(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080714
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】発酵装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240610BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
C12M1/00 H
C02F3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193873
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔
(72)【発明者】
【氏名】三井 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】多川 正
【テーマコード(参考)】
4B029
4D040
【Fターム(参考)】
4B029AA03
4B029AA21
4B029BB01
4B029CC02
4B029EA16
4D040AA04
4D040AA34
(57)【要約】
【課題】被処理水をより効率よく発酵させることができる発酵装置を提供する。
【解決手段】発酵装置1は、被処理水W中の基質を微生物によって発酵させることができるように構成されている。発酵装置1は、内部に空間を有する発酵槽2と、発酵槽2の上方に配置され、発酵槽2内に被処理水Wを供給可能に構成された被処理水供給部3と、発酵槽2内に配置され、微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体4と、発酵槽2の内壁面21から突出し、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wを発酵槽2の内壁面21よりも内側に誘導可能に構成された案内部材5と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の基質を微生物によって発酵させることができるように構成された発酵装置であって、
内部に空間を有する発酵槽と、
前記発酵槽の上方に配置され、前記発酵槽内に前記被処理水を供給可能に構成された被処理水供給部と、
前記発酵槽内に配置され、前記微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体と、
前記発酵槽の内壁面から突出し、前記発酵槽の前記内壁面を伝う前記被処理水を前記発酵槽の前記内壁面よりも内側に誘導可能に構成された案内部材と、を有する、発酵装置。
【請求項2】
前記案内部材の上面の一部が、前記発酵槽の前記内壁面側の基端から先端に近づくほど下方に傾斜した傾斜領域から構成されている、請求項1に記載の発酵装置。
【請求項3】
前記案内部材の上面全体が、前記発酵槽の前記内壁面側の基端から先端に向かうほど下方に傾斜している、請求項1に記載の発酵装置。
【請求項4】
前記案内部材は上下方向に互いに間隔をあけて配置されており、前記案内部材の上下方向の間隔が前記微生物担体の外接球の直径以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵装置。
【請求項5】
前記発酵槽の前記内壁面から前記案内部材の先端までの距離が前記微生物担体の外接球の直径以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵装置。
【請求項6】
前記発酵槽の前記内壁面から前記案内部材の先端までの距離が前記微生物担体の外接球の直径未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵装置。
【請求項7】
前記案内部材は、前記内壁面に沿う方向に2つの側端を有しており、前記案内部材の下面は、2つの前記側端のうち第1の側端から第2の側端に向かうほど上方に傾斜している、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵装置。
【請求項8】
前記発酵槽は、前記案内部材を上下方向に貫通する貫通孔、前記案内部材に設けられた切り欠き及び前記発酵槽の前記内壁面に沿う方向における前記案内部材の側端のうち、水平方向において隣り合う前記側端の間の空隙からなる群より選択される1種以上のガス透過部を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵装置。
【請求項9】
