(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080646
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】アスファルトのタック防止剤およびその利用
(51)【国際特許分類】
E01C 7/24 20060101AFI20240606BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20240606BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E01C7/24
C08L25/02
C08K5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199555
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022193224
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 正隆
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AE01
2D051AG01
2D051AH02
2D051AH03
2D051EB06
4J002BC021
4J002BC071
4J002BC081
4J002DD057
4J002EC047
4J002EC057
4J002EG026
4J002EV186
4J002EV236
4J002EW036
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD316
4J002GL00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】路面温度が高い夏でも少量で効率的にアスファルトの粘着性を低減でき、アスファルト自体の性能に影響を及ぼさないアスファルトのタック防止剤を提供することを目的とする。
【解決手段】スチレン系単量体を含む重合性成分を重合してなる樹脂(A)及び融点が60℃以上のアニオン性界面活性剤(B)を含む、アスファルトのタック防止剤。前記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が60~160℃であると好ましい。前記アニオン性界面活性剤(B)が炭素数6~22の脂肪酸石鹸を含むと好ましい。前記樹脂(A)及び前記アニオン性界面活性剤(B)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0であると好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体を含む重合性成分を重合してなる樹脂(A)及び融点が60℃以上のアニオン性界面活性剤(B)を含む、アスファルトのタック防止剤。
【請求項2】
前記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が60~160℃である、請求項1に記載のアスファルトのタック防止剤。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤(B)が炭素数6~22の脂肪酸石鹸を含む、請求項1又は2に記載のアスファルトのタック防止剤。
【請求項4】
前記樹脂(A)及び前記アニオン性界面活性剤(B)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0である、請求項1又は2に記載のアスファルトのタック防止剤。
【請求項5】
20℃における比重が1.03~3.0である化合物(C)をさらに含む、請求項1又は2に記載のアスファルトのタック防止剤。
【請求項6】
前記樹脂(A)、前記アニオン性界面活性剤(B)及び前記化合物(C)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0/0.5~20.0である、請求項5に記載のアスファルトのタック防止剤。
【請求項7】
アスファルト乳剤に請求項1又は2に記載のアスファルトのタック防止剤を接触させる、アスファルトのタック防止剤の散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトのタック防止剤およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは石油を蒸留してナフサやガソリン、灯油、軽油等を取り出した後に得られる最終精製物で、古くから舗装材料に用いられている。
アスファルトは常温では高粘度の半固体または固体であり、その粘着性の高さから取り扱い時の作業性が非常に悪い。
【0003】
常温での取り扱い時の作業性を改善する手法の一つとして、乳化剤を用いてアスファルトを水に乳化させた形態での利用が知られており、該乳化物はアスファルト乳剤と呼ばれている。
道路舗装におけるアスファルト乳剤の主な用途には、路盤の表面仕上げ用として使用されるプライムコートと、基層と新たに舗設するアスファルト層との層間接着用として使用されるタックコートがある。
これらの用途でアスファルト乳剤を用いる際、アスファルトが本来持つ性能を引き出す為に乳剤を散布した後に水分を除去しアスファルトを皮膜化する必要があるが、水分除去後はアスファルトの粘着性(タック)により、生成したアスファルト皮膜が工事車両のタイヤに付着して剥がれてしまう問題がある。
特に路面温度が高くなる夏はアスファルトが軟化する為この問題が多く発生し、皮膜が剥がれる事で接着性や防水性といったアスファルト皮膜の性能が十分に得られないだけでなく、アスファルトがタイヤに付着した工事車両が付近の道路を汚損してしまう問題もあった。
【0004】
タックを抑制するために、アスファルトに樹脂やゴム成分を配合して軟化点を高くした改質アスファルトを用いた、タイヤ付着抑制型アスファルト乳剤(PKM-T)がある。
また、特許文献1では、アスファルト乳剤にコロイダルシリカを配合した乳剤を使用してタック防止を試みている。
