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  • 特開-サポート機能付きチャック装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008064
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】サポート機能付きチャック装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/10 20060101AFI20240112BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B23B31/10 B
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109591
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏隆
【テーマコード(参考)】
3C011
3C032
【Fターム(参考)】
3C011DD00
3C032GG01
(57)【要約】
【課題】アルミニウム製の爪部材に保護カバーを備えたサポート機能付きチャック装置を提供すること。
【解決手段】回転部に固定されるベース部材と、前記ベース部材の正面側中央に設けられたワークを把持するチャック機構と、前記ベース部材の回転中心部から径方向の外側に位置し、前記チャック機構に把持されたワークの外周部分を支えるものであり、ワークに当てられるアルミニウム製のサポート爪に薄板で形成された保護カバーが一体に取り付けられたサポート機構と、を有するサポート機能付きチャック装置であり、例えば 前記保護カバーは、前記サポート爪の正面を覆うように重ねられ、前記サポート爪の左右両側部にねじ止めによって固定されたものである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部に固定されるベース部材と、
前記ベース部材の正面側中央に設けられたワークを把持するチャック機構と、
前記ベース部材の回転中心部から径方向の外側に位置し、前記チャック機構に把持されたワークの外周部分を支えるものであり、ワークに当てられるアルミニウム製のサポート爪に薄板で形成された保護カバーが一体に取り付けられたサポート機構と、
を有するサポート機能付きチャック装置。
【請求項2】
前記保護カバーは、前記サポート爪の正面を覆うように重ねられ、前記サポート爪の左右両側部にねじ止めによって固定されたものである請求項1に記載のサポート機能付きチャック装置。
【請求項3】
前記保護カバーは、ステンレスの薄板で形成されたものである請求項1または請求項2に記載のサポート機能付きチャック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化のためアルミニウムによって形成されたサポート用の爪部材について、切粉による摩耗を防止する保護カバーを備えたサポート機能付きチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャック装置には様々な形態のものがあり、旋盤の主軸装置を構成するチャック装置は、ワークを掴んで回転するため、遠心力の作用する部材は軽量であることが望ましい。例えば下記特許文献1には、チャック本体が軽金属合金であって特に適当なアルミニウム合金から構成されていることが望ましい点について開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55-065006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、チャック本体ではなく、爪部材など一部の構成についてアルミニウムが使用されるチャック装置もある。ワークの加工点に近いアルミニウム部材は、加工時にワークから発生する切粉が頻繁に当たることになる。柔らかい材質であるアルミニウム部材はその切粉の衝突によって摩耗してしまい、擦り減った形状によって不具合が生じることがある。そのため、アルミニウム部材の交換が必要になるが、交換までのいわゆる寿命が短くなってしまう。一方で、摩耗を考慮してアルミニウムに代わる材質で爪部材などを製作することも考えられるが、重くなってしまうか、高価なものになってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、アルミニウム製の爪部材に保護カバーを備えたサポート機能付きチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るサポート機能付きチャック装置は、回転部に固定されるベース部材と、前記ベース部材の正面側中央に設けられたワークを把持するチャック機構と、前記ベース部材の回転中心部から径方向の外側に位置し、前記チャック機構に把持されたワークの外周部分を支えるものであり、ワークに当てられるアルミニウム製のサポート爪に薄板で形成された保護カバーが一体に取り付けられたサポート機構と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、回転部に固定されるベース部材が回転することにより、ベース部材の正面側中央に設けられたチャック機構によって把持されたワークが回転し、そのワークは、外周部分にベース部材の回転中心部から径方向の外側に位置するサポート機構のサポート爪が当てられるようにして支えられている。ワークの外周部分を支えるサポート爪は、保護カバーが一体に取り付けられているため、加工中にワークから発生する切粉による摩耗が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】サポート機能付きチャック装置の一実施形態を示した断面図である。
