(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080580
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】接眼表示装置及び接眼表示装置の視野角調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240606BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113356
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】202211531969.2
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】510283557
【氏名又は名称】富泰華工業(深▲セン▼)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 建榕
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA50
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA85
2H199CA88
2H199CA92
2H199CA96
(57)【要約】 (修正有)
【課題】近景のシーンであっても、ARの効果が得られる接眼表示装置を提供する。
【解決手段】本願による接眼表示装置100は、画像情報を第1光軸の方向に沿って取得するカメラモジュール13と、仮想情報の画像光を第2光軸に沿って人の目に伝送する表示モジュール11と、前記カメラモジュールに接続され、前記第1光軸の位置を変化させるように前記カメラモジュールの回転を制御することにより、前記接眼表示装置を近景視野角状態と遠景視野角状態との間で切り替える回転モジュール15と、を備え、前記遠景視野角において、前記第1光軸と前記第2光軸とがなす角度は、25°であり、前記近景視野角において、前記第1光軸と前記第2光軸とがなす角度は、13°以下である。本願は、さらに接眼表示装置の視野角調整方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼表示装置であって、
画像情報を第1光軸の方向に沿って取得するカメラモジュールをと、
仮想情報の画像光を第2光軸に沿って人の目に伝送する表示モジュールと、
前記カメラモジュールに接続され、前記第1光軸の位置を変化させるように前記カメラモジュールの回転を制御することにより、前記接眼表示装置を近景視野角の状態と遠景視野角の状態との間で切り替える回転モジュールと、を備え、
前記遠景視野角において、前記第1光軸と前記第2光軸とがなす角度は、25°であり、
前記近景視野角において、前記第1光軸と前記第2光軸とがなす角度は、13°以下であることを特徴とする接眼表示装置。
【請求項2】
前記近景視野角において、前記第1光軸とX軸の方向である第1方向とのなす角が18°~25°となることを特徴とする請求項1に記載の接眼表示装置。
【請求項3】
前記表示モジュールは、
画像光を出射する光エンジンおよび
前記画像光を人の目に投射する導波路片、を備え、
前記導波路片は前記第2光軸に垂直であることを特徴とする請求項2に記載の接眼表示装置。
【請求項4】
アッパーケースおよび保護カバーを含むケースをさらに備え、
前記光エンジンおよび前記カメラモジュールは、前記アッパーケース内に設けられ、
前記導波路片は、前記保護カバーで覆われており、
前記保護カバーは、前記保護カバーと前記第1方向とのなす角が78°~85°となるように、前記アッパーケースの一端から離れて前記人の目の方向に傾斜することを特徴とする請求項3に記載の接眼表示装置。
【請求項5】
前記人の目の状態を確認するアイトラッキング装置をさらに備え、
前記回転モジュールは、前記人の目の運動状態に応じて、前記カメラモジュールを前記遠景視野角と前記近景視野角との間で切り替えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の接眼表示装置。
【請求項6】
前記人の目と観測対象物との距離を測定する測距装置をさらに備え、
前記回転モジュールは、前記距離に応じて、前記カメラモジュールを前記遠景視野角と前記近景視野角との間で切り替えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の接眼表示装置。
【請求項7】
画像情報を第1光軸の方向に沿って取得するカメラモジュールを提供するステップと、