前記案内部材が上下方向に間隔をあけて配置されており、少なくとも1つの前記案内部材の上方に前記ガス透過部が配置されている、請求項8に記載の発酵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機物を含む被処理水からの有機物の除去や資源の回収などを目的として、微生物による発酵が利用されている。微生物を用いた水処理を効率よく行う方法として、微生物が担持された微生物担体に被処理水を散布し、重力によって被処理水を透過させつつ微生物担体と接触した被処理水を発酵させる、下降流スポンジ懸架(Down-flow Hanging Sponge、DHS)法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、中空のタンク内に処理空間を形成するとともに、散水部を設け、前記散水部の下方に微生物担体を充填配置した状態で、前記散水部より前記微生物担体に処理水を供給する処理水供給手段を備え、前記微生物担体により浄化された処理水を取出す処理水排出手段を備え、前記処理空間内に酸素含有ガスを供給する給気管を設け、前記処理空間内のガスを排出する排気管を設けた散水式浄化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の浄化装置においては、散水部から散水される処理水の一部が、直接、あるいは微生物担体を伝ってタンクの内壁面に接触する。タンクの内壁面に接触した処理水は、再度微生物担体と接触するまで発酵されないため、発酵効率の低下を招いている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、被処理水をより効率よく発酵させることができる発酵装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、被処理水中の基質を微生物によって発酵させることができるように構成された発酵装置であって、
内部に空間を有する発酵槽と、
前記発酵槽の上方に配置され、前記発酵槽内に前記被処理水を供給可能に構成された被処理水供給部と、
前記発酵槽内に配置され、前記微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体と、
前記発酵槽の内壁面から突出し、前記発酵槽の前記内壁面を伝う前記被処理水を前記発酵槽の前記内壁面よりも内側に誘導可能に構成された案内部材と、を有する、発酵装置にある。
【発明の効果】
【0008】
前記発酵装置は、前記発酵槽の内壁面から突出し、前記発酵槽の前記内壁面を伝う前記被処理水を前記発酵槽の内壁面よりも内側に誘導可能に構成された案内部材を有している。そのため、被処理水供給部から供給された被処理水が直接、あるいは微生物担体を伝って発酵槽の内壁面に接触した場合に、案内部材によって被処理水を発酵槽の内側へ導き、微生物担体に再び接触させることができる。それ故、前記発酵装置によれば、被処理水をより効率よく発酵させることができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、被処理水をより効率よく発酵させることができる発酵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1における発酵装置の要部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1における案内部材近傍の一部拡大図である。
【
図4】
図4は、実施形態2における、発酵槽の内壁面近傍が斜め下方に傾斜した案内部材の断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2における、先端近傍が斜め下方に傾斜した案内部材の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2における、上面全体が斜め下方に傾斜した案内部材の断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態3における、案内部材がらせん状に延設された発酵装置の要部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態4における、ガス透過部としての貫通孔を備えた案内部材の上面図である。
【
図9】
図9は、実施形態4における、ガス透過部としての切り欠きを備えた案内部材の上面図である。
【
図10】
図10は、実施形態4における、同一の案内部材の側端の間にガス透過部としての空隙を有する案内部材の上面図である。
【
図11】
図11は、実施形態4における、隣り合う案内部材の間にガス透過部としての空隙が設けられた発酵槽の要部を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態5における、案内部材上にガス透過部が配置されている発酵装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
前記発酵装置に係る実施形態について、
図1~
