(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008061
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ブランキング用金型、ブランキング集積装置及びブランキング方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/00 20060101AFI20240112BHJP
B21D 45/00 20060101ALI20240112BHJP
B21D 43/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B21D43/00 P
B21D45/00 C
B21D43/22
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109583
(22)【出願日】2022-07-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周東 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】中静 良隆
(57)【要約】
【課題】金属コイルの幅より長さが長いブランク材をブランキングできるとともに、集積装置(パイラー)内にて目的の姿勢で集積できるブランキング装置の金型、ブランキング集積装置及びブランキング方法を提供する。
【解決手段】連続する金属コイル10を受けて、金型20を有するブランキング装置1によりブランキング加工をおこなうものである。金型20は、ブランク材11を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部を有する。金型20は、剪断部より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン方向に連続する金属コイルの供給を受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルの供給を受けて、ブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
を備えていることを特徴とするブランキング装置。
【請求項2】
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている請求項1記載のブランキング装置。
【請求項3】
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、前記第1の傾斜角度を有するブランク材の排出側の縁と、前記金型の排出側前端面と、前記金型の側端面とで囲まれる配置対象領域に配置されており、
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている請求項1記載のブランキング装置。
【請求項4】
前記第1の搬送ベルトコンベアは、前記配置対象領域の前記側端面の長辺側に配置され、前記第2の搬送ベルトコンベアは前記配置対象領域の前記側端面の短辺側に配置されている請求項3記載のブランキング装置。
【請求項5】
前記第2の搬送ベルトコンベアのライン方向の搬送速度が、金属コイルのライン方向の供給速度より速いか同じ請求項2又は3記載のブランキング装置。
【請求項6】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する搬送長の順で実質的に並行に配置された、3以上の搬送ベルトコンベアを有し、搬送長が短い搬送ベルトコンベアから搬送長が長い搬送ベルトコンベアの順で、搬送速度が順に速くなっている請求項1記載のブランキング装置。
【請求項7】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、
前記第1の搬送ベルトコンベアは、搬送方向に分割された少なくとも2つの分割コンベアを有し、分割コンベア間で搬送速度が異なっている請求項1記載のブランキング装置。
【請求項8】
前記第1の搬送ベルトコンベア及び前記第2の搬送ベルトコンベアのうち、一方が上位に配置されている請求項2又は3記載のブランキング装置。
【請求項9】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、
前記ブランク材がその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分と、小さい第2部分とを有し、
前記第1部分が前記第2の搬送ベルトコンベアに対応し、前記第2部分が前記第1の搬送ベルトコンベアに対応している、請求項2又は3記載のブランキング装置。
【請求項10】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、
前記ブランク材がその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分と、小さい第2部分とを有し、
前記第1部分が前記第1の搬送ベルトコンベアに対応し、前記第2部分が前記第2の搬送ベルトコンベアに対応している、請求項2又は3記載のブランキング装置。
【請求項11】
連続する金属コイルを受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
前記排出手段の出側に配置されたブランク材の搬送手段と:
前記搬送手段から搬出されたブランク材を順次積み重ね集積を行う集積手段と:
を備えていることを特徴とするブランキング集積装置。
【請求項12】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている請求項11記載のブランキング集積装置。
【請求項13】
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、前記第1の傾斜角度を有するブランク材の排出側の縁と、前記金型の排出側前端面と、前記金型の側端面とで囲まれる配置対象領域に配置されており
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている請求項11記載のブランキング集積装置。
【請求項14】
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段と、を有し、
前記ブランク材の既定長に対し、前記金属コイル幅の大から小への変化に対応して、前記傾斜角度を大から小に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【請求項15】
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段と、を有し、
前記金属コイルの既定幅に対し、前記ブランク材の長から短への変化に対応して、前記傾斜角度を小から大に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランキング用金型、ブランキング集積装置及びブランキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用のフロントピラー、クロスメンバ、アウターパネルやサイドドアパネルなどの大型成型品を得る場合、生産の効率化のために、プレス成形機に供給する前に、ブランキング装置により大型のブランク材を高速で得ている。
【0003】
一方、ブランキング装置により供給されたブランク材はプレス成形機の金型への搬入位置から排出位置にかけて複数条の搬送チェーンコンベアを設けるとともに、金型の両サイドに、下金型より高い位置と下金型より低い退避位置との間を、前記搬送チェーンコンベアを昇降させる昇降手段を設けたブランク材の搬送形態が知られている(特許文献1)。
そして、同文献には、複数条の搬送チェーンコンベア間の送り速度を制御することにより、プレス成形機の金型への板材のブランキング加工の位置決めを行うことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブランキング(プレス)装置により金属コイルからブランク材をブランキングしたものは、その後のプレス成形機に供給するに先立って、一旦、集積装置(パイラー)に積み重ねておく必要がある。
