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特開2024-80690廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率変換方法および変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080690
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率変換方法および変換装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/05 20060101AFI20240606BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20240606BHJP
   B01J 35/73 20240101ALI20240606BHJP
   B01J 35/40 20240101ALI20240606BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20240606BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20240606BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C10G11/05
B01J38/12 Z
B01J35/73
B01J35/40
B01J29/40 M
B01J29/90 M
C10G11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203863
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0165399
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム オク ユン
(72)【発明者】
【氏名】イ ホ ウォン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA01C
4G169BA02C
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10C
4G169BA15A
4G169BA15B
4G169BA21A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB10A
4G169BB11A
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BB20A
4G169BB20B
4G169BC01A
4G169BC03B
4G169BC08A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC41B
4G169BE06A
4G169BE08A
4G169DA08
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169FB06
4G169FB30
4G169FB63
4G169FC05
4G169FC08
4G169GA06
4G169ZA04A
4G169ZA06A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA12A
4G169ZA13A
4G169ZA32A
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H129CA09
4H129CA22
4H129DA04
4H129GA03
4H129GA12
4H129GA13
4H129GA16
4H129GA18
4H129KC03Y
4H129KC04X
4H129KC13X
4H129KC16X
4H129KC28X
4H129KD02X
4H129KD05X
4H129KD06X
4H129KD06Y
4H129NA01
4H129NA22
4H129NA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法、及び高収率転換装置を提供する。
【解決手段】廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、反応器で廃プラスチック熱分解油をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物及びゼオライトを含む接触分解触媒の下で反応させる第2ステップと、第2ステップの生成物から接触分解触媒及び油分を分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法、並びに廃プラスチック熱分解油が流入し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物とゼオライトを含む触媒の下で接触分解反応が行われる流動層反応器と、流動層反応器から生成物が流入し、接触分解触媒と油分に分離されるサイクロンと、サイクロンから油分が流入し、ガス成分と液体成分に分離されるスタビライザーと、を含む、軽質オレフィン高収率転換装置とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、
前記反応器で廃プラスチック熱分解油をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物とゼオライトを含む接触分解触媒の下で反応させる第2ステップと、
前記第2ステップの生成物から接触分解触媒および油分を分離して硬質オレフィンを回収する第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、窒化物またはアルコキシドを含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項4】
前記接触分解触媒は、Mg/Alモル比が10~40を満足するものである、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン高収率転換方法。
【請求項5】
前記ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y-ZEOLITE、フェリエライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、MCM-22、SUZ-4またはL型ゼオライトを含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項6】
前記接触分解触媒は、粘土とバインダーをさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項7】
前記バインダーは、シリカ系化合物またはアルミニウム系化合物を含む、請求項6に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項8】
前記接触分解触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物1~10重量%、ゼオライト20~70重量%、クレイ10~60重量%およびバインダー10~50重量%からなる、請求項6に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項9】
前記接触分解触媒は、平均粒子径が50~2000μmである、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン高収率転換方法。
【請求項10】
前記反応器は流動層反応器を含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項11】