画像光を第2光軸に沿って人の目に伝送する表示モジュールを設けるステップと、
前記第1光軸と前記第2光軸とのなす角が13°以下となるように、前記カメラモジュールを回転するステップと、を備える接眼表示装置の視野角調整方法。
【請求項8】
前記第1光軸と前記第2光軸とのなす角が13°以下となるように、前記カメラモジュールを回転するステップは、前記第1光軸とX軸の方向である第1方向とのなす角が18°~25°となることを特徴とする請求項7に記載の接眼表示装置の視野角調整方法。
【請求項9】
前記人の目の運動状態を追跡し、前記カメラモジュールを回転させるか否かを判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の接眼表示装置の視野角調整方法。
【請求項10】
前記人の目と観測対象物との距離を測定し、前記カメラモジュールを回転させるか否かを判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の接眼表示装置の視野角調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示領域に関し、特に、接眼表示装置及び接眼表示装置の視野角調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(Augmented Reality、 Ar)は、仮想情報を実世界に融合する表示技術である。即ち、人の目により観察された実世界に基づいて、電子機器が投写する仮想画像情報を付加する。従来のヘッドマウントAR表示装置は、一般に、観察者の視野範囲内の画像を取得し、得られた画像に基づいて、観察者の視野範囲内の所定の位置に仮想画像情報を投影するカメラモジュールおよび表示モジュールを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在のカメラモジュールおよび表示モジュールは、通常、遠景のシーンにしか適用できず、観察対象が近景の距離(例えば、物体と人の目の距離が40cm未満)にある場合、人の目の垂直視野角は自動的に下がってしまうが、このときのカメラモジュールは、依然として遠景のシーンの実景を取得してしまい、その結果、人の目の注視中心がカメラモジュールが取得した実景の中心から外れてしまう。また、カメラモジュールと表示モジュールとの間に一定の距離があり、一般的に遠景シーンでの表示に適合するように両者の光軸が一定の角度となるため、近景のシーンにはカメラモジュールの撮像範囲と表示モジュールの表示範囲との重なり領域が小さくなり、ARの効果が得られなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の一態様による接眼表示装置は、
画像情報を第1光軸の方向に沿って取得するカメラモジュールをと、
仮想情報の画像光を第2光軸に沿って人の目に伝送する表示モジュールと、
前記カメラモジュールに接続され、前記第1光軸の位置を変化させるように前記カメラモジュールの回転を制御することにより、前記接眼表示装置を近景視野角の状態と遠景視野角の状態との間で切り替える回転モジュールと、を備え、
前記遠景視野角において、前記第1光軸と前記第2光軸とがなす角度は、25°であり、
前記近景視野角において、前記第1光軸と前記第2光軸とがなす角度は、13°以下である。
【0005】
本願実施例による接眼表示装置は、回転モジュールを設けることにより、カメラモジュールを近景視野角と遠景視野角とに切り替えることができる。第1光軸と第1方向Xとのなす角度を18°~25°とすることにより、使用者の使い勝手を保持させ、接眼表示装置の使用時間を延ばすことができる。第1光軸と第2光軸とがなす角度を13°以下とすることにより、カメラモジュールの視野角と表示モジュールの表示範囲とが完全に重なることを確保でき、透明表示機能の実現が容易となる。
【0006】
ある実施例では、前記近景視野角において、前記第1光軸と第1方向とのなす角が18°~25°となる。
【0007】
ある実施例では、前記表示モジュールは、画像光を出射する光エンジン、および前記画像光を人の目に投射する導波路片、を備え、前記導波路片は前記第2光軸に垂直である。
【0008】
ある実施例では、前記接眼表示装置は、アッパーケースおよび保護カバーを含むケースをさらに備え、前記光エンジンおよび前記カメラモジュールは、前記アッパーケース内に設けられ、前記導波路片は、前記保護カバーで覆われており、前記保護カバーは、前記保護カバーと前記第1方向とのなす角が78°~85°となるように、前記アッパーケースの一端から離れて前記人の目の方向に傾斜する。
【0009】
