(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080641
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】特に計時器用バレルのための、摺動式巻きギア列を備える係合解除可能な巻きデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 1/20 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
G04B1/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023198869
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】22210934.0
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ジャンヌレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドラムの内壁に形成されたノッチに対する細長材の滑りに基づくシステムに代わって、ばねがきつくなることを抑えるシステムを備える巻きデバイスを提供する。
【解決手段】特にばねを備えるバレル2のための、係合解除可能な巻きデバイス10に関し、巻きデバイスは、巻きアーバーに取り付けられて巻きアーバーに剛接続するようにされたラチェット3と、ラチェットと噛み合う巻きギア列40とを備え、アーバーが回転することによって、バレルが巻かれるものであり、アクチュエート用車セット31は、係合位置において巻きギア列と噛み合い、巻きギア列は、巻きギア列に与えられるトルクがしきい値よりも実質的に大きいときに、特にバレルが完全に巻かれたときに、係合位置から外れて回転アーバー26のまわりを摺動することができるように取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばねを備えるバレル(2)のための、係合解除可能な巻きデバイス(10)であって、
前記巻きデバイス(10)は、巻きアーバーに取り付けられて前記巻きアーバーに剛接続するようにされたラチェット(3)と、前記ラチェット(3)と噛み合う巻きギア列(40)とを備え、
前記巻きアーバーは、例えば、前記バレル(2)を巻くためのアーバーであって、前記アーバーが回転することによって、前記バレル(2)が巻かれるものであり、
前記巻きギア列(40)の回転が、前記ラチェット(3)の回転と前記巻きアーバーの回転を駆動し、
前記巻きデバイス(10)は、巻きギア列(40)にトルクを加えることによって巻きギア列(40)を駆動するためのアクチュエート用車セット(31)を備え、
前記アクチュエート用車セット(31)は、係合位置において前記巻きギア列(40)と噛み合い、
前記巻きギア列(40)は、前記巻きギア列(40)に与えられるトルクがしきい値よりも実質的に大きいときに、特に前記バレル(2)が完全に巻かれたときに、係合位置から外れて回転アーバー(26)のまわりを摺動することができるように取り付けられている
ことを特徴とする巻きデバイス。
【請求項2】
前記巻きギア列(40)と前記アクチュエート用車セット(31)は、係合位置において重なり合う
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項3】
前記アクチュエート用車セット(31)は、前記回転アーバー(26)と剛接続するように前記回転アーバー(26)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項4】
前記アクチュエート用車セット(31)は、前記巻きギア列(4)が摺動しているときに、前記巻きギア列(40)と噛み合わない
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項5】
前記アクチュエート用車セット(31)の方向に前記巻きギア列(40)に軸方向の戻し力を与えて前記巻きギア列(40)を係合位置に保持する戻し手段(50)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項6】
前記戻し手段は、前記巻きギア列(40)の上に配置されるばね(30)を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の巻きデバイス。
【請求項7】
前記巻きギア列(40)に与えられたトルクが前記戻し手段(50)によって与えられる力と反対でありこの力よりも大きい軸方向の力を発生させるときに、前記巻きギア列(40)が摺動する