図3を参照して説明する。本形態の発酵装置1は、被処理水W中の基質を微生物によって発酵させることができるように構成されている。発酵装置1は、
図1に示すように、内部に空間を有する発酵槽2と、発酵槽2の上方に配置され、発酵槽2内に被処理水Wを供給可能に構成された被処理水供給部3と、発酵槽2内に配置され、微生物を担持可能に構成された複数の微生物担体4と、発酵槽2の内壁面21から突出し、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wを発酵槽2の内壁面21よりも内側に誘導可能に構成された案内部材5と、を有している。
【0012】
発酵装置1に用いられる被処理水Wは特に限定されることはなく、所望の基質を含む被処理水Wを用いることができる。また、発酵装置1に用いられる微生物は、被処理水Wや基質の種類及び発酵の態様等に応じて公知の微生物から適宜選択することができる。
【0013】
例えば、本形態の発酵装置1は、有機物を含む被処理水Wを発酵させ、メタンを含むバイオガスを発生させることができるように構成されている。被処理水Wとしては、例えば、下水汚泥や食品残渣等の有機廃棄物を含む汚水等を使用することができる。また、被処理水Wとして、例えば、機械加工を行う加工装置から回収された廃水溶性クーラント等の有機物を含む工業排水を用いることも可能である。
【0014】
発酵槽2の形状や大きさは種々の態様を取り得る。例えば、本形態の発酵装置1における発酵槽2の形状は、
図1及び
図2に示すように円筒形である。本形態の発酵槽2における高さ及び直径は、それぞれ2mである。なお、
図2においては、便宜上、微生物担体4の記載を割愛した。
【0015】
また、
図1に示すように、発酵槽2の内部には、被処理水Wが流通可能に構成された仕切り板22が設けられている。発酵槽2の内部の空間は、仕切り板22により、微生物担体4が保持される上部空間23と、被処理水Wが保持される下部空間24との2つの空間に区画されている。
【0016】
発酵槽2の上部空間23には、発酵槽2内に被処理水Wを供給可能に構成された被処理水供給部3が配置されている。被処理水供給部3は、発酵槽2の外部から発酵槽2内に被処理水Wを供給することができる限り、種々の態様を取り得る。被処理水供給部3としては、例えば、発酵槽2内に被処理水Wを散布可能に構成された散水ノズルや、被処理水Wを放出するための小孔を備えた散水管などを使用することができる。
【0017】
また、発酵槽2の上部空間23には、被処理水Wの発酵によって生じたガスを発酵槽2の外部に導くガス導出管25が設けられている。
【0018】
発酵槽2の下部空間24には、微生物によって発酵された後の被処理水Wを発酵槽2の外部へ導く被処理水導出管26が設けられている。
【0019】
発酵槽2の仕切り板22上には、多数の微生物担体4が保持されている。微生物担体4としては、例えば、樹脂製のスポンジ等の多孔質体や、筒状に成形されたプラスチック等の筒状体等を用いることができる。微生物担体4の大きさは、発酵槽2よりも十分に小さければ特に限定されることはない。例えば、微生物担体4の大きさは、一辺100mmの直方体に内包される程度であればよい。
【0020】
微生物担体4のアスペクト比は、例えば0.5以上2以下であってもよい。この場合には、発酵槽2内により多量の微生物担体4を充填し、被処理水Wの発酵効率をより高めることができる。なお、微生物担体4のアスペクト比は、微生物担体4を基準となる平面上に最も安定に載置した状態における、微生物担体4の幅の最大値に対する高さの比である。
【0021】
発酵槽2の上部空間23における内壁面21には、案内部材5が設けられている。本形態の案内部材5は、発酵槽2の内壁面21から突出しており、その先端51が微生物担体4の上方に位置している。これにより、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wを発酵槽2の内壁面21よりも内側に誘導し、案内部材5の先端51から微生物担体4に被処理水Wを滴下することができる。
【0022】
案内部材5の数、配置及び形状は種々の態様を取り得る。例えば、案内部材5の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。案内部材5の数が2個以上である場合、全ての案内部材5が同一の形状を有していてもよく、一部の案内部材5が他の案内部材5とは異なる形状を有していてもよい。
【0023】
また、案内部材5の形状は、発酵槽2の内壁面21に沿った環状であってもよく、らせん状であってもよい。発酵槽2への取り付け作業をより容易に行う観点からは、案内部材5の形状は、発酵槽2の内壁面21に沿った環状であることが好ましい。発酵槽2内に2個以上の案内部材5を設ける場合、複数の案内部材5は、例えば、上下方向に互いに間隔をあけて配置されていてもよい。また、複数の案内部材5を、共通の水平面上において、発酵槽2の内壁面21に沿う方向に互いに間隔をあけて配置することもできる。
