(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080578
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ミラベグロン及びその製造中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 277/40 20060101AFI20240606BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C07D277/40
A61P13/10
A61K31/426
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106497
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022193516
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515242434
【氏名又は名称】ジャパンソファルシム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慎平
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC82
4C086NA03
4C086NA20
4C086ZA81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミラベグロン及びその製造中間体の安全性、効率性及び/又は経済性に優れた製造方法を提供する。
【解決手段】化合物(III)又はそのフリー体と化合物(II)とを反応させ、化合物(I)を得る工程に加え、以下の(1)、(2)及び(3)から選択される工程を含むミラベグロンの製造方法:
(1)塩基、縮合剤、及び触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物等の補助触媒の存在下、化合物(VII)と、化合物(VI)とを反応させ、化合物(V)を得る第一工程、(2)アルキル化剤の存在下、化合物(V)に、還元剤を作用させ、化合物(IV)を得る第二工程、(3)塩基、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、化合物(IV)に、ヒドラジン一水和物を作用させ、化合物(III)又はそのフリー体を得る第三工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、
【化1】
式(V)で表される化合物を得る第一工程;
【化2】
式(V)で表される化合物から式(IV)で表される化合物を得る第二工程;
【化3】
式(IV)で表される化合物から式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得る第三工程;及び
【化4】
式(III)で表される化合物又はそのフリー体と、式(II)で表される化合物とを反応させ、式(I)で表される化合物を得る第四工程を含む、
【化5】
式(I)で表される化合物の製造方法であって、
【化6】
以下の(1)、(2)及び(3)から選択される少なくとも1つの工程を含む、前記製造方法:
(1)前記第一工程が、N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、HCTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、式(V)で表される化合物を得ることを含む工程であり、
(2)前記第二工程が、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるアルキル化剤、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させ、式(IV)で表される化合物を得ることを含む工程であり、そして
(3)前記第三工程が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、ヒドラジン一水和物を作用させ、式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得ることを含む工程である。
【請求項2】
前記(1)の工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(2)の工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(3)の工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(2)及び(3)の工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(1)、(2)及び(3)の工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(1)の工程において、塩基がN-メチルモルホリンであり、縮合剤がEDCI・HClであり、補助触媒が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物であり、前記補助触媒の使用量が、式(IV)で表される化合物1モルに対して、0.04~0.06モルである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記(1)の工程において、塩基の添加後に、式(VII)で表される化合物が添加される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(2)の工程において、ジメチル硫酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウムを作用させる、請求項1又は3に記載の製造方法。
【請求項10】
前記(3)の工程において、炭酸カリウム、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対して、1.3~2.0モルのヒドラジン一水和物を作用させる、請求項1又は4に記載の製造方法。
【請求項11】
前記(3)の工程において、塩酸を添加して、式(III)で表される化合物を析出させることを含む、請求項1又は4に記載の製造方法。
【請求項12】
前記(3)の工程において、塩酸を添加することなく、式(III)で表される化合物のフリー体を析出させることを含む、請求項1又は4に記載の製造方法。
【請求項13】
N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、HCTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させることを含む、
【化7】
式(V)で表される化合物の製造方法。
【化8】
【請求項14】
塩基がN-メチルモルホリンであり、縮合剤がEDCI・HClであり、補助触媒が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物であり、前記補助触媒の使用量が、式(IV)で表される化合物1モルに対して、0.04~0.06モルである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるメチル化剤、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、
【化9】
水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させることを含む、式(IV)で表される化合物の製造方法。
【化10】
【請求項16】
ジメチル硫酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウムを作用させることを含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、
【化11】
ヒドラジン一水和物を作用させることを含む、式(III)で表される化合物又はそのフリー体の製造方法。
【化12】
【請求項18】