ことを特徴とする請求項5に記載の巻きデバイス。
【請求項8】
前記アクチュエート用車セット(31)と前記巻きギア列(40)にはそれぞれ、互いに連係する、ウルフ歯(24、25)がある
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項9】
前記巻きギア列(40)と前記アクチュエート用車セット(31)にはそれぞれ、第2の半径方向の歯列(22、27)がある
ことを特徴とする請求項8に記載の巻きデバイス。
【請求項10】
バレル(2)と、前記バレル(2)を巻くための請求項1に記載の巻きデバイス(10)とを備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に計時器用バレルのための、摺動式巻きギア列を備える係合解除可能な巻きデバイスに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このような係合解除可能な巻きデバイスを備える計時器用ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0003】
今日の自動巻き機能付きの機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のほとんどは、通常、重力によってギア列を駆動する振動錘を備える。この振動錘が回転すると、ドラム内にてアーバーのまわりに巻かれた、細長材ばね、すなわち、メインばね、がそのアーバーが駆動されることによって、きつくなる。爪によって反転が防止されて、通常一方向にのみに回転が制限される。
【0004】
しかし、ばねが完全に巻かれているときに巻き過ぎを避けることが重要であり、この巻き過ぎによって、ばねが破損したり、共振器がリバウンドしたりする可能性がある。このリバウンドの間に、バランスがパレットレバーのホーンに当接するまで振動の振幅が大きくなり、バランスがこの当接体に対してリバウンドすることによってレートが変動してしまう。
【0005】
このようなリスクを避けるために、このようなバレルには、通常、メインばねがきつくなりすぎることを制限するシステムがある。
【0006】
この制限は、通常、ドラムの内壁に対して摺動するばねの最も外側の細長材によって達成される。ばねが完全に巻かれ、バレルの巻きアーバーのまわりにて巻かれているときに、最も外側のコイルがドラムの外壁に押し付けられている。
【0007】
したがって、最も外側のコイルの壁に対する摩擦トルクよりも巻きトルクが大きいと、この最も外側のコイルが滑り始める。抑制されていない滑りを防ぐために、ノッチのおかげで、巻きトルクが十分に低下すると、細長材の端が滑らないようにすることが可能になる。
【0008】
しかし、このようなシステムには、ドラム内の最も外側のコイルの摺動摩擦プロセスにおいて課題がある。実際に、駆動する機構が大きなトルクを必要とするときに、支持力、及びばねの細長材と壁の間の摩擦が大きくなり、グリースが存在していても、摩耗、及びバレルの性能の劣化が発生してしまう。このグリースは、最終的に特定の時間後に摩擦領域からなくなる。
【0009】
また、自動バレルにおいて、コイルの間の摩擦を低減させることのように、効率を最大化することと、良好な巻きトルクを確実にするためにばねとドラムの間の摩擦を大きくすることのような、相反する要求を満たす必要がある。
【0010】
また、被覆の剥がれ、スラッジの蓄積、完全に巻かれたばねの細長材の圧力に起因する壁の摩耗のような、ドラムの劣化も避ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ドラムの内壁に形成されたノッチに対する細長材の滑りに基づくシステムに代わって置き換えるような、ばねがきつくなることを抑えるシステムを備える巻きデバイスを提供することによって、上記の課題のすべて又はいくつかを克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、特にばねを備えるバレルのための、係合解除可能な巻きデバイスに関し、前記巻きデバイスは、巻きアーバーに取り付けられて前記巻きアーバーに剛接続するようにされたラチェットと、前記ラチェットと噛み合う巻きギア列とを備え、前記巻きアーバーは、例えば、前記バレルを巻くためのアーバーであって、前記アーバーが回転することによって、前記バレルが巻かれるものであり、前記巻きギア列の回転が、前記ラチェットの回転と前記巻きアーバーの回転を駆動し、前記巻きデバイスは、巻きギア列にトルクを加えることによって巻きギア列をアクチュエートするためのアクチュエート用車セットを備え、前記アクチュエート用車セットは、係合位置において前記巻きギア列と噛み合う。
