(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080600
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】真空ポンプ及び真空ポンプのステータ用のステータ部分を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F04D19/04 D
F04D19/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023154198
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】22210842
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ・メコタ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・フォルヴェルク
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・ビルケンフェルト
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA02
3H131CA01
(57)【要約】
【課題】最も簡単な形で、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの冷却を改善して、ポンプのロータを、その他では同一の条件で、より低いロータ温度で運転できるようにする。
【解決手段】真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、ハウジングと、ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、ポンプ段は、ステータと、運転時にステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、表面の第2の部分は、被覆されておらず、50℃で少なくとも0.25、好適には少なくとも0.3の熱放射率εを有する。
【選択図】
図6b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、被覆されておらず、50℃で少なくとも0.25、好適には少なくとも0.3の熱放射率εを有する、真空ポンプ。
【請求項2】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、製造に起因する、分離による後加工又は被覆によって変化されない表面特性を有する、真空ポンプ。
【請求項3】
前記表面の第2の部分の、製造に起因する表面特性は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の粗さ及び/又は着色であり、特に着色は、前記ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる、請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、被覆されておらず、
前記表面の第2の部分は、製造に起因する、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の粗さ及び/又は着色を有し、特に着色は、前記ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる、真空ポンプ。
【請求項5】
前記表面の第1の部分は、後加工されている、特に分離による後加工が施されている、特に切削加工されている、先行請求項のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記表面の第1の部分は、前記ポンプ段が組み立てられた状態で、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を少なくとも部分的に形成する、先行請求項のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記ステータ部品は、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングである、先行請求項のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記ステータ部品は、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造されている、先行請求項のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記ステータ部品は、後の請求項のいずれか一項に記載の方法によって得られる又は得ることができる、先行請求項のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法において、
真空ポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、
方法に際して、前記ステータ部品を成形、特に鋳造、焼結又は付加法によって製造し、これに続いて、前記表面の第1の部分に、後加工、特に分離による後加工、特に切削加工を施し、特に前記表面の第2の部分を未加工のままにする、方法。
【請求項11】
成形によって前記ステータ部品の表面は、及び/又は後加工によって前記表面の第2の部分は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の範囲の粗さを得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法において、
真空ポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、
方法に際して、特に前記ステータ部品を製造する際に使用される少なくとも1種の出発材料に少なくとも1種の着色剤を添加することによって、前記表面の第2の部分に着色を施す、方法。
【請求項13】
前記ステータ部品を、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面の第1の部分を少なくとも部分的に加工して、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を形成する、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ステータ部品は、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングである、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、ポンプ段は、ステータと、運転時にステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有する、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプに関する。さらに、本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧送される気体の種類及び量に応じて、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプ(TMP)の運転中にロータの加熱が生じる。多くの真空用途では、大量の気体の圧送によって、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプがその限界で運転されるようになる。というのも、ロータは、これを確実に持続的な負荷にさらすことができる最高温度に到達するからである。ロータの加熱は、ロータの耐用期間に不都合に作用し、真空ポンプで圧送可能な気体の最大量を制限し得る。
【0003】
原則として、生成された熱は、熱放射によってロータからステータへ、そしてそこからさらに外部へ(場合によっては冷却された)ポンプハウジングへ放出され得る。しかし、ロータからステータ部品への熱導出を改善するには、関与する面の間の温度差を大きくする必要がある。したがって、ステータ部品の表面温度は、ロータの表面温度からできるだけ低くなければならない。熱放射の物理的な関係によれば、物体は、物体の表面の熱放射率ε、すなわち理想的な黒の放射に対する実際の放射出力の割合が高いほど、より良好に熱を吸収又は放出できる。
【0004】
従来技術において、ステータの部分の表面を被覆することが提案されている。欧州特許第2775148号明細書においてステータ部品が公知であり、ステータ部品の表面には、酸化ニッケル層又は酸化アルミニウム層が部分的に被覆されていて、これにより、ステータにわたって増加した熱伝達が保証されるべきである。しかし、ステータの特定の表面に、例えば外側の接触面又は半径方向間隙に隣り合う、ロータに直接に対向するウェブ先端に必要な寸法精度を達成できるように、酸化層は、そこで取り付けた後で再びステータ部品から除去しなければならない、又は酸化層が取り付けられる前に、表面の対応する部分をマスキングによって保護しなければならない。いずれの場合でも方法が煩雑である。というのも、ステータ部品の成形及び後加工の常に必要な両方のステップに対して付加的に、被覆工程と、被覆材料を局所的に除去又は隔離するための別のステップとの両方を実行しなければならないからである。その上、被覆は、時間が経過するにつれ下に位置する材料から剥離し得、このことは、放射率の悪化及び剥離した粒子によるポンプの汚染を招いてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、可能な限り簡単に、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの冷却を改善して、ポンプのロータを、その他では同一の条件で、より低いロータ温度で運転できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の真空ポンプによって解決される。
【0008】
