊具1Cでは、内側袋体120とともに袋体10を構成する外側袋体110に、外側袋体110の内部に内側袋体120を押し込むための孔110aが設けられている点が遊具
1Bと異なる。遊具1Cの利用者は、孔110aから外側袋体110の内部に指を入れ、
図16に示されるように、内側袋体120を外側袋体110から引き出すこともできる。また、遊具1Cの利用者は、外側袋体110から引き出した内側袋体120を、孔110aから外側袋体110の内部に押し込むこともできる。このように、内側袋体120を出し入れが可能になると、外側袋体110と内側袋体120を個別に適宜洗い、衛生状態を好適に維持しながら使用することができる。また、洗浄については、内側袋体120を収納したままでも可能なように、各部の材料を洗濯することもできる。内側袋体120を取り出した状態では、外側袋体110が洗浄し易くなるという利点もある。
【0027】
図15には、外側袋体110に1つの孔(孔110a)が設けられている場合について例示されているが、遊具1Cの外側袋体110には複数の孔が設けられてもよい。遊具1Cの外側袋体110に複数の孔が設けられる態様では、複数の孔の大きさが同じである必要はない。
図17には、外側袋体110に2つの孔(孔110aと孔110aよりも小さい孔110b)が設けられた遊具1Cが例示されている。
【0028】
図17に示される遊具1Cでは、孔110bは、内側袋体120の幅よりも小さく、利用者は、孔110bから外側袋体110の内部に指を入れても、内側袋体120を取り出すことはできない。遊具1Cの外側袋体110に複数の孔が設けられる態様では、それら複数の孔のうちの何れかの大きさを、内側袋体120を取り出せない大きさとしておくことで、利用者は内側袋体120を取り出せる孔を試行錯誤しつつ見つけ出すこととなる。この試行錯誤により、利用者が幼児である場合には知育効果の向上が、利用者が障害者である場合にはリハビリ効果の向上が期待できる。
【0029】
また、
図18に示されるように孔110aには、当該孔110aを閉じた状態で固定する留め具としてファスナー1101が設けられてもよく、また、孔110aを塞ぐためのフラップ1102及び1103が設けられてもよい。フラップ1102及び1103が設けられる態様では、フラップ1102及び1103を重ねた状態で固定するための留め具として、スナップボタン等の服飾用のボタン、又は面ファスナーがフラップ1102及び1103に設けられてもよい。
【0030】
本実施形態によっても、利用者が爪を立てるように握ることによりめり込む指先を受けいれるように変形し、且つ床等に放り投げたときに適度に転がるボール状の遊具1Cが提供される。
【0031】
<D:変形>
以上に説明した各実施形態は以下のように変形されてもよい。
(1)上記実施形態における部材210の外周には、山及び谷を為す細かな凹凸が全周に亘って形成されていた。特に包帯生地などを材料に用いる場合は、生地の編方に応じた凹凸が現れる。凹凸は生地などの材料から生じるものだけでなく、加工によって加えてもよい。また、部材210の外周には、
図19に示されるように、細かな凹凸が設けられる第1部分と凹凸の無い第2部分とが交互に設けられてもよい。
図11に示される部材210を複数用いて充填部材20を構成すれば、それら部材210は互いに絡まり合い1つの塊として振る舞うため、上記実施形態と同一の効果が奏される。なお、複数の部材210間の摩擦により、複数の部材210が1つの塊になる場合には、部材210の周囲の凹凸は省略されてもよい。また、充填部材20を構成する複数の部材210が1つの塊になりやすくするため、複数の部材210のうちの少なくとも一部に粘着剤等が塗布されてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態における充填部材20は、各々編み物の切れ端である複数の部材210が互いに絡まり合って1つの塊となったものであった。しかし、充填部材20は、例え
ば、