【0013】
前記巻きギア列は、前記巻きギア列に与えられるトルクがしきい値よりも実質的に大きいときに、特に前記バレルが完全に巻かれたときに、係合位置から外れて回転アーバーのまわりを摺動することができるように取り付けられている、という点で本発明は画期的である。
【0014】
これによって、巻きギア列が係合位置から外れて、ラチェットが巻きギア列によって駆動されなくなるようにすることができる。実際に、巻きギア列は、アクチュエート用車セットと噛み合わなくなる。例えば、アクチュエート用車セットによって巻きギア列に与えられるトルクが大きすぎるときに、特にバレルが完全に巻かれているときに、巻きギア列は、摺動して、回転トルクをラチェットに伝達しなくなり、ラチェットが回転しなくなる。
【0015】
本発明のおかげで、制限デバイスがバレルの上流かつ外側に配置されるので、バレルが早期摩耗してしまうリスクを防ぐことができる。また、バレル内におけるばね摩擦に基づく伝統的な巻き制限デバイスを用いる必要はない。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記巻きギア列と前記アクチュエート用車セットは、重なり合う。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記アクチュエート用車セットは、前記回転アーバーと剛接続するように前記回転アーバーに取り付けられる。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記アクチュエート用車セットは、前記巻きギア列が摺動しているときに、前記巻きギア列と噛み合わない。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記巻きデバイスは、前記アクチュエート用車セットの方向に前記巻きギア列に軸方向の戻し力を与えて、前記巻きギア列を係合位置に保持する戻し手段を備える。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記戻し手段は、前記巻きギア列の上に配置されるばねを備える。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記巻きギア列に与えられたトルクが、戻し手段によって与えられる力と反対であり、それよりも大きい軸方向の力を発生させるときに、巻きギア列が摺動する。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記アクチュエート用車セットと前記巻きギア列にはそれぞれ、互いに連係する、ウルフ歯がある。
【0023】
本発明は、さらに、バレルと、このバレルのための前記のような係合解除可能な巻きデバイスとを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0024】
添付の図面を参照しながら例示のみを目的として与えられ本発明の範囲を限定するようには意図されていない、いくつかの実施形態を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】係合位置にある、本発明の一実施形態に係る係合解除可能な巻きデバイスの概略断面図である。
【
図2】係合解除されている、
図1に示している本発明の実施形態に係る係合解除可能な巻きデバイスの概略断面図である。
【
図3】係合位置にある、
図1に示している本発明の実施形態に係る係合解除可能な巻きデバイスの概略斜視図である。
【
図4】特にメインばねが完全に巻かれているときに、係合解除されている、
図1に示している本発明の実施形態に係る係合解除可能な巻きデバイスの概略斜視図である。
【
図5】
図1に示している本発明の実施形態に係る係合解除可能な巻きデバイスの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~5は、本発明に係る、巻きデバイス10、この場合は計時器用バレル2、についての1つの実施形態を示している。
【0027】
バレル2の巻きデバイス10は、ラチェット3と巻きギア列40を備える。巻きギア列40がラチェット3と噛み合っているので、巻きギア列40が第1の方向に回転するときに、ラチェット3は、第1の方向とは反対の第2の方向に回転する。
【0028】
ラチェット3は、剛接続するように巻きアーバーに取り付けられ、巻きアーバーは、バレル2を巻くことを可能にする。巻きアーバーは、好ましくは、円筒状である。
【0029】
この例において、巻きアーバーはバレル2を巻く巻きアーバーであり、ラチェット3はバレル2上に配置されている。ラチェット3には、巻きアーバーに剛接続するように巻きアーバーに取り付けられたハブ7がある。