【0006】
他方で、従来、金属コイル幅と同等又はそれ以下の幅方向長さのワークをブランキング加工することとしていた。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、金属コイルの幅より幅方向長さが長いブランク材をブランキングできるとともに、集積装置(パイラー)内にて目的の姿勢で集積できるブランキング用金型、ブランキング集積装置及びブランキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決したブランキング装置の態様を次のとおりである。
ライン方向に連続する金属コイルの供給を受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルの供給を受けて、ブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段を有する、
ことを特徴とするブランキング装置。
【0009】
また、ブランキング集積装置の態様を次のとおりである。
連続する金属コイルを受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
前記排出手段の出側に配置されたブランク材の搬送手段と:
前記搬送手段から搬出されたブランク材を順次積み重ね集積を行う集積手段と:
を備えていることを特徴とするブランキング集積装置。
【0010】
また、第1のブランキング方法の態様を次のとおりである。
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段と、を有し、
前記ブランク材の既定長に対し、前記金属コイル幅の大から小への変化に対応じて、前記傾斜角度を大から小に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【0011】
また、第2のブランキング方法の態様は次のとおりである。
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段を有し、
前記金属コイルの既定幅に対し、前記ブランク材の長から短への変化に対応して、前記傾斜角度を小から大に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属コイルの幅より幅方向長さが長いブランク材をブランキングできるとともに、集積装置(パイラー)内にて目的の姿勢で集積できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ブランク材の動きを説明する実施の形態の概要平面視図である。
【
図2A】姿勢変更手段を有する排出手段の配置対象領域を説明する説明図である。
【
図2B】姿勢変更手段を有する排出手段の配置対象領域を説明する他の説明図である。
【
図4】(a)~(c)は金属コイル幅に対するブランキング形態の平面図である。
【
図5】ブランク材の搬送集積の形態を示したもので、(a)は平面図、(b)は概要正面図である。
【
図6】姿勢変更を行わない場合におけるブランク材の搬送集積の形態を示したもので、(a)は平面図、(b)は概要正面図である。
【
図7】姿勢変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図8】他の変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図9】姿勢変換手段を有する排出手段例概要正面図である。
【
図10】別の姿勢変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図11】さらに別の姿勢変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図12】金属コイルの既定幅に対し、ブランキング加工する製品の長さに対応して前記傾斜角度を選択して、ブランキングを行う第1例の説明図である。
【
図13】金属コイルの既定幅に対し、ブランキング加工する製品の長さに対応して前記傾斜角度を選択して、ブランキングを行う第2例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の態様を説明する。
【0015】
図1を参照すると、ブランキング装置1が図示されており、上部の上型は省略し、下部の下型の金型20のみを平面視で図示してある。
ブランキング装置1では、連続する金属コイル10の供給を受けて、ブランキング加工を行い、ブランク材11を金型20から排出、搬送するように構成されている。
【0016】
図2を参照すると、金型20は、ブランク材11を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部12有する。剪断部12は、
図3に示すように、例えば下型の下刃(ダイ)12Aと上型の上刃(打抜きパンチ)12Cを備えている。符号10Sはスクラップを示す。
【0017】
また、金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度θ1を、より大きい、
図2に示すほぼ長方形の集積装置41にブランク材11を整列して積載できるような、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【0018】
ここで、(角度θ2-角度θ1)は、90度未満、30度以上であることが望ましい。
【0019】
さらに、排出手段30の出側に配置されたブランク材11の搬送手段40と、この搬送手段40から搬出されたブランク材11を順次積み重ね集積を行う集積手段41とが設けられている。
【0020】
実施の形態における金型10は、金属コイル10の送り方向の各剪断工程順に剪断部12を有する順送金型である。
例えば、傾斜する凹凸のある外形形状に対し、その一部を剪断する穴抜き加工部11a1~11a3を形成する前段の穴抜き加工工程を実施し、続いて完全に剪断する、個別ブランク材11とする後段の外形加工部11b1~11b3を形成する外形加工工程を実施するものである。
単純な形状のブランク材である場合には、順送金型形態によることなく、一つの切り刃によって剪断加工することも可能である。
【0021】
ところで、
図1及び
図2はクロスメンバのブランク材を例として説明した。これに対し、
図4ではフロントピラーのブランク材を例として、そのブランク材の配置形態を説明する。
【0022】
すなわち、ブランク材Bの長さLが、金属コイル10の幅W0より短い場合には
図4の(a)又は(b)の配置例のように、金属コイル10の幅方向に沿わせた整列状態で順次ブランキングを行うことが、金属コイル10全体を可能な限り利用して歩留まりを高めるために有効である。
【0023】
しかし、金属コイル10の幅Wより長い又は幅方向両端部に残し代が少ないブランク材Bの場合には、例えば
図4の(c)の例のような傾斜配置としなければならない。他方で、ブランク材Bの長さLに応じて金属コイル10として幅広のものを使用することも考えられるものの、金属コイル10として提供される幅寸法の種類には制約があることに鑑み、例えば
図4の(c)の例のようなブランク材Bの傾斜配置とすることが望ましく、歩留まりが高くなる。
【0024】
しかるに、例えば
図4の(c)の例のようなブランク材Bの傾斜配置でブランキングを行い、ブランキング加工した後のブランク材を金型から排出し、例えばコンベアなどの搬送手段40に載置させて搬送して集積装置(パイラー)41に集積するにあたり、搬送手段40ではブランク材Bが搬送手段40の例えばコンベア上面に最初に接触した姿勢のまま搬送され、しかも、大型のブランク材Bがライン方向に対して傾斜角度で搬送されるので、結果として、各ブランク材Bごと搬送方向に整列しないまま、集積装置(パイラー)に送られ、自然落下で積み重ねられる。
