(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080577
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】車両用ドアロックノブ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/08 20140101AFI20240606BHJP
E05B 77/34 20140101ALI20240606BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E05B85/08
E05B77/34
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100538
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2022192780
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 庸靖
(72)【発明者】
【氏名】徳一 嘉洸
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ10
2E250LL01
2E250QQ08
(57)【要約】
【課題】車両用ドアロックノブ装置において、ロックノブを簡単に正規の位置に取り付け可能とし、ボーデンケーブル内への雨水等の液体や塵埃等の異物浸入を確実に防止する。
【解決手段】インナケーブル202に接続されるインナエンドキャップ4は、ドアに取り付けられるフィニッシャー2内を上下方向へ移動可能であると共に、上下方向の略中央部にあって、上半部の第1接続部4c及び下半部の第2接続部4dよりも拡径の拡径部4bを有する。ロックノブ5は、インナエンドキャップ4の第1接続部4cに取り付けられると共に、自体の下端がインナエンドキャップ4の拡径部4bの上面に上方から当接することで、インナエンドキャップ4に対して上下方向へ位置決めされて取り付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のドアに上下方向へ移動可能に取り付けられ、ロック位置及びアンロック位置に移動可能なロックノブを有して、前記ロックノブが前記ドアに設けられるドアロック装置にアウタケーブル内を軸方向へ移動可能に挿通されるインナケーブルを介して連結される車両用ドアロックノブ装置において、
前記ドアに固定されると共に、上下方向の中空孔を有する略筒状のフィニッシャーと、
前記アウタケーブルの一端部に接続されると共に、前記フィニッシャーの下部に取り付けられる略筒状のエンドキャップと、
前記インナケーブルの一端部に接続されると共に、前記フィニッシャーの前記中空孔内を上下方向へ移動可能なインナエンドキャップと、
前記インナエンドキャップの上半部である第1接続部に取り付けられる前記ロックノブと、
前記インナエンドキャップの下半部である第2接続部の周囲に取り付けられ、下端部が常時、前記エンドキャップの上端よりも下側で、かつ外側に位置する筒状のダストカバーと、を備え、
前記インナエンドキャップは、上下方向の略中央部にあって、前記第1接続部及び第2接続部よりも拡径の拡径部を有し、
前記ロックノブは、自体の下端が前記インナエンドキャップの前記拡径部の上面に上方から当接することで、前記インナエンドキャップに対して上下方向へ位置決めされて取り付けられることを特徴とする車両用ドアロックノブ装置。
【請求項2】
前記インナエンドキャップの前記拡径部の外周部分に上向きフランジ部を設け、
前記ロックノブの下部を前記第1接続部の外周面と前記フランジ部の内周面との間に嵌入させたことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項3】
前記ダストカバーは、上端が前記インナエンドキャップの前記拡径部の下面に下方から当接することで、前記インナエンドキャップに対して上下方向へ位置決めされて取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項4】
前記ダストカバーの外径を、前記インナエンドキャップの前記拡径部の外径よりも小径としたことを特徴とする請求項3記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項5】
前記フィニッシャーの外側面に、前記フィニッシャーの前記中空孔に連通する排水孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項6】