【0030】
図示していない1つの代替的実施形態において、巻きアーバーはバレルに取り付けられておらず、巻きアーバーは、ラチェットがバレルに取り付けられていない場合に、ばねを巻くようにバレルを巻く巻きアーバーを駆動する車セットと噛み合うピニオンを備える。
【0031】
巻きギア列40は、ラチェット3の隣に配置され、好ましくは、ラチェット3と同じ平面内に延在している。
【0032】
ラチェット3には、このラチェット3のまわりに分布する第1の外側歯列11がある。第1の歯列11は、巻きギア列40の第1の車28に形成される第2の周部歯列22と連係する。巻きギア列40には、第1の車の下に配置される第3の歯列25がある。
【0033】
バレル2は、バレル2の内側に配置されるバランスばね(図示せず)を備え、バランスばねは、自動巻きシステム又は手動巻きシステムによって、巻く必要がある。
【0034】
このために、巻きデバイス1は、さらに、ギアシステム23を備え、このギアシステム23は、例えば、計時器用ムーブメントの自動巻き錘(図示せず)によって駆動される。ギア列システム23は、手動巻きの場合、巻きボタンによってアクチュエートすることができる巻きステム(図示せず)を利用して駆動することもできる。
【0035】
ギア列システム23の巻き用のアクチュエート用車セット31は、巻きギア列40をアクチュエートする。アクチュエート用車セット31は、ギア列システム23の別の車セット32と連係する第4の周部歯列27がある第2の車29を備える。アクチュエート用車セット31には、第2の車29に形成され係合位置において巻きギア列40の第3の歯列25と噛み合う第5の歯列24がある。
【0036】
したがって、ギア列システム23をアクチュエートすることによって、トルクがラチェット3に与えられ、このラチェット3は、そのトルクを、アクチュエート用車セット31によって駆動される巻きギア列40を介して、少なくとも部分的に巻きアーバーに伝達する。
【0037】
バレル2が巻かれているときに、アクチュエート用車セット31と巻きギア列40の回転は、ラチェット3、したがって、巻きアーバー、を回転させる。
【0038】
バレル2の巻き過ぎを避けるために、巻きギア列40は、その巻きギア列40がラチェット3を駆動する係合位置から動くことができる。
【0039】
この実施形態において、係合解除可能な巻きデバイス10は、回転アーバー26を備え、この回転アーバー26に巻きギア列40が前記回転アーバー26のまわりに摺動可能に取り付けられる。アクチュエート用車セット31は、回転アーバー26に剛接続するように取り付けられる。
【0040】
巻きギア列40は、係合位置にあるときは巻きアクチュエート用車セット31と噛み合い、回転アーバー26に沿って摺動しているときは巻きアクチュエート用車セット31と噛み合わない。
【0041】
したがって、係合位置において、アクチュエート用車セット31が巻きギア列40を駆動し、巻きギア列40がラチェット3を駆動する。
【0042】
一方、巻きギア列40の摺動が終了した後、アクチュエート用車セット31は、空転し、アクチュエート用車セット31から離れた位置にある巻きギア列40を駆動しない。したがって、ラチェット3は、巻きギア列40によって駆動されなくなる。
【0043】
巻きギア列40とアクチュエート用車セット31は、上下に重なり合う。アクチュエート用車セット31の第5の歯列24が、係合位置にある巻きギア列40の第3の歯列25と連係するように、巻きギア列40は、アクチュエート用車セット31の上に配置される。
【0044】
第3の歯列25と第5の歯列25には、好ましくは、ウルフ歯状の歯がある。すなわち、各歯の片側は反対側よりも傾いていない。これによって、歯列どうしが十分に押し付けられていないときに、歯列どうしが好ましい回転方向に滑りやすくなる。
【0045】
巻きギア列40は、回転アーバー26の軸に沿って軸方向に摺動することができる。したがって、巻きギア列40は、軸方向に、係合位置から、また、その逆に、動くことができる。
【0046】
係合位置において、巻きギア列40とアクチュエート用車セット31は、互いに噛み合う、第3の歯列25と第5の歯列24を介して接触している。したがって、アクチュエート用車セット31は、巻きギア列4、したがって、ラチェット3、を駆動する。
【0047】
しかし、係合解除された構成において、巻きギア列40とアクチュエート用車セット31は、より離れており、第3の歯列25と第5の歯列24は互いに噛み合わない。この結果、アクチュエート用車セット31は、巻きギア列4又はラチェット3を駆動しない。
【0048】
