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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080716
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】振動解析システム及び振動解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240610BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240610BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G06T7/00 610Z
G06T7/00 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193877
(22)【出願日】2022-12-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
【テーマコード(参考)】
2G064
5L096
【Fターム(参考)】
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC03
2G064BC22
2G064CC29
5L096AA06
5L096BA03
5L096DA02
5L096FA23
5L096FA34
5L096FA76
5L096JA03
5L096JA09
(57)【要約】
【課題】非接触で微小な変位の振動をリアルタイムに解析できるシステム及び方法を提供する。
【解決手段】コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、通信部は、画像情報を受信可能に、且つ、制御部からの制御情報を送信可能に構成され、記憶部は、画像情報を記憶可能に、且つ、制御部からの制御情報を記憶可能に構成され、制御部は、領域分割部と、第1の振動解析部と、類似判定部と、解析条件決定部と、第2の振動解析部と、を備え、領域分割部は、画像情報を領域毎に分割可能に構成され、第1の振動解析部は、各領域の時系列画像情報から振動を解析可能に構成され、類似判定部は、領域毎の振動解析から類似性を判定可能に構成され、解析条件決定部は、類似性の結果から解析条件を決定可能に構成され、第2の振動解析部は、解析条件から振動を解析可能に構成される、振動解析システム。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置とコンピュータとを備える振動解析システムであって、
前記撮像装置は、連続撮像可能なカメラを備え、
前記コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、
前記通信部は、前記カメラで撮像された画像情報を受信可能に、且つ、前記制御部で
処理された制御情報を送信可能に構成され、
前記記憶部は、前記カメラから受信した画像情報を記憶可能に、且つ、前記制御部で
処理された制御情報を記憶可能に構成され、
前記制御部は、領域分割部と、第1の振動解析部と、類似判定部と、解析条件決定部
と、第2の振動解析部と、を備え、
前記領域分割部は、前記画像情報を領域毎に分割可能に構成され、
第1の振動解析部は、各領域の時系列画像情報から振動を解析可能に構成され、
前記類似判定部は、前記領域毎の振動解析から類似性を判定可能に構成され、
前記解析条件決定部は、前記類似性の結果から解析条件を決定可能に構成され、
第2の振動解析部は、前記解析条件から振動を解析可能に構成される、
振動解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の振動解析システムにおいて、
第1及び第2の振動解析部は、デジタル画像相関法で変位を導出し、その変位の時系列画像情報から高速フーリエ変換をすることで周波数特性を導出し、それらによって振動を解析可能に構成される、
振動解析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の振動解析システムにおいて、
前記類似判定部は、基準領域に対して、隣接領域に類似領域があった場合、次に類似領域の隣接領域と基準領域とを判定し、非類似領域と判定されるまで次の隣接領域を判定するように構成される、
振動解析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の振動解析システムにおいて、
前記解析条件決定部は、解析位置及び/又は解析範囲を決定するように構成される、
振動解析システム。
【請求項5】
請求項4に記載の振動解析システムにおいて、
前記解析位置は、複数の領域から構成される類似領域の中から所定の領域を選定し、その選定された領域の振動を解析するように構成される、
振動解析システム。
【請求項6】
請求項4に記載の振動解析システムにおいて、
前記解析範囲は、複数の領域から構成される類似領域を少なくとも一つの集合体とし、その集合体の振動を解析するするように構成される、
振動解析システム。
【請求項7】
振動解析方法であって、
所定の画角で連続画像を撮像し(ステップS1)、
解析は1回目か否か?(ステップS2)
ステップS2において、解析が1回目の場合、前記各画像を格子状の領域に分割し(ステップS3)、1回目でない(2回目以降)場合、ステップS6の条件で第2の振動を解析し(ステップS7)、
ステップS3において、分割した各領域の時系列画像情報から第1の振動を解析し(ステップS4)、