ある実施例では、前記接眼表示装置は、前記人の目の状態を確認するアイトラッキング装置をさらに備え、前記回転モジュールは、前記人の目の運動状態に応じて、前記カメラモジュールを前記遠景視野角と前記近景視野角との間で切り替えるように制御する。
【0010】
ある実施例では、前記接眼表示装置は、前記人の目と観測対象物との距離を測定する測距装置をさらに備え、前記回転モジュールは、前記距離に応じて、前記カメラモジュールを前記遠景視野角と前記近景視野角との間で切り替えるように制御する。
【0011】
本願の別の態様による接眼表示装置の視野角調整方法は、
画像情報を第1光軸の方向に沿って取得するカメラモジュールを提供するステップと、
画像光を第2光軸に沿って人の目に伝送する表示モジュールを設けるステップと、
前記第1光軸と第1方向とのなす角が18°~25°となり、前記第1光軸と前記第2光軸とのなす角が13°以下となるように前記カメラモジュールを回転させるステップと、を含む。
【0012】
本願実施例による接眼表示装置の視野角調整方法は、カメラモジュールを近景視野角に調整することで、近景の範囲での透明表示機能の実現を容易とする。第1光軸と第1方向Xとのなす角度を18°~25°とすることにより、使用者の使い勝手を保持させ、接眼表示装置の使用時間を延ばすことができる。第1光軸と第2光軸とがなす角度を13°以下とすることにより、カメラモジュールの視野角と表示モジュールの表示範囲とが完全に重なることを確保でき、透明表示機能の実現が容易となる。
【0013】
ある実施例では、前記第1光軸と第1方向とのなす角が18°~25°となり、前記第1光軸と前記第2光軸とのなす角が13°以下となるように前記カメラモジュールを回転させるステップの前には、第1光軸と第2光軸とのなす角度が25°となる遠景視野角にカメラモジュールを設定するステップが含まれる。
【0014】
ある実施例では、前記接眼表示装置の視野角調整方法は、前記人の目の運動状態を追跡し、前記カメラモジュールを回転させるか否かを判断するステップをさらに含む。
【0015】
ある実施例では、前記接眼表示装置の視野角調整方法は、前記人の目と観測対象物との距離を測定し、前記カメラモジュールを回転させるか否かを判断するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来技術における接眼表示装置の近景視野角の状態を示す模式図である。
【
図2】従来技術における接眼表示装置の近景視野角のカバー状態を示す模式図である。
【
図3】本願の一実施例における接眼表示装置の構造を示す模式図である。
【
図4】本願の一実施例におけるカメラモジュールの角度と快適度との関係図である。
【
図5】本願の一実施例におけるカメラモジュールと表示モジュールの角度の模式図である。
【
図6】本願の一実施例におけるカメラモジュールの構造を示す模式図である。
【
図7】本願の一実施例における表示モジュールの構造を示す模式図である。
【
図8】本願の一実施例における接眼表示装置の視野角の調整方法のフローチャートである。本出願は、以下の詳細な説明において上記の図面と併せてさらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願の実施例における技術的解決手段は、本出願の実施例における図面を参照して以下に明確かつ完全に説明される。なお、記載された各実施例は、本出願の実施形態の一部に過ぎず、すべての実施例ではないことは明らかである。
【0018】
本出願で使用されるすべての技術用語および科学用語は、特に定義されない限り、本出願が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本出願の明細書で使用される用語は、具体的に実施例を説明するためのものであり、本出願を限定するものではない。
【0019】
本願が所定の目的を達成するために取り得る技術手段及び効能を更に述べるために、以下、図面及び好適な実施形態を結合して、以下に詳細に説明する。
【0020】
図1を参照して、拡張現実(Augmented Reality、 Ar)に基づく表示装置である、従来の接眼表示装置900は、通常、表示モジュール91とカメラモジュール93とを備える。表示モジュール91は、人の目Eの視線方向に配置された導波路片911と、光エンジン913とを備え、光エンジン913は、導波路片911が人の目Eから遠い側の光を透過しながら光エンジン913が出射した画像光を表示するように、画像光を導波路片911に照射することにより、人の目Eが実世界の情報と、AR表示である光エンジン913により投射した仮想情報とを同時に見ることができる。
