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特開2024-80636FRP管複合体、及び、FRP管複合体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080636
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】FRP管複合体、及び、FRP管複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/68 20060101AFI20240606BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20240606BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240606BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20240606BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20240606BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20240606BHJP
   F16C 3/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B29C70/68
F16B7/20 C
B29C70/10
B29C70/48
B29C70/32
B29C65/70
F16C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197922
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2022193336
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕貴
【テーマコード(参考)】
3J033
3J039
4F205
4F211
【Fターム(参考)】
3J033AA01
3J033AB01
3J033AB02
3J033AB03
3J033BA02
3J033BA20
3J033BC10
3J039AA03
3J039BB01
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD03
4F205AD12
4F205AD16
4F205AG08
4F205AH12
4F205HA02
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA47
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HC17
4F205HF05
4F205HK33
4F205HL02
4F205HM02
4F205HT22
4F205HT26
4F205HW02
4F211AA13
4F211AA15
4F211AA24
4F211AA25
4F211AA28
4F211AA29
4F211AA37
4F211AA39
4F211AA42
4F211AD03
4F211AD16
4F211AH17
4F211AR06
4F211TA03
4F211TC11
4F211TD01
4F211TH16
4F211TH30
4F211TN85
(57)【要約】
【課題】FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができ、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる、FRP管複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】FRP管複合体1は、繊維強化プラスチック製のFRP管11と、FRP管11の軸方向の端部に設けられる金属部品12とを備える。FRP管11の繊維は、組糸13aを組み合わせて形成された組物13で構成される。金属部品12は、FRP管11の端部の内側に配置されてFRP管11の内周に接合された内側金属部材14と、内側金属部材14の外周表面から外側に突出してFRP管11を内周側から外周側へと貫通して延びる突起部15と、FRP管11の端部の外側に嵌め込まれ、突起部15と係合してFRP管11に取り付けられた外側金属部材16と、を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、前記FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体であって、
前記FRP管の繊維は、3本以上の組糸を組み合わせて形成された組物で構成され、
前記金属部品は、
前記FRP管の端部の内側に配置されて前記FRP管の内周に接合された状態で設けられる円筒状の内側金属部材と、
前記内側金属部材の外周表面から外側に向かって突出するとともに前記FRP管を内周側から外周側へと貫通して延びる突起部と、
前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれ、前記突起部と係合することで前記FRP管に取り付けられた円筒状の外側金属部材と、
を有していることを特徴とする、FRP管複合体。
【請求項2】
請求項1に記載のFRP管複合体であって、
前記内側金属部材の外周表面には、粗面加工が施されることで形成された溝が設けられていることを特徴とする、FRP管複合体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のFRP管複合体であって、
前記突起部は、前記内側金属部材の外周から当該内側金属部材の径方向の外側に延びるピンとして設けられていることを特徴とする、FRP管複合体。
【請求項4】
請求項3に記載のFRP管複合体であって、
前記外側金属部材の内周側には、前記ピンが挿入されて嵌り込む溝として構成されたスリットが設けられ、
前記ピンが、前記スリットに嵌り込んだ状態で前記スリットと係合することで、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれた前記外側金属部材が、前記FRP管に取り付けられていることを特徴とする、FRP管複合体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のFRP管複合体であって、
前記組物は、シームレスの筒状組物であることを特徴とする、FRP管複合体。
【請求項6】
繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、前記FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体を製造するための、FRP管複合体の製造方法であって、
前記金属部品の構成部材として設けられて前記FRP管の内側に配置される円筒状の内側金属部材の外周表面に、外側に向かって突出する突起部を形成する突起部形成工程と、
管状又は軸状に設けられた支持体の端部の外側に前記内側金属部材を嵌め、3本以上の組糸を組み合わせて形成された組物であって前記FRP管の繊維を構成する組物で前記支持体及び前記内側金属部材の外周を覆うことで、前記支持体及び前記内側金属部材を前記組物で覆った予備成形体を成形する予備成形体成形工程と、
金型内に前記予備成形体を設置した状態で前記金型内に樹脂を注入して硬化させることで、樹脂を前記組物に固着させて前記支持体の外周に前記FRP管を成形するとともに、前記FRP管の内周に前記内側金属部材を接合するFRP管成形工程と、
前記FRP管成形工程にて前記支持体の外周に成形された前記FRP管から前記支持体を引き抜く支持体引き抜き工程と、
前記金属部品の構成部材として設けられて前記FRP管の外側に配置される円筒状の外側金属部材を、前記FRP管の端部の外側に取り付ける外側金属部材取付工程と、
を備え、
前記予備成形体成形工程では、前記突起部が前記組物を貫通して延びる状態で、前記組物が前記内側金属部材の外周を覆うように配置され、
前記外側金属部材取付工程では、前記外側金属部材が、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれ、前記突起部と係合することで前記FRP管に取り付けられることを特徴とする、FRP管複合体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のFRP管複合体の製造方法であって、
前記内側金属部材の外周表面には、粗面加工が施されることで形成された溝が設けられていることを特徴とする、FRP管複合体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のFRP管複合体の製造方法であって、
前記突起部形成工程では、前記内側金属部材の外周から当該内側金属部材の径方向の外側に延びるピンとして前記突起部が形成されることを特徴とする、FRP管複合体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のFRP管複合体の製造方法であって、
前記外側金属部材の内周側には、前記ピンが挿入されて嵌り込む溝として構成されたスリットが設けられ、
前記外側金属部材取付工程では、前記ピンが、前記スリットに嵌り込んだ状態で前記スリットと係合することで、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれた前記外側金属部材が、前記FRP管に取り付けられることを特徴とする、FRP管複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9の何れか1項に記載のFRP管複合体の製造方法であって、
前記組物は、シームレスの筒状組物であることを特徴とする、FRP管複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等においては、動力を伝達するための動力伝達軸が用いられる。動力伝達軸の材料としては、ねじり強度及び疲労強度に優れた材料を用いる必要があり、高周波焼入れにより硬度を上昇させた炭素鋼が一般的に用いられる。一方、車両等の軽量化の観点からは、動力伝達軸の軽量化が図られることが望ましい。しかし、炭素鋼で構成された動力伝達軸の場合、小径化での対応、或いは、断面形状等の変更による断面剛性の向上による対応では、軽量化に限界がある。
【0003】
そこで、従来より、動力伝達軸を効果的に軽量化するべく、動力伝達軸の材料として炭素鋼よりも軽量である繊維強化プラスチック(FRP)が用いることが知られている。この場合、繊維強化プラスチック製の動力伝達軸の端部は、連結のための機械加工が施される部分としての十分な加工精度が確保されない虞がある。そこで、繊維強化プラスチック製の端部に金属部品を設けることが考えられる。例えば、特許文献1~4においては、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されたFRP管複合体は、金属製の軸部材50と、CFRP製の筒部材54と、金属製又はCFRP製の外装スリーブ52とを有して構成される。軸部材50におけるセレーション部62が設けられた端部に筒部材54が外嵌され、軸部材50の端部が筒部材54に嵌合している。そして、軸部材50と筒部材54の外周面に跨って外装スリーブ52が配設される。また、筒部材54の外周面と外装スリーブ52の内周面との間に、接着剤90と接合補助部位90を有するフィルムが介在している。
【0005】