炭酸カリウム、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対して、1.3~2.0モルのヒドラジン一水和物を作用させることを含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
塩酸を添加して、式(III)で表される化合物を析出させることを含む、請求項17又は18に記載の製造方法。
【請求項20】
塩酸を添加することなく、式(III)で表される化合物のフリー体を析出させることを含む、請求項17又は18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラベグロン及びその製造中間体の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラベグロン(Mirabegron)(化学名:2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)は、以下の式(I)で表される化合物であり、アドレナリンβ3受容体作動性を有し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁等の治療に有効な化合物であることが知られている。
【0003】
【0004】
ミラベグロンの製造方法としては、例えば、特許文献1には、以下の化学式で表される製造方法が開示されている。
【0005】
【化2】
(式中、EDCI・HClは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を、HOBtは1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを、Et
3Nはトリエチルアミンを、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを、NaBH
4は水素化ホウ素ナトリウムを、BF
3・THFは三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体を、THFはテトラヒドロフランを、DMIは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを、10%Pd/Cは10%パラジウム-炭素を、及びMeOHはメタノールを表す)
上記反応において、例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールや水素ガス(H
2)には爆発性があり、パラジウムは毒性が高く、水素化ホウ素ナトリウム及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体を用いるボラン還元では腐食性の高いフッ化水素(HF)が発生するなど、安全性、効率性及び/又は経済性の観点から、なお改善の余地がある。
また、特許文献2には、以下の化学式で表されるミラベグロンの製造中間体の製造方法が開示されている。
【0006】
【化3】
(式中、MeOHはメタノールを表す)
また、特許文献3には、以下の式Iの化合物又はその塩を溶媒中で還元剤と反応させてミラベグロンの製造中間体である式Aの化合物の製造方法が開示されている。
【0007】
【化4】
特許文献2及び特許文献3に開示された製造方法では、過剰のヒドラジン一水和物(NH
2NH
2・H
2O)の使用を必要とするため、反応後の生成物の晶析を困難とし、また、ヒドラジン一水和物には爆発性があるため、過剰のヒドラジン一水和物の処理を困難となるなど、安全性、効率性及び/又は経済性の観点から、なお改善の余地がある。
また、特許文献4には、以下の式IIIの化合物又はその塩を適切なアルコール溶媒の存在下、好ましい温度でヒドラジン水和物、鉄化合物及び活性炭で還元して、ミラベグロンの製造中間体である式-IIの化合物又は塩の製造方法が開示されている。
【0008】
【化5】
特許文献4に開示された製造方法では、過剰のヒドラジン一水和物(NH
2NH
2・H
2O)の使用を必要とするため、反応後の生成物の晶析を困難とし、また、ヒドラジン一水和物には爆発性があるため、過剰のヒドラジン一水和物の処理を困難とするため、安全性、効率性及び/又は経済性の観点から、なお改善の余地がある。
また、特許文献5には、以下の還元剤の存在下で式IIのニトロ化合物又はその塩を還元して、ミラベグロンの製造中間体である式IIIのアミン化合物又はその塩の製造方法が開示されている。
【0009】
【化6】
特許文献5に開示された製造方法では、還元剤としてラネーニッケルを使用している。ラネーニッケルは安価で経済性の面で利点があるが、乾燥状態で空気に触れることで自然発火の危険性があり、大スケールでの製造では、特に安全性の観点から、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-105685号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第113880720号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第113816864号明細書
【特許文献4】IN202141028209公報
【特許文献5】IN02679CH2015公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの課題は、安全性、効率性及び/又は経済性に優れた、ミラベグロンの製造方法を提供することである。本発明の他の1つの課題は、安全性、効率性及び/又は経済性に優れた、ミラベグロンの製造中間体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行い、ミラベグロンの製造方法を改良し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は以下の側面を有する。
<1>式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、
【0014】
【化7】
式(V)で表される化合物を得る第一工程;
【0015】
【化8】
式(V)で表される化合物から式(IV)で表される化合物を得る第二工程;
【0016】
【化9】
式(IV)で表される化合物から式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得る第三工程;及び
【0017】
【化10】
式(III)で表される化合物又はそのフリー体と、式(II)で表される化合物とを反応させ、式(I)で表される化合物を得る第四工程を含む、
【0018】
【化11】
式(I)で表される化合物の製造方法であって、
【0019】
【化12】
以下の(1)、(2)及び(3)から選択される少なくとも1つの工程を含む、前記製造方法:
(1)前記第一工程が、N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HCTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TATU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HOTU)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、及びブロモトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBroP)からなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、式(V)で表される化合物を得ることを含む工程であり、
(2)前記第二工程が、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるアルキル化剤(特に、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるメチル化剤)、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させ、式(IV)で表される化合物を得ることを含む工程であり、そして
(3)前記第三工程が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、ヒドラジン一水和物を作用させ、式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得ることを含む工程である。
