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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008059
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】消耗度算出装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240112BHJP
【FI】
G05D1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109580
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】古川 直樹
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG07
5H301GG12
(57)【要約】
【課題】複数の走行手段を有する移動体が、他の移動体と協調して搬送対象物を搬送する際には、搬送対象物の重心が移動体の上にないことによって、走行手段ごとの消耗の程度が異なることがあるが、走行手段ごとの消耗の程度を容易に知ることができないという課題があった。
【解決手段】他の移動体と協調して搬送対象物を搬送する、複数の走行手段を有する移動体10における走行手段ごとの消耗の程度を示す消耗度を算出する消耗度算出装置1は、走行手段ごとに、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する重量取得部13と、移動体10の走行距離を取得する距離取得部14と、重量取得部13によって取得された値と、距離取得部14によって取得された走行距離とを用いて、走行手段ごとの消耗度を算出する算出部15とを備える。このようにして、走行手段ごとの消耗度を知ることができるようになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の移動体と協調して搬送対象物を搬送する、複数の走行手段を有する移動体における前記走行手段ごとの消耗の程度を示す消耗度を算出する消耗度算出装置であって、
前記走行手段ごとに、当該走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する重量取得部と、
移動体の走行距離を取得する距離取得部と、
前記重量取得部によって取得された値と、前記距離取得部によって取得された走行距離とを用いて、前記走行手段ごとの消耗度を算出する算出部と、を備えた消耗度算出装置。
【請求項2】
前記距離取得部は、現在位置までの移動に応じた走行距離の実績値と、現在位置から目的地までの移動に応じた走行距離の推定値とを取得し、
前記算出部は、前記走行距離の実績値を用いて算出した消耗度と、前記走行距離の推定値を用いて算出した消耗度とを加算した、目的地までの移動後の消耗度を前記走行手段ごとに算出する、請求項1記載の消耗度算出装置。
【請求項3】
前記算出部は、移動体におけるすべての前記走行手段の消耗度を用いて、当該移動体の消耗度を算出する、請求項1記載の消耗度算出装置。
【請求項4】
前記重量取得部は、移動体の重心から、搬送対象物の重心までの距離と、当該搬送対象物の重量とを用いて、前記走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する、請求項1から請求項3のいずれか記載の消耗度算出装置。
【請求項5】
前記重量取得部は、センサの測定値に基づいて、前記走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する、請求項1から請求項3のいずれか記載の消耗度算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の走行手段ごとの消耗の程度を示す消耗度を算出する消耗度算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の移動体が協調して搬送対象物を搬送することが行われている(例えば、特許文献1参照)。そのように複数の移動体が協調することによって、1個の移動体では搬送できない大きな搬送対象物や重たい搬送対象物を搬送することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-042958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の移動体が協調して搬送対象物を搬送する場合には、通常、搬送対象物の重心は、各移動体の上にないことになり、その結果、車輪などの走行手段の消耗の程度が偏ることがある。そのような場合に、例えば、走行手段ごとの消耗の程度が偏らないように移動体を配置したり、消耗の程度に応じて消耗部品を交換したりするため、移動体の各走行手段の消耗の程度を知りたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、協調搬送を行う移動体が有する各走行手段の消耗の程度を示す消耗度を算出することができる消耗度算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による消耗度算出装置は、他の移動体と協調して搬送対象物を搬送する、複数の走行手段を有する移動体における走行手段ごとの消耗の程度を示す消耗度を算出する消耗度算出装置であって、走行手段ごとに、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する重量取得部と、移動体の走行距離を取得する距離取得部と、重量取得部によって取得された値と、距離取得部によって取得された走行距離とを用いて、走行手段ごとの消耗度を算出する算出部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様による消耗度算出装置によれば、協調搬送を行う移動体が有する各走行手段の消耗の程度を示す消耗度を算出することができる。そのため、算出された消耗度を用いることによって、例えば、走行手段ごとの消耗度がより均等になるように移動体を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態による移動体の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による消耗度算出装置の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態における搬送対象物と複数の移動体とを示す平面図