【0024】
案内部材5の形状は、例えば、板状であってもよく、棒状であってもよいが、板状であることが好ましい。この場合には、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wがより案内部材5に接触しやすくなるため、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wを、微生物担体4により誘導しやすくすることができる。その結果、発酵効率をより向上させることができる。
【0025】
本形態の発酵装置1は、
図1に示すように、上下方向に互いに間隔をあけて配置された3個の案内部材5を有している。各案内部材5は、発酵槽2の周方向の全周にわたって延在した円環形状を有している。また、案内部材5の形状は板状であり、発酵装置1の内壁面21から水平方向に突出している。
【0026】
本形態のように、複数の案内部材5が上下方向に互いに間隔をあけて配置されている場合、
図3に示す案内部材5の上下方向の間隔Pは、微生物担体4の外接球の直径以上であることが好ましい。この場合には、発酵槽2内に微生物担体4を投入する際に、案内部材5の間に微生物担体4がより進入しやすくなる。これにより、発酵槽2内により多量の微生物担体4を充填し、発酵効率をより高めることができる。なお、
図3においては、便宜上、微生物担体4の記載を割愛した。
【0027】
被処理水Wの発酵効率をより高める観点からは、被処理水Wと微生物担体4との接触の機会を増やすことが望ましい。例えば、発酵槽2の内壁面21から案内部材5の先端51までの距離Bを微生物担体4の外接球の直径以上とすることにより、案内部材5によって発酵槽2の内壁面21よりも内側に誘導された被処理水Wが、再び内壁面21に接触する機会をより減らすことができる。これにより、被処理水Wと微生物担体4との接触の機会をより増やし、発酵効率をより高めることができる。
【0028】
また、例えば、発酵槽2の内壁面21から案内部材5の先端51までの距離Bを微生物担体4の外接球の直径未満とすることにより、発酵槽2内により多数の微生物担体4を充填し、デッドスペース、つまり、微生物担体4が存在していない領域を小さくすることができる。これによっても、被処理水Wと微生物担体4との接触の機会をより増やし、発酵効率をより高めることができる。
【0029】
発酵槽2の内壁面21から案内部材5の先端51までの距離Bは、例えば、微生物担体4の外接球の直径の1/4倍以上であってもよく、1/2倍以上であってもよい。この場合には、案内部材5の先端51の下方に微生物担体4が存在する可能性がより高くなるため、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wを、微生物担体4により誘導しやすくすることができる。その結果、発酵効率をより向上させることができる。
【0030】
また、発酵槽2の内壁面21から案内部材5の先端51までの距離Bは、例えば、微生物担体4の外接球の直径の4倍以下であってもよく、2倍以下であってもよい。このように、発酵槽2の内壁面21からの案内部材5の突出量に対して十分に小さい微生物担体4を用いることにより、発酵槽2内に微生物担体4を投入する際に、微生物担体4が案内部材5の間により進入しやすくなる。その結果、発酵槽2内により多量の微生物担体4を充填し、発酵効率をより高めることができる。
【0031】
本形態の発酵装置1の動作の一例を以下に説明する。発酵装置1を動作させるに当たっては、予め、微生物が担持された微生物担体4を発酵装置1の上部空間23に充填する。この状態で、
図1に示すように被処理水供給部3から被処理水Wを供給する。被処理水供給部3から供給された被処理水Wの少なくとも一部は、微生物担体4との接触によって発酵しつつ、重力によって下方に流れ落ちる。そして、発酵槽2の下部空間24に到達した被処理水Wは、被処理水導出管26を通じて発酵槽2の外部へ導かれる。また、発酵によって生じたバイオガスは、発酵槽2の上部空間23に設けられたガス導出管25を通じて発酵槽2の外部へ導かれる。
【0032】
この際、被処理水Wの一部は、被処理水供給部3から供給された後、直接または微生物担体4を介して発酵槽2の内壁面21に接触する。発酵槽2の内壁面21に接触した被処理水Wは、発酵槽2の内壁面21を伝って流れ、案内部材5に接触する。そして、案内部材5に接触した被処理水Wは、案内部材5によって発酵槽2の内方へ導かれ、案内部材5の先端51から微生物担体4上に再度供給される。これにより、発酵槽2の内壁面21を伝う被処理水Wの量を低減し、発酵効率を高めることができる。
【0033】
(実施形態2)
本形態では、発酵槽2に設けられる案内部材5の他の態様の例を説明する。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一の符号は、特に示さない限り、既出の形態における構成要素と同様の構成要素等を表す。
