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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080655
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】音響トランスデューサユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240606BHJP
   H04R 1/24 20060101ALI20240606BHJP
   H04R 9/06 20060101ALI20240606BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240606BHJP
   H04R 23/02 20060101ALI20240606BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20240606BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20240606BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R1/24 Z
H04R9/06 A
H04R17/00
H04R23/02
H04R7/12 Z
G10K11/178
H04R1/34 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023200873
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】10 2022 132 092.8
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2022 134 731.1
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2023 104 021.9
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518063492
【氏名又は名称】ユーサウンド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】USOUND GMBH
【住所又は居所原語表記】Kratkystrasse 2, 8020 Graz (AT)
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ルスコーニ クレリチ ベルトラミ
(72)【発明者】
【氏名】フェルッチオ ボトーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ スポトル
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ノボトニー
【テーマコード(参考)】
5D004
5D005
5D012
5D016
5D018
5D021
5D061
【Fターム(参考)】
5D004AA09
5D004DD01
5D005BA02
5D005BA06
5D005BA08
5D005BA12
5D012DA04
5D012GA02
5D016AA07
5D018AB15
5D018AF16
5D021EE01
5D061FF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】動電型音響トランスデューサおよびMEMS音響トランスデューサからなる小型の音響トランスデューサユニットを作製する。
【解決手段】インイヤー型ヘッドフォン用の音響トランスデューサユニット(1)は、好ましくはメンブレン孔(42)のある第1メンブレン(10)を有する動電型音響トランスデューサ(2)と、第2メンブレン(30)を有する少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサ(3)とを備える音響トランスデューサユニット(1)を有する。トランスデューサユニット(1)は、MEMS音響トランスデューサ(3)によって生成された音波を、動電型音響トランスデューサ(2)を通り越して導くことができる、特に、動電型音響トランスデューサ(2)の第1メンブレン(10)を通り越して導くことができる音響ガイド部材(16)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、インイヤー型ヘッドフォン用の音響トランスデューサユニット(1)であって、
好ましくはメンブレン孔(42)のある第1メンブレン(10)を有する動電型音響トランスデューサ(2)と、
第2メンブレン(30)を有する少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサ(3)と、を備え、
前記動電型音響トランスデューサ(2)における前記MEMS音響トランスデューサ(3)によって生成された音波を、前記動電型音響トランスデューサ(2)の前記第1メンブレン(10)を通り越して特に導くことができる音響ガイド部材(16)を備えることを特徴とする、音響トランスデューサユニット。
【請求項2】
前記MEMS音響トランスデューサ(3)は、前記第2メンブレン(30)によって生成され得る音波が、前記メンブレン孔(42)を通じて前記音響トランスデューサユニット(1)から発せられることができるように、前記動電型音響トランスデューサ(2)に内蔵されることを特徴とする、請求項1に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項3】
前記動電型音響トランスデューサ(2)は、少なくとも1つの前記MEMS音響トランスデューサ(3)の周囲に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項4】
前記第1メンブレン(10)は、環状であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項5】
前記動電型音響トランスデューサ(2)は、環状であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項6】
前記MEMS音響トランスデューサ(3)は、円環体のスルーホール内に配置されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項7】
前記音響ガイド部材(16)は、音響ガイド管である、および/または、前記音響ガイド部材(16)は、前記動電型音響トランスデューサ(2)および/または前記メンブレン孔(42)を通じて延びることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項8】
前記音響ガイド部材(16)は、前記第1メンブレン(10)を越えて突出する、および/または、前記第1メンブレン(10)を越えて突出する拡張部として構成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項9】
前記音響ガイド部材(16)は、まっすぐであるまたは湾曲していることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項10】
前記音響トランスデューサユニット(1)が電子機器、特にインイヤー型ヘッドフォン(34)に規定通り配置された場合、前記音響ガイド部材(16)を、前記電子機器の周囲のハウジング部から距離を置いて配置するために、前記音響ガイド部材(16)の外側(62)に少なくとも1つのスペーサ(40)が配置されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスペーサ(40)は、迷路形状および/またはらせん形状であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項12】
前記音響ガイド部材(16)の外側(68)、および/または、前記スペーサ(40)には、制振材(69)が配置されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項13】
前記音響トランスデューサユニット(1)は、前記MEMS音響トランスデューサ(3)、および/または、電子機器ユニット(18)が配置されるトランスデューサキャビティ(41)を有し、
前記トランスデューサキャビティ(41)は、好ましくは、環状の前記動電型音響トランスデューサのスルーホールによって少なくとも一部形成されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項14】
前記トランスデューサキャビティ(41)は、前記動電型音響トランスデューサ(2)のマグネットユニット(52)、特にマグネット(7)に囲まれている、および/または、前記MEMS音響トランスデューサ(3)および/または前記電子機器ユニット(18)は、前記音響トランスデューサユニット(1)の軸方向において、前記マグネットユニット(52)、特に前記マグネット(7)の高さに配置されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項15】
