(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080681
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】柑橘類抽出物、化合物、及び新型コロナウイルスを抑制するための用途
(51)【国際特許分類】
A61K 36/75 20060101AFI20240606BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240606BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240606BHJP
C07D 311/32 20060101ALI20240606BHJP
C07C 49/84 20060101ALI20240606BHJP
C07D 493/04 20060101ALI20240606BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61K36/75
A61P11/00
A61P31/14
A61K31/37
A61K31/352
A61K31/353
A61K31/12
C07D311/32 CSP
C07C49/84 E
C07D493/04 101A
A61K36/752
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203589
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】111146470
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523455105
【氏名又は名称】豐苗生物科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FONG-MIAO BIOTECH CORP.
【住所又は居所原語表記】No. 1-1, Zhongzhou, Zhongzhou Vil., Xuejia Dist., Tainan City 72651, Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】523455116
【氏名又は名称】劉 宗翰
【氏名又は名称原語表記】TZONG-HAN LIU
【住所又は居所原語表記】No. 130, Ziyou St., Jiali Dist., Tainan City 722, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】劉 大維
(72)【発明者】
【氏名】李 慶國
(72)【発明者】
【氏名】劉 宗翰
【テーマコード(参考)】
4C071
4C086
4C088
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA08
4C071BB01
4C071BB05
4C071CC12
4C071EE05
4C071FF17
4C071HH04
4C071HH05
4C071KK17
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BA19
4C086MA03
4C086MA06
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
4C088AB62
4C088AC04
4C088BA10
4C088BA14
4C088BA32
4C088CA06
4C088CA07
4C088MA17
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZB33
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CB19
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA06
4C206MA12
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB33
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
(57)【要約】
【課題】柑橘類抽出物、化合物、及び新型コロナウイルスを抑制するための用途を提供する。
【解決手段】エタノール、酢酸エチル、n-ブタノールで抽出した後、多種類の抽出物を得、また酢酸エチル抽出物から多種類の化合物を分離する柑橘類抽出物。以上の多種類の抽出物と多種類の化合物は、何れも新型コロナウイルスを抑制する効果を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘の果実を提供する工程と、
前記柑橘の果実を有機溶媒で抽出して、液体の部分と抽出後の果実を得る工程と、
前記液体の部分を乾燥させた後、粗抽出物を得る工程と、
前記粗抽出物を酢酸エチルと水で分配して、酢酸エチル層と高極性層を得、前記酢酸エチル層を乾燥させた後で酢酸エチル抽出物を得る工程と、
前記高極性層をn-ブタノールと水で分配して、n-ブタノール層と水層を得、前記n-ブタノール層を乾燥させた後でn-ブタノール抽出物を得、前記水層を乾燥させた後で水層抽出物を得る工程と、
を含んで調製される柑橘類抽出物。
【請求項2】
前記酢酸エチル抽出物は、ソラレン、ベルガプテン、2’-ヒドロキシ-4,4’,5’,6’-テトラメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン、5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3’,4’,6,7,8-ペンタメトキシフラボン、3’,4’,5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン、及び3’,4’,5,7,8-ペンタメトキシフラバノンを含む請求項1に記載の柑橘類抽出物。
【請求項3】
前記柑橘の果実を有機溶媒で抽出する前記工程は、前記柑橘の果実とエタノールを重量体積比1:5~15(w/v)の比で抽出することを含む請求項1に記載の柑橘類抽出物。
【請求項4】
2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン、5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン、3’,4’,5,7,8-ペンタメトキシフラバノン、及びその医薬的に許容される塩又はエステルからなる群から選ばれる化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の前記柑橘類抽出物の前記粗抽出物、前記酢酸エチル抽出物、前記n-ブタノール抽出物、前記水層抽出物、又はそれらの組み合わせを含む新型コロナウイルスを抑制する組成物。
【請求項6】
薬学
的に許容される担体を更に含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記新型コロナウイルスは、起源株、alpha変異株、beta変異株、gamma変異株、delta変異株、omicron変異株、又はそれらの組み合わせを含む請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記omicron変異株は、BA.1亜型の変異株、BA.2亜型の変異株、BA.3亜型の変異株、BA.4亜型の変異株、BA.5亜型の変異株、又はそれらの組み合わせを含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の柑橘類抽出物の新型コロナウイルス抑制用薬物の調製のための用途であって、前記柑橘類抽出物は、前記粗抽出物、前記酢酸エチル抽出物、前記n-ブタノール抽出物、又は前記水層抽出物を含む用途。
【請求項10】
化合物の新型コロナウイルス抑制用薬物の調製のための用途であって、前記化合物は、ソラレン、ベルガプテン、2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン、5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン、3’,4’,5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン、3’,4’,5,7,8-ペンタメトキシフラバノン、又はそれらの組み合わせを含む用途。
【請求項11】
前記新型コロナウイルスは、起源株、alpha変異株、beta変異株、gamma変異株、delta変異株、omicron変異株、又はそれらの組み合わせを含む請求項9又は10に記載の用途。
【請求項12】
前記omicron変異株は、BA.1亜型の変異株、BA.2亜型の変異株、BA.3亜型の変異株、BA.4亜型の変異株、BA.5亜型の変異株、又はそれらの組み合わせを含む請求項11に記載の用途。
【請求項13】
前記薬物の形態は、カプセル、錠剤、粉剤又は液状である請求項9又は10に記載の用途。
【請求項14】
前記薬物は、前記新型コロナウイルスとACE2タンパク質との結合に対する抑制によるものである請求項9又は10に記載の用途。
【請求項15】
前記薬物は、前記新型コロナウイルスを抑制することで、前記新型コロナウイルスによる疾病を治療する請求項9又は10に記載の用途。
【請求項16】
前記疾病は、重症特殊感染性肺炎である請求項15に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抽出物、化合物及び用途に関し、特に、柑橘類抽出物、化合物、及び新型コロナウイルスを抑制するための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