【0020】
<2>前記(1)の工程を含む、<1>に記載の製造方法。
<3>前記(2)の工程を含む、<1>に記載の製造方法。
<4>前記(3)の工程を含む、<1>に記載の製造方法。
<5>前記(2)及び(3)の工程を含む、<1>に記載の製造方法。
<6>前記(1)、(2)及び(3)の工程を含む、<1>に記載の製造方法。
<7>前記(1)の工程において、塩基がN-メチルモルホリンであり、縮合剤がEDCI・HClであり、補助触媒が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物であり、前記補助触媒の使用量が、式(IV)で表される化合物1モルに対して、0.04~0.06モルである、<1>、<2>及び<6>のいずれか1つに記載の製造方法。
<8>前記(1)の工程において、塩基の添加後に、式(VII)で表される化合物が添加される、<1>、<2>、<6>及び<7>のいずれか1つに記載の製造方法。
<9>前記(2)の工程において、ジメチル硫酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウムを作用させる、<1>、<3>、<5>及び<6>のいずれか1つに記載の製造方法。
<10>前記(3)の工程において、炭酸カリウム、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対して、1.3~2.0モルのヒドラジン一水和物を作用させる、<1>、<4>、<5>及び<6>のいずれか1つに記載の製造方法。
<11>前記(3)の工程において、塩酸を添加して、式(III)で表される化合物を析出させることを含む、<1>、<4>、<5>、<6>及び<10>のいずれか1つに記載の製造方法。
<12>前記(3)の工程において、塩酸を添加することなく、式(III)で表される化合物のフリー体を析出させることを含む、<1>、<4>、<5>、<6>及び<10>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0021】
<13>N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、HCTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させることを含む、
【0022】
【0023】
【化14】
<14>塩基がN-メチルモルホリンであり、縮合剤がEDCI・HClであり、補助触媒が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物であり、前記補助触媒の使用量が、式(IV)で表される化合物1モルに対して、0.04~0.06モルである、<13>に記載の製造方法。
<15>ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるアルキル化剤(特に、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるメチル化剤)、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、
【0024】
【化15】
水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させることを含む、式(IV)で表される化合物の製造方法。
【0025】
【化16】
<16>ジメチル硫酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウムを作用させることを含む、<15>に記載の製造方法。
<17>炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、
【0026】
【化17】
ヒドラジン一水和物を作用させることを含む、式(III)で表される化合物又はそのフリー体の製造方法。
【0027】
【化18】
<18>炭酸カリウム、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対して、1.3~2.0モルのヒドラジン一水和物を作用させることを含む、<17>に記載の製造方法。
<19>塩酸を添加して、式(III)で表される化合物を析出させることを含む、<17>又は<18>に記載の製造方法。
<20>塩酸を添加することなく、式(III)で表される化合物のフリー体を析出させることを含む、<17>又は<18>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、安全性、効率性及び/又は経済性に優れた、ミラベグロン又はその製造中間体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るミラベグロン又はその製造中間体の製造方法の実施形態を説明する。
<ミラベグロンの製造方法>
本発明の1つの実施形態は、式(VII)で表される化合物(すなわち、(R)-マンデル酸)と、式(VI)で表される化合物(すなわち、4-ニトロフェネチルアミン一塩酸塩)とを反応させ、
式(V)で表される化合物(すなわち、(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド)を得る第一工程;
式(V)で表される化合物から式(IV)で表される化合物(すなわち、(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩)を得る第二工程;
式(IV)で表される化合物から式(III)で表される化合物(すなわち、(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール二塩酸塩)又はそのフリー体(すなわち、(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール)を得る第三工程;及び
式(III)で表される化合物又はそのフリー体と、式(II)で表される化合物(すなわち、2-アミノ-1,3-チアゾール-5-イル酢酸)とを反応させ、式(I)で表される化合物(すなわち、ミラベグロン)を得る第四工程を含む、式(I)で表される化合物の製造方法であって、
以下の(1)、(2)及び(3)から選択される少なくとも1つの工程を含む、前記製造方法:
(1)前記第一工程が、N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、HCTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、式(V)で表される化合物を得ることを含む工程であり、
(2)前記第二工程が、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるアルキル化剤(特に、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるメチル化剤)、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させ、式(IV)で表される化合物を得ることを含む工程であり、そして
(3)前記第三工程が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、ヒドラジン一水和物を作用させ、式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得ることを含む工程である、に関する。
【0030】
1つの実施形態において、前記(1)、(2)又は(3)の工程が適用されない工程は、例えば、特許文献1又は2等に記載の、それ自体公知の方法又はそれに準じる方法を適用することができる。
本発明に係るミラベグロンの製造方法は、1つの実施形態において、前記(1)の工程、(2)の工程及び(3)の工程から選択される少なくとも1つの工程を含み、別の実施形態において、前記(1)の工程、(2)の工程及び(3)の工程から選択される2つの工程(例えば、前記(1)の工程及び(2)の工程;前記(2)の工程及び(3)の工程;又は前記(1)の工程及び(3)の工程)を含み、更に別の実施形態において、前記(1)の工程、(2)の工程及び(3)の工程の全てを含む。
