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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080693
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20240606BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E04H1/02
E04B1/348 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204023
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022193650
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522471021
【氏名又は名称】有限会社パステル
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正道
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA01
2E025AA13
(57)【要約】
【課題】建替えや解体、新規の建築及び移動が容易で、多機能かつコンパクトな住宅を提供供する。
【解決手段】社会構造の変化に対応させた新たな構造の住宅であって、空気循環冷暖房装置13に代表されるような多機能な家庭用電気機器17と、省スペースな家具15と、それらの家庭用電気機器17及び家具15を内包する25~30坪の敷地2の面積を有する建物1とを備える平屋建てのコンパクトな住宅であり、新しい構想に基づいたコンパクトシティの実現に資するものである。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能な家庭用電気機器と、
省スペースな家具と、
前記家庭用電気機器及び前記家具を内包する、25~30坪の敷地面積を有する建物と
を備えることを特徴とする住宅。
【請求項2】
前記建物が、車いす使用者が車いすに乗ったまま該車いすを自走させて前記建物の外へ出入り可能な大きさを有する窓を有することを特徴とする請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
前記建物が平屋建てであることを特徴とする請求項1又は2に記載の住宅。
【請求項4】
コンクリート基礎と、
前記コンクリート基礎のパターンに、少なくとも4隅の位置が整合するロの字型の形状をなし前記コンクリート基礎の上に搭載される土台枠、前記4隅のそれぞれにおいて、前記土台枠がなす面に対して垂直方向に沿って、着脱自在に前記土台枠上に配置された柱を有するユニット構造物と
を備え、該ユニット構造物の複数を前記コンクリート基礎の上で連結して平屋建ての建物とすることを特徴とする住宅。
【請求項5】
前記コンクリート基礎と前記土台枠とを連結する可撓性のある連結部材を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の住宅。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトシティに資する多機能かつコンパクトな住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の住宅建築及び都市計画には多くの問題がある。例えば、自然災害により住宅が全壊・半壊等すると建替えの必要が生じるが、建築資材等が不足し、高騰する場合がある。建替えの必要が生じずに、災害により損壊した部分のみの修繕を行う場合でも同様である。住宅には戸建て、マンション等、多様な形態が存在するが、いずれの建築様式においても、建替えや解体は多大なる手間や費用を要し、手続も煩雑なものである。この問題を解決することは、地震等の自然災害が多い日本にとっては、喫緊の課題である。
【0003】
また、都市部においては、大手建設会社等が安全性をうたい、容積率緩和も相まって、超高層ビルと言われるような高層ビルを乱立させている状況である。高層ビルの新規建築の時点には、災害等の有事の際の解体や瓦礫処理の費用については検討されておらず、将来において大きな無駄が生じるような都市計画が現在進行形で進んでいる状況ではないかと思料する。
【0004】
また、今や20~40代の働き盛りの若者世代においては、土地の広さや住宅の大きさ等は彼等の望むステータスとなっていない。そもそも都市部においては広大な土地の確保が困難であり、確保可能であっても大変高額となる場合が多いということも要因として挙げられるが、将来的な管理コストを含めて合理的な費用で済むような住宅を望む若者世代が多い。少子高齢化社会で核家族化が進み、独り立ちした子供は同居することもない。その一方で、所有者不明の空き家や空き地も増えている。斯かる事情を鑑みれば、広すぎずに管理や移動が容易であり、固定資産税等の費用も少なく済むような住宅が好まれる傾向にある。同様に、自家用車についても、若者世代はブランド志向の者は少なく、身の丈に合ったスペックの手頃な値段の車両を好む傾向にある。若者世代においては、自身のステータスのために高額な自家用車を複数台持つようなことはほとんどなくなり、気軽に乗り回せる自家用車が1台あればそれで十分という考え方となってきている。
【0005】
また、現時点では広い土地に大きな住宅を持つ者であっても、老後のことを考え、現在より狭い土地に現在より小さな住宅を新たに建て、将来の管理コストや手間を抑えたい、というニーズもある。余分な土地を売却し、売却益で旧住宅をリフォームしたいというニーズもある。老後においては大きすぎる住宅や広すぎる庭は、管理の面では人的にも経済的にも大きな負担となるのみである。小さくとも、高気密で省エネ効果があり、耐震・耐火等の防災面で安全であり、生活動線が最短となるような、日々を過ごしやすい住宅が望まれる。また老後においては、バリアフリーであることも住宅の要件として大きな比重を占めることになる。
【0006】
以上のように、一般の人々が、住居地を含め、住宅を選定する基準や考え方は従来とは異なってきているため、従来基準の構造の住宅では、販売が行き詰まる格好となる。また、日本全体が人口増を想定していた都市計画と同様の計画では、今後は破綻の一途をたどることになり、少子高齢化と人口減を想定したコンパクトで、建替えや解体、移動等が容易な住宅やコンパクトシティが求められている。
【0007】
特許文献1においては、敷地面積の狭い住宅におけるコンパクトな住宅の発明が記載されているが、居住スペースの配置の仕方に主眼が置かれた住宅構造であり、本発明の出願人が望むような、コンパクトシティを念頭においた建替えや解体、新規の建築及び移動が容易で、多機能かつコンパクトな住宅にはほど遠いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-182066公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであって、建替えや解体、新規の建築及び移動が容易で、多機能かつコンパクトな住宅を提供し、この住宅によりコンパクトシティに資することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、多機能な家庭用電気機器と、省スペースな家具と、これらの家庭用電気機器及び家具を内包する、25~30坪の敷地面積を有する建物とを備える住宅であることを要旨とする。
【0011】