重症特殊感染性肺炎(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)によって引き起こされる世界的大流行である。SARS-CoV-2は、新規のコロナウイルスであり、新型コロナウィルスとも呼ばれる。2019年の起源株から変異して、2022年までOmicron変異種が主要な流行株となった。Omicron変異株による低重症率、抗原のスクリーニングと次世代ワクチンの登場にもかかわらず、コロナ禍は、まだ消えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、自然由来かつ新型コロナによる肺炎ウイルスに効果的に対抗する物質を提供することについて、既存の技術では実際に改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一実施形態は、柑橘の果実を提供する工程と、柑橘の果実を有機溶媒で抽出して、液体の部分と抽出後の果実を得る工程と、液体の部分を乾燥させた後、粗抽出物を得る工程と、粗抽出物を酢酸エチルと水で分配して、酢酸エチル層と高極性層を得、酢酸エチル層を乾燥させた後で酢酸エチル抽出物を得る工程と、高極性層をn-ブタノールと水で分配して、n-ブタノール層と水層を得、n-ブタノール層を乾燥させた後でn-ブタノール抽出物を得、水層を乾燥させた後で水層抽出物を得る工程と、を含んで調製される柑橘類抽出物を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態において、酢酸エチル抽出物は、ソラレン、ベルガプテン、2’-ヒドロキシ-4,4’,5’,6’-テトラメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン、5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3’,4’,6,7,8-ペンタメトキシフラボン、3’,4’,5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン、及び3’,4’,5,7,8-ペンタメトキシフラバノンを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、柑橘の果実を有機溶媒で抽出する工程は、柑橘の果実とエタノールを重量体積比1:5~15(w/v)の比で抽出することを含む。
【0007】
本開示の別の実施形態は、2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン、5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン、3’,4’,5,7,8-ペンタメトキシフラバノン、又はその医薬的に
許容される塩又はエステルを含む化合物を提供する。
【0008】
本開示の別の実施形態は、前記に記載の柑橘類抽出物の粗抽出物、酢酸エチル抽出物、n-ブタノール抽出物、水層抽出物、又はそれらの組み合わせを含む新型コロナウイルスを抑制する組成物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、新型コロナウイルスは、起源株、alpha変異株、beta変異株、gamma変異株、delta変異株、omicron変異株、又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、omicron変異株は、BA.1亜型の変異株、BA.2亜型の変異株、BA.3亜型の変異株、BA.4亜型の変異株、BA.5亜型の変異株、又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
本開示の別の実施形態は、前記に記載の柑橘類抽出物の新型コロナウイルス抑制用薬物の調製のための用途であって、柑橘類抽出物は、粗抽出物、酢酸エチル抽出物、n-ブタノール抽出物、又は水層抽出物を含む用途を提供する。
【0013】
本開示の別の実施形態は、化合物の新型コロナウイルス抑制用薬物の調製のための用途であって、化合物は、ソラレン、ベルガプテン、2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン、2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン、5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン、3’,4’,5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン、3’,4’,5,7,8-ペンタメトキシフラバノン、又はそれらの組み合わせを含む用途を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、新型コロナウイルスは、起源株、alpha変異株、beta変異株、gamma変異株、delta変異株、omicron変異株、又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、omicron変異株は、BA.1亜型の変異株、BA.2亜型の変異株、BA.3亜型の変異株、BA.4亜型の変異株、BA.5亜型の変異株、又はそれらの組み合わせを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、薬物の形態は、カプセル、錠剤、粉剤又は液状である。
【0017】
いくつかの実施形態において、薬物は、新型コロナウイルスとACE2(Angiotensin-ConvertingEnzyme 2、アンジオテンシン変換酵素2)タンパク質との結合に対する抑制によるものである。
【0018】
いくつかの実施形態において、薬物は、新型コロナウイルスを抑制することで、新型コロナウイルスによる疾病を治療する。
【0019】
いくつかの実施形態において、疾病は、重症特殊感染性肺炎である(又は新型コロナ肺炎とも呼ばれる)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、添付図面に合わせて下記詳細な説明を読むと、本開示の各種の態様がより良く理解される。注意すべきなのは、業界標準の慣行によれば、各種の特徴構造は、一定の縮尺で描かれたものではない。実質的に、検討をより明確にするために、各種の特徴構造のサイズを任意に拡大又は縮小してもよい。本開示の上記及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするために、添付図面の説明は、以下の通りである。
【
図1】本開示のいくつかの実施形態に係るシークヮーサー抽出物の調製方法を示すフロー図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物の高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)のクロマトグラムである。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用(liquid chromatography‐mass spectrometry;LC-MS)におけるLCクロマトグラムである。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
【
図8】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCのクロマトグラムである。
【
図9】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
【
図10】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCのクロマトグラムである。
【
図11】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
【
図12】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCのクロマトグラムである。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
【