前記廃プラスチック熱分解油は、常圧で沸点340℃以上の減圧ガス油(VGO)成分を含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン高収率化方法。
【請求項12】
前記第2ステップは、温度400~600℃および反応圧力50~200kPaで行われる、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項13】
前記第3ステップで分離された接触分解触媒を回収して再生器(Regenerator)に投入した後、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を酸化させる第3-1ステップと、酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒を前記第2ステップに循環して前記反応器内に再供給する第3-2ステップと、をさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン高収率転換方法。
【請求項14】
前記第3-1ステップは、酸素ガス下で600~800℃で行われる、請求項13に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項15】
前記第3-1ステップの前に、前記第3ステップで分離された接触分解触媒を剥離処理するステップをさらに含む、請求項13に記載の廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン高収率転換方法。
【請求項16】
回収された軽質オレフィン中の塩素含有量が10ppm以下および窒素含有量が50ppm以下である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法。
【請求項17】
廃プラスチック熱分解油が流入し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物とゼオライトを含む接触分解触媒の下で接触分解反応が行われる流動層反応器と、
前記流動層反応器から生成物が流入し、接触分解触媒と油分で分離されるサイクロンと、
前記サイクロンから油分が流入し、ガス成分と液体成分に分離されるスタビライザーと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換装置。
【請求項18】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、窒化物またはアルコキシドを含む、請求項17に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率化装置。
【請求項19】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化マグネシウムを含む、請求項17に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率化装置。
【請求項20】
前記サイクロンから接触分解触媒が流入し、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物が酸化される再生器(Regenerator)をさらに含み、前記再生器から酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒が再循環ラインを通じて流動層反応器に再流入される、請求項17に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法および転換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは石油を原料として製造されたもので、リサイクル度が低く、ほとんどがゴミとして廃棄処分されている。これらの廃棄物は自然状態で分解するのに長い時間がかかるため、土壌を汚染し、深刻な環境汚染を引き起こしているのが現状である。廃プラスチックをリサイクルするための方法として、廃プラスチックを熱分解して使用可能な油分に転換させることができ、これを廃プラスチック熱分解油という。
【0003】
廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を持つ炭化水素油分の混合物であり、前記炭化水素混合物の沸点および分子量分布特性によって熱分解油内の不純物の組成や反応活性が変わるため、石油化学産業または現場ですぐに使用することができず、沸点別分離工程または精製工程を経なければならない。
【0004】
炭化水素油分混合物のうち、オレフィン、例えばエチレン、プロピレンなどの硬質オレフィンは石油化学産業において広く使用されている。現在までほとんどのエチレンまたはプロピレンは、主に天然ガスやナフサ油分、ガス油などのようなパラフィン系化合物を主成分とする炭化水素油分を対象に、触媒のない無触媒条件下で800℃以上の高温の水蒸気雰囲気で熱分解して製造されているが、前記方法は炭化水素の転換率およびオレフィンの選択度が低いという問題がある。炭化水素転換率およびオレフィン選択度などの反応効率を向上させるための方案として流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking、FCC)工程が行われており、代表的に酸触媒を利用した接触分解工程を例に挙げるものであってもよい。様々な酸触媒の中でゼオライトが最も広く使用されており、代表的な触媒分解用ゼオライトとしてはZSM-5、USY、REY、β-ゼオライトなどが使用されている。
【0005】
しかし、廃プラスチック熱分解油には原油、天然ガス、ナフサ油分などと比較すると、塩素、窒素または金属などの不純物が過剰に含まれており、流動接触分解の過程で前記不純物によって触媒活性点が中和または不活性化され、反応活性が著しく低下するという問題がある。従来、廃プラスチック熱分解油の場合には、工程の途中で不活性化された廃触媒を除去し、新しい触媒を再度Make-upする方法で転換工程が行われているが、不活性化された触媒には不純物が過剰に含まれており、不活性化された量が相当であり、深刻な環境問題を引き起こすため、これを廃棄および処理することに経済的および環境的な制約がある。また、廃触媒を除去して新しい触媒をMake-upする過程で熱損失またはエネルギー損失が発生し、工程効率が著しく低下し、均一な反応活性を維持することが難しく、一定の品質を期待できない限界があり、最も深刻な問題は、廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンに転換される収率が著しく低く、転換された軽質オレフィン内にまだ塩素、窒素または金属などの不純物が含まれており、品質低下により経済的および商業的に実用化することが難しいということである。
【0006】
そこで、流動接触分解工程で廃プラスチック熱分解油から硬質オレフィンを高収率で製造できる技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、廃プラスチック熱分解油から硬質オレフィンを高収率で転換できる転換方法および転換装置を提供することである。
【0008】
本開示の他の目的は、廃プラスチック熱分解油からの軽質オレフィンの転化収率が10%以上、具体的には25%以上、より具体的には40%以上の廃プラスチック熱分解油からの軽質オレフィン高収率転化方法および転化装置を提供することである。
【0009】
本開示の他の目的は、廃プラスチック熱分解油に含まれる不純物による触媒の不活性化を防止して、軽質オレフィン転換工程を長期間安定して行うものであってもよい廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法および転換装置を提供することである。
【0010】