しかし、いずれも、樹脂成分やコロイダルシリカを多量に配合しなければ十分なタック防止効果が得られない為、アスファルト自体の性能に影響が出る結果を招来していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、路面温度が高い夏でも少量で効率的にアスファルトの粘着性を低減でき、アスファルト自体の性能に影響を及ぼさないアスファルトのタック防止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の単量体を重合してなる樹脂と特定の融点を有するアニオン性界面活性剤を含むアスファルトのタック防止剤であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のアスファルトのタック防止剤は、スチレン系単量体を含む重合性成分を重合してなる(A)及び融点が60℃以上のアニオン性界面活性剤(B)を含む。
【0008】
前記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が60~160℃であると好ましい。
前記アニオン性界面活性剤(B)が炭素数6~22の脂肪酸石鹸を含むと好ましい。
前記樹脂(A)及び前記アニオン性界面活性剤(B)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0であると好ましい。
20℃における比重が1.03~3.0である化合物(C)をさらに含むと好ましい。
前記樹脂(A)、前記アニオン性界面活性剤(B)及び前記化合物(C)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0/0.5~20.0であると好ましい。
本発明のアスファルトのタック防止剤の散布方法は、アスファルト乳剤に上記アスファルトのタック防止剤を接触させる、アスファルトのタック防止剤の散布方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアスファルトのタック防止剤は、路面温度が高い夏でも少量で効率的にアスファルトの粘着性を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアスファルトのタック防止剤は、樹脂(A)及び融点が60℃以上のアニオン性界面活性剤(B)を含む。以下に詳細に説明する。
【0011】
〔樹脂(A)〕
樹脂(A)は、スチレン系単量体を含む重合性成分を重合してなる。
重合性成分としては、スチレン系単量体を必須に含み、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル又はビニルアルコール等が挙げられる。中でも、本願効果を発揮する観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸が好ましい。
【0012】
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-エチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、o-,m-,p-ヒドロキシスチレン、o-,m-,p-メトキシスチレン、o-,m-,p-エトキシスチレン、o-,m-,p-クロロスチレン等が挙げられる。
【0013】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、本願効果を発揮する観点から、60~160℃が好ましく、70~140℃がより好ましく、80~120℃がさらに好ましい。
なお、本発明でいうガラス転移点とは、JIS-K7121に準拠し、後述するDSC測定により得られるDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、階段状変化部分の曲線とが交わる点(単位:℃)として定義される。
【0014】
〔アニオン性界面活性剤(B)〕
アニオン性界面活性剤(B)は、融点が60℃以上である。融点が60℃未満であると、路面温度が高い夏には散布後に溶融してしまい、アスファルトのタックを抑制する効果が減少するために、本願の課題を解決することができない。
アニオン性界面活性剤(B)としては、融点が60℃以上であれば特に限定はないが、スルホン酸型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤、燐酸エステル型アニオン性界面活性剤、カルボン酸型アニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、スルホン酸型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤及びカルボン酸型アニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であると、アスファルト表面にタック防止剤成分が斑なく均一に付着するとともに、カチオン系アスファルト乳剤の分解剤としても機能しうる観点から好ましい。
【0015】
スルホン酸型アニオン性界面活性剤としては、アルキル又はアルケニルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、メラミンスルホン酸塩、アルキルメラミンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、アルキルメラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、アルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸アミドスルホン酸塩、アシルイセチオン酸塩、N-アシル-N-メチルタウリン酸塩等が挙げられる。
硫酸エステル型アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルフェニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、油脂の硫酸化物の塩、硬化油脂の硫酸化物の塩等が挙げられる。
【0016】
燐酸エステル型アニオン性界面活性剤としては、アルキル燐酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸塩等が挙げられる。
カルボン酸型アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
高級脂肪酸塩としては、本願効果を奏する観点から、炭素数6~22の脂肪酸石鹸を含むと好ましい。
【0017】