図4】同実施の形態における移動体と搬送対象物の重心とを示す平面図
図5】同実施の形態における移動体と搬送対象物の重心とを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による消耗度算出装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による消耗度算出装置は、協調搬送を行う移動体が有する複数の走行手段のそれぞれについて、消耗の程度を示す消耗度を算出するものである。
【0010】
図1は、本実施の形態による移動体10の構成を示すブロック図である。本実施の形態による移動体10は、移動機構11と、移動制御部12と、通信部17と、消耗度算出装置1とを備える。消耗度算出装置1は、複数の走行手段を有する移動体10における走行手段ごとに、走行手段の消耗の程度を示す消耗度を算出するものであり、重量取得部13と、距離取得部14と、算出部15と、記憶部16とを備える。本実施の形態では、消耗度算出装置1が移動体10に含まれる場合について主に説明するが、後述するように、そうでなくてもよい。移動体10は、床面や道路などの走行面を走行手段によって走行する移動体である。
【0011】
移動体10は、他の移動体と協調して搬送対象物を搬送するものである。すなわち、搬送対象物を協調して搬送する複数の移動体の1個が移動体10となる。なお、他の移動体も、例えば、移動体10と同様の構成であってもよい。1個の搬送対象物を協調して搬送する移動体の個数は、2個以上であれば特に限定されず、例えば、2個、3個、4個などであってもよく、5個以上であってもよい。搬送対象物は、特に限定されないが、例えば、木材や鋼材などの長尺なものであってもよく、段ボール箱やコンテナなどであってもよく、搬送対象が載置されたパレットなどであってもよく、その他の搬送対象物であってもよい。
【0012】
複数の移動体が協調して搬送対象物を搬送する際には、搬送対象物は、複数の移動体の上面にまたがるように載置されてもよい。そのため、各移動体の上面は、床面などの走行面からの高さが等しいことが好適である。また、搬送対象物が載置される移動体の上面は、搬送対象物が滑りにくいようになっていることが好適である。そのため、例えば、ゴムシートなどの摩擦係数の高い高摩擦シートが移動体の上面に貼り付けられていてもよい。
【0013】
移動体10は、例えば、自律的に移動するものであってもよく、または、操作者によって直接または遠隔で操作されるものであってもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。なお、移動体10が自律的に移動するとは、移動体10がユーザ等から受け付ける操作指示に応じて移動するのではなく、自らの判断によって目的地に移動することであってもよい。その目的地は、例えば、手動で決められたものであってもよく、または、自動的に決定されたものであってもよい。また、その目的地までの移動は、例えば、移動経路に沿って行われてもよく、または、そうでなくてもよい。また、自らの判断によって目的地に移動するとは、例えば、進行方向、移動や停止などを移動体10が自ら判断することによって、目的地まで移動することであってもよい。また、例えば、移動体10が、障害物に衝突しないように移動することであってもよい。
【0014】
このように、1個の搬送対象物を複数の移動体によって搬送する際には、搬送対象物の重心が、移動体10から外れることが多く、そのような場合には、移動体10が有する複数の走行手段の消耗の程度が、それぞれ異なることになる。したがって、各走行手段の消耗の程度を示す消耗度を知ることができるようにするため、消耗度算出装置1によって消耗度を算出することになる。
【0015】
移動機構11は、移動体10を移動させる。移動機構11は、例えば、移動体10を全方向に移動できるものであってもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、移動機構11は、非ホロノミックな移動機構であってもよい。本実施の形態では、移動機構11が移動体10を全方向に移動できる場合について主に説明する。全方向に移動できるとは、任意の方向に移動できることである。移動機構11は、例えば、複数の走行手段と、複数の走行手段を駆動する駆動手段(例えば、モータやエンジンなど)とを有していてもよい。走行手段は、走行面に接しており、駆動手段によって駆動されることによって、移動体10を移動させることができるものであり、例えば、車輪や、全方向移動車輪、無限軌道などであってもよい。移動機構11が、移動体10を全方向に移動できるものである場合には、走行手段は、全方向移動車輪(例えば、オムニホイール、メカナムホイールなど)であってもよい。本実施の形態では、移動機構11の走行手段がオムニホイールである場合について主に説明する。駆動手段は、例えば、複数の走行手段のすべてを駆動してもよく、または、そうでなくてもよい。走行手段が全方向移動車輪である場合には、通常、すべての走行手段が駆動されることになる。一方、移動体10が非ホロノミックな移動体であり、走行手段が車輪である場合には、駆動手段は、例えば、すべての車輪のうち、駆動輪である車輪を駆動し、従動輪である車輪を駆動しなくてもよい。駆動輪は、例えば、2個であってもよい。また、移動機構11は、車輪等である走行手段の速度や回転数を取得できる機構、例えば、エンコーダ等を有していてもよい。移動機構11としては、公知のものを用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0016】