本発明の第2の態様は、(a)コンクリート基礎と、(b)コンクリート基礎のパターンに、少なくとも4隅の位置が整合するロの字型の形状をなしコンクリート基礎の上に搭載される土台枠、4隅のそれぞれにおいて、土台枠がなす面に対して垂直方向に沿って、着脱自在に土台枠の上に配置された柱を有するユニット構造物と備える住宅であることを要旨とする。第2の態様に係る住宅においては、ユニット構造物の複数をコンクリート基礎の上で連結して平屋建ての建物とすることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建替えや解体、建築及び移動が容易で、多機能かつコンパクトな住宅を提供し、この住宅によりコンパクトシティに資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の第1実施形態に係る住宅を含む敷地の模式的な平面図である。
図1B】第1実施形態の住宅を、ユニット構造物に分解するモデル図である。
図1C】本発明の第1実施形態の変形例に係る住宅を、ユニット構造物に分解するモデル図である。
図1D図1Cに示したユニット構造物の基本構造を説明する鳥瞰図である。
図1E図1Dに示したユニット構造物の柱が取り外し可能であることを説明する鳥瞰図である。
図1F】コンクリート基礎の上にユニット構造物を配置する例を説明する模式的な鳥瞰図である。
図2A】本発明の第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物を説明する模式的な鳥瞰図である。
図2B】第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物の水害時の浮遊移動防止機構を説明する模式的な鳥瞰図である。
図2C】第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物の水害時の浮遊移動防止機構を説明する断面図である。
図3A】第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物の複数を連結して住宅を構成することを説明する模式的な鳥瞰図である。
図3B】第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物を連結し、固定する機構を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、図面を参照して、本発明の第1及び第2実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面はあくまで模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。また、図面は建築に関する各種法律に則った記載方法ではなく、本発明を説明するための模式的な図に過ぎないことに留意が必要である。
【0015】
また、以下に示す第1及び第2実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための物や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、第1及び第2実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明特定事項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る住宅は、図1Aに示すように、住居空間として建物1を有し、建物1の内部に、家具15、家庭用電気機器17及び空気循環冷暖房装置13を有する。建物1は、コンパクトさという観点では、基本的には平屋建てが望ましい。建物1は敷地2内に建築されている。敷地2は50~60坪が好ましく、建物1の敷地面積は25~30坪が好ましい。図1Aの建物1については、内部の間取りを模式的に表現している。
【0017】
図1Aに示すように、建物1には部屋1a、1b及び1cが設けられている。部屋1aは玄関ドア5から建物1の外部に通じ、ドア7aを介して部屋1cと通じ、ドア7bを介して部屋1bと通じている。部屋1bはドア7cを介して部屋1cと通じ、窓6aを介して建物1の外部に通じている。部屋1cは窓6b、6c及び6dを通じて建物1の外部に通じている。部屋1cには空気循環冷暖房装置13及び家具15が備え付けられ、家具15には家庭用電気機器17が設置されている。図1Aにおける、部屋の大きさ、形状、個数及び配置等、玄関ドアの大きさ、形状、配置及び個数等、窓及びドアの大きさ、形状、配置及び個数等、家庭用電気機器(以下において「家電」とも言う。)の大きさ、形状、配置及び個数等、家具の大きさ、形状、配置及び個数等は、本発明の第1実施形態のあくまで例示に過ぎない。例えば、建物1の部屋は1つ又は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、敷地2の縦横比についても、建物1との関係等で自在に変化させることが可能であり、図1Aに示す通りの矩形でなくともよい。
【0018】
建物1の壁、床、天井等の壁材には、青森県産の建築材木を利用することができる。青森県産の建築材木を利用することで各種助成金も利用することができる場合がある。家電その他の電子機器の配線を、建築当初から壁、床、天井等の内部に配置して、全体がスッキリ見えるように工夫してもよい。配線を壁等の内部に配置することで、日常の清掃の手間や時間を大幅に削減することができる。配線等の点検・交換等が容易にできる工夫も施すことができる。
【0019】
図1Aに示す部屋1aについては、玄関ドア5が設けられており、玄関として利用することができる。部屋1bについては、浴室及びトイレ、又は納戸等として利用することができる。部屋1cについては、キッチン、リビング及びダイニングとして利用することができ、部屋1cをパーティション等で複数の空間に分割して利用することも可能である。いずれも、図1Aに示す各部屋の利用の形態については一例に過ぎない。建物1の間取りについては、生活環境の変化に対応できるような可変の間取りであることが好ましい。また、建物1は、建物1の外部も含めて全部屋がバリアフリーであることが望ましい。
【0020】
建物1の基礎部分については、大雨災害が予想される地域では、従来より30~50cm高くすることが望ましい。また、建物1の天井部分については、従来より高くして、居住者の圧迫感を軽減する等の工夫をすることができる。建物1の屋根裏部分には収納スペースを多く設けることができれば、天井以下の居住部分を広々と利用することができる。建物1の屋根は、無落雪構造であってもそうでなくともよい。無落雪屋根とする場合は、大雪だけでなく大雨にも対応させた構造とする。
【0021】
窓6a、6b、6c及び6dについては、採光や換気の目的のみならず、避難口として利用できる大きさ等であることが好ましい。窓6a、6b、6c及び6dは、火災、大雨、地震等の災害、防犯等の目的のある避難口である。また、窓6a、6b、6c及び6d自体に太陽光発電機能があり、日中に常時発電を行うタイプのものであってもよい。窓6a、6b、6c及び6d自体に太陽光発電機能がある場合、屋根に太陽光パネルを設置しなくてもよいため、屋根が傷みにくいという効果が生じる。更に、窓6a、6b、6c及び6dに、外から建物1の内部が見えにくい加工が施されている場合、建物1内部にカーテンやブラインド等の遮蔽物は不要となり、建物1の内部をより広く利用できる。勿論、窓6a、6b、6c及び6dの他にも、避難口として機能する出入口を設けてもよい。ドア7a、7b、7cについては、開き戸、引き戸、折れ戸等、省スペースを実現できるのであればいずれのタイプであってもよい。
【0022】
図1Aに示すように、敷地2内かつ建物1の外部には、主に雨水用の貯水装置19が設けられている。貯水装置19は、建物1の雨樋から集水された雨水を貯水できるものであり、雨水を日常用水として再利用することができる。例えば庭木の水やり用、家庭菜園用、外の清掃用、災害時等の非常用の貯水装置等として利用することができる。
【0023】