【0021】
ここで、導波路片911は、通常、グレーティング及び全反射の原理に基づいて、すなわち、光エンジン913から出射された映像光が導波路片911を照射し、グレーティングによって導波路の両側に沿って全反射し続けて、最終的に人の目Eに反射される。その過程において、光エンジン913から出射された画像光が拡散されることにより、人の目Eの視野範囲内に表示領域910が形成される(
図2参照)。具体的には、表示領域910は、表示モジュール91が人の目Eの視野範囲に仮想画像を表示可能な領域である。通常、表示モジュール91が表示する仮想画像は、人の目Eの視野範囲の全てを覆うことなく、一部のみを覆うことができる。表示モジュール91は、人の目Eの視野範囲に画像を表示可能な領域である表示領域910(
図2に示す)である。
【0022】
接眼表示装置900では、表示モジュール91が、人の目に仮想的な画像を投影し、現実世界に仮想の画像を重ねて表示することだけを可能にする。しかしながら、現実世界のシーンの情報が取得されない場合、表示モジュール91が表示する画像と現実世界のシーンとは互いに関連付けられない。AR機能をより実現しようとすると、現実世界の予定位置に仮想的な画像を重畳する必要がある。このため、カメラモジュール93を介して、人の目Eの視野範囲内のシーン情報を同期して取得する必要がある。これにより、表示モジュール91は、人の目Eが注視するシーンに応じてインタラクティブすることができる。つまり、カメラモジュール93が撮像する実景シーンの領域(すなわち撮像領域930)と表示領域910との間に、互いに重なり合う領域が要求され、この互いに重なり合う領域が、AR機能を実現可能な有効範囲F1となる。
【0023】
しかしながら、
図1及び
図2を併せて参照して、接眼表示装置900は、遠景シーンにしか適用できず、人の目Eと注視する物体との距離が40cm未満である近景シーンの場合にはAR機能を実現できない。具体的には、遠景シーンに適用する接眼表示装置900に対して、カメラモジュール93は人の目Eの視野角におけるシーン画像を取得する必要があるが、カメラモジュール93は人の目Eの位置に直接設置できない。カメラモジュール93は、通常、人の目Eの上方、すなわち、導波路片911の上方に設置されており、人の目Eの視野角におけるシーン画像を取得できるように、カメラモジュール93の光軸は、人の目Eが注視する方向に対して、一定の角度を下向きに傾ける必要があり、通常、表示モジュール91の光軸とカメラモジュール93の光軸とがなす角θは25°である。このため、近景シーンの場合には、表示領域910と撮像領域930とが近景平面Fで重なる有効範囲F1が小さく、AR機能を完全に実現することができなくなってしまう。一方、近景シーンの場合には、人の目Eの注視中心は、通常、15°から20°下方にずれることで、物体を注視する際の快適度を高める。すなわち、近景平面F上において、人の目Eの注視中心Pは、表示モジュール91の表示領域910の表示中心P1からずれるため、表示モジュール91の表示領域910が、オフセット後の人の眼Eの視線よりも上に偏向し、さらに人の眼の視野中心から外れる。
【0024】
近景シーンでのAR機能を実現するために、本願の実施例は、
図3を参照して、表示モジュール11と、第1光軸L1の方向に沿って画像情報を取得するカメラモジュール13と、回転モジュール15と、を備える接眼表示装置100を提供する。表示モジュール11は、仮想情報の画像光を第2光軸L2に沿って人の目Eに伝送するためのものである。第2光軸L2は、第1光軸L1と非ゼロの交差角を有する。回転モジュール15は、カメラモジュール13に接続されており、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度を変更させるようにカメラモジュール13の回転を制御することにより、接眼表示装置100が遠景視野角の状態と近景視野角の状態との間で切り替えることを実現する。ここで、遠景視野角の状態では、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θは25°であり、近景視野角の状態では、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αは18°~25°であり、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θは13°以下である。
【0025】