特許文献2に開示されたFRP管複合体は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂製のパイプ10と、パイプ10の端部に挿通されてパイプ10の端部に内嵌された金属円環16とを備えて構成されている。なお、特許文献2のFRP管複合体は、粗面加工が施された外周面16Aを有する金属円環16をマンドレル24に外嵌して構成した芯材に炭素繊維25と熱可塑性樹脂繊維26とを巻き付け、熱可塑性樹脂繊維26を溶融して炭素繊維25に含浸してパイプ10として固化させることで形成される。パイプ10の形成後は、マンドレル24は、パイプ10及び金属円環16から引き抜かれる。
【0006】
特許文献3に開示されたFRP管複合体は、繊維強化プラスチック製の円筒状のシャフト16と、シャフト16の軸方向の端部に取り付けられた金属製の介在部材18とを備えて構成されている。介在部材18は、筒状部30及び底部72を有する本体部62と、底部72に基端60bで接合される軸部60とを有している。そして、介在部材18は、軸部60がシャフト16の端部の内側に挿入され、筒状部30がシャフト60の端部に外嵌されるように構成されている。
【0007】
特許文献4に開示されたFRP管複合体は、FRP円筒20と、FRP円筒20の内周面に圧入されるセレーション部32を有する金属製の端部ジョイント30とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-141865号公報
【特許文献2】特開2015-131423号公報
【特許文献3】特開2019-52742号公報
【特許文献4】特開2020-159534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されたFRP管複合体は、金属製の軸部材50にCFRP製の筒部材54が外嵌され、金属製又はCFRP製の外装スリーブ52が軸部材50と筒部材54の外周面に跨って配設されている。このため、軸部材50と筒部材54との結合強度は、軸部材50の外周面と筒部材54の内周面との間の界面の接合強度と、外装スリーブ52の内周面と軸部材50及び筒部材54の外周面との間の界面の接合強度とによって規定されることになる。したがって、軸部材50と筒部材54との間の界面の接合強度と、外装スリーブ52と軸部材50及び筒部材54との間の界面の接合強度とを超えた更に強固な結合強度で軸部材50と筒部材54とを結合することが困難であるという問題がある。
【0010】
特許文献2に開示されたFRP管複合体は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂製のパイプ10の端部に金属円環16が挿通されて内嵌されている。このため、パイプ10と金属円環16との結合強度は、パイプ10の内周面と金属円環16の外周面との間の界面の接合強度によって規定されることになる。したがって、パイプ10と金属円環16との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でパイプ10と金属円環16とを結合することが困難であるという問題がある。
【0011】
特許文献3に開示されたFRP管複合体は、繊維強化プラスチック製の円筒状のシャフト16の端部に対して、金属製の介在部材18の軸部60が内側に挿入され、介在部材18の筒状部30が外嵌されている。このため、シャフト16と介在部材18との結合強度は、軸部60の外周面とシャフト16の内周面との間の界面の接合強度と、シャフト16の外周面と筒状部30の内周面との間の界面の接合強度とによって規定されることになる。したがって、軸部60とシャフト16との間の界面の接合強度と、シャフト16と筒状部30との間の界面の接合強度とを超えた更に強固な結合強度でシャフト16と介在部材18とを結合することが困難であるという問題がある。
【0012】
特許文献4に開示されたFRP管複合体は、FRP円筒20の内周面に金属製の端部ジョイント30が圧入されている。このため、FRP円筒20と端部ジョイント30との結合強度は、FRP円筒の内周面と端部ジョイント30の外周面との間の界面の接合強度によって規定されることになる。したがって、FRP円筒20と端部ジョイント30との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP円筒20と端部ジョイント30とを結合することが困難であるという問題がある。
【0013】
FRP管複合体が動力伝達軸として用いられる場合において、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の向上のためには、FRP管とFRP管の端部に設けられる金属部品との結合強度を更に強固にできることが望ましい。しかし、特許文献1~4に開示されたFRP管複合体では、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することが困難である。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができ、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる、FRP管複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記課題を解決するための本発明のある局面に係るFRP管複合体は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、前記FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体に関する。そして、本発明のある局面に係るFRP管複合体は、前記FRP管の繊維は、3本以上の組糸を組み合わせて形成された組物で構成され、前記金属部品は、前記FRP管の端部の内側に配置されて前記FRP管の内周に接合された状態で設けられる円筒状の内側金属部材と、前記内側金属部材の外周表面から外側に向かって突出するとともに前記FRP管を内周側から外周側へと貫通して延びる突起部と、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれ、前記突起部と係合することで前記FRP管に取り付けられた円筒状の外側金属部材と、を有していることを特徴とする。
【0016】
この構成によると、FRP管の端部の内周に内側金属部材が接合し、FRP管の端部の外周に外側金属部材が嵌め込まれ、内側金属部材からFRP管を貫通して外側金属部材と係合する突起部により、内側金属部材と外側金属部材とが結合される。このため、突起部で結合された内側金属部材及び外側金属部材で構成される金属部品を、FRP管を内側と外側で挟持した構造で、FRP管に強固に結合させることができる。
【0017】
更に、上記の構成によると、FRP管の繊維が、複数の組糸が組み合わされた組物として構成されるため、FRP管における糸と糸との隙間が密に配置される。そして、FRP管の内周と接合した内側金属部材から外側に突出する突起部が、FRP管の内周側から外周側へと貫通して延びて外側金属部材と係合する。このため、FRP管において糸が密に配置されて構成された組物としての繊維に突起部が強固に噛み合った状態で、内側金属部材及び外側金属部材とFRP管とが突起部を介して強固に接合される。これにより、FRP管と内側金属部材との間の界面の接合強度と、FRP管と外側金属部材との間の界面の接合強度とを超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができる。そして、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができるため、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる。
【0018】
したがって、上記の構成によると、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができ、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる、FRP管複合体を提供することができる。
【0019】
(2)前記内側金属部材の外周表面には、粗面加工が施されることで形成された溝が設けられていてもよい。
【0020】
この構成によると、内側金属部材の外周表面に粗面加工で形成された溝が設けられているため、FRP管における組物としての繊維に内側金属部材の溝が噛み合った状態で内側金属部材の外周面とFRP管の内周面とを接合することができる。このため、内側金属部材の外周面とFRP管の内周面との間の接合強度を更に向上させることができる。
【0021】
(3)前記突起部は、前記内側金属部材の外周から当該内側金属部材の径方向の外側に延びるピンとして設けられていてもよい。
【0022】
この構成によると、内側金属部材にピン加工を施すことで、FRP管を貫通して内側金属部材と外側金属部材とを連結する突起部を簡素な構造で容易に内側金属部材に設けることができる。
【0023】
(4)前記外側金属部材の内周側には、前記ピンが挿入されて嵌り込む溝として構成されたスリットが設けられ、前記ピンが、前記スリットに嵌り込んだ状態で前記スリットと係合することで、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれた前記外側金属部材が、前記FRP管に取り付けられていてもよい。
【0024】
この構成によると、内側金属部材にピン加工を施すとともに、外側金属部材に溝としてのスリットを設けることで、FRP管を貫通するピンを介して内側金属部材と外側金属部材とを連結する構造を簡素な構造で容易に形成することができる。
【0025】
(5)前記組物は、シームレスの筒状組物であってもよい。
【0026】
この構成によると、組物にシーム(継ぎ目)が存在しないため、継ぎ目から組物に亀裂が生じることがなく、FRP管の繊維の継ぎ目からFRP管に亀裂が生じてしまうことを防止することができる。
【0027】
(6)上記課題を解決するための本発明のある局面に係るFRP管複合体の製造方法は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、前記FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体を製造するための、FRP管複合体の製造方法に関する。そして、本発明のある局面に係るFRP管複合体の製造方法は、前記金属部品の構成部材として設けられて前記FRP管の内側に配置される円筒状の内側金属部材の外周表面に、外側に向かって突出する突起部を形成する突起部形成工程と、管状又は軸状に設けられた支持体の端部の外側に前記内側金属部材を嵌め、3本以上の組糸を組み合わせて形成された組物であって前記FRP管の繊維を構成する組物で前記支持体及び前記内側金属部材の外周を覆うことで、前記支持体及び前記内側金属部材を前記組物で覆った予備成形体を成形する予備成形体成形工程と、金型内に前記予備成形体を設置した状態で前記金型内に樹脂を注入して硬化させることで、樹脂を前記組物に固着させて前記支持体の外周に前記FRP管を成形するとともに、前記FRP管の内周に前記内側金属部材を接合するFRP管成形工程と、前記FRP管成形工程にて前記支持体の外周に成形された前記FRP管から前記支持体を引き抜く支持体引き抜き工程と、前記金属部品の構成部材として設けられて前記FRP管の外側に配置される円筒状の外側金属部材を、前記FRP管の端部の外側に取り付ける外側金属部材取付工程と、を備え、前記予備成形体成形工程では、前記突起部が前記組物を貫通して延びる状態で、前記組物が前記内側金属部材の外周を覆うように配置され、前記外側金属部材取付工程では、前記外側金属部材が、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれ、前記突起部と係合することで前記FRP管に取り付けられることを特徴とする。
【0028】