移動制御部12は、移動機構11を制御する。この制御によって、移動体10の移動が制御されることになる。移動の制御は、移動体10の移動の向きや、移動の開始・停止などの制御であってもよい。例えば、移動経路が設定されている場合には、移動制御部12は、移動体10がその移動経路に沿って移動するように、移動機構11を制御してもよい。この場合には、移動体10は、現在位置を取得する現在位置取得部を備えていてもよい。そして、移動制御部12は、現在位置取得部によって取得された現在位置が、移動経路に沿ったものになるように、移動機構11を制御してもよい。また、移動制御部12は、地図を用いて、移動の制御を行ってもよい。この場合には、移動制御部12は、例えば、地図を用いて目的地までの経路を探索し、その探索した経路に沿って移動するように移動機構11を制御してもよい。なお、移動制御部12による移動機構11の制御は公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0017】
現在位置取得部は、移動体10の現在位置を取得する。現在位置の取得は、例えば、無線通信を用いて行われてもよく、周囲の物体までの距離の測定結果を用いて行われてもよく、周囲の画像を撮影することによって行われてもよく、現在位置を取得できるその他の手段を用いてなされてもよい。無線通信を用いて現在位置を取得する方法としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いる方法などが知られている。また、例えば、周囲の物体までの距離の測定結果を用いたり、周囲の画像を撮影したりすることによって現在位置を取得する方法としては、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などによって知られている方法を用いてもよい。また、現在位置取得部は、例えば、自律航法装置を用いて現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部は、移動体10の向き(方向)を含む現在位置を取得することが好適である。その方向は、例えば、北を0度として、時計回りに測定された方位角によって示されてもよく、その他の方向を示す情報によって示されてもよい。その向きは、電子コンパスや地磁気センサによって取得されてもよい。
【0018】
重量取得部13は、走行手段ごとに、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する。走行手段に掛かる重量に応じた値とは、例えば、走行手段に掛かる重量そのものであってもよく、または、走行手段に掛かる重量と正の相関のある値であってもよい。後者の場合には、走行手段に掛かる重量が大きくなるほど、その走行手段について重量取得部13が取得する値も大きくなるものとする。走行手段に掛かる重量は、例えば、走行手段に掛かる搬送対象物の重量であってもよく、走行手段に掛かる搬送対象物と移動体10との両方の重量であってもよい。重量取得部13は、例えば、走行手段に掛かる重量に応じた値を測定したり、計算したりしてもよく、または、他の装置や他の構成要素によって測定されたり、計算されたりした値を受け取ってもよい。なお、重量取得部13によって取得される、走行手段に掛かる重量に応じた値は、例えば、厳密な値でなくてもよい。例えば、他の走行手段と比較して、掛かる重量が小さい走行手段については、その走行手段に掛かる重量を0としてもよい。
【0019】
重量取得部13は、例えば、移動体10の重心から、搬送対象物の重心までの距離と、搬送対象物の重量とを用いて、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得してもよい。この場合には、走行手段に掛かる重量に応じた値は、例えば、移動体10の重心から、搬送対象物の重心までの距離と、搬送対象物の重量との乗算結果であってもよく、その乗算結果に係数を乗算した結果であってもよい。なお、移動体10の重心から、搬送対象物の重心までの距離は、例えば、移動体10の重心から、搬送対象物の重心までの厳密な距離であってもよく、移動体10の重心と、値の取得対象となっている走行手段とを結ぶ直線方向における、移動体10の重心から、搬送対象物の重心までの距離、すなわち、移動体10の重心から、搬送対象物の重心までの長さを、その直線方向に射影した長さであってもよい。本実施の形態では、重量取得部13によって、移動体10と搬送対象物の重心間の距離、搬送対象物の重量、及び所定の係数の乗算結果が取得される場合について主に説明する。なお、重量取得部13は、例えば、センサの測定値に基づいて、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得してもよい。この場合について後述する。
【0020】
距離取得部14は、移動体10の走行距離を取得する。この走行距離は、例えば、実績値、すなわち実際の走行距離であってもよく、推定値、すなわち推定された走行距離であってもよい。距離取得部14は、例えば、走行距離を測定したり、計算したりしてもよく、または、他の装置や構成要素によって測定されたり、計算されたりした走行距離を受け取ってもよい。実績値である走行距離は、例えば、走行手段の回転数や、移動体10の現在位置などを用いて取得されてもよい。例えば、距離取得部14は、エンコーダによって取得された走行手段の回転数を用いて走行距離を取得してもよく、現在位置取得部によって取得された現在位置を変化に応じた経路に沿った走行距離を取得してもよい。また、推定値である走行距離は、例えば、経路探索によって決定された地図上の移動経路を用いて取得されてもよく、過去に同じ経路を走行した場合には、過去の実績値である走行距離を用いて取得されてもよい。前者の場合には、距離取得部14は、例えば、地図における移動経路に沿った距離を走行距離として取得してもよい。この移動経路に沿った走行距離は、例えば、移動制御部12によって取得され、距離取得部14は、その走行距離を受け取ってもよい。過去の実績値である走行距離を用いて推定値である走行距離を取得する場合には、距離取得部14は、例えば、過去の実績値が1個しかないときには、その実績値を推定値としてもよく、過去の実績値が2個以上あるときには、その2個以上の実績値の代表値を推定値としてもよい。代表値は、例えば、平均値や、中央値などであってもよい。