前記音響トランスデューサユニット(1)の軸方向(21)において、前記MEMS音響トランスデューサ(3)、前記電子機器ユニット(18)、ホルダ(15)、および/または、前記音響ガイド部材(16)は、前記動電型音響トランスデューサ(2)のマグネットユニット(52)、特にマグネット(7)、前記動電型音響トランスデューサ(2)のコイル(8)、および/または、前記音響トランスデューサユニット(1)のトランスデューサハウジング(4)と重なり合う領域を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項16】
前記MEMS音響トランスデューサ(3)は、前記音響トランスデューサユニット(1)の前記ホルダ(15)、および/または、前記動電型音響トランスデューサ(2)の前記マグネットユニット(52)に配置される、および/または、前記ホルダ(15)および/または前記マグネットユニット(52)との接触面を有することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項17】
前記電子機器ユニット(18)は、前記MEMS音響トランスデューサ(3)のMEMSキャビティ(54)に隣接する電子機器フィードスルー(19)を有することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項18】
前記動電型音響トランスデューサ(2)の音響伝搬軸と、前記MEMS音響トランスデューサ(3)の音響伝搬軸とは、特に前記音響トランスデューサユニット(1)の軸方向において同軸に配置されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項19】
前記音響トランスデューサユニット(1)は、前記音響トランスデューサユニット(1)の接触面に好ましくは配置される少なくとも1つのシール部材(53)を有することを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項20】
前記音響トランスデューサユニット(1)は、可撓性の接続部および/またはプラグとして好ましくは構成される少なくとも1つの接続部(67)を有することを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項21】
前記音響トランスデューサユニット(1)は、前記動電型音響トランスデューサ(2)によって生成され得る少なくとも音波および/または環境ノイズを検出することができる少なくとも1つのマイクロフォン(62)を有することを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の音響トランスデューサユニット。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載の音響トランスデューサユニット(1)を備える電子機器、特に、インイヤー型ヘッドフォン(34)。
【請求項23】
前記電子機器は、出口(43)を有する、および/または、音響ガイド部材(16)は、メンブレン孔(42)から前記出口(43)まで延びることを特徴とする、請求項22に記載の電子機器。
【請求項24】
特に請求項22または23に記載の電子機器における、請求項1~22のいずれか一項に従い特に構成された音響トランスデューサユニット(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、インイヤー型(in-ear)ヘッドフォン用の音響トランスデューサユニットに関し、メンブレン孔のある第1メンブレンを有する動電型音響トランスデューサと、第2メンブレンを有する少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサとを備える音響トランスデューサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開公報第2022/121740号明細書は、動電型音響トランスデューサとMEMS音響トランスデューサとを備える音響トランスデューサユニットを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、動電型音響トランスデューサおよびMEMS音響トランスデューサからなる小型の音響トランスデューサユニットを作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立項に記載の音響トランスデューサユニット、電子機器、および音響トランスデューサユニットの使用によって達成される。
【0005】
本発明は、特にインイヤー型ヘッドフォンまたはオンイヤー型(on-ear)ヘッドホン用の音響トランスデューサユニットであって、メンブレン孔のある第1メンブレンを有する動電型音響トランスデューサと、第2メンブレンを有する少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサとを備える音響トランスデューサユニットを提案する。音響トランスデューサユニットは、他の電子機器にも使用することができる。電子機器は、上記のインイヤー型ヘッドフォンだけでなく、スマートフォン、ラップトップ、タブレット、スマートウォッチなどでもよい。
【0006】
音響トランスデューサユニットは、MEMS音響トランスデューサによって生成された音波を動電型音響トランスデューサを通り越して導くことができる音響ガイド部材をさらに備える。MEMS音響トランスデューサに生成された音波は、動電型音響トランスデューサの第1メンブレンを通り越して導かれてもよい。これによって、MEMS音響トランスデューサによって生成された音波と、動電型音響トランスデューサによって生成された音波とが影響し合うことを防止する。
MEMS音響トランスデューサおよび動電型音響トランスデューサの音波は、互いから分離されたままである。その結果、MEMS音響トランスデューサによって生成された音波が、動電型音響トランスデューサ上での、第1メンブレン上での、および/または動電型音響トランスデューサの音波に対して共鳴、屈曲、および/または干渉することを防止することができる。
【0007】
MEMS音響トランスデューサは、第2メンブレンによって生成された音波がメンブレン孔を通じて音響トランスデューサユニットから出ることができるように、動電型音響トランスデューサに都合よく内蔵される。このようにして、音響トランスデューサユニットは、小型化できる。メンブレン孔は、MEMS音響トランスデューサの音波が極力妨害されずに高音質のまま出ていくことを可能にする。
【0008】
また、動電型音響トランスデューサが少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサの周囲に配置されると有利である。それによって、動電型音響トランスデューサは、MEMS音響トランスデューサを囲むことになる。MEMS音響トランスデューサが動電型音響トランスデューサの内部に配置されるため、音響トランスデューサユニットは、小型になる。
【0009】
さらに、第1メンブレンが環状であると有利である。したがって、動電型音響トランスデューサの第1メンブレンによって、歪みのほとんどない音波を発することができる。特に、第1メンブレンは、好ましくは円形の孔を特に中心部に有する円板形状を有する。
【0010】
動電型音響トランスデューサが環状であると有利である。その結果、動電型音響トランスデューサは、少なくともMEMS音響トランスデューサの音波が少なくとも一部導かれるスルーホールを有する。動電型音響トランスデューサは、円環形状を有してもよい。
【0011】
また、MEMS音響トランスデューサが環状の動電型音響トランスデューサのスルーホール内に配置されると有利である。その結果、MEMS音響トランスデューサが動電型音響トランスデューサの内部に配置されるので、音響トランスデューサユニットは小型になる。このように、音響トランスデューサユニットのサイズは、動電型音響トランスデューサのサイズによって予め決められる。動電型音響トランスデューサが円環形状を有する場合、MEMS音響トランスデューサは、その円環体のスルーホール内に配置されてよい。その場合、動電型音響トランスデューサも同様に円環形状であり得る。動電型音響トランスデューサは、ドーナツ形状を有してもよい。
【0012】
音響トランスデューサユニットは、音響ガイド部材を有する。MEMS音響トランスデューサによって生成された音波は、音響ガイド部材を用いて導かれ得る。音響ガイド部材は、例えば、音響ガイド管または音響ガイド路であり得る。さらに、または、あるいは、音響ガイド部材が動電型音響トランスデューサを通じて、および/または、メンブレン孔、よって第1メンブレンを通じて延びると有利である。音響ガイド部材を用いて、MEMS音響トランスデューサの音波は、動電型音響トランスデューサ、および/または、動電型音響トランスデューサの第1メンブレン、および/または、他の構成部材を通り越して導かれることができる。その結果、動電型音響トランスデューサ上での、第1メンブレン上でのおよび/または動電型音響トランスデューサの音波に対する共鳴、屈曲、および/または、干渉を防止することができる。
【0013】