図1Aに示すように、敷地2内かつ建物1の外部には、建物1の脇に駐車スペース3が設けられている。駐車スペース3には車両11を駐車することができる。車両11には、車いすを建物1の内部から窓6dを介して直接搬出入ことができることが望ましい。車いす使用者を乗せたまま車いすを搬出入できるスロープ等が敷設されていると尚よく、車いす使用者が車いすを自走させて車両11に自在に出入りできることがより好ましい。酸素ボンベや呼吸器などが必要な車いす使用者の場合は、酸素ボンベ等を車いすの後に固定する場合が多い。酸素ボンベ等を車いすの後に固定すると、車いすの重心位置が変わり、車いすの後方への転倒や、酸素ボンベの転倒等のヒヤリ・ハットもある。建物1と駐車スペース3との間には、酸素ボンベ等を固定した車いすでも、安全に搬出入できるスロープ等が敷設されていることが好ましい。
【0024】
車両11は、運転席に直接車いすを乗り入れでき、車いすが運転席となる電気自動車であってもよい。電気自動車は建物1内外のコンセントに接続して充電して蓄電し、有事の際には建物1等へ送電できる仕組みであれば尚よい。駐車スペース3の大きさ、形状、配置及び個数等はあくまで例示であり、図1Aに示した通り以外であっても構わない。
【0025】
図1Aに示す家具15については、棚、箪笥等であり、省スペースな家具である。家具としては家具15の他に、必要に応じて、テーブル、いす、ソファ、こたつ等を置いてもよいが、いずれも省スペースな家具である。例えば仏壇も小型にし、棚の上に設置できるようにすれば、省スペースを実現できる。家具を小型化・省スペース化するために、衣類や食器等の数を最小限にしておくとよい。
【0026】
図1Aに示す家庭用電気機器17については、家具15の上に設置されている小型家電である。例えば、防災無線機能を有するラジオ等である。家庭用電気機器17以外にも、他の家電を建物1内の各所に設置してもよい。例えば、全部屋を隈なく掃除する自動掃除ロボット等である。各部屋に掃除機を置かなくて済み、家電数を抑えることができ、省スペースにもつながる。各家電の配線については、上述したように建物1の壁等の内部にあらかじめ配置してもよい。
【0027】
図1Aに示す空気循環冷暖房装置13については、家電のひとつであり、空気清浄、除湿・加湿、冷暖房等の複数の機能を有する装置である。世の中には空気清浄機、除湿器、加湿器、冷房、暖房等がそれぞれ別個の装置として存在するが、それぞれを保有する場合は多くのスペースを占有することになり、省スペースは実現できない。よって、図1Aに示す空気循環冷暖房装置13のように、多機能家電を住宅に取り入れることにより、全体として省スペースを実現でき、建物1をより小さく設計することが可能となる。
【0028】
建物1の光熱費については、徹底してコストダウンを目指す。電力は、深夜電力を利用したり、その他使用料が低廉な時間帯に利用したりする。また、電気自動車や太陽光パネルによる蓄電も利用する。防犯上、常夜灯は建物1の内外に必要である。その他、建物1の内部に人感センサを利用した電子機器や室内照明も利用する。建物1はコンパクトな住宅を構成するため、従来の住宅より冷暖房費がかからない。部屋1a、1b、1cのすべての部屋を1つの冷暖房システムで管理することができれば、室外機も1台で済む。例えば、空気循環冷暖房装置13で建物1のすべての空調を一元管理する方法を採用できる。空気循環冷暖房装置13が設置されている部屋1cのみならず、部屋1a及び部屋1bについても、冷暖房された空気が直接的に又は間接的に循環するような仕組みとする等である。水道は、蛇口やシャワーから出る水をナノシステム水とし、節水を目指す。トイレはタンクレスの節水タイプを設置する。
【0029】
フードロスを軽減し、ごみをできるだけ出さないという観点から、建物1には、生ごみを微生物で分解して肥料にする装置を導入することも可能である。得られた肥料は家庭菜園や庭等で利用する。
【0030】
また、建物1には、医療関係者や別居の家族等に向け、建物1内の様子を映像で配信するような見守り装置を設けることも可能である。建物1内で居住者等に異常が見られた場合、関係各所へ通報され、然るべき処置を迅速に受けることができる。建物1は、犬等のペットも同居できるように設計することができ、ペットの様子を監視するための見守り装置を設けることも可能である。
【0031】
第1実施形態に係る住宅を新規で建築する場合は、駐車スペースも含めた敷地は50~60坪もあればよい。既に50~60坪以上の敷地がある場合は、余剰分を分割して売却するか、すべて売却して50~60坪程度の土地を新たに購入する。売却益は老後の資金、介護施設等への入居費用、リフォーム後の家電買替え等に利用できる。
【0032】
第1実施形態に係る住宅によれば、コンパクトな平屋建て住宅であるため、建築資材の必要量が少なくて済み、建築資材の不足が起こりにくく、建築費用も高額になりにくい。第1実施形態に係る住宅によれば、コンパクトな敷地にコンパクトな平屋建て住宅を保有することになるので、生活動線の最短化を図ることができる。第1実施形態に係る住宅はバリアフリーで平屋建てであるので、たとえ車いす使用者であっても日常生活を快適に過ごすことができる。第1実施形態に係る住宅はあらゆる面の無駄をそぎ落とした住宅でもあるため、効率化を求める若者世代にとっても、長期間にわたって住む住宅として魅力的である。
【0033】
第1実施形態に係る住宅によれば、平屋建てであるので、リフォームや解体等が比較的容易である。建物1には数種類の規格化したデザインを用意すれば、割安の価格で一般の人々に提供することができる。第1実施形態に係る住宅の建替えや解体を容易にするためには、図1Bに示すように、複数のユニット構造物に分解できるようにすればよい。図1Bでは破線A-Aで2分割し、更に破線B-Bで4分割し、4つのユニット構造物に分解できる例を示している。4つのユニット構造物の内、図1Bの左上に示した第1のユニット構造物は、第1の柱41p、第2の柱41q、第9の柱41x及び第8の柱41wで囲まれた居住空間を構成している。図1Bの左下に示した第2のユニット構造物は、第2の柱41q、第3の柱41r、第4の柱41s及び第9の柱41xで囲まれた居住空間を構成している。図1Bの右下に示した第3のユニット構造物は第4の柱41s、第5の柱41t、第6の柱41u及び第9の柱41xで囲まれた居住空間を構成している。図1Bの右上に示した第4のユニット構造物は第6の柱41u、第7の柱41v、第8の柱41w及び第9の柱41xで囲まれた居住空間を構成している。
【0034】
図18の左側の中央より少し下に示した第2の柱41qは、第1及び第2のユニット構造物に共有される柱なので2本組の柱である。2本組の柱は、2本の柱を鋼板巻立て補強やボルト締め等で1本の柱に一体化して固定した後、必要に応じて表面に化粧板を巻く等の内装の処理をすればよい。同様に、第4の柱41sは、第2及び第3のユニット構造物に共有されるので2本組になるが、鋼板巻立て補強等で1本の柱に一体化して固定できる。更に、第6の柱41uは、第3及び第4のユニット構造物に共有される柱なので2本組の柱であり、第8の柱41wは、第4及び第1のユニット構造物に共有され2本組になるが、鋼板巻立て補強等で1本の柱に一体化して固定できる。第9の柱41xは、第1~第4の4つのユニット構造物に共有される柱なので4本組の柱である。4本組の柱は、4本の柱を鋼板巻立て補強等で1本の柱に一体化して固定した後、必要に応じて表面に化粧板を巻く等の内装の処理をすればよい。
【0035】