【0021】
なお、距離取得部14は、複数の走行手段のそれぞれについて走行距離を取得してもよく、または、移動体10が有する複数の走行手段について、1個の走行距離を取得してもよい。前者の場合には、例えば、非ホロノミックな移動体10がカーブを曲がる際の内輪と外輪との経路の差も考慮した走行距離を取得することができる。後者の場合には、例えば、移動体10が有するいずれかの走行手段の走行距離を、他のすべての走行手段の走行距離としてもよい。また、距離取得部14は、例えば、現在位置までの移動に応じた走行距離の実績値と、現在位置から目的地までの移動に応じた走行距離の推定値とを取得してもよい。すなわち、距離取得部14は、例えば、過去の移動については、実績値である走行距離を取得し、将来の移動については、推定値である走行距離を取得してもよい。
【0022】
算出部15は、重量取得部13によって取得された値と、距離取得部14によって取得された走行距離とを用いて、走行手段ごとの消耗度を算出する。消耗度は、結果として走行手段の消耗の程度を知ることができる情報であれば特に限定されないが、例えば、消耗の程度が大きくなるほど、値が大きくなるものであってもよい。本実施の形態では、この場合について主に説明する。消耗度は、通常、重量取得部13によって取得された値が大きいほど、大きくなる値であり、距離取得部14によって取得された走行距離が長いほど、大きくなる値である。すなわち、消耗度を算出するために用いられる関数は、例えば、重量取得部13によって取得された値、及び距離取得部14によって取得された走行距離のそれぞれの増加関数であってもよい。具体的な消耗度の算出については、後述する。
【0023】
算出部15は、例えば、1回の搬送対象物3の協調搬送ごとに、各走行手段の消耗度を算出してもよい。また、算出部15は、走行手段ごとに、そのようにして算出した1回の協調搬送の消耗度を加算してもよい。例えば、協調搬送が3回行われた場合には、3回の協調搬送に対応する3個の消耗度が算出され、それらが加算されてもよい。複数の消耗度の加算は、例えば、基準となる時点以降の協調搬送に対応する消耗度について行われてもよい。基準となる時点は、例えば、消耗度の算出の対象となる走行手段について、消耗品(例えば、ゴムタイヤなど)が交換された時点であってもよい。なお、消耗度の加算は、例えば、他の装置において行われてもよい。また、算出部15は、例えば、走行距離の実績値を用いて算出した消耗度と、走行距離の推定値を用いて算出した消耗度とを加算した、目的地までの移動後の消耗度を走行手段ごとに算出してもよい。この場合には、現在位置までの過去の移動に関する消耗度は、走行距離の実績値を用いて取得され、現在位置から目的地までの将来の移動に関する消耗度は、走行距離の推定値を用いて取得されてもよい。また、算出部15は、例えば、移動体10におけるすべての走行手段の消耗度を用いて、移動体10の消耗度を算出してもよい。また、算出部15によって算出された消耗度は、例えば、記憶部16に蓄積されてもよい。この場合には、各消耗度は、走行手段ごとに区別できるように記憶部16に蓄積されることが好適である。
【0024】
記憶部16では、上記したように、算出された消耗度が記憶されてもよい。また、消耗度以外の情報が記憶部16で記憶されても負い。記憶部16は、不揮発性の記録媒体によって実現されることが好適であるが、揮発性の記録媒体によって実現されてもよい。記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなどであってもよい。
【0025】
通信部17は、例えば、協調搬送を行う複数の移動体を制御するサーバや、協調搬送を行う他の移動体との間で通信を行う。この通信は、通常、無線通信である。通信部17は、例えば、搬送対象物の重心の位置や、搬送対象物の重量を、サーバから受信してもよい。また、通信部17は、例えば、協調搬送時に他の移動体と移動制御に関する通信を行ってもよい。移動制御は、例えば、障害物の検知に応じた停止や減速、回避の移動制御などであってもよい。なお、通信部17は、通信を行うための有線または無線の通信デバイスを含んでもよく、または含まなくてもよい。また、通信部17は、ハードウェアによって実現されてもよく、または通信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0026】
ここで、算出部15によって算出された、走行手段ごとの消耗度の利用方法について簡単に説明する。例えば、協調搬送を行う際に、移動体10の各走行手段の消耗度が均等になるように、移動体10を配置してもよい。通常、搬送対象物の重心に近い側の走行手段の消耗度が大きくなるため、例えば、移動体10を配置する際に、消耗度の加算結果が最も小さい走行手段が、搬送対象物の重心側となるように配置してもよい。また、算出された消耗度は、走行手段の消耗品の交換のために用いられてもよい。例えば、移動体10は、消耗度の加算結果があらかじめ決められた閾値を超えた場合にアラートを出力する出力部を備えていてもよい。そして、その出力部によって出力されたアラートに応じて、消耗度が閾値を超えた走行手段の消耗品が交換されてもよい。なお、そのアラートには、例えば、消耗度が閾値を超えた走行手段を特定可能な情報(例えば、走行手段の識別子等)が含まれていてもよい。アラートの出力は、例えば、表示や、印刷、送信、走行手段に対応する位置における消耗品の交換ランプの点灯などによって行われてもよい。
【0027】