音響ガイド部材が第1メンブレンを越えて突出する、および/または、第1メンブレンを越えて突出する拡張部として構成されると有利である。その結果、MEMS音響トランスデューサの音波は、第1メンブレンを通り越して導かれることができる。
【0014】
さらに、音響ガイド部材がまっすぐであるまたは湾曲していると有利である。これによって、MEMS音響トランスデューサの音響は、所望の位置に導かれ得る。
【0015】
音響ガイド部材の外側に少なくとも1つのスペーサが配置されると有利である。音響トランスデューサユニットが規定通りに配置された場合、音響ガイド部材は、このスペーサのおかげで電子機器の周囲のハウジング部から距離を置くことができる。電子機器がインイヤー型ヘッドフォンである場合、ハウジング部は、イヤー部であり得る。さらに、または、あるいは、少なくとも1つのスペーサにより、音響ガイド部材は、ハウジング部に対して適所に保持または固定されたままでいることができる。これによって、音波が音響ガイド部材を出るときは、音響が定められた方向に常に発せられることが保証される。
【0016】
少なくとも1つのスペーサが迷路形状であるとさらに有利である。さらに、または、あるいは、少なくとも1つのスペーサがらせん形状であると有利である。少なくとも1つのスペーサは、ジグザグ形状であってもよい。このように、音響ガイド部材を通り越して導かれた音響、すなわち、動電型音響トランスデューサの音波は、らせん経路上または迷路形状のスペーサの迷路上に強制的に導かれる。これによって、音波の伝搬時間、音量、および/または、音波の周波数スペクトルが調整できるので、音響の品質に影響を与え得る。
【0017】
また、音響ガイド部材の外側に制振材を配置すると有利である。さらに、または、あるいは、制振材は、少なくとも1つのスペーサに配置されてもよい。好ましくは、特に、音響トランスデューサユニットが規定通りに配置されている場合、制振材は、音響ガイド部材と、ハウジング部、イヤー部、または、電子機器の一部との間に配置される。制振材のおかげで、動電型音響トランスデューサによって発せられた音波は、減衰されることができる、および/または、それらの音響に影響を与えることができる。
【0018】
また、音響トランスデューサユニットは、MEMS音響トランスデューサ、および/または、電子機器ユニットが配置されるトランスデューサキャビティを有すると有利である。その場合、トランスデューサキャビティは、環状の動電型音響トランスデューサのスルーホールによって少なくとも一部が形成され得る。トランスデューサキャビティは、音響トランスデューサユニットが小型の設計を有するように、動電型音響トランスデューサの内部に配置されてよい。トランスデューサキャビティは、MEMS音響トランスデューサ、および/または、電子機器ユニットを収容するスペースとなる。
【0019】
トランスデューサキャビティが動電型音響トランスデューサのマグネットユニット、特に、マグネットによって径方向に囲まれていると有利である。マグネットユニットは、トランスデューサキャビティを直接囲んでもよい。このようにして、マグネットユニットは、トランスデューサキャビティの境界を成す。これによって、部品の追加をなくすので、音響トランスデューサユニットは、小型かつ軽量の設計を有することができる。
【0020】
さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサ、および/または、電子機器ユニットが、音響トランスデューサユニットの軸方向において、マグネットユニット、特にマグネットの高さに配置されると有利である。よって、マグネットユニット、特にマグネットは、MEMS音響トランスデューサ、および/または、電子機器ユニットの周囲で径方向に延びる。よって、マグネットユニット、特にマグネットと、MEMS音響トランスデューサおよび/または電子機器ユニットとは、音響トランスデューサユニットの軸方向において、少なくとも部分的に、特に完全に重なり合う。
【0021】
音響トランスデューサユニットの軸方向において、MEMS音響トランスデューサ、電子機器ユニット、ホルダ、および/または音響ガイド部材が、動電型音響トランスデューサのマグネットユニット、特にマグネット、動電型音響トランスデューサのコイル、および/または、音響トランスデューサユニットのトランスデューサハウジングと重なり合う領域を有すると有利である。MEMS音響トランスデューサ、および、マグネットユニット、特にマグネットは、例えば、軸方向に重なり合う。よって、マグネットユニット、特にマグネットは、MEMS音響トランスデューサを囲み、軸方向の少なくとも1つの部分で重なり合う。
【0022】
MEMS音響トランスデューサが、音響トランスデューサユニットのホルダ、および/または、動電型音響トランスデューサのマグネットユニット、特に第1極部材に配置されると有利である。さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサ、および、ホルダ、および/または、マグネットユニット、特に第1極部材が接触面を有し得ると有利である。MEMS音響トランスデューサは、好ましくは、ホルダ、および/または、マグネットユニット、特に、第1極部材に接続される。例えば、MEMS音響トランスデューサは、ホルダ、および/または、マグネットユニット、特に第1極部材に接着剤で接着される。この場合、接触面は、少なくとも部分的に接着剤表面になり得る。
【0023】
電子機器ユニットが、MEMS音響トランスデューサのMEMSキャビティと接続する電子機器フィードスルーを有すると有利である。電子機器フィードスルーは、第2メンブレンが動作している間に圧力を均一にするために用いられる。電子機器フィードスルーを用いることにより、MEMS音響トランスデューサまたはインイヤー型ヘッドフォンの後部容積との接続がなされ得る、または、後部容積が形成され得る。
【0024】
さらに、動電型音響トランスデューサの音響伝搬軸と、MEMS音響トランスデューサの音響伝搬軸とが、特に、音響トランスデューサユニットの軸方向において同軸に配置されると有利である。
【0025】
音響トランスデューサユニットが少なくとも1つのシール部材を有すると有利である。少なくとも1つのシール部材は、音響トランスデューサユニットの周縁部に配置され得る。よって、音響トランスデューサユニットは、水分および/または音響が音響トランスデューサユニットに入り込むことができないように電子機器のハウジング、例えば、イヤー部に挿入され得る。このようにして、音響トランスデューサユニットは、特に2つの空間が水分および/または音波に対して密封されるよう互いから分離されることができる。シール部材は、例えば、好ましくはゴムまたはシリコーン製のシールリングであり得る。
【0026】
音響トランスデューサユニットが少なくとも1つの接続部を有すると有利である。さらに、電子機器ユニット、および/または、回路基板も少なくとも1つの接続部を有してよい。この少なくとも1つの接続部を介して、電気信号、および/または、電源を、音響トランスデューサユニットに送ることができる。少なくとも1つの接続部は、可撓性の接続部分として構成され得る。接続部は、例えば、フレキシブルプリント回路基板として構成され得る。よって、接続部は、異なる方向からでも接続できるよう、回転させることができる。さらに、または、あるいは、少なくとも1つの接続部は、プラグとして構成されてもよい。例えば、プラグと可撓性の接続部分とが配置されてもよい。例えば、プラグを通じて電源が供給され、可撓性接続部分を通じて電気信号が送られてよい。
【0027】
音響トランスデューサユニットが少なくとも1つのマイクロフォンを有していると有利である。このマイクロフォンは、動電型音響トランスデューサによって生成され得る少なくとも音波および/または環境ノイズを検出することができる。動電型音響トランスデューサの音波を検出することにより、動電型音響トランスデューサが正確に機能しているか否か、および/または、音波が高音質か否かをモニタすることができる。環境ノイズが記録された場合、アクティブノイズキャンセリングを行うことができる。環境ノイズをキャンセルして抑制する抗音響(anti-acoustic)が生成される。
【0028】
また、本発明は、特に、インイヤー型ヘッドフォン用の音響トランスデューサユニットであって、第1メンブレンを有する動電型音響トランスデューサと、第2メンブレンを有する少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサとを備える音響トランスデューサユニットを提案する。音響トランスデューサユニットは、前述の、および/または、後述の少なくとも1つの特徴を有し得る。
【0029】
本発明は、前述の音響トランスデューサユニットを有する電子機器、特にインイヤー型ヘッドフォンを提案する。前述の特徴は、個別に、または、いかなる組み合わせで存在してよい。電子機器は、スマートフォン、タブレット、ラップトップなどでもよい。
【0030】
電子機器が出口を有する、および/または、音響ガイド部材がメンブレン孔から出口まで延びると有利である。よって、音響ガイド部材は、電子機器を通じてMEMS音響トランスデューサの音波を導く。したがって、MEMS音響トランスデューサによって生成された音波と電子機器の内部との相互作用を防ぐ。
【0031】