この構成によると、FRP管の端部の内周に内側金属部材が接合し、FRP管の端部の外周に外側金属部材が嵌め込まれ、内側金属部材からFRP管を貫通して外側金属部材と係合する突起部により、内側金属部材と外側金属部材とが結合される。このため、突起部で結合された内側金属部材及び外側金属部材で構成される金属部品を、FRP管を内側と外側で挟持した構造で、FRP管に強固に結合させることができる。
【0029】
更に、上記の構成によると、FRP管の繊維が、複数の組糸が組み合わされた組物として構成されるため、FRP管における糸と糸との隙間が密に配置される。そして、FRP管の内周と接合した内側金属部材から外側に突出する突起部が、FRP管の内周側から外周側へと貫通して延びて外側金属部材と係合する。このため、FRP管において糸が密に配置されて構成された組物としての繊維に突起部が強固に噛み合った状態で、内側金属部材及び外側金属部材とFRP管とが突起部を介して強固に接合される。これにより、FRP管と内側金属部材との間の界面の接合強度と、FRP管と外側金属部材との間の界面の接合強度とを超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができる。そして、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができるため、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる。
【0030】
したがって、上記の構成によると、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができ、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる、FRP管複合体を製造することができる。
【0031】
(7)前記内側金属部材の外周表面には、粗面加工が施されることで形成された溝が設けられていてもよい。
【0032】
この構成によると、内側金属部材の外周表面に粗面加工で形成された溝が設けられているため、FRP管における組物としての繊維に内側金属部材の溝が噛み合った状態で内側金属部材の外周面とFRP管の内周面とを接合することができる。このため、内側金属部材の外周面とFRP管の内周面との間の接合強度を更に向上させることができる。
【0033】
(8)前記突起部形成工程では、前記内側金属部材の外周から当該内側金属部材の径方向の外側に延びるピンとして前記突起部が形成されてもよい。
【0034】
この構成によると、内側金属部材にピン加工を施すことで、FRP管を貫通して内側金属部材と外側金属部材とを連結する突起部を簡素な構造で容易に内側金属部材に設けることができる。
【0035】
(9)前記外側金属部材の内周側には、前記ピンが挿入されて嵌り込む溝として構成されたスリットが設けられ、前記外側金属部材取付工程では、前記ピンが、前記スリットに嵌り込んだ状態で前記スリットと係合することで、前記FRP管の端部の外側に嵌め込まれた前記外側金属部材が、前記FRP管に取り付けられてもよい。
【0036】
この構成によると、内側金属部材にピン加工を施すとともに、外側金属部材に溝としてのスリットを設けることで、FRP管を貫通するピンを介して内側金属部材と外側金属部材とを連結する構造を簡素な構造で容易に形成することができる。
【0037】
(10)前記組物は、シームレスの筒状組物であってもよい。
【0038】
この構成によると、組物にシーム(継ぎ目)が存在しないため、継ぎ目から組物に亀裂が生じることがなく、FRP管の繊維の継ぎ目からFRP管に亀裂が生じてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、FRP管と金属部品との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管と金属部品とを結合することができ、FRP管複合体のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる、FRP管複合体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施の形態に係るFRP複合体を示す図であって、図1(A)は、FRP管複合体の斜視図であり、図1(B)は、FRP管複合体の軸方向に沿った断面での断面図である。
図2】FRP管複合体の断面図であって、図2(A)は、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を拡大して示す断面図であり、図2(B)は、図2(A)のA-A線矢視位置での断面を含む図である。
図3】本実施形態においてFRP管の繊維として使用される組物を示す図である。
図4】FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を拡大して示す断面図であって、FRP管複合体におけるFRP管の繊維としての組物の配置状態を模式的に示す図である。
図5】組物の作製に用いられる組機の概略図である。
図6】組機で組物を作製する際におけるスピンドルの軌道図である。
図7】FRP管複合体における金属部品の外側金属部材に設けられるスリットの変形例を説明するための図である。
図8】本発明の一実施の形態に係るFRP管複合体の製造方法の各工程を説明するためのフローチャートである。
図9】FRP管複合体の製造方法における突起部形成工程について説明するための図であって、図9(A)は、FRP管複合体の内側金属部材の斜視図であり、図9(B)は、内側金属部材の断面図である。
図10】FRP管複合体の製造方法における予備成形体成形工程の前半の工程について説明するための図であって、図10(A)は、支持体に内側金属部材が嵌められる前の状態を示す斜視図であり、図10(B)は、図10(A)に対応する断面図である。
図11】予備成形体成形工程の前半の工程について説明するための図であって、図11(A)は、支持体に内側金属部材が嵌められた状態を示す斜視図であり、図11(B)は、図11(A)に対応する断面図である。
図12】予備成形体成形工程の後半の工程について説明するための図であって、図12(A)は、支持体及び内側金属部材を組物で覆うことで成形された予備成形体の正面図であり、図12(B)は、図12(A)に対応する断面図である。
図13】FRP管複合体の製造方法におけるFRP管成形工程について説明するための図である。
図14】FRP管複合体の製造方法における支持体引き抜き工程について説明するための図である。
図15】FRP管複合体の製造方法における外側金属部材取付工程について説明するための図である。
図16】実施例及び比較例に係るFRP管複合体の構造について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
図17】比較例に係るFRP管複合体の構造について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
図18】比較例に係るFRP管複合体の構造について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
図19】実施例に係るFRP管複合体構造について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
図20】比較例に係るFRP管複合体の構造について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
図21】比較例に係るFRP管複合体の構造について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
図22】実施例に係るFRP管複合体の外側金属部材の寸法について示す図である。
図23】実施例に係るFRP管複合体の内側金属部材及び突起部の寸法について示す図である。
図24】実施例に係るFRP管複合体の作製の際に用いた支持体の寸法について示す図である。
図25】実施例に係るFRP管複合体の寸法について示す図である。
図26】実施例及び比較例に係るFRP管複合体について評価した結果について表形式で示す図である。
図27】変形例に係るFRP管複合体について説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管とFRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品とを備えたFRP管複合体及びその製造方法として、種々の用途に広く適用することができるものである。以下の説明においては、まず、本発明の一実施の形態に係るFRP管複合体について説明し、次いで、本発明の一実施の形態に係るFRP管複合体の製造方法について説明する。
【0042】
[FRP管複合体]
(FRP管複合体の概略構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係るFRP管複合体1を示す図であって、図1(A)は、FRP管複合体1の斜視図であり、図1(B)は、FRP管複合体1の軸方向に沿った断面での断面図である。図2は、FRP管複合体1の断面図であって、図2(A)は、FRP管複合体1の軸方向に沿った断面の一部を拡大して示す断面図であり、図2(B)は、図2(A)のA-A線矢視位置での断面を含む図である。
【0043】
図1及び図2を参照して、本実施形態のFRP管複合体1は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管11と、FRP管11の端部に設けられる金属部品12とを備えて構成されている。
【0044】
FRP管11は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)で構成されており、円筒状に延びる管体として設けられている。金属部品12は、FRP管11の軸方向Xにおける両端部に設けられている。なお、FRP管11の軸方向Xは、FRP管11が円筒状に延びる方向であり、図1及び後述の図4図10乃至図15において両端矢印Xで示している。FRP管11の軸方向Xは、FRP管複合体1の軸方向Xと一致する。
【0045】
FRP管複合体1は、例えば、動力を伝達するための動力伝達軸として用いられる。FRP管複合体1が動力伝達軸として用いられる場合は、FRP管複合体1は、FRP管複合体1の軸方向Xの両端部に設けられた金属部品12において、動力をFRP管複合体1に入出力する入出力軸等の入出力部材(図示省略)に連結される。即ち、FRP管複合体1に動力を入力して伝達する入力部材又はFRP管複合体1から動力が出力されて伝達される出力部材は、FRP管複合体1に対してその端部の金属部品12にて連結される。なお、金属部品12と入出力部材との連結は、例えば、スプライン結合、キー結合、ネジ結合、フランジ結合、などの各種結合形態によって行われる。金属部品12が入出力部材と連結される際には、金属部品12には、結合形態に応じて、スプライン溝、キー溝、ネジ溝、フランジ部などを設ける機械加工が施される。また、金属部品12は、ゴム部品と連結されてもよい。以下、FRP管複合体1の構成について更に詳しく説明する。
【0046】
(FRP管)
FRP管11は、円筒状に形成された繊維強化プラスチックとして設けられており、樹脂材料と繊維材料との複合材料として構成されている。樹脂材料の素材としては、エポキシ樹脂或いはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。繊維材料の素材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アラミド繊維などが用いられる。尚、本実施形態のFRP管11は、例えば、繊維材料として炭素繊維が用いられており、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbo Fiber Reinforced Plastic)として構成されている。