次に、消耗度の算出方法について説明する。例えば、図3で示されるように、2個の移動体10A,10Bによって搬送対象物3を搬送する状況を考える。なお、図3は、移動体10A,10B、及び搬送対象物3を示す平面図である。図4は、移動体10と、搬送対象物3の重心C1との関係を示す平面図である。なお、図4では、図3で示される移動体10Aを基準とした搬送対象物3の重心C1の位置を示しているが、以下の説明は、搬送対象物3の重心C1が任意の位置に存在している場合であっても、また、3個以上の移動体で搬送対象物3が搬送される場合であっても成り立つものである。図4で示されるxy直交座標系は、移動体10の重心C2を原点とする、移動体10のローカル座標系である。移動体10は、4個の走行手段であるオムニホイール21A~21Dを有している。また、各オムニホイール21A~21Dの代表点をそれぞれP1~P4としている。代表点は、例えば、重心であってもよい。また、代表点PNの座標を、それぞれ(x,y)とする。なお、Nは、1から4の任意の整数である。また、搬送対象物3の重心C1の座標を(x,y)とする。通常、搬送対象物3の形状や重量バランスは既知であるため、それらを用いて重心C1の位置を特定することができる。なお、搬送対象物3の重量バランスが未知である場合には、例えば、重量バランスが均等であるとして重心C1の位置が特定されてもよい。このような状況において、算出部15は、例えば、消耗度Wを次式によって算出してもよい。なお、消耗度W~Wは、それぞれN番目の走行手段に対応する消耗度である。ここでは、オムニホイール21A~21Dを、それぞれ1番目~4番目の走行手段としている。
【0028】
(1)x×x+y×y>0の場合
=(α×a×(x×x+y×y)+β)×L+γ
(2)x×x+y×y≦0の場合
=β×L+γ
【0029】
ここで、α、β、γは、それぞれN番目の走行手段の消耗度の算出に用いられる実数の係数であり、例えば、経験的に決められてもよい。αは、物の搬送時における、単位距離当たり、単位重量当たりの消耗の程度を表す正の係数である。βは、物の搬送時でない移動時における、単位距離当たりの消耗の程度を表す0以上の係数である。γは、走行距離に依存しない、搬送に応じた消耗の程度を表す0以上の定数である。なお、βは、例えば、移動体10の自重等の影響によって移動時に消耗する単位距離当たりの消耗の程度を示す係数であってもよい。aは、搬送対象物3の重量であり、Lは、走行距離である。α、β、γは、例えば、走行手段ごとに異なる値であってもよく、または、すべての走行手段に共通した値であってもよい。例えば、図4で示されるように、4個の走行手段が移動体10の重心C2に対して回転対称となるように配置されている際には、α、β、γは、それぞれ走行手段に依存しない値であってもよい。すなわち、任意の1から4までの整数N,Mについて、α=αであり、β=βであり、γ=γであってもよい。また、例えば、任意の1から4までの整数Nについて、β=0であってもよく、γ=0であってもよい。すなわち、物を搬送していないときの走行手段の消耗については考慮しなくてもよく、走行距離に依存しない走行手段の消耗については考慮しなくてもよい。それらの消耗の程度は、各走行手段について共通であるため、走行手段間の消耗度を比較する際には特に必要ないからである。
【0030】
重量取得部13によって取得される値は、例えば、上式における「a×(x×x+y×y)」の値であってもよい。x×x+y×yは、xy座標系の原点を始点とし、N番目の走行手段の代表点PNを終点とする第1のベクトルと、原点を始点とし、搬送対象物3の重心C1を終点とする第2のベクトルとの内積である。この内積は、第1のベクトルの長さと、第2のベクトルの長さと、第1及び第2のベクトルのなす角度の余弦との積であるため、重心間の距離に、所定の係数(すなわち、第1のベクトルの長さと、第1及び第2のベクトルのなす角度の余弦との積)を乗算した結果となる。したがって、この内積は、移動体10の重心C2から搬送対象物3の重心C1までの長さに応じた値と考えることができる。なお、この内積は、第1のベクトルの長さと、第2のベクトルを第1のベクトルの方向に射影したベクトルの長さとの積でもある。したがって、この内積は、移動体10の重心と走行手段とを結ぶ直線方向における、移動体10の重心から搬送対象物3の重心までの距離に応じた値、すなわち、その距離と、所定の係数(すなわち、第1のベクトルの長さ)を乗算した値と考えることもできる。なお、第1のベクトルの長さは、移動体10の重心から、走行手段までの長さである。このように、「a×(x×x+y×y)」の値は、搬送対象物3の重量と、移動体10の重心から搬送対象物3の重量までの距離とを用いて算出された値と考えることができる。
【0031】
また、上式の「x×x+y×y」に代えて、「(x×x+y×y)/(x +y 1/2」が用いられてもよい。この場合には、重量取得部13によって取得される値は、例えば、「(x×x+y×y)/(x +y 1/2」の値であってもよい。なお、(x +y 1/2は、第1のベクトルの長さである。例えば、第1のベクトルの長さが走行手段ごとに異なる場合には、上式の内積に代えて、内積を第1のベクトルの長さで除算した値が用いられることが好適である。一方、走行手段が全方向移動車輪である場合には、通常、第1のベクトルの長さはすべての走行手段で同じになるため、上式のように消耗度を算出してもよい。また、上式は消耗度を算出するための式の一例であり、他の式を用いて消耗度を算出してもよいことは言うまでもない。例えば、上式において、aは、搬送対象物3の重量を、搬送対象物3を搬送する移動体の個数で除算した値であってもよい。
【0032】