そのような真空ポンプ、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、ポンプ段は、ステータと、運転時にステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有する。
【0009】
この場合、本発明によれば、ステータ部品の表面の第2の部分は、被覆されておらず、50℃で少なくとも0.25、好適には少なくとも0.3の熱放射率εを有する。50℃での高い放射率は有利である。といのうのも、この温度は、ロータの通常の運転温度の範囲内にあるという理由による。したがって、運転時に特に効果的な熱導出が行われる。
【0010】
表面の第2の部分の熱放射率εは、50℃で好適には少なくとも0.4、さらに好適には少なくとも0.5、特に好適には少なくとも0.6、その上特に好適には少なくとも0.7、さらに著しく好適には少なくとも0.8、最も好適には少なくとも0.9である。
【0011】
特に、第2の部分の熱放射率εは、第1の部分の熱放射率よりも高くてよい。
【0012】
熱放射率εは、0.78μmから1mmまでの赤外波長域にわたる全放射率である。
【0013】
加温された測定対象の熱放射率εは、放射率が調整可能な熱センサ及び赤外線測定器を用いて測定できる。この場合、先ずは接触式の熱センサを用いて、加温された測定対象の一点で表面の実際の温度が特定される。これに続いて、表面温度が、赤外線測定器を用いて、先ずは調整された1の放射率で取得される。その後で、熱センサ及び赤外線測定器の出力温度が一致するまで、赤外線測定器における放射率が変更される。これにより、その都度の加温された計測対象の実際の熱放射率を実験的に求めることができる。
【0014】
代替的に、前述の課題は、請求項2の特徴によって解決される。
【0015】
本発明によれば、この代替例では、ステータ部品の表面の第2の部分が、製造に起因する、分離による後加工又は被覆によって変化しない表面特性を有する。
【0016】
好適には、ステータ部品の表面の第2の部分の、製造に起因する表面特性が、3μm以上、好適には5μm以上、より好適には10μm以上、さらに好適には20μm以上、特に好適には30μm、その上特に好適には40μm以上、最も好適には50μm以上の範囲の粗さ及び/又は着色であり、特に、着色は、ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種の着色剤を添加することによって得られる。
【0017】
同時にステータ部品の可能な限り良好な真空技術特性を達成するために、さらに、ステータ部品の表面の第2の部分の粗さは、好適には500μm以下、より好適には400μm以下、さらに好適には300μm以下、特に好適には250μm以下、その上特に好適には200μm以下、さらに著しく好適には150μm以下、そして最も好適には100μm以下である。例えばステータ部品の表面の第2の部分の粗さは、好適には3μmから500μmまで、より好適には5μmから400μmまで、さらに好適には10μmから300μmまで、特に好適には20μmから250μmまで、その上特に好適には30μmから200μmまで、さらに著しく好適には40μmから150μm、そして最も好適には50μmから100μmまでの範囲にある。しかし、当然ながら、任意の他の、ここでは明示的に記載されていない、前述の好適な上限値と下限値との組合わせも考えられ、これらの組合せもまた好適な粗さ範囲を表している。
【0018】
本発明の別の代替例では、前述の課題は、請求項4の特徴によって解決される。
【0019】
本発明によれば、本発明のこの代替例では、ステータ部品の表面の第2の部分は、被覆されておらず、表面の第2の部分は、製造に起因する、3μm以上、好適には5μm以上、より好適には10μm以上、その上より好適には20μm以上、特に好適には30m以上、その上特に好適には40μm以上、最も好ましくは50μm以上の粗さ及び/又は着色を有し、特に、着色は、ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる。
【0020】
表面の第2の部分の製造に起因する粗さの好適な上限については、既に前述した内容が当てはまる。
【0021】
本開示内容では、他に明記しない限り、「粗さ」という用語は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzと解される。
【0022】
本発明によるステータ部品は、その表面が少なくともその第2の部分で高められた放射率εを有し、ロータからステータへの熱輸送だけではなくステータからハウジングへの熱輸送も増加できる。同時に、第2の部分は、被覆されておらず、これにより、被覆された部分と比較してステータ部品の抵抗性能及び耐久性が改善されている。さらに、本発明によるステータ部品は、容易に製造できる。というのも、第2の部分は、製造直後に成形によって得られる状態のままにしてよいからである。従来技術とは異なり、本発明では、直接に高められた放射率を有する表面を保持でき、そのために何らかの後加工を必要としない。
【0023】
本発明は、本発明の基礎をなす課題を解決する代替的な複数の可能性を提供するが、任意選択的に、好適である及び/又は有利であるとされる特徴及び形態は、特に言及しない限り、常に、本明細書で挙げられる本発明の全ての代替例に関係する。
【0024】
特に好適には、ステータ部品の表面の第1の部分が、後加工されている、特に分離によって後加工されている、特に切削加工されている。これにより、第1の部分は、高い寸法精度が要求されているステータ部品の面を形成するのに特に適している。特に有利には、さらに、第2の部分は、分離によって後加工されていない、特に切削式に後加工されていない。これにより、後加工の労力を減らせるだけでなく、表面の第2の部分の高い粗さ、ひいてはこれに伴う高い熱放射率を得ることもできる。このことは、あらゆる後加工のない、直接的な製造の結果として、高められた放射率を有する表面部分が既に得られるという著しい利点をもたらす。従来技術では、放射率の増加は、複雑な後加工を介してのみ達成され、その際、被覆をステータ部品に取り付けなければならない。
【0025】
本発明の範囲内では、表面の第1の部分の他に第2の部分にも、後加工を施す、例えば分離による後加工、特に切削加工を施すことが基本的に排除されていない。しかも、この場合、好適には、後加工による表面の第2の部分の粗さは、3μm、好適には5μm、sの上より好適には10μm、特に好適には20μm、その上特に好適には30μm、さらに著しく好適には40μm、そして最も好適には50μmの値を下回らない。
【0026】
さらに、本発明の範囲内で、表面の第2の部分の粗さの増大をもたらす、第2の部分の後処理を施すことも可能である。表面の第2の部分のそのような粗面化は、例えば支持構造の破壊、レーザ構造化、研磨又はサンドブラストによって、好適には支持構造の破壊又はレーザ構造化によって、特に好適にはレーザ構造化によって行ってよい。
【0027】
支持構造の破壊とは、ステータ部品の成形時に、特にレーザ焼結又はレーザ融解などの付加製造法に際して、ステータ部品の、少なくとも粗面化されるべき領域(すなわち表面の第2の部分の少なくとも一部)に支持構造が加工されることと解される。ステータ部品の、粗面化されるべき領域は、例えばホルベックステータの溝であってよい。成形工程の終了後、例えばハニカム状の支持構造は、機械式に、例えば手動で、ステータ部品の表面の第2の部分から破壊され得る。この方法によって、特に高い粗さを得ることができる。
【0028】
支持構造のそのような破壊は、製造の一部と見なしてもよく、この場合、後加工ではない。この場合、破壊によって生じる表面特性又は粗さは、製造に起因する粗さである。
【0029】
さらに有利には、表面の第1の部分は、ポンプ段が組み立てられた状態で、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を少なくとも部分的に形成する。したがって、表面の第1の部分と第2の部分とは、相補的な機能どころか相互排除的な機能を有してよい。要するに、表面の第2の部分が、例えば高い粗さなどの可能な限り高い放射率を保証する特性を有する一方、第1の部分は、例えば切削式の後加工によって、真空ポンプの特定の箇所で要求される公差を満たす及び/又は直接に第1の部分に当接するポンプ部品における良好な嵌合及び/又は熱伝達を有するように構成されてよい。
【0030】
好適には、ステータ部品は、ホルベック段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングであることが想定されている。これにより、ホルベックポンプ段、ターボポンプ段又はこれら両方の段でも同時に熱導出を改善でき、それぞれのロータ又は共通のロータの過熱のおそれを減らせる。
【0031】
ステータ部品がホルベックステータである場合、特に好適には、表面の第1の部分が、ホルベックステータのウェブ先端及び/又は外側の側面を形成する。すなわち、ホルベックステータの溝の間のウェブの先端は、ポンプの運転状態で、ホルベック間隙とも称される、ロータとステータとの間の半径方向間隙に隣り合い、つまり僅かな間隔を置いてロータに直接に対向する。これらの箇所では、ホルベックポンプ段の機能について、高い寸法精度が要求される。ホルベックステータの外側の側面でも、この高い精度が、ポンプハウジングに嵌合するために及び周りに位置するポンプハウジングの部分への良好な熱伝達を確保するために、接触面の構成が圧入のためであるか又は螺着のためであるかにかかわらず、要求される。したがって、その上特に好適には、ホルベックステータのウェブ先端及び/又は外側の側面を形成する、表面の第1の部分が、分離によって、特に切削式に後加工されている。
【0032】
ステータ部品がホルベックステータである場合、上述の内容に対して代替的又は付加的に、さらに特に好適には、表面の第2の部分が、溝の少なくとも一部分、特にホルベックステータの全体の溝を形成する。溝は、寸法精度のあまり高くない要求を満たさせばよく、したがって、ホルベックステータの放射率を最適化するために使用できる。ホルベックステータの溝において、公差による制限があっても、例えば、相応に高い熱放射率を得るために、表面が、製造に起因する高い粗さを有する状態のままにすることが可能である。