【0047】
図3は、本実施形態においてFRP管11の繊維として使用される組物13を示す図である。図4は、FRP管複合体1の軸方向Xに沿った断面の一部を拡大して示す断面図であって、FRP管複合体1におけるFRP管11の繊維としての組物13の配置状態を模式的に示す図である。図1乃至図4を参照して、FRP管11の繊維は、組物13として構成されている。組物とは、3本以上の組糸を組み合わせて形成される布である。本実施形態では、FRP管11は、炭素繊維強化プラスチックであり、組物13を構成する糸は、炭素繊維である。FRP管11の繊維としての組物13は、FRP管11において、FRP管11の軸方向Xの略全長に亘って且つ周方向の全周に亘って配置されている。FRP管11は、組物13と樹脂とが円筒状の形状で一体化されて構成されている。
【0048】
(組物)
ここで、組物13について更に詳しく説明する。一般的な組物は、糸をループ状に絡ませながら編み上げる編布や経糸と緯糸を直交させて織り上げる織物とは繊維構造が大きく異なる。組物の特徴としては、伸縮性の高さと糸密度の高さの2点が挙げられる。まず、組物は、経糸と緯糸で織成された織布と比べると、組物の繊維構造から、伸縮性が大きい。一方、編布の伸縮性は組物の伸縮性と同様に大きい。しかし、組物は、組糸が密に配置される点で編布とは大きく異なる。編布では、糸をループ状に絡ませながら編むという特徴から、糸と糸との間には必然的に大きな隙間が存在する。これに対して、図3に示すように、組物は、糸が密に配置されているため、編布と比べて糸と糸との隙間が小さく、糸密度が高い。
【0049】
また、本実施形態で使用される組物13は、継ぎ目がなく強度に優れるシームレスの筒状組物13である。組物13にシーム(継ぎ目)が存在しないため、継ぎ目から組物13に亀裂が生じることがなく、FRP管11の繊維の継ぎ目からFRP管11に亀裂が生じてしまうことを防止できる。組物13は、複数の組糸13aのみで形成することも可能ではあるが、本実施形態では、筒状組物13の保形性を高め、後述するFRP管複合体の製造工程での取り扱い性向上の観点から、筒状組物13の軸方向に平行な軸糸13bも使用されている。即ち、本実施形態の組物13は、組物13を構成する糸として組糸13aと軸糸13bとを含んでおり、3本以上の組糸13aと軸糸13bとを互いに組み合わせることで形成されている。組糸13aは、組物13の軸方向に対して所定の組角度θを有して交差している。
【0050】
組物13は、編布と比べて糸が密に配置される繊維構造であるが、FRP管11の強度を更に高めるためには、糸の間隔はできるだけ小さくすることが望ましい。例えば、組物13を形成する組糸13aの本数は30本以上であることが好ましい。また、隣り合う組糸13aの、中心線の間の距離である組ピッチdが、10mm以下であることが好ましい。また、保形性を確保するという観点から、軸糸13bは、ある程度の数、組物13の周方向に沿って配置されていることが好ましい。例えば、8本以上の軸糸13bが組物13の周方向において含まれていることが好ましい。
【0051】
図5は、組物13の作製に用いられる組機100の概略図である。図6は、組機100で組物13を作製する際におけるスピンドル103の軌道図である。図5に示すように、組物13は、組機100を用いて作製される。軸糸13bは固定された筒102を通って組機100の下部から供給され、組糸13aはスピンドル103に巻き付けられている。組機100の中心には円筒形のマンドレル101が設置されており、マンドレル101の上部の外周上で組糸13a及び軸糸13bを組み合わせて組物13を形成する。図6に示すように、スピンドル103が軌道104に沿って動くことにより、組糸13a及び軸糸13bが組み合わされていき、マンドレル101の上部に組物13が形成される。マンドレル101の上部に形成された組物13は、巻き上げ装置105で巻き上げられる。この工程により、組糸13aが軸方向に対してθの組角度に編組されたシームレスの筒状組物13が得られる。
【0052】
なお、本実施形態では、組物13には、軸糸13bが含まれているが、この通りでなくてもよい。組物13において軸糸13bが含まれておらず、組糸13aのみで構成された組物13の形態が実施されてもよい。
【0053】
(金属部品)
図1図2、及び図4を参照して、金属部品12は、FRP管11の軸方向Xの端部に設けられており、本実施形態では、FRP管11の軸方向Xの両端部に設けられている。即ち、FRP管複合体1においては、金属部品12は、一対で設けられており、FRP管11の軸方向Xの一方の端部と他方の端部とにそれぞれ設けられている。FRP管11の一方の端部に設けられる金属部品12と他方の端部に設けられる金属部品12とは同一の構造を有している。
【0054】
FRP管11の両端部に設けられる金属部品12のそれぞれは、内側金属部材14と、突起部15と、外側金属部材16とを有して構成されている。金属部品12を構成する内側金属部材14、突起部15、及び外側金属部材16は、いずれも金属材料で形成されており、例えば、鉄鋼材料で形成されている。
【0055】
(内側金属部材)
図1図2、及び図4を参照して、内側金属部材14は、FRP管11の端部の内側に配置されてFRP管11の内周に接合された状態で設けられる円筒状の金属部材として構成されている。内側金属部材14は、後述するように、FRP管複合体1の製造の際には、金型107(図11を参照)内に配置され、金型107内に注入された樹脂が硬化してFRP管11が成形されることで、FRP管11の樹脂と一体化されてFRP管11の端部の内周に接合される。
【0056】
また、内側金属部材14の外周表面には、粗面加工が施されることで形成された溝14aが設けられている。内側金属部材14の外周表面に設けられる溝14aは、内側金属部材14の軸方向における全部又は一部の領域において内側金属部材14の周方向の全周に亘って設けられている。溝14aは、例えば、内側金属部材14の外周表面において網目状に凹凸形状が形成されることで設けられた溝として、又は、内側金属部材14の周方向に沿って延びる溝として、或いは、内側金属部材14の軸方向に沿って延びる溝として、設けられている。また、溝14aは、内側金属部材14の外周表面において螺旋状に延びる溝として設けられていてもよい。溝14aは、内側金属部材14の外周表面に対して、ローレット加工、スプライン加工、セレーション加工などの粗面加工が施されることで、形成される。
【0057】
(突起部)
図1(B)、図2、及び図4を参照して、突起部15は、金属部品12において、内側金属部材14の外周表面から外側に向かって突出するとともにFRP管11を内周側から外周側へと貫通して延びる部分として設けられている。突起部15は、例えば、内側金属部材14の外周から軸状に突出したピンとして設けられ、或いは、内側金属部材14の外周から外側に向かって隆起した凸部として設けられる。突起部15は、内側金属部材14に対してピン加工或いはダボ加工などが行われることで形成される。
【0058】
本実施形態では、突起部15は、内側金属部材14の外周から内側金属部材14の径方向の外側に延びるピンとして設けられている。突起部15は、例えば、円柱軸状に延びるピンとして形成されて、内側金属部材14に設けられた結合穴に対して嵌合して或いは螺合して嵌め込まれることで、内側金属部材14に一体に結合される。或いは、ピンとして設けられた突起部15は、内側金属部材14に対して溶接されることで、内側金属部材14に一体に結合される。
【0059】
突起部15は、複数設けられており、内側金属部材14の周方向に亘って均等角度で配置されている。本実施形態では、4つの突起部15が設けられており、内側金属部材14の周方向に亘って90°間隔で周方向に沿って並んで設けられている。内側金属部材14の周方向に90°間隔で並んで配置された4つの突起部15は、いずれも、内側金属部材14の外周から内側金属部材14の径方向の外側に向かって突出して延びるように設けられている。
【0060】
また、内側金属部材14から突出する突起部15は、FRP管11を内周側から外周側へと貫通して延びており、先端側がFRP管11の外周から外側に突出した状態で延びている。なお、突起部15の外周表面におけるFRP管11を貫通する部分は、FRP管11と一体化されてFRP管11と接合されている。また、突起部15は、FRP管11における組物13を貫通した状態でFRP管11を貫通して延びている。なお、突起部15は、組物13における組み合わされた組糸13aと組糸13aとの間の隙間に挿通された状態で組物13を貫通して延びている。即ち、突起部15は、組物13の組糸13aを切断することなく、組物13における組糸13aの隙間に挿通された状態で組物13を貫通している。
【0061】
(外側金属部材)
図1図2、及び図4を参照して、外側金属部材16は、FRP管11の端部の外側に嵌め込まれ、突起部15と係合することでFRP管11に取り付けられた円筒状の金属部材として構成されている。外側金属部材16は、FRP管11の端部の外周に嵌め込まれるため、FRP管11の端部の内周に接合した内側金属部材14と同心状に配置された状態で、FRP管11の端部に設けられる。更に、外側金属部材16は、内側金属部材14とともにFRP管11の端部を内周側と外周側とから挟んだ状態で、FRP管11の端部に設けられる。
【0062】
また、外側金属部材16の内周側には、複数のスリット16aが設けられている。本実施形態では、突起部15の数に対応した数のスリット16aが設けられており、4つのスリット16aが、外側金属部材16の内周側に設けられている。4つのスリット16aは、外側金属部材16の内周において、周方向に亘って均等角度で配置されており、90°間隔で周方向に並んで設けられている。
【0063】
スリット16aは、ピンとして設けられた突起部15が挿入されて嵌り込む溝として構成されている。スリット16aは、外側金属部材16の内周側において、外側金属部材16の軸方向に沿って延びる溝として設けられており、外側金属部材16がFRP管11に取り付けられた状態ではFRP管11の軸方向Xに沿って延びる溝として構成されている。ピンとして設けられた突起部15が、スリット16aに嵌り込んだ状態でスリット16aと係合することで、FRP管11の端部の外側に嵌め込まれた外側金属部材16が、FRP管11に取り付けられている。
【0064】
FRP管複合体1は、トルクを伝達する動力伝達軸として用いられるため、FRP管複合体1の軸心を中心としてFRP管複合体1の周方向に回転する力が加えられる。そして、FRP管複合体1において周方向に回転する力が加えられる状態では、ピンとしての突起部15がスリット16aと周方向において係合している。
【0065】
図7は、外側金属部材16のスリット16aの変形例を説明するための図である。FRP管複合体1が、軸方向Xに力が加えられる用途に用いられる場合は、図7に示すように、スリット16aは、外側金属部材16の径方向に見た状態でL字状に延びるように設けられることが好ましい。この場合は、スリット16aは、外側金属部材16の内周側において、軸方向Xに沿って延びた後に、外側金属部材16の周方向に沿って延びるように設けられる。外側金属部材16がFRP管11の端部の外側に嵌め込まれる際には、まず、突起部15は、スリット16aにおける軸方向Xに沿って延びる部分に沿って挿入される。次いで、FRP管11と外側金属部材16とが周方向に互いに相対回転することで、スリット16aにおける外側金属部材16の周方向に沿って延びる部分に突起部15が嵌め込まれる。これにより、ピンとしての突起部15が、スリット16aに嵌り込んだ状態でスリット16aと係合し、FRP管11の外側に嵌め込まれた外側金属部材16が、FRP管11に取り付けられる。
【0066】