【0025】
各ブランク材Bごと搬送方向に整列しないまま、集積装置(パイラー)41に自然落下で積み重ねられると、集積装置(パイラー)内に目的の姿勢で(正しく)集積できないことがある。また、ブランクも傾斜状態のため集積装置が大型化してしまう。
【0026】
したがって、順次正しく目的の姿勢で積み重ねを行えるようにする必要がある。そこで、実施の形態ではブランク材の姿勢を変更(修正)する考えの下で、姿勢変更及び排出手段30を金型20内に設けている。
【0027】
ここで、ブランク材の姿勢変更(修正)手段を、金型20から排出された後に行うことも考えられる。すなわち、金型20と集積装置(パイラー)41との間にブランク材の姿勢変更(修正)手段を設けることも考えられる。
【0028】
しかし、金型20と集積装置(パイラー)41との間にブランク材の姿勢変更(修正)手段を設ける形態では、設備の大幅な変更を伴い避けるべきである。また、最終の剪断工程を経た時点以降のブランク材はフリーとなるので、金型20から排出されるまでに姿勢が安定しない可能性もある。
ブランク材Bが、金型20の後述する「配置対象領域」に自然落下しそれ以上搬送ができない可能性もある。
【0029】
これに対して、姿勢変更及び排出手段30を金型20内に設けることにより、安定した姿勢変更及び排出・搬送が可能であり、設備の大幅な変更を伴わないので、経済的な利点が大きい。しかも、ブランキング製品の変更に対応して、姿勢変更及び排出手段30の運転制御を変更する、あるいは姿勢変更及び排出手段30を有する金型20として取り替えるだけでよいので、生産効率上きわめて望ましいものとなる。また、既存の金型に姿勢変更及び排出手段30を、余裕領域、すなわち後述する「配置対象領域」を利用して後付けすることもできる。特に、傾斜するブランクをコンパクトなスペースで連続生産することに有効である。
【0030】
続いて、いくつかの具体例を示しながら本発明の内容を説明する。
【0031】
(第1の態様)
図1~
図3は第1の態様を示したもので、その構成は既述のとおりである。この第1の態様は、
図4(c)と同様に、歩留まりを高めるためにブランク材を傾斜配置し、ブランキング加工、姿勢変更及び集積を行うことで、高速での生産を行うことを可能とするものである。
【0032】
金型20は順送金型の例であり、アンコイラーにより金属コイル10の供給を受けてブランク材11を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部12を有する。上型の詳細は図示していないが、公知の構成を採用できる。
【0033】
金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、
図2に示す長方形の集積装置41にブランク材11を整列して積載できるような、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ1に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【0034】
第1の態様における、姿勢変更手段を有する排出手段30は、ブランク材11を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、第1の搬送ベルトコンベア31の搬送速度が、第2の搬送ベルトコンベア32の搬送速度より速くなっている。
ここで、第1の搬送ベルトコンベア31のライン方向の搬送速度及び第2の搬送ベルトコンベア32のライン方向の搬送速度は、金属コイルのライン方向の搬送速度と同じか速いことで、ブランク材を溜まることなく排出できる。
【0035】
第1の態様における、姿勢変更手段を有する排出手段30は、姿勢変更とブランク材の排出・搬送との機能を併せ持つものである。
すなわち、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とによる移動過程で、第1の搬送ベルトコンベア31の搬送速度が、第2の搬送ベルトコンベア32の搬送速度より速くなっているので、
図2基準で、ブランク材11を反時計方向に回転させながら、金型20からブランク材11を長方形の集積装置41に整列する姿勢で排出できるものである。
【0036】
姿勢変更手段を有する排出手段30は、姿勢変更手段と排出手段とが別になって構成されていてもよい。姿勢変更手段としてターンテーブルを、排出手段としてベルトコンベア又はシュートに代えて構成することができる。
【0037】
金型20から排出されたブランク材11は、排出手段30の出側に配置されたブランク材11の搬送手段40、例えばベルトコンベア、又はシュートなどの搬送手段40により搬送され、続いて集積手段41に順次積み重ねられ、集積される。
図2,3に示すように、排出手段30の出側の下方に、ブランク材の搬送手段40の入側が重なるように配置されたことにより、姿勢変更されたブランク11を自然落下させ、高速で排出・搬送できるようにしてある。
【0038】
集積手段41では、
図5の例で示すように、例えばシリンダ駆動の昇降する板状の位置決めスタンパー41aを、姿勢変更されたブランク材Bの長手方向両端部に厚み方向面に、少なくとも片側2方向から対向して設けることにより、位置規制を容易に行うことができる。
【0039】
これに対し、
図6の例に示すように、仮に例えば姿勢変更しないまま(第1の傾斜角度θ1のまま)で、集積手段42に集積しようとし、
図6に示す形状のスタンパー42a、42aの4個所(符号Xで示す)で位置規制を行うようにした場合、搬送手段40により搬送されたブランク材Bが集積体の手前で前屈みでのめり込んでしまい、落下して、正しい姿勢で集積できない可能性がある。しかも、集積手段42はムダ空間が多く、生産現場の領域効率を悪くする。
したがって、姿勢の変更が重要となるものである。
【0040】
(第2の態様)
上記姿勢変更手段を有する排出手段30は、金型20の「配置対象領域Z」に配置されている。
また、金型20又は「配置対象領域Z」に対する姿勢変更手段を有する排出手段30は、その主要部が配置されておれば足り、例えば平面視で姿勢変更手段を有する排出手段30が、金型20から延出していてもよい。
【0041】
ここに「配置対象領域Z」の例について説明する。
配置対象領域の第1の例は、
図2Aに示すように、第1の傾斜角度θ1(
図2参照)を有するブランク材11(又はB)の排出側の縁11eと、金型20の排出側前端面20aと、金型20の側端面20b,20cとで囲まれるに領域である。
これを、概略的にみると、ブランク材11(又はB)の排出側の縁11eはAB線に相当し、金型20の排出側前端面20aはCD線に相当し、金型20の側端面20bはDB線に相当し、側端面20cはAC線に相当し、20cに相当するとみれば、ABCDで囲まれる台形領域であり、これが配置対象領域Z1となっている。
【0042】
配置対象領域の第2の例は、
図2Bに示すように、ブランク材11(又はB)が示す第1の傾斜角度θ1が
図2Aの場合より小さい例であり、ブランク材11(又はB)の排出側の縁11eと、金型20の排出側前端面20aと、金型20の側端面20bとで囲まれるに領域である。
これを、概略的にみると、ブランク材11(又はB)の排出側の縁11eはAB線に相当し、金型20の排出側前端面20aはAD線に相当し、金型20の側端面20bはDB線に相当するとみれば、ABDで囲まれる三角形領域であり、これが配置対象領域Z2となっている。
【0043】
この第1の例及び第2の例をもって対比的に示したように、配置対象領域は、ブランク材11(又はB)の傾斜状態での剪断にともなって形成される領域である。そして、ブランク材11(又はB)の第1の傾斜角度θ1、ブランク材11(又はB)のライン方向CLの位置、並びにブランク材11(又はB)の排出側の縁11eの形状などによって変化するものである。
ただ、基本的にはほぼ三角形領域であるといえる。
【0044】