【0033】
ステータ部品がターボポンプ段のスペーサリングである場合、特に好適には、表面の第1の部分が、隣り合う部品に対する接触箇所を形成する。隣り合う部分は、例えばスペーサリング、静翼又はポンプハウジングであってよい。既にホルベックステータの例で述べたように、そのような接触面には、精密な嵌合及び可能な限り良好な熱伝達を保証するために、高い寸法精度が必要である。したがって、その上特に好適には、ポンプの他の部分に対するスペーサリングの接触面を形成する、表面の第1の部分は、分離によって、特に切削式に後加工されている。
【0034】
ステータ部品が、ターボポンプ段のスペーサリングである場合、前述した内容に対して代替的又は付加的に、さらに特に好適には、表面の第2の部分が、内径の少なくとも一部分、特にホルベックステータの内径の全体を形成する。内径は、あまり高くない寸法精度の要求を満たせばよく、したがって、スペーサリングの放射率を最適化するために使用できる。スペーサリングの内径に沿って、公差による制限があっても、例えば、相応に高い熱放射率を得るために、表面が、製造に起因する高い粗さを有する状態のままにすることが可能である。
【0035】
好適には、ステータ部品は、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造されている。これらの成形法による共通する利点によれば、これらの成形法は、製造に起因する高い粗さとその結果として生じる高い熱放射率とを有する部分の製造を可能にする。言及した方法の別の利点は、これらの方法が、成形されるべき材料に着色剤を組み込むことを可能にすることにある。
【0036】
鋳造し、すなわち型に溶融流動性の材料を充填し、これに続いて溶融物を硬化することは、真空技術的な要求にとって充分なステータ部品を製造できる特に容易で安価な成形法をなしている。ステータ部品が鋳造部品である場合、材料を無形の流動状態から直接に最終輪郭に近い形に移行できるという利点が得られる。好適には、構造化された型表面を有する鋳型型が使用され、これにより、有利には、鋳造されたステータ部品の表面の少なくとも一部分の粗さに的確な影響を及ぼせる。
【0037】
本発明に適用される鋳造法は、基本的に限定されておらず、ステータ部品は、例えば静的鋳造(重力鋳造又はグラヴィティ鋳造)又は、好適には、動的鋳造(特に遠心鋳造、低圧鋳造又は加圧鋳造)によって製造してよい。特に好適には、ステータ部品は、加圧鋳造によって製造される。この場合、溶融物は、高圧下で永久金型に圧入される。この方法は、極めて正確な輪郭を再現できるという利点を供する。この加圧鋳造法は、特に好適には、真空圧力鋳造法であってよい。これにより供される利点によれば、より高い材料品質が達成される。というのも、比較的僅かな空気及びその他の気体が材料に含まれるので、鋳造部分の多孔度が低減され、鋳造部分の密度及び圧力密度が増加するからである。完全に液化された材料の代わりに、部分流動性の又はペースト状の材料を鋳造材料として使用してもよい(いわゆるチクソキャスティング又はレオキャスティング)。
【0038】
ステータ部品が鋳造部分である場合、その製造のために、好適には構造化された表面を有する鋳造型を使用してよく、これにより、ステータ部品の個々の表面領域における製造に起因する粗さに的確に影響を及ぼす、要するに例えば適当な領域における鋳造型の局所的な表面構造によって、鋳造されたホルベックステータの溝において又はターボポンプ段の鋳造されたスペーサリングの内径に沿って、可能な限り高い粗さが達成される。
【0039】
成形時に焼結法が使用される場合、本発明に係る真空ポンプに使用されるステータ部品は、造形プロセス及び焼結プロセスを用いることによって、粉状又は粒状の材料から製造される。その際、原料として用いられる粉体又は粒体は、最初に金型内で圧力を加えて圧縮され、成形体が形成される。この未焼結の圧粉体は、未ださしたる強度を有しない。したがって、真空技術的に利用可能なステータ部品となるには、これに続く焼結が必須である。焼結は、比較的高い温度で保護ガス(例えば窒素、水素)下での熱処理において、主に場合によっては少量の液相が存在する固相反応であり、熱活性化材料の移動を引き起こす。焼結の成果、個々の材料粒子が結合し、高い強度を有する連続する焼結成形部分が形成される。プレス過程及び焼結過程は、必要に応じて繰り返してもよく、これにより、例えば付加的なさらなる圧縮が達成される。焼結の完了後にステータ部品に高い残留多孔度(例えば>12体積%)が残ると、この孔の空間は、別のステップで、焼結体よりも低い融点を有する溶融した別の材料(例えば金属又は合金)により充填してよい。
【0040】
付加製造(「3Dプリント」とも称される)という用語は、様々な成形技術に統合され、その共通点によれば、製造又は造形が、体積要素、特に層の相互接合によって行われる。しかもこの場合、本発明に係る真空ポンプで使用されるステータ部品の製造は、特定のタイプの付加製造に限定されない。本発明において使用可能な形態として、ここで例示すると、粉末床溶融結合(英語:powder bed fusion、PBF)、特にレーザ焼結、レーザ溶融又は電子ビーム溶融、ダイレクトメタルデポジション(英語:direct metal deposition、DMD)及び指向性エネルギ堆積(英語:direct energy deposition、DED)が挙げられる。
【0041】
付加法とは、材料粉末(例えばセラミックス又は金属)と結合剤(例えば重合体、ワックス又は接着剤)との混合物から出発して、実際の付加製造によって、成形体のみが生成され、成形体は、後処理、例えば脱脂及び焼結などの従来慣用の高温処理によってはじめて最終生成物に移行されるような製造方法と解してもよい。したがって、本発明に係る真空ポンプに使用されるステータ部品の成形体は、例えば材料粉末・結合剤・混合物の層状の押出し(ストランド堆積法又は熱溶融積層法 英語:fused deposition modeling、FDM)又はいわゆる「バインダジェット」によって製造してもよく、その際、結合剤がノズルを通って材料粉末層に塗布されることによって部品が構築される。
【0042】
本発明の真空ポンプに使用されるステータ部品が付加法によって製造される場合、部品を製造するために、好適には少なくとも1種の粉末材料が使用される。粉末材料は、物理プロセス、特に熱プロセス及び/又は化学プロセスによって層状に固化してよい。その際、粉末材料を型に導入し、圧縮してよく、その際、少なくとも実質的に均一な材料を生成できる。粉末材料から部品を構成することによって、部品は、付加製造法を用いて、最終輪郭に近い形に又は少なくともほぼ最終輪郭通りに製造でき、これにより、特に複雑な部品でも安価に、僅かな材料コストで、そして少量の廃棄物しか生じないように製造可能である。
【0043】
上述の特殊な鋳造法、焼結法及び付加製造方法は、例示的なものでしかなく、本発明で使用可能な鋳造法、焼結法及び付加法を最終的に列挙するものではない。
【0044】
本発明に係る真空ポンプに使用されるステータ部品の製造には、基本的に、真空技術的な要求を満たすあらゆる材料を使用してよい。例えば金属材料、セラミックス材料、金属基複合材料(英語:metal matrix composite、MMC)、プラスチック又はプラスチック複合材料を用いてよい。
【0045】
この場合、金属材料及び金属基複合材料が好適である。というのも、これらの材料は、好ましい機械特性及び良好な加工性の他に、特に高い熱伝導率を有し、このことが、ステータ部品からステータ部品に当接するハウジング部分への熱輸送に有利に働くからである。金属材料として使用可能な金属及び合金には、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄合金、例えば鋼又は鋳鉄、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、マグネシウム合金、銅、銅合金又はコバルト合金が挙げられる。本発明のステータ部品が金属材料から製造される場合、そのために、好適にはアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金又は鉄合金、特に好適にはアルミニウム、アルミニウム合金又は鉄合金、そして最も好適にはアルミニウム又はアルミニウム合金が使用される。
【0046】
好適な一形態では、ステータ部品は、金属材料、特にアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されていて、この場合、ステータ部品の表面の第2の部分は、30μmから150μmの粗さと0.7以上の放射率とを有する。
【0047】
金属基複合材料は、金属又は合金からなる連続するマトリクスからなり、そこには、非金属材料の粒子又は繊維が不連続に分散されている。金属マトリクスに分散している非金属材料は、無機材料、例えばセラミクス材料(例えば炭化物、酸化物、窒化物又はホウ化物)又は元素としての非金属又は半金属(例えばカーボン、ケイ素)である。本発明のステータ部品が、金属基複合材料から製造される場合、金属マトリクスとして用いられる金属又は合金として、好適にはアルミニウム、アルミニウム合金、鉄合金、例えば鋼又は鋳鉄、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、マグネシウム合金、銅、銅合金又はコバルト合金が使用され、特に好適にはアルミニウム、アルミニウム合金、鉄合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金、銅又は銅合金が使用され、さらに好適にはアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金又はマグネシウム合金が使用され、そして最も好適にはアルミニウム、アルミニウム合金、チタン又はチタン合金が使用される。非金属材料として、酸化物又は非酸化物であってよい非金属材料を使用してよい。好適な酸化物セラミックス材料の例は、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムである。特に、セラミックス材料は、非酸化物である。非酸化物セラミックス、例えば窒化物、炭化物又はホウ化物が、様々な利点、例えば高い化学的及び熱的安定性並びに酸化物セラミックスと比較して良好な熱伝導率を供する。特に好適な非酸化物セラミックは、アルミニウム、ハフニウム、ランタン、モリブデン、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、(炭化物、窒化物及びケイ化物の場合)ホウ素又は(炭化物、窒化物及びホウ化物の場合)ケイ素の炭化物、窒化物、ケイ化物又はホウ化物である。好適な非酸化物セラミックス材料の例は、炭化ホウ素、窒化ホウ素、ケイ化ホウ素(ケイ素のホウ化物)、六ホウ化ランタン、ケイ化モリブデン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ホウ化チタン、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン、ホウ化ジルコニウム及びこれらの2種以上の混合物である。炭化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン及びこれらの2種以上の混合物がより好適である。炭化ケイ素及び窒化ケイ素が最も好適である。