図14】本開示のいくつかの実施形態に係る4種類の抽出物による新型コロナウイルス起源株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図15】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図16】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図17】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図18】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図19】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図20】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図21】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図22】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図23】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図24】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図25】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図26】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図27】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域(receptor-binding domain、受容体結合ドメイン)とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図28】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図29】本開示のいくつかの実施形態に係るn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図30】本開示のいくつかの実施形態に係る水層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図31】本開示のいくつかの実施形態に係る5種類の抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図32】本開示のいくつかの実施形態に係る4種類の抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図33】本開示のいくつかの実施形態に係る4種類の抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。
【
図34】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図35】本開示のいくつかの実施形態に係る粗抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す。
【
図36】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図37】本開示のいくつかの実施形態に係る酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38A】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd1の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38B】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd2の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38C】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd3の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38D】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd4の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38E】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd5の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38F】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd6の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38G】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd7の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38H】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd8の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38I】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd9の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図38J】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd10の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39A】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd1の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39B】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd2の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39C】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd3の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39D】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd4の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39E】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd5の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39F】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd6の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39G】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd7の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39H】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd8の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39I】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd9の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図39J】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd10の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40A】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd1の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40B】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd2の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40C】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd3の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40D】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd4の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40E】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd5の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40F】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd6の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40G】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd7の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40H】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd8の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40I】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd9の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【