本発明は、音響トランスデューサユニットの電子機器での使用を提案する。音響トランスデューサユニット、および/または、電子機器は、前述および/または後述の説明にしたがって有利に構成される。前述の特徴は、個別にまたは組み合わせて存在してよい。
【0032】
音響トランスデューサユニットは、例えば、インイヤー型ヘッドフォン、または、インイヤー型電話用(in-ear telephone)のウーファー、ツィーター、電子機器ユニット、および、音響ガイド部材を備え得る。ウーファーは、好ましくはその中心に、開かれた空間、および/または、スルーホール、および/または、トランスデューサキャビティを有するドーナツ形状を有し得る。
この空間にMEMSツィーターが配置される。
【0033】
音響ガイド部材(音響ガイド)は、音響をツィーターから直接インイヤー型ヘッドフォンまたは電子機器の出力に導くためにツィーターに接続される。これは、音響学上理にかなっている。なぜなら、これによって、ツィーターの高周波は、フィルタリングされずウーファーの音響によって乱されずにインイヤー型ヘッドフォンまたは電子機器の出口に到達できるからである。
【0034】
電子機器ユニットは、ツィーターの真下に装着されてよく、ツィーターに必要なオーディオ信号の増幅を行う。
【0035】
少なくとも1つのマイクロフォン(アクティブノイズキャンセリング用)が、フレキシブル基板またはプリント回路基板として音響ガイド部材に隣接した領域に配置されてよい。この場合、音響トランスデューサユニットは、少なくとも1つのマイクロフォンを有する。マイクロフォンは、動電型音響トランスデューサによって生成された音波を検出できるよう、動電型音響トランスデューサに割り当てられてよい。これによって、音質をモニタすることができる。さらに、または、あるいは、マイクロフォンを用いて環境ノイズを記録することもできる。このような環境ノイズから、動電型音響トランスデューサ、および/または、MEMS音響トランスデューサによって生成され得る抗音響が形成でき、環境ノイズを抑制するようキャンセルできるようになる。
【0036】
音響ガイド部材(音響ガイド)は、ツィーターの音響をインイヤー型ヘッドフォンまたは電子機器の出力に直接導くことができる。音響ガイド部材は、ウーファーの音響に適応し得る構造またはホルダに支持される。これによって微調整が容易になる。さらに、2つの異なる制振材の使用を可能にする。-標準的なメッシュ材を音響ガイド部材の出力に取り付けることができる。その結果、ウーファーおよびツィーターの両方の音響路にいくらかの摩擦(減衰)が起きる。-ウーファーをさらに減衰させるために、音響ガイド部材とイヤー部またはハウジング部との間のスペーサと、シール部材との間に発泡材を適用することができる。
【0037】
動電型ウーファーとMEMSツィーターとの組み合わせは、インイヤー型ヘッドフォンまたは電話用、または、電子機器用にコアキシャル型に設計される。
【0038】
「ドーナツ形状」の動電型ウーファーと、その中心に一体化されたMEMSツィーターとにより、インイヤー型ヘッドフォン用、インイヤー型電話用、または、電子機器用のコアキシャルスピーカーを形成する。
【0039】
環状のマグネットを有する動電型ウーファーと、その中心に一体化されたMEMSツィーターとにより、インイヤー型ヘッドフォン用、電話用、または、電子機器用のコアキシャルラウドスピーカーを形成する。
【0040】
「ドーナツ形状」の動電型ウーファーと、その中心に一体化されたMEMSツィーターとにより、インイヤー型ヘッドフォン用、電話用、または、電子機器用のコアキシャルラウドスピーカーを形成する。
【0041】
音響トランスデューサユニットは、「ドーナツ形状」の動電型ウーファーと、その中心に一体化されたMEMSツィーターと、マイクロフォン、特にフィードバックマイクロフォンとを有し、インイヤー型ヘッドフォン用、電話用、または、電子機器用のコアキシャルラウドスピーカーを形成する。
【0042】
音響ガイド部材は、音響管であってよい、または、音響管として構成されてよい。
【0043】
-(MEMS)ツィーターを、「ドーナツ形状」の動電型ウーファーに背面から挿入する。背面での単純な電気接続を可能にする。
-MEMSツィーターと電子機器ユニットとを動電型ウーファーに内蔵する。
-(MEMS)ツィーターおよび電子機器ユニットを動電型ウーファーに後側から組み込む。背面での単純な電気接続を可能にする。
-動電型ウーファー用の環状マグネットを、ラウドスピーカーモジュールの中心部の空きスペースにMEMSツィーターを内蔵したものと組み合わせる。
-ホルダは、音響ガイド部材(音響ガイド)の装着箇所;ウーファーメンブレンおよびMEMSツィーターの内側リング;ウーファーメンブレンおよびMEMSツィーターの内側メンブレン支持部、という3つの機能を兼ね備える。
-ホルダは、音響トランスデューサユニットの中心にあり、音響ガイド部材(音響ガイド)の支持部;ウーファーメンブレンおよびMEMSツィーターの内側リング;ウーファーメンブレンおよびMEMSツィーターの内側メンブレン支持部、という3つの機能を兼ね備える。これによって、ツィーターの音響路とウーファーメンブレンとが別々に最適化されることが可能になる。これは、効率的なアセンブリ方法でもある。
【0044】
-音響ガイド部材は、音響をインイヤー型ヘッドフォンまたはツィーター用電子機器の出力に直接送る。
-イヤープラグまたはイヤー部は、音響ガイド部材を適所に保持するスペーサを有する。
-音響ガイド部材を保持するウェブまたはスペーサは、ウーファーの音響出力を最適化する形状およびサイズに調整され得る。
-従来の出力ネットワークまたはシール部材に加えて、ブリッジまたはスペーサにより、さらなる制振発泡材をウーファーの音響路に内蔵することを可能にする。
【0045】
本発明のさらなる利点は、以下の実施形態に記載され、それらは以下の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】動電型音響トランスデューサとMEMS音響トランスデューサとを備える音響トランスデューサユニットの断面図。
図2】MEMS音響トランスデューサの断面図。
図3】ヘッドフォンハウジング内に音響トランスデューサユニットを有するインイヤー型ヘッドフォンの断面図。
図4】動電型音響トランスデューサの断面図。
図5】MEMS音響トランスデューサを伴う動電型音響トランスデューサの断面図。
図6】MEMS音響トランスデューサの平面図。
図7】スペーサの一例示的実施形態および少なくとも1つのシール部材を備えたインイヤー型ヘッドフォンまたは音響トランスデューサユニットの断面図。
図8】マイクロフォンを備えた音響トランスデューサユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、動電型音響トランスデューサ2とMEMS音響トランスデューサ3とを備える音響トランスデューサユニット1を示す。音響トランスデューサユニット1は、例えば、インイヤー型ヘッドフォン34に用いられることができる。このようなインイヤー型ヘッドフォン34は、例えば、電話をするなどのコミュニケーションをとるための、または、音楽を聴くための補聴器として取り付けられて用いられる。図3に示すように、インイヤー型ヘッドフォン34は、少なくとも一部が耳の耳道に挿入されることができる。音響トランスデューサユニット1は、スマートフォン、または、他の電子機器にも用いられることができる。図3に示すインイヤー型ヘッドフォン34は、電子機器の1つの例である。また、音響トランスデューサユニット1は、オンイヤー型ヘッドフォン、スマートフォン、ラップトップ、タブレット、スマートウォッチなどにも用いられることができる。
【0048】
音響トランスデューサユニット1は、軸方向21と、径方向22とを有する。
【0049】
音響トランスデューサユニット1は、トランスデューサハウジング4を有する。トランスデューサ2、および/または、MEMS音響トランスデューサ3は、少なくとも部分的にトランスデューサハウジング4内に配置されている。この場合、動電型音響トランスデューサ2は、ウーファーとも称され得る。なぜなら、本音響トランスデューサユニット1において、動電型音響トランスデューサ2またはウーファーは、主に低周波音響を生成するために設けられているからである。このような低周波音は、例えば、約20Hzから1000Hzまでの周波数を有する。よって、本音響トランスデューサユニット1において、動電型音響トランスデューサ2は、ウーファーとして機能する。他方で、本音響トランスデューサユニット1における少なくとも1つのMEMS音響トランスデューサ3は、ツィーターと称され得る。MEMS音響トランスデューサ3は、音響トランスデューサユニット1において、特に、動電型音響トランスデューサ2またはウーファーの周波数より高い周波数の音響を生成する。例えば、MEMS音響トランスデューサ3は、およそ500Hzから20kHzまでの周波数の音響または音を生成する。本明細書では、したがって、動電型音響トランスデューサ2は、ウーファーと称されてもよい。本明細書では、MEMS音響トランスデューサ3は、ツィーターと称されてもよい。
【0050】
MEMS音響トランスデューサ3の詳細は、図2に示されている。
【0051】