本開示の他の目的は、廃プラスチック熱分解油から転換された軽質オレフィン中の不純物の含有量を最小限に抑えるものであってもよい廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法および転換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップ、前記反応器で廃プラスチック熱分解油をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒の下で反応させる第2ステップ、および前記第2ステップの生成物から接触分解触媒および油分を分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップ、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、窒化物またはアルコキシドを含むものであってもよい。
【0013】
一実施形態では、前記アルカリ金属または土類金属の化合物は、酸化マグネシウムを含むものであってもよい。
【0014】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、Mg/Alモル比が10~40を満足するものであってもよい。
【0015】
一実施形態では、前記ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y-ZEOLITE、フェリエライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、MCM-22、SUZ-4またはL型ゼオライトを含むものであってもよい。
【0016】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、粘土(クレー)およびバインダーをさらに含むものであってもよい。
【0017】
一実施形態では、前記バインダーは、シリカ系化合物またはアルミニウム系化合物を含むものであってもよい。
【0018】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物1~10重量%、ゼオライト20~70重量%、粘土10~60重量%およびバインダー10~50重量%を含むものであってもよい。
【0019】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、平均粒径が50~2000μmであってもよい。
【0020】
一実施形態では、前記反応器は流動層反応器を含むものであってもよい。
【0021】
一実施形態では、前記廃プラスチック熱分解油は、常圧で沸点340℃以上の減圧ガス油(VGO)成分を含むものであってもよい。
【0022】
一実施形態では、前記第2ステップは、温度400~600℃、反応圧力50~200kPaで行うものであってもよい。
【0023】
一実施形態では、前記第3ステップで分離された接触分解触媒を回収して再生器(Regenerator)に投入した後、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を酸化させる第3-1ステップ、および酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒を前記第2ステップに循環して前記反応器内に再供給する第3-2ステップをさらに含むものであってもよい。
【0024】
一実施形態では、前記第3-1ステップは、酸素ガス下で600~800℃で行うものであってもよい。
【0025】
一実施形態では、前記第3-1ステップの前に、前記第3ステップで分離された接触分解触媒をストリッピング処理するステップをさらに含むものであってもよい。
【0026】
一実施形態では、回収された軽質オレフィン中の塩素含有量は10ppm以下、窒素含有量は50ppm以下であってもよい。
【0027】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物とゼオライトを含む接触分解触媒の下で接触分解反応が行われる流動層反応器と、前記流動層反応器から生成物が流入し、接触分解触媒と油分に分離されるサイクロンと、前記サイクロンから油分が流入し、ガス成分と液体成分に分離されるスタビライザーと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換装置を提供する。
【0028】
一実施形態では、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、窒化物またはアルコキシドを含むものであってもよい。
【0029】
一実施形態では、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化マグネシウムを含むものであってもよい。
【0030】
一実施形態では、前記サイクロンから接触分解触媒が流入し、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物が酸化される再生器(Regenerator)をさらに含み、前記再生器から酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒が再循環ラインを通じて流動層反応器に再流入するものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本開示による廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法は、廃プラスチ
ック熱分解油から軽質オレフィンを高収率で得るものであってもよい。
【0032】
本開示による廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法は、転換収率が10%以上、具体的には25%以上、より具体的には40%以上であってもよい。
【0033】
本開示による廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法は、流動層反応器を用いることにより、廃プラスチック熱分解油に含まれる不純物による接触分解触媒の不活性化を防止し、軽質オレフィン転換工程を長期間安定して行うものであってもよい。
【0034】
本開示による廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法は、転換された軽質オレフィン内の塩素または窒素などの不純物含有量が数ppmレベルで最小化できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書で使用される用語の単数形は、特に指示がない限り、複数形も含むと解釈するものであってもよい。
【0036】
本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内のすべての値、二重に限定されたすべての値、および異なる形で限定された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む。本明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の丸めにより発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0037】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と同等の意味を持つ開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料またはプロセスを排除するものではない。
【0038】
本明細書で言及されている%という単位は、特に定義がない限り、重量%を意味する。
【0039】
本明細書で特に言及された沸点は常圧を基準としたものであり、bP、沸点等の表現は沸点を意味する。