ステップS4より、振動の類似性を判定し(ステップS5)、
ステップS5より、2回目以降の解析条件を決定し(ステップS6)、
2回目以降の解析時は、ステップS1、S2、及びS7が繰り返され、
これによって、非接触で微小な変位の振動をリアルタイムに解析可能な、
振動解析方法。
【請求項8】
請求項7に記載の振動解析方法において、
ステップS4及びステップ7における第1及び第2の振動解析は、デジタル画像相関法で変位を導出し、その変位の時系列画像情報から高速フーリエ変換をすることで周波数特性を導出し、それらによって振動を解析する、
振動解析方法。
【請求項9】
請求項7に記載の振動解析方法において、
ステップS5における類似性の判定は、基準領域に対して、隣接領域に類似領域があった場合、次に類似領域の隣接領域と基準領域とを判定し、非類似領域と判定されるまで次の隣接領域を判定し続ける、
振動解析方法。
【請求項10】
請求項7に記載の振動解析方法において、
ステップS6における解析条件の決定は、解析位置及び/又は解析範囲を決定する、
振動解析方法。
【請求項11】
請求項10に記載の振動解析方法において、
前記解析位置は、複数の領域から構成される類似領域の中から所定の領域を選定し、その選定された領域の振動を解析する、
振動解析方法。
【請求項12】
請求項10に記載の振動解析方法において、
前記解析範囲は、複数の領域から構成される類似領域を少なくとも一つの集合体とし、その集合体の振動を解析する、
振動解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動解析システム及び振動解析方法に関し、特に非接触で機械振動を解析するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像解析により、非接触で機械振動を測定する装置が提案されている。
特許文献1に開示の振動測定システムは、撮像装置と振動測定装置が接続され、前記撮像装置は、被測定物を撮像して映像データを生成する撮像部と、生成された映像データを出力する映像出力部とを備え、前記振動測定装置は、前記映像データを取得する映像取得部と、取得された前記映像データを複数のセグメントに分割し、複数の局所パターンとの積を該セグメント内のすべての画素に関して積分する高次局所自己相関特性によって、該セグメント毎に特徴ベクトルを導出するベクトル導出部と、前記特徴ベクトルに対して多変量解析を行い、目的ベクトルを導出する多変量解析部と、セグメント毎の前記目的ベクトルを用いて、各セグメントに含まれる対象部位を特定し、その対象部位のセグメント間の移動をもって該対象部位の変位を導出する変位導出部とを備える。
すなわち、特許文献1に開示された振動測定システムでは、被測定物上の複数の対象部位における振動の変位や周期を非接触かつリアルタイムに測定すること目的としており、対象部位の変位の抽出に、高次局所自己相関特性によるパターン認識を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-112795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における振動測定システムでは、撮像範囲の約1/100程度の相対変位を取得することを目的としており、測定精度が低い問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、非接触で微小な変位の振動をリアルタイムに解析できる振動解析システム及び振動解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、撮像装置とコンピュータとを備える振動解析システムであって、前記撮像装置は、連続撮像可能なカメラを備え、前記コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、前記通信部は、前記カメラで撮像された画像情報を受信可能に、且つ、前記制御部で処理された制御情報を送信可能に構成され、前記記憶部は、前記カメラから受信した画像情報を記憶可能に、且つ、前記制御部で処理された制御情報を記憶可能に構成され、前記制御部は、領域分割部と、第1の振動解析部と、類似判定部と、解析条件決定部と、第2の振動解析部と、を備え、前記領域分割部は、前記画像情報を領域毎に分割可能に構成され、第1の振動解析部は、各領域の時系列画像情報から振動を解析可能に構成され、前記類似判定部は、前記領域毎の振動解析から類似性を判定可能に構成され、前記解析条件決定部は、前記類似性の結果から解析条件を決定可能に構成され、第2の振動解析部は、前記解析条件から振動を解析可能に構成される、振動解析システム。
本発明の別の態様によれば、振動解析方法であって、所定の画角で連続画像を撮像し(ステップS1)、解析は1回目か否か?(ステップS2)、ステップS2において、解析が1回目の場合、前記各画像を格子状の領域に分割し(ステップS3)、1回目でない(2回目以降)場合、ステップS6の条件で第2の振動を解析し(ステップS7)、ステップS3において、分割した各領域の時系列画像情報から第1の振動を解析し(ステップS4)、ステップS4より、振動の類似性を判定し(ステップS5)、ステップS5より、2回目以降の解析条件を決定し(ステップS6)、2回目以降の解析時は、ステップS1、S2、及びS7が繰り返され、これによって、非接触で微小な変位の振動をリアルタイムに解析可能な、振動解析方法。
【0007】