【0031】
<第一工程>
第一工程は、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、式(V)で表される化合物を得る工程である。
1つの実施形態において、第一工程は、(1)N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、HCTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させ、式(V)で表される化合物を得ることを含む工程であることが好ましい。
【0032】
本明細書において、
EDCI・HClは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を表し、
EDCIは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを表し、
DCCは、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドを表し、
DICは、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミドを表し、
DMT-MMは、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドを表し、
HATUは、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、
HBTUは、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、
HCTUは、O -(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、
TATUは、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩を表し、
TBTUは、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩を表し、
COMUは、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、
HOTUは、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、
PyBOPは、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、
BOPは、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩を表し、そして
PyBroPは、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩を表す。
【0033】
第一工程において、従来法では、比較的高価であり、爆発性を有する1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBtと略す場合がある)等の補助触媒を、原料化合物(例えば、式(IV)で表される化合物)1モルに対し、約1モル以上使用する必要があるのに対し、上記(1)の工程を採用することにより、触媒量(原料化合物(例えば、式(IV)で表される化合物)1モルに対し、0.01~1モル、好ましくは0.04~0.06モル、より好ましくは0.05モル)の使用に低減することができ、従来法と概ね同等の収率で目的化合物を得ることができるため、安全性及び経済性に優れた製造方法を提供することができる。
【0034】
上記(1)の工程における、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物との反応は、通常、溶媒中で、式(VI)で表される化合物1モルに対し、式(VII)で表される化合物0.8~1.2モル、好ましくは0.88~1.12モル用いて行われる。
前記溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、及びそれらの混合溶媒等が例示され、中でもエタノール、メタノール、水及びそれらの混合溶媒が好ましく、特に、エタノール、水及びそれらの混合溶媒が好ましい。
前記補助触媒としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール等が例示され、中でも1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物又は1-ヒドロキシベンゾトリアゾールであることが好ましく、特に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物が好ましい。
反応に使用される溶媒の量は、通常、式(VI)で表される化合物の重量に対し、2~10vol.、好ましくは6vol.であり得る。本明細書において、「重量に対し、Xvol.」と記載する場合、「1kgに対して、XL」又は「1gに対して、XmL」であることを意味する。
【0035】
反応に使用される縮合剤の量は、通常、式(VI)で表される化合物1モルに対し、1~1.5モル、好ましくは1.12モルであり得る。
反応に使用される塩基の量は、通常、式(VI)で表される化合物1モルに対し、1~2.5モル、好ましくは2.2モルであり得る。
反応温度は、通常、0~80℃、好ましくは30~40℃であり得る。
反応時間は、反応物の相対的使用量や、反応温度、濃度等により異なるが、通常、2~18時間であり得る。
上記(1)の工程において、塩基がN-メチルモルホリンであり、縮合剤がEDCI・HClであり、補助触媒が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物であることが好ましい。
また、上記(1)の工程において、塩基の添加後に、式(VII)で表される化合物が添加されることが好ましい。塩基の添加後に、式(VII)で表される化合物が添加されることにより、反応液の固化を抑制し、より高収率で生成物を得ることができる。
【0036】
式(VII)で表される化合物、式(VI)で表される化合物、前記溶媒、塩基、縮合剤及び補助触媒は、それぞれ、それ自体公知の化合物であるので、それ自体公知の方法に従って製造するか、又は商業的に入手することができる。
【0037】
第一工程で得られる式(V)で表される化合物は、単離して、又は単離することなく、第二工程に付すことができるが、単離して第二工程に付すことが好ましい。すなわち、1つの実施形態として、第一工程は、式(V)で表される化合物の単離工程を含む。
式(V)で表される化合物の単離は、それ自体公知の方法を適用することができ、例えば、析出した結晶をろ取し、ろ取した結晶を水等の洗浄液で洗浄し、乾燥することにより行うことができる。前記乾燥は、例えば、減圧乾燥を適用することができ、好ましくは、70℃における真空乾燥が適用できる。
【0038】
第一工程の1つの側面は、ミラベグロンの有用な製造中間体である式(V)で表される化合物の製造方法である。したがって、その具体例及び好適な態様の例示は、第一工程のそれらがそのまま適用できる。
1つの実施形態として、ミラベグロンの有用な製造中間体である式(V)で表される化合物の製造方法は、N-メチルモルホリン、モルホリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びジイソプロピルアミンからなる群より選択される塩基、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、HCTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤、並びに触媒量の、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールからなる群より選択される補助触媒の存在下、式(VII)で表される化合物と、式(VI)で表される化合物とを反応させることを含む。
別の実施形態として、前記式(V)で表される化合物の製造方法において、塩基がN-メチルモルホリンであり、縮合剤がEDCI・HClであり、補助触媒が1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物であり、前記補助触媒の使用量が、式(IV)で表される化合物1モルに対して、0.04~0.06モルである。