【0040】
本明細書で言及されるppm単位は、特に定義がない限り、質量ppmを意味する。
【0041】
廃プラスチック熱分解油は、廃プラスチックを熱分解して生成された炭化水素油分混合物であり、前記廃プラスチックは、廃合成樹脂、廃合成繊維、廃合成ゴム、廃ビニールなどの合成高分子化合物に関する固相または液相のゴミである。前記炭化水素油分混合物は、炭化水素油分の他に、塩素化合物、窒素化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物などの不純物を含むことができ、炭化水素内に塩素、窒素または金属が結合された化合物形態の不純物を含むことができ、オレフィン形態の炭化水素を含むものであってもよい。例えば、前記廃プラスチック熱分解油は、窒素300ppm以上、塩素30ppm以上、金属30ppm以上、オレフィン20体積%以上および共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1体積%以上を含むものであってもよい。このように、様々な不純物を含む廃プラスチック熱分解油を対象に従来の方法により流動接触分解工程を行う場合、不純物のために反応活性および反応収率が著しく低下し、転換された硬質オレフィン内に依然として塩素、窒素または金属などの不純物が存在するという致命的な問題がある。
【0042】
これに、本開示による廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法は、廃プラスチック熱分解油からの軽質オレフィン転換収率を大幅に向上させることができ、また、不純物による触媒の不活性化を抑制して軽質オレフィン転換工程を長期間安定して行うことができ、転換された軽質オレフィン内の塩素または窒素などの不純物の含有量を最小限に抑えるものであってもよい。つまり、原料が廃プラスチック熱分解油である場合に発生する低い収率および不純物含有量の問題を全て解決することができ、廃プラスチック熱分解油から不純物が最小化された高品質の軽質オレフィンを高収率で得るものであってもよい。
【0043】
具体的には、本開示は、廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、前記反応器で廃プラスチック熱分解油をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒の下で反応させる第2ステップと、前記第2ステップの生成物から接触分解触媒および油分を分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換方法を提供する。
【0044】
前記廃プラスチック熱分解油は炭化水素油分の混合物が含まれており、例えば、常圧で沸点80~150℃、炭素数C7~C9のNaphtha、沸点150~265℃、炭素数C10~C17のKerosene、沸点265~340℃、炭素数C18~C20のLGO、沸点340℃以上、炭素数C21以上のVGO/ARなどの多様な沸点および分子量分布を持つ炭化水素油分の混合物が含まれている。後述するように、従来の軽質オレフィン転換工程の際、VGOはKerosene、Naphthaに比べて転換効率が低すぎてこれを活用することが困難であり、主にVGOを除いたKerosene、Naphthaを原料として転換工程を実施したが、本開示の軽質オレフィン高収率転換工程は、減圧ガス油(VGO)成分を含む廃プラスチック熱分解油を原料としても非常に優れたクラッキング効率および軽質オレフィン転換効率を実現することができる。
【0045】
前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒を利用して、前記のような様々な炭化水素油分の混合物を含む廃プラスチック熱分解油から高い収率で軽質オレフィンに転換するものであってもよい。また、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素、窒素、硫黄または酸素などの不純物を捕獲(Trapping)することで、接触分解触媒の不活性化を防ぐことができ、転換された軽質オレフィン内の不純物を最小限に抑えることができる。
【0046】
一実施形態では、前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはルビジウムから選択される金属を含み、前記アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムから選択される金属を含むものであってもよい。具体的には、不純物捕獲能力を考慮すると、前記アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムであることができ、前記アルカリ土類金属はマグネシウムまたはカルシウムであってもよい。
【0047】
一実施形態では、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、酢酸塩、窒化物またはアルコキシドを含むものであってもよい。別の一態様として、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、構造体であることができ、例えば、類似ハイドロタルサイト構造体、二重層水酸化物構造体、スピネル構造体またはペロブスカイト構造体を含むものであってもよい。これは非限定的な一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。前記のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素、窒素、硫黄または酸素などの不純物を捕獲(Trapping)することにより、接触分解触媒の不活性化を防止することができ、転換された硬質オレフィン内の不純物を最小限に抑えることができる。
【0048】
好ましくは、廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン転換効率および不純物除去効率を考慮すると、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化カリウム、酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムが好ましく、最も好ましくは酸化マグネシウムであってもよい。前記酸化マグネシウムは前記不純物のうち、塩素に対する捕獲(Trapping)能が最も優れており、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素不純物を効果的に除去することができる。
【0049】
一実施形態では、前記ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y-ZEOLITE、フェリアライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、MCM-22、SUZ-4またはL型ゼオライトを含むものであってもよい。ゼオライトは、豊富な気孔構造および大きな比表面積を持つ多孔性分子篩として、活性座が多く、接触分解効率が優れているという利点がある。前記ゼオライトは、気孔を構成する原子の数、気孔の大きさまたは気孔の立体構造(1次元、2次元または3次元)によってクラッキング活性を調節することができる。前記のゼオライトのほか、従来公知のゼオライトを制限なく利用するものであってもよいが、廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン転換特性を考慮すると、ZSM-5またはY-zeoliteを利用することが望ましい場合がある。