前記ロックノブは、前記インナエンドキャップに取り付けた状態において、前記フランジ部に設けた係合孔に係合する弾性片を有することを特徴とする請求項2記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項7】
前記ロックノブは、前記インナエンドキャップの前記第1接続部が嵌入される中空孔と、前記ロックノブの外周面にあって、前記中空孔に連通する確認孔とを、有することを特徴とする請求項6記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項8】
前記インナエンドキャップの前記第1接続部は、横断面が略小判形状の軸状を呈し、
前記第1接続部の長軸方向の外周面は、前記ロックノブの前記中空孔の内周面に当接し、
前記ロックノブの前記弾性片は、前記第1接続部の短軸方向の外側面に対向する位置にあって、前記係合孔に係合することを特徴とする請求項7記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項9】
前記インナエンドキャップの前記第1接続部に、前記ロックノブの前記確認孔に弾性係合する係合突起を設けたことを特徴とする請求項7記載の車両用ドアロックノブ装置。
【請求項10】
前記インナエンドキャップの前記フランジ部の前記内周面には、前記ロックノブが前記インナエンドキャップに取り付いた状態において、前記ロックノブの挿入部と当接し前記ロックノブの回転を規制する規制部を設けていることを特徴とする請求項8記載の車両用ドアロックノブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアの室内側にロック位置及びアンロック位置に移動可能に設けられるロックノブを有して、ロックノブがドアロック装置の施解錠機構にボーデンケーブルを介して連結される車両用ドアロックノブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような車両用ドアロックノブ装置においては、ロックノブの外面又はその近傍に付着した雨水等の液体や塵埃等の異物がドアに設けたロックノブ用の取付孔を通ってボーデンケーブルのアウタケーブル内に浸入すると、ボーデンケーブルにおけるインナケーブルの円滑な移動を妨げる虞がある。この問題を解消するため、例えば引用文献1~3には、以下のような発明が記載されている。
【0003】
引用文献1には、ボーデンケーブルにおけるアウタケーブルの上端に接続される筒状のエンドキャップ(引用文献1においては、摺動部材)と、ドアロック装置の施解錠機構(同じく、ロック機構)に接続されるボーデンケーブルにおけるインナケーブルの上端に接続され、エンドキャップの内側を上下方向へ移動可能なインナエンドキャップ(同じく、芯部材)と、インナエンドキャップの上部及び側部を覆うように設けられて、インナエンドキャップと共に上下方向へ移動可能なロックノブと、を備えて、ロックノブが可動範囲の最上端にあるとき、ロックノブの下端がエンドキャップの外側にあって、かつエンドキャップの上端よりも下側に位置するようにすることで、ロックノブの外面に沿って流れ落ちる雨水等の液体や塵埃等の異物がアウタケーブル内に浸入することを抑制するようにした発明が記載されている。
【0004】
引用文献2には、ドアの車室内側に設けた取付孔に取り付けられる筒状のフィニッシャー(引用文献2においては、ベゼル)と、フィニッシャーの内側に上下方向へ移動可能に挿入されて、ドアから突出するアンロック位置及びドア内に没入するロック位置に移動可能なロックノブと、フィニッシャーの下部に固定されるアウタケーブル(同じく、導管)及びアウタケーブル内に移動可能に挿通され、ロックノブとドアロック装置の施解錠機構とを連結するインナケーブル(同じく、心線)を有するボーデンケーブルと、を備えて、ロックノブの下部にアウタケーブルの端部を覆うダストカバー(同じく、カバー部)を設
けることによって、ロックノブの外面に沿って流れ落ちる雨水等の液体や塵埃等の異物がフィニッシャー内を通ってアウタケーブル内に浸入することを抑制するようにした発明が記載されている。
【0005】
引用文献3には、ドアの車室内側に上下方向を向くように固定される筒状のフィニッシャー(引用文献3においては、トリム固定部材)と、ボーデンケーブルのアウタケーブルの端部に固定されると共に、フィニッシャーの下部に固定される筒状のエンドキャップ(同じく、ケーブルロック部材)と、ボーデンケーブルのインナケーブルの上端部に接続されるインナエンドキャップ(同じく、ワイヤ端子)と、インナエンドキャップの上部に取り付けられ、ドアロック装置の施解錠機構がアンロック状態のときに上部がドアのトリムよりも突出するロックノブ(同じく、ノブキャップ)と、エンドキャップに固定された状態で内周面がインナエンドキャップの円柱部に接し、かつ外周面がフィニッシャーの内周