この第2の態様で説明したように、金型20の剪断部12を除く遊び空間であった配置対象領域Zに姿勢変更手段を有する排出手段30を設けたことで、傾斜角度を有する金型における領域の有効利用した、ブランク材の姿勢変更と、集積装置41に整列する姿勢での排出とを両立できた。その結果、ブランク材を集積装置41に安定して集積ができるようになった。
【0045】
(第3の態様)
姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図7に示すように、ブランク材を載せて搬送する搬送長の順で実質的に並行に配置された、3以上の搬送ベルトコンベア31、32、33を有し、搬送長が長い搬送ベルトコンベアから搬送長が短い搬送ベルトコンベアの順31→32→33で、搬送速度が順に速くなっている構成とすることができる。
また、搬送ベルトコンベアの順31、32、33は、図示のように、ライン方向CLに沿った配置でもよい(他の態様においても同様である。)。
この第3に態様によれば、3以上の搬送ベルトコンベア31、32、33により支承するので、撓みの小さい状態で姿勢変換を行うことにより、姿勢変換が安定することもある。
【0046】
(第4の態様)
また、姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図8に示すように、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、
前記第1の搬送ベルトコンベア31は、搬送方向に分割された少なくとも2つの分割コンベア31A、31Bを有し、分割コンベア31A、31B間で搬送速度が異なっている構成とすることができる。
この第3に態様によれば、分割コンベア31A、分割コンベア31B、第2の搬送ベルトコンベア32の速度を設定又は変更することにより、姿勢変換の細かい制御が可能となる。
【0047】
(第5の態様)
また、搬送ベルトコンベア31、32の高さ位置を異ならせることもできる。例えば、
図9に示すように、第1の搬送ベルトコンベア31が、第2の搬送ベルトコンベア32より上位に配置されている構成とすることができる。
かかる構成により、姿勢変更時の旋回時に、搬送距離が短い第2の搬送ベルトコンベア32に重量が多くかかり、搬送距離が長い第1の搬送ベルトコンベア31にかかる重量は少ない関係となるので、旋回を伴う姿勢変換、あるいはブランク材の撓み修正を容易に行うことができる。
後者のブランク材の撓み修正に関し詳しく説明すると次のとおりである。すなわち、切り抜き刃の配置によって、ブランク材が一方向に偏って撓むことがある。このような場合、このままでは撓んで垂れ落ちぎみとなる側の搬送ベルトコンベア、例えば第1の搬送ベルトコンベア31を、第2の搬送ベルトコンベア32より上位に配置する構成とすることによって、ブランク材を素早くコンベアに(この例では第1の搬送ベルトコンベア31に)載せることで撓み修正が可能となるものである。
【0048】
(第6の態様)
姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図10に示すように、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、ブランク材Bがその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分B1と、小さい第2部分B2とを有し、前記第1部分B1が第2の搬送ベルトコンベア32に対応し、前記第2部分B2が第1の搬送ベルトコンベア31に対応している構成とすることができる。
第2の搬送ベルトコンベア32の速度を高めても、第1部分B1と第2の搬送ベルトコンベア32との接触面積が大きいので、安定した搬送が可能である。また、第1の搬送ベルトコンベア31は搬送距離が長いので、旋回による遠心力を作用しても位置ずれ・すべりを抑制でき、安定した姿勢変更が可能となる。
【0049】
(第7の態様)
姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図11に示すように、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、ブランク材Bがその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分B1と、小さい第2部分B2とを有し、前記第1部分B1が第1の搬送ベルトコンベア31に対応し、前記第2部分B2が第2の搬送ベルトコンベア32に対応している構成とすることができる。
搬送距離が長い第1の搬送ベルトコンベア31により、重い側の接触面積が大きい第1部分B1を搬送するようにするので、旋回による遠心力を作用しても摩擦力により位置ずれを抑制し安定した姿勢変更を容易に行わせることができる。
ここで、第6の態様と、第7の態様とは、ブランク材の形状などに応じて選択が可能である。
なお、ブランク材は幅方向に対称の形状でもよい。
【0050】
(第8の態様)
本発明に係る上記例のブランキング集積装置としては、既述の第1~第8の態様を適宜組み込むことができる。
【0051】
図1~
図3に代表形態を図示するように、図示しないアンコイラーにより供給される連続する金属コイル10を受けて、金型20を有するブランキング装置1によりブランキング加工を行い、ブランク材11(B)を前記金型20から排出、搬送するように構成したブランキング装置1が提供される。
【0052】
金型20は、ブランク材11(B)を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部12有する。剪断部12は、
図3に示すように、例えば下側の下刃(ダイ)12Aと上側の上刃(打抜きパンチ)12Bを備えている。
【0053】
また、金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【0054】
前記排出手段の出側には、ブランク材11(B)の搬送手段40と:搬送手段から搬出されたブランク材11(B)を順次積み重ね集積を行う集積手段41と:を備えている。
図2,3に示すように、排出手段30の出側の下方に、ブランク材の搬送手段40の入側が重なるように配置されたことにより、姿勢変更されたブランク11を自然落下させ、高速で排出・搬送できるようにしてある。
【0055】
(第9の態様)
本発明は、例えば次のブランキング方法を提供する。
すなわち、連続する金属コイル10を受けて、金型20を有するブランキング装置1によりブランキング加工を行い、ブランク材11(B)を金型20から排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置1の金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
この姿勢変更手段を有する排出手段30は、上述のように金型20の「配置対象領域Z」に配置されている。
【0056】
かかる態様において、金属コイル10の既定幅に対し、ブランキング加工する製品の長さに対応して傾斜角度を選択して、ブランキングを行う、
【0057】
この場合、
図12に示すように、金属コイル10の既定幅の種類に応じて、最大限に面積を利用するために、ブランク材Bの長さ及び傾斜角度を選択することができる。
【0058】
他方で、
図13に示すように、金属コイル10の既定幅が制限されている場合には、最大限に面積を利用するために、ブランク材Bの傾斜角度を選択することができる。
【0059】
このように、既存サイズの設備を用いて、当該設備より長いブランクBの生産や、供給される金属コイルの一定幅に対して長いブランクBの生産が可能となり、設計と生産のフレキシビリテイを向上できる。
【符号の説明】
【0060】