アニオン性界面活性剤(B)の具体例としては、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、ステアリルエーテル燐酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸ナトリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、牛脂脂肪酸カリウム等が考えられる。
【0018】
〔化合物(C)〕
本発明のアスファルトのタック防止剤は、本願効果を奏する観点から、20℃における比重が1.03~3.0である化合物(C)をさらに含むと好ましい。
化合物(C)の20℃における比重は、本願効果を奏する観点から、1.04~2.5がより好ましく、1.05~2.0がさらに好ましく、1.06~1.5がさらに好ましい。
【0019】
化合物(C)としては、無機硫酸塩、燐酸塩、縮合燐酸塩、塩酸塩、炭酸塩、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
中でも、入手の容易さ、安全性、及び環境への影響から、硫酸塩、塩酸塩、グリセリン、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0020】
無機硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸銀、硫酸ジルコニル、硫酸アンモニウム、硫酸アンモニウム鉄、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム等が挙げられる。
中でも、入手の容易さ、安全性、及び環境への影響から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムが好ましい。
【0021】
塩酸塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。
【0022】
本発明のアスファルトのタック防止剤は、化合物(C)を含む場合、アスファルト乳剤との自然混合を促進することで乾燥後に表面のタック防止剤成分が剥がれ難くなるため、好ましい。また、カチオン系アスファルト乳剤の分解剤としても使用可能であり、施工時間を短縮する効果を発現するため、好ましい。
【0023】
本発明のアスファルトのタック防止剤は、その効果を阻害しない程度にその他の成分として溶剤、乳化・可溶化剤、解乳化剤、消泡剤等を使用しても良い。
【0024】
〔アスファルトのタック防止剤〕
本発明のアスファルトのタック防止剤のみかけ1%水溶液のpHは、本願効果を発揮する観点から、7.0~11.0が好ましく、7.5~10.0がより好ましい。7.0未満では散布時の作業性が悪化することがある。また11.0超では施工場所付近の環境に悪影響を及ぼしたり、作業者の安全性が保たれないことがある。
【0025】
本発明のアスファルトのタック防止剤の20℃における粘度は、500mPa・S以下が好ましく、400mPa・S以下がより好ましく、300mPa・S以下がさらに好ましく、200mPa・S以下が特に好ましい。500mPa・S超では、散布斑が発生し易くタック防止効果が得られないことがある。
好ましい下限値は0.1mPa・Sである。0.1mPa・S未満では、散布斑が発生し易くタック防止効果が得られないことがある。
【0026】
本発明のアスファルトのタック防止剤の不揮発分に占める樹脂(A)の重量割合は、本願効果を発揮する観点から、20~98重量%が好ましく、30~95重量%がより好ましく、40~92重量%がさらに好ましく、50~88重量%が特に好ましい。
【0027】
本発明のアスファルトのタック防止剤の不揮発分に占めるアニオン性界面活性剤(B)の重量割合は、本願効果を発揮する観点から、2~50重量%が好ましく、3~40重量%がより好ましく、5~35重量%がさらに好ましく、7~30重量%が特に好ましい。
【0028】
本発明のアスファルトのタック防止剤が化合物(C)を含む場合、本発明のアスファルトのタック防止剤の不揮発分に占める化合物(C)の重量割合は、本願効果を発揮する観点から、0.5~30重量%が好ましく、1~25重量%がより好ましく、2~20重量%がさらに好ましく、3~15重量%が特に好ましい。
【0029】
本発明のアスファルトのタック防止剤は、本願効果を発揮する観点から、前記樹脂(A)及び前記アニオン性界面活性剤(B)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0が好ましく、8.0~45.0/0.8~40.0がより好ましく、10.0~40.0/1.0~30.0がさらに好ましい。
【0030】
本発明のアスファルトのタック防止剤が化合物(C)を含む場合、本願効果を発揮する観点から、前記樹脂(A)、前記アニオン性界面活性剤(B)及び前記化合物(C)の重量比率が、5.0~50.0/0.5~50.0/0.5~20.0が好ましく、8.0~45.0/0.8~40.0/1.0~15.0がより好ましく、10.0~40.0/1.0~30.0/2.0~10.0がさらに好ましい。
【0031】
〔アスファルトのタック防止剤の製造方法〕
本発明のタック防止剤の製造方法としては、未溶解・未分散の成分の残存がなく、均一に溶解・分散していれば良く、特に限定はないが、たとえば、次の各方法が挙げられる。
(1)樹脂(A)のエマルジョンを作成した後、攪拌下、アニオン性界面活性剤(B)、化合物(C)を少量ずつ添加し混合する方法
(2)アニオン性界面活性剤(B)、化合物(C)を水に溶解した後、別に作成した樹脂(A)のエマルジョンを充分攪拌しながら少量ずつ添加し混合する方法
(3)樹脂(A)のエマルジョン、アニオン性界面活性剤(B)、化合物(C)を水及び/又は溶媒に高濃度で溶解したものを別々に作製し、それらを充分攪拌しながら混合する方法
【0032】
〔アスファルトのタック防止剤の散布方法〕
本発明のアスファルトのタック防止剤の散布方法は、特に限定はないが、たとえばアスファルト乳剤に本発明のタック防止剤を接触させる散布方法が挙げられる。
アスファルトのタック防止剤はアスファルト乳剤と同時に散布してもよく、アスファルト乳剤散布後や乾燥後に、その上からタック防止剤を散布してもよい。
アスファルト乳剤は道路路盤や基層、表層に散布される他、法面や壁面等の吹き付け防水等にも利用されるが、本発明のアスファルトのタック防止剤は即時分解性も有することから、これらの用途にも利用することが可能である。
【0033】