また、巻きギア列40の第2の歯列22は、巻きギア列40が係合解除されているときには、ラチェット3の第1の歯列11と噛み合わなくなる。特に、巻きギア列40が回転アーバー26に沿って摺動したので、第2の歯列22は、第1の歯列11の範囲を超えてシフトしている。
【0049】
巻きデバイスは、さらに、アクチュエート用車セット31の方向に巻きギア列40に軸方向の戻し力を与えて巻きギア列40を係合位置に保持する戻し手段50を備える。
【0050】
戻し手段は、巻きギア列40の上に配置されるばね30を備える。
【0051】
巻きギア列40は、ばね30に取り付けられ、このばね30は、巻きギア列40に軸方向の力を与えて、巻きギア列40を係合位置に保持する。
【0052】
ばね30は、巻きギア列40の上にて回転アーバー26に接合されるフレキシブルなカラー(collar)の形態である。このフレキシブルなカラーは、巻きギア列40の上で曲げられたり折り曲げられたりして、巻きギア列40に押し付けられる。
【0053】
フレキシブルなカラーは、アクチュエート用車セット31の方向に巻きギア列40に軸方向の戻し力を与え、第3の歯列25と第5の歯列24は、係合位置において連係する。
【0054】
また、巻きギア列40に与えられるトルクが、戻し手段50によって与えられる力よりも大きい反対方向の軸方向の力を発生させるときに、巻きギア列40は、巻きアーバー26のまわりを摺動する。
【0055】
特に、第3の歯列25と第5の歯列24のウルフ歯状の歯のおかげで、巻きギア列40に与えられるトルクが、ばね30が発生させる力とは反対方向に巻きギア列40を押す力を発生させる。
【0056】
したがって、トルクが実質的にしきい値よりも大きいと、巻きギア列40は回転アーバー26のまわりを摺動して係合位置を離れる。巻きギア列40は、係合位置から、回転アーバー26のまわりにて実質的に直線的な軸方向の運動を行うことによって、アクチュエート用車セット31から特定の距離まで摺動する。
【0057】
しきい値よりも大きいと、ラチェット3を回転させるために必要なトルクが、フレキシブルカラー26を上に広げることに必要なトルクよりも大きいときに、巻きギア列40は、第3の歯25と第5の歯24のおかげで、特にウルフ歯状の歯列24、25のおかげで、アクチュエート用車セット31によって押される。
【0058】
すなわち、アクチュエート用車セット31が巻きギア列40を強く押すと、第3のウルフ歯状の歯列25と第5のウルフ歯状の歯列24は、噛み合うことなく互いの上を滑り、フレキシブルカラーが回転アーバー26に沿って上方に延びるに従って巻きギア列40が動く。
【0059】
この結果、アクチュエート用車セット31は回転し続けるが、巻きギア列40とラチェット3は回転しなくなる。
【0060】
図1及び3において、巻き構成において、アクチュエート用車セット31によって巻きギア列40に与えられる巻きトルクはしきい値未満であり、したがって、フレキシブルなカラーは形を変えない。したがって、第1の歯列12とラチェット3は、巻きギア列40によって駆動される。
【0061】
図2及び4において、バレル2が完全に巻かれているときに、アクチュエート用車セット31によって巻きギア列40に与えられる巻きトルクは、しきい値よりも大きく、したがって、フレキシブルなカラーが広がって、巻きギア列40が上方に動く。すなわち、ラチェット3を回転させるために必要なトルクは、初期形状を保持することができないフレキシブルなカラーに対して非常に大きい。
【0062】
この係合解除手段は、バレル2を巻き過ぎから保護し、バレル2内の早期摩耗を防ぐ。したがって、メインばねが完全にきつくなっているときに、巻きアーバーをブロックすることができて、メインばね2を壊すリスクを冒すことがない。
【0063】
バレル2には、さらに、計時器用ムーブメントの車セットの第7の歯列と連係するように構成している第6の周部歯列18がある。この車セットは、例えば、第3の車である。バレル2は、巻かれると、車セットを介して計時器用ムーブメントを動作させるために必要なエネルギーを供給する。
【0064】
本発明は、さらに、バレルと、上記のバレル巻きデバイスを備える、図示していない計時器用ムーブメントに関する。
【0065】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明したいくつかの実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱せずに代替的実施形態を検討することができる。
【符号の説明】
【0066】
2 バレル
3 ラチェット
4 巻きギア列
10 巻きデバイス
26 回転アーバー
29 第2の車
30 ばね
31 アクチュエート用車セット
32 別の車セット
40 巻きギア列
50 戻し手段
【外国語明細書】