図40J】本開示のいくつかの実施形態に係る化合物Cd10の新型コロナウイルスOmicron BA.4変異株とACE2との結合率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示についての記述をより詳細且つ完璧にするために、以下、本開示の実施態様と具体的な実施例について説明的な叙述を提出するが、これは本開示の具体的な実施例を実施又は運用する唯一の形式ではない。下記で開示する各実施例、有益な場合で互いに組み合わせ又は取り替わってもよいし、更なる記載又は説明をせずに、1つの実施例において他の実施例を加えてもよい。下記叙述において、下記の実施例を読者に十分に理解させるために、数多くの特定な細部を詳しく記述する。しかし、これらの特定な細部がなくても、本開示の実施例を実践することもできる。
【0022】
本文において、正文で冠詞に対して特別に限定されない限り、「一」と「前記」は、単一又は複数を総括して指してもよい。更に理解すべきなのは、本明細書に用いる「備える」、「含む」、「有する」及び類似用語については、それが記載される特徴、領域、整数、工程、操作、素子及び/又は部材を明らかにするが、その記述された又は別の1つ又は複数の他の特徴、領域、整数、工程、操作、素子、部材、及び/又はそれらの群は排除されない。
【0023】
本文において、「柑橘類」という用語は、文中でカンキツ属(学名:Citrus)がミカン科(Rutaceae)の属であることを示し、その下の種には高木と低木がある。いくつかの重要な果物はこの属に属し、例えば、シトロン(Citrus medica)、ブンタン(Citrus maxima)、ポンカン(Citrus reticulata)、オレンジ(Citrus sinensis)、レモン(Citrus limon)、ヒメレモン(Citrus limonia)、ライム(Citrus aurantifolia)、カブス(Citrus aurantium)、ユズ(Citrus junos)、キンカン(Citrus japonica;Cj)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)、赤河オレンジ(Citrus hongheensis)、イーチャンパペダ(Citrus ichangensis)、シトラス・マクロプテラ(Citrus macroptera var. kerrii)、コブミカン(Citrus hystrix)、タチバナ(Citrus tachibana)、シークヮーサー(Citrus depressa;Cd)等である。
【0024】
シークヮーサーは、ヒラミレモンとも呼ばれ、台湾原種の柑橘類の1つである。
【0025】
本文において、「果実」という用語は、果実の構造が通常、種子と皮の2つの部分に分けられることを表す。皮は、更に、外果皮、中果皮及び内果皮に分けられる。外果皮は、革のように柔らかくて厚い。内果皮は、厚くてジューシーな肉質の部分、いわゆる果肉である。中果皮は、外果皮と内果皮との間の組織であり、内果皮に比べて、ほとんど白くしっかりとした構造となる。
【0026】
本文において、フラノクマリン類(Furocoumarines)とは、母核の7位のヒドロキシ基と6位又は8位の置換イソペンテニル基が縮合してフラン環を形成する一連の化合物である(位置の番号は例えば式(I)に示す)。ソラレン(psoralen)は、線状フラノクマリン類に属し、ベルガプテン(bergapten)は角型フラノクマリンに分類される。
【0027】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、極性と非極性の有機溶媒を含むが、それらに限定されない。例として、極性の有機溶媒は、アルコール類、ケトン類(アセトン、ジアルキルケトン、ピロリドン(pyrollidones))、アルキレンカーボネート(alkylene carbonates)、アルキルエステル及びアリールエステルを含むが、それらに限定されない。非イオン又はアニオン界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、天然油、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルフェノール、アリールフェノール、エトキシアルコール類、ポリオキシエチレン(polyoxyethylene)、カルボン酸エステル、ポリアルキレングリコールエステル(polyalkylglycol esters)、無水ソルビトール、ジオールエステル、カルボン酸アミド、モノアルカノールアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(polyoxyethylene fatty acid amides)、ポリソルベート、シクロデキストリン、グリコシル系(sugar based)アルコール類、シリコーン系(silicone based)アルコール類、ポリアルキル化アルコール類、及びアルキルアリールエトキシドからなる群を含むが、それらに限定されない。
【0028】
本文において、「分配(partition)」という用語は、溶媒と被抽出物とを混合した後、層状の液体となることを示す。例えば、酢酸エチルと水(1:1の体積)と被抽出物とを混合した後、低極性層と高極性層の液体が現れる。
【0029】
本文において、「新型コロナウイルス」という用語は、深刻な急性呼吸道症候群コロナウイルス2型(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2;SARS-CoV-2)を示し、新型のコロナウイルス、2019新型コロナウイルスとも呼ばれる。
【0030】
本文において、「医薬的に許容される塩」という用語は、遊離塩基又は遊離酸の生物的有効性と性質を保持し、通常生物学的又はその他の面で理想的な塩をいう。
【0031】
本文において、「医薬的に許容されるエステル」という用語は、式(I)~式(X)の化合物が官能基上で誘導体化して、生体内で母体化合物に変換できる誘導体を提供することができるものをいう。
【0032】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、水、アルコール(alcohols)、グリコール(glycol)、保存剤(preserving agents)、酸化防止剤(antioxidants)、溶媒(solvent)、乳化剤(emulsifier)、懸濁剤(suspending agent)、分解剤(decomposer)、接着剤(binding agent)、賦形剤(excipient)、安定剤(stabilizing agent)、キレート剤(chelating agent)、希釈剤(diluent)、ゲル化剤(gelling agent)、防腐剤(preservative)、潤滑剤(lubricant)、吸収増強剤(absorption enhancers)、活性剤(active agents)、保湿剤(humectants)、消臭剤(odor absorbers)、芳香剤(fragrances)、pH調整剤(pH adjusting agents)、閉塞剤(occlusive agents)、軟化剤(emollients)、増粘剤(thickeners)、溶解補助剤(solubilizing agents)、浸透増強剤(penetration enhancers)、刺激防止剤(anti-irritants)、着色剤(colorants)、推進剤(propellants)、界面活性剤(surfactant)、及びその他の本発明と類似する又は本発明に適する担体を含むが、それらに限定されない。
【0033】
スパイクタンパク結合の測定
【0034】
いくつかの実施形態において、酵素結合免疫吸着分析法(enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)を用いて実験を行って、4種類の抽出物によるSARS-COV-2スパイクタンパク野生型(WT、武漢株)又は変異株(α、β、γ、δ、又はο)とビオチン化したヒトACE2組み換えタンパクとの結合に対する抑制性能を評価する。まず、96ウェルプレートの各ウェルに100μLのスパイクタンパクを塗布して緩衝液で希釈し、緩衝液を4℃で一夜放置する。そして、Tween-20を含むPBSの洗浄緩衝液でコーティングプレートを3回洗浄してから、250μLのウシ胎児血清アルブミン(BSA)を含むブロッキング液(blocking buffer)を37℃で1.5時間ブロッキングする。次に、96ウェルプレートを3回洗浄して、希釈緩衝液における100μLの被試験抽出物又は阻害剤(10μg/mL、cat.GTX635791、GeneTex(登録商標))を96ウェルプレートに加え、37℃で1時間培養する。次に、100μLのビオチン化したヒトACE2蛋白(10ng/mL、cat.AC2-H82E6-25ug、ACRO Biosystems(登録商標))を各ウェルに加え、37℃でまた1時間培養する。次に、96ウェルプレート用洗浄緩衝液を3回洗浄して、希釈緩衝液における100μLのStreptavidin-HRPカップリングを加え、37℃で1時間インキュベートする。次に、96ウェルプレートを洗浄して、37℃の遮光下で各ウェルの200μLのTMB(3,3’,5,5’-tetramethyl-benzidine)で20分間培養する。そして、50μLの停止溶液を加えて反応を停止し、マイクロプレート検出器を用いて450nmでの吸光度を検出する。
【0035】
細胞培養
【0036】