【0034】
本形態における案内部材502、503、504の形状はいずれも板状であり、発酵槽2の内壁面21に沿った円環形状を有している。また、
図4~
図6に示すように、案内部材502、503、504の上面52の少なくとも一部には、発酵槽2の内壁面21側の基端53から先端51に近づくほど下方に傾斜した傾斜領域521が設けられている。このように、案内部材502、503、504の上面52の少なくとも一部を斜め下方に傾斜させることにより、案内部材502、503、504上の被処理水をより迅速に案内部材502、503、504の先端51に導き、微生物担体上に供給することができる。
【0035】
傾斜領域521は、案内部材の上面52の一部に設けられていてもよく、上面52の全体に設けられていてもよい。上面52の一部に傾斜領域521を設ける場合、
図4及び
図5に示すように、上面52は、発酵槽2の内壁面21側の基端53から先端51に近づくほど下方に傾斜した傾斜領域521と、傾斜領域521に連なり、水平面からなる水平領域522とから構成されていてもよい。このように、案内部材の上面52の一部に傾斜領域521を設けることにより、案内部材上に被処理水が滞留することを回避しつつ、案内部材上の被処理水をより迅速に案内部材の先端51に導くことができる。
【0036】
傾斜領域521と水平領域522との配置の態様は特に限定されることはなく、種々の態様を取り得る。例えば
図4に示す案内部材502のように、案内部材502の基端53及びその近傍に傾斜領域521を配置し、水平領域522を傾斜領域521よりも案内部材502の先端51側に配置することができる。また、例えば
図5に示す案内部材503のように、案内部材503の先端51及びその近傍に傾斜領域521を配置し、水平領域522を傾斜領域よりも基端53側に配置してもよい。さらに、図には示さないが、発酵槽2の先端51と基端53と案内部材との間に傾斜領域521と水平領域522とを交互に配置し、階段状の上面52を構成することもできる。
【0037】
上面52の一部に傾斜領域521を設ける場合、傾斜領域521と水平面とのなす角度は、例えば10°以上45°以下の範囲から適宜設定することができる。傾斜領域521と水平面とのなす角度を10°以上、好ましくは15°以上、より好ましくは20°以上とすることにより、傾斜領域521上の被処理水をより迅速に案内部材502、503の先端51へ導くことができる。また、傾斜領域521と水平面とのなす角度を45°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは35°以下とすることにより、案内部材502、503の下方に生じるデッドスペースをより低減することができる。また、特に
図5に示すように傾斜領域521が案内部材503の先端51に設けられている場合には、傾斜領域521と水平面とのなす角度を45°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは35°以下とすることにより、案内部材503の先端51に集まった被処理水を案内部材503の下面に回り込みにくくすることができる。これにより、案内部材503上の被処理水をより確実に微生物担体上に供給することができる。
【0038】
また、例えば
図6に示す案内部材504のように、案内部材504の上面52の全体を傾斜領域521とし、発酵槽2の内壁面21側の基端53から先端51に向かうほど下方に傾斜させることもできる。この場合には、被処理水が案内部材504の上面52のいずれの位置に接触した場合であっても、被処理水が傾斜に沿って案内部材504の先端51に流れやすくなるため、案内部材504上の被処理水をより迅速に案内部材504の先端51に導くことができる。
【0039】
案内部材504の上面52の全体が斜め下方に傾斜している場合においても、案内部材504の上面52と水平面とのなす角度は、案内部材504の上面52の一部が斜め下方に傾斜している場合と同様に、例えば10°以上45°以下の範囲から適宜設定することができる。案内部材504の上面52と水平面とのなす角度を10°以上、好ましくは15°以上、より好ましくは20°以上とすることにより、案内部材504上の被処理水をより迅速に案内部材504の先端51へ導くことができる。また、案内部材504の上面52と水平面とのなす角度を45°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは35°以下とすることにより、案内部材504の下方に生じるデッドスペースをより低減するとともに、案内部材504の先端51に集まった被処理水を案内部材504の下面に回り込みにくくし、被処理水をより確実に微生物担体上に供給することができる。