図15に示すように、柔軟な1枚のシート状の部材240(材料は編物、織物、不織布、又は紙等)を丸めて、又は折り畳んで一つの塊として形成されてもよい。このようにシート状の部材240を折り畳んで形成した充填部材20を内側袋体120内に収納してもよい。また、シート状の部材240は1枚には限らず、複数枚を用いてもよい。要は、本開示のボール状の遊具は、袋体と、袋体の内部に充填される充填部材と、を備え、充填部材は、柔軟な1枚のシート状の部材を丸めて、又は折り畳んで形成され、充填部材は袋体とともに面上を転がり、充填部材による塊が袋体内で占める体積は、袋体の最大容積よりも小さければよい。また、各実施形態において、充填部材20による塊はほつれがあったり、それを構成する幾つかの部材が抜け落ちたりしてもよい。また、塊が複数に分割してもよく、要は、複数の塊が全体として袋体とともに転がるように構成されていればよい。
【0033】
(3)上記実施形態において、遊具の利用者の具体例として、幼児等の児童、未成年或いは成人の障害者、又は高齢者を挙げたが、本願発明にかかる遊具の利用者はこれらに限られない。例えば、プロのアスリートが本願発明にかかる遊具を利用してもよい。
【0034】
例えば、野球の投手、やり投げの選手等が、ピッチングフォームを確認するために、本願発明にかかる遊具を利用してもよい。
【0035】
また、野球のトスバッティング等の練習が、本願発明にかかる遊具を用いて行われてもよい。特に、遊具の充填部材として複数の包帯生地片等を採用した場合、遊具の容積に対する重量が極めて小さく、例えば、屋内等の周りに物がある状況下においても、通常ボールに代えて本願発明にかかる遊具を用いることで、仮に遊具が周りの物にぶつかっても、それらの物が破損等する危険性が低い。従って、ボールを用いた練習が屋外でできないような場合にも、本願発明にかかる遊具を用いることで、屋内で練習を行うことができる。
【0036】
また、本願発明にかかる遊具は通常の球技のボールよりも飛距離が短いため、球技の選手が、練習時に通常のボールに代えて、本願発明にかかる遊具を用いることで、狭いスペースで練習を行うことができる。さらに、本願発明にかかる遊具は通常の球技のボールよりも柔らかいため、球技の選手が、練習時に通常のボールに代えて、本願発明にかかる遊具を用いることで、突き指等の故障の発生を回避しやすい。
【0037】
(4)上記第2実施形態にかかる遊具の特徴と、上記第3実施形態にかかる遊具の特徴が組み合わされてもよい。すなわち、充填部材20の充填された複数の内側袋体120が、外側袋体110が備える孔110aを介して出し入れ可能に構成されてもよい。
【0038】
この変形例にかかる遊具によれば、外側袋体110に収容される内側袋体120の数が1つである場合と比較し、個々の内側袋体120に収容される充填部材の量が少なくなるため、外側袋体110から内側袋体120を取り出して洗濯した場合、内側袋体120を短時間で乾燥することができ、カビ、細菌等の繁殖や臭いの発生等を防止しやすい。
【0039】
(5)上記実施形態にかかる遊具においては、充填部材の塊の外形が袋体内で占める体積が袋体の最大容積よりも小さい。この条件が変更されてもよい。例えば、袋体の最大容積に対する、袋体に収容されない自由空間内における充填部材の塊の外形の体積の比率(充填率)が100%以上であってもよい。その場合、上記実施形態にかかる遊具に関し上述した効果のうち、爪を立てて握られたときに、遊具にめり込む利用者の指先を避けるように複数の部材の各々が袋体内部で移動し、めり込んだ指を受け入れるように変形する、という効果は低減するが、弾力性の向上等により、用途によっては望ましい。充填率が100%以上である場合にも、特に袋体が包帯生地で構成されると、ユーザが握った時に心地よい感触を受けるため、望ましい。また、充填率が100%以上である場合にも、特に充
填部材が多数の包帯生地片で構成されると、遊具の形状が整いやすく、また、ユーザが握った時に指や爪が遊具にめり込みやすいため、望ましい。
【符号の説明】
【0040】
1A,1B、1C…遊具、10…袋体、11A,11B…部材、110…外側袋体、110a,110b…孔、1101…ファスナー、1102,1103…フラップ、120…内側袋体、20…充填部材、210…部材、220,230…粒状部材。