通常の一般建築では、家屋の床下には「土台」と呼ばれる12cm角程度以上の太い角材が、家屋の外周に沿って設けられ。この土台の上に土台の長手方向に直交する9cm角程度の「大引(おおびき)」と呼ばれる角材が60cm程度の間隔で並べられ、その上に大引きと直行する形で根太(ねだ)が乗り、根太の上に床板が張られる。第1実施形態に係る住宅を構成する第1~第4のユニット構造物においては、太さ的には、大引に相当する9cm角程度の角材を用いて、第1~第4のユニット構造物の床下構造の構造力学的強度を達成されている。第1実施形態に係る住宅を構成する第1~第4のユニット構造物は、図1Bに示したような住宅を4つに分割した構造である。しかも、コンパクトシティ用の住宅であるため、従来の家屋よりも小型であるので、第1~第4のユニット構造物の自重も小さいため、構造力学的に求められる剪断力、曲げモーメント、パンチングシヤ等は小さい。
【0036】
よって、第1のユニット構造物の床下に、一般住宅の土台に用いられる角材よりも細い、例えば9cm角程度の角材を用いて床下構造が構成しても、構造力学的な強度が担保できる。即ち、第1のユニット構造物の床下には、額縁型(ロの字型)の枠組みが、隅留ホゾ差等(以下において「ホゾ等」という。)の継手法を用いて、互いに直角に組まれ9cm角程度の角材を用いて構成されている。9cm角程度の角材は、太さ的には、大引に相当するが、本明細書では、第1のユニット構造物の床下構造を構成する額縁型(ロの字型)の枠組みを「土台枠」と称することとする。土台枠が搭載されるコンクリート基礎71の立ち上がりも、土台枠の寸法とパターンに適合したものにしておくことが望ましい(後述する図1F参照。)。そして、それぞれ9cm角程度の角材を用い、第1の柱41p、第2の柱41qの上側の柱41q1、4分割第9の柱41xの左上側の柱41x1及び第8の柱41wの左側の柱41w2が土台枠の4隅に配置されている。
【0037】
同様に、第1のユニット構造物の天井構造は、第1の柱41p、第2の柱41qの上側の柱41q1、4分割第9の柱41xの左側の柱41x1及び第8の柱41wの左側の柱41w2の位置を4隅とするように、9cm角程度の角材を用いてロの字型の枠組みが構成されている。本明細書では、第1のユニット構造物の天井構造の構造力学的強度を達成するロの字型の枠組みを「天井梁枠」と称することとする。ロの字型の枠組みもホゾ等の継手技法を用いて各隅を互いに直角に結合している。実際には天井梁枠の4隅のそれぞれと、対応する土台枠の4隅のそれぞれが、第1の柱41p、第2の柱41qの上側の柱41q1、第9の柱41xの左側の柱41x1及び第8の柱41wの左側の柱41w2が分離自在に結合され、ユニット構造物の骨組み(スケルトン)を実現し、他のユニット構造物との分離及び結合が自在にできる構造になっている(図1D参照。)。
【0038】
同様に、第1のユニット構造物と同じ太さの角材を用いて、第2のユニット構造物の床下構造は、第2の柱41qの下側の柱41q2、第3の柱41r、第4の柱41sの左側の柱41s1及び第9の柱41xの左下側の柱41x2のそれぞれの位置を4隅とするロの字型の土台枠が構成され、他の土台枠と分離及び結合が自在にできるようになっている。又、第2のユニット構造物の天井構造は、第2の柱41qの下側の柱41q2、第3の柱41r、第4の柱41sの左側の柱41s1及び第9の柱41xの左下側の柱41x2のそれぞれの位置を4隅とするロの字型の天井梁枠が構成され、他の天井梁枠と分離及び結合が自在にできるようになっている。更に、天井梁枠の4隅のそれぞれと、対応する土台枠の4隅のそれぞれの間には、第2の柱41qの下側の柱41q2、第3の柱41r、第4の柱41sの左側の柱41s1及び第9の柱41xの左下側の柱41x2の4本のそれぞれが、分離自在に挿入されて結合されて、ユニット構造物の骨組みを実現している。
【0039】
更に、第1のユニット構造物と同じ太さの角材を用いて、第3のユニット構造物の床下には、第4の柱41sの右側の柱41s2、第5の柱41t、第6の柱41uの下側の柱41u1及び第9の柱41xの右下側の柱41x3の位置を4隅とするロの字型の土台枠が構成され、他の土台枠と分離及び結合が自在にできるようになっている。又、第3のユニット構造物の天井構造は、第4の柱41sの右側の柱41s2、第5の柱41t、第6の柱41uの下側の柱41u1及び第9の柱41xの右下側の柱41x3の位置を4隅とするロの字型の天井梁枠が構成され、他の天井梁枠と分離及び結合が自在にできるようになっている。更に、天井梁枠の4隅のそれぞれと、対応する土台枠の4隅のそれぞれの間には、第4の柱41sの右側の柱41s2、第5の柱41t、第6の柱41uの下側の柱41u1及び第9の柱41xの右下側の柱41x3の4本のそれぞれが、分離自在に挿入されて結合されて、ユニット構造物の骨組みを実現している。
【0040】
同様に、第1のユニット構造物と同じ太さの角材を用いて、第4のユニット構造物の床下には、第6の柱41uの上側の柱41u2、第7の柱41v、第8の柱41wの右側の柱41w1及び第9の柱41xの右上側の柱41x4の位置を4隅とするロの字型の土台枠が構成され、他の土台枠と分離及び結合が自在にできるようになっている。又第4のユニット構造物の天井構造は、第6の柱41uの上側の柱41u2、第7の柱41v、第8の柱41wの右側の柱41w1及び第9の柱41xの右上側の柱41x4の位置を4隅とするロの字型の天井梁枠が構成され、他の天井梁枠と分離及び結合が自在にできるようになっている。更に、天井梁枠の4隅のそれぞれと、対応する土台枠の4隅のそれぞれの間には、第6の柱41uの上側の柱41u2、第7の柱41v、第8の柱41wの右側の柱41w1及び第9の柱41xの右上側の柱41x4の4本のそれぞれが、分離自在に挿入されて結合されて、ユニット構造物の骨組みを実現している。
【0041】
第1実施形態に係る住宅を複数建築できれば、コンパクトシティを作ることが可能となる。第1実施形態に係る住宅を利用したコンパクトシティは、現代の都市計画に代わる新たな構想に基づく都市計画であり、ユニット構造物とこのユニット構造物に適したコンクリート基礎71の標準化を図ることにより(図1F参照。)、住宅等の建替えや解体、新規の建築及び住宅の移動が容易な自然災害等に強い街にできる。即ち、図1Bに例示したようなユニット構造物に分解できる構造にし、コンクリート基礎71を都市計画で統一することにより、住宅等の建替えや解体、新規の建築及び住宅の移動等が容易かつ迅速に実施できる。コンパクトシティは、中心市街地へ利便性の良い郊外に拠点設置を計画する。または、既存の市営・県営住宅を再利用する際にも、コンパクトシティの考え方は通用する。
【0042】
(第1実施形態の変形例)
図1Bでは、第1実施形態に係る住宅を4分割する例を示した。しかし、図1Cに示すように、破線A-Aと同じ方向の分割線C-Cで第1及び第4のユニット構造物をそれぞれ2分割して6分割の構造にし、第1~第6のユニット構造物の外形寸法を統一してもよい。図1Cに示す6分割が可能な第1実施形態の変形例に係る住宅の場合、第1の柱41pと第2の柱41qの間に2本組の第10の柱41y、第9の柱41xと第8の柱41wの間に4本組の第11の柱41m、第6の柱41uと第7の柱41vの間に2本組の第12の柱41zが位置する。第1実施形態の変形例に係る住宅を6分割する第1~第6のユニット構造物においては、図1Dに例示したように、天井梁枠(39p,39y,39m,39w)の4隅のそれぞれと、対応する土台枠(37p,37y,37m,37w)の4隅のそれぞれの間を接続する4本の柱41p、41y1、41m1、41w2を、設計使用に応じて取り外せるようにしている。
【0043】
例えば図1Dでは、それぞれが9cm角の角材である第1の梁39p、第2の梁39y、第3の梁39m及び第4の梁39wにより、ロの字型の天井梁枠(39p,39y,39m,39w)が構成されている。天井梁枠(39p,39y,39m,39w)のロの字型の枠組みは、ホゾ等の継手技法を用いて各隅が互いに直角に結合されている。図1Dを一見すると、第2の柱41y1の上端は、第1の梁39pの手前側の一端の下面のみに接続され、第2の梁39yの左側の端部の下面側には接続されていないかのように見えるが、実際にはホゾ等で結合されている場合は、構造的には第10の柱の上側の柱41y1の上端と第11の柱の左上側の柱41m1の上端をそれぞれ両端部の下面側で接続する角材になる。