いくつかの実施形態において、ヒト胚腎(HEK-293T/17、ATCC(登録商標) CRL-11268TM)細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得られる。10%のウシ胎児血清及び1xペニシリン-ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified eagle medium;DMEM)に、細胞を37℃で培養する。HEK-293T-ACE2細胞は、ヒトACE2遺伝子を持つVSV-G偽型レンチウイルス(pseudotyped lentivirus)の導入(transduction)によって生じる。
【0037】
SARS-CoV-2スパイク発現用プラスミド
【0038】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2スパイク(spike)遺伝子をコードする合成DNA断片は、Integrated DNA Technologies(IDT)から購入され、哺乳動物発現担体にクローン(clone)される。以下、各スパイク変異体の突然変異部位を示す。
【0039】
Alpha変異株(B.1.1.7):69-70 del、Y144 del、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H。
【0040】
Beta変異株(B.1.351(501Y.V2)):L18F、D80A、D215G、242-244 del、R246I、K417N、E484K、N501Y、D614G、A701V。
【0041】
Gamma変異株(Lineage P1):L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、D614G、H655Y、T1027I。
【0042】
Delta変異株(B.1.617.2):T19R、G142D、156-157 del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R、D950N。
【0043】
Omicron変異株(B.1.1.529):A67V、Δ69-70、T95I、G142D/Δ143-145、Δ211/L212I、ins214EPE、G339D、S371L、S373P、S375F、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493R、G496S、Q498R、N501Y、Y505H、T547K、D614G、H655Y、N679K、P681H、N764K、D796Y、N856K、Q954H、N969K、L981F。
【0044】
Omicron亜型の変異株BA1:A67V、Δ69-70、T95I、G142D/Δ143-145、Δ211/L212I、ins214EPE、G339D、S371L、S373P、S375F、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493R、G496S、Q498R、N501Y、Y505H、T547K、D614G、H655Y、N679K、P681H、N764K、D796Y、N856K、Q954H、N969K、L981F。
【0045】
Omicron亜型の変異株BA2:T19I、L24S、Δ25-27、G142D、V213G、G339D、S371F、S373P、S375F、T376A、D405N、R408S、K417N、N440K、S477N、T478K、E484A、Q493R、Q498R、N501Y、Y505H、D614G、H655Y、N679K、P681H、N764K、D796Y、Q954H、N969K。
【0046】
Omicron亜型の変異株BA4/5:T19I、L24S、Δ25-27、Δ69-70、G142D、V213G、G339D、S371F、S373P、S375F、T376A、D405N、R408S、K417N、N440K、L452R、S477N、T478K、E484A、F486V、Q498R、N501Y、Y505H、D614G、H655Y、N679K、P681H、N764K、D796Y、Q954H、N969K。
【0047】
SARS-CoV-2スパイク偽型レンチウイルスの生産及び精製
【0048】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2スパイクタンパクを持つ偽型レンチウイルスは、pCMV-R8.91、pLAS2w.Fluc.PpuroとpcDNA3.1-nCoV-S(B.1.1.7、B.1.351、P1、B.1.617.2、又はB.1.1.529)によって生じる。トランスフェクションの前日にHEK-293T細胞を接種し、TransIT-LT1トランスフェクション試薬を用いて標記プラスミドを細胞に送達する。培地は、16時間で交換され、トランスフェクション後の48時間と72時間で収穫される。細胞の破片を遠心分離によって除去し、上澄み液に0.45μmの注射フィルターを通過させる。偽型レンチウイルスは、等分されて、-80℃で貯蔵される。
【0049】
細胞生存試験によるレンチウイルスの力価に対する評価
【0050】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2偽型レンチウイルスの導入単位(TU)は、レンチウイルスの希釈限界を反映するように、細胞生存試験によって評価される。簡単に言えば、レンチウイルス導入の前日に、ヒトACE2遺伝子を安定に発現したHEK-293T細胞を96ウェルプレートに接種する。偽型レンチウイルスの滴定のために、異なる量のレンチウイルスをポリブレンを含む培地に加える。96ウェルプレートに回転して感染する。37℃で細胞を培養するした後、ウイルス及びポリブレンを含む培地を除去し、プリンマイシンを含む新鮮な完全DMEMで代用する。プリンマイシン処理後、培地を除去しメーカーの説明に基づいて10%のAlarmaBlue試薬で細胞生存を検出する。未感染細胞(プリンマイシン処理無し)の生存率は100%である。生存細胞と希釈されたウイルスの投与量をプロットしてウイルス力価(導入単位)を確定する。
【0051】
偽型レンチウイルスの中和試験
【0052】
いくつかの実施形態において、ウイルス中和試験について、熱不活化した血清を目的の希釈濃度で連続希釈し、同時に抽出物又は単一化合物を添加し、1,000TUのSARS-CoV-2偽型レンチウイルスと共にDMEM(1%FBSと100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンが加えられ)で37℃で1時間培養する。そして、96ウェルプレートに10,000個のヒトACE2遺伝子を安定に発現したHEK-293T細胞を接種する。感染の16時間後に、培地を新鮮な完全DMEM(10%FBS及び100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンが加えられ)に交換し、ルシフェラーゼ測定(luciferase assay)の前に、細胞を別に48時間連続培養する。ルシフェラーゼ測定のために、ルシフェラーゼ遺伝子の発現量は、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼ測定システムによって測定される。相対光単位(RLU)は、Molecular Devices-SpectraMaxLによって検出される。抑制パーセンテージの計算方法は、希釈血清存在時のRLUの減少量と無血清対照時のRLUとの比であり、計算公式は、(RLU対照-RLU血清)/RLUコントロールである。
【0053】
以下、複数の実施例及び試験例を挙げて更に詳しく本開示の柑橘類抽出物及びその新型コロナ肺炎の治療に用いられる用途を説明するが、例示的に説明するためのものだけであり、本開示を制限するためのものではなく、本開示の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【0054】
実施例
【0055】
以下、ここで開示された方法を一連の操作や工程によって説明するが、これらの操作や工程に示す順序は、本開示に対する制限として解釈されるべきではない。例えば、ある操作又は工程は、異なる順序で行い及び/又は他の工程と同時に行ってもよい。なお、全ての操作、工程及び/又は特徴を実行しなければ、本開示の実施形態を達成できないわけでもない。また、ここで述べられた複数の操作又は工程の各々は、複数のサブ工程又は動作を含んでもよい。
【0056】
明らかにするために、分野で既知の特徴であり、かつ説明された原則を理解するためには必要でない特徴と素子は、省略されてよい。
【0057】
実施例1 抽出物の調製
【0058】
図1を参照されたく、
図1は、本開示の一実施形態のシークヮーサー抽出物の調製方法を示すフロー図である。
【0059】
シークヮーサー(完全な全粒)と95%エタノールを重量体積比1:10(w/v)の比で1週間抽出して、第1の液体と第1の抽出後シークヮーサーを得た。第1の液体の部分を除去して真空蒸発させた後、乾燥した第1の粗抽出物を得た。次に、第1の抽出後シークヮーサーと95%エタノールを重量体積比1:10(w/v)の比で更に1週間抽出して、第2の液体と第2の抽出後シークヮーサーを得た。第2の液体の部分を除去して真空蒸発させた後、乾燥した第2の粗抽出物を得た。第1の粗抽出物と第2の粗抽出物とを組み合わせて、乾燥した粗抽出物を得た。
【0060】
次に、粗抽出物を取り酢酸エチルと蒸留水(1:1の比)で3回分配(partition)した後、酢酸エチル層(低極性層)と高極性層を得た。高極性層をn-ブタノールと蒸留水(1:1の比)で更に3回分配した後、n-ブタノール層と水層を得た。各層を乾燥させた後、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物と水層抽出物を得た。