【0050】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、粘土およびバインダーをさらに含むものであってもよい。前記接触分解触媒が粘土およびバインダーをさらに含むことにより、高い機械的強度を持つことができ、廃プラスチック熱分解油の硬質化プロセスを大規模な石油化学プロセスに活用するものであってもよい。
【0051】
前記バインダーは、シリカ系化合物またはアルミニウム系化合物を含むものであってもよい。例えば、Silica Sol、ケイ酸液、水ガラス、アルミナ、アルミナ-シリカ、PBA(Pseudo-Boehmite alumina)を含むものであってもよいが、これは一例であり、前記バインダーが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0052】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物1~10重量%、ゼオライト20~70重量%、粘土10~60重量%、バインダー10~50重量%を含むものであってもよい。前記重量範囲を全て満足する接触分解触媒は、軽質オレフィン転換収率が著しく向上することができ、不純物を吸着して触媒の不活性化を効果的に防止し、流動接触分解工程を長期間安定して行うことができる。
【0053】
前記接触分解触媒に含まれる各成分を個別に見ると、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物が前記重量範囲に含まれる場合、軽質オレフィン転換収率および不純物除去効果が向上することができ、接触分解触媒活性および水熱安定性も向上するものであってもよい。具体的には、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、1~8重量%で含有することができ、より具体的には、3~6重量%で含有するものであってもよい。
【0054】
前記ゼオライトが前記重量範囲に含まれる場合、接触分解効率が向上し、硬質オレフィン転換収率が最大化されることができる。具体的には、前記ゼオライトは20~60重量%、より具体的には30~50重量%含まれるものであってもよい。
【0055】
前記粘土が前記重量範囲に含まれる場合、接触分解触媒比重および全体的な接触分解触媒活性が最適化されることができる。具体的には、前記粘土は10~50重量%で含まれることができ、より具体的には20~40重量%で含まれるものであってもよい。
【0056】
前記バインダーが前記重量範囲に含まれる場合、接触分解触媒の摩耗強度などの物理的特性を良好に維持することができる。具体的には、前記バインダーは10~40重量%で含まれることができ、より具体的には15~35重量%で含まれるものであってもよい。
【0057】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、Mg/Alモル比が10~40を満足するものであってもよい。上述したように、前記硬質オレフィン変換効率および不純物除去効率を考慮すると、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化マグネシウムが最も望ましいものであってもよい。前記酸化マグネシウムが廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素、窒素、硫黄などの不純物を吸着することにより、ゼオライト内の固体酸活性点が不活性化されるのを防ぐことができる。ただし、前記酸化マグネシウムの含有量が高すぎる場合、ゼオライトの活性度に干渉を起こしてクラッキング活性および硬質オレフィン転換収率がむしろ低下することがあり、酸化マグネシウムの含有量が低すぎる場合、不純物除去効果が微々たる場合がある。これに、酸化マグネシウムに含まれるMgとゼオライトのAlのモル比を最適化し、Mg/Alモル比が10から40を満足するとき、不純物除去効果および硬質オレフィン転換収率が最大化することができる。好ましくは、Mg/Alモル比は10から35であることができ、より好ましくはMg/Alモル比は15から30であってもよい。
【0058】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、平均粒子サイズが50~2000μmであってもよい。廃プラスチック熱分解油の粘度、密度などの固有の特性に対応して、前記サイズを有する接触分解触媒を選別して利用する場合、オレフィン選択度および触媒活性が著しく向上することができる。具体的には、前記平均粒子径は50~1000μmであることができ、より具体的には50~700μmであってもよい。より具体的には、前記平均粒子径は50~200μmであることができ、最も具体的には80~150μmであってもよい。
【0059】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、総比表面積が50~150m/gおよび見かけの密度が0.5~1g/cmであってもよい。前記範囲では、原料との接触面積および分解効率が最適化され、軽質オレフィン転換収率が向上することができる。具体的には、前記総比表面積は50~130m/gおよび見かけ密度は0.5~0.8g/cmであり、より具体的には、前記総比表面積は70~100m/gおよび見掛け密度は0.6~0.7g/cmであってもよい。
【0060】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、下記式1を満たすものであってもよい。
【0061】
[式1]
2<(D90-D10)/D50<5
(前記式1は、接触分解触媒のレーザー回折法粒度分布測定装置で測定した体積基準分布における粒度分布幅を示したもので、D10は累積10%直径、D50は累積50%直径、D90は累積90%直径である。)
前記接触分解触媒の粒度分布幅が前記式1を満足することにより、ゼオライトの水蒸気(steam)による構造崩壊を防ぐことができ、触媒の安定性が向上することができる。後述するように、前記接触分解触媒を流動層反応器のRiserでのReactor工程およびRegeneratorでの再生工程の両方に利用することにより、接触分解触媒の安定性および接触分解効率がさらに向上することができる。具体的には、前記式1は2<(D90-D10)/D50<4であり、より具体的には、前記式1は2<(D90-D10)/D50<3であってもよい。
【0062】
本開示の廃プラスチック熱分解油の硬質オレフィン高収率転換方法をより具体的に説明すると、廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップにおいて、前記反応器は流動層反応器であってもよい。固定層反応器を利用する場合、炭化水素が接触分解触媒と接触する反応初期にはオレフィン収率が高いにもかかわらず、時間が経つにつれて触媒の不活性化および過剰なコーク発生により、全体的に炭化水素の転換率とオレフィンの収率が減少し、再生工程に多くのエネルギーが消費されるという問題がある。流動層反応器を利用することが前記問題を解決すると同時に、後述する触媒再生工程の面でも望ましい場合がある。改善された軽質オレフィン変換効率を実現することができる。このとき、流動層反応器はライザー(riser)とするものであってもよい。
【0063】
一実施形態では、前記廃プラスチック熱分解油は、常圧で沸点340℃以上の減圧ガス油(VGO)成分を含むものであってもよい。従来、VGOは軽質オレフィン転換工程の際、Kerosene、Naphthaに比べて転換効率が低すぎてこれを活用することが難しく、主にVGOを除いたKEROSENE、Naphthaを原料として転換工程を実施したが、本開示の軽質オレフィン高収率転換工程は、減圧ガス油(VGO)成分を含む廃プラスチック熱分解油を原料としても非常に優れたクラッキング効率および軽質オレフィン転換効率を実現することができる。
【0064】