面に接するダストカバー(同じく、シール部材)と、を備えることで、上方から浸入した雨水等の液体や塵埃等の異物は、インナエンドキャップに設けたフランジ部によって外径側に案内されてフィニッシャーの内周面に沿って下方に流れ落ちたあと、ダストカバーにより周方向に沿って誘導され、そして、最終的にフィニッシャーに設けた排水孔から排出されるようにすることで、アウタケーブル内に異物が浸入しないようにした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-115507号公報
【特許文献2】特開2019-65673号公報
【特許文献3】特開2021-120507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明においては、インナエンドキャップに対するロックノブの取り付けは、ロックノブとインナエンドキャップの上端との間に隙間を設けた状態で、インナエンドキャップの外周面に設けた突起が、ロックノブに設けた係合孔に係合することで、ロックノブがインナエンドキャップの上部を被さるようにしてインナエンドキャップに固定される構成を採用している。しかしながら、この構成にあっては、インナエンドキャップに対するロックノブの上下位置が定まり難いだけでなく、特にロックノブを押込み操作(ロック操作)した際、インナエンドキャップに対するロックノブの位置ずれが発生する虞がある。さらには、ロックノブにダストカバーに相当する部分を一体形成しているため、車種毎にロックノブを新設しなければならず、ロックノブの汎用性を低下させる問題点を有する。
【0008】
引用文献2に記載の発明においては、インナエンドキャップに対するロックノブの取り付けは、インナエンドキャップの上端をロックノブの内部上端に突当てることで、ロックノブの上下方向の取付位置が決定される構成を採用しているが、外見からはインナエンドキャップの上端がロックノブの内部上端に突き当たっているか否かを判断不能であることから、外見からはロックノブが正規の位置に取り付けられるか否かを判断できない。また、インナエンドキャップにダストカバーを取り付けた後でないと、ロックノブをインナエンドキャップに取り付けることができないため、組付性が悪い。さらには、インナエンドキャップの上端をロックノブの内部上端に突当てる構成であるため、車種毎にロックノブを新設しなければならず、ロックノブの汎用性を低下させる問題点を有する。
【0009】
特許文献3に記載の発明においては、ロックノブをインナエンドキャップに取り付け、ダストカバーをエンドキャップに固定する構成であるため、ダストカバーとインナエンドキャップの間で摺動抵抗が発生して、ロックノブの操作に抵抗が生じることから、ダストカバーの摩耗を防止するため、インナエンドキャップとダストカバーとの間にグリスを塗布する必要がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、インナエンドキャップに対してロックノブを簡単に正規の位置に取り付け可能であると共に、ボーデンケーブル内への雨水等の液体や塵埃等の異物浸入を確実に防ぐことができるようにした車両用ドアロックノブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
車両用のドアに上下方向へ移動可能に取り付けられ、ロック位置及びアンロック位置に移動可能なロックノブを有して、前記ロックノブが前記ドアに設けられるドアロック装置にアウタケーブル内を軸方向へ移動可能に挿通されるインナケーブルを介して連結される車両用ドアロックノブ装置において、前記ドアに固定されると共に、上下方向の中空孔を有する略筒状のフィニッシャーと、前記アウタケーブルの一端部に接続されると共に、前記フィニッシャーの下部に取り付けられる略筒状のエンドキャップと、前記インナケーブルの一端部に接続されると共に、前記フィニッシャーの前記中空孔内を上下方向へ移動可能なインナエンドキャップと、前記インナエンドキャップの上半部である第1接続部に取り付けられる前記ロックノブと、前記インナエンドキャップの下半部である第2接続部の周囲に取り付けられ、下端部が常時、前記エンドキャップの上端よりも下側で、かつ外側に位置する筒状のダストカバーと、を備え、前記インナエンドキャップは、上下方向の略中央部にあって、前記第1接続部及び第2接続部よりも拡径の拡径部を有し、前記ロックノブは、自体の下端が前記インナエンドキャップの前記拡径部の上面に上方から当接することで、前記インナエンドキャップに対して上下方向へ位置決めされて取り付けられることを特徴とする。これにより、インナエンドキャップに対してロックノブを簡単に正規の位置に取り付けることができると共に、ボーデンケーブル内への雨水等の液体や塵埃等の異物浸入を確実に防ぐことができる。