【0048】
既に前述した元素としてのSi又はCなどの非金属及び前述のセラミックス材料の他に、金属基複合材料中の非金属材料として、代替的又は付加的に別の無機物質を用いてもよい。例えば汎用の酸化物セラミックス材料に挙げられないそのような金属酸化物、すなわち好適には酸化クロム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ニッケル及び/又は酸化チタン、より好適には酸化クロム、酸化鉄、酸化マンガン及び/又は酸化ニッケル、さらに好適には酸化鉄及び/又は酸化ニッケル、そして特に好適には酸化鉄を使用してもよい。
【0049】
金属マトリクスへの非金属材料の組込みは、好適には、以下に、非金属無機物の着色剤の金属材料への組み込みに有利と述べたように行われる。
【0050】
異なる材料の組合せをステータ部品に設けてもよい。例えば、部品の一領域は、ある種の材料から構成されてよく、他方、別の領域は、別種の材料から形成されている。部品の第1の領域は、例えば第1の材料、例えばアルミニウムから構成されてよく、部品の第2の領域は、例えば第2の金属、例えばチタンから構成されてよく、この場合、両方の領域の間の境界領域では、例えば第1の金属と第2の金属との間の移行部、例えばアルミニウムチタン移行部を金属間結合で形成してよい。
【0051】
ステータ部品を形成する材料が着色されるべき場合、このことは、好適には、材料に、最終輪郭に近い又は最終輪郭通りの形状を形成する前に、特に成形工程の開始前に、少なくとも1種の着色剤が添加される。着色剤は、これが存在することによって、材料が色付けられる。ここで「着色剤」という用語は、狭義の色素、すなわちそれ自体が着色されている物質を意味するだけではなく、材料と結合してはじめて着色する物質をも意味する。
【0052】
本発明の範囲内では、着色剤によって行われる、ステータ部品の表面の着色は、必ずしも視覚的に認識可能な色の印象、すなわち可視域(λ=0.38μmから0.78μm)での放出スペクトルの変化を引き起こさなくてよく、専ら赤外放射に対する吸収能力及び放射能力の増加だけをもたらしてもよい。赤外放射とは、特に0.78μmから1mmの間の波長を有する電磁放射である。関連する温度範囲(約110℃までのロータ温度)では、実際に、全ての熱放射が赤外域で放出される。それにもかかわらず、もちろん、例えば材料の灰又は黒の色付けとして、着色が裸眼でも認識可能であることを排除しない。
【0053】
少なくとも1種の着色剤は、特に、ステータ部品の製造工程による負荷に耐えられ、例えば機械的安定性及び熱的安定性に関して、着色剤により着色されたステータ部品の真空技術的な適合性を損なわない非金属無機物である。好適には、着色剤として、少なくとも1種の元素としての非金属及び/又は少なくとも1種の無機顔料及び/又は少なくとも1種のセラミックス材料、より好適には少なくとも1種のセラミックス材料及び/又は少なくとも1種の無機顔料を使用してよい。セラミックス材料は、酸化物又は非酸化物であってよい。好適な酸化物セラミックス材料の例は、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムである。特に、セラミックス材料は、非酸化物である。前述したように、窒化物、炭化物又はホウ化物などの非酸化物セラミックスは、酸化物セラミックスと比べて有利である。この場合、好適には、既に一般的に金属基複合材料との関連において好適であると前述した非酸化物セラミックスを使用してよい。
【0054】
無機顔料として、例えば少なくとも1種の金属酸化物、好適には酸化クロム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ニッケル及び/又は酸化チタン、より好適には酸化クロム、酸化鉄、酸化マンガン及び/又は酸化ニッケル、その上より好適には酸化鉄及び/又は酸化ニッケル、特に好適には酸化鉄を使用してよい。
【0055】
好適には非金属無機物の着色剤、特に少なくとも1種の元素としての非金属、少なくとも1種の無機顔料及び/又は少なくとも1種のセラミック材料は、好適には、金属材料、すなわち金属又は合金に組み込まれる。そのために好適には、前述の成形法、すなわち鋳造、焼結又は付加製造を用いてよい。したがって、ステータ部品が鋳造部分である場合、鋳造部分は、好適には、少なくとも1種の液状化された金属の他に、その中に分配された少なくとも1種の着色剤を含有する、混合された鋳造材料から製造される。このことは、特に撹拌鋳造(stir casting)によって行うことができる。ステータ部品が焼結部分である場合、好適には、既に少なくとも1種の着色剤の粉体又は粒体を含有する少なくとも1種の金属粉体又は金属粒体の混合物から適切な成形体を加圧成形する、及び/又は焼結後に得られる、少なくとも1種の着色剤を含む多孔性の焼結体に、少なくとも1種の溶融金属材料が湿潤される。ステータ部品が付加法によって製造される場合、好適には、少なくとも1種の金属材料の粉体又は粒体に、少なくとも1種の着色剤の粉体又は粒体が混合され、粉末金属の処理に適した付加法が施され、すなわち例えばレーザ焼結、レーザ溶融、電子ビーム溶融、ダイレクトメタルデポジション又は指向性エネルギ堆積が施される。
【0056】
金属材料には、上述の好適な方法の後で少なくとも1種の着色剤を組み込むことができ、この場合、金属材料は、好適には、既に一般的に金属基複合材料との関連において好適な金属マトリクスとして前述された金属材料のうちの一種である。
【0057】
金属の典型的な放射率は、(表面が強く酸化又は粗面化されていない場合には)ε≒0.1から0.4の範囲にあり、研磨された表面では一部ではさらにこれを大きく下回る。これに対して、非金属材料は、金属よりも著しく高い熱放射率、典型的にはε≧0.6を有してよい。したがって、金属マトリクスに非金属の着色剤を埋め込むことにより、結果として生じる複合材料の放射率を、純粋な金属材料と比較して大幅に高めることができ、その際、好ましい機械特性、良好な加工性能又は高い熱伝導性などの金属又は合金の利点を放棄しなくてよい。
【0058】
材料に適当な着色剤を埋め込むことによって、放射率を高めるためにステータ部品の表面の後処理が不要であるという利点がもたらされる。というのも、材料は、既に成形直後に、すなわち未処理状態で着色されているからである。別の重要な利点は、表面の粗さに依存せずに放射率の増加が得られることにある。このことは、分離による後加工が施されている、例えば切削式に後加工されている接触面、嵌合面又は質量面にも高められた放射率を実現できることを意味する。その上、ステータ部品内で、放射率を高める前述の両方の可能性を組み合わせることができ、すなわちステータ部品を、着色剤が組み込まれた材料から製造することができ、この場合付加的に、接触面、嵌合面又は質量面ではない面を、製造に起因する高い粗さを有する状態のままにしてよい。
【0059】
本発明の課題は、これを対象とする独立請求項10に記載の方法によっても解決される。真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法に関し、真空ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、ポンプ段は、ステータと、運転時にステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、方法に際して、ステータ部品を成形、特に鋳造、焼結又は付加法によって製造し、これに続いて、表面の第1の部分に、後加工、特に分離による後加工、特に切削加工を施し、特に表面の第2の部分を未加工のままにする。
【0060】
好適には、成形によってステータ部品の表面は、及び/又は後加工によって表面の第2の部分は、3μm以上、好適には5μm以上、より好適な10μm以上、さらに好適には20μm以上、特に好適には30μm以上、その上特に好適には40μm以上、最も好適には50μm以上の粗さを得、このことは、既に上述の利点を伴う。前述したように、場合によって行われる第2の部分の後加工は、分離、特に切削加工による後加工であってよい。しかし、この場合、好適には、後加工による表面の第2の部分の粗さは、3μm、より好適には5μm、さらに好適には10μm、特に好適には20μm、その上特に好適には30μm、その上さらに好適には40μm、最も好適には50μmを下回らない。前述したように、第2の部分の粗さの増加をもたらす、表面の第2の部分の後処理を行ってもよい。表面の第2の部分のそのような粗面化は、例えば支持構造の破壊、レーザ構造化、研削又はサンドブラストによって、好適には支持構造の破壊又はレーザ構造化によって、特に好適にはレーザ構造化によって行われ、その際、支持構造の破壊は前述のように規定されている。
【0061】
一例では、アルミニウムから形成されるステータ部品の表面の第2の部分は、レーザ構造化によって処理されるので、第2の部分は、65μmの粗さと0.8の放射率とを有する。