1…ブランキング装置、10…金属コイル、11…ブランク材、11a1~11a3…穴抜き加工部、11b1~11b…外形加工部、12…剪断部、12A…下刃(ダイ)、12B…上刃(パンチ)、20…金型、30…姿勢変更手段を有する排出手段、40…搬送手段、41…集積装置(パイラー)、θ1…第1の傾斜角度、θ2…第2の傾斜角度、CL…ライン方向、Z,Z1,Z2…配置対象領域。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランキング用金型、ブランキング集積装置及びブランキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用のフロントピラー、クロスメンバ、アウターパネルやサイドドアパネルなどの大型成型品を得る場合、生産の効率化のために、プレス成形機に供給する前に、ブランキング装置により大型のブランク材を高速で得ている。
【0003】
一方、ブランキング装置により供給されたブランク材はプレス成形機の金型への搬入位置から排出位置にかけて複数条の搬送チェーンコンベアを設けるとともに、金型の両サイドに、下金型より高い位置と下金型より低い退避位置との間を、前記搬送チェーンコンベアを昇降させる昇降手段を設けたブランク材の搬送形態が知られている(特許文献1)。
そして、同文献には、複数条の搬送チェーンコンベア間の送り速度を制御することにより、プレス成形機の金型への板材のブランキング加工の位置決めを行うことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブランキング(プレス)装置により金属コイルからブランク材をブランキングしたものは、その後のプレス成形機に供給するに先立って、一旦、集積装置(パイラー)に積み重ねておく必要がある。
【0006】
他方で、従来、金属コイル幅と同等又はそれ以下の幅方向長さのワークをブランキング加工することとしていた。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、金属コイルの幅より幅方向長さが長いブランク材をブランキングできるとともに、集積装置(パイラー)内にて目的の姿勢で集積できるブランキング用金型、ブランキング集積装置及びブランキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決したブランキング装置の態様を次のとおりである。
ライン方向に連続する金属コイルの供給を受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルの供給を受けて、ブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
を備え、
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている、
ことを特徴とするブランキング装置。
【0009】
また、ブランキング集積装置の態様を次のとおりである。
連続する金属コイルを受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
前記排出手段の出側に配置されたブランク材の搬送手段と:
前記搬送手段から搬出されたブランク材を順次積み重ね集積を行う集積手段と:
を備え、
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている、
ことを特徴とするブランキング集積装置。
【0010】
また、第1のブランキング方法の態様は次のとおりである。
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段と、を有し、
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっており、
前記ブランク材の既定長に対し、前記金属コイル幅の大から小への変化に対応じて、前記傾斜角度を大から小に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【0011】
また、第2のブランキング方法の態様は次のとおりである。
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部を有し、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段を有し、
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっており、
前記金属コイルの既定幅に対し、前記ブランク材の長から短への変化に対応して、前記傾斜角度を小から大に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属コイルの幅より幅方向長さが長いブランク材をブランキングできるとともに、集積装置(パイラー)内にて目的の姿勢で集積できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ブランク材の動きを説明する実施の形態の概要平面視図である。
【
図2A】姿勢変更手段を有する排出手段の配置対象領域を説明する説明図である。
【
図2B】姿勢変更手段を有する排出手段の配置対象領域を説明する他の説明図である。
【
図4】(a)~(c)は金属コイル幅に対するブランキング形態の平面図である。
【
図5】ブランク材の搬送集積の形態を示したもので、(a)は平面図、(b)は概要正面図である。
【
図6】姿勢変更を行わない場合におけるブランク材の搬送集積の形態を示したもので、(a)は平面図、(b)は概要正面図である。
【
図7】姿勢変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図8】他の変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図9】姿勢変換手段を有する排出手段例概要正面図である。
【
図10】別の姿勢変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図11】さらに別の姿勢変換手段を有する排出手段例の概要平面図である。
【
図12】金属コイルの既定幅に対し、ブランキング加工する製品の長さに対応して前記傾斜角度を選択して、ブランキングを行う第1例の説明図である。
【
図13】金属コイルの既定幅に対し、ブランキング加工する製品の長さに対応して前記傾斜角度を選択して、ブランキングを行う第2例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の態様を説明する。
【0015】
図1を参照すると、ブランキング装置1が図示されており、上部の上型は省略し、下部の下型の金型20のみを平面視で図示してある。
ブランキング装置1では、連続する金属コイル10の供給を受けて、ブランキング加工を行い、ブランク材11を金型20から排出、搬送するように構成されている。
【0016】
図2を参照すると、金型20は、ブランク材11を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部12有する。剪断部12は、
図3に示すように、例えば下型の下刃(ダイ)12Aと上型の上刃(打抜きパンチ)12Cを備えている。符号10Sはスクラップを示す。
【0017】
また、金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度θ1を、より大きい、
図2に示すほぼ長方形の集積装置41にブランク材11を整列して積載できるような、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【0018】
ここで、(角度θ2-角度θ1)は、90度未満、30度以上であることが望ましい。
【0019】
さらに、排出手段30の出側に配置されたブランク材11の搬送手段40と、この搬送手段40から搬出されたブランク材11を順次積み重ね集積を行う集積手段41とが設けられている。
【0020】
実施の形態における金型10は、金属コイル10の送り方向の各剪断工程順に剪断部12を有する順送金型である。
例えば、傾斜する凹凸のある外形形状に対し、その一部を剪断する穴抜き加工部11a1~11a3を形成する前段の穴抜き加工工程を実施し、続いて完全に剪断する、個別ブランク材11とする後段の外形加工部11b1~11b3を形成する外形加工工程を実施するものである。