【0012】
好ましくは、前記インナエンドキャップの前記拡径部の外周部分に上向きフランジ部を設け、前記ロックノブの下部を前記第1接続部の外周面と前記フランジ部の内周面との間に嵌入させる。これにより、ロックノブをインナエンドキャップの第1接続部に対して安定した状態で取り付けことができる。
【0013】
好ましくは、前記ダストカバーは、上端が前記インナエンドキャップの前記拡径部の下面に下方から当接することで、前記インナエンドキャップに対して上下方向へ位置決めされて取り付けられる。これにより、インナエンドキャップに対してダストカバーを簡単に正規の位置に取り付けることができる
【0014】
好ましくは、前記ダストカバーの外径を、前記インナエンドキャップの前記拡径部の外径よりも小径とする。これにより、ダストカバーがフィニッシャーの中空孔に摺接しないことから、ロックノブの操作に対して摺動抵抗を生じさせないと共に、ダストカバーの摩耗を抑制できる。
【0015】
好ましくは、前記フィニッシャーの外側面に、前記フィニッシャーの前記中空孔に連通する排水孔を設ける。これにより、フィニッシャーの中空孔に浸入した雨水等の液体や塵埃等の異物を確実にフィニッシャー外に排出できる。
【0016】
好ましくは、前記ロックノブは、前記インナエンドキャップに取り付けた状態において、前記フランジ部に設けた係合孔に係合する弾性片を有する。これにより、ロックノブをインナエンドキャップに対して強固に取り付けることができる。
【0017】
好ましくは、前記ロックノブは、前記インナエンドキャップの前記第1接続部が嵌入される中空孔と、前記ロックノブの外周面にあって、前記中空孔に連通する確認孔とを、有する。これにより、ロックノブに対してインナエンドキャップの第1接続部が正規の位置まで挿入されているか否かを目視できる。
【0018】
好ましくは、前記インナエンドキャップの前記第1接続部は、横断面が略小判形状の軸状を呈し、前記第1接続部の長軸方向の外周面は、前記ロックノブの前記中空孔の内周面に当接し、前記ロックノブの前記弾性片は、前記第1接続部の短軸方向の外側面に対向する位置にあって、前記係合孔に係合する。これにより、ロックノブの弾性片をインナエンドキャップにおける第1接続部とフランジ部との間の狭い間隙で、弾性片を係合孔に係合させることができる。
【0019】
好ましくは、前記インナエンドキャップの前記第1接続部に、前記ロックノブの前記確認孔に弾性係合する係合突起を設ける。これにより、インナエンドキャップに対するロックノブの取り付けがより強固になると共に、インナエンドキャップの第1接続部がロックノブの中空孔に対して正規の位置まで挿入されているか否かをより確実に目視可能となる。
【0020】
好ましくは、前記インナエンドキャップの前記フランジ部の前記内周面には、前記ロックノブが前記インナエンドキャップに取り付いた状態において、前記ロックノブの挿入部と当接し前記ロックノブの回転を規制する規制部を設ける。これにより、インナエンドキャップに対してのロックノブの回転及び倒れが抑制され、インナエンドキャップとロックノブの係合が安定しロックノブの脱落を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、ロックノブの下端をインナエンドキャップに設けた拡径部の上面に当接させることによって、インナエンドキャップに対してロックノブを簡単に正規の位置に取り付けることができる。さらには、ダストカバーの下端部を常時、エンドキャップの上端よりも下側で、かつ外側に位置させるようにしたことによって、ボーデンケーブル内への雨水等の液体や塵埃等の異物浸入を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る車両用ドアロックノブ装置を設けた車両用のドアの側面図である。
【
図3】車両用ドアロックノブ装置の分解斜視図である。
【
図7】車両用ドアロックノブ装置の一部を分解した状態の縦断面図である。
【
図8】ロックノブがアンロック位置にあるときの
図6におけるVIII―VIII線縦断面図である。
【
図9】ロックノブがロック位置にあるときの
図6におけるVIII―VIII線縦断面図である。
【