【0062】
代替的に、本発明の課題は、これを対象とする独立請求項12に記載の方法によってもさらに解決される。真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法に関し、真空ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、ポンプ段は、ステータと、運転時にステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、方法に際して、特にステータ部品を製造する際に使用される少なくとも1種の出発材料に少なくとも1種の着色剤を添加することによって、表面の第2の部分に着色剤を付与する。
【0063】
この場合、好適には、ステータ部品は、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造され、このことは、既に前述した利点を伴う。
【0064】
記載の本発明に係る各方法では、さらに好適には、表面の第1の部分を加工し、少なくとも部分的に、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対して相対的な接触面、嵌合面又は質量面を形成する。このことは、既に前述した利点を伴う。
【0065】
記載の本発明に係る各方法では、製造されたステータ部品が、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングであるとさらに好適である。
【0066】
当然のこととして、明細書に記載の方法は、装置に関連して記載した形態及び個々の特徴に応じて発展させることができ、またその逆も同様である。
【0067】
以下、添付の図面を参照して、本発明を、例としての有利な実施形態に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図3】
図2に示された切断線A-Aに沿ったターボ分子ポンプを断面図で示す。
【
図4】
図2に示された切断線B-Bに沿ったターボ分子ポンプを断面図で示す。
【
図5】
図2に示された切断線C-Cに沿ったターボ分子ポンプを断面図で示す。
【
図6a】従来のホルベックシステムを断面図で示す。
【
図6b】高められた放射率を有するステータ表面を具備するホルベックシステムを断面図で示す。
【
図7】製造に起因して溝が粗い表面を有するホルベックステータスリーブを具備するホルベック領域を断面図で示す。
【
図8】
図7のホルベック領域の一部の詳細図である。
【
図9】製造に起因して内径で粗い表面を有するスペーサリングを具備するターボポンプ段を断面図で示す。
【
図10】
図9のターボポンプ段の一部の詳細図である。
【
図11】内側のホルベックロータスリーブが高い熱的な放射率を有する壁部によってポンプのモータ空間から分離されたホルベック領域を断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、吸気口フランジ113によって取り囲まれたポンプ吸気口115を有する。ポンプ吸気口115には、それ自体公知のように、図示されていないレシピエントを接続してよい。レシピエントから到来する気体は、ポンプ吸気口115を介してレシピエントから吸い込まれ、そしてポンプを通ってポンプ排気口117へと圧送できる。ポンプ排気口117には、例えばロータリベーンポンプ等の補助真空ポンプを接続してよい。
【0070】
吸気口フランジ113は、
図1による真空ポンプの向きでは、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。下部分121には、側方にエレクトロニクスハウジング123が配置されている。エレクトロニクスハウジング123内には、例えば真空ポンプ内に配置された電動モータ125(
図3も参照)を作動させるための、真空ポンプ111の電気的及び/又は電子的な構成要素が収容されている。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリに対する複数の接続部127が設けられている。さらに、データインタフェース129(例えばRS485規格に準拠するもの)及び電流供給接続部131が、エレクトロニクスハウジング123に配置されている。
【0071】
取り付けられたこの種のエレクトロニクスハウジングを有さずに、外部の駆動エレクトロニクスに接続されるターボ分子ポンプも存在する。
【0072】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、通気用吸気口133が、特に通気弁の形態で設けられている。通気用吸気口133を介して、真空ポンプ111を通気してよい。下部分121の領域には、その上さらに、シールガス接続部135(パージガス接続部とも称される)が配置されている。シールガス接続部135を介して、パージガスを、ポンプによって圧送される気体に対して電動モータ125(例えば
図3参照)を防護するために、モータ空間137内に送り込んでよい。モータ空間137内で、真空ポンプ111に、電動モータ125が収容されている。下部分121には、その上さらに2つの冷却剤接続部139が配置されている。この場合、一方の冷却剤接続部は、冷却剤用の吸気口として、そして他方の冷却剤接続部は、排気口として設けられている。冷却剤は、冷却目的で真空ポンプ内に導入可能である。存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)は、専ら空冷式に運転される。
【0073】
真空ポンプの下面141は、ベースとして使用できるので、真空ポンプ111は、下面141を基準に縦置きで運転してよい。しかも、真空ポンプ111は、吸気口フランジ113を介してレシピエントに固定し、したがって、いわば懸架した状態で運転してもよい。さらに、真空ポンプ111は、
図1に示されたのとは別の向きで整向されているときでも運転できるように構成してもよい。下面141を下向きではなく、横向きに又は上向きに配置できる真空ポンプの形態も実現可能である。この場合、原則として、任意の角度が考えられる。
【0074】
特に図示されたポンプよりも大きな、存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)は、縦置きでは運転できない。
【0075】
図2に示された下面141には、様々なねじ143がさらに配置されている。これらのねじ143によって、ここでは詳細には特定されない真空ポンプの構成部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下面141に固定されている。
【0076】
下面141には、固定孔147がさらに配置されている。固定孔147を介して、ポンプ111を、例えば設置面に固定できる。このことは、特に図示されたポンプよりも大きな、存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)では、不可能である。
【0077】
図2から
図5には、冷却剤管路148が示されている。冷却剤管路148内で、冷却剤接続部139を介して導入及び導出される冷却剤が循環可能である。
【0078】
図3から
図5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有する。プロセスガスポンプ段は、ポンプ吸気口115に作用するプロセスガスをポンプ排気口117へ圧送するためのものである。
【0079】
ハウジング119内には、ロータ149が配置されている。ロータ149は、回転軸線151を中心に回転可能なロータシャフト153を有する。
【0080】
ターボ分子ポンプ111は、ポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続された複数のターボ分子ポンプ段を有する。ターボ分子ポンプ段は、ロータシャフト153に固定された半径方向の複数の動翼155と、動翼155同士の間に配置され、そしてハウジング119内に固定された複数の静翼157とを有する。この場合、1枚の動翼155とこれに隣り合う1枚の静翼157とが、それぞれ1つのターボ分子ポンプ段を形成する。静翼157は、スペーサリング159によって、互いに所望の軸方向の間隔を置いて保持されている。
【0081】
真空ポンプは、半径方向で互いに内外に配置され、そしてポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続されたホルベックポンプ段をさらに有する。ホルベックポンプ段を有しない別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)が存在する。
【0082】
ホルベックポンプ段のロータは、ロータシャフト153に配置されたロータハブ161と、ロータハブ161に固定され、そしてこのロータハブ161によって支持される円筒側面状の2つのホルベックロータスリーブ163、165とを有する。ホルベックロータスリーブ163、165は、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で互いに内外に係合している。円筒側面状の2つのホルベックステータスリーブ167、169がさらに設けられている。ホルベックステータスリーブ167、169は、同様に、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で見て互いに内外に係合している。
【0083】
ホルベックポンプ段の、ポンピング作用を奏する表面は、側面によって、つまりホルベックロータスリーブ163、165及びホルベックステータスリーブ167、169の半径方向の内側面及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、ターボ分子ポンプに後続する第1のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、第2のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、第3のホルベックポンプ段を形成する。
【0084】