なお、上式において、内積が正の値である場合には、第2のベクトルを第1のベクトルの方向に射影したベクトルの終点は、原点を基準として、走行手段の代表点と同じ側に存在することになる。すなわち、その走行手段は、移動体10の重心を基準として、搬送対象物3の重心側に存在することになる。この場合(以下、「第1の場合」とする。)には、その走行手段に掛かる重量が大きくなり、それに応じて消耗の程度も大きくなる。一方、上式において、内積が0以下の値である場合には、第2のベクトルを第1のベクトルの方向に射影したベクトルの終点は、原点を基準として、走行手段の代表点と同じ側に存在しないことになる。すなわち、その走行手段は、移動体10の重心を基準として、搬送対象物3の重心側に存在しないことになる。この場合(以下、「第2の場合」とする。)には、その走行手段に掛かる重量が小さくなり、それに応じて消耗の程度も小さくなる。したがって、上式では、第1の場合には、走行手段に掛かる重量に応じた値を用いて消耗度が算出され、第2の場合には、走行手段に掛かる重量に応じた値を0として消耗度が算出されるようにしている。
【0033】
算出部15は、例えば、搬送対象物3の搬送を行うごとに、上式を用いて消耗度Wを算出してもよい。そして、そのようにして算出された消耗度が、走行手段ごとに加算されることによって、各走行手段の最終的な消耗度、すなわち累積された消耗度が算出されてもよい。また、算出部15は、次式によって、移動体10の消耗度Wallを算出してもよい。なお、δは、各走行手段の消耗度を移動体10の消耗度に変換するための係数であり、例えば、「1」であってもよく、1/Kであってもよい。また、Kは、移動体10が有する走行手段の個数を示す整数である。また、次式の総和Σは、N=1からN=Kの各整数について取られるものとする。
all=δ×ΣW
【0034】
また、ここでは、移動体10が4個の走行手段を有する場合について説明したが、上式は、例えば、図5で示されるように、移動体10が3個の走行手段であるオムニホイールを有する場合についても用いることができる。この場合には、Nは、1から3の任意の整数となる。また、上式は、移動体10の有する走行手段が3個、4個以外の場合にも用いることができる。
【0035】
次に、消耗度算出装置1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)算出部15は、消耗度を算出するかどうか判断する。そして、消耗度を算出する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、消耗度を算出すると判断するまでステップS101の処理を繰り返す。算出部15は、例えば、目的地までの新たな移動を開始する際に、消耗度を算出すると判断してもよく、目的地までの移動が完了した際に、消耗度を算出すると判断してもよい。
【0036】
(ステップS102)重量取得部13は、走行手段ごとに、搬送対象物の重量に応じた値を取得する。
【0037】
(ステップS103)距離取得部14は、移動体10の走行距離を取得する。なお、この走行距離は、例えば、現在位置から目的地までの走行距離の推定値であってもよく、出発地から現在位置までの走行距離の実績値であってもよい。
【0038】
(ステップS104)算出部15は、ステップS102、S103で取得された値を用いて、走行手段ごとに、消耗度を算出する。なお、算出された消耗度は、例えば、記憶部16に蓄積されてもよく、記憶部16で蓄積されている消耗度の累積値に加算されてもよい。そして、ステップS101に戻る。
【0039】
なお、図2のフローチャートには含まれないが、距離取得部14は、例えば、移動体10の移動時に、走行手段のエンコーダの値や、現在位置取得部によって取得された現在位置を用いて走行距離の実測値を測定してもよい。また、通信部17は、例えば、走行手段ごとに算出された消耗度をサーバ等に送信してもよい。また、通信部17は、サーバ等から、搬送対象物の重心の位置や、搬送対象物の重量などを受信してもよい。また、図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。例えば、走行距離が取得された後に、走行手段に掛かる重量に応じた値が取得されてもよい。また、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0040】
次に、本実施の形態による移動体10の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、過去の移動に関して、走行手段ごとの消耗度の累積値が記憶部16で記憶されているものとする。その消耗度は、走行距離の実績値を用いて算出されたものであるとする。そして、サーバにおいて、複数の移動体によって行われる協調搬送に移動体10が割り当てられ、搬送対象物3と移動体10との位置関係が決定されて、両者の位置関係を示す情報(より具体的には、移動体10と、搬送対象物3の重心との位置関係を示す情報)と、搬送対象物3の重量と、目的地までの移動経路とが、サーバから移動体10に送信されたとする。それらの情報は、通信部17で受信される。そして、新たな移動を行う旨が算出部15に渡され、搬送対象物3と移動体10との位置関係を示す情報と、搬送対象物3の重量とは重量取得部13に渡され、移動経路は距離取得部14に渡されたとする。
【0041】
新たな移動を行う旨を受け取ると、算出部15は、消耗度を算出すると判断し、重量取得部13に、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する旨の指示を渡し、距離取得部14に、走行距離を取得する旨の指示を渡す(ステップS101)。算出部15からの指示を受け取ると、重量取得部13は、走行手段ごとに、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得する(ステップS102)。なお、サーバから送信された搬送対象物3と移動体10との位置関係を示す情報によって、重量取得部13は、移動体10のローカル座標系における搬送対象物3の重心の位置を特定することができる。また、移動体10のローカル座標系における各走行手段の代表点の位置は既知である。走行手段の代表点の位置は、例えば、走行手段ごとに記憶部16で記憶されていており、重量取得部13は、その記憶されている代表点の位置を読み出して用いてもよい。そして、重量取得部13は、受け取った情報などを用いて、走行手段ごとに上式の「a×(x×x+y×y)」を算出し、その算出した値を算出部15に渡す。また、算出部15からの指示を受け取ると、距離取得部14は、受け取った移動経路に沿った移動体10の走行距離を推定し、その推定した値を算出部15に渡す(ステップS103)。この走行距離の推定値が、上式における距離Lとなる。