図10】ロックノブがアンロック位置にあるときの
図6におけるX―X線縦断面図である。
【
図11】ロックノブがロック位置にあるときの
図6におけるX―X線縦断面図である。
【
図12】
図4におけるXII―XII線横断面図である。
【
図13】
図4におけるXIII-XIII線横断面図である。
【
図16】他の実施例における要部の拡大断面図である。
【
図17】更に他の実施例における
図13と同様な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではなく、以下の実施形態から当業者が自明の範囲内で適宜変更したものも含む。
【0024】
図1は、本発明に係る車両用ドアロックノブ装置1を設けた車両用のドアDの側面図である。ドアDは、車体側面に開閉可能に支持され、ドアDに設けられるドアロック装置Lが車体側に固定される図示略のストライカに係合することで閉扉状態に保持される。ドアDの室内側には、ドアロック装置Lをロック状態又はアンロック状態に切り替える際に操作される車両用ドアロックノブ装置1の後述のロックノブ5が上下方向へ移動可能に設けられる。
【0025】
ドアロック装置Lは、ロック状態及びアンロック状態に切り換え可能な施解錠機構を備える。車両用ドアロックノブ装置1のロックノブ5は、ドアD内に配策されるボーデンケーブル20のインナケーブル202によりドアロック装置Lの施解錠機構に連結される。
【0026】
アンロック状態とは、ドアDの外側面に設けられるアウトサイドハンドルOH又はドアDの室内側に設けられるインサイドハンドルIHの開操作により、ドアロック装置Lとストライカとの係合を解除してドアDを開けることが可能な状態を指す。ロック状態とは、アウトサイドハンドルOHを開操作してもドアロック装置Lとストライカとの係合を解除不能としてドアDを開けることができない状態を指す。なお、本実施形態に係る自動車用ドアロックノブ装置1は、ドアロック装置Lの施解錠機構がアンロック状態のとき、ロックノブ5の上部がドアDの取付面から突出し、ドアロック装置Lの施解錠機構がロック状態のとき、ロックノブ5の上部がドアDの取付面に没入して、実質的にロックノブ5によるアンロック操作が不能な構成を採用しているため、ドアロック装置Lがロック状態であっても、インサイドハンドルIHを操作することでドアDを開けることができ、かつ施解錠機構をロック状態からアンロック状態に切替可能にした機能を有するドアロック装置Lに適用するのが最適である。
【0027】
図2は、車両用ドアロックノブ装置1の斜視図、
図3は、同じく分解斜視図、
図4は、同じく正面図、
図5は、同じく側面図、
図6は、同じく平面図である。以下の車両用ドアロックノブ装置1の説明においては、ドアDに装着された状態を基準として上下を規定する。
【0028】
車両用ドアロックノブ装置1は、主な構成要素として、ドアDの室内側に設けられる図示略のトリムの取付面に設けられる取付孔D1(
図7~11参照)に嵌合固定される略筒状のフィニッシャー2と、ボーデンケーブル20のアウタケーブル201の上端部(一端部)に相対移動不能に接続されると共に、フィニッシャー2の下部に取り付けられるエンドキャップ3と、ボーデンケーブル20のインナケーブル202の上端部(一端部)に相対移動不能に接続されるインナエンドキャップ4と、インナエンドキャップ4の上部に取り付けられる有底筒状のロックノブ5と、インナエンドキャップ4の下部に取り付けられる筒状のダストカバー6と、を備える。フィニッシャー2、エンドキャップ3、インナエンドキャップ4及びロックノブ5は、合成樹脂製で形成され、ダストカバー6は、ゴム等の弾性材料で形成される。
【0029】
なお、以下の説明においては、トリムは、ドアDに固定されるものであって、かつドアDの一部を構成するものであるから、ドアDの一部として定義して説明する。
【0030】
本実施形態に使用されるボーデンケーブル20は、ドアD内に配策される外筒を形成する可撓性のアウタケーブル201と、アウタケーブル201内に軸方向へ移動可能に挿通される可撓性のインナケーブル202とを有して、インナケーブル202の上端部(一端部)がインナエンドキャップ4に接続され、下端部(他端部)がドアロック装置Lの施解錠機構に連結されることで、ロックノブ5による操作をドアロック装置1の施解錠機構、また、施解錠機構のアンロック状態及びロック状態への切り替え作動をロックノブ5にそれぞれ伝達する。
【0031】