ホルベックロータスリーブ163の下端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられてよい。チャネルを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173に接続されている。内側のホルベックステータスリーブ169の上端部には、半径方向に延びるチャネルがさらに設けられてよい。チャネルを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175に接続されている。これにより、互いに内外に係合する複数のホルベックポンプ段が、互いに直列で接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下端部には、排気口117に通じる接続チャネル179がさらに設けられてよい。
【0085】
ホルベックステータスリーブ167、169の、前述のポンピング作用を奏する表面は、回転軸線151を中心に螺旋状に周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝をそれぞれ有する。その一方で、ホルベックロータスリーブ163、165の、これに対向する側面は、滑らかに形成されていて、そして真空ポンプ111の運転のための気体をホルベック溝内において前方へ送り出す。
【0086】
ロータシャフト153の回転可能な軸支のために、ポンプ排気口117の領域に転がり軸受181が設けられていて、ポンプ吸気口115の領域に永久磁石式の磁気軸受183が設けられている。
【0087】
転がり軸受181の領域には、ロータシャフト153に、円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。スプラッシュナット185は、転がり軸受181の方へ増大する外径を有する。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも1つの掻落とし部材と滑り接触している。存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)では、スプラッシュナットの代わりに、スプラッシュねじが設けられてよい。これにより、様々な構成が実現可能であるので、上記関係において、「スプラッシュ尖端」との用語も用いられる。
【0088】
作動媒体貯蔵部は、上下にスタックされた吸収性の複数のディスク187を有する。これらのディスク187には、転がり軸受181用の作動媒体、例えば潤滑剤が含浸されている。
【0089】
真空ポンプ111の運転時、作動媒体は、毛管現象によって、作動媒体貯蔵部から掻落とし部材を介して、回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力に基づいて、スプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の、増大していく外径の方へと、転がり軸受181に向かって送られる。そこでは、例えば潤滑機能が満たされる。転がり軸受181及び作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内で槽状のインサート189と軸受カバー145とによって囲繞されている。
【0090】
永久磁石式の磁気軸受183は、ロータ側の軸受半部191と、ステータ側の軸受半部193とを有する。これらは、それぞれ1つのリングスタックを有し、リングスタックは、軸方向に上下にスタックされた永久磁石の複数のリング195、197からなる。リング磁石195、197は、互いに半径方向の軸受間隙199を形成しつつ、対向していて、この場合、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に、そしてステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受間隙199内に存在する磁界は、リング磁石195、197の間に磁気的反発力を引き起こす。その反発力は、ロータシャフト153の半径方向の軸支を実現する。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153の支持部分201によって支持されている。支持部分201は、リング磁石195を半径方向外側で取り囲む。ステータ側のリング磁石197は、ステータ側の支持部分203によって支持されている。支持部分203は、リング磁石197を通って延びていて、そしてハウジング119の半径方向の支材205に懸架されている。回転軸線151に対して平行に、ロータ側のリング磁石195が、支持部分203に連結されたカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリング磁石197は、回転軸線151に対して平行に1つの方向で、支持部分203に結合された固定リング209と支持部分203に結合された固定リング211とによって固定されている。固定リング211とリング磁石197との間に、皿ばね213がさらに設けられてよい。
【0091】
磁気軸受内に、非常用軸受又は安全軸受215が設けられている。非常軸受又は安全軸受215は、真空ポンプの通常運転時には、非接触で空転し、そしてロータ149がステータに対して相対的に半径方向に過剰に変位するとようやく係合し、これにより、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突が阻止されるように、ロータ149に対する半径方向のストッパが形成される。安全軸受215は、非潤滑式の転がり軸受として構成されていて、そしてロータ149及び/又はステータと共に半径方向の間隙を形成する。間隙によって、安全軸受215は、通常のポンプ運転時には係合しないようになる。半径方向の変位に際して安全軸受215が係合し、半径方向の変位は、十分に大きく寸法付けられているので、安全軸受215は、真空ポンプの通常運転時は係合せず、そして同時に十分に小さいので、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突があらゆる状況で阻止される。
【0092】
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動する電動モータ125を有する。電動モータ125の電機子は、ロータ149によって形成されている。ロータ149のロータシャフト153は、モータステータ217を通って延びる。ロータシャフト153の、モータステータ217を通って延びる部分には、半径方向外側に又は埋入して、永久磁石アセンブリが配置されてよい。モータステータ217と、ロータ149の、モータステータ217を通って延びる部分との間には、中間室219が配置されている。中間219は、半径方向のモータ間隙を有する。モータ間隙を介して、モータステータ217と永久磁石アセンブリとは、駆動トルクを伝達するために、磁気的に影響を及ぼしてよい。
【0093】
モータステータ217は、ハウジング内で、電動モータ125に対して設けられたモータ空間137内に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(パージガスとも称され、これは例えば空気や窒素であってよい)が、モータ空間137に到達し得る。シールガスを介して、電動モータ125を、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護できる。モータ空間137は、ポンプ排気口117を介して真空引きしてもよい。つまりモータ空間137内に、少なくとも近似的に、ポンプ排気口117に接続された補助真空ポンプによって実現される真空圧が作用する。
【0094】
ロータハブ161と、モータ空間137を画成する壁部221との間には、それ自体公知のいわゆるラビリンスシール223がさらに設けられてよい。これにより、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対するモータ空間217のより良好なシールが達成される。
【0095】
前述のポンプには、少なくとも1つの、本発明によるステータ部品が備え付けられていて、ステータ部品は、ポンプ段でポンプ作用を奏するようにロータと相互作用し、ステータ部品は、特にホルベックポンプ段のホルベックステータ及び/又はターボ分子段のスペーサリングにおいて、独立請求項のうちの1つに述べられた特徴を有する。有利には、ポンプに、複数のステータ部品、特にホルベックポンプ段における複数のホルベックステータ及び/又はターボポンプ段における複数のスペーサリングを備え付けてよい。特に有利には、ポンプ段においてポンプ作用を奏するようにロータと相互作用する全てのステータ部品、特に前述のポンプの全てのホルベックポンプ段の全てのホルベックステータ及び/又は全てのターボ分子段の全てのスペーサリングが、本発明に従って構成されたステータ部品である。
【0096】
図6a及び
図6bは、構成の異なる2つのホルベックシステムの比較を概略断面図で示す。運転時に軸線51を中心に回転するロータシャフト53に配置されたロータハブ61と、ロータハブ61に取り付けられた、半径方向に内外に組み込まれた円筒側面状の複数のホルベックロータスリーブ63、65とは、
図6aのホルベックシステムと
図6bのホルベックシステムとにおいて同一であり、それぞれ従来の形で構成されてよい。ただし、同様に半径方向に見て内外に組み込まれた円筒側面状のホルベックステータスリーブ67、69又は68、70は、互いに異なる。
【0097】
図6aに示されたシステムは、高められた熱放射率をどこにも有しない従来のホルベックステータスリーブ67、69を有する。
【0098】
これに対して、
図6bに示されたシステムは、本発明によるホルベックステータスリーブ68、70を含み、ホルベックステータスリーブ68、70の、点で示された表面は、従来のスリーブ67、69に対して高められた熱放射率を有し、したがって改善された熱導出をもたらす。このことは、
図6bでは、内側のホルベックステータスリーブ70の半径方向内側面及び半径方向外側面と外側のホルベックステータスリーブ68の半径方向内側面との両方に当てはまる。