前記反応器で廃プラスチック熱分解油をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒の下で反応させる第2ステップにおいて、前記第2ステップは、温度400~600℃および反応圧力50~200kPaで行うものであってもよい。前記第2ステップの反応効率は温度および圧力に大きく依存するため、前記条件でエネルギー消費を最小化することができ、触媒の不活性化を効果的に抑制するものであってもよい。具体的に前記温度は400~550℃および圧力は50~150kPaであることができ、より具体的に前記温度は400~500℃および圧力は50~100kPaであってもよい。
【0065】
さらに、前記第2ステップの反応効率は、滞留時間、触媒/熱分解油比または熱分解油/蒸気比に依存することができる。前記滞留時間は約0.1~600秒、触媒/熱分解油比は1~50、熱分解油/蒸気比は0.01~10であってもよく、具体的には、前記滞留時間は約0.5~120秒、触媒/熱分解油比は5~30、熱分解油/蒸気比は0.1~2.0であってもよく、より具体的には、前記滞留時間は約1~20秒、触媒/熱分解油比は10~20、熱分解油/蒸気比は0.3~1のものであってもよい。
【0066】
前記接触分解反応を行った後、第3ステップを通じて反応生成物から接触分解触媒および油分を分離して硬質オレフィンを回収することができる。具体的には、前記第2ステップの反応生成物は後述するサイクロンに流入し、短い時間内に接触分解触媒と油分を分離することができ、前記油分から軽質オレフィンを回収することができる。
【0067】
一実施形態では、前記第3ステップで分離された接触分解触媒を回収して再生器(Regenerator)に投入した後、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を酸化させる第3-1ステップと、および酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒を前記第2ステップに循環して前記反応器内に再供給する第3-2ステップと、をさらに含むものであってもよい。前記分離された接触分解触媒を再生器(Regenerator)に投入して酸素ガス下でアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を酸化させ、酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒を再び前記第2ステップに循環して前記反応器内に再供給することにより、経済性を向上させると同時に、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素または窒素などの不純物を除去することができる。具体的には、前記反応器は流動層反応器のライザー(riser)であることができ、再生器は流動層反応器の再生器(Regenerator)であってもよい。前記不純物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒に結合および分解され、工程内でガス状態で連続的に排出することで除去することができる。また、前記第3-1ステップおよび第3-2ステップをさらに含むことにより、従来の廃触媒を除去して新しい接触分解触媒をMake-upする過程で発生する熱損失またはエネルギー損失の発生などの問題を解決することができる。
【0068】
一実施形態では、前記第3-1ステップは、酸素ガス下で600~800℃で実施するものであってもよい。前記酸化工程は、酸素ガスを再生器(Regenerator)に別途注入して行うことができ、前記温度範囲で反応効率が最も優れている。具体的に前記温度は600~750℃であることができ、より具体的には600~700℃であってもよい。
【0069】
本開示の一実施形態による軽質オレフィン転換工程において、廃プラスチック熱分解油に含まれる不純物が接触分解触媒に含まれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物に吸着および分解される過程を具体的に見ると、例えば酸化マグネシウムの場合、塩素(Cl)不純物は下記反応式1および反応式2のような反応を伴って酸化マグネシウムに吸着および分解されるものであってもよい。
【0070】
[反応式1]
MgO+2HCl→MgCl+H
[反応式2]
2MgCl+O→2MgO+2Cl
窒素(Nitrogen)不純物は下記反応式3および反応式4のような反応を伴って酸化マグネシウムに吸着および分解することができる。
【0071】
[反応式3]
MgO+NO→MgNO
[反応式4]
2MgNO+7H→2MgO+2NH+4HO
硫黄(Sulfur)不純物は、下記反応式5~8のような反応を伴って酸化マグネシウムに吸着および分解するものであってもよい。
【0072】
[反応式5]
MgO+SO+1/2O→MgSO
[反応式6]
MgSO+4H→MgO+HS+3HO
[反応式7]
MgSO+4H→MgS+4HO
[反応式8]
MgS+HO→MgO+HS
一実施形態では、前記第3-1ステップの前に、前記第3ステップで分離された接触分解触媒をストリッピング処理するステップをさらに含むものであってもよい。前記第3ステップで分離された接触分解触媒には未分離の炭化水素油分が含まれている可能性があるため、これを除去するストリッピング工程をさらに含み、再生効率を向上させることができる。
【0073】
前記接触分解触媒は一態様として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物、ゼオライト、粘土およびバインダーを一緒に混合して成形された複合触媒であってもよい。このような複合触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物が接触分解触媒全体を修飾することにより、優れた不純物除去効果を実現することができる。
【0074】
他の一態様として、前記接触分解触媒は、ゼオライト、粘土およびバインダーを含む成形触媒とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物の成形触媒またはその構造体が混合された二元複合触媒であってもよい。上述したように、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、構造体であることができ、例えば、類似ハイドロタルサイト構造体、二重層水酸化物構造体、スピネル構造体またはペロブスカイト構造体を含むものであってもよい。このような二元複合触媒は再生効率が優れており、触媒活性を長期間維持することができる。
【0075】
一実施形態では、前記接触分解触媒の製造方法は次のようにするものであってもよい。ゼオライト、粘土およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を混合し、粉砕して混合固体微粉を製造するステップと、アルミナゲルを含むバインダーを製造するステップと、前記混合固体微粉とバインダーを均一に混合して混合スラリーを製造するステップと、前記混合スラリーを噴霧乾燥した後、焼成して球状触媒を製造するステップと、ふるい分けを通じて平均粒子径5~200μmの触媒を回収するステップと、回収された触媒をセリウムおよびランタンを含む希土類金属(RE)塩化物の水溶液でイオン交換処理した後、焼成するステップと、を通じて触媒を製造するものであってもよい。このような方法で製造された球形の成形触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物の不純物吸着効果に優れ、水熱安定性に優れ、ゼオライトの散点を効果的に保護することができ、何より廃プラスチック熱分解油の接触分解時に著しく高い収率で硬質オレフィンに転換させることができる。他にも接触分解触媒は高温多湿な雰囲気でも高い分解活性および安定性を示すことができる。
【0076】