フィニッシャー2は、上下方向の中空孔2gを有する筒状の筒部2aと、筒部2aの上端に設けられる鍔部2bと、筒部2aの上部外側面に設けられて筒部2aの径方向へ弾性変形可能な2個の爪部2cと、筒部2aの下部外側面に設けられ、中空孔2gに浸入した雨水等の液体や塵埃等の異物を外部に排出可能とする2個の排水孔2dと、排水孔2dよりも下位にあって、筒部2aの外側面に設けられる2個の係合孔2eと、を有する。さらには、筒部2aの下端には、上方に延伸する2個のスリット2fが設けられる。
【0032】
フィニッシャー2は、鍔部2bがドアDにおける取付孔D1の周囲に上側から当接し、各爪部2cが取付孔D1の周囲に下側から係合することで、鍔部2bが室内側に露出し、鍔部2bよりも下側の部分がドアD内に隠れるようにして、ドアDの取付孔D1に相対移動不能に嵌合固定される。
【0033】
エンドキャップ3は、上半部が小径で、下半部が拡径の段付き筒状の筒部3aと、筒部3aの拡径の下半部の下部外側面にあって、筒部3aの径方向へ弾性変形可能で、かつ上端に爪部3cを設けた2個の弾性片3bと、筒部3aの外側面に突設される位置決め突起3d及びストッパ部3eと、を有する。なお、筒部3aの内側である中空孔3fは、
図7~11から理解できるように、ボーデンケーブル20のインナケーブル202が挿通可能な孔3hを設けた仕切り壁3gにより上下に仕切られている。
【0034】
アウタケーブル201の上端部(一端部)は、エンドキャップ3の筒部3aにおける中空孔3fの仕切り壁3gよりも下側の部分に挿入される状態で、エンドキャップ3の下部に相対移動不能に接続される。
【0035】
エンドキャップ3は、アウタケーブル201の上端部に接続され、かつ筒部3aの上部がフィニッシャー2の中空孔2gの下部に挿入された状態で、各弾性片3bの爪部3cがフィニッシャー2の係合孔2eに外側から係合することで、フィニッシャー2の下部に相対移動不能に取り付けられる。好ましくは、エンドキャップ3がフィニッシャー2に取り付けられた状態においては、フィニッシャー2における筒部2aの下端がエンドキャップ3のストッパ部3eに上方から当接することで、フィニッシャー2に対するエンドキャップ3の上下方向の位置が決定される。さらには、フィニッシャー2の筒部2aの下端に設けた各スリット2fがエンドキャップ3の各位置決め突起3dにそれぞれ係合することで、フィニッシャー2に対するエンドキャップ3の回転方向の位置が決定される。
【0036】
インナエンドキャップ4は、全体形状が上下方向を向く鍔付き棒状を呈して、上部にロックノブ5、下部にダストカバー6がそれぞれ取り付けられた状態で、フィニッシャー2の中空孔2g内に上下動可能に挿入される。
【0037】
インナエンドキャップ4には、上下方向の略中央部にあって、かつ周囲に上向きのフランジ部4aを形成した拡径部4bと、拡径部4bの中心から上方へ軸状に延伸し、ロックノブ5が相対移動不能に取り付けられる棒状の第1接続部4cと、拡径部4bの中心から下方へ延伸し、インナケーブル202の上端部が相対移動不能に接続される棒状の第2接続部4dと、が設けられる。拡径部4bの下側には、ダストカバー6が取り付けられる。さらには、フランジ部4aには、周方向へ所定の間隔を有するようにして2個の係合孔4eが設けられる。
【0038】
好ましくは、フランジ部4aを形成した拡径部4bは、フィニッシャー2の中空孔2g内をガタ付き無く上下動できるように、中空孔2gの孔径よりも僅かに小さなものとする。また、第1接続部4cは、
図12、13に示すように、横断面が略小判型を呈している。
【0039】
ロックノブ5は、上端が閉塞し、下方が開口する中空孔5aを有する有底筒状を呈して、略上半部がドアDの室内側に露出する意匠部5bを形成し、略下半部がフィニッシャー2の中空孔2gに挿入されて室内側に露出しない挿入部5cを形成する。
【0040】
ロックノブ5における挿入部5cの外周面には、中空孔5aに対して直交する方向へ貫通して中空孔5aに連通する確認孔5dが設けられ、同じく挿入部5cの下部には、下端に設けられたスリット5eによって挿入部5cの径方向へ弾性変形可能であって、下端に爪部5fを有する2個の弾性片5gが設けられる。
【0041】
ロックノブ5は、中空孔5aにインナエンドキャップ4の第1接続部4cが挿入されることでインナエンドキャップ4の上部に相対移動不能に取り付けられる。
【0042】
図7~11から理解できるように、ロックノブ5がインナエンドキャップ4に取り付けられた状態においては、インナエンドキャップ4の第1接続部4cがロックノブ5の中空孔5aに対して確認孔5dに重なる位置まで挿入され、ロックノブ5の下端部がインナエンドキャップ4における第1接続部4cの外周面とフランジ部4aの内周面との間に嵌入し、ロックノブ5の下端がインナエンドキャップ4における拡径部4bの上面に当接し、ロックノブ5の弾性片5gの爪部5fがインナエンドキャップ4の各係合孔4eにそれぞれ係合している。これによって、ロックノブ5は、インナエンドキャップ4に対して相対移動不能に取り付けられている。