【0099】
この場合、具体的には、高められた熱放射率を有する表面には、外側のホルベックステータスリーブ68の半径方向内側面における、それぞれのウェブ先端683の表面を含むウェブ681の表面と、ウェブ681の間にそれぞれ位置する溝685の表面とが含まれ、さらに内側のホルベックステータスリーブ70の半径方向外側面及び半径方向内側面における、ウェブ先端703、704の表面と、溝705、706の表面とが含まれ、並びにチャネル72、74、76を形成する、チャネル状の表面721、741、761が含まれる。半径方向に延在するチャネル72は、第1のホルベック間隙71と第2のホルベック間隙73と接続するとともに、一方の側で外側のホルベックロータスリーブ63の下端631によって、他方の側でチャネル状のステータ表面721によって画定される。半径方向に延在するチャネル74は、第2のホルベック間隙73と第3のホルベック間隙75とを接続するとともに、一方の側でロータハブ61によって、他方の側で内側のステータスリーブ70の上端の表面741によって画定される。半径方向に延在するチャネル76は、第3のホルベック間隙75と(図示されていない)排気口とを接続するとともに、一方の側で内側のホルベックロータスリーブ65の下端によって、他方の側でチャネル側のステータ表面761によって画定される。
【0100】
図6bに示された実施形態では、3つのホルベックポンプ段のそれぞれにおいて、ロータ表面に対向するステータ表面は、それぞれその全体で高められた熱放射率を有するので、それぞれホルベック間隙71、73、75全体にわたって、ロータからステータへ熱放射によって高められた熱輸送が行われる。
【0101】
図6bから同様に看取されるように、外側のステータスリーブ68の外側の側面689は、高められた熱放射率を有しない。高められた熱放射率は、外側の表面689が(図示されていない)ポンプハウジングへの嵌合に用いられるので、この箇所では不要である。要するにここでは、ポンプの運転状態では、放射を介する熱輸送が越えて行わなければならないような間隙が存在せず、熱伝達は、直接外側の側面/表面689から(図示されていない)直接にこれに当接するハウジング部分へ行われる。
【0102】
もちろん、本発明の範囲内で、
図6bに略示されたホルベックシステムの構成とは異なる他の実施形態も実現可能である。特に、
図6bに点で示された全てのステータ表面ではなく、これらの表面の一部だけが高められた熱放射率を有することが考えられる。
【0103】
例えば、ポンプの他の部品に対するステータ部品の接触面の他に、ウェブ先端681、701、704及び/又はチャネル側のホルベックステータ表面721、741、761も、全体的又は部分的に高められた熱放射率を有さずに構成されていると有利であり得る。このことは、特に、高められた熱放射率が、高い粗さによって得ようとするときに有意義であるが、このことは、ロータとステータとの間に狭いホルベック間隙71、73、75又はチャネル72、74、76を形成するために必要とされる高い寸法精度を損なうおそれがある。この場合、熱放射率の増加は、特に、寸法精度の要求がより低い、ステータ部品の面、例えばホルベックステータスリーブ68、70の溝685、705、706の表面に限定されたままであってよい。
【0104】
図7及び
図8は、そのような実施形態を示す。内側及び外側のホルベックステータスリーブ68、70の溝685、705、706が製造に起因する粗い表面を有する、ターボ分子ポンプのホルベック領域が示されている。
図8は、拡大断面図で、ホルベックステータスリーブの下端における
図7のホルベック領域の一部を示す。
【0105】
溝表面の凹凸は、
図7及び
図8において、より分かりやすくするために、著しく誇張されていて、縮尺通りには示されていない。この実施形態では、溝685、705、706の表面のみが、製造に起因する高い粗さを有し、これに伴い高い熱放射率を有する。
図7及び
図8に示されたステータ部品の他の残りの表面、すなわち特に内側及び外側のホルベックステータスリーブ68、70のウェブ先端683、703、704及び他のポンプ部分に対するステータ部品の接触面、例えば外側のホルベックステータスリーブ68の外側の側面689は、これに対して切削式の後加工によって平滑に構成されていて、これにより、要求される公差を維持でき、接触面に良好な熱伝達が保証される。
【0106】
しかも、特に
図7に基づいて看取されるように、ホルベック段において、ロータスリーブに対向するステータ表面の大部分が、ウェブ先端683、703、704によってではなく溝685、705、706によって占められる。したがって、例えばウェブ先端683、703、704などの比較的小さな面部分の切削式の後加工は、ロータからステータへの熱放射を大きく損なうことがない。それぞれ異なって構成されたホルベックステータスリーブの表面は、最適な形で補足し合い、これにより、ロータからステータへ(粗い溝685、705、706を介して)、これに続いてステータからハウジングへ(平滑な外周面689を介して)可能な限り最良の熱導出が達成される。
【0107】
図9は、直列に接続された複数のターボポンプ段を示す。ターボポンプ段は、それぞれ、ロータシャフト53に取り付けられた動翼55と、その隣りにある静翼57とから形成されていて、この場合、静翼57は、スペーサリング59によって互いに軸方向に離間されている。
図10は、
図9によるスペーサリング59を拡大図で示す。
【0108】
各スペーサリング59の内径に沿って、動翼55に、それぞれスペーサリング59の内径表面591が対向する。この場合、動翼55の半径方向外側端部とスペーサリング59の内径表面591との間の距離は、公差による制限があってもスペーサリング59を使用できる程の大きさであり、その際、内径表面591の全体は、成形後に切削式に後加工されていない。したがって、スペーサリング59の内径表面591の全体は加工されていないので、内径表面591は、製造に起因して高い粗さを有し、したがってこれに伴い高い熱放射率を有する。このことは、
図9に示されるように、使用される全てのスペーサリング59に当てはまり、ゆえにロータからステータへの放射による熱輸送は、ポンプのターボ分子ポンプ段で最大化される。
【0109】
特に
図10の拡大図から看取されるように、スペーサリング59において、隣り合うスペーサリング59、静翼57及びハウジング19に対する接触面599は、切削式の後加工によって平滑に構成されていて、これにより、要求される嵌合が得られ、特にハウジングへの良好な熱伝達が保証される。これに対して、動翼55に直接的に対向し、したがって動翼55から放出される熱放射を吸収できる面の大部分は、
図9から看取されるように、高い放射率を有する表面591によって占められる。すなわち、スペーサリング59の、それぞれ異なって形成された表面は、最適な形で互いに補足し、これにより、ロータからステータへ(粗い内径表面591を介して)、次いでステータからハウジングへ(平滑な接触面599を介して)の可能な限り最良の熱導出が達成される。
【0110】
図11は、別の一実施形態を示し、この実施形態では、ポンプのモータ空間37を画定する壁部22が、本発明の観点でのステータ部品として構成されている。
図11に点で示された、壁部22の、内側のホルベックロータスリーブ65に面する表面23は、従来の壁部と比較して増加した熱放射率を有する。これにより、壁部22の表面23によって、壁部22から内側のホルベックロータスリーブ65を分離する間隙24を越える、放射によるロータからの熱導出が高まる。
【0111】
もちろん、
図6から
図11に示された特徴は、任意に互いに組み合わせてよい。したがって、例えば、ターボ分子ポンプ内で、
図6b、
図7又は
図8に示されたような1つ又は複数のホルベックステータスリーブ68、70、
図9又は
図10に示されたような1つ又は複数のスペーサリング59及び/又は
図11に示されたような1つ又は複数の壁部22をまとめて組み込んで同時に使用することが可能であり、このことは、そこから得られる改善された熱導出に基づいて極めて有利である。
【符号の説明】
【0112】
22 壁部
23 表面
24 間隙
37 モータ空間
51 回転軸線
53 ロータシャフト
55 動翼
57 静翼
59 スペーサリング
61 ロータハブ
63 外側のホルベックロータスリーブ
65 内側のホルベックロータスリーブ
67 外側のホルベックステータスリーブ
68 外側のホルベックステータスリーブ
69 内側のホルベックステータスリーブ
70 内側のホルベックステータスリーブ
71 ホルベック間隙
72 チャネル
73 ホルベック間隙
74 チャネル
75 ホルベック間隙
76 チャネル
111 ターボ分子ポンプ
113 吸気口フランジ
115 ポンプ吸気口
117 ポンプ排気口
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モータ
127 アクセサリ接続部
129 データインタフェース
131 電流供給接続部
133 通気用吸気口
135 シールガス接続部
137 モータ空間
139 冷却剤接続部
141 下面
143 ねじ
145 軸受カバー
147 固定孔
148 冷却剤管路
149 ロータ
151 回転軸線
153 ロータシャフト
155 動翼
157 静翼
159 スペーサリング
161 ロータハブ
163 ホルベックロータスリーブ
165 ホルベックロータスリーブ
167 ホルベックステータスリーブ
169 ホルベックステータスリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石式の磁気軸受
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ロータ側の軸受半部
193 ステータ側の軸受半部
195 リング磁石
197 リング磁石
199 軸受間隙
201 支持部分
203 支持部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 皿ばね
215 非常用軸受又は安全軸受
217 モータステータ
219 中間室
221 壁部
223 ラビリンスシール
591 内径表面
681 ウェブ
683 ウェブ先端
685 溝
701 ウェブ
702 ウェブ
703 ウェブ先端
704 ウェブ先端
705 溝
706 溝
721 チャネル状のステータ表面
741 チャネル状のステータ表面
761 チャネル状のステータ表面
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、被覆されておらず、50℃で少なくとも0.25、好適には少なくとも0.3の熱放射率εを有する、真空ポンプ。
【請求項2】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、製造に起因する、分離による後加工又は被覆によって変化されない表面特性を有する、真空ポンプ。
【請求項3】
前記表面の第2の部分の、製造に起因する表面特性は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の粗さ及び/又は着色であり、特に着色は、前記ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる、請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、被覆されておらず、
前記表面の第2の部分は、製造に起因する、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の粗さ及び/又は着色を有し、特に着色は、前記ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる、真空ポンプ。
【請求項5】
前記表面の第1の部分は、後加工されている、特に分離による後加工が施されている、特に切削加工されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記表面の第1の部分は、前記ポンプ段が組み立てられた状態で、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を少なくとも部分的に形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記ステータ部品は、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングである、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記ステータ部品は、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法において、
真空ポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、
方法に際して、前記ステータ部品を成形、特に鋳造、焼結又は付加法によって製造し、これに続いて、前記表面の第1の部分に、後加工、特に分離による後加工、特に切削加工を施し、特に前記表面の第2の部分を未加工のままにする、方法。
【請求項10】
成形によって前記ステータ部品の表面は、及び/又は後加工によって前記表面の第2の部分は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の範囲の粗さを得る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法において、
真空ポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、
方法に際して、特に前記ステータ部品を製造する際に使用される少なくとも1種の出発材料に少なくとも1種の着色剤を添加することによって、前記表面の第2の部分に着色を施す、方法。
【請求項12】
前記ステータ部品を、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面の第1の部分を少なくとも部分的に加工して、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を形成する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステータ部品は、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングである、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ステータ部品は、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる又は得ることができる、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
もちろん、
図6から
図11に示された特徴は、任意に互いに組み合わせてよい。したがって、例えば、ターボ分子ポンプ内で、
図6b、
図7又は
図8に示されたような1つ又は複数のホルベックステータスリーブ68、70、
図9又は
図10に示されたような1つ又は複数のスペーサリング59及び/又は
図11に示されたような1つ又は複数の壁部22をまとめて組み込んで同時に使用することが可能であり、このことは、そこから得られる改善された熱導出に基づいて極めて有利である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、被覆されておらず、50℃で少なくとも0.25、好適には少なくとも0.3の熱放射率εを有する、真空ポンプ。
2.
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、製造に起因する、分離による後加工又は被覆によって変化されない表面特性を有する、真空ポンプ。
3.
前記表面の第2の部分の、製造に起因する表面特性は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さR
z
として表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の粗さ及び/又は着色であり、特に着色は、前記ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる、上記2の真空ポンプ。
4.
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータは、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備する少なくとも1つのステータ部品を有し、
前記表面の第2の部分は、被覆されておらず、
前記表面の第2の部分は、製造に起因する、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さRzとして表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の粗さ及び/又は着色を有し、特に着色は、前記ステータ部品の製造時に使用される出発材料に少なくとも1種類の着色剤を添加することによって得られる、真空ポンプ。
5.
前記表面の第1の部分は、後加工されている、特に分離による後加工が施されている、特に切削加工されている、上記のいずれか一つの真空ポンプ。
6.
前記表面の第1の部分は、前記ポンプ段が組み立てられた状態で、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を少なくとも部分的に形成する、上記のいずれか一つの真空ポンプ。
7.
前記ステータ部品は、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングである、上記のいずれか一つの真空ポンプ。
8.
前記ステータ部品は、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造されている、上記のいずれか一つの真空ポンプ。
9.
前記ステータ部品は、後いずれか一つの方法によって得られる又は得ることができる、上記のいずれか一つの真空ポンプ。
10.
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法において、
真空ポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、
方法に際して、前記ステータ部品を成形、特に鋳造、焼結又は付加法によって製造し、これに続いて、前記表面の第1の部分に、後加工、特に分離による後加工、特に切削加工を施し、特に前記表面の第2の部分を未加工のままにする、方法。
11.
成形によって前記ステータ部品の表面は、及び/又は後加工によって前記表面の第2の部分は、DIN EN ISO 4287:2010-07に準拠する平均粗さR
z
として表される3μm以上、好適には5μm以上、さらに好適には10μm以上の範囲の粗さを得る、上記10の方法。
12.
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのステータ用のステータ部品を製造する方法において、
真空ポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つのポンプ段とを備え、前記ポンプ段は、ステータと、運転時に前記ステータに対して相対的に回転軸線を中心に回転する、前記ステータとポンプ作用を奏するように相互作用するロータとを有し、前記ステータ部品は、第1の部分と、第1の部分とは異なる第2の部分とを有する表面を具備し、
方法に際して、特に前記ステータ部品を製造する際に使用される少なくとも1種の出発材料に少なくとも1種の着色剤を添加することによって、前記表面の第2の部分に着色を施す、方法。
13.
前記ステータ部品を、鋳造法、焼結法又は付加法によって製造する、上記12の方法。
14.
前記表面の第1の部分を少なくとも部分的に加工して、真空ポンプの1つ又は複数の別の部品に対する接触面、嵌合面又は質量面を形成する、上記10から13のいずれか一つの方法。
15.
前記ステータ部品は、ホルベックポンプ段のホルベックステータ又はターボポンプ段のスペーサリングである、上記10から14のいずれか一つの方法。
【外国語明細書】