【0044】
同様に、ホゾ等の継手技法の態様を鑑みると、第1の梁39pは、図1Dでは、第1の柱41pの上端と第10の柱の上側の柱41y1の上端をそれぞれ両端部の下面側で接続する角材である。第3の梁39mは、第11の柱の左上側の柱41m1の上端と第8の柱の左側の柱41w2の上端とを接続し、第4の梁39wは、第8の柱の左側の柱41w2の上端と第1の柱41pの上端をそれぞれ両端部の下面側で接続する角材である。
【0045】
図1Dに示すように、土台枠(37p,37y,37m,37w)は、それぞれが9cm角の角材である第1の土台37p、第2の土台37y、第3の土台37m及び第4の土台37wによりロの字型に構成されている。土台枠(37p,37y,37m,37w)のロの字型の枠組みは、ホゾ等の継手技法を用いて各隅が互いに直角に結合されている。図1Dでは第2の柱41y1の下端は、第1の土台37pの手前側の一端の上面のみに搭載され、第2の土台37yの左側の端部の上面には搭載されていないかのように見える。しかし、ホゾ等の継手技法の態様を鑑みると、第2の土台37yは、第10の柱の上側の柱41y1の下端と第11の柱の左上側の柱41m1の下端をそれぞれ両端部の上に搭載する角材である。
【0046】
同様に、ホゾ等の継手技法の態様を鑑みると、第1の土台37pは、第1の柱41pの下端と第10の柱の上側の柱41y1の下端をそれぞれ両端部の上に搭載する角材である。第3の土台37mは、第11の柱の左上側の柱41m1の下端と第8の柱の左側の柱41w2の下端とを接続し、第4の土台37wは、第8の柱の左側の柱41w2の下端と第1の柱41pの下端をそれぞれ両端部の上に搭載する角材である。
【0047】
したがって、例えば図1Eに拡大して示すように、天井梁枠(39p,39y,39m,39w)の右下の隅と、土台枠(37p,37y,37m,37w)の右下側の隅の間に、柱41m1が、着脱離脱に配置される。天井梁枠(39p,39y,39m,39w)の右下の隅は、第3の梁39mと第4の梁39wがホゾ等で直角に組まれている。土台枠(37p,37y,37m,37w)の右下の隅は、第3の土台37mと第4の土台37wがホゾ等で直角に組まれている。柱41m1の上端と、第3の梁39mと第4の梁39wが交わる隅の間は、ボルト61m1等の接続手段で接続されている。同様に、柱41m1の下端と、第3の土台37mと第4の土台37wが直角に交わる隅の間はボルト等の接続手段で接続されているので、柱41m1を取り外したいときは、ボルト等の接続手段を除去すればよい。
【0048】
よって、柱41m1,41m2,41m3,41m4を天井梁枠や土台枠に固定しているそれぞれの接続手段を解除して、図1Dに示すように、柱41m1,41m2,41m3,41m4をそれぞれ取り外せば、図1Cに示した第1実施形態の変形例に係る住宅において広い居住空間とすることができる。この場合、柱41m1,41m2,41m3,41m4を取り外しても、柱41m1,41m2,41m3,41m4に対して各隅が集合する4つの天井梁枠及び4つの土台枠が、それぞれ強固に固定される。よって、柱41m1,41m2,41m3,41m4を取り外しても、構造力学的な強度が維持できる。
【0049】
図1Bで6分割の構造にし、第1~第6のユニット構造物の外形寸法を統一すれば、第1~第6のユニット構造物のそれぞれが、トラックの荷台に収納できる大きさになる。したがって、住宅等の移動がトラックを用いて簡単にできるようになる。特に、都市計画において、図1Fに示すように、コンクリート基礎71の立ち上がりのパターンを、第1~第6のユニット構造物の土台枠の寸法に合わせた、周期的構造となるような統一規格にしておけば、コンパクトシティの内部において、住宅の移動やユニット構造物の選択的交換が簡単になる。一部のユニット構造物を選択的に交換することにより、居住空間の模様替えや部屋の補修が簡単にできる。
【0050】
図1Fでは、コンクリート基礎71の一例として、ベタ基礎の立ち上がりによって6つの四角形の枠(筒)が構成されているパターンを例示している。図1Fのモデルでは、第1のユニット構造物1q11の土台枠が、左上のベタ基礎の枠に搭載された場合に対応する。第1のユニット構造物1q11の土台枠が、左上のベタ基礎の四角形の枠に搭載された例を示している。建築基準法関連法令(建設省告示第1347号)では、ベタ基礎の立ち上がり部分は、高さが地上部分で300mm以上、厚さは120mm以上である。120mm以上というのは通常の建築物の土台の太さに対応する。第1実施形態の変形例に係る住宅において、ユニット構造物の土台枠を90mm角の角材で組んでいる場合は、ベタ基礎の立ち上がり部分の厚さを180mmとすればよい。即ち、隣接する2つのユニット構造物が連結した場合の隣接する2つの土台が、ベタ基礎の四角形の枠をなす立ち上がり部分に搭載できる。異なる都道府県のそれぞれの都市計画においてコンクリート基礎71の立ち上がりのパターンや寸法を、ユニット構造物の土台枠の寸法に合わせた統一規格にしておけば、異なる都道府県のコンパクトシティへの住宅の移動も簡単になる。
【0051】
第1実施形態の変形例に係る住宅を複数建築できれば、コンパクトシティを作ることが可能となる。第1実施形態の変形例に係る住宅を利用したコンパクトシティは、現代の都市計画に代わる新たな構想に基づく都市計画であり、ユニット構造物とこのユニット構造物に適したコンクリート基礎71の標準化を図ることにより、住宅等の建替えや解体、居住空間の一部の模様替え、特定の部屋の選択的な補修、新規の建築及び住宅の移動が容易な街にできる。即ち、図1Bに例示したようなユニット構造物に分解できる構造にし、コンクリート基礎71のパターンや寸法を都市計画で統一し標準化することにより、住宅等の建替えや解体、一部の選択的な補修、新規の建築、住宅の移動等が容易かつ迅速に実施できる。コンパクトシティは、中心市街地へ利便性の良い郊外に拠点設置を計画する。または、既存の市営・県営住宅を再利用する際にも、コンパクトシティの考え方は通用する。
【0052】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物1pijは、図2Aに示すように、水害等の自然災害において、ユニット構造物1pijが濁流の水面に浮いた状態となっても、濁流に流されない浮遊移動防止機構を備え、コンパクトシティの構想に資することができる。第1実施形態やその変形例に係る住宅に用いるユニット構造物では、建築基準法関連法令が規定するベタ基礎の上に土台枠が、搭載される例を説明した。図1Fに例示したようなベタ基礎の場合、ユニット構造物の土台枠が、その下のコンクリートスラブからなる立ち上がり部分にアンカーボルト等で固定されて、床下空間を構成する。図2Aに示す第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物1pijの説明においては、コンクリート基礎が独立基礎である場合について説明する。
【0053】
第2実施形態に係る住宅に用いる1pijの床下には、図2Aに示すように、土台枠(37a,37b,……,37d)が、ユニット構造物1pijの外周の形状に沿って、矩形状(ロの字型)の枠をなすように設けられている。土台枠(37a,37b,……,37d)は、第1実施形態と同様に、例えば9cm角程度の角材である第1の土台37a及び第2の土台37b等が、ホゾ等により互いに直角に組まれ、ロの字型に構成したものである。即ち、第1実施形態で説明したとおり、通常は12cm角程度以上の太い角材が土台と呼ばれるが、第2実施形態に係る住宅の説明でも、通常は大引と呼ばれる9cm角程度の角材を、第1の土台37a、第2の土台37b、……、第4の土台37dと呼んでいる。