【0040】
(実施形態3)
本形態では、発酵槽2の内壁面21に沿ってらせん状に延設された案内部材の例を示す。
図7に示すように、本形態の発酵装置102における発酵槽2には、発酵槽2を上部空間23と下部空間24とに区画する仕切り板22が設けられている。発酵槽2の上部空間23には、被処理水供給部3、2個の案内部材505及びガス導出管25が設けられている。また、上部空間23には、微生物担体(図示略)が充填されている。発酵槽2の下部空間24には、被処理水導出管26が設けられている。
【0041】
本形態の案内部材505は、上下方向に互いに間隔をあけて配置されている。各案内部材505の形状は板状であり、発酵槽2の内壁面21に沿ってらせん状に延在している。案内部材505の旋回数は、1回以上であればよい。例えば、本形態の案内部材505は、発酵槽2の内壁面21に沿って概ね1.1回旋回している。また、案内部材505の上面52の全体は傾斜領域521から構成されており、発酵槽2の内壁面21側の基端53から先端51に近づくほど下方に傾斜している。
【0042】
本形態の案内部材505のように、案内部材505を発酵槽2の内壁面21に沿ってらせん状に配置する場合、案内部材505の上面52の全体が発酵槽2の内壁面21側の基端53から先端51に近づくほど下方に傾斜していることが好ましい。また、案内部材505のリード角、つまり、水平面に対する案内部材505の延在方向のなす角度は、水平面に対する案内部材505の上面52のなす角度よりも小さいことが好ましい。このように、案内部材505の上面52の全体を斜め下方に傾斜させるとともに、案内部材505の上面52の傾斜角度を案内部材505のらせん形状のリード角よりも大きくすることにより、案内部材505上の被処理水が案内部材505の先端51に導かれやすくなる。その結果、案内部材505上の被処理水を微生物担体上に供給し、発酵効率をより高めることができる。
【0043】
また、本形態の案内部材505は、内壁面21に沿う方向に2つの側端54(54a、54b)を有しており、案内部材505の下面55は、2つの側端54のうち第1の側端54aから第2の側端54bに向かうほど上方に傾斜している。このように、案内部材505の下面55に傾斜を設けることにより、被処理水の発酵によって生じたガスを案内部材505の下面55の傾斜によって速やかに上方に導くことができる。
【0044】
(実施形態4)
本形態では、被処理水の発酵によって生じたガスを上方に透過させるためのガス透過部56を備えた案内部材の例を説明する。被処理水の発酵によりガスが生じる場合、案内部材がガスの上方への移動の妨げとなる場合がある。このような場合においても、案内部材にガス透過部56を設けることにより、発酵によって生じたガスを速やかに上方へ移動させることができる。
【0045】
ガス透過部56は、例えば
図8に示すような、案内部材を上下方向に貫通する貫通孔561であってもよい。貫通孔561の位置、大きさ、形状及び数などは、所望するガス透過性能に応じて適宜設定することができる。例えば、
図8に示す案内部材506は、発酵槽の内壁面に沿った円環形状を有しており、案内部材506上に4つの貫通孔561が設けられている。4つの貫通孔561は、周方向において等間隔となる位置に配置されている。また、各貫通孔561の形状は円形である。
【0046】
また、ガス透過部56は、例えば
図9に示すような、案内部材に設けられた切り欠き562であってもよい。切り欠き562の位置、大きさ、形状及び数などは、所望するガス透過性能に応じて適宜設定することができる。例えば、
図9に示す案内部材507は、発酵槽の内壁面に沿った円環形状を有しており、案内部材507上に4つの切り欠き562が設けられている。4つの切り欠き562は周方向において等間隔となる位置に配置されている。これらの切り欠き562の形状はスリット状である。
【0047】
さらに、ガス透過部56は、例えば、発酵槽の内壁面に沿う方向における案内部材の側端54のうち、水平方向において隣り合う側端54の間の空隙であってもよい。より具体的には、例えば
図10に示すように、案内部材508が発酵槽の内壁面に沿ってC字形状に延在している場合、案内部材の側端54同士の空隙563がガス透過部56となる。また、例えば
図11に示すように、複数の案内部材509が、共通の水平面上において発酵槽2の内壁面21に沿う方向に互いに間隔をあけて配置されている場合、発酵槽2の内壁面21に沿う方向において隣り合う案内部材509同士の空隙563(つまり、一方の案内部材509の側端54と、他方の案内部材509の側端54との間の空隙)がガス透過部56となる。案内部材の側端54同士の空隙563をガス透過部56とする場合、空隙563の位置、大きさ、形状及び数などは、所望するガス透過性能に応じて適宜設定することができる。
【0048】
(実施形態5)