【0039】
<第二工程>
第二工程は、式(V)で表される化合物から式(IV)で表される化合物を得る工程である。
1つの実施形態において、第二工程は、(2)ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるアルキル化剤(特に、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるメチル化剤)、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させ、式(IV)で表される化合物を得ることを含む工程であることが好ましい。
【0040】
第二工程において、従来法では、水素化ホウ素ナトリウム及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体を用いるボラン還元が適用されることにより、ガラス等に対する腐食性を有するフッ化水素が発生するため、耐腐食性を有する設備が必要であるのに対し、上記(2)の工程を採用することにより、フッ化水素の発生をなくすことができ、汎用設備の使用が可能であり、特にジメチル硫酸は安価なメチル化剤であるため、安全性及び経済性に優れた製造方法を提供することができる。
【0041】
上記(2)の工程における、式(V)で表される化合物から式(IV)で表される化合物への変換反応は、通常、溶媒中で、式(V)で表される化合物1モルに対し、メチル化剤、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸1.5~3.5モル、好ましくは2モルの存在下、式(V)で表される化合物1モルに対し、還元剤1.5~3.5モル、好ましくは2モルを作用させて行われる。
前記溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジオキソラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びそれらの混合溶媒等が例示され、中でも2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン又はテトラヒドロフランが好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。
反応に使用される溶媒の量は、通常、式(V)で表される化合物の重量に対し、4~10vol.、好ましくは8vol.であり得る。
反応温度は、通常、45~70℃、好ましくは48~52℃であり得る。
反応時間は、反応物の相対的使用量や、反応温度、濃度等により異なるが、通常、2~8時間であり得る。
反応に使用されるアルキル化剤としては、ジメチル硫酸又はジエチル硫酸が、比較的安価であり、反応の目的化合物の製造収率も好適なので好ましく、特にジメチル硫酸が好ましい。
上記(2)の工程において、ジメチル硫酸の存在下、式(V)で表される化合物に、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを作用させることが好ましい。
【0042】
前記溶媒、メチル化剤、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸及び還元剤は、それぞれ、それ自体公知の化合物であるので、それ自体公知の方法に従って製造するか、又は商業的に入手することができる。
【0043】
第二工程で得られる式(IV)で表される化合物は、単離して、又は単離することなく、第三工程に付すことができるが、単離して第三工程に付すことが好ましい。すなわち、1つの実施形態として、第二工程は、式(IV)で表される化合物の単離工程を含む。
式(IV)で表される化合物の単離は、それ自体公知の方法を適用することができ、例えば、前記反応終了後に、塩酸、メタノール及び水を加え、酢酸エチル等で抽出することにより行うことができる。前記酢酸エチルによる抽出においては、水層のpHを、pH8.0~11.0、好ましくは9.0~10.0に調整することが好ましく、40~60℃、好ましくは50℃に加温した酢酸エチルで抽出することにより、抽出効率を高めることができ好ましい。水層のpHを上記の範囲に調整することにより、無機物の析出を抑制することができ、抽出効率を高めることができる。前記pHの調整には、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、又は炭酸ナトリウム等の無機塩類を使用することができ、炭酸カリウムが好ましい。
上記のように抽出した式(IV)で表される化合物は、抽出液を濃縮して結晶を析出させ、析出した結晶をろ取し、ろ取した結晶を氷冷したイソプロパノール等の洗浄液で洗浄し、乾燥することにより行うことができる。前記乾燥は、例えば、減圧乾燥を適用することができ、好ましくは、真空乾燥が適用できる。
【0044】
第二工程の1つの側面は、ミラベグロンの有用な製造中間体である式(IV)で表される化合物の製造方法である。したがって、その具体例及び好適な態様の例示は、第二工程のそれらがそのまま適用できる。
1つの実施形態として、ミラベグロンの有用な製造中間体である式(IV)で表される化合物の製造方法は、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、ヨウ化エチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるアルキル化剤(特に、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル及びヨウ化メチルからなる群より選択されるメチル化剤)、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、又はトリフルオロ酢酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウムから選択される還元剤を作用させることを含む。
別の実施形態として、前記式(IV)で表される化合物の製造方法において、ジメチル硫酸の存在下、式(V)で表される化合物に、水素化ホウ素ナトリウムを作用させることを含む。
【0045】
<第三工程>
第三工程は、式(IV)で表される化合物から式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得る工程である。
1つの実施形態において、第三工程は、(3)炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、ヒドラジン一水和物を作用させ、式(III)で表される化合物又はそのフリー体を得ることを含む工程であることが好ましい。
【0046】
第三工程において、特許文献1に開示された従来法では、高価で毒性の高いパラジウムと爆発性を有する水素ガスを使用する必要があり、特許文献2に開示された従来法では、爆発性があるヒドラジン一水和物を過剰に使用する必要があるのに対し、上記(3)の工程を採用することにより、パラジウムと水素ガスの使用を回避することができ、また、ヒドラジン一水和物の使用量を大幅に削減することができるため、安全性及び経済性に優れた製造方法を提供することができる。
【0047】
上記(3)の工程における、式(IV)で表される化合物から式(III)で表される化合物又はそのフリー体への変換反応は、通常、溶媒中で、式(IV)で表される化合物1モルに対し、塩基0.8~1.2モル、好ましくは0.88~1.12モル、より好ましくは1.0モル、塩化鉄(III)六水和物0.05~0.2モル、好ましくは0.05モル、式(IV)で表される化合物10gに対し、活性炭1~5g、好ましくは3gの存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対し、ヒドラジン一水和物1.3~7.6モル、好ましくは1.3~2.0モル、より好ましくは1.5~2.0モル、特に好ましくは1.6モルを作用させて行われる。
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの混合溶媒等が例示され、中でもメタノールが好ましい。
反応に使用される溶媒の量は、通常、式(IV)で表される化合物の重量に対し、6~12vol.、好ましくは8vol.であり得る。