単純な形状のブランク材である場合には、順送金型形態によることなく、一つの切り刃によって剪断加工することも可能である。
【0021】
ところで、
図1及び
図2はクロスメンバのブランク材を例として説明した。これに対し、
図4ではフロントピラーのブランク材を例として、そのブランク材の配置形態を説明する。
【0022】
すなわち、ブランク材Bの長さLが、金属コイル10の幅W0より短い場合には
図4の(a)又は(b)の配置例のように、金属コイル10の幅方向に沿わせた整列状態で順次ブランキングを行うことが、金属コイル10全体を可能な限り利用して歩留まりを高めるために有効である。
【0023】
しかし、金属コイル10の幅Wより長い又は幅方向両端部に残し代が少ないブランク材Bの場合には、例えば
図4の(c)の例のような傾斜配置としなければならない。他方で、ブランク材Bの長さLに応じて金属コイル10として幅広のものを使用することも考えられるものの、金属コイル10として提供される幅寸法の種類には制約があることに鑑み、例えば
図4の(c)の例のようなブランク材Bの傾斜配置とすることが望ましく、歩留まりが高くなる。
【0024】
しかるに、例えば
図4の(c)の例のようなブランク材Bの傾斜配置でブランキングを行い、ブランキング加工した後のブランク材を金型から排出し、例えばコンベアなどの搬送手段40に載置させて搬送して集積装置(パイラー)41に集積するにあたり、搬送手段40ではブランク材Bが搬送手段40の例えばコンベア上面に最初に接触した姿勢のまま搬送され、しかも、大型のブランク材Bがライン方向に対して傾斜角度で搬送されるので、結果として、各ブランク材Bごと搬送方向に整列しないまま、集積装置(パイラー)に送られ、自然落下で積み重ねられる。
【0025】
各ブランク材Bごと搬送方向に整列しないまま、集積装置(パイラー)41に自然落下で積み重ねられると、集積装置(パイラー)内に目的の姿勢で(正しく)集積できないことがある。また、ブランクも傾斜状態のため集積装置が大型化してしまう。
【0026】
したがって、順次正しく目的の姿勢で積み重ねを行えるようにする必要がある。そこで、実施の形態ではブランク材の姿勢を変更(修正)する考えの下で、姿勢変更及び排出手段30を金型20内に設けている。
【0027】
ここで、ブランク材の姿勢変更(修正)手段を、金型20から排出された後に行うことも考えられる。すなわち、金型20と集積装置(パイラー)41との間にブランク材の姿勢変更(修正)手段を設けることも考えられる。
【0028】
しかし、金型20と集積装置(パイラー)41との間にブランク材の姿勢変更(修正)手段を設ける形態では、設備の大幅な変更を伴い避けるべきである。また、最終の剪断工程を経た時点以降のブランク材はフリーとなるので、金型20から排出されるまでに姿勢が安定しない可能性もある。
ブランク材Bが、金型20の後述する「配置対象領域」に自然落下しそれ以上搬送ができない可能性もある。
【0029】
これに対して、姿勢変更及び排出手段30を金型20内に設けることにより、安定した姿勢変更及び排出・搬送が可能であり、設備の大幅な変更を伴わないので、経済的な利点が大きい。しかも、ブランキング製品の変更に対応して、姿勢変更及び排出手段30の運転制御を変更する、あるいは姿勢変更及び排出手段30を有する金型20として取り替えるだけでよいので、生産効率上きわめて望ましいものとなる。また、既存の金型に姿勢変更及び排出手段30を、余裕領域、すなわち後述する「配置対象領域」を利用して後付けすることもできる。特に、傾斜するブランクをコンパクトなスペースで連続生産することに有効である。
【0030】
続いて、いくつかの具体例を示しながら本発明の内容を説明する。
【0031】
(第1の態様)
図1~
図3は第1の態様を示したもので、その構成は既述のとおりである。この第1の態様は、
図4(c)と同様に、歩留まりを高めるためにブランク材を傾斜配置し、ブランキング加工、姿勢変更及び集積を行うことで、高速での生産を行うことを可能とするものである。
【0032】
金型20は順送金型の例であり、アンコイラーにより金属コイル10の供給を受けてブランク材11を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部12を有する。上型の詳細は図示していないが、公知の構成を採用できる。
【0033】
金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、
図2に示す長方形の集積装置41にブランク材11を整列して積載できるような、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ1に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【0034】
第1の態様における、姿勢変更手段を有する排出手段30は、ブランク材11を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、第1の搬送ベルトコンベア31の搬送速度が、第2の搬送ベルトコンベア32の搬送速度より速くなっている。
ここで、第1の搬送ベルトコンベア31のライン方向の搬送速度及び第2の搬送ベルトコンベア32のライン方向の搬送速度は、金属コイルのライン方向の搬送速度と同じか速いことで、ブランク材を溜まることなく排出できる。
【0035】
第1の態様における、姿勢変更手段を有する排出手段30は、姿勢変更とブランク材の排出・搬送との機能を併せ持つものである。
すなわち、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とによる移動過程で、第1の搬送ベルトコンベア31の搬送速度が、第2の搬送ベルトコンベア32の搬送速度より速くなっているので、
図2基準で、ブランク材11を反時計方向に回転させながら、金型20からブランク材11を長方形の集積装置41に整列する姿勢で排出できるものである。
【0036】
姿勢変更手段を有する排出手段30は、姿勢変更手段と排出手段とが別になって構成されていてもよい。姿勢変更手段としてターンテーブルを、排出手段としてベルトコンベア又はシュートに代えて構成することができる。
【0037】
金型20から排出されたブランク材11は、排出手段30の出側に配置されたブランク材11の搬送手段40、例えばベルトコンベア、又はシュートなどの搬送手段40により搬送され、続いて集積手段41に順次積み重ねられ、集積される。
図2,3に示すように、排出手段30の出側の下方に、ブランク材の搬送手段40の入側が重なるように配置されたことにより、姿勢変更されたブランク11を自然落下させ、高速で排出・搬送できるようにしてある。
【0038】
集積手段41では、
図5の例で示すように、例えばシリンダ駆動の昇降する板状の位置決めスタンパー41aを、姿勢変更されたブランク材Bの長手方向両端部に厚み方向面に、少なくとも片側2方向から対向して設けることにより、位置規制を容易に行うことができる。
【0039】
これに対し、
図6の例に示すように、仮に例えば姿勢変更しないまま(第1の傾斜角度θ1のまま)で、集積手段42に集積しようとし、
図6に示す形状のスタンパー42a、42aの4個所(符号Xで示す)で位置規制を行うようにした場合、搬送手段40により搬送されたブランク材Bが集積体の手前で前屈みでのめり込んでしまい、落下して、正しい姿勢で集積できない可能性がある。しかも、集積手段42はムダ空間が多く、生産現場の領域効率を悪くする。
したがって、姿勢の変更が重要となるものである。
【0040】
(第2の態様)
上記姿勢変更手段を有する排出手段30は、金型20の「配置対象領域Z」に配置されている。
また、金型20又は「配置対象領域Z」に対する姿勢変更手段を有する排出手段30は、その主要部が配置されておれば足り、例えば平面視で姿勢変更手段を有する排出手段30が、金型20から延出していてもよい。
【0041】
ここに「配置対象領域Z」の例について説明する。
配置対象領域の第1の例は、