また、FRP管11の端部の外側に嵌め込まれる外側金属部材16は、FRP管11の端部の外周面との間で接着剤を介して接合されてもよい。即ち、外側金属部材16の内周面或いはFRP管11の端部の外周面に接着剤が塗布された状態で、FRP管11の端部の外側に外側金属部材16が嵌め込まれてFRP管11に外側金属部材16が取り付けられてもよい。これにより、FRP管11の端部と外側金属部材16とを更に強固に接合することができる。
【0067】
[FRP管複合体の製造方法]
次に、本発明の一実施の形態に係るFRP管複合体の製造方法について説明する。図8は、本発明の一実施の形態に係るFRP管複合体の製造方法の各工程を説明するためのフローチャートである。本実施形態のFRP管複合体の製造方法は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管11と、FRP管11の軸方向Xにおける端部に設けられる金属部品12と、を備えたFRP管複合体1を製造するための製造方法として構成される。図8に示すように、本実施形態のFRP管複合体の製造方法は、突起部形成工程S1、予備成形体成形工程S2、FRP管成形工程S3、支持体引き抜き工程S4、外側金属部材取付工程S5を含んで構成されている。
【0068】
FRP管複合体1が製造される際には、まず、金属部品12の構成部材として設けられてFRP管11の内側に配置される円筒状の内側金属部材14が準備される。内側金属部材14は、一対で準備される。内側金属部材14の外周表面には、粗面加工が施されることで形成された溝14aが設けられている。内側金属部材14に設けられる溝14aは、内側金属部材14の外周表面に対して、ローレット加工、スプライン加工、セレーション加工などの粗面加工が施されることで、形成される。
【0069】
図9は、FRP管複合体の製造方法における突起部形成工程S1について説明するための図であって、図9(A)は、FRP管複合体1の内側金属部材14の斜視図であり、図9(B)は、内側金属部材14の断面図である。図9を参照して、内側金属部材14が準備されると、内側金属部材14の外周表面に、外側に向かって突出する突起部15を形成する突起部形成工程S1が行われる。
【0070】
突起部形成工程S1では、内側金属部材14の外周から内側金属部材14の径方向の外側に延びる円柱軸状のピンとしての突起部15が形成される。即ち、本実施形態では、突起部形成工程S1は、内側金属部材14に対してピンとしての突起部15を設けるピン加工が行われることで、実施される。より具体的には、円柱軸状に延びるピンとして形成された突起部15が、内側金属部材14に設けられた結合穴に対して嵌合して或いは螺合して嵌め込まれることで、内側金属部材14に一体に設けられる。または、ピンとして形成された突起部15が、内側金属部材14に対して溶接されることで、内側金属部材14に対して突起部15が一体に設けられる。
【0071】
なお、突起部形成工程S1では、ピンとしての突起部15ではなく、内側金属部材14の外周から外側に向かって隆起した凸部として設けられる突起部15が形成されてもよい。この場合、突起部形成工程S1は、内側金属部材14に対して凸部としての突起部15を設けるダボ加工が行われることで、実施される。
【0072】
図10は、本実施形態のFRP管複合体の製造方法における予備成形体成形工程S2の前半の工程について説明するための図であって、図10(A)は、支持体106に内側金属部材14が嵌められる前の状態を示す斜視図であり、図10(B)は、図10(A)に対応する断面図である。図11は、予備成形体成形工程S2の前半の工程について説明するための図であって、図11(A)は、支持体106に内側金属部材14が嵌められた状態を示す斜視図であり、図11(B)は、図11(A)に対応する断面図である。図12は、予備成形体成形工程S2の後半の工程について説明するための図であって、図12(A)は、支持体106及び内側金属部材14を組物13で覆うことで成形された予備成形体17の正面図であり、図12(B)は、図12(A)に対応する断面図である。
【0073】
突起部形成工程S1が終了すると、次いで、管状又は軸状の支持体106の端部に内側金属部材14を嵌め込んで、更に、支持体106及び内側金属部材14の外周を組物13で覆った予備成形体17(図12を参照)を成形する予備成形体成形工程S2が行われる。
【0074】
図10及び図11を参照して、予備成形体成形工程S2では、まず、管状又は軸状に設けられた支持体106の端部の外側に内側金属部材14が嵌められる。支持体106は、例えば、金属製の円管状の部材として、或いは金属製の円柱軸状の部材として設けられる。また、支持体106は、ゴム、ろう(ワックス)、熱可塑性樹脂、発泡スチロール、石膏、低融点合金などで形成された円管状あるいは円柱軸状の部材として設けられてもよい。なお、図10及び図11においては、円管状の部材として設けられた支持体106を例示している。支持体106の軸方向Xの両端部の外側に対して、図10にて矢印Bで示すように、内側金属部材14がそれぞれ嵌め込まれる。支持体106の両端部の外周に内側金属部材14が嵌め込まれることで、図11に示すように、支持体106の両端部の外周に内側金属部材14が装着された状態となる。
【0075】
図12を参照して、支持体106の両端部の外周に内側金属部材14がそれぞれ嵌め込まれると、次いで、組物13で支持体106及び内側金属部材14の外周を覆うことで、予備成形体17が成形される。予備成形体17は、支持体106及び内側金属部材14の外周を組物13で覆った状態の成形体として構成される。支持体106及び内側金属部材14の外周を覆う組物13は、予備成形体成形工程S2に先立って準備される。組物13は、3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13であってFRP管11の繊維を構成する組物13であり、シームレスの筒状組物13として構成される。
【0076】
支持体106及び内側金属部材14の外周を組物13で覆った予備成形体17の成形の際には、まず、伸縮性を有する組物13が径方向に拡径された状態で、組物13の内側に、内側金属部材14が両端部に嵌め込まれた支持体106が挿通される。そして、支持体106及び内側金属部材14が組物13の内側に挿通された状態で、組物13の拡径状態が解除されることで、組物13が支持体106及び内側金属部材14の外周に装着され、支持体106及び内側金属部材14が組物13で覆われた予備成形体17が成形される。
【0077】
なお、予備成形体17において支持体106及び内側金属部材14の外周を覆う組物13は、1枚で設けられてもよく、また、複数枚で設けられてもよい。即ち、予備成形体17において、支持体106及び内側金属部材14の外周は、単層の筒状組物13で覆われていてもよく、また、複数層に積層された筒状組物13で覆われていてもよい。
【0078】
また、支持体106及び内側金属部材14の外周を組物13で覆った予備成形体17を成形する予備成形体成形工程S2では、突起部15が組物13を貫通して延びる状態で、組物13が内側金属部材14の外周を覆うように配置される。このとき、突起部15が、組物13における組み合わされた組糸13aと組糸13aとの間の隙間に挿通されて組物13を貫通して延びる状態で、組物13が内側金属部材14の外周を覆うように配置される。即ち、組物13の組糸13aを切断することなく、突起部15を組物13における組糸13aの隙間に挿通させて組物13を貫通させた状態で、組物13が内側金属部材14の外周を覆うように配置される。
【0079】
なお、上述した予備成形体成形工程S2では、予め準備した組物13で支持体106及び内側金属部材14の外周を覆うことで予備成形体17を成形する工程を例示したが、この通りでなくてもよい。予備成形体成形工程S2において、両端部の外側に内側金属部材14が嵌められた状態の支持体106を前述した図5に示す組機100のマンドレル101として組機100の中央に配置し、マンドレル101として構成される支持体106の外周に、直接に組糸13aを組み合わせて筒状組物13を形成する方法で予備成形体17が成形されてもよい。
【0080】
図13は、FRP管複合体の製造方法におけるFRP管成形工程S3について説明するための図である。図13を参照して、予備成形体成形工程S2が終了すると、次いで、金型107内に予備成形体17を設置して樹脂を注入して硬化させ、FRP管11を形成するとともにFRP管の内周に内側金属部材14を接合するFRP管成形工程S3が行われる。
【0081】
FRP管成形工程S3では、まず、金型107内に予備成形体17が設置される。金型107は、例えば、上下に組み合わされる上型107aと下型107bとを備えて構成され、上型107aと下型107bとの間にキャビティ107cが形成されている。予備成形体17は、キャビティ107cに配置されることで金型107内に設置される。キャビティ107cは、FRP管11の外周形状に対応した空間を形成している。上型107aには、樹脂が注入される注入口107dと、キャビティ107c内に注入されて充満した樹脂をキャビティ107cの外部へと流動可能にするための出口107eとが設けられている。なお、上型107a及び下型107bには、突起部15が嵌り込む穴と溝とが設けられている。キャビティ107cに予備成形体17が設置された状態においては、突起部15は、上型107a及び下型107bに設けられた穴と溝とに嵌り込んだ状態で配置される。
【0082】
金型107のキャビティ107cに予備成形体17が設置されると、金型107内に樹脂が注入される。金型107には、樹脂として、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のほか、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルーブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等が注入される。樹脂は注入口107dから金型107内に注入され、樹脂がキャビティ107c内に充填されて樹脂が出口107eに溢れる状態となるまで、樹脂が金型107内に注入される。金型107内に樹脂が注入されてキャビティ107c内に樹脂が充填されると、次いで、金型107が加熱されて、キャビティ107c内の樹脂を硬化させる工程が行われる。FRP管成形工程S3においては、金型107内に樹脂を注入して硬化させることで、樹脂を組物13に含浸固化によって固着させて支持体106の外周にFRP管11が成形されるとともに、FRP管11の内周に内側金属部材14が接合される。
【0083】
なお、キャビティ107c内の樹脂が硬化してFRP管11が成形された状態では、突起部15は、上型107a及び下型107bに設けられた穴と溝とに嵌り込んでいるため、FRP管11の外周から突出した状態となっている。また、突起部15の外周表面におけるFRP管11を貫通する部分は、FRP管11と一体化されてFRP管11と接合されている。
【0084】
なお、上記のように金型107内に樹脂を注入して硬化させることでFRP管11を成形する方法として、RTM(レジン・トランスファー・モールディング:樹脂注入)成形、或いは、VaRTM(バキューム・アシスト・レジン・トランスファー・モールディング:真空補助樹脂注入)成形などの公知の方法を用いることができる。例えば、RTM成形を用いる場合は、予備成形体17を金型107内に設置した後、熱硬化性樹脂と硬化剤とを混合しながらキャビティ107c内に加圧注入し、樹脂を硬化させて筒状組物13を固着することで、FRP管11が成形されるとともに、FRP管11の内周と内側金属部材14とが接合される。
【0085】