反応温度は、通常、50~70℃、好ましくは62~68℃であり得る。
反応時間は、反応物の相対的使用量や、反応温度、濃度等により異なるが、通常、2~6時間であり得る。
反応に使用される塩基としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムが好ましく、特に炭酸カリウムが好ましい。
上記(3)の工程において、炭酸カリウム、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対して、1.3~2.0モルのヒドラジン一水和物を作用させることが好ましい。
上記(3)の工程において、式(III)で表される化合物を得る場合には、反応液に塩酸を添加して、式(III)で表される化合物を析出させることが好ましい。本明細書において、塩酸とは、式(III)で表される化合物を析出させることができれば、その濃度は特に制限されないが、通常、塩酸の総質量に対して、30質量%以上、好ましくは33質量%以上、より好ましくは35質量%以上の塩化水素濃度を有し得る。
また、上記(3)の工程において、式(III)で表される化合物のフリー体を得る場合には、塩酸を添加することなく、式(III)で表される化合物のフリー体を析出させることが好ましい。特に、式(III)で表される化合物のフリー体を製造する場合には、塩酸を添加することなく、反応液であるメタノールと水から、式(III)で表される化合物のフリー体を晶析させることにより、使用する有機溶媒量を大幅に削減することができ、副生成物の生成を抑制することができ、より純度の高い目的物を得ることができる。
【0048】
前記溶媒、塩基、活性炭、塩化鉄(III)六水和物及びヒドラジン一水和物は、それぞれ、それ自体公知の化合物であるので、それ自体公知の方法に従って製造するか、又は商業的に入手することができる。
【0049】
第三工程で得られる式(III)で表される化合物又はそのフリー体は、単離して、又は単離することなく、第四工程に付すことができるが、単離して第四工程に付すことが好ましい。すなわち、1つの実施形態として、第三工程は、式(III)で表される化合物又はそのフリー体の単離工程を含む。
式(III)で表される化合物又はそのフリー体の単離は、それ自体公知の方法を適用することができ、例えば、反応で得られた式(III)で表される化合物又はそのフリー体を酢酸エチル及びイソプロパノール等の溶媒に溶解させ、前記溶液に塩酸を加えることにより、式(III)で表される化合物の結晶を析出させ、析出した結晶をろ取し、ろ取した結晶を氷冷したイソプロパノール等の洗浄液で洗浄し、乾燥することにより行うことができる。前記乾燥は、例えば、減圧乾燥を適用することができ、好ましくは、真空乾燥が適用できる。
一方、式(III)で表される化合物のフリー体の単離は、例えば、反応で得られた式(III)で表される化合物のフリー体の結晶を、水及びメタノールから析出させ、析出した結晶をろ取し、ろ取した結晶を水等の洗浄液で洗浄し、乾燥することにより行うことができる。前記乾燥は、例えば、減圧乾燥を適用することができ、好ましくは、真空乾燥が適用できる。
【0050】
第三工程の1つの側面は、ミラベグロンの有用な製造中間体である式(III)で表される化合物又はそのフリー体の製造方法である。したがって、その具体例及び好適な態様の例示は、第三工程のそれらがそのまま適用できる。
1つの実施形態として、ミラベグロンの有用な製造中間体である式(III)で表される化合物又はそのフリー体の製造方法は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される塩基、活性炭、並びに塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物に、ヒドラジン一水和物を作用させることを含む。
別の実施形態として、前記式(III)で表される化合物又はそのフリー体の製造方法において、炭酸カリウム、活性炭、及び塩化鉄(III)六水和物の存在下、式(IV)で表される化合物1モルに対して、1.3~2.0モルのヒドラジン一水和物を作用させることを含む。
【0051】
<第四工程>
第四工程は、式(III)で表される化合物又はそのフリー体と、式(II)で表される化合物とを反応させ、式(I)で表される化合物(すなわち、ミラベグロン)を得る工程である。
第三工程で得られる化合物が、式(III)で表される化合物のフリー体である場合、第四工程では、塩酸を添加することにより、前記フリー体の2級アミン部位を塩酸塩化(一塩酸塩、式(III-I)の化合物)としてから、式(II)で表される化合物と反応させることが好ましい。このような工程を経る場合であっても、第三工程で式(III)で表される化合物のフリー体を得ることにより、副生成物の生成が抑制された、より高純度の目的物を得ることができるので、式(I)で表される化合物をより効率的に製造することができる。
【0052】
【化19】
第四工程には、それ自体公知の方法を適用することができ、例えば、EDCI・HCl、EDCI、DCC、DIC、DMT-MM、HATU、HBTU、TATU、TBTU、COMU、HOTU、PyBOP、BOP及びPyBroPからなる群より選択される縮合剤の存在下、式(III)で表される化合物若しくはそのフリー体、又は式(III-I)で表される化合物と、式(II)で表される化合物とを反応させ、式(I)で表される化合物を得ることを含む方法を適用することができる。
反応は、通常、溶媒中で、式(III)で表される化合物若しくはそのフリー体、又は式(III-I)で表される化合物1モルに対し、式(II)で表される化合物0.8~1.2モル、好ましくは0.88~1.12モル、より好ましくは0.90~1.00モル用いて行われる。
前記溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、及びそれらの混合溶媒等が例示され、中でも水が好ましい。
反応に使用される溶媒の量は、通常、式(III)で表される化合物若しくはそのフリー体、又は式(III-I)で表される化合物の重量に対し、6~20vol.、好ましくは17vol.であり得る。
【0053】
反応に使用される縮合剤の量は、通常、式(III)で表される化合物若しくはそのフリー体、又は式(III-I)で表される化合物1モルに対し、0.9~1.2モル、好ましくは1.10モルであり得る。
反応温度は、通常、0~80℃、好ましくは20~30℃であり得る。
反応時間は、反応物の相対的使用量や、反応温度、濃度等により異なるが、通常、1~18時間であり得る。
反応時のpHは、4.5~5.5であることが好ましく、さらに、4.8~5.2であることがより好ましい。
上記反応において、縮合剤がEDCI・HClであることが好ましい。
【0054】
前記溶媒、及び縮合剤は、それぞれ、それ自体公知の化合物であるので、それ自体公知の方法に従って製造するか、又は商業的に入手することができる。
【0055】
第四工程で得られる式(I)で表される化合物の単離は、それ自体公知の方法を適用することができ、例えば、反応で得られた式(I)で表される化合物をエタノールと水の混合溶媒に加熱溶解後に冷却することにより、式(I)で表される化合物の結晶を析出させ、析出した結晶をろ取し、ろ取した結晶を水等の洗浄液で洗浄し、乾燥することにより行うことができる。前記乾燥は、例えば、減圧乾燥を適用することができる。混合溶液の体積比は、水1リットルに対し、エタノール1~2リットルが好ましく、さらに、1.2~1.8リットルがより好ましい。
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0057】
実施例1
(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド(式(V)で表される化合物)の製造