一実施形態では、廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンに転換される収率は10%以上であってもよい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒を利用することにより、廃プラスチック熱分解油から硬質オレフィンを効率的に転換するものであってもよい。具体的には、軽質オレフィンに変換される収率は25%以上であり、より具体的には、軽質オレフィンに変換される収率は40%以上であってもよい。非限定的に、軽質オレフィンに変換される収率は90%以下であってもよい。
【0077】
一実施形態では、廃プラスチック熱分解油から転換された軽質オレフィン中の塩素含有量は10ppm以下および窒素含有量は50ppm以下であってもよい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒を用いて工程を行うことにより、不純物が最小化された硬質オレフィンを得ることができる。前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、前記不純物のうち、塩素に対する捕獲(Trapping)能が最も優れており、塩素を効果的に除去することができる。他にも窒素または硫黄などの不純物も低減することができ、具体的に前記転換された軽質オレフィン内の塩素含有量は5ppm以下および窒素含有量は30ppm以下であることができ、より具体的に塩素含有量は3ppm以下および窒素含有量は10ppm以下であってもよい。非限定的に、前記塩素含有量は0.01ppm以上および窒素含有量は0.1ppm以上であってもよい。
【0078】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物とゼオライトを含む接触分解触媒の下で接触分解反応が行われる流動層反応器と、前記流動層反応器から生成物が流入し、接触分解触媒と油分に分離されるサイクロンと、前記サイクロンから油分が流入し、ガス成分と液体成分に分離されるスタビライザーと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン高収率転換装置を提供する。
【0079】
一実施形態では、前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはルビジウムから選択される金属を含み、前記アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムから選択される金属を含むものであってもよい。具体的には、不純物捕獲能力を考慮すると、前記アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムであることができ、前記アルカリ土類金属はマグネシウムまたはカルシウムであってもよい。
【0080】
一実施形態では、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、酢酸塩、窒化物またはアルコキシドを含むものであってもよい。別の一態様では、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、構造体であることができ、例えば、類似ハイドロタルサイト構造体、二重層水酸化物構造体、スピネル構造体またはペロブスカイト構造体を含むものであってもよい。これは非限定的な一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。前記のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素、窒素、硫黄または酸素などの不純物を捕獲(Trapping)することにより、接触分解触媒の不活性化を防止することができ、転換された硬質オレフィン内の不純物を最小限に抑えることができる。
【0081】
好ましくは、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン転換効率および不純物除去効率を考慮すると、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、酸化カリウム、酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムが好ましく、最も好ましくは酸化マグネシウムであってもよい。前記酸化マグネシウムは前記不純物のうち、塩素に対する捕獲(Trapping)能が最も優れており、塩素を最も効果的に除去することができる。
【0082】
前記廃プラスチック熱分解油は流動層反応器内部に供給され、より円滑な反応のために30~600℃の温度で加熱されて供給されることもある。前記廃プラスチック熱分解油は流動層反応器内に備えられたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒と混合されるか、または再生器(Regenerator)から流動層反応器に連結された再循環ラインを通じて供給される接触分解触媒と混合するものであってもよい。それ以外にも、供給原料と接触分解触媒の混合工程は、当業界で知られている様々な方法で構成が可能であり、これらの構成は全て本開示の領域に含まれる。
【0083】
前記流動層反応器で400~600℃の温度条件および50~200kPaの圧力条件で接触分解反応を行うことができ、この時、流動層反応器はライザー(riser)とするものであってもよい。ここから生成物はサイクロンに流入して油分と接触分解触媒で分離するものであってもよい。前記サイクロンから分離された油分はスタビライザーに流入し、冷却を通じてガス成分と液体成分に分離するものであってもよい。
【0084】
一実施形態では、前記サイクロンから接触分解触媒が流入し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物が酸化される再生器(Regenerator)をさらに含み、前記再生器(Regenerator)から酸化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含む接触分解触媒が再循環ラインを通じて流動層反応器に再流入するものであってもよい。前記分離された接触分解触媒はサイクロンに蓄積され、前記サイクロンの下部に接続された別個のラインを通じてストリッピング蒸気(Stripping Steam)が供給されるものであってもよい。前記ストリッピング蒸気はサイクロンに沿って上部に移動しながら、接触分解触媒が含んでいる未分離の炭化水素反応生成物を除去して排出する。前記サイクロンでストリッピング蒸気を経た接触分解触媒は再生器(Regenerator)に流入し、この時、接触分解触媒に含まれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物には、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素または窒素などの不純物が吸着された状態である可能性がある。前記再生器(Regenerator)には別の注入口を通じて酸素を含む空気などの気体が流入され、600℃以上の高い温度で接触分解触媒と酸素が反応し、結果としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物に吸着された不純物をガスとして排出し、除去するものであってもよい。前記のように処理された接触分解触媒は、再循環ラインを通じて反応器に再流入するものであってもよい。
【0085】
以下、本発明を実施例を通じて詳細に説明するが、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0086】
実施例1
1)供給原料
廃プラスチック200gをBatch熱分解反応器に投入し、500℃で熱分解を行い、熱分解油を得た。前記熱分解油に含まれる炭化水素油分混合物の分布を下記表1に示した。