【0054】
即ち、土台枠(37a,37b,……,37d)は、図2Aに示すように、9cm角程度の角材である第1の土台37a、第2の土台37b、第3の土台(図示省略)及び第4の土台37dで構成されている。第1の土台37aは、角材の両端部の上に、それぞれ第1の柱41aの下端と第2の柱41bの下端を搭載する。図1Dで説明したのと同様に、図2Aでは第1の柱41aの下端は、第4の土台37dの手前側の一端の上面のみに搭載され、第1の土台37aの左側の端部の上面には搭載されていないかのように表現されている。しかし、現実には、第4の土台37dと第1の土台37aは、ホゾ等の継手技法で組み込まれているので、第1の土台37aは第1の柱41aの下端と第2の柱41bの下端をそれぞれ両端部の上に搭載する角材である。
【0055】
同様に、ホゾ等の継手技法で土台枠(37a,37b,……,37d)の4つの隅が組み込まれている場合は、第2の土台37bは、角材の両端部の上に、それぞれ第2の柱41bの下端と第3の柱41cの下端を搭載する。図示を省略した第3の土台も、第3の柱41cの下端と第4の柱41dの下端とを接続する。第4の土台37dは、角材の両端部の上に、それぞれ第4の柱41dの下端と第1の柱41aの下端を搭載する。土台枠(37a,37b,……,37d)が構成する矩形状(ロの字型)の枠の上に、図2Aに示すように、耐水性の荒床板43aが設けられている。
【0056】
なお、土台枠(37a,37b,……,37d)の上には45mm角程度の根太を、土台枠(37a,37b,……,37d)に直交するように設けるのが一般的であるが、図2Aでは根太の図示を省略している。荒床板43aの上には耐水性の床材43bが設けられている。更に、水害時を考慮し、図2Aでは裏側の壁面側に約1mの高さに至る耐水性の腰板44cが示されている。図2Aに示すユニット構造物1pijが単独の住宅として用いられる場合は、腰板44cはユニット構造物1pijの4つの壁面に設けることが望ましい。しかし、図3Aに示すように、ユニット構造物1pijの複数を連結して連結複合住宅を構成する場合は、連結複合住宅の構造に依拠して、耐水性の腰板44cの配置位置や関連する防水処理の施行等を決めればよい。
【0057】
ユニット構造物1pijの複数を連結した連結複合住宅の場合は、連結複合住宅が構成する内部空間(居住空間)の側面側には外壁断熱材(断熱層)が設けられ、外壁断熱材の更に外側に外壁材(サイディングボード)が設けられる。外壁材は、各種サイディング、モルタル、タイル、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート(ALC)、ガルバリウム鋼板(登録商標)等を採用することができる。外壁断熱材と外壁材の間には通気層を設けて断熱効果を高めてもよい。耐水性の腰板44cは、連結複合住宅を囲む外壁材の外側に配置してもよい。なお、ユニット構造物1pijが単独で一戸建て住宅として用いられる場合も、ユニット構造物1pijの側面を囲む必要箇所に、外壁断熱材や外壁材やが設けられるのは勿論である。
【0058】
第2実施形態に係る住宅に用いるユニット構造物1pijにおいては、連結複合住宅を考慮して、土台枠(37a,37b,……,37d)の4隅の箇所の上に、柱41a,41b,41c,41dが着脱可能に設けられる。そして、4本の柱41a,41b,41c,41dの上に、天井梁枠(39a,39b,39c,39d)が構成されて、図2Aに示すようなユニット構造物1pijの骨格(スケルトン構造)が構成される。天井梁枠(39a,39b,39c,39d)は、第1の梁39a、第2の梁39b、第3の梁39c及び第4の梁39dにより額縁状に構成される。
【0059】
第1の梁39aは、第1の柱41aの上端と第2の柱41bの上端をそれぞれ両端部の下面側で接続する9cm角程度の角材である。土台枠(37a,37b,……,37d)で説明したのと同様に、図2Aでは第1の柱41aの上端は、第4の梁39dの手前側の一端の下面のみに接続され、第1の梁39aの左側の端部の下面には接続されていないかのように表現されている。しかし、現実には、第4の梁39dと第1の梁39aは、ホゾ等の継手技法で組み込まれているので、第1の梁39aは第1の柱41aの上端と第2の柱41bの上端をそれぞれ両端部の上に接続する角材である。
【0060】
このように、天井梁枠(39a,39b,39c,39d)のロの字型の枠組は、4つの隅が、それぞれホゾ等の継手技法を用いて互いに直角に結合されているので、第2の梁39bは、第2の柱41bの上端と第3の柱41cの上端をそれぞれ両端部の下面側で接続する。又、第3の梁39cは、第3の柱41cの上端と第4の柱41dの上端とを接続し、第4の梁39dは、第4の柱41dの上端と第1の柱41aの上端をそれぞれ両端部の下面側で接続する。天井梁枠(39a,39b,39c,39d)を利用して天井42が設けられている。
【0061】
床下構造に着目すると、第2実施形態に係るコンパクトシティ用のユニット構造物1pijにおいては、土台枠(37a,37b,……,37d)の4隅のそれぞれの下には、図2Aに示すように、直角五角柱状の4本の床束(ゆかづか)34a,34b,34c,……が設けられている。4本の床束34a,34b,34c,……のそれぞれは、二つの角が直角で且つ連続した直角五角形を平行移動した立体形状をなしている。直角五角形の斜辺が立体形状の2つの斜面をなし、2つの斜面が4本の床束34a,34b,34c,……のそれぞれが下を向く先端側に位置している。そして、4本の床束34a,34b,34c,……は、4本の柱41a,41b,41c,41dの直下の位置に設けられている。
【0062】
即ち第2実施形態に係るコンパクトシティ用のユニット構造物1pijでは、直角五角柱状の第1の床束34aが、図2Aの左下において、土台枠(37a,37b,……,37d)の下に図示されている。第1の床束34aの直角五角柱の上面(紙面の手前側の面)は第1の土台37aの一面(紙面の手前側の面)と外面合わせがされている。同様に、図2Aの土台枠(37a,37b,……,37d)の右下側の隅の下には、直角五角柱状の第2の床束34bが図示されている。図2Bの拡大図に示すように、第2の床束34bの直角五角柱の上面は第1の土台37aの一面と外面合わせがされている。又、図2Bの拡大図では、第2の床束34bの直角五角柱の上面に連続する側面が、第1の土台37aの端面と外面合わせがされている態様が示されている。
【0063】
図2Aに戻ると、直角五角柱状の第3の床束34cが、土台枠(37a,37b,……,37d)の奥側の右の隅の下にも図示されている。第3の床束34cを構成している直角五角柱の側面は、第2の土台37bの一面と外面合わせがされている。第4の床束は図2Aの土台枠(37a,37b,……,37d)の奥側の左に位置するが、第1の土台37aや荒床板43a等の蔭になり図示されていない。第4の床束も、他の3本の床束34a,34b,34cと同様な、先端側が二つの斜面でテーパ状となった直角五角柱状である。なお、図2A図2Bに示した直角五角柱状の立体形状は例示であり、4本の床束34a,34b,34c,……は、先端側がテーパ状となる立体形状であれば、先端が円錐の円柱形や先端が角錐の四角柱形等であっても構わない。或いは先端側の2つの斜面を有する等脚台形状の形状であっても構わない。
【0064】