【0042】
重量取得部13及び距離取得部14からそれぞれ取得結果を受け取ると、算出部15は、上式を用いて、走行手段ごとに消耗度を算出する。そして、算出部15は、走行手段ごとに、記憶部16で記憶されている現在位置までの累積された消耗度と、新たに算出した消耗度とを加算することによって、走行手段ごとの最終的な消耗度を算出し、通信部17に渡す(ステップS104)。なお、新たに算出した消耗度は、例えば、記憶部16に蓄積されてもよい。また、この時点では、例えば、記憶部16において、新たに算出された消耗度は、現在位置までの累積された消耗度に加算されなくてもよい。
【0043】
通信部17は、受け取った走行手段ごとの消耗度をサーバに送信する。サーバは、その消耗度を受信することによって、移動体10が目的地に到着した時点の各走行手段の消耗度を知ることができる。そして、例えば、消耗度の偏りが生じているような場合には、移動体10と搬送対象物3との位置関係を変更し、その変更後の位置関係を移動体10に送信することによって、新たな消耗度の算出が行われるようにしてもよい。例えば、そのような消耗度の算出が繰り返して行われ、最終的に、移動体10の各走行手段の消耗度が最適になるように、移動体10と搬送対象物3との位置関係が決定され、それに応じた移動が行われてもよい。
【0044】
また、移動中には、距離取得部14は、移動機構11が有する各走行手段のエンコーダの出力を用いて、走行手段ごとに回転数を取得することによって、走行手段ごとの走行距離の実績値を取得してもよい。そして、目的地に到着した際に、算出部15は、出発地から目的までの走行距離の実績値を用いた消耗度の算出を行ってもよい(ステップS101~S104)。また、算出部15は、走行手段ごとに新たに算出した消耗度と、記憶部16で記憶されている出発地までの累積された消耗度に加算することによって、累積された消耗度を更新してもよい。このようにすることで、移動体10と搬送対象物3との位置関係を検討する際には、目的地までの走行距離の推定値を用いて算出された消耗度の累積値を用いることができると共に、移動が完了した際には、走行距離の実績値を用いて、より正確な消耗度の累積値を算出することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態による消耗度算出装置1によれば、協調搬送を行う移動体10が有する各走行手段の消耗度を算出することができる。したがって、協調搬送では、搬送対象物の重心が移動体10の上にないことが多く、その結果として、移動体10の各走行手段の消耗の程度が異なることもあり得るが、そのような場合であっても、各走行手段の消耗度を知ることができるようになる。また、重量取得部13によって、移動体10と搬送対象物の重心間の距離や、搬送対象物の重量を用いて、各走行手段に掛かる重量に応じた値を取得することによって、移動体10が後述する重量センサ等を備えていない場合や、実際に搬送対象物を移動体10に載置したり、搬送対象物を載置した状態での移動を開始したりしていない場合であっても、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得することができる。また、算出された消耗度を用いることによって、例えば、複数の走行手段の消耗度が均等になるように、協調搬送において移動体10を用いることができるようになる。また、算出された消耗度を参照することによって、例えば、走行手段ごとに消耗品が交換時期になったかどうかを判断することもできるようになる。
【0046】
また、距離取得部14によって、現在位置までの移動に応じた走行距離の実績値と、現在位置から目的地までの移動に応じた走行距離の推定値とを取得した場合には、算出部15によって、走行距離の実績値を用いて算出した消耗度と、走行距離の推定値を用いて算出した消耗度とを加算した、目的地までの移動後の消耗度を走行手段ごとに算出することができる。そのため、目的地までの移動の開始前に、目的地までの移動後の消耗度を算出することができ、例えば、目的地までの移動後の消耗度がより均等になるように移動体10による協調搬送を行うことができるようになる。また、現在位置までの移動については、走行距離の実績値を用いて消耗度を算出するため、推定値を用いた場合よりもより精度の高い消耗度を算出することができる。
【0047】
また、複数の移動体10におけるすべての走行手段の消耗度を用いて、移動体10の消耗度を算出した場合には、例えば、移動体10ごとの消耗度が均等になるように複数の移動体10による協調搬送を行うことができる。また、例えば、複数の移動体10の消耗度が近くならないように複数の移動体10による協調搬送を行うことによって、消耗品の交換が同時期に重ならないようにすることもできる。
【0048】
なお、本実施の形態では、搬送対象物の重心の位置を用いて、走行手段に掛かる重量に応じた値が取得される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。重量取得部13は、例えば、センサの測定値に基づいて、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得してもよい。センサは、特に限定されないが、例えば、重量センサや、電流計、トルクセンサなどであってもよい。
【0049】