金型107内に樹脂を注入して硬化させてFRP管11が成形されると、金型107の上型107aと下型107bとが分離され、FRP管11が金型107から離型されて取り出される。即ち、FRP管成形工程S3が終了すると、上型107aと下型107bとが分離され、支持体106の外周で成形されて内側金属部材14と接合されたFRP管11が金型107から離型されて取り出される。なお、金型107からFRP管11が取り出されると、注入口107d及び出口107eに対応した位置で硬化した樹脂部分はFRP管11から切除される。
【0086】
図14は、FRP管複合体の製造方法における支持体引き抜き工程S4について説明するための図である。なお、図14(A)は、FRP管11が金型107から取り出された状態であってFRP管11から支持体106が引き抜かれていない状態を示す図である。図14(B)は、FRP管11から支持体106が引き抜かれる途中の状態を示す図である。図14(C)は、FRP管11から支持体106が引き抜かれた状態を示す図である。なお、図14においては、FRP管11における組物13について、破線で模式的に示している。
【0087】
FRP管成形工程S3が終了して、FRP管11が金型107から取り出されると、次いで、FRP管成形工程S3にて支持体106の外周に形成されたFRP管11から支持体106を引き抜く支持体引き抜き工程S4が行われる。
【0088】
支持体引き抜き工程S4では、図14に示すように、FRP管11の軸方向Xにおける一方の端部側から支持体106がFRP管11の軸方向Xに沿ってFRP管11から引き抜かれる。なお、図14(A)及び図14(B)では、FRP管11から支持体106がFRP管11の軸方向Xに沿って引き抜かれる方向について矢印Cで示している。FRP管11から支持体106が引き抜かれることで、FRP管11に接合された内側金属部材14からも支持体106が引き抜かれる。そして、FRP管11から支持体106が引き抜かれることで、図14(C)に示すように、FRP管11の軸方向Xの両端部に内側金属部材14が設けられて内部が中空の状態のFRP管11が得られる。
【0089】
図15は、FRP管複合体の製造方法における外側金属部材取付工程S5について説明するための図である。図15を参照して、支持体引き抜き工程S4が終了すると、次いで、金属部品12の構成部材として設けられてFRP管11の外側に配置される円筒状の外側金属部材16を、FRP管11の端部の外側に取り付ける外側金属部材取付工程S5が行われる。
【0090】
外側金属部材取付工程S5において、外側金属部材16は、一対で準備され、FRP管11の両端部にそれぞれ取付けられる。外側金属部材16は、まず、FRP管11の両端部のそれぞれに対して、軸方向Xに沿って嵌め込まれる。なお、図15では、FRP管11の両端部に外側金属部材16が嵌め込まれる方向について矢印Cで示している。そして、外側金属部材16は、FRP管11の端部の外側に嵌め込まれ、突起部15と係合することでFRP管11に取り付けられる。
【0091】
なお、本実施形態では、外側金属部材16の内周側には、ピンとして設けられた突起部15が挿入されて嵌り込む溝として構成されたスリット16aが設けられる。そして、外側金属部材取付工程S5では、ピンとして設けられた突起部15が、スリット16aに嵌り込んだ状態でスリット16aと係合することで、FRP管11の端部の外側に嵌め込まれた外側金属部材16が、FRP管11に取り付けられる。外側金属部材取付工程S5が終了し、FRP管11の端部に外側金属部材16が取り付けられることで、本実施形態のFRP管複合体の製造方法が完了し、図1に示すFRP管複合体1が得られる。
【0092】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態によると、FRP管11の端部の内周に内側金属部材14が接合し、FRP管11の端部の外周に外側金属部材16が嵌め込まれ、内側金属部材14からFRP管11を貫通して外側金属部材16と係合する突起部15により、内側金属部材14と外側金属部材16とが結合される。このため、突起部15で結合された内側金属部材14及び外側金属部材16で構成される金属部品12を、FRP管11を内側と外側で挟持した構造で、FRP管11に強固に結合させることができる。
【0093】
更に、本実施形態によると、FRP管11の繊維が、複数の組糸13aが組み合わされた組物13として構成されるため、FRP管11における糸と糸との隙間が密に配置される。そして、FRP管11の内周と接合した内側金属部材14から外側に突出する突起部15が、FRP管11の内周側から外周側へと貫通して延びて外側金属部材16と係合する。このため、FRP管11において糸が密に配置されて構成された組物13としての繊維に突起部15が強固に噛み合った状態で、内側金属部材14及び外側金属部材16とFRP管11とが突起部15を介して強固に接合される。これにより、FRP管11と内側金属部材14との間の界面の接合強度と、FRP管11と外側金属部材16との間の界面の接合強度とを超えた更に強固な結合強度でFRP管11と金属部品12とを結合することができる。そして、FRP管11と金属部品12との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管11と金属部品12とを結合することができるため、FRP管複合体1のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる。
【0094】
したがって、本実施形態によると、FRP管11と金属部品12との間の界面の接合強度を超えた更に強固な結合強度でFRP管11と金属部品12とを結合することができ、FRP管複合体1のねじり強度及び疲労強度の更なる向上を図ることができる、FRP管複合体1を提供することができる。
【0095】
また、本実施形態によると、内側金属部材14の外周表面に粗面加工で形成された溝14aが設けられているため、FRP管11における組物13としての繊維に内側金属部材14の溝14aが噛み合った状態で内側金属部材14の外周面とFRP管11の内周面とを接合することができる。このため、内側金属部材14の外周面とFRP管11の内周面との間の接合強度を更に向上させることができる。
【0096】
また、本実施形態によると、内側金属部材14にピン加工を施すことで、FRP管11を貫通して内側金属部材14と外側金属部材16とを連結する突起部15を簡素な構造で容易に内側金属部材14に設けることができる。
【0097】
また、本実施形態によると、内側金属部材14にピン加工を施すとともに、外側金属部材16に溝としてのスリット16aを設けることで、FRP管11を貫通するピンを介して内側金属部材14と外側金属部材16とを連結する構造を簡素な構造で容易に形成することができる。
【0098】
また、本実施形態によると、組物13にシーム(継ぎ目)が存在しないため、継ぎ目から組物13に亀裂が生じることがなく、FRP管11の繊維の継ぎ目からFRP管11に亀裂が生じてしまうことを防止することができる。
【0099】
[実施例]
(実施例及び比較例の概要)
次に、上述した本発明の実施形態に係るFRP管複合体の実施例について説明する。本発明の実施例に係るFRP管複合体として、実施例1及び実施例2に係るFRP管複合体を作製した。また、本発明の実施例との比較のため、比較例1~6に係るFRP管複合体を作製した。また、実施例1~2に係るFRP管複合体と比較例1~6に係るFRP管複合体の評価として、ねじり強度を測定し、実施例と比較例に係るFRP管複合体の評価を行った。
【0100】
なお、本発明のFRP管複合体1は、下記の構成(a1)、構成(a2)及び構成(b)を備えている。
(a1)FRP管11の端部に接合する金属部品12が外側金属部材16と内側金属部材14とから構成され、FRP管11を外側と内側で挟持する構成。
(a2)内側金属部材14の外周表面から外側に向かって突出した突起部15が外側金属部材16と係合する構成。
(b)FRP管11の繊維が、3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である構成。
実施例1及び実施例2に係るFRP管複合体については、上記の構成(a1)、(a2)及び(b)を全て満たす態様のFRP管複合体として作製した。比較例1~6に係るFRP管複合体については、上記の構成(a1)、(a2)及び(b)のうちの少なくともいずれかを満たさない態様のFRP管複合体として作製した。
【0101】
また、実施例1~2及び比較例1~6の作製に際しては、図16乃至図21に示す構造A~Fの6つの形態のFRP管複合体を作製した。図16は、実施例1及び比較例3に係るFRP管複合体の構造Aについて説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。図17は、比較例1に係るFRP管複合体の構造Bについて説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。図18は、比較例2に係るFRP管複合体の構造Cについて説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。図19は、実施例2に係るFRP管複合体の構造Dについて説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。図20は、比較例4に係るFRP管複合体の構造Eについて説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。図21は、比較例5及び比較例6に係るFRP管複合体の構造Fについて説明するための図であって、FRP管複合体の軸方向に沿った断面の一部を示す図である。
【0102】
図16を参照して、実施例1及び比較例3に係るFRP管複合体の構造Aは、外側金属部材16と内側金属部材14とでFRP管21を挟持する構成と、内側金属部材14から突出した突起部15が外側金属部材16と係合する構成と、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成された構成と、を備えた形態として構成されている。なお、実施例1では、FRP管21は、FRP管11として構成されており、FRP管21の繊維が3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である。一方、比較例3では、FRP管21は、FRP管21の繊維が、組物13ではなく、フィラメントワインドによって形成されている。
【0103】
図17を参照して、比較例1に係るFRP管複合体の構造Bは、内側金属部材14から突出した突起部15がFRP11を貫通して延びる構成と、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成された構成と、を備えた形態として構成されている。そして、構造Bでは、FRP管11の繊維は、3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である。ただし、構造Bにおいては、外側金属部材16が設けられておらず、構造Bは、外側金属部材16と内側金属部材14とでFRP管11を挟持する構成が備えられていない形態として構成されている。
【0104】
図18を参照して、比較例2に係るFRP管複合体の構造Cは、外側金属部材16と内側金属部材14とでFRP管21を挟持する構成と、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成された構成と、を備えた形態として構成されている。そして、構造Cでは、FRP管11の繊維は、3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である。ただし、構造Cは、内側金属部材14から突出して外側金属部材16と係合する突起部15が設けられていない形態として構成されている。
【0105】