【0061】
次に、酢酸エチル層抽出物を取り、中圧液体クロマトグラフィー(medium pressure liquid chromatography;MPLC)でシリカゲルカラム(SNAP Cartridge KP-Sil 340g,Biotage(登録商標))に合わせて酢酸エチル層抽出物における生物活性物質を分離させ、中圧液体クロマトグラフィーが移動相ヘキサン(hexane)と酢酸エチル(100:0~0:100)及びアセトンによって、110のレイヤー(Fr.1~Fr.110)を発生した。
【0062】
次に、シリカゲルカラム(Luna(登録商標) silica column 5μm、250×10mm、Phenomenex(登録商標))を用いて、セミ分取屈折率検出器―高速液体クロマトグラフィー(semi-preparative refractive index-high performance liquid chromatography;semi-preparative RI-HPLC)により、活性成分を持つレイヤーFr.44、レイヤーFr.59、レイヤーFr.66とレイヤーFr.78を選択した。
【0063】
レイヤーFr.44は、ヘキサンと酢酸エチル(8:2)からなる移動相を用いて2種類のフラノクマリン類(furanocoumarins)化合物(Cd1、Cd2)を生成した。
【0064】
レイヤーFr.59は、ヘキサン、酢酸エチル及びジクロロメタン(7:1.5:1.5)からなる移動相を用いて2種類のカルコン類(chalcones)化合物(Cd3、Cd4)を生成した。
【0065】
サブレイヤーSubFr.66-1~SubFr.66-18は、レイヤーFr.66がまずシリカゲルカラム(SNAP Cartidge KP-Sil 10g、Biotage(登録商標))と移動相がヘキサンと酢酸エチル(100:0-0:100)であることによって得られ、SubFr.66-14がフラボン類(flavones)化合物(Cd7)である。
【0066】
サブレイヤーSubFr.66-9は、ヘキサン、酢酸エチル(7.7:2.3)の移動相から、2つのカルコン類化合物(Cd5、Cd6)を生成した。
【0067】
サブレイヤーSubFr.66-12は、ヘキサンと酢酸エチル(6.5:3.5)の移動相から、1つのフラボン類化合物(Cd8)を生成した。
【0068】
サブレイヤーSubFr.66-13は、ヘキサンと酢酸エチル(6.3:3.7)の移動相から、フラボン類化合物(Cd10)を生成した。
【0069】
レイヤーFr.78は、ヘキサンと酢酸エチル(2.5:7.5)からなる移動相から、フラボン類化合物(Cd9)を生成した。上記の分離プロセスを繰り返して活性実験に必要な量を得た。
【0070】
実施例2 抽出物の分析
【0071】
実施例1からの粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物、及び水層抽出物をそれぞれ高性能液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー-質量分析併用によって分析を行った。
【0072】
実験結果は、
図2~
図13に示す。
図2は、粗抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムであり、吸收値が220nm、280nm、320nm、400nmである。
図3は、酢酸エチル層抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
図4は、n-ブタノール層抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
図5は、水層抽出物の高性能液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
図6は、粗抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCクロマトグラムであり、上段が正電荷であり、下段が負電荷であり、以下の
図7~
図13は何れも同様の配置である。
図7は、粗抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムであり、その質量電荷比(mass-to-charge ratio;m/z)は100~1500と表示され、以下、
図9、11及び13は、何れも同様の配置である。
図8は、酢酸エチル層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCのクロマトグラムである。
図9は、酢酸エチル層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
図10は、n-ブタノール層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCのクロマトグラムである。
図11は、n-ブタノール層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
図12は、水層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるLCのクロマトグラムである。
図13は、水層抽出物の液体クロマトグラフィー-質量分析併用におけるMSクロマトグラムである。
【0073】
実施例3 化合物の同定
【0074】
以上の10種類の化合物に対してNMR検定を行った。
【0075】
Cd1、furo[3,2-g]chromen-7-one(ソラレン、Psoralen)。1H:6.36(d,J=9.6Hz,1H)6.81(dd,J=2.3,1.0Hz,1H)7.46(d,J=1.1Hz,1H)7.67(s,1H)7.68(d,J=2.3Hz,1H)7.78(d,J=9.6Hz,1H)。13C:100.14,106.60,114.93,115.67,120.04,125.10,144.27,147.13,152.30,155.67,161.23。
【0076】
Cd2,4-methoxyfuro[3,2-g]chromen-7-one(ベルガプテン、Bergapten)。1H:4.24(s,3H)6.24(d,J=9.8Hz,1H)6.99(dd,J=2.4,1.0Hz,1H)7.10(t,J=1.0Hz,1H)7.57(d,J=2.4Hz,1H)8.12(dd,J=9.8,1.0Hz,1H)。13C:60.31,94.06,105.24,106.64,112.76,112.91,139.46,145.00,149.79,152.93,158.60,161.44。
【0077】
Cd3,2’-ヒドロキシ-4,4’,5’,6’-テトラメトキシカルコン(E)2’-hydroxy-4,4’,5’,6’-tetramethoxychalcone。1H:3.69(s,3H)3.81(s,3H)3.82(s,3H)3.83(s,3H)6.37(s,1H)7.01(d,J=8Hz,2H)7.45(d,J=15.8Hz,1H)7.59(d,J=15.8Hz,1H)7.68(d,J=8Hz,2H)。13C:55.47 56.13 60.76 61.64 96.52 110.37 114.05 114.70 115.31 118.90 124.67 124.75 128.30 129.44 130.47 134.76 143.56 153.30 158.03 158.15 161.44 192.61。
【0078】
Cd4,2’-ヒドロキシ-3’,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン(E)2’-Hydroxy-3’,4,4’,5’,6’-pentamethoxy chalcone。1H:3.73(s,3H)3.75(s,3H)3.77(s,3H)3.81(s,3H)3.93(s,3H)7.00(d,J=8.8Hz,2H)7.14(d,J=16.0Hz,1H)7.42(d,J=16.0Hz,1H)7.69(d,J=8.8Hz,2H)。13C:55.99 60.81 60.92 61.03 61.53 114.51 116.23 125.50 126.91 130.47 137.13 138.50 144.21 146.31 147.28 149.23 161.37 192.73。
【0079】
Cd5,2’-ヒドロキシ-3,4,4’,5’,6’-ペンタメトキシカルコン(E)2’-Hydroxy-3,4,4’,5’,6’-pentamethoxychalcone。1H:3.81(s,3H)3.87(s,3H)3.90(s,3H)3.90(s,3H)3.91(s,3H)6.26(s,1H)6.87(d,J=8.3Hz,1H)7.13(d,J=2.0Hz,1H)7.21(dd,J=8.3,2.0Hz,1H)7.77(d,J=15.6Hz,1H)7.81(d,J=15.6Hz,1H)。13C:56.11 56.17 56.25 61.47 62.10 96.82 108.92 110.56 111.40 123.12 124.46 128.58 135.46 143.79 149.43 151.50 155.08 160.16 162.82 192.89。
【0080】