本形態においては、案内部材が上下方向に間隔をあけて配置されている場合のガス透過部の配置の例を説明する。
図12に示すように、本形態の発酵装置103における発酵槽2には、発酵槽2を上部空間23と下部空間24とに区画する仕切り板22が設けられている。発酵槽2の上部空間23には、被処理水供給部3、複数の案内部材509及びガス導出管25が設けられている。また、上部空間23には、微生物担体(図示略)が充填されている。発酵槽2の下部空間24には、被処理水導出管26が設けられている。
【0049】
発酵槽2の上部空間23における内壁面21には、16個の案内部材509が配置されている。これらの案内部材509のうち4個の案内部材509aは、仕切り板22に最も近い位置に配置された第1案内部材群を構成している。また、他の4個の案内部材509bは、第1案内部材群の上方に配置された第2案内部材群を構成しており、さらに他の4個の案内部材509cは、第2案内部材群の上方に配置された第3案内部材群を構成している。そして、残る4個の案内部材509dは、第3案内部材群と被処理水供給部3との間に配置された第4案内部材群を構成している。
【0050】
第1案内部材群を構成する4個の案内部材509aは、上下方向において仕切り板22からの高さが同一となる位置に配置されている。これらの案内部材509aの形状はいずれも板状であり、案内部材509aの上面52の全体が、基端53から先端51に近づくほど下方に傾斜している。また、4個の案内部材509aは、発酵槽2の内壁面21に沿って等間隔に配置されており、隣り合う案内部材509aの間にガス透過部56としての空隙563が設けられている。
【0051】
第2案内部材群を構成する4個の案内部材509bは、第1案内部材群を構成する案内部材509aよりも上方において、仕切り板22からの高さが同一となる位置に配置されている。また、4個の案内部材509bは、発酵槽2の内壁面21に沿って等間隔に配置されており、隣り合う案内部材509bの間にガス透過部56としての空隙563が設けられている。
【0052】
図13に示すように、第2案内部材群を構成する4個の案内部材509bは、第1案内部材群を構成する案内部材509aの間に形成された4か所のガス透過部56aを上方から覆うように配置されている。また、第2案内部材群を構成する案内部材509bの間に形成されたガス透過部56bは、第1案内部材群を構成する4個の案内部材509aの上方に配置されている。なお、第2案内部材群を構成する案内部材509bの形状は、第1案内部材群を構成する案内部材509aの形状と同様である。
【0053】
図12に示すように、第3案内部材群の構成及び配置は、上下方向における位置が異なる以外は、第1案内部材群と同様である。すなわち、第3案内部材群を構成する4個の案内部材509cは、第2案内部材群を構成する案内部材509bの上方に配置されている。これらの案内部材509cは、第2案内部材群を構成する案内部材509bの間に形成された4か所のガス透過部56を上方から覆うように配置されている。また、案内部材509cの間に形成されたガス透過部56は、第2案内部材群を構成する4個の案内部材509bの上方に配置されている。
【0054】
第4案内部材群の構成及び配置は、上下方向における位置が異なる以外は、第2案内部材群と同様である。すなわち、第4案内部材群を構成する4個の案内部材509dは、第3案内部材群を構成する案内部材509cの上方に配置されている。これらの案内部材509dは、第3案内部材群を構成する案内部材509cの間に形成された4か所のガス透過部56を上方から覆うように配置されている。また、案内部材509dの間に形成されたガス透過部56は、第3案内部材群を構成する4個の案内部材509cの上方に配置されている。
【0055】
本形態の発酵装置103のように、案内部材509が上下方向に間隔をあけて配置されており、かつ、発酵槽2がガス透過部56を有している場合、少なくとも1つの案内部材509の上方にガス透過部56が配置されていることが好ましく、全ての案内部材509の上方にガス透過部56が配置されていることがより好ましい。
【0056】
案内部材509にガス透過部56を設ける場合、案内部材509上の被処理水Wが案内部材509の先端に到達する前に、ガス透過部56から下方に流れ落ちることがある。このような場合であっても、ガス透過部56を案内部材509上に配置することにより、ガス透過部56から流れ落ちた被処理水Wを、その下段に配置した案内部材509によって受け止めることができる。その結果、案内部材509によって被処理水Wが微生物担体上に導かれやすくなり、発酵効率をより高めることができる。
【0057】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、102、103 発酵装置
2 発酵槽
21 内壁面
3 被処理水供給部
4 微生物担体
5、502~509 案内部材