更に、4本の床束34a,34b,34c,……は、木製、プラスティック製、金属製、コンクリート製のいずれであっても構わない。4本の床束34a,34b,34c,……の位置に対応して、それぞれ上部に開口された凹部を有する四角柱である第1の基礎柱31a、第2の基礎柱31b、第3の基礎柱31c、第4の基礎柱31dがコンクリート基礎として設けられている。鉛直方向に上を向いて配置された4本の基礎柱31a~31dのそれぞれの上面側の中央には、直角五角柱状の凹部が、凹部の底部に斜面を有する四角柱状に開孔されている。4本の基礎柱31a~31dのそれぞれの凹部の内径と、対応する4本の床束34a,34b,34c,……の凸部の外径は、所定のクリアランスで整合するように設定される。即ち、所定のクリアランスが担保できれば、基礎柱31a~31dのそれぞれに開孔された凹部の内径の大きさは、対応する床束34a,34b,34c,……の凸部の外径が収納出来る大きさになっている。
【0065】
図2Aの左下に図示した第1の基礎柱31aは、図示を省略した四角形の板状の耐圧版コンクリートである第1の基礎スラブ(底盤)の中央において、鉛直方向に上方に向かって突出するように建てられた耐圧版コンクリートの四角柱である。第1の基礎スラブと第1の基礎柱31aが、耐圧版コンクリートで一体且つ連続に構成されて、コンクリート基礎として機能する第1の独立フーチング基礎を構成している。又、右下に図示した第2の基礎柱31bは図示を省略した四角形の板状の第2の基礎スラブの中央において、鉛直方向に上方に向かって突出するように建てられた四角柱であり、第2の基礎スラブと第2の基礎柱31bが一体且つ連続に構成されてコンクリート基礎として機能する第2の独立フーチング基礎を構成している。
【0066】
更に、右上(奥)に図示した第3の基礎柱31cは図示を省略した四角形の板状の第3の基礎スラブの中央において、鉛直方向に上方に突出するように建てられた四角柱であり、第3の基礎スラブと第3の基礎柱31cが一体且つ連続に構成されてコンクリート基礎として機能する第3の独立フーチング基礎を構成している。同様に、左上に図示した第4の基礎柱31dは、図示を省略した四角形の板状の第4の基礎スラブの中央において、鉛直方向に上方に突出するように建てられた四角柱であり、第4の基礎スラブと第4の基礎柱31dが一体且つ連続に構成されてコンクリート基礎として機能する第4の独立フーチング基礎を構成している。第1~第4の基礎スラブの上面は、薄い截頭四角錐の形状をなす耐圧版コンクリートであり、その截頭部分から、截頭部分と同じ断面形状の第1~第4の基礎柱31a~31dが連続して上方に突出して、独立基礎としてのコンクリート基礎を構成している。
【0067】
第1~第4の基礎スラブは、砂質地盤での施工であれば、基礎地盤面の掘削後、割り栗石、砕石等を、並べた後、十分にたたいて、基礎底面地盤にめりこませた後、均しコンクリートを打設し、均しコンクリートの上に配置すればよい。基礎地盤が岩盤の場合は、岩盤面の浮き石などを取り除き十分に洗浄して、直接その上に第1~第4の基礎スラブを施工すればよい。その際、不陸がある場合は、均しコンクリート、又は敷きモルタルを打設して平滑にした後、第1~第4の基礎スラブを施工すればよい。図2Bに拡大図を示すように、第2の床束34bと第2の基礎柱31bは鎖等の可撓性のある第2の連結部材33bで冗長性を有して連結され、ユニット構造物1pijが濁流の水面に浮いた状態となったとき、濁流に流されないようにする第2の浮遊移動防止機構(31b,33b,34b)を構成している。第2の連結部材33bを構成する鎖等の長さは、水害等の自然災害において、ユニット構造物1pijが濁流の水面に浮いた状態となったときの、浮上の自由度が確保できる遊びの長さがあるように選ばれる。
【0068】
図2Bに例示するように、第2の連結部材33bの上端は上端側止めピン35qにより、第2の床束34bの側面に回転移動等が自在となるように固定されている。第2の連結部材33bの下端は下端側止めピン35pにより、第2の基礎柱31bの側面に回転自在に固定されている。図2Bの上端側止めピン35q及び下端側止めピン35pの構造は模式的表現であり、実際には上端側止めピン35q及び下端側止めピン35pから第2の連結部材33bが抜け落ちないように、上端側止めピン35q及び下端側止めピン35pの頭を第2の連結部材33bの上端及び下端の穴よりも太くする等の必要な設計がされている。水害が発生した場合、第2の連結部材33bを構成する鎖等の長さが、浮上の自由度が確保できるように、上端側止めピン35q若しくは下端側止めピン35pの位置に、鎖等を巻き取るリール等を設けてもよい。図2Aから分かるように、第1の床束34aと第1の基礎柱31aも、同様に可撓性のある第1の連結部材33aで冗長性を有して連結され、第1の浮遊移動防止機構(31a,33a,34a)を構成している。更に、第3の床束34cと第3の基礎柱31cも可撓性のある第3の連結部材33cで冗長性を有して連結され、第3の浮遊移動防止機構(31c,33c,34c)を構成している。図2Aでは一部の図示が省略されているが、第4の床束と第4の基礎柱31dも、可撓性のある第4の連結部材で冗長性を有して連結され、第4の浮遊移動防止機構を構成している。
【0069】
第1の基礎柱31aと第2の基礎柱31bは、第1の基礎柱31a及び第2の基礎柱31bの一辺の幅よりも薄い長尺板状の第1の地中梁32aによって、図2Aに示すように互いに接続され、地中に埋められることによりコンクリート基礎の構造力学的な強度を実現している。同様に、図2Aに示すように、第2の基礎柱31bと第3の基礎柱31cは、長尺板状の第2の地中梁32bで互いに接続され、地中に埋められることにより、コンクリート基礎の構造力学的な強度を実現している。更に、図2Aに示すように、第3の基礎柱31cと第4の基礎柱31dは、長尺板状の第3の地中梁32cで互いに接続され、第4の基礎柱31dと第1の基礎柱31aは、長尺板状の第4の地中梁32dで互いに接続され、それぞれ地中に埋められ、コンクリート基礎の構造力学的な強度を実現している。
【0070】
図2Cに模式的な断面図を示すように、第2の床束34bの先端部の第1のテーパ角θ1の他に、第2の基礎柱31bの凹部の上壁側に第2のテーパ角θ2を設けて、2段テーパの形状にしてもよい。第1のテーパ角θ1と第2のテーパ角θ2は同じでも異なっていてもよい。又、第2のテーパ角θ2=0でもよい。但し、凹部の上壁側に有限な値の第2のテーパ角θ2が設けてあることにより、水害の濁流の水が引けたときに、第2の床束34bの先端部を第2の基礎柱31bの凹部に挿入する作業が容易になる。なお、第2の基礎柱31bの凹部の深さを深くし、対応する第2の床束34bの凸部を長くして、水害時においても、第2の基礎柱31bの凹部から第2の床束34bの凸部が完全に抜けないような設計にしてもよい。
【0071】
図1B,1C及び1F等に例示した場合と同様に、複数のユニット構造物1pijをマトリクス状等のパターンで連結して住宅(連結複合住宅)を構成することも可能である。図3Aは、例示的に2×3のマトリクスを想定し、同一サイズの第1のユニット構造物1p11、第2のユニット構造物1p12及び第3のユニット構造物1p13を、マトリクスの裏側で一列に連結している。更に同一サイズの第4のユニット構造物1p21、第5のユニット構造物1p22及び第6のユニット構造物1p23を、マトリクスの手前側で一列に連結し、2×3=6個のユニット構造物1pijで一戸の連結複合住宅を構成する場合のモデルを示す。なお、2×3のマトリクスは例示であって、2×2,1×2又は1×3等、他のマトリクスでも構わないことは勿論である。マトリクス前もって、連結複合住宅の構造に合わせて基礎柱31a,31b,31c,31d,……の位置を決めておけば、6個のユニット構造物1pijの床側の構造は、基礎柱31a,31b,31c,31d,……の位置で規定される。更に、図3Bに示すように、ユニット構造物1pijとユニット構造物1p(i+1)jの天井側で、ボルト55とナット56等の連結固定器具で固定することで、ユニット構造物1pijとユニット構造物1p(i+1)jは、互いに固定される。
【0072】