具体的には、第1方向Xは、遠景のシーンを人の目Eが水平方向に見たときに注視される方向であり、近景のシーンでは、人の目Eの注視方向が第1方向Xよりも下にずれるため、快適性が向上する。回転モジュール15は、人の目Eの注視方向のずれ及び近景シーンにおけるカメラモジュール13の撮像領域と表示モジュール11の表示領域とが重なった有効範囲が小さくなることを補正するために、カメラモジュール13を適切な角度に回転させるように制御することにより、近景シーンでのAR機能を実現する。
【0026】
表示モジュール11は、導波路片111および光エンジン113を備え、光エンジン113が導波路片111に画像光を出射し、導波路片111が画像光を人の目Eに投射することにより、人の目Eが虚像を導波路片111の人の目Eから遠い側に観察できるようにする。導波路片111は第2光軸L2に対して垂直であり、虚像は同じく第2光軸L2と交差し、導波路片111は第2光軸L2に対して垂直であり、つまり、第2光軸L2と結像平面とが交差する位置が、表示領域の幾何中心となる。カメラモジュール13は、画像採取装置を備え、第1光軸L1は、カメラモジュール13が照準する方向、すなわち、採取された画像の幾何中心である。
【0027】
図4を参照して、人の目Eと注視された物体との距離が40cmである場合を例として、カメラモジュール13の傾き角度と使用者の快適度との関係を示す。具体的には、快適度とは、使用者が接眼表示装置の使用状態での姿勢を維持して疲労が生じるまでの時間である。そのうち快適度が6分で、使用者が接眼表示装置を用いて約10~15分後に疲労が生じ始める。快適度が5分で、使用者が接眼表示装置を用いて約5~10分後に疲労が生じ始める。快適度が7分で、使用者が接眼表示装置を用いて約15~20分後に疲労が生じ始める。快適度が10分で、使用者が接眼表示装置使用し始めてから疲労が生じるまでの時間は30分より大きい。快適度が6分のときを最小使用基準とすると、このときカメラモジュール13の第1光軸L1と第1方向Xとのなす角αは18°であるが、快適度が10分のときにはカメラモジュール13の第1光軸L1と第1方向Xとのなす角αは25°となる。したがって、近景シーンでは、使用の快適性を確保するために、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角αは18°~25°となる。
【0028】
図5を参照して、近景シーンでは、表示モジュール11の第2光軸L2とカメラモジュール13の第1光軸L1とのなす角θが13°であるとき、表示モジュール11の表示領域は、正確にカメラモジュール13の撮影領域によって完全に覆われ、かつ、表示モジュール11表示領域の1つの境界線は、カメラモジュール13撮影領域の1つの境界線と重なっている。したがって、接眼表示装置100によるAR機能の実現を確保するめには、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θは13°以下となる。
【0029】
図3も参照して、第2光軸L2と第1方向Xとのなす角度βは、5°~12°である。具体的には、近景シーンでは、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αは18°~25°であり、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度Θは13°以下であるため、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度が18°のとき、第2光軸L2と第1方向Xとのなす角度βは少なくとも5°となる。一方、導波路片111は、第2光軸L2と直交し、かつ、人の目Eの前方に設けられるため、導波路片111が人の目Eに当たるように傾斜し過ぎることを防止するために、第2光軸L2と第1方向Xとがなす角度は、最大で12°である。
【0030】
以上のように、表示モジュール11とカメラモジュール13との間には、角度の組み合わせが複数含まれてもよく、例えば、第2光軸L2と第1方向Xとのなす角度βが5°とした場合、近景視野角において、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θは13°であり、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αは18°である。第2光軸L2と第1方向Xとのなす角度βを6°とした場合、近景視野角において、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θを13°とし、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αを19°とし、もしくは、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θを12°とし、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αを18°とする。