動電型音響トランスデューサ2またはウーファー2は、少なくとも1つの極部材5および6を有する。本例示的実施形態によれば、ウーファー2は、第1極部材5、および、第2極部材6を有する。2つの極部材5および6の間には、好ましくは永久磁石であるマグネット7が配置されている。マグネット7は、磁界を生成し、2つの極部材5および6は、マグネット7の磁束を誘導する、および/または、束ねる。少なくとも1つの極部材5および6と、マグネット7とによってマグネットユニット52が形成される。マグネットユニット52、特に少なくとも1つの極部材5および6、および/または、マグネット7は、環状であり得る。
【0052】
動電型音響トランスデューサ2とMEMS音響トランスデューサ3とは、同軸に配置されている。動電型音響トランスデューサ2およびMEMS音響トランスデューサ3の音響伝搬方向も同軸であってよい。図1では、動電型音響トランスデューサ2およびMEMS音響トランスデューサ3の音響は、この場合、軸方向21である上方に発せられる。よって、対応する音響伝搬方向も、この場合、軸方向21である上方に向いている。
【0053】
図に示された2つの極部材5および6は、音響トランスデューサユニット1の軸方向21に対して互いから距離を置いて配置されている。さらに、または、あるいは、2つの極部材5および6は、音響トランスデューサユニット1の径方向22において互いから距離を置いて配置されている。径方向22において互いから距離を置いて配置された2つの極部材5および6の間には、マグネットギャップ14がさらに配置されている。さらに、または、あるいは、マグネットギャップ14は、第1極部材5とマグネット7との間に、径方向22に配置されている。このマグネットギャップ14には、ウーファー2のコイル8が配置されている。コイル8は、マグネットギャップ14内に突出する。電気信号がコイル8に印加されることによってコイル8に電流が流れる。動電型音響トランスデューサ2がラウドスピーカーとして動作する場合、電気信号は、動電型音響トランスデューサ2またはウーファー2によって生成された音響に対応する。同様に、コイル8内で電気信号によって生成された電流も、マグネット7および/または極部材5および6の磁界と協働する磁界に至る。マグネット7および/または極部材5および6が固定されているのでコイル8が動く。
【0054】
コイル8の動きがメンブレンユニット9に伝わり、メンブレンユニット9の上にある空気がコイル8の動きにしたがって振動する。その結果、メンブレンユニット9は、音響を生成する。
【0055】
音響を生成するために、メンブレンユニット9は、連結ユニット11によってコイル8に接続された第1メンブレン10を有し、その結果、コイル8の動きが第1メンブレン10に伝えられ得る。動電型音響トランスデューサ2は、主に低周波音響を生成するために用いられるので、第1メンブレン10は、ウーファーメンブレンとも称され得る。メンブレンユニット9は、内側メンブレンキャリア12と、外側メンブレンキャリア13とをさらに有する。内側メンブレンキャリア12は、径方向22内側に配置され、外側メンブレンキャリア13は、径方向22外側に配置される。第1メンブレン10は、2つのメンブレンキャリア12および13の間に装着される。よって、第1メンブレン10、および/または、メンブレンユニット9は、穴の空いた円板形状を有する。メンブレンユニット9、および/または、第1メンブレン10は、中心領域、特に、第1メンブレン10および/またはメンブレンユニット9の中心に設けられたメンブレン孔42を有する。さらに、内側メンブレンキャリア12は、メンブレン孔42を囲む。内側メンブレンキャリア12、および/または、外側メンブレンキャリア13は、環状であってよい。その結果、第1メンブレン10は、中心領域に円形の孔を有する円形状を有する。外側メンブレンキャリア13は、トランスデューサハウジング4の上に配置される。内側メンブレンキャリア12は、ホルダ15の上に配置される。第1メンブレン10またはメンブレンユニット9は、環状であり得る。
【0056】
音響トランスデューサユニット1は、MEMS音響トランスデューサ3が配置されるトランスデューサキャビティ41をさらに有する。ウーファー2もトランスデューサキャビティ41を有してよい。トランスデューサキャビティ41は、MEMS音響トランスデューサ3を省いた図4によりよく示されている。よって、ウーファー2は、MEMS音響トランスデューサ3の周囲に延在する。MEMS音響トランスデューサ3は、動電型音響トランスデューサ2内に配置される。MEMS音響トランスデューサ3は、動電型音響トランスデューサ2の中心に配置される。動電型音響トランスデューサ2は、MEMS音響トランスデューサ3を囲む。これによって、音響トランスデューサユニット1の非常に小型な設計が成り立つ。
【0057】
本例示的実施形態によれば、第1極部材5、および/または、マグネット7、または、マグネットユニット52は、トランスデューサキャビティ41を囲む。トランスデューサキャビティ41は、第1極部材5、および/または、マグネット7、または、マグネットユニット52内に配置される。
【0058】
本例示的実施形態によれば、少なくともMEMS音響トランスデューサ3およびマグネットユニット52、特にマグネット7および/または第1極部材5は、音響トランスデューサユニット1の軸方向21において同じ高さに配置される。MEMS音響トランスデューサ3およびマグネットユニット52、特にマグネット7は、軸方向21において重なり合う領域を有する。よって、MEMS音響トランスデューサ3およびマグネットユニット52、特にマグネット7は、軸方向21において重なり合う。
【0059】
図1にさらに示すように、MEMS音響トランスデューサ3と動電型音響トランスデューサ2とは、同軸に配置される。動電型音響トランスデューサ2は、MEMS音響トランスデューサ2の周りに径方向22に配置される。
【0060】
動電型音響トランスデューサ2、特に、マグネットユニット52は、さらに、円環形状を有する、または、円環体と同様である。あるいは、動電型音響トランスデューサ2は、特にマグネットユニット52は、環形状を有する。動電型音響トランスデューサ2は、音響トランスデューサユニット1の外層を成し、MEMS音響トランスデューサ3は、コアを成す。動電型音響トランスデューサ2は、ドーナツ形状を有し得る。以下に説明するメンブレン孔42、および/または、トランスデューサキャビティ41、および/または、音響キャビティ17は、円環体またはドーナツまたは動電型音響トランスデューサ2の開口部またはスルーホールを形成する。メンブレン孔42は、図4によりよく示されている。音響キャビティ17は、音質に影響を与えるので、好ましくはできるだけ小さく形成されるか、または、省かれる。
【0061】
音響トランスデューサユニット1は、さらに、ホルダ15を備える。本例示的実施形態によれば、ホルダ15は、第1極部材5またはマグネットユニット52の上に配置または載置される。ホルダ15の上に、内側メンブレンキャリア12がさらに配置される。よって、ホルダ15は、内側メンブレンキャリア12と第1極部材5とを接続する。ホルダ15は、内側メンブレンキャリア12を支持する。MEMS音響トランスデューサ3は、さらに、内側メンブレンキャリア12、および/または、第1極部材5に少なくとも一部が配置される。MEMS音響トランスデューサ3、第1極部材5、内側メンブレンキャリア12、および/または、音響ガイド部材16(以下に説明する)は、ホルダ15に配置され得る。
ホルダ15は、好ましくはプラスチック製である。
【0062】
ホルダ15には、音響ガイド部材16がさらに配置される。例えば、音響ガイド部材16は、ホルダ15に接着剤で接着されてよい。MEMS音響トランスデューサ3によって生成された音響は、音響ガイド部材16によって導かれ得る。したがって、ウーファー2の音波より高い周波数の音響が、音響ガイド部材16によって導かれる。音響ガイド部材16を用いて、音響は、特に、動電型音響トランスデューサ2の音響を通り越して導かれ得る。したがって、機器における干渉または屈曲を防止する。図3によれば、MEMS音響トランスデューサ3の音響は、したがって耳道の中に直接発せられる、または、導かれる。音響ガイド部材16は、好ましくは円形の断面を有する筒または管として構成されてよい。音響ガイド部材16は、音響ガイド路であってもよい。音響ガイド部材16は、さらに、中空のガイドである。
【0063】
音響ガイド部材16は、ウーファー2の音波が音響ガイド部材16の周囲に導かれるようにさらに配置される。他方で、MEMS音響トランスデューサ3の音波は、音響ガイド部材16内に導かれる。したがって、音響ガイド部材16は、動電型音響トランスデューサ2の音波とMEMS音響トランスデューサ3の音波とを互いから分離させることができる。
【0064】
さらに、音響ガイド部材16は、ウーファー2および/またはツィーター3と同軸に配置されてよい。音響ガイド部材16は、メンブレン孔42を介して第1メンブレン10を貫通する。第1メンブレン10は、音響ガイド部材16の周囲に配置される。
【0065】
しかしながら、ウーファー2およびツィーター3は、好ましくは同軸に配置される。音響ガイド部材16は、さらに、ツィーター3および/またはウーファー2に対して、径方向22にオフセット、すなわち、中心を外れていてよい。これは、他の構成要素のための空間が必要な場合に有利である。音響ガイド部材16のおかげで、ツィーター3の音響は、他の構成要素を通り越して導かれることができる。この目的のために、音響ガイド部材16は、ウーファー2および/またはツィーター3と同軸でなくなるように、径方向にオフセットされてよい。