図19を参照して、実施例2に係るFRP管複合体の構造Dは、外側金属部材16と内側金属部材14とでFRP管11を挟持する構成と、内側金属部材14から突出した突起部15が外側金属部材16と係合する構成と、を備えた形態として構成されている。そして、構造Dでは、FRP管11の繊維は、3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である。ただし、構造Dは、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成されていない形態として構成されている。
【0106】
図20を参照して、比較例4に係るFRP管複合体の構造Eは、内側金属部材14から突出した突起部15がFRP管11を貫通して延びる構成を備えた形態として構成されている。そして、構造Eでは、FRP管11の繊維は、3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である。ただし、構造Eにおいては、外側金属部材16が設けられておらず、構造Eは、外側金属部材16と内側金属部材14とでFRP管11を挟持する構成が備えられていない形態として構成されている。また、構造Eは、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成されていない形態として構成されている。
【0107】
図21を参照して、比較例5及び比較例6に係るFRP管複合体の構造Fは、内側金属部材14がFRP管11の端部の内周に接合された構成を備えた形態として構成されている。なお、比較例5では、FRP管21は、FRP管11として構成されており、FRP管21の繊維が3本以上の組糸13aを組み合わせて形成された組物13である。一方、比較例6では、FRP管21は、FRP管21の繊維が、組物13ではなく、フィラメントワインドによって形成されている。なお、構造Fにおいては、外側金属部材16が設けられておらず、構造Fは、外側金属部材16と内側金属部材14とでFRP管11を挟持する構成が備えられていない形態として構成されている。また、構造Fは、内側金属部材14から突出して外側金属部材16と係合する突起部15が設けられておらず、さらに、内側金属部材14の外周表面に溝14aも形成されていない形態として構成されている。
【0108】
(実施例及び比較例に係るFRP管複合体の作製)
次に、前述した構造A~Fを備えた実施例1~2及び比較例1~6に係るFRP管複合体の作製について説明する。
【0109】
<実施例1のFRP管複合体の作製>
図22は、実施例1に係るFRP管複合体の外側金属部材16の寸法について示す図である。図23は、実施例1に係るFRP管複合体の内側金属部材14及び突起部15の寸法について示す図である。なお、図22(A)は、外側金属部材16の軸方向に沿った断面図であり、図22(B)は、外側金属部材16の側面図であり、図22(C)は、外側金属部材16の正面図である。また、図23(A)は、内側金属部材14の軸方向に沿った断面図であり、図23(B)は、内側金属部材14の軸方向と垂直な断面での断面図であり、図23(C)は、内側金属部材14の正面図であり、図23(D)は、突起部15の断面図である。なお、図22及び図23と後述の図24及び図25とにおいて示す寸法の数値の単位は、mmである。
【0110】
実施例1に係るFRP管複合体の作製においては、外側金属部材15を材質S45Cにて切削加工により図22に示す寸法にて2個作製した。すなわち、図22に示す寸法にて、FRP管11の両端部に嵌め込まれる一対の外側金属部材15を作製した。次いで、内側金属部材14を材質S45Cにて切削加工により図23に示す寸法にて2個作製した。すなわち、図23に示す寸法にて、FRP管11の両端部に設けられる一対の内側金属部材14を作製した。また、1つの内側金属部材14に対して、4つのネジ穴を形成した。さらに、内側金属部材14の外周表面にローレット加工を加工深さ0.3mmで施すことで、内側金属部材14の外周表面に溝14aを設けた。また、突起部15として、材質S45Cにて切削加工を行うことで、図23(D)に示す寸法のピンを8個作製した。1つの内側金属部材14に設けた4つのネジ穴のそれぞれに、作製した4個のピンを差し込んで螺合させることで、内側金属部材14の外周から突出する突起部15を形成した。
【0111】
図24は、実施例1に係るFRP管複合体の作製の際に用いた支持体106の寸法について示す図である。実施例1に係るFRP管複合体の作製に用いる支持体106として、図24に示す寸法の支持体106を作製した。支持体106の作製では、3Dプリンター(Creater3、FLASHFORGE製)を用い、3Dプリンター用ポリ乳酸フィラメント(PLA-F35、FLASHFORGE製)を材料として、図24に示す寸法の支持体106を作製した。
【0112】
次に、作製した支持体106の両端部に内側金属部材14を嵌め込み、組機100に対応する製紐機に対してセットする準備をした。そして、組物13を作製するため、巻き返し機(KUW-100、コクブンリミテッド製)で炭素繊維(HTS40 E13 6K 400tex、帝人製)をボビン64本に巻き返した。巻き返したボビンと、既に作製した内側金属部材14を装着した支持体106とを製紐機(40Z032C、コクブンリミッテド製)にセットし、組物13を支持体106上に編組して予備成形体17を作製した。
【0113】
予備成形体17が作製できると、次いで、RTM(レジン・トランスファー・モールディング)法によってFRP管11を作製した。FRP管11の作製では、金型107内に予備成形体17を設置し、金型107内を圧力0.1MPa未満の真空状態にした。そして、予備成形体17を設置した金型107内に樹脂(ビニルエステル樹脂(CBZ500LM-AS、日本ユピカ製))を加圧注入した。樹脂の加圧注入後は、室温で3時間放置し、さらに80℃の雰囲気下で2時間放置して樹脂を硬化させ、FRP管11を形成するとともにFRP管11の内周に内側金属部材14を接合した。
【0114】
金型107内の樹脂を硬化させてFRP管11の成形が完了すると、金型107の上型107aと下側107bとを分離し、FRP管11を金型107から離型した。金型107からFRP管11を離型して取り出すと、次いで、FRP管11を200℃に加熱し、支持体106を溶かして除去し、内部が中空の状態のFRP管11を得た。これにより、FRP管11の軸方向の両端部に内側金属部材14が接合されて内部が中空の状態のFRP管11が得られた。さらに、FRP管11の内周に接合した内側金属部材14から突起部15がFRP管11を貫通して外側へと延びた状態のFRP管11が得られた。
【0115】
図25は、実施例1に係るFRP管複合体の寸法について示す図である。両端部に内側金属部材14が接合されて内部が中空の状態のFRP管11が得られると、次いで、FRP管11の端部の外側に円筒状の外側金属部材16を取り付け、外側金属部材16を突起部15と係合させた。これにより、図25に示す寸法のFRP管複合体が得られた。
【0116】
<実施例2のFRP管複合体の作製>
実施例2に係るFRP管複合体は、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成されていない構成であることを除いては、実施例1に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、内側金属部材14の外周表面にローレット加工による溝14aの形成を行わないことを除いては、実施例1に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で実施例2に係るFRP管複合体を作製した。
【0117】
<比較例1のFRP管複合体の作製>
比較例1に係るFRP管複合体は、FRP管11の端部の外側に外側金属部材16が取り付けられない構成であることを除いては、実施例1に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、外側金属部材16をFRP管11の端部の外側に取り付けないことを除いては、実施例1に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で比較例1に係るFRP管複合体を作製した。
【0118】
<比較例2のFRP管複合体の作製>
比較例2に係るFRP管複合体は、内側金属部材14から突出して外側金属部材16と係合する突起部15が設けられていない構成であることを除いては、実施例1に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、内側金属部材14にネジ穴を形成しないこととピンの差し込みによる突起部15の形成を行わないことを除いては、実施例1に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で比較例2に係るFRP管複合体を作製した。
【0119】
<比較例3のFRP管複合体の作製>
比較例3に係るFRP管複合体は、FRP管21の繊維が組物13ではなくフィラメントワインドによって形成されている構成であることを除いては、実施例1に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、支持体106の外周を覆う繊維を組物13ではなくフィラメントワインドによって形成したことを除いては、実施例1に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で比較例3に係るFRP管複合体を作製した。
【0120】
<比較例4のFRP管複合体の作製>
比較例4に係るFRP管複合体は、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成されていない構成であることを除いては、比較例1に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、内側金属部材14の外周表面にローレット加工による溝14aの形成を行わないことを除いては、比較例1に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で比較例4に係るFRP管複合体を作製した。
【0121】
<比較例5のFRP管複合体の作製>
比較例5に係るFRP管複合体は、内側金属部材14から突出する突起部15が設けられていない構成であることと、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成されていない構成であることとを除いては、比較例1に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、内側金属部材14から突出する突起部15を形成しないことと、内側金属部材14の外周表面にローレット加工による溝14aの形成を行わないこととを除いては、比較例1に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で比較例5に係るFRP管複合体を作製した。
【0122】
<比較例6のFRP管複合体の作製>
比較例6に係るFRP管複合体は、FRP管21の繊維が組物13ではなくフィラメントワインドによって形成されている構成であることを除いては、比較例5に係るFRP管複合体と同様に構成される。そこで、支持体106の外周を覆う繊維を組物13ではなくフィラメントワインドによって形成したことを除いては、比較例5に係るFRP管複合体の作製と同様の方法で比較例6に係るFRP管複合体を作製した。
【0123】
(実施例及び比較例の評価方法)
次に、上述のように作製した実施例1~2及び比較例1~6に係るFRP管複合体の評価方法について説明する。実施例1~2及び比較例1~6に係るFRP管複合体の評価として、実施例1~2及び比較例1~6に係るFRP管複合体のそれぞれに対してねじり強度の測定を行った。ねじり強度の測定の試験機として、精密ねじり試験機(TTM-3kN・mA形、株式会社島津製作所製)を用いた。試験片であるFRP管複合体を試験機のつかみ部に取り付け、室温下でねじり強度を測定する試験を行った。荷重速度は、1.2MPa/secとした。試験で得られた破壊トルクから、下記(1)式にて、ねじり強度(MPa)を算出した。