かかる態様によれば、非接触で微小な変位の振動をリアルタイムに解析できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る振動解析システムの構成を示す模式図である。
図2】コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明に係る振動解析方法を示すフローチャートである。
図4図4Aは撮像画像、図4B図4Aの撮像画像を分割した模式図である。
図5図5A図5Hは、6×6領域に分割した画像を例として、類似判定の手順 を示した図である。
図6】解析位置を決定した模式図である。
図7】解析範囲を決定した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
本実施形態においてソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよく、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよく、また、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、「部」は、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、様々な情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
上述の広義の回路は、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現されるものである。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.全体構成
振動解析システム1の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る振動解析システム1の構成を示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、振動解析システム1は、振動解析対象物W(以下、単に対象物Wという)の一部または全部を含んだ撮像範囲Rを撮像する撮像装置2と、得られた画像情報に対して画像処理等を行うコンピュータ3と、を備え、これらが電気的に接続されたシステムである。本発明の振動解析システム1は、非接触かつリアルタイムに微小(例えば10ミクロン(μm)以下)な変位の振動を解析可能に構成されている。
【0015】
1.1 撮像装置
撮像装置2は、対象物Wを含んだ撮像範囲Rを撮像する適当な位置に配置され、その撮像範囲Rを一定時間(例えば5秒間)、高速で連続撮像するものである。
本実施形態に係る撮像装置2の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは、カメラ20を備える。撮像装置2の撮像操作は、コンピュータ2から操作させてもよいし、手動で行っても構わない。
【0016】
(カメラ)
カメラ20は、対象物Wを含んだ撮像範囲Rを撮像した画像情報をデータ転送可能に構成されている。具体的には、入射した光を検出し、搭載された光量センサによって電気信号に変換され、後述の通信部31(コンピュータ3のハードウェア構成の一部)へデータ転送するものである。
カメラ20は、高速カメラを例示するがこれに限定されず、ビデオカメラ、ネットワークカメラであってもよく、対象物Wの振動を解析可能な程度の撮像を行うことが可能な周知のカメラを用いることができる。本実施形態では、モノクロ8bitの解像度1280×1024pxでフレームレート210fpsの撮像が可能な高速カメラを採用した。また、より高い周波数の機械振動を解析する場合は、モノクロ8bitの解像度320×240pxでフレームレート2,302fpsにすればよい。
一般的にガタやゆるみによる機械振動を解析するには、1,000Hzまでの周波数帯が測定できれば良く、その際のフレームレートは2,000fps以上が好ましい。解像度は人が画像を見て対象を認識できる最低限の解像度320×240px以上が好ましい。
【0017】
1.2 コンピュータ
続いて、コンピュータ3について説明する。図2は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態では、図1に示すように、撮像装置2で対象物Wを含んだ撮像範囲Rを撮像し、その画像情報のデータ転送先として、コンピュータ3が使用される。また、コンピュータ3は、得られた画像情報から撮像装置2に対して、制御信号を出力する。
コンピュータ3は、例えば、振動の画像処理等を行う専用の制御装置であり、図2に示すように、通信部31と、記憶部32と、制御部33等で構成され、これらの構成要素が通信バス30を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0019】
(通信部)
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。これらは一例であり、専用の通信規格を採用してもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。
【0020】
通信部31は、コンピュータ3から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成
されている。また、通信部31は、外部の構成要素から種々の電気信号をコンピュータ3に受信可能に構成されている。例えば、通信部31は、撮像装置2(外部の構成要素の一例)に設けられた不図示のイメージセンサから、連続して撮像した画像情報(電気信号)を受信可能に構成される。また、通信部31は、制御部33からの制御情報を撮像装置2に送信可能に構成される。