【0066】
さらに、音響キャビティ17が設けられてよいが、音響キャビティ17は、ここではMEMS音響トランスデューサ3と音響ガイド部材16との間に配置される。音響ガイド部材16もツィーター3の前部容積を少なくとも部分的に形成し得る。
【0067】
電子機器ユニット18は、好ましくは、少なくとも部分的にツィーター3の後部容積を形成する電子機器フィードスルー19を有する。また、電子機器フィードスルー19は、圧力を均一化することができる。
【0068】
圧力を均一にすべく、第1極部材5は、さらに、または、あるいは、孔または穴として構成され得る少なくとも1つの極フィードスルー20を有する。図にはいくつかの極フィードスルー20aおよび20bが示されている。
【0069】
図からわかるように、音響トランスデューサユニット1は、回転対称であるよう構成される。特に、動電型音響トランスデューサ2、特にマグネットユニット52、マグネット7、第1極部材5および/または第2極部材6、コイル7、メンブレンユニット9、第1メンブレン10、および/または、内側メンブレンキャリア12および/または外側メンブレンキャリア13は、円形および/または回転対称である。さらに、または、あるいは、ホルダ15は、円形および/または回転対称である。さらに、または、あるいは、本体11は、円形および/または回転対称である。さらに、または、あるいは、トランスデューサハウジング4は、円形および/または回転対称である。
【0070】
さらに、図からわかるように、MEMS音響トランスデューサ3とマグネットユニット52、特に第1極部材5との間に、第1の接触面56が配置および/または形成されている。よって、MEMS音響トランスデューサ3は、マグネットユニット52、特に第1極部材5に配置される。さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサ3とホルダ15との間に、第2の接触面57が配置および/または形成され得る。よって、MEMS音響トランスデューサ3は、ホルダ15に配置される。
【0071】
MEMS音響トランスデューサ3は、第1の接触面56および/または第2の接触面57によって、マグネットユニット52、特に第1極部材5、および/または、ホルダ15に接続され得る。第1の接触面56および/または第2の接触面57は、例えば、MEMS音響トランスデューサ3がマグネットユニット52、特に第1極部材5、および/または、ホルダ15に接着されるような接着剤表面であってよい。
【0072】
さらに、MEMS音響トランスデューサ3は、ホルダ15および/またはマグネットユニット52、特に第1極部材5における第1メンブレン10と面していない側に当接する。よって、ホルダ15、および/または、マグネットユニット52、特に第1極部材5の一方の側に第1メンブレン10が配置され、他方の側にMEMS音響トランスデューサ3が配置される。
【0073】
簡潔さのため、少なくとも1つの前出の図面ですでに述べた特徴については再度説明しないものとする。さらに、特徴は、前出の図面または後出の図面の少なくとも1つで説明されるもののみとしてもよい。またさらに、簡潔さのため、同じ特徴には同じ参照符号を用いている。また、明確さのため、以降の図面では、すべての特徴が示されない、および/または、参照符号を付されないこともある。しかしながら、前出の図面の1つ以上に示された特徴は、それらの図面、または、以降の図面の1つ以上にも存在し得る。さらにまた、明確さのため、前出の図面または以降の図面の1つ以上において、特徴のみが示されてよい、および/または、参照符号を付して示されてよい。
とはいえ、以降の図面の1つ以上で特徴のみで示されたものが前出の図面ですでに示されていることはあり得る。
【0074】
図2aは、MEMS音響トランスデューサ3の断面図である。ツィーター3は、キャリア基板23と、キャリア基板23に配置された少なくとも1つのキャリア層24とを有する。キャリア基板23、および/または、少なくとも1つのキャリア層24には、少なくとも1つの圧電層25が配置される。この場合のツィーター3は、2つのキャリア層24aおよび24bと、2つの圧電層25aおよび25bとを有する。少なくとも1つのキャリア層24および少なくとも1つの圧電層25とが軸方向21において他方の上に1つ配置される。
【0075】
少なくとも1つの圧電層25は、印加された電気信号にしたがって振れるので、その結果、空気が振動して音響が生成される。
【0076】
ツィーター3は、少なくとも1つのスプリング部材27によって少なくとも1つの圧電層25および/またはキャリア層24に接続された連結部材26をさらに有する。連結部材26は、少なくとも1つの圧電層25の振れをMEMSメンブレンユニット29に伝えることができる。連結部材26とMEMSメンブレンユニット29との間に連結板28が配置されることにより、連結部材26によって伝えられた振れがMEMSメンブレンユニット29に平面的に伝えられる。
【0077】
MEMSメンブレンユニット29は、少なくとも1つの圧電層25の振れにしたがって音響が生成されるよう空気を振動させることができる少なくとも1つの第2メンブレン30を有する。さらに、MEMSメンブレンユニット29は、第2メンブレン30が載置されるMEMSメンブレンフレーム31を有してよい。MEMSメンブレンフレーム31は、円形または角形であってよい。
【0078】
MEMS音響トランスデューサ3は、MEMSメンブレンユニット29および/またはキャリア基板23の上に配置されたカバー32をさらに有する。カバー32は、ツィーター3のキャップとなる。カバー32は、生成された音響が出て行けるようなカバーフィードスルー33を有する。カバーフィードスルー33も同様に、少なくとも部分的に、特に完全に、ツィーター3の前部容積を形成する。
【0079】
MEMS音響トランスデューサ3は、MEMSキャビティ54をさらに有する。図1に示すように、MEMS音響トランスデューサ3が音響トランスデューサユニット1に配置された場合、電子機器フィードスルー19がMEMSキャビティ54と接続する。よって、図3からわかるように、MEMSキャビティ54は、クロージャ部キャビティ45と接触する接点を有する。その結果、電子機器フィードスルー19および/またはクロージャ部キャビティ45は、MEMS音響トランスデューサ3の後部容積を形成する。
【0080】
MEMS音響トランスデューサ3は、MEMSプリント回路基板60をさらに有する。このMEMSプリント回路基板60は、MEMS音響トランスデューサ3に割り当てられている。MEMSプリント回路基板60は、例えば、電気信号を圧電層24に送ることができるか、または、MEMSプリント回路基板60によって電気信号を分布させることができる。MEMSプリント回路基板60は、少なくとも部分的にMEMS音響トランスデューサ3の後部容積を形成し得る回路基板キャビティ61も有する。キャリア基板23は、MEMSプリント回路基板60の上にも配置され得る。
【0081】
図3は、インイヤー型ヘッドフォン34の断面図である。音響を生成することができる音響トランスデューサユニット1は、インイヤー型ヘッドフォン34内に配置される。インイヤー型ヘッドフォン34は、電子機器の一例示的実施形態である。電子機器は、オンイヤー型ヘッドフォン、スマートフォン、ラップトップ、タブレット、スマートウォッチなどであってもよい。
【0082】
図に示す電子機器としてのインイヤー型ヘッドフォン34は、音響トランスデューサユニット1が配置されるヘッドフォンハウジング35を有する。本例示的実施形態によれば、ヘッドフォンハウジング35は、2つの部分からなる。ヘッドフォンハウジング35は、インイヤー型ヘッドフォン34が目的どおり使用されて操作される場合、ユーザの耳道に挿入されるイヤー部36を有する。例えば、シリコーン製のアタッチメントがイヤー部36を覆うように取り付けられてよい。アタッチメントは、少なくとも部分的に耳道に挿入されるイヤープラグを形成する。アタッチメントは、柔軟な肌あたりのよい材料からできていてよい。さらに、アタッチメントまたはイヤープラグが耳道に合うよう、または、すでに耳道に合わされているよう構成されると有利である。
【0083】
イヤー部36は、動電型音響トランスデューサ2およびMEMS音響トランスデューサ3の音響がイヤー部36またはヘッドフォンハウジング35から出てくる出口43をさらに有する。出口43は、ゴミが入らないようシール部材38によって好都合に密封されている。シール部材38は、例えば、音響は通すことができるがゴミは阻止するようなスクリーン、ネット、または、発泡材であってよい。
【0084】
さらに、MEMS音響トランスデューサ3の音響が出口43に導かれ得るように、音響ガイド部材16が出口43に通じている。
【0085】
図からもわかるように、動電型音響トランスデューサ2の音響が音響ガイド部材16を通り越すように、音響ガイド部材16は配置される。他方で、MEMS音響トランスデューサ3の音響は、音響ガイド部材16によって導かれる。音響は、音響ガイド部材16内を導かれる。ヘッドフォンハウジング35内では、ウーファー2の音波とツィーター3の音波とは、音響ガイド部材16によって互いから分離されたままである。