Ts=16/π×D/(D-d)×Td×1000・・・・(1)式
上記(1)式において、「Ts」は、算出するねじり強度であり、「D」は、FRP管の外径であり、「d」は、FRP管の内径であり、Tdは、試験で得られた破壊トルクである。
【0124】
実施例1~2及び比較例1~6に係るFRP管複合体のそれぞれについて、上述の試験を行い、ねじり強度を測定し、測定結果に基づいて評価を行った。評価では、FRP管複合体が自動車の動力伝達軸として用いられる場合を想定した判定基準に基づいて、測定結果の優劣を判定した。具体的には、自動車の動力伝達軸としての実用性の観点から、以下のA判定、B判定、及びC判定の3段階の判定基準にて測定結果を判定し、A判定及びB判定を合格レベルとした。
A判定:ねじり強度が250MPa以上(大型車両にも耐用できる高水準な合格レベル)
B判定:ねじり強度が180MPa以上(実用的な水準の合格レベル)
C判定:ねじり強度が180MPa未満(実用不可能な不合格レベル)
【0125】
(実施例及び比較例の評価結果)
図26は、実施例1~2及び比較例1~6に係るFRP管複合体について上述の評価方法に基づいて評価した結果について表形式で示す図である。なお、図26では、実施例1~2及び比較例1~6について、試験にて測定したねじり強度と、上述した判定基準に基づく判定結果とを示している。また、図26では、実施例1~2及び比較例1~6について、ねじり強度及び判定結果とともに、FRP管複合体の構成の特徴についても一覧表にして示している。なお、図26において、「形態」の欄は、FRP管複合体の形態が、構造A~Fのいずれの形態であるかを示しており、「挟持」の欄は、内側金属部材14と外側金属部材16との間でFRP管を挟持する構成の有無を示している。また、「突起部」の欄は、突起部15が設けられる構成の有無を示しており、「外周面の溝」の欄は、内側金属部材14の外周表面に溝14aが形成される構成の有無を示している。
【0126】
図26を参照して、実施例1のFRP管複合体は、内側金属部材14と外側金属部材16とによる挟持構造と、内側金属部材14から突出する突起部15と、内側金属部材14の外周表面の溝14aとが、全てそろった構造Aの形態であるとともに、FRP管11の繊維に組物13を用いた形態である。このような形態である実施例1のFRP管複合体は、ねじり強度が270MPaの高水準となり、A判定であった。
【0127】
実施例2のFRP管複合体は、実施例1のFRP管複合体に対し、内側金属部材14の外周表面の溝14aを除いた構成である構造Dの形態である。この形態の実施例2のFRP管複合体は、ねじり強度が実施例1のFRP管複合体より若干小さい220MPaであったが、合格レベルのB判定であった。実施例1及び実施例2の評価結果を比較すると、内側金属部材14の外周表面の溝14aを設けることがねじり強度の向上に効果的であるといえる。
【0128】
比較例1のFRP管複合体は、実施例1のFRP管複合体に対し、外側金属部材16を設けていない構成であり、内側金属部材14と外側金属部材16とによる挟持構造を備えていない構成である構造Bの形態である。この形態の比較例1のFRP管複合体は、ねじり強度が173MPaであり、判定Cで不合格レベルであった。実施例1及び実施例2と比較例1との評価結果を比較すると、内側金属部材14と外側金属部材15とによるFRP管11の挟持構造がねじり強度の向上に効果があるといえる。
【0129】
比較例2のFRP管複合体は、実施例1のFRP管複合体に対し、内側金属部材14から突出する突起部15と外側金属部材16との係合がない構成である構造Cの形態である。この形態の比較例2のFRP管複合体は、ねじり強度が164MPaであり、判定Cで不合格レベルであった。実施例1及び実施例2と比較例2との評価結果を比較すると、内側金属部材14から突出する突起部15と外側金属部材16との係合が、ねじり強度の向上に効果があるといえる。
【0130】
比較例3のFRP管複合体は、実施例1のFRP管複合体に対し、FRP管11の繊維として組物13ではなくフィラメントワインドにより引き揃えて巻き付けた炭素繊維を用いた構成である。この構成の比較例3のFRP管複合体は、ねじり強度が179MPaであり、判定Cで不合格レベルであった。実施例1及び実施例2と比較例3との評価結果を比較すると、FRP管11の繊維として組物13を用いることがねじり強度の向上に効果があるといえる。
【0131】
比較例4のFRP管複合体は、比較例1のFRP管複合体の構成である構造Bの形態からさらに内側金属部材14の外周表面の溝14aを除いた構成である構造Eの形態である。この形態の比較例4のFRP管複合体は、ねじり強度が比較例1のFRP管複合体と同水準の173MPaであり、判定Cで不合格レベルであった。
【0132】
比較例5のFRP管複合体は、比較例4のFRP管複合体の構成である構造Eの形態から、さらに、内側金属部材14から突出する突起部15を除いた構成である構造Fの形態である。この形態の比較例5のFRP管複合体は、ねじり強度が151MPaであり、判定Cで不合格レベルであった。
【0133】
比較例6のFRP管複合体は、比較例5のFRP管複合体の構成である構造Fの形態において、FRP管21の繊維として組物13ではなくフィラメントワインドにより引き揃えて巻き付けた炭素繊維を用いた構成である。この構成の比較例6のFRP管複合体は、ねじり強度が149MPaと最も小さく、判定Cで不合格レベルであった。
【0134】
以上の結果より、内側金属部材14と外側金属部材16とによる挟持構造の構成(a1)と、内側金属部材14から突出する突起部15が外側金属部材16と係合する構成(a2)と、FRP管11の繊維が組物13である構成(b)とを全て満たす態様の場合に、自動車の動力伝達軸としての実用性の観点での高水準なねじり強度を有するFRP管複合体が得られることが確認できた。
【0135】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0136】
(1)上述の実施形態では、FRP管11が炭素繊維強化プラスチックとして構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。FRP管11は、炭素繊維以外の繊維材料を用いた繊維強化プラスチックとして構成されていてもよい。例えば、FRP管11は、炭化ケイ素繊維、スチール繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、アモルファス繊維などの繊維材料を用いた繊維強化プラスチックとして構成されていてもよい。
【0137】
(2)上述の実施形態では、FRP管11において筒状組物13が単層で設けられている形態を例示したが、この通りでなくもよい。FRP管11において筒状組物13が複数層積層されて設けられていてもよい。この場合、筒状組物13の各層において、糸の配置、糸の方向性、組角度θなどの編組の構成は、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
【0138】
(3)上述の実施形態では、組糸13aと軸糸13bとを組み合わせることで作製された筒状組物13が用いられる形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、平面状に組み上げられた平打ち組物をつなぎ合わせて筒状の組物を作製し、この筒状の組物を用いてFRP管11が作製されてもよい。
【0139】
(4)上述の実施形態では、突起部15が、ピンとして設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。突起部15は、内側金属部材14の外周から外側に向かって突出或いは隆起した形状であればよく、ピン以外の形状の突起部15が設けられてもよい。
【0140】
(5)上述の実施形態では、内側金属部材14が、軸方向の全長に亘って同じ外径寸法で円筒状に延びる金属部材として構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。内側金属部材14の軸方向における端部の形状が、テーパー形状に形成されていてもよい。図27は、変形例に係るFRP管複合体1aについて説明するための図であって、FRP管複合体1aの軸方向に沿った断面の一部を示す図である。図27に示す変形例のFRP管複合体1aは、上述の実施形態のFRP管複合体1と同様に構成されるが、内側金属部材14の端部の形状がテーパー形状である点において、上述の実施形態とは異なっている。なお、以下の変形例の説明においては、上述の実施形態と同様に構成される要素及び上述の実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、重複する説明を省略する。
【0141】
図27を参照して、FRP管複合体1aの内側金属部材14は、全体形状は円筒状に形成されているが、軸方向における一方の端部側の部分が、軸方向の先端側に向かって少しずつ小径化して窄まるテーパー形状に形成されている。すなわち、FRP管複合体1aの内側金属部材14は、軸方向における一方の端部側の部分の軸方向に沿った断面の形状が、内側金属部材14の軸方向の先端側に向かって肉厚が徐々に薄くなるようにテーパー形状に形成されている。なお、FRP管複合体1aの内側金属部材14におけるテーパー形状に形成される軸方向の一方の端部は、FRP管11の内側に配置される側の端部である。すなわち、FRP管複合体1aの内側金属部材14におけるテーパー形状に形成される端部は、FRP管複合体1aの製造時に内側金属部材14が支持体106の外周に嵌められて装着される際に支持体106に嵌められる先端側の端部である。
【0142】
なお、内側金属部材14が装着された支持体106を筒状組物13で覆って予備成形体17を成形する際には、支持体106の外周に直接に組糸13aを組み合わせて筒状組物13を形成する方法と、予め準備した筒状組物13を支持体106に装着する方法とのいずれかの方法により、予備成形体17が成形される。そして、FRP管複合体1aのように、内側金属部材14の端部の形状がテーパー形状に形成されていると、予め準備した筒状組物13を支持体106に装着する方法によって予備成形体17が成形される場合に、内側金属部材14が装着された支持体106に対してスムーズに筒状組物13を装着することができる。
【0143】
(6)上述の実施形態では、FRP管11の内周に接合された状態で設けられる内側金属部材14が、FRP管11の内周に対して接着処理を伴わずに接合される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、シランカップリング処理を行って、内側金属部材14がFRP管11の内周に対して接合される形態が実施されてもよい。シランカップリング処理を行うことで内側金属部材14とFRP管11の樹脂との接着性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、繊維強化プラスチック製の円筒状のFRP管と、FRP管の軸方向における端部に設けられる金属部品と、を備えたFRP管複合体、及びその製造方法として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 FRP管複合体
11 FRP管
12 金属部品
13 組物(筒状組物)
14 内側金属部材
14a 溝
15 突起部
16 外側金属部材
16a スリット
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