散布の際は斑なく均一にする為、霧状にして散布することが好ましく、たとえば小規模の舗装であれば、エンジンスプレーヤ、ギアスプレーヤ、エア-スプレーヤ、ハンドスプレーヤ、エアレスポンプスプレーヤー等を用いてもよく、大規模舗装では、アスファルトスプレーヤ、アスファルトディストリビュータ、乳剤散布機能付きアスファルトフィニッシャ等のアスファルト乳剤を散布する装置を用いてもよい。
タック防止剤の散布量は、乳剤100部に対して10部以上が好ましい。10部未満ではアスファルト表面全体にタック防止剤が行き渡らず、斑が生じてタック防止効果が劣ることがある。
【実施例0034】
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例におけるアスファルトのタック防止剤の物性評価は、下記の方法にて実施した。
【0035】
〔樹脂(A)の製造方法〕
(製造例1)スチレンアクリル共重合物
イオン交換水73.5部、アルカンスルホン酸ナトリウム40%水溶液2.5部、スチレン85部、アクリル酸エチル15部からなるプレエマルションを調製した。
滴下ロート、撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにイオン交換水73部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら70℃まで昇温した。フラスコ内にプレエマルション10部、過硫酸カリウム1部を添加して重合を開始した。その後、残りのプレエマルションを210分かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、70℃で60分間攪拌し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し、200メッシュの篩を用いて凝集物を除去して固形分40%(=有効40%)のスチレン-アクリル酸エチルエマルジョン(以下、樹脂(A-1)という)を調製した。
【0036】
(製造例3)スチレンアクリル共重合物
イオン交換水72.5部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム40%水溶液2.5部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール1部、スチレン90部、アクリル酸メチル5部、アクリル酸5部からなるプレエマルションを調製した。
滴下ロート、撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにイオン交換水73部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら70℃まで昇温した。フラスコ内にプレエマルション10部、過硫酸カリウム1部を添加して重合を開始した。その後、残りのプレエマルションを210分かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、70℃で60分間攪拌し重合を終了した。その後、水酸化カリウムを用いてpHを8.5に調整した。得られた反応液を室温まで冷却し、200メッシュの篩を用いて凝集物を除去して固形分40%(=有効40%)のスチレン-アクリル酸メチル-アクリル酸カリウムエマルジョン(以下、樹脂(A-3)という)を調製した。
【0037】
製造例1と同様にして、製造例2、製造例4、製造比較例5及び6を実施した。以下、表1に示す。
【0038】
【0039】
〔アスファルトのタック防止剤の製造〕
実施例及び比較例で用いた界面活性剤(B)、化合物(C)は、次の通り。
B-1:カプリン酸カリウム(有効40%)
B-2:ヤシ脂肪酸カリウム(有効40%)
B-3:オレイン酸カリウム(有効20%)
B-4:アルカンスルホン酸ナトリウム(有効40%)
B-5:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(有効40%)
B-6:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩
B-7:POE(3)ラウリルエーテル燐酸ナトリウム(有効60%)
b-1:POE(25)オレイルエーテル硫酸ナトリウム(有効25%)
b-2:POE(9)ラウリルエーテル
C-1:塩化ナトリウム(比重:2.16)
C-2:塩化マグネシウム(比重:2.7)
C-3:グリセリン(比重:1.26)
【0040】
樹脂(A)エマルジョン/アニオン性界面活性剤(B)/化合物Cを、表2~4に示す質量比となるように、実施例1~13及び比較例1~6のアスファルトのタック防止剤を上記(3)の方法で製造した。
アスファルト乳剤のベタツキ防止性試験を次のように行った。その試験結果を表2~4に示す。
【0041】
〔ガラス転移温度〕
JIS-K7121記載の方法に準拠し、試料重量約10mg、昇温速度10℃/分の条件下で樹脂(A)のTgを測定した。
示差走査熱量計:パーキンエルマー製 JadeDSC
〔比重〕
JIS-Z8804-9、JIS-Z8807-6記載の方法に準拠し、温度20℃に於ける化合物(C)の比重を測定した。
密度比重計:京都電子工業製 DA-200
【0042】
〔アスファルトのベタツキ防止性試験〕
縦150mm×横150mm×厚さ1mmのスレートボード上に、アスファルト乳剤0.4L/m2を均一に塗布し、速やかにその上部よりスプレーでアスファルト乳剤量の10wt%のタック防止剤を散布した後24hr自然乾燥して供試体を得た。供試体を60℃の恒温槽に入れ4時間養生した。加熱した供試体を指触して、アスファルトのベタツキがあるかどうかを確認した。○以上を合格とした。
◎ 全くべたつかない
○ 僅かに指につく感触があるが、付着はしない
△ 指に付着しすぐに剥がれない
× アスファルトが指に付着して下地から剥がれる
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
表2及び3から分かるように、実施例1~13では、スチレン系単量体を含む重合性成分を重合してなる(A)及び融点が60℃以上のアニオン性界面活性剤(B)を含むために、本願の課題であるベタツキ防止を解決できている。
一方、表4から分かるように、アニオン性界面活性剤(B)を含まない場合(比較例1)、融点が60℃以上のアニオン性界面活性剤(B)を含まない場合(比較例2、3)、スチレン系単量体を含まない樹脂の場合(比較例4~6)には、本願の課題が解決できていない。