【0043】
上述のように、ロックノブ5における挿入部5cの下端をインナエンドキャップ4の拡径部4bに上方から当接させて、インナエンドキャップ4に対するロックノブ5の上下方向の取付位置を規制することによって、インナエンドキャップ4にロックノブ5を取り付ける際、ロックノブ5の中空孔5aにインナエンドキャップ4の第1接続部4cを挿入して、ロックノブ5を押し込むことでインナエンドキャップ4に対して正規の位置に簡単かつ確実に取り付けることができる効果を奏する。
【0044】
さらには、特に
図10、11から理解できるように、インナエンドキャップ4の第1接続部4cがロックノブ5の中空孔5aに対して正規の位置まで挿入された状態にあっては、確認孔5dが第1接続部4cにより閉鎖された状態となるため、ロックノブの5の取り付け作業時に、ロックノブ5の確認孔5gを覗くことで、ロックノブ5の中空孔5に対して、インナエンドキャップ4の第1接続部4cが正規の位置まで挿入されているか否かを目視で確認できる。
【0045】
さらには、ロックノブ5の下端部がインナエンドキャップ4における第1接続部4cの外周面とフランジ部4aの内周面との間に嵌入されるため、ロックノブ5における挿入部5cの下部をインナエンドキャップ4に対して安定させて取り付けることが可能となる。
【0046】
好ましくは、インナエンドキャップ4の第1接続部4cは、小判型の長軸方向の外周面がロックノブ5の中空孔5aの内周面を摺接するようにする。また、ロックノブ5の弾性片5gを、
図13に示すように、第1接続部4cにおける短軸方向の外側面に対向する位置に設定する。これによって、特に、
図13から理解できるように、ロックノブ5に設けた弾性片5gの爪部5fを、インナエンドキャップ4のフランジ部4aより包囲された狭い空間で、弾性片5gを弾性変形させることで、爪部5fをフランジ部4aに設けた係合孔4eに係合させることができると共に、インナエンドキャップ4に対するロックノブ5の誤組付けを確実に抑止できる。すなわち、ロックノブ5をインナエンドキャップ4に接続する際、弾性片5gを第1接続部4cにおける短軸方向の外周面に対向する位置ではなく、弾性片5gを第1接続部4cにおける長軸方向の外周面に対向する位置にして、ロックノブ5をインナエンドキャップ4に接続しようとすると、この場合には、弾性片5gが縮径方向へ弾性変形不能な状態にあって、ロックノブ5を第1接続部4cの外周面とフランジ部4aの内周面との間に嵌入できないため、インナエンドキャップ4に対するロックノブ5の誤組付けを確実に抑止できる。
【0047】
ロックノブ5は、インナケーブル201に接続されたインナエンドキャップ4に相対移動不能に取り付けられることで、ドアロック装置Lの施解錠機構のアンロック状態、及びロック状態の切り替え作動に応じて、意匠部5bがフィニッシャー2から上方へ突出する特に
図8、10に示すアンロック位置、及びフィニッシャー2と略平坦になる
図9、11に示すロック位置に移動する。
【0048】
ダストカバー6は、筒状を呈して、インナエンドキャップ4の拡径部4bの下側に固定されることで、ロックノブ5のロック操作及びアンロック操作、ドアロック装置Lの施解錠機構のロック状態及びアンロック状態への切り替え作動に応じて、インナエンドキャップ4及びロックノブ5と一体となって、フィニッシャー2の中空孔2g内を上下方向へ移動する。
【0049】
インナエンドキャップ4に対するダストカバー6の固定は、インナエンドキャップ4の第2接続部4dをダストカバー6内に上側から挿入して、ダストカバー6の上端を拡径部4bの下面に当接させて、ダストカバー6の上部内側に設けた突部6aをインナエンドキャップ4における拡径部4bの下側外周面に設けた凹溝4fに係合することで達成される。
【0050】
特に
図14、15に示すように、ダストカバー6の内径は、ダストカバー6の内周面とインナエンドキャップ4の第2接続部4dの外周面との間に間隙を形成し、当該間隙にエンドキャップ3における筒部3aの縮径の上半部が挿入されるように設定される。好ましくは、ダストカバー6の下端は、ロックノブ5が可動範囲の最上位置であるアンロック位置にあっても、エンドキャップ3における筒部3aの上端よりも下側にあって、かつ外側に位置するようにする。さらに、好ましくは、ダストカバー6の外径は、インナエンドキャップ4における拡径部4bの直径よりも僅かに小さくなるように設定される。