重量センサは、例えば、平面視において走行手段と重なる位置に配置され、その走行手段に掛かる重量を測定してもよい。より具体的には、重量センサは、搬送対象物が載置される載置面において、平面視で各走行手段と重なる位置に配置されてもよい。この場合には、搬送対象物は、走行手段と同じ個数の重量センサに載置されてもよい。また、重量センサは、例えば、走行手段と、走行手段が取り付けられている基台との間に配置されてもよい。この場合には、重量センサを介して、走行手段が基台に取り付けられてもよい。なお、この場合にも、平面視において、重量センサと走行手段とが同じ位置に存在することが好適である。移動体10が重量センサを有する場合には、重量取得部13は、例えば、重量センサによって測定された測定値、すなわち走行手段に掛かる重量を、重量センサから受け取ることによって取得してもよい。
【0050】
電流計は、例えば、各走行手段を駆動するモータに流れる電流を測定してもよい。通常、モータに流れる電流と、モータのトルクには線形の関係があるため、電流計によって測定されたモータの電流によって、モータのトルクそのもの、または、モータのトルクと正の相関のある値を取得することができる。通常、走行手段に掛かる重量が大きくなるほど、その走行手段を駆動するモータのトルクも大きくなるため、走行手段に掛かる重量と、その走行手段を駆動するモータのトルクには正の相関がある。したがって、重量取得部13は、電流計の測定値、すなわち走行手段を駆動するモータの電流値を用いて、その走行手段に掛かる重量に応じた値を取得することができる。なお、電流値そのもの、または、その電流値に所定の係数を乗算したものが、走行手段に掛かる重量に応じた値となってもよく、その電流値を用いて走行手段に掛かる重量が算出されてもよい。
【0051】
トルクセンサは、例えば、駆動手段と走行手段とを繋ぐ駆動軸に配置され、その駆動軸のトルクを測定してもよい。この場合にも、重量取得部13は、トルクセンサの測定値、すなわち駆動手段と走行手段とを繋ぐ駆動軸のトルクの値を用いて、その走行手段に掛かる重量に応じた値を取得することができる。なお、トルクセンサによって取得されたトルクの値そのもの、または、そのトルクの値に所定の係数を乗算したものが、走行手段に掛かる重量に応じた値となってもよく、そのトルクの値を用いて走行手段に掛かる重量が算出されてもよい。
【0052】
なお、重量取得部13は、例えば、センサの測定値を、走行手段に掛かる重量に応じた値として受け取ってもよく、センサの測定値に基づいて、走行手段に掛かる重量に応じた値を算出してもよく、他の構成要素や装置によって、センサの測定値を用いて算出された走行手段に掛かる重量に応じた値を、その構成要素から受け付けてもよい。
【0053】
また、モータの電流値や、駆動軸のトルクの値は、走行手段の回転数に応じて変化する。そのため、走行手段に掛かる重量に応じた値を取得するために用いられる電流値や、トルクの値は、例えば、走行手段や駆動軸があらかじめ決められた回転数で回転している時点の測定値であってもよい。
【0054】
また、算出部15は、例えば、移動体10の重心から搬送対象物の重心までの距離等を用いて重量取得部13によって取得された値に基づいた消耗度の算出と、センサの測定値を用いて重量取得部13によって取得された値に基づいた消耗度の算出との両方を行ってもよい。例えば、算出部15は、現在位置から目的地までの移動については、センサの測定値がないため、移動体10の重心から搬送対象物の重心までの距離等に基づいて重量取得部13によって取得された値を用いて消耗度を算出し、現在位置までの過去の移動については、センサの測定値に基づいて重量取得部13によって取得された値を用いて消耗度を算出してもよい。この場合には、例えば、移動体10の移動時に、センサによる測定を行って測定値を記録しておき、移動後に、重量取得部13によって、センサの測定値に基づいて、走行手段に掛かる重量に応じた値が取得され、算出部15によって、その取得された値を用いて消耗度が算出されてもよい。このようにすることで、移動後には、より正確な消耗度を算出することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、過去の移動については、走行距離の実績値を用いて消耗度を算出し、将来の移動については、走行距離の推定値を用いて消耗度を算出する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、すべての消耗度は、走行距離の推定値を用いて算出されてもよい。また、例えば、将来の移動の消耗度は算出されず、すべての消耗度は、走行距離の実績値を用いて算出されてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、消耗度算出装置1が移動体10に含まれる場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。消耗度算出装置1は、例えば、移動体10と通信可能なサーバであってもよい。そして、サーバである消耗度算出装置1は、必要に応じて、移動体10から受信した情報等を用いて、消耗度を算出してもよい。なお、この場合には、消耗度算出装置1は、例えば、算出した消耗度を出力する出力部を備えていてもよい。ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。また、サーバである消耗度算出装置1は、例えば、移動体10と通信するための有線または無線の通信部を備えていてもよい。そして、その通信部を介して、走行距離や、センサの測定値等を移動体から受信してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、消耗度算出装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0059】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0060】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1 消耗度算出装置、10 移動体、11 移動機構、12 移動制御部、13 重量取得部、14 距離取得部、15 算出部、16 記憶部、17 通信部
図1
図2
図3
図4
図5