第2光軸L2と第1方向Xとのなす角度βが7°とした場合、近景視野角において、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θは13°とすれば、第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αは20°とし、もしくは、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度θは12°とし、第1光軸L1と第1方向Xのなす角度αは、19°とし、もしくは、第1光軸L1と第2光軸L2のなす角度θは、11度°とし、第1光軸L1と第1方向Xとがなす角度αは、18°とする。以下、なす角度βが5°、なす角度βが13°、及びなす角度αが18°を例に説明するが、他の実施例においても、上述した他の角度であってもよく、本願はこれに制限するものではなく、なす角度αが18°~25°、なす角度βが5°~12°、及びなす角度αが13°以下であれば、本願の範囲内である。
【0031】
回転モジュール15は、カメラモジュール13を上述の近景視野角に、または近景視野角から遠景視野角に調整する回転電動機を含んでいてもよい。ただし、遠景視野角において、第1光軸L1と第2光軸L2とのなす角度は25°である。
【0032】
接眼表示装置100は、人の目Eの運動状態を観察するアイトラッキング装置17をさらに備え、回転モジュール15は、人の目Eの運動状態に応じて、カメラモジュール13を遠景視野角と近景視野角との間で切り替えるように制御する。具体的には、近景シーンでは、人の目Eの視角が第1方向Xに沿う水平視から下向きに一定の角度だけ偏向するので、人の目Eの眼球には一定の変動が生じる。アイトラッキング装置17によって、人の目Eの眼球状態に応じて人の目Eが近景シーンでの物体を見ているかどうかを判定し、それに応じてカメラモジュール13を近景視野角と遠景視野角とに切り替えることができる。
【0033】
アイトラッキング装置17は、眼球に対して赤外光を照射する赤外光源と、眼球から反射してくる赤外光を検知することで眼球の位置情報を取得するセンシング素子とを備えてもよい。具体的には、アイトラッキング装置17は、人の目Eの表面には虹彩と角膜とがあり、虹彩と角膜との境界線は一定の角度を有しているので、人の目Eから反射された赤外光を撮像することにより、虹彩と角膜との境界の位置を取得して眼球の位置、ひいては人の目Eの視線方向を判定することができる。
【0034】
接眼表示装置100は、人の目Eと観測対象物との距離を確認する測距装置19をさらに備え、回転モジュール15は、この距離に応じてカメラモジュール13を制御し、遠景視野角と近景視野角とを切り替える。具体的には、測距装置は、レーザ光を出射して反射されたレーザ光を受光することで、光線が往復する時間から物体と人の目Eとの距離を特定する飛行時間測距装置であってもよく、観測対象物と人の目Eとの距離が近景シーンの距離内、例えば40cm未満の場合に、回転モジュール15がカメラモジュール13を回転させるように制御して、近景視野角に調整するようにしてもよい。
【0035】
別の実施例では、ユーザが回転モジュール15を直接制御して、カメラモジュール13を近景視野角と遠景視野角とに切り替えるように制御してもよい。あるいは、接眼表示装置100は、接眼表示装置100が近景にあるか否かを検出する他の検出手段を備えていてもよく、これに応じてカメラモジュール13を近景視野角と遠景視野角との切替を制御する。本出願は、これに制限されるものではない。
【0036】
本願実施例では、接眼表示装置100は、アイトラッキング装置17と測距装置19のどちらか一方のみを備えてもよいし、アイトラッキング装置17と測距装置19を同時に備えてもよいし、あるいは、アイトラッキング装置17、測距装置19、その他の検出装置のいずれかまたはその組み合わせを備えてもよく、本願はこれを限定するものではない。
【0037】
図6および