図2】サポート機能付きチャック装置の一実施形態を正面側(図1の右側)から示した図である。
図3】サポート機能付きチャック装置によって把持したワークに対する加工状況を示した図である。
図4】保護カバーを取り付けたサポート爪を示した斜視図である。
図5】ワークに当てられたサポート爪を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るサポート機能付きチャック装置の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態のサポート機能付きチャック装置を示した断面図である。また、図2は、同じチャック装置を正面側(図1の右側)から示した図である。このサポート機能付きチャック装置(以下、単に「チャック装置」とする)1は、工作機械の主軸装置を構成するものであり、回転自在なスピンドル8の先端部に固定され、不図示のスピンドルモータによって回転が与えられる。また、スピンドル8の中心部にはドローバ9が通され、チャック装置1は、不図示の油圧シリンダによって軸方向に変位するドローバ9を介してその開閉動作が行われるよう構成されている。
【0010】
チャック装置1は、スピンドル8に対して端面部に環状のスペーサ11がねじ止めされ、さらにそのスペーサ11に対してベース部材12がねじ止めによって固定され一体になっている。このベース部材12にはワークを把持するチャック機構3と、そのワークの外周部分を支えるサポート機構5とが設けられている。チャック機構3は、ベース部材12の回転中心Oに重なる中央部分の正面側に位置し、サポート機構5は、回転中心Oから径方向の外側に位置している。そして、チャック装置1は、その正面から側面にかけてカバー部材13によって覆われている。
【0011】
チャック機構3は、コレットチャックであり、ドローバ9の端部にチャック用マンドレル21が同軸上に固定され、主軸装置を構成する油圧シリンダの伸縮作動によって軸方向に変位するよう構成されている。チャック用マンドレル21は、円柱部材の先端部分に、前方にかけて径が大きくなるように傾斜したテーパ部が形成されている。そして、チャック機構3は、チャック用マンドレル21の径方向外側に筒状のブシュ22に嵌め込まれ、チャック用マンドレル21における回転中心Oに沿った摺動を可能にしている。
【0012】
チャック機構3は、更にブシュ22の径方向外側にコレット部材23が設けられている。筒形状のコレット部材23は、中心軸に平行な複数のスリットが円周方向に等間隔に形成されている。そうしたコレット部材23の先端部には、内径側へ突き出したテーパ部が形成され、チャック用マンドレル21の先端部に形成されたテーパ部と摺接するよう配置されている。そして、コレット部材23の径方向外側には当金24が固定され、加工対象であるワークが当てられる正面側端面が基準面となっている。
【0013】
ここで、図3は、チャック装置1によって把持したワークに対する加工状況を示した図である。チャック機構3は、当金24に当てられて位置決めされたワークWの把持が行われる。それにはチャック用マンドレル21が図面左側に引かれて変位し、コレット部材23とのテーパ部同士が摺接することにより、そのコレット部材23の先端部側が外径方向に撓められる。これによりワークWの内径部にコレット部材23の先端部分が押し付けられ、把持状態が維持されることとなる。
【0014】
ワークWは、図3に示すように薄肉の部品であり、チャック機構3の把持位置から遠い外径部分に切削工具80が当てられる場合、その加工点にいわゆるビビリが生じてしまい、加工精度を低下させてしまう。そこでチャック装置1は、そうしたビビリを抑えてワークWの加工部を安定させるためのサポート機構5がベース部材12に対して組み付けられている。
【0015】
サポート機構5は、ベース部材12内に組み込まれたエアシリンダ31によって作動するものである。エアシリンダ31にはドローバ9の中心に形成されたエア流路27を通してエアが供給され、そのエア圧が作用するピストンにはエアシリンダ31内に組み込まれたスプリング32によって反対側(回転中心O側)に常時付勢力が作用している。エアシリンダ31は、スプリング32の中を通ってピストンロッド33が外径側へと延び、ベース部材12とカバー部材13との間の空間に配置された揺動部材34にピン35で連結されている。
【0016】
エアシリンダ31は、回転中心Oに直交する方向にピストンが変位するよう形成され、揺動部材34は、それにほぼ直交するように回転中心Oと平行な方向に配置されている。揺動部材34は棒状の部材であり、その中間部分が支点軸36によって揺動可能に軸支されている。揺動部材34にはピン35の反対側端部に装着部材37が固定され、そこにはサポート爪38がボルトによって着脱可能に取り付けられている。そして、本実施形態では、サポート爪38の正面側を覆うように保護カバー39が重ねて取り付けられている。
【0017】
図4は、保護カバー39を取り付けたサポート爪38を示した斜視図である。保護カバー39は、例えば厚さ1mm程の肉厚の薄いステンレス製の板材であり、極めて軽量なものとして形成されている。その保護カバー39は、サポート爪38に重なるように正面から見たて同じ形状に形成されている。そして、保護カバー39には、左右両方に90度に折り曲げられた固定部分391が形成され、装着部材37へサポート爪38をねじ止めする際、その固定ネジを通すための貫通孔392が正面の2箇所に形成されている。