【0086】
さらに、イヤー部36と音響ガイド部材16との間には、少なくとも1つのスペーサ40が配置されている。図3には2つのスペーサ40aおよび40bが示されている。よって、動電型音響トランスデューサ2の音響は、音響ガイド部材16を通り越して導かれることができる。また、これにより、音響ガイド部材16は、特に同軸的に、イヤー部36への指向性をもったままでいることができる。
よって、音響は、耳道内に正しく導かれる。
【0087】
ヘッドフォンハウジング35は、インイヤー型ヘッドフォン34を閉じるクロージャ部37をさらに有する。これによって、水分または水が音響トランスデューサユニット1に入るのを防ぐことができる。クロージャ部37は、例えば、バッテリまたは他の電子機器からの電線を音響トランスデューサユニット1に送ることを可能にする電線フィードスルー39をさらに有し得る。例えば、無線接続によって音響トランスデューサユニット1にオーディオ信号を供給する場合は、電線フィードスルー39は省略してよい。よって、クロージャ部37は、水分が入らないように閉じられ得る。あるいは、音響トランスデューサユニット1を操作する間に2つの音響トランスデューサ2および3の圧力を均一にするための開口があると好都合な場合もある。
【0088】
さらに、イヤー部36は、イヤー部キャビティ44を有する。イヤー部36は、ウーファー2の前部容積を形成する、および/または、ウーファー2の音波は、イヤー部キャビティ44を介して出口43に導かれる、および/または、音響ガイド部材16を通り越す。また、クロージャ部37は、ツィーター3および/またはウーファー2の後部容積を形成し得るクロージャ部キャビティ45を有する。
【0089】
イヤー部36は、トランスデューサハウジング4、および/または、外側メンブレンキャリア13をさらに囲む。例えば、トランスデューサハウジング4および/または外側メンブレンキャリア13と、イヤー部36および/またはクロージャ部37との間に接着剤による接着がなされてよい。音響トランスデューサユニット1が、図示されない保護部材を有すると有利である。この保護部材は、トランスデューサハウジング4の周囲に配置され、少なくとも一部外側から第1メンブレン10の上を径方向22に延びる。これによって、第1メンブレン10は保護される。保護部材は、第1メンブレン10から軸方向に距離を置いて配置される。前述の接着剤による接着は、保護部材と、イヤー部36および/またはクロージャ部37との間に存在してもよい。
【0090】
さらに、本例示的実施形態では、音響ガイド部材16および/または少なくとも1つのスペーサ40には制振材69が配置される。図からさらにわかるように、音響トランスデューサユニット1が規定どおりの電気機器、例えば、図示されたインイヤー型ヘッドフォン34に配置された場合、制振材69は、音響ガイド部材16と、電子機器の周囲のハウジングまたは図示のイヤー部36との間に配置される。動電型音響トランスデューサ2によって発せられた音波は、音波の経路における制振材69を必然的に通過して出口43へと向かう。このように制振材が音響に影響を与えることによって、音質が向上し得る。制振材69は、例えば、発泡材またはメッシュであってよい。
【0091】
図4aは、動電型音響トランスデューサ2の断面図である。明確さのため、ここではMEMS音響トランスデューサ3を省略している。
【0092】
トランスデューサキャビティ41は、図ではウーファー2の中心部に配置されている。第1極部材5は、トランスデューサキャビティ41の周辺に延在してその境界を成している。MEMS音響トランスデューサ3は、トランスデューサキャビティ41内に配置される。第1極部材5には、ツィーター3がその内部に音波を発する音響キャビティがさらに配置される。図1によれば、好ましくは音響ガイド路として構成された音響ガイド部材16は、音響キャビティ17と隣接している。
【0093】
ウーファー2は、コイル8および/または第1メンブレン10が軸方向21に振動し得る振動キャビティ46をさらに有する。振動キャビティ46を用いることにより、第1メンブレン10は、振動するときに、第1極部材5の方向、および/または、ツィーター3の方向に動くことができる。コイル8の領域では、振動キャビティ46は、マグネットギャップ14へと入り込む。
【0094】
メンブレン孔42も示されている。音響キャビティ17と共に、トランスデューサキャビティ41、および/または、少なくとも部分的に振動キャビティ46、および、メンブレン孔42は、動電型音響トランスデューサ2の開口部を形成している。音響ガイド部材16もメンブレン孔42を介して導かれる。
【0095】
図5は、動電型音響トランスデューサ2、3の断面図である。明確さのため、ほとんどの参照符号を省略している。MEMS音響トランスデューサ3も詳細に示されている。より詳細な特徴は、図2に示されている。図からわかるように、第2メンブレン30は、メンブレン孔42の表面と少なくとも同じ大きさの表面を有する。ここでは、第2メンブレン30の表面は、メンブレン孔42の表面より大きい。
【0096】
さらに、第2メンブレン30の表面は、カバーフィードスルー33および/または音響キャビティ17の表面と少なくとも同じ大きさである。さらに、図1と共に図5を見てわかるように、第2メンブレン30の表面の大きさは、音響ガイド部材16の断面より大きく、音響キャビティ17の断面と少なくとも同じ大きさである。
【0097】
好ましくは、マグネットユニット52、特に第1極部材5におけるカバーフィードスルー33および音響キャビティ17は、合同であるおよび/または同一平面にある。
【0098】
図6は、MEMS音響トランスデューサ3の平面図である。本例示的実施形態では、MEMS音響トランスデューサ3は、多角形を有する。図では、MEMS音響トランスデューサ3は、六角形である。したがって、MEMS音響トランスデューサ3は、6つのキャリア層24a~24fを有する。また、MEMS音響トランスデューサ3は、図では、キャリア層24a~24fによって隠れているが、6つの圧電層25も有する。圧電層25およびキャリア層24a~24fのそれぞれは、スプリング部材27a~27fによって連結部材26に接続されている。第2メンブレン30を有するMEMSメンブレンユニット29は、図に示されるキャリア基板23に配置される。MEMSメンブレンユニット29および第2メンブレン30は、キャリア基板23と一致する形状を有する。特に、この場合、MEMSメンブレンユニット29および第2メンブレン30は、六角形である。図に示された形状により、MEMS音響トランスデューサ3は、円形のトランスデューサキャビティ41に適応され得る。第2メンブレン30は、複数のキャリア層24および圧電層25によって、より激しく振れることができる。これによって、音圧を上げることができる。
【0099】
図7は、インイヤー型ヘッドフォン34、または、スペーサ40の一例示的実施形態および少なくとも1つのシール部材53を備えた音響トランスデューサユニット1の断面図である。簡潔さのため、この場合に最も重要な特徴にのみ参照符号を付している。また、図3と比較すると、クロージャ部は示されていない。
【0100】
この場合、音響トランスデューサユニット1は、ヘッドフォンハウジング35に挿入された音響トランスデューサユニット1を密封することができる少なくとも1つのシール部材53を備える。図から分かるように、シール部材53は、トランスデューサハウジング4に配置される。シール部材53がトランスデューサハウジング4に配置された場合、図3によれば、イヤー部キャビティ44からの水分がクロージャ部キャビティ45に入るのを防ぐことができる。図に示すように、シール部材53は、環状であってよい。さらに、または、あるいは、少なくとも1つのシール部材53のおかげで、イヤー部キャビティ44とクロージャ部キャビティ45との間で音響が交換されるのを防ぐこともできる。図では、シール部材53が、さらに、トランスデューサハウジング4のハウジング溝55内にも配置されている。シール部材53は、例えば、ゴムまたはシリコーンリングであってよい。音響トランスデューサユニット1は、また、軸方向に互いに距離を置いて配置された複数のシール部材53をさらに備えてよい。図には、2つのシール部材53aおよび53bが示されている。少なくとも1つのシール部材53は、シールリングとして形成されてよい。少なくとも1つのシール部材53、および/または、ハウジング溝55は、音響トランスデューサユニット1および/またはトランスデューサハウジング4の周縁部70に配置されてよい。
【0101】
さらに、図には、スペーサ40の一例示的実施形態が示されている。少なくとも1つのスペーサ40は、音響ガイド部材16の外側68に配置される。
【0102】
図では、少なくとも1つのスペーサ40は、動電型音響トランスデューサ2によって生成された音響が出口43に導かれるよう、構成されるおよび/または配置されている。ここで、スペーサ40は、音響ガイド部材16の周囲に配置されたらせん形状を有し、音響ガイド部材16に沿って軸方向21に延びている。これによって、動電型音響トランスデューサ2の音響が、直接、特に最短経路で、出口43に到達することを防ぐ。これによって、音響の経路は、長くなるかまたは修正され、音響は変化し、その結果、調整され得る。さらに、または、あるいは、複数のスペーサ40は、軸方向21および径方向22に互いから距離を置いて配置されるので、音響は、ジグザグの経路で出口43に達し得る。