【0021】
(記憶部)
記憶部32は、上述の記載により定義される様々な情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。また、ストレージデバイスは、内蔵に限らず、外部からコンピュータ3に接続されてもよい。
【0022】
記憶部32は、制御部33によって実行される画像処理に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。特に記憶部32は、通信部31を介して受信した撮像装置2からの画像情報を記憶している。また、制御部33(後述の領域分割部33a、第1の振動解析部33b、類似判定部33c、解析条件決定部33d、及び第2の振動解析部33e)で実行した画像情報、記憶情報、または制御情報等を記憶している。
【0023】
(制御部)
制御部33は、受信した画像情報を処理、又は制御可能に構成されている。制御部33は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された画像情報や所定のプログラムを読み出すことによって、画像処理に係る種々の機能を実現する。具体的には、記憶部32に記憶された画像情報を各領域に分割するための領域分割機能、分割された領域毎の振動を解析するための第1の振動解析機能、基準領域に対して他領域との振動の類似性を判定するための類似判定機能、類似判定によって、解析条件を決定するための解析条件決定機能、及び解析条件決定によってリアルタイムに振動を解析するための第2の振動解析機能が該当する。すなわち、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されることで、領域分割部33a、第1の振動解析部33b、類似判定部33c、解析条件決定部33d、及び第2の振動解析部33eとして実行されうる。なお、制御部33は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。また、それらの組合せであってもよい。さらに、制御部33は、CPUに限らず、グラフィックス・プロセシング・ユニット(Graphics Processing Unit:GPU)でもよく、そのGPUは、内蔵に限らず、外部から実施するように構成されてもよい。
以下、制御部33における領域分割部33a、第1の振動解析部33b、類似判定部33c、解析条件決定部33d、及び第2の振動解析部33eについて、詳述する。
【0024】
〈領域分割部〉
領域分割部33aは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。領域分割部33aは、記憶部32に記憶された画像情報を領域毎に分割可能に構成される。以下、図4A及び図4Bを用いて、具体的に説明する。図4Aは撮像画像、図4B図4Aの撮像画像を分割した模式図である。なお、図4Bでは、便宜上、分割した領域を説明するために撮像画像の範囲外に英数字を付している。以下、同様に図5図7にも適用する。
例えば、図4Aに示す撮像画像に対し、図4Bに示すように、領域分割部33aは、時系列画像情報(記憶部32に記憶されている)の各画像を格子状に分割する。それによって、領域(0,a)~領域(7,h)といった所定サイズの領域ができる。そして、分割した各情報を記憶部32に記憶させる。本実施形態では、説明の便宜上、画像情報を32×32px単位の領域に分けて処理する。すなわち、画像情報が例えば1280×1024pxであった場合、1枚の画像情報には、40×32の1280の領域が存在することとなる。ここで、領域のサイズは、予め設定しておき、好ましくは30×30px以上である。領域は正方形としているが、これに限らず、矩形でもよい。また、各領域は、必ずしも隣接同士が接している必要はなく、各領域間を所定距離あけて設けてもよい。
【0025】
〈第1の振動解析部〉
第1の振動解析部33bは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。第1の振動解析部33bは、領域分割部33aで分割された各領域の振動を解析可能に構成される。具体的には、第1の振動解析部33bは、領域分割部33aで各領域に分割した時系列画像情報(記憶部32に記憶されている)から、各領域の振動を解析して、振動情報を記憶部32に記憶させる。なお、振動解析は、好ましくは、時系列画像情報からデジタル画像相関法で領域毎の変位を導出し、その変位の時系列画像情報から高速フーリエ変換をすることで周波数特性を導出し、それらによって振動を解析する。すなわち、この変位の時系列画像情報及び周波数特性が振動を解析する振動情報である。また、領域毎の振動解析の順序は、特に限定はしないが、一画像全体に対して左から右に、上から下に、と連続して行う、いわゆるラスタスキャン順序が好ましい。
【0026】
〈類似判定部〉
類似判定部33cは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。類似判定部33cは、解析された各領域の振動の類似度を判定可能に構成される。類似判定部33cは、第1の振動解析部33bで解析された各領域の振動情報(記憶部32に記憶されている)から、各領域の類似度を判定し、その判定結果を記憶部32に記憶させる。以下、図5A図5Hを用いて、具体的に説明する。図5A図5Hは、6×6領域に分割した画像を例として、類似判定の手順を示した図である。ここでの判定は、特に限定はしないが、好ましくは、基準領域を決定し、それに対する隣