4-ニトロフェネチルアミン一塩酸塩(30.00 g, 148.04 mmol)、エタノール(180 mL)、水(15 mL)(R)-マンデル酸(22.98 g, 151.03 mmol)及びN-メチルモルホリン(32.94 g, 325.65 mmol)の混合物に対し、1-ヒドロキシベンズトリアゾール一水和物(1.14 g, 7.44 mmol)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(31.80 g, 165.88 mmol)を加え、33℃で3時間攪拌した。33℃で反応液に水(168 mL)を30分間かけて滴下した後、種晶(2 mg)を加え、同温度で2時間撹拌した。水(540 mL)を2時間かけて滴下した後、20℃に冷却し、同温度で終夜撹拌した。結晶をろ過し、水(150 mL)にて2回洗浄した。75℃で真空乾燥し、(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド(39.01 g, 129.89 mmol, 収率87.74%)を淡黄色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=2.87(2H, t, J=6.8Hz), 3.27-3.49(2H, m), 4.85(1H, d, J=4.4Hz), 6.14(1H, d, J=4.0Hz), 7.25-7.31(5H, m), 7.40(2H, d, J=8.8Hz), 8.05-8.09(3H, m)
【0058】
実施例2
(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩(式(IV)で表される化合物)の製造
テトラヒドロフラン(240 mL)、(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド(30.00g, 99.89 mmol)、及び水素化ホウ素ナトリウム(7.53 g, 200.00 mmol)の混合物を冷却し、発泡に注意しながらジメチル硫酸(25.20 g, 199.8 mmol)を10℃以下で滴下した。その後、50℃に昇温し4時間撹拌した。反応混合物を冷却し、メタノール(22.3 mL, 549.84 mmol)及び濃塩酸(34.3 mL, 399.63 mmol)を10℃以下で加えた。65℃で1時間撹拌後、水(60 mL)を加えた後、94 mLまで減圧濃縮した。水(219 mL)及び30%炭酸カリウム水溶液(159 mL)を加え、pH9.0~10.0に調整後、50℃にて酢酸エチル(300 mL)で抽出した。再度、水層を酢酸エチル(300 mL)で抽出し、有機層をまとめて水(150 mL)で洗浄後、84 mLまで減圧濃縮した。イソプロパノール(302 mL)を加え、再度84 mLまで減圧濃縮した。濃縮液にイソプロパノール(218 mL)を加え55℃にて溶解し、濃塩酸(8.7 mL, 101.36 mmol)を加え結晶化し、同温度で1時間撹拌した後、10℃以下で2時間撹拌した。結晶をろ過し、氷冷したイソプロパノール(60 mL)で2回洗浄した。得られた結晶を真空乾燥し、(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩(30.47 g, 94.39 mmol, 収率94.49%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=3.04(1H, m), 3.14-3.28(5H, m), 4.99-5.03(1H, m), 6.22(1H, d, J=3.6Hz), 7.32-7.34(1H, m), 7.37-7.40(4H, m), 7.57(2H, d, J=8.8Hz), 8.22(2H, d, J=9.2Hz), 9.07(1H, br), 9.41(1H, br)
【0059】
実施例3
(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール二塩酸塩(式(III)で表される化合物)の製造
メタノール(224 mL)、(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩(28.00 g, 86.74 mmol)、活性炭(8.40 g)、及び炭酸カリウム(11.99 g, 86.75 mmol)の混合物の雰囲気を減圧窒素置換した。塩化鉄(III)6水和物(1.17 g, 4.32 mmol)を添加後、雰囲気を減圧窒素置換し、65℃まで昇温した。同温度で30分間撹拌した後、ヒドラジン一水和物(6.95 g, 138.72 mmol)を1時間かけて滴下した。その後、65℃にて4時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル(224 mL)を加え、25℃に冷却後、同温度で1時間撹拌し、固形物をろ過により取り除いた。ろ過残渣を酢酸エチル(70 mL)とメタノール(70 mL)の混合液で洗浄した後、得られたろ液を56 mLまで減圧濃縮した。濃縮液にイソプロパノール(280 mL)を加え、56 mLまで減圧濃縮した後、濃縮液にイソプロパノール(278 mL)を加え、65℃に昇温し析出した結晶を溶解した。濃塩酸(14.9 mL, 173.60 mmol)を加え結晶化し、10℃以下で4時間撹拌した。結晶をろ過し、氷冷したイソプロパノール(140 mL)で洗浄した。得られた結晶を真空乾燥し、(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール二塩酸塩(28.39 g, 86.22 mmol, 収率99.39%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=2.93(3H, m), 3.13(3H, m), 5.02(1H, d, J=7.6Hz),6.20(1H, br) 6.97(2H, d, J=8.4Hz), 7.14(2H, d, J=8.4Hz), 7.31(1H, m), 7.39(4H, m), 8.50(2H, br), 8.89(1H, br), 9.32(1H, br)
【0060】
実施例4
ミラベグロン(式(I)で表される化合物)の製造
水(170 mL)、(2-アミノ-チアゾール-4-イル)酢酸(4.80 g, 30.34 mmol)及び(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール二塩酸塩(10.0 g, 30.37 mmol)の混合液に4N水酸化ナトリウム水溶液を加えpH4.5~5.5に調整した。その後、水(10 mL)に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(6.40 g, 33.38 mmol)を有する溶液を調製し、徐々に25~30℃で反応混合物に加え、同温度で1時間撹拌した。濃塩酸(1.9 mL)、水(10 mL)を加えた後、1時間撹拌した。水(41 mL)及び4N水酸化ナトリウム水溶液(18.9 mL)の混合液をpH9.0~10.0になるまで加え結晶化した。結晶をろ過し、水(126 mL)で洗浄し、2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)の粗製湿結晶を得た。この粗製湿結晶に水(38.2 mL)及びエタノール(38.2 mL)を加え、約80℃で加熱溶解後冷却し、65℃で、2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)(62 mg)を加えた。その後、20℃まで冷却した。結晶をろ過し、水(50 mL)で洗浄した。得られた結晶を40℃で真空乾燥し、2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)(9.49 g, 23.93 mmol, 収率78.80%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=1.60(1H, brs), 2.62-2.65(4H, m), 2.70-2.80(2H, m), 3.44(2H, s), 4.59(1H, s), 5.23(1H, s), 6.29(1H, s), 6.90(2H, s), 7.11(2H, d, J=8.4Hz), 7.21(1H, m), 7.29(4H, m), 7.49(2H, d, J=8.8Hz), 10.00(1H, s)
【0061】
実施例5
(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド(式(V)で表される化合物)の製造