【0103】
よって、少なくとも1つのスペーサ40は、動電型音響トランスデューサ2によって生成された音響のための迷路を形成するよう構成され得る。迷路のおかげで、出口43に向かう経路で音響を歪めることができ、よって、音響を修正できる。電子機器がインイヤー型ヘッドフォン34でない場合は、迷路形状のスペーサ40は、音響ガイド部材16と、イヤー部36またはハウジング部との間に配置される。迷路を形成すべく、複数のスペーサ40は、軸方向21および/または径方向22に互いから距離を置いて都合よく配置され得る。
【0104】
図8は、マイクロフォン62を備えた音響トランスデューサユニット1の断面図である。音響トランスデューサユニット1は、電子機器ユニット18、MEMS音響トランスデューサ3、および、回路基板58をさらに備える。電子機器ユニット18の構成要素も回路基板58内に配置されてよい。図で概略的に示されている電子機器ユニット18は、図2に示された回路基板キャビティ61を有するMEMSプリント回路基板60であってよい。電子機器フィードスルー19は、回路基板の回路基板キャビティ61であってよい。本実施形態のMEMSプリント回路基板60、電子機器ユニット18、および/または、プリント回路基板58は、他の図の実施形態にも存在し得る。したがって、音響トランスデューサユニット1は、電子機器ユニット18、MEMSプリント回路基板60、および/または、プリント回路基板58を備えてよく、電子機器ユニット18の構成要素は、特に、MEMSプリント回路基板60および/またはプリント回路基板58内に配置されてよい。図に示す電子機器ユニット18と、MEMS音響トランスデューサ3とで、図2のMEMS音響トランスデューサ3を形成し得るが、この場合の電子機器ユニット18は、MEMSプリント回路基板60となる。
【0105】
さらに、図に示す音響トランスデューサユニット1は、少なくとも1つのマイクロフォン62を備え、図には2つのマイクロフォン62aおよび62bが示されている。ここでは、少なくとも1つのマイクロフォン62は、動電型音響トランスデューサ2によって発せられた音波が少なくとも1つのマイクロフォン62に届くように配置されている。この場合、少なくとも1つのマイクロフォン62は、音波が少なくとも1つのマイクロフォン62に直接届くように第1メンブレン10に面してよい。少なくとも1つのマイクロフォン62は、フィードバックマイクロフォンであり得る。動電型音響トランスデューサ2によって発せられた音波の音質は、少なくとも1つのマイクロフォン62によってモニタされ得る。さらに、または、あるいは、少なくとも1つのマイクロフォン62は、音響トランスデューサユニット1の環境、および/または、電子機器、例えば、オンイヤー型ヘッドフォン、スマートフォン、タブレット、ラップトップなどの環境における環境ノイズを記録することもできる。検出された環境ノイズから、動電型音響トランスデューサ2および/またはMEMS音響トランスデューサ3によって生成される抗音響が形成され得る。これによって、環境ノイズをキャンセルすることができる。これは、アクティブノイズキャンセリングを実装するために用いることができる。電子機器、例えば、図3に示されるようなインイヤー型ヘッドフォン34には、さらなるマイクロフォン62が存在してよい。このマイクロフォン62は、環境ノイズを抑制するための抗音響を生成すべく、電子機器の環境、例えば、インイヤー型ヘッドフォン34の環境、または、インイヤー型ヘッドフォン34のキャリアの環境に面してよい。
【0106】
少なくとも1つのマイクロフォン62は、図にその一部が示されているイヤー部36に配置される。イヤー部36は、ハウジング部66の特別な実施形態である。音響トランスデューサユニット1は、ハウジング部66を有するか、または、ハウジング部66内に配置される。ハウジング部66は、電子機器の一部であってよい。電子機器がインイヤー型ヘッドフォン34の場合、ハウジング部66は、イヤー部36である。
【0107】
さらに、または、あるいは、少なくとも1つのマイクロフォン62は、音響トランスデューサユニット1のためのエンクロージャ、特に、保護エンクロージャに配置されてもよい。エンクロージャは、音響トランスデューサユニット1、特に、動電型音響トランスデューサ2の第1メンブレン10を保護する役目を果たす。図示されたハウジング部66および/またはイヤー部36は、エンクロージャの役目を果たしてよい、または、エンクロージャは、ハウジング部66および/またはイヤー部36によって形成されてよい。
【0108】
さらに、この例示的実施形態では、いくつかのワイヤー63a~63dが概略的に示されている。ワイヤー63a~63dは、特に、マルチストランドケーブルまたはワイヤー63a~63dであり得る。音響トランスデューサユニット1の操作のために供給される電気信号は、ワイヤー63a~63dによって供給されてよい。第1のワイヤー63aは、電子機器ユニット18および/またはMEMS音響トランスデューサ3用である。第2のワイヤー63bは、動電型音響トランスデューサ2のコイル8に至る。第3のワイヤー63cは、図示された第1のマイクロフォン62aに至り、第4のワイヤー63dは、図示された第2のマイクロフォン62bに至る。図では、ワイヤー63a~63dは、回路基板58に連結されている。図からさらに分かるように、ワイヤー63a~63dは、回路基板58の後側64で回路基板58に連結されている。
【0109】
図では、ワイヤー63a~63dは、適切な伝送路に配置されている。図から分かるように、2つのワイヤー63cおよび63dは、トランスデューサハウジング4と、イヤー部36またはハウジング部66との間に配置される。
【0110】
プリント回路基板58は、外部ユニットからの電気信号を音響トランスデューサユニット1に伝えるための接続部67をさらに有する。接続部67は、可撓性の部分、例えば、フレキシブルプリント回路基板として構成されることによって回転させるまたは曲げることでき、異なる方向からの接続が容易になっている。図では、接続部67は、プリント回路基板58の後側64に配置されている。接続部67は、プラグを有する、および/または、プラグとして構成されてよい。この場合、プラグは、フラットプラグであってよい、および/または、回路基板58にはんだ付けされてよい。
【0111】
またさらに、プラグは、プリント回路基板58の前側65に、特に、フラットプラグとして配置されてもよい。ここでは、前側65は、MEMS音響トランスデューサ3、および/または、電子機器ユニット18に接続される。そして、プラグは、プリント回路基板58、例えば、プリント回路基板フィードスルー59内に通される。
【0112】
フラットプラグは、例えば、プラグまたはフラットプラグが回路基板58に平らに配置されるように、可撓性の回路基板として構成され得る。こうしてプラグまたはフラットプラグは、プリント回路基板58と、MEMS音響トランスデューサ3および/または電子機器ユニット18との間、特に、プリント回路基板58の前側65に配置されることもできる。さらに、または、あるいは、プラグは、MEMS音響トランスデューサ3および/または電子機器ユニット18に連結されてもよい。
【0113】
本発明は、図示および記載した実施形態に限定されない。
特徴は、異なる例示的実施形態で図示および記載されたとしても、それらの組み合わせとして、請求項の範囲内での変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 音響トランスデューサユニット
2 動電型音響トランスデューサ/ウーファー
3 MEMS音響トランスデューサ/ツィーター
4 トランスデューサハウジング
5 第1極部材
6 第2極部材
7 マグネット
8 コイル
9 メンブレンユニット
10 第1メンブレン
11 連結ユニット
12 内側メンブレンキャリア
13 外側メンブレンキャリア
14 マグネットギャップ
15 ホルダ
16 音響ガイド部材
17 音響キャビティ
18 電子機器ユニット
19 電子機器フィードスルー
20 極フィードスルー
21 軸方向
22 径方向
23 キャリア基板
24 キャリア層
25 圧電層
26 連結部材
27 スプリング部材
28 連結板
29 MEMSメンブレンユニット
30 第2メンブレン
31 MEMSメンブレンフレーム
32 カバー
33 カバーフィードスルー
34 インイヤー型ヘッドフォン
35 ヘッドフォンハウジング
36 イヤー部
37 クロージャ部
38 シール部材
39 電線フィードスルー
40 スペーサ
41 トランスデューサキャビティ
42 メンブレン孔
43 出口
44 イヤー部キャビティ
45 クロージャ部キャビティ
46 振動キャビティ
52 マグネットユニット
53 シール部材
54 MEMSキャビティ
55 ハウジング溝
56 第1の接触面
57 第2の接触面
58 回路基板
59 回路基板フィードスルー
60 MEMSプリント回路基板
61 回路基板キャビティ
62 マイクロフォン
63 ワイヤー
64 後側
65 前側
66 ハウジング部
67 接続部
68 外側
69 制振材
70 周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】