図7を併せて参照して、接眼表示装置100は、アッパーケース121および保護カバー123を含むケース12をさらに備え、光エンジン113およびカメラモジュール13は、アッパーケース121内に設けられ、導波路片111は、保護カバー123で覆われており、保護カバー123は、保護カバー123と第1方向Xとのなす角が78°~85°となるように、アッパーケース121の一端から離れて人の目Eの方向に傾斜している。具体的には、アッパーケース121は、光エンジン113およびカメラモジュール13を保護するためのものであり、保護カバー123は、導波路片111を保護するためのものであり、すなわち導波路片111に対して平行に設けられている。なお、アッパーケース121は不透明な材料であってもよく、保護カバー123は透明材料であってもよい。アッパーケース121は、画像採取を行うために、カメラモジュール13の位置に対応して貫通孔122が開けられている。
【0038】
本願実施例による接眼表示装置100は、回転モジュール15を設けることにより、カメラモジュール13を近景視野角と遠景視野角とに切り替えることができ、接眼表示装置100を近景シーンと遠景シーンとに適用することができる。カメラモジュール13の第1光軸L1と第1方向Xとのなす角度αを18°~25°とすることにより、使用者の使い勝手を向上させることができる。カメラモジュール13の第1光軸L1と表示モジュール11の第2光軸L2とのなす角度θを13°以下とすることで、表示モジュール11の表示範囲をカメラモジュール13の撮像範囲によって完全に覆うことができ、表示範囲内でAR機能を完全に実現することができる。アイトラッキング装置17または測距装置19を設けることにより、接眼表示装置100がどのような使用場面にあるかを判断することで、カメラモジュール13を近景視野角と遠景視野角とに切り替えることを制御して、接眼表示装置100の使用範囲を広げることができる。
【0039】
図8を参照して、本願実施例はまた、画像情報を第1光軸の方向に取得するカメラモジュールを提供するステップS1と、第2光軸に沿って画像光を人の目に発射する表示モジュールを設けるステップS2と、第1光軸と第1方向とのなす角が18°~25°となり、第1光軸と第2光軸とのなす角が13°以下となるように、カメラモジュールを近景視野角まで回転させるステップS3と、を含む接眼表示装置の視野角調整方法を提供する。
【0040】
ステップS3の前に、第1光軸と第2光軸とのなす角度が25°となる遠景視野角にカメラモジュールを設定する。具体的には、カメラモジュールは、近景視野角と遠景視野角とに切り替え、遠景視野角において、カメラモジュールの第1光軸と表示モジュールの第2光軸とのなす角度を25°に設定する必要があり、よって遠景シーンでのAR機能の実現を確保する。
【0041】
ステップS3の前に、人の目の運動状態を追跡し、カメラモジュールを回転させるか否かを判断するステップをさらに含む。具体的には、近景シーンにおいて、人の目が15°から20°下にずれ、人の目の運動状態を追跡することで、人の目が下にずれたときに現在は近景シーンと判断してカメラモジュールを遠景視野角から近景視野角まで回転させることができる。
【0042】
ステップS3の前に、人の目と観測対象物との距離を測定し、カメラモジュールを回転させるか否かを判断するステップをさらに含む。具体的には、近景シーンでは、人の眼と観測対象物との距離が、例えば40cm未満と小さくなり、人の目と観測対象物との距離を測定することで、現在、近景シーンであるか否かを判定し、カメラモジュールを遠景視野角から近景視野角に回転させるように制御するか否かを判定することができる。
【0043】
本願実施例では、ステップS3の前に、人の目の運動状態を同時に追跡して人の目と観測対象物との距離を測定してもよいし、いずれか一方のみを選択してもよい。他の実施例では、現在のシーンが近景シーンであるか否かを他の方式で検出してもよく、本出願は、これに制限されるものではない。
【0044】
本出願実施例は、カメラモジュールを回転させて遠景視野角と近景視野角とを切り替えることにより、接眼表示装置を遠景シーンと近景シーンとに適用し、接眼表示装置の適用範囲を向上させる接眼表示装置の視野角調整方法を提供する。
【0045】
以上の実施例は、ただ本願の発明を説明するためのものであり、本出願を限定するものではなく、本出願の実質的な構想の範囲内であれば、これらの実施例に対する適宜の変更及び変化が、本出願の特許請求の範囲内であることを当業者が認識すべきである。
【符号の説明】
【0046】
100,900 接眼表示装置
11,91 表示モジュール
111,911 導波路片
913,113 光エンジン
910 表示領域
13,93 カメラモジュール
930 撮像領域
15 回転モジュール
17 アイトラッキング装置
19 測距装置
12 ケース
121 アッパーケース
122 貫通孔
123 保護カバー
L1 第1光軸
L2 第2光軸
P1 表示中心
P 注視中心
X 第1方向
E 人の目
F 近景平面
F1 有効範囲
α,β,θ なす角