例えば、ユニット構造物1pijの天井の上面には結合具取付金具51ijが設けられ、結合具取付金具51ijからは板状の結合具52ijが、逆T字型に上(図3Bの紙面の手前側)に突出している構造を例に、連結複合住宅の結合方法を説明する。この場合は、図3Bでユニット構造物1pijの下側に位置するユニット構造物1p(i+1)jの天井の上面にも、結合具取付金具51(i+1)jが設けられている。そして、結合具取付金具51(i+1)jからは板状の結合具52(i+1)jが、結合具52ijと平行に、図3Bの紙面の手前側に突出し、結合具52ijと対向している。結合具52ijと結合具52(i+1)jには、ボルト55を通す貫通孔が開孔されている。図3Bの表現において結合具52ijの上の位置には、結合具52ijと高さが同じで幅が結合具52ijより広い矩形の座金板53ijが配置され、結合具52(i+1)jの下には結合具52(i+1)jと高さが同じで幅が結合具52(i+1)jより広い矩形の座金板53(i+1)jが配置されている。
【0073】
したがって、面と面で接している結合具52ijと結合具52(i+1)jの両側は、座金板53ijと座金板53(i+1)jで挟まれている。結合具52ijと結合具52(i+1)jを貫通するボルト55用の貫通孔は、座金板53ijと座金板53(i+1)jも貫通している。座金板53(i+1)jとボルト55の間に緩み止め用のスプリングワッシャ54(i+1)jを挟み、座金板53ijとナット56の間に緩み止め用のスプリングワッシャ54ijを挟んで、ボルト55のネジにナット56を締め付けることで、ユニット構造物1pijとユニット構造物1p(i+1)jは固定できる。
【0074】
なお、図3Bは例示であるので、ユニット構造物1pijとユニット構造物1p(i+1)jを、互いに固定する方法は、他の方法でも構わない。簡単には、隣接するユニット構造物1pijの天井梁枠と、ユニット構造物1p(i+1)jの天井梁枠同士を直接ボルト等で固定してもよい。図3Bに例示した方法で、ユニット構造物1pijとユニット構造物1p(i+1)jを固定した場合でも、ユニット構造物1pijとユニット構造物1p(i+1)jの接合面から雨漏りがする恐れがあるので、図3Aに示したような複数のユニット構造物1pijの連結複合住宅で一戸の住宅を構成した場合は、連結複合住宅を全体に覆う屋根を別個設けるのが好ましい。屋根は切妻、半切妻、寄棟、入母屋、方形、片流れ等の種々の形態が採用可能である。
【0075】
同様に、隣接するユニット構造物1pijの土台枠と、ユニット構造物1p(i+1)jの土台枠同士をボルト等の連結固定器具で直接固定してもよい。しかし、水害時を考慮すると、隣接するユニット構造物1pijの土台枠の土台に対向するユニット構造物1p(i+1)jの土台枠の土台との間に、ゴム等の弾性体等を利用した防水パッキンを挟んで、床下側をボルト等で機密に固定するのが好ましい。防水パッキンを挟んで、隣接するユニット構造物1pijの土台枠とユニット構造物1p(i+1)jの土台枠を機密に結合することにより、床下から居住空間への水の浸透や進入が防止できる。
【0076】
又、非水害時における竜巻等の突風によるユニット構造物1pijの浮き上がりを防止するためには、ユニット構造物1pijがそれぞれ有する4つの床束と、対応するコンクリート基礎の4つの基礎柱の間に、抜けロック機構(抜け防止機構)をそれぞれ設け、床束の抜けに対する力学的な拘束強度を担保するのが好ましい。但し、非水害時用の抜けロック機構をユニット構造物1pijのそれぞれに設けた場合は、抜けロック機構には、濁流等の水害の発生を自動的に検知する水分センサ等を設けておく必要がある。即ち、水分センサ等を設けておくことにより、水害発生時には抜けロック機構が自動的に解除され、ユニット構造物1pijのそれぞれの浮遊移動防止機構が自動的に差動可能になる。なお、水分センサ等により抜けロック機構が解除された場合には、居住空間に水害の警報を発するようにしてもよい。
【0077】
第2実施形態に係る住宅用のユニット構造物によれば、浮遊移動防止機構を備えているので、水害時に住宅が濁流の水面に浮いた状態となっても、濁流に流されることがない。よって、自然災害等に強い住宅が構築できる。又、第2実施形態に係る住宅用のユニット構造物は、トラックの荷台に収納できる大きさにできるので、住宅の移動がトラックを用いて簡単にできる。第2実施形態に係るユニット構造物で構築した住宅を備えたコンパクトシティは、自然災害等に強い街であることに加え、住宅等の建替えや解体、居住空間の一部の補修、部屋の選択的な補修、新規の建築及び住宅の移動が容易かつ迅速に実施できる。
【0078】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0079】
例えば、よりコンパクトな住宅を目指すため、自己所有物を少なくすることも一案である。必要時に家電や衣服等をレンタルしたり、カーシェアリングを利用したりも可能である。事あるごとに断捨離する等、自己所有物の無駄を見直す時間も必要である。また、シェアリングの観点からは、コンパクトな住宅及びコンパクトシティには「共有空間」の設置も有効である。住宅内又はコンパクトシティ内に、共通の趣味等で共同作業できるスペースを用意する等である。
【0080】
更に、コンパクトシティのためには、公共機関の手続のオンライン化も必須である。マイナンバー制度利用等により、保険証・免許証・住民票等の一元的な管理や利用が可能となれば尚よい。また、その他のネット環境の整備も課題であり、ネットショッピング、オンライン診療・オンライン調剤等の医療関係、墓参りのオンライン化、デジタルデータのクラウド利用等、コンパクトシティ全体の利便化を目指して充実させていく必要がある。
【0081】
本発明の第1及び第2実施形態に係る住宅については、「孫の手住宅」又は「わらしべ住宅」等というインパクトのあるネーミングで提供することが可能である。「孫の手住宅」は「孫の手ハウス」であってもよく、「わらしべ住宅」は「わらしべハウス」であってもよい。
【0082】
本発明の第1及び第2実施形態で説明したそれぞれの技術的思想の一部を適宜、互いに組み合わせることも可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…建物、1a,1b,1c…部屋、1p11…第1のユニット構造物、1p12…第2のユニット構造物、1p13…第3のユニット構造物、1p21…第4のユニット構造物、1p22…第5のユニット構造物、1p23…第6のユニット構造物、1pij…ユニット構造物、2…敷地、3…駐車スペース、5…玄関ドア、6a,6b,6c,6d…窓、7a,7b,7c…ドア、11…車両、13…空気循環冷暖房装置、15…家具、17…家庭用電気機器、19…貯水装置、31a…第1の基礎柱、31b…第2の基礎柱、31c…第3の基礎柱、31d…第4の基礎柱、32a…第1の地中梁、32b…第2の地中梁、32c…第3の地中梁、32d…第4の地中梁、33a…第1の連結部材、33b…第2の連結部材、33c…第3の連結部材、34a…第1の床束、34b…第2の床束、34c…第3の床束、35p…下端側止めピン、35q…上端側止めピンピン、37a,37b,37d…土台、39a,39b,39c,39d…梁、41a,41b,41c…柱、41p…第1の柱、41q…第2の柱、41r…第3の柱、41s…第4の柱、41t…第5の柱、41u…第6の柱、41v…第7の柱、41w…第8の柱、41x…第9の柱、42…天井、43a…荒床板、43b…床材、44c…腰板、51ij,51(i+1)j…結合具取付金具、52ij,52(i+1)j…結合具、53ij,53(i+1)j…座金板、54ij,54(i+1)j…スプリングワッシャ、55…ボルト、56…ナット

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B