図2Aに示すように、第1の傾斜角度θ1(
図2参照)を有するブランク材11(又はB)の排出側の縁11eと、金型20の排出側前端面20aと、金型20の側端面20b,20cとで囲まれるに領域である。
これを、概略的にみると、ブランク材11(又はB)の排出側の縁11eはAB線に相当し、金型20の排出側前端面20aはCD線に相当し、金型20の側端面20bはDB線に相当し、側端面20cはAC線に相当し、20cに相当するとみれば、ABCDで囲まれる台形領域であり、これが配置対象領域Z1となっている。
【0042】
配置対象領域の第2の例は、
図2Bに示すように、ブランク材11(又はB)が示す第1の傾斜角度θ1が
図2Aの場合より小さい例であり、ブランク材11(又はB)の排出側の縁11eと、金型20の排出側前端面20aと、金型20の側端面20bとで囲まれるに領域である。
これを、概略的にみると、ブランク材11(又はB)の排出側の縁11eはAB線に相当し、金型20の排出側前端面20aはAD線に相当し、金型20の側端面20bはDB線に相当するとみれば、ABDで囲まれる三角形領域であり、これが配置対象領域Z2となっている。
【0043】
この第1の例及び第2の例をもって対比的に示したように、配置対象領域は、ブランク材11(又はB)の傾斜状態での剪断にともなって形成される領域である。そして、ブランク材11(又はB)の第1の傾斜角度θ1、ブランク材11(又はB)のライン方向CLの位置、並びにブランク材11(又はB)の排出側の縁11eの形状などによって変化するものである。
ただ、基本的にはほぼ三角形領域であるといえる。
【0044】
この第2の態様で説明したように、金型20の剪断部12を除く遊び空間であった配置対象領域Zに姿勢変更手段を有する排出手段30を設けたことで、傾斜角度を有する金型における領域の有効利用した、ブランク材の姿勢変更と、集積装置41に整列する姿勢での排出とを両立できた。その結果、ブランク材を集積装置41に安定して集積ができるようになった。
【0045】
(第3の態様)
姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図7に示すように、ブランク材を載せて搬送する搬送長の順で実質的に並行に配置された、3以上の搬送ベルトコンベア31、32、33を有し、搬送長が長い搬送ベルトコンベアから搬送長が短い搬送ベルトコンベアの順31→32→33で、搬送速度が順に速くなっている構成とすることができる。
また、搬送ベルトコンベアの順31、32、33は、図示のように、ライン方向CLに沿った配置でもよい(他の態様においても同様である。)。
この第3に態様によれば、3以上の搬送ベルトコンベア31、32、33により支承するので、撓みの小さい状態で姿勢変換を行うことにより、姿勢変換が安定することもある。
【0046】
(第4の態様)
また、姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図8に示すように、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、
前記第1の搬送ベルトコンベア31は、搬送方向に分割された少なくとも2つの分割コンベア31A、31Bを有し、分割コンベア31A、31B間で搬送速度が異なっている構成とすることができる。
この第3に態様によれば、分割コンベア31A、分割コンベア31B、第2の搬送ベルトコンベア32の速度を設定又は変更することにより、姿勢変換の細かい制御が可能となる。
【0047】
(第5の態様)
また、搬送ベルトコンベア31、32の高さ位置を異ならせることもできる。例えば、
図9に示すように、第1の搬送ベルトコンベア31が、第2の搬送ベルトコンベア32より上位に配置されている構成とすることができる。
かかる構成により、姿勢変更時の旋回時に、搬送距離が短い第2の搬送ベルトコンベア32に重量が多くかかり、搬送距離が長い第1の搬送ベルトコンベア31にかかる重量は少ない関係となるので、旋回を伴う姿勢変換、あるいはブランク材の撓み修正を容易に行うことができる。
後者のブランク材の撓み修正に関し詳しく説明すると次のとおりである。すなわち、切り抜き刃の配置によって、ブランク材が一方向に偏って撓むことがある。このような場合、このままでは撓んで垂れ落ちぎみとなる側の搬送ベルトコンベア、例えば第1の搬送ベルトコンベア31を、第2の搬送ベルトコンベア32より上位に配置する構成とすることによって、ブランク材を素早くコンベアに(この例では第1の搬送ベルトコンベア31に)載せることで撓み修正が可能となるものである。
【0048】
(第6の態様)
姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図10に示すように、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、ブランク材Bがその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分B1と、小さい第2部分B2とを有し、前記第1部分B1が第2の搬送ベルトコンベア32に対応し、前記第2部分B2が第1の搬送ベルトコンベア31に対応している構成とすることができる。
第2の搬送ベルトコンベア32の速度を高めても、第1部分B1と第2の搬送ベルトコンベア32との接触面積が大きいので、安定した搬送が可能である。また、第1の搬送ベルトコンベア31は搬送距離が長いので、旋回による遠心力を作用しても位置ずれ・すべりを抑制でき、安定した姿勢変更が可能となる。
【0049】
(第7の態様)
姿勢変換手段を有する排出手段30は、
図11に示すように、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベア31と、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベア32とを有し、ブランク材Bがその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分B1と、小さい第2部分B2とを有し、前記第1部分B1が第1の搬送ベルトコンベア31に対応し、前記第2部分B2が第2の搬送ベルトコンベア32に対応している構成とすることができる。
搬送距離が長い第1の搬送ベルトコンベア31により、重い側の接触面積が大きい第1部分B1を搬送するようにするので、旋回による遠心力を作用しても摩擦力により位置ずれを抑制し安定した姿勢変更を容易に行わせることができる。
ここで、第6の態様と、第7の態様とは、ブランク材の形状などに応じて選択が可能である。
なお、ブランク材は幅方向に対称の形状でもよい。
【0050】
(第8の態様)
本発明に係る上記例のブランキング集積装置としては、既述の第1~第8の態様を適宜組み込むことができる。
【0051】
図1~
図3に代表形態を図示するように、図示しないアンコイラーにより供給される連続する金属コイル10を受けて、金型20を有するブランキング装置1によりブランキング加工を行い、ブランク材11(B)を前記金型20から排出、搬送するように構成したブランキング装置1が提供される。
【0052】
金型20は、ブランク材11(B)を排出するライン方向CLに対して、傾斜角度θ1を有してブランク材11にブランキング加工する剪断部12有する。剪断部12は、
図3に示すように、例えば下側の下刃(ダイ)12Aと上側の上刃(打抜きパンチ)12Bを備えている。
【0053】
また、金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
【0054】
前記排出手段の出側には、ブランク材11(B)の搬送手段40と:搬送手段から搬出されたブランク材11(B)を順次積み重ね集積を行う集積手段41と:を備えている。
図2,3に示すように、排出手段30の出側の下方に、ブランク材の搬送手段40の入側が重なるように配置されたことにより、姿勢変更されたブランク11を自然落下させ、高速で排出・搬送できるようにしてある。
【0055】