【0087】
【表1】
蒸留装置を通じて前記熱分解油を沸点別に分離し、C21以上のVGOのみを選択的に回収して熱分解油原料を準備した。前記回収されたVGO内の不純物含有量は塩素16ppm、窒素265ppmおよび硫黄23ppmが含まれている。
【0088】
2)触媒製造
Pseudoboehmite 70gを水500gに導入し、常温で攪拌しながら、formic acid 10gを導入した後、3時間維持してalumina gelを製造する。Mg/Alモル比が25になるようにClay(Kaoline)、ZSM-5とMgOを混合機に導入し、10分間攪拌する。MgOの導入量はClayとZSM-5物質総量の5重量%を導入した。混合機でClay、ZSM-5、MgOの混合物を攪拌して小さな粒子に均一にした後、前記alumina gelを導入し、再び混合機で攪拌する。攪拌中にLudox(AS 40)60gを導入した後、粘度計を通してslurryの粘度を測定する。
【0089】
その後、slurryの粘度がsolからgelに転換される過程で噴霧乾燥を通じて球状触媒に製造した後、120℃のovenで12時間乾燥し、550℃で3時間焼成して流動層触媒を製造した。回収された触媒はsievingを通じて粒子サイズ30~200μmの触媒だけを選別分離した後、5%RE-metal solutionで60℃で3時間イオン交換させた後、触媒を乾燥し、550℃で3時間焼成して最終触媒を製造した。
【0090】
3)接触分解工程
DCR(Davison Circulating Riser)反応システムを120分間運転して触媒活性評価を行った。Cracking反応とRegeneratorでの触媒再生反応はそれぞれ530℃、730℃で進行し、Cracking反応が行われるStripperは527℃に維持され、反応が進行した。反応部にFeedとsteamはそれぞれ850g/h、80g/hで導入し、N2はStripperに180lps、Reactorに40lpsが導入され、合計220lpsの速度で導入され、Cycloneで分離された触媒はRegeneratorに流入して再生された。AirはRegeneratorでの触媒再生のために900lpsの速度で導入された。触媒と導入原料の比率であるCat/Oil ratioは11から20の条件で運転を行った。生成物はstabilizerでgasとliquidに分離され、回収されたgasはGCを通じて分析し、liquidはsimdisを通じて分析を進めた。Coke、CO、HはCO/CO Analyzerを使用して分析を行った。
【0091】
実施例2
実施例1において、接触分解触媒のMg/Alモル比が50となるように触媒を製造した以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0092】
実施例3
実施例1において、触媒製造時にMgOの代わりにハイドロタルサイト(MgAlCO(OH)16・4HO)を用いて触媒を製造した以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0093】
実施例4
実施例1において、MgOの代わりにMgSiOを用いて触媒を製造した以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0094】
実施例5
実施例1において、MgOの代わりにCaOを用いて触媒を製造した以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0095】
実施例6
実施例1において、MgOの代わりにKOを用いて触媒を製造した以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0096】
実施例7
実施例1において、再生器(Regenerator)を省略して触媒の再生工程を行わなかった以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0097】
比較例1
実施例1において、MgOを含まない触媒を製造した以外は、実施例1と同じ条件で工程を行った。
【0098】
評価例
DCR(Davison Circulating Riser)反応システムを120分間運転して生成された油分を対象に分析を行った。気体成分油分はオンライン(on-line)ガスクロマトグラフィー(モデル名 HP6890N)を通じて定量し、液体成分油分は貯蔵タンクに回収した後、simdisを通じて定量した。
【0099】
最終的に得られた硬質オレフィン中の塩素含有量(ppm)をIC、TNS分析法で測定して評価した。
【0100】
前記分析結果を下記表2に記載した。
【0101】
【表2】
前記表2のように、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物およびゼオライトを含む接触分解触媒を用いた実施例1~実施例7は、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が比較例1より優れていることが確認できる。
【0102】
詳細には、実施例1は、MgOを含み、Mg/Alモル比が25を満足する接触分解触媒を利用することにより、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が最も優れていることが確認できる。
【0103】
実施例2は、Mg/Alモル比が50の接触分解触媒を用いることにより、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が実施例1よりやや低下するが、比較例1より優れていることが確認できる。
【0104】
実施例3は、MgOではなく、ハイドロタルサイト(MgAlCO(OH)16・4HO)を含む接触分解触媒を用いることにより、実施例1よりコーク低減効果が優れていることが確認できる。
実施例4は、MgOではなくMgSiOを含む接触分解触媒を利用することにより、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が実施例1よりやや低下するが、比較例1より優れていることが確認できる。
【0105】
実施例5は、MgOではなくCaOを含む接触分解触媒を用いることにより、クラッキング効率、硬質オレフィン転換収率が実施例1に次いで優れていることが確認できる。
【0106】
実施例6は、MgOではなくKOを含む接触分解触媒を用いることにより、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が実施例1よりやや低下するが、比較例1より優れていることが確認できる。
【0107】
実施例7は、接触分解触媒の再生工程を省略することにより、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が実施例1よりやや低下するが、比較例1より優れていることが確認できる。
【0108】
比較例1は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を含まない接触分解触媒を利用することにより、クラッキング効率、軽質オレフィン転換収率および塩素低減効果が最も低いことが確認できる。
【0109】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態で実施することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術思想や本質的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施するものであってもよいことを理解できるであろう。したがって、前記で説明した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解されるべきである。