4-ニトロフェネチルアミン一塩酸塩(30.00 g, 148.05 mmol)、エタノール(180 mL)、1-ヒドロキシベンズトリアゾール一水和物(1.13 g, 7.40 mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(32.35 g, 168.77 mmol)の混合物に対し、10℃以下でN-メチルモルホリン(32.94 g, 325.70 mmol)を加えた後、(R)-マンデル酸(25.68 g, 168.77 mmol)を加えた。10℃以下で30分間攪拌した後、33℃で3時間攪拌した。33℃で反応液に水(168 mL)を30分間かけて滴下した後、種晶(26 mg)を加え、同温度で終夜攪拌した。水(540 mL)を2時間かけて滴下した後、20℃に冷却し、同温度で2時間攪拌した。結晶をろ過し、水(150 mL)にて2回洗浄した。70℃で真空乾燥し、(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド(41.39 g, 137.82 mmol, 収率93.09%)を淡黄色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=2.87(2H, t, J=6.8Hz), 3.27-3.49(2H, m), 4.85(1H, d, J=4.4Hz), 6.14(1H, d, J=4.0Hz), 7.25-7.31(5H, m), 7.40(2H, d, J=8.8Hz), 8.05-8.09(3H, m)
【0062】
実施例6
(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩(式(IV)で表される化合物)の製造
テトラヒドロフラン(280 mL)、(2R)-2-ヒドロキシ-N-(4-ニトロフェネチル)-2-フェニルアセトアミド(35.00 g, 116.55 mmol)、及び水素化ホウ素ナトリウム(8.82 g, 233.09 mmol)の混合物を冷却し、発泡に注意しながらジメチル硫酸(29.40 g, 233.09 mmol)を10℃以下で滴下した。その後、50℃に昇温し4時間攪拌した。反応混合物を冷却し、メタノール(26.0 mL, 641.00 mmol)及び濃塩酸(40.0 mL, 466.18 mmol)を10℃以下で加えた。65℃で30分間攪拌後、水(70 mL)を加えた後、110 mLまで減圧濃縮した。水(256 mL)及び30%炭酸カリウム水溶液(241.48 g)を加え、pH9.0~10.0に調整後、50℃にて酢酸エチル(350 mL)で抽出した。再度、水層を酢酸エチル(350 mL)で抽出し、有機層をまとめて水(175 mL)で洗浄後、98 mLまで減圧濃縮した。酢酸エチル(346 mL)を加え、133 mLまで減圧濃縮した。濃縮液にイソプロパノール(224 mL)を加え35℃にて溶解し、25℃にて濃塩酸(10.2 mL, 122.37 mmol)を加え結晶化し、同温度で30分間攪拌した後、10℃以下で1時間攪拌した。結晶をろ過し、氷冷したイソプロパノール(140 mL)で洗浄した。得られた結晶を真空乾燥し、(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩(35.36 g, 109.54 mmol, 収率93.99%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=3.04(1H, m), 3.14-3.28(5H, m), 4.99-5.03(1H, m), 6.22(1H, d, J=3.6Hz), 7.32-7.34(1H, m), 7.37-7.40(4H, m), 7.57(2H, d, J=8.8Hz), 8.22(2H, d, J=9.2Hz), 9.07(1H, br), 9.41(1H, br)
【0063】
実施例7
(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール(式(III)で表される化合物のフリー体)の製造
メタノール(280 mL)、(1R)-2-[(4-ニトロフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール一塩酸塩(35.00 g, 108.42 mmol)、活性炭(7.00 g)、及び炭酸カリウム(14.99 g, 108.42 mmol)の混合物の雰囲気を減圧窒素置換した。塩化鉄(III)6水和物(1.47 g, 5.42 mmol)を添加後、雰囲気を減圧窒素置換し、65℃まで昇温した。同温度で30分間攪拌した後、ヒドラジン一水和物(8.68 g, 173.25 mmol)を1時間かけて滴下した。その後、65℃にて3時間攪拌した。反応混合物を25℃に冷却後、固形物をろ過により取り除いた。ろ過残渣をメタノール(140 mL)で洗浄した後、得られたろ液を245 mLまで減圧濃縮した。濃縮液に42℃にて水(420 mL)を1時間以上かけて滴下した後、種結晶(116 mg)を加えて終夜攪拌した。水(315 mL)を2時間かけて加えた後、10℃以下で4時間攪拌した。結晶をろ過し、氷冷した水(140 mL)で洗浄した。得られた結晶を50℃で真空乾燥し、(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール(23.67 g, 92.33 mmol, 収率85.15%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=2.50(2H, overlapped), 2.61-2.69(4H, m), 4.60(1H, dd, J=7.6Hz, 5.2Hz), 4.81(2H, br), 5.24(1H, br), 6.46(2H, d, J=8.0Hz), 6.83(2H, d, J=8.8Hz), 7.22(1H, m), 7.30(4H, m)
【0064】
実施例8
ミラベグロン(式(I)で表される化合物)の製造
水(374 mL)、(2-アミノ-チアゾール-4-イル)酢酸(13.57 g, 85.82 mmol)及び(1R)-2-[(4-アミノフェネチル)アミノ]-1-フェニルエタン-1-オール(22.00 g, 85.82 mmol)の混合液に濃塩酸を加えpH5.0に調整した。その後、水(22 mL)に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(18.10 g, 94.40 mmol)を有する溶液を調製し、徐々に25~30℃で反応混合物に加え、同温度で1時間攪拌した。濃塩酸(7.4 mL)及び水(28 mL)の混合物を加えた後、1時間攪拌した。水(117 mL)及び4N水酸化ナトリウム水溶液(53.7 mL)の混合液をpH9.0~10.0になるまで加え結晶化した。結晶をろ過し、水(276 mL)で洗浄し、2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)の粗製湿結晶を得た。この粗製湿結晶に水(66 mL)及びエタノール(105.6 mL)を加え、約75℃で加熱溶解後冷却し、65℃で、2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)(138 mg)を加えた。その後、20℃まで冷却した。結晶をろ過し、水(110 mL)で洗浄した。得られた結晶を50℃で真空乾燥し、2-(2-アミノ-1,3-チアゾール-4-イル)-N-[4-(2-{[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ}エチル)フェニル]アセトアミド)(28.9 g, 72.88 mmol, 収率84.92%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ(ppm)=1.60(1H, brs), 2.62-2.65(4H, m), 2.70-2.80(2H,m), 3.44(2H, s), 4.59(1H, s), 5.23(1H, s), 6.29(1H, s), 6.90(2H, s), 7.11(2H, d, J=8.4Hz), 7.21(1H, m), 7.29(4H, m), 7.49(2H, d, J=8.8Hz), 10.00(1H, s)