Cd6,2’-ヒドロキシ-3,3’,4,4’,5’,6’-ヘキサメトキシカルコン(E)2’-hydroxy-3、3’,4,4’,5’,6’-hexamethoxy-chalcone。1H:3.84(s,3H)3.87(s,6H)3.91(s,3H)3.92(s,3H)4.07(s,3H)6.88(d,J=8.3Hz,1H)7.13(d,J=2.0Hz,1H)7.23(dd,J=8.3,2.0Hz,1H)7.77(d,J=15.5Hz,1H)7.81(d,J=15.5Hz,1H)。13C:56.14 56.20 61.23 61.52 61.80 62.39 110.60 111.31 111.41 123.33 128.41 137.49 138.62 144.38 149.47 151.02 151.68 153.51 155.12 193.69。
【0081】
Cd7,5-ヒドロキシ-3’,4’,7,8-テトラメトキシフラボン5-Hydroxy-3’,4’,7,8-tetramethoxyflavone。1H:3.92(s,3H)3.93(s,6H)3.95(s,3H)3.96(s,3H)6.41(s,1H)6.57(s,1H)6.98(d,J=8.5Hz,1H)7.41(d,J=2.1Hz,1H)7.57(dd,J=8.5,2.1Hz,1H)。13C:56.22 56.34 56.56 61.79 95.98 104.28 105.03 109.06 111.50 120.38 124.04 129.17 149.58 149.64 152.63 157.79 158.82 164.06 182.85。
【0082】
Cd8,5-ヒドロキシ-3’,4’,6,7,8-ペンタメトキシフラボン5-hydroxy-3’,4’,6,7,8-pentamethoxyflavone。1H:3.93(s,3H)3.94(s,3H)3.95(s,6H)4.09(s,3H)6.59(s,1H)6.97(d,J=8.4Hz,1H)7.40(d,J=2.1Hz,1H)7.56(dt,J=8.4,2.1Hz,1H)。13C:56.20 56.32 61.32 61.91 62.25 104.16 107.17 109.00 111.49 120.37 123.88 133.15 136.78 145.97 149.59 149.72 152.69 153.20 164.15 183.18。
【0083】
Cd9,3’,4’,5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン3’,4’,5,6,7,8-hexamethoxyflavone(Nobiletin)。1H:3.86(s,9H)3.88(s,3H)3.94(s,3H)4.02(s,3H)6.52(s,1H)6.90(d,J=8.5Hz,1H)7.32(d,J=2.1Hz,1H)7.47(dd,J=8.5,2.1Hz,1H)。13C:55.99 56.09 61.66 61.81 61.96 62.25 106.82 108.63 111.31 114.83 119.67 123.99 138.04 144.10 147.73 148.39 149.32 151.45 151.99 161.10 177.36 206.96。
【0084】
Cd10,3’、4’、5、7、8-ペンタメトキシフラバノン 3’,4’,5,7,8 -pentamethoxyflavanone。
1H: 2.70(dd,J=16.6,2.8Hz,1H)2.97(dd,J=16.6,13.4Hz,1H)3.75(s,3H)3.81(s,3H)3.83(s,3H)3.85(s,3H)3.87(s,3H)5.28(dd,J=13.4,2.8Hz,1H)6.29(s,1H)6.84(d,J=,8.0Hz,1H)6.92(dd,J=2.0、8.0Hz,1H)6.93(d,J=2.0Hz,1H)。
表1、10種類の化合物の化学構造式
【0085】
実施例4 抽出物による新型コロナウイルスとACE2との結合に対する抑制能力
【0086】
酵素結合免疫吸着分析法を用いて実験を行って、4種類の抽出物によるSARS-COV-2スパイクタンパク野生型(WT、武漢株)又は変異株(α、β、δ、又はο)とビオチン化したヒトACE2組み換えタンパクとの結合に対する抑制性能を評価した。実験は、主に、コントロール群(Blank;B)、対照群(control、Ctrl.;ACE2群とも呼ばれ、即ち、ACE2とウイルスだけ入れて、抽出物は加えない)、阻害剤群(Inhibitor、Inh.、10μg/mL、cat.GTX635791、GeneTex(登録商標)、全長SARS-CoV-2 RBD組換えタンパクに対して認識する(Wuhan-Hu-1株))、及び多種類の抽出物群(例えば、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物、水層抽出物)に分けられた。
【0087】
図14を参照されたく、
図14は、実施例1の4種類の抽出物(5mg/mL)の新型コロナウイルス起源株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物、水層抽出物群は、何れも新型コロナウイルス起源株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0088】
図15を参照されたく、
図15は、実施例1の粗抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が0.5mg/mL~2mg/mLの粗抽出物は、新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0089】
図16を参照されたく、
図16は、実施例1の酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が0.25mg/mL~2mg/mLの酢酸エチル層抽出物は、新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0090】
図17を参照されたく、
図17は、実施例1のn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が2mg/mLのn-ブタノール層抽出物は、新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合を抑制する傾向があるものであった。
【0091】
図18を参照されたく、
図18は、実施例1の水層抽出物による新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、各濃度の水層抽出物は、新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合を明らかに抑制しなかった。
【0092】
図19を参照されたく、
図19は、実施例1の粗抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が0.5mg/mLと2mg/mLの粗抽出物は、新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0093】
図20を参照されたく、
図20は、実施例1の酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が0.25mg/mL~2mg/mLの酢酸エチル層抽出物は、新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0094】
図21を参照されたく、
図21は、実施例1のn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が2mg/mLのn-ブタノール層抽出物は、新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合を著しく抑制し、濃度が0.25mg/mL~0.5mg/mLのn-ブタノール層抽出物もやや抑制する傾向があるものであった。
【0095】
図22を参照されたく、
図22は、実施例1の水層抽出物による新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が0.5mg/mL~2mg/mLの水層抽出物は、新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0096】
図23を参照されたく、
図23は、実施例1の粗抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が1.25mg/mL~10mg/mLの粗抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0097】
図24を参照されたく、
図24は、実施例1の酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が1.25mg/mL~10mg/mLの酢酸エチル層抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合を著しく抑制した。
【0098】
図25を参照されたく、
図25は、実施例1のn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が1.25mg/mL~2.5mg/mLのn-ブタノール層抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合を抑制する傾向がある。
【0099】
図26を参照されたく、
図26は、実施例1の水層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、水層抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合を明らかに抑制しなかった。
【0100】
図27を参照されたく、