【0051】
本実施形態の車両用ドアロックノブ装置1は、上述のように構成されることによって、以下のような作用効果を奏する。
【0052】
ロックノブ5に付着した雨水等の液体や塵埃等の異物がフィニッシャー2の中空孔2g内に流れ落ちたとしても、フィニッシャー2内に流れ落ちた異物は、
図15に矢印Wで示すように、フィニッシャー2の排水孔2dからフィニッシャー2外に排水されることで、アウタケーブル201内に浸入することはない。また、フィニッシャー2の排水孔2dから排水しきれなった異物は、ダストカバー6の外周面を伝わってさらに下方に流れ落ちるが、ダストカバー6の下端は、常時、エンドキャップ3の筒部3aの上端よりも下側で、かつ外側に位置するため、流れ落ちた異物は、エンドキャップ3の筒部3aの外側に誘導されるため、アウタケーブル201内に浸入することはない。
【0053】
さらには、インナエンドキャップ4に対するロックノブ5の取り付けは、ロックノブ5における挿入部5cの下端をインナエンドキャップ4の拡径部4bに上方から当接させることで、ロックノブ5を簡単かつ確実に正規の位置に取り付けることができる。
【0054】
さらには、ダストカバー6の外径をインナエンドキャップ4の拡径部4bよりも僅かに小径としたことによって、インナエンドキャップ4、ロックノブ5及びダストカバー6の上下方向への移動時に、ダストカバー6の外周面がフィニッシャー2における中空孔2の内周面に摺接しないので、ロックノブ5の操作に摺動抵抗が生じない。これによって、ロックノブ5の操作を円滑に行うことができ、かつダストカバー6の摩耗を抑制できる作用効果を奏する。
【0055】
さらには、ダストカバー6をロックノブ5と別体としたことによって、ロックノブ5の汎用性を高めることが可能となる。また、インナエンドキャップ4に対するダストカバー6の取り付けに際しては、ダストカバー6の上端をインナエンドキャップ4における拡径部4bの下側に当接させることで、ダストカバー6を正規の位置に取り付けることができる作用効果を奏する。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更及び組み合わせを施すことが可能である。
【0057】
図16は、他の実施例における要部の拡大断面図である。他の実施例は、インナエンドキャップ4に対してロックノブ5をより強固に取付可能とするため、インナエンドキャップ4の第1接続部4cに係合突起4hを設けて、係合突起4hをロックノブ5に設けた確認孔5dに弾性係合させる。確認窓5dに対する係合突起4hの弾性係合は、第1接続部4cに軸方向へスリット4gを設けて、第1接続部4cを径方向へ弾性変形可能とすることによって達成される。これによって、インナエンドキャップ4に対するロックノブ5の取り付けがより強固になると共に、インナエンドキャップ4の第1接続部4cがロックノブ5の中空孔5aに対して正規の位置まで挿入されているか否かをより確実に目視可能となる。
【0058】
図17は、更に他の実施例における車両用ドアロックノブ装置1の横断面図である。
図17に示す更に他の実施例は、インナエンドキャップ4に対してのロックノブ5の回転及び倒れを抑制するため、インナエンドキャップ4のフランジ部4aの内周面にロックノブ5の回転を規制する規制部4iを設けている。これによって、インナエンドキャップ4に対してのロックノブ5の回転及び倒れが抑制され、インナエンドキャップ4とロックノブ5の係合が安定しロックノブ5の脱落を防ぐことができる。規制部4iは、フランジ部4aと一体として製作することができる。規制部4iの高さは、フランジ部4aの高さ以下の範囲で、任意に決めることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用ドアロックノブ装置 2 フィニッシャー
2a 筒部 2b 鍔部
2c 爪部 2d 排水孔
2e 係合孔 2f スリット
2g 中空孔 3 エンドキャップ
3a 筒部 3b 弾性片
3c 爪部 3d 位置決め突起
3e ストッパ部 3f 中空孔
3g 仕切り壁 3h 孔
4 インナエンドキャップ 4a フランジ部
4b 拡径部 4c 第1接続部
4d 第2接続部 4e 係合孔
4f 凹溝 4g スリット
4h 係合突起 4i 規制部
5 ロックノブ 5a 中空孔
5b 意匠部 5c 挿入部
5d 確認孔 5e スリット
5f 爪部 5g 弾性片
6 ダストカバー 6a 突部
20 ボーデンケーブル 201 アウタケーブル
202 インナケーブル D ドア
D1 取付孔 IH インサイドハンドル
L ドアロック装置 OH アウトサイドハンドル
W 異物