【0018】
サポート爪38は、従来から使用されているものに、保護カバー39をねじ止めするためのネジ穴が左右両側部に形成されている。保護カバー39は、固定部分391に貫通孔が形成され、そこを通してサポート爪38のネジ穴に脱着ネジ40を螺合させることによって取り付けられる。保護カバー39が取り付けられて一体となったサポート爪38は、貫通孔392を通して挿入された固定ネジによって装着部材37に固定される。
【0019】
通常時のサポート機構5は、スプリング26の付勢力によってエアシリンダ31のピストンが押され、ピストンロッド33にピン結合された揺動部材34の内部側端部が、回転中心O側に引かれている。揺動部材34は、内部側端部が変位することにより、支点軸36を中心にシーソ―のように外部側端部が回転中心Oから遠ざかる方向に変位する。従って、通常時のチャック装置1は、装着部材37およびサポート爪38が回転中心Oから離れた待機位置にあり、運ばれてくるワークWが干渉しないようになっている。
【0020】
一方、チャック機構3によって把持されたワークWには、サポート爪38を当てたサポート機構5による支持が行われる。エア流路27を通して供給されるエアの圧力がエアシリンダ31のピストンに作用し、スプリング26の付勢力に抗して変位する。そして、ピストンと一体のピストンロッド33も軸方向に変位し、揺動部材34が支点軸36を中心に揺動して反対側に傾く。サポート爪38は、図1に矢印で示す径方向に変位可能であり、このときのエアシリンダ31の出力により図3に示すようワークWの外径側の側面に当てられる。
【0021】
ところで、サポート機構5は、回転するチャック装置1の外周側に構成され、回転中心Oから離れた位置へと延びている。そのため、遠心力による影響を小さくするにはサポート爪38などの軽量化が必要であり、サポート機構5のサポート爪38は、その材質にアルミニウムが使用されている。そして、保護カバー39の材質には、強度を確保するとともに、同じく軽量化を目的としてステンレスが使用されている。
【0022】
ここで、図5は、保護カバー39が嵌められたサポート爪38の正面図であり、ワークWに当てられた状態が示されている。加工中にワークWを支持するサポート爪38は、チャック装置1の反時計方向の高速回により、切削工具80がワークWを切削する加工点Pを繰り返し通過する。その加工点Pでは切削工具80によってワークWが削られて切粉が飛び散っている。そのため、サポート爪38は、加工点Pを通過するたびに切粉が衝突することになる。
【0023】
サポート爪38は、柔らかい材質のアルミニウム製である。そのため、本実施形態のように保護カバー39が取り付けられていない従来例では、アルミニウム製のサポート爪が衝突する切粉によって摩耗し、部分的に擦り減ってしまい形状変化が起きてしまっていた。ワークWは、例えばサポート爪38に支持されながら矢印で示す反時計方向に回転し、位置決めされた切削工具80によって端面の切削が行われる。ワークの切削加工に使用されるチャック装置1は、回転方向が一定であるため、サポート爪38に対して一方向から継続して切粉が当たってしまっていた。
【0024】
サポート爪38は、正面から見た図面左側部分に切粉が加工点Pを先に通過することとなるため、切粉が当たって摩耗が生じることとなる。すなわち、図5において破線で示す箇所が、切粉による擦り減りが多い摩耗部分50である。サポート爪38は、図面下側の湾曲した当接面381がワークWの外周面に当たることにより、そのワークWを正しく支持できている。そのため、摩耗部分50の擦り減りによって当接面381までもが形状変化してしまうと、正しくワークWを支持することがでず、加工時のビビリを発生させてしまうことになる。よって、従来例のサポート爪は寿命が短く、交換の回数が多くなってしまっていた。
【0025】
この点、本実施形態のサポート爪38には摩耗を防止するための保護カバー39が設けられている。サポート爪38がワークWの外周面に当てられ、チャック装置1の回転によって切削工具80によるワークWの加工が行われるが、サポート爪38は、加工中に飛び散る切粉から保護カバー39によって保護される。そのため、摩耗によるサポート爪38の変形を防止することで寿命が長くなり、こうした効果をステンレス製の保護カバー39によって安価に達成することができる。
【0026】
また、その保護カバー39は、硬度の高いステンレス製であるため、それ自体が切粉による摩耗の影響を受けにくい。そして、保護カバー39は肉厚の薄いステンレス製の板材で形成されているため極めて軽量であり、遠心力に対する影響が抑えられている。さらに、保護カバー39は、従来から使用されているサポート爪38に合わせて形成されたものであるため、チャック装置1の設計変更は必要なく、着脱も脱着ネジ40によって簡単に行える。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、チャック機構にはコレットチャックを示し、サポート機構にはエアシリンダ31を使用した構造のものを示したが、いずれも異なる構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…チャック装置 3…チャック機構 5…サポート機構 8…スピンドル 12…ベース部材 21…チャック用マンドレル 23…コレット部材 31…エアシリンダ 34…揺動部材 38…サポート爪 39…保護カバー 80…切削工具 W…ワーク

図1
図2
図3
図4
図5