図27は、実施例1の粗抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が1.25mg/mL~10mg/mLの粗抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合を著しく抑制した。
【0101】
図28を参照されたく、
図28は、実施例1の酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が1.25mg/mL~10mg/mLの酢酸エチル層抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合を著しく抑制した。
【0102】
図29を参照されたく、
図29は、実施例1のn-ブタノール層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、濃度が1.25mg/mL~5mg/mLのn-ブタノール層抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合を傾向的に又は著しく抑制した。
【0103】
図30を参照されたく、
図30は、実施例1の水層抽出物による新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、各濃度の水層抽出物は、新型コロナウイルスDelta変異株におけるRBD領域とACE2との結合を明らかに抑制しなかった。
【0104】
図31を参照されたく、
図31は、実施例1の4種類の抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、2mg/mLの粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物と水層抽出物は、何れも新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合を著しく抑制した。なお、2mg/mLのキンカン粗抽出物(Cj)の調製方法は、実施例1の調製方法(アルコールで抽出する)と類似し、新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合も著しく抑制した。また、レイヤーFr.82は、新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合を促進した。
【0105】
図32を参照されたく、
図32は、実施例1の4種類の抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す棒グラフである。結果から分かるように、2mg/mL粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物と水層抽出物は、何れも新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合を著しく抑制し、水層抽出物も結合を抑制する傾向があるものであった。
【0106】
図33を参照されたく、
図33は、本開示のいくつかの実施形態の4種類の抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す棒グラフ(BA.4、BA.5結合サイトのシーケンスは同じ)である。結果から分かるように、2mg/mL粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物、水層抽出物は、何れも新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合を著しく抑制した。また、図面から分かるように、阻害剤は、新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合を効果的に抑制しなかった。
【0107】
実施例5 抽出物と化合物による新型コロナウイルスの中和試験
【0108】
ウイルス中和試験に対して、1,000TUのSARS-CoV-2偽型レンチウイルスで、96ウェルプレートに10,000個のヒトACE2遺伝子を安定に発現したHEK-293T細胞を接種することで感染を行った。同時に、異なる濃度の実施例1の異なる抽出物又は化合物を加えた後、ウイルスとACE2との結合を観察し、半数阻害濃度IC50を記録した。
【0109】
図34を参照されたく、
図34は、実施例1の粗抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示した。結果から分かるように、半数阻害濃度IC
50は、77.8μg/mLであった。
【0110】
図35を参照されたく、
図35は、実施例1の粗抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す。結果から分かるように、半数阻害濃度IC
50は、77.4μg/mLであった。
【0111】
図36を参照されたく、
図36は、実施例1の酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。結果から分かるように、半数阻害濃度IC
50は、74μg/mLであった。
【0112】
図37を参照されたく、
図37は、実施例1の酢酸エチル層抽出物による新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す。結果から分かるように、半数阻害濃度IC
50は、100μg/mLであった。
【0113】
図38A~38Jを参照されたく、
図38A~38Jは、実施例1の化合物Cd1~Cd10の新型コロナウイルスOmicron BA.1変異株とACE2との結合率を示す。結果から分かるように、Cd1~Cd10半数阻害濃度IC
50は、それぞれ355.63μM、248.31μM、70.47μM、N/A、124.17μM、240.44μM、56.75μM、69.98μM、403.65μM、及び180.72μMであった。
【0114】
図39A~39Jを参照されたく、
図39A~39Jは、実施例1の化合物Cd1~Cd10の新型コロナウイルスOmicron BA.2変異株とACE2との結合率を示す。結果から分かるように、Cd1~Cd10半数阻害濃度IC
50は、それぞれ307.61μM、219.28μM、74.82μM、181.97μM、52.36μM、134.28μM、80.17μM、79.25μM、69.50μM、及び114.29μMであった。
【0115】
図40A~40Jを参照されたく、
図40A~40Jは、実施例1の化合物Cd1~Cd10の新型コロナウイルスOmicron BA.4/5変異株とACE2との結合率を示す。結果から分かるように、Cd1~Cd10半数阻害濃度IC
50は、それぞれ161.06μM、205.59μM、64.57μM、125.60μM、70.31μM、175.79μM、104.23μM、16.22μM、39.36μM、及び87.10μMであった。
【0116】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物、水層抽出物の群は、それぞれ新型コロナウイルス起源株とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0117】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物は、新型コロナウイルスA1pha変異株とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0118】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物が2mg/mLを超えるもの、水層抽出物が0.5mg/mLを超えるものは、新型コロナウイルスBeta変異株とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0119】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物が1.25~2.5mg/mLであるものは、新型コロナウイルスDelta変異株とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0120】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物が1.25~5mg/mLであるものは、新型コロナウイルスDelta変異株のRBD領域とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0121】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物は、新型コロナウイルスBA.1、BA.2変異株とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0122】
いくつかの実施形態において、粗抽出物、酢酸エチル層抽出物、n-ブタノール層抽出物、水層抽出物は、新型コロナウイルスBA.4/5変異株とACE2との結合を抑制する効果がある。
【0123】
いくつかの実施形態において、化合物Cd1~Cd10は、新型コロナウイルスとACE2との結合を抑制する効果がある。
【0124】
本開示は、実施形態を前述の通りに開示したが、これは本開示を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本開示の精神と領域から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができる。従って、本開示の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。