(第9の態様)
本発明は、例えば次のブランキング方法を提供する。
すなわち、連続する金属コイル10を受けて、金型20を有するブランキング装置1によりブランキング加工を行い、ブランク材11(B)を金型20から排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置1の金型20は、剪断部12より下流側に、ブランク材11の姿勢を、ライン方向CLとなす、剪断完了時点の第1の傾斜角度θ1を有する傾斜状態から、傾斜角度を、より大きい、好適にはライン方向CLと直交する角度である、第2の傾斜角度θ2に変更する姿勢変更手段を有する排出手段30を有している。
この姿勢変更手段を有する排出手段30は、上述のように金型20の「配置対象領域Z」に配置されている。
【0056】
かかる態様において、金属コイル10の既定幅に対し、ブランキング加工する製品の長さに対応して傾斜角度を選択して、ブランキングを行う、
【0057】
この場合、
図12に示すように、金属コイル10の既定幅の種類に応じて、最大限に面積を利用するために、ブランク材Bの長さ及び傾斜角度を選択することができる。
【0058】
他方で、
図13に示すように、金属コイル10の既定幅が制限されている場合には、最大限に面積を利用するために、ブランク材Bの傾斜角度を選択することができる。
【0059】
このように、既存サイズの設備を用いて、当該設備より長いブランクBの生産や、供給される金属コイルの一定幅に対して長いブランクBの生産が可能となり、設計と生産のフレキシビリテイを向上できる。
【符号の説明】
【0060】
1…ブランキング装置、10…金属コイル、11…ブランク材、11a1~11a3…穴抜き加工部、11b1~11b…外形加工部、12…剪断部、12A…下刃(ダイ)、12B…上刃(パンチ)、20…金型、30…姿勢変更手段を有する排出手段、40…搬送手段、41…集積装置(パイラー)、θ1…第1の傾斜角度、θ2…第2の傾斜角度、CL…ライン方向、Z,Z1,Z2…配置対象領域。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン方向に連続する金属コイルの供給を受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルの供給を受けて、ブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
を備え、
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている、
ことを特徴とするブランキング装置。
【請求項2】
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、その主要部が、
前記第1の傾斜角度を有するブランク材の排出側の縁と、前記金型の排出側前端面と、前記金型の側端面とで囲まれる配置対象領域に配置されている、
請求項1記載のブランキング装置。
【請求項3】
前記第1の搬送ベルトコンベアは、前記配置対象領域の前記側端面の長辺側に配置され、前記第2の搬送ベルトコンベアは前記配置対象領域の前記側端面の短辺側に配置されている請求項2記載のブランキング装置。
【請求項4】
前記第2の搬送ベルトコンベアのライン方向の搬送速度が、金属コイルのライン方向の供給速度より速いか同じ請求項1又は2記載のブランキング装置。
【請求項5】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する搬送長の順で実質的に並行に配置された、3以上の搬送ベルトコンベアを有し、搬送長が短い搬送ベルトコンベアから搬送長が長い搬送ベルトコンベアの順で、搬送速度が順に速くなっている請求項1記載のブランキング装置。
【請求項6】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、
前記第1の搬送ベルトコンベアは、搬送方向に分割された少なくとも2つの分割コンベアを有し、分割コンベア間で搬送速度が異なっている請求項1記載のブランキング装置。
【請求項7】
前記第1の搬送ベルトコンベア及び前記第2の搬送ベルトコンベアのうち、一方が上位に配置されている請求項1又は2記載のブランキング装置。
【請求項8】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、
前記ブランク材がその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分と、小さい第2部分とを有し、
前記第1部分が前記第2の搬送ベルトコンベアに対応し、前記第2部分が前記第1の搬送ベルトコンベアに対応している、請求項1又は2記載のブランキング装置。
【請求項9】
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、
前記ブランク材がその長手方向に関しコンベアとの接触面積が大きい第1部分と、小さい第2部分とを有し、
前記第1部分が前記第1の搬送ベルトコンベアに対応し、前記第2部分が前記第2の搬送ベルトコンベアに対応している、請求項1又は2記載のブランキング装置。
【請求項10】
連続する金属コイルを受けて、金型を有するブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を前記金型から排出、搬送するように構成したブランキング装置において、
前記金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記剪断部より下流側に、前記ブランク材の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、前記傾斜角度を、より大きい第2の傾斜角度に変更する姿勢変更手段を有する排出手段と、
前記排出手段の出側に配置されたブランク材の搬送手段と:
前記搬送手段から搬出されたブランク材を順次積み重ね集積を行う集積手段と:
を備え、
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっている、
ことを特徴とするブランキング集積装置。
【請求項11】
前記姿勢変換手段を有する排出手段は、その主要部が、
前記第1の傾斜角度を有するブランク材の排出側の縁と、前記金型の排出側前端面と、前記金型の側端面とで囲まれる配置対象領域に配置されている、請求項10記載のブランキング集積装置。
【請求項12】
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段と、を有し、
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっており、
前記ブランク材の既定長に対し、前記金属コイル幅の大から小への変化に対応して、前記傾斜角度を大から小に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。
【請求項13】
連続する金属コイルを受けて、ブランキング装置によりブランキング加工を行い、ブランク材を排出、搬送する方法において、
前記ブランキング装置の金型は、
前記金属コイルを受けてブランク材を排出するライン方向に対して、傾斜角度を有してブランク材にブランキング加工する剪断部と、
前記ライン方向下流部の前記ライン側に設けられた、前記ブランク材の搬送面上の姿勢を、前記ライン方向となす第1の傾斜角度を有する傾斜状態から、傾斜角度がより大きい第2の傾斜角度に変更し金型から前方に導く姿勢変更手段と、を有し、
前記姿勢変換手段は、ブランク材を載せて搬送する実質的に並行に配置された、搬送長が長い第1の搬送ベルトコンベアと、搬送長が短い第2の搬送ベルトコンベアとを有し、前記第1の搬送ベルトコンベアの搬送速度が、前記第2の搬送ベルトコンベアの搬送速度より速くなっており、
前記金属コイルの既定幅に対し、前記ブランク材の長から短への変化に対応して、前記傾斜角度を小から大に選択して、ブランキングを行う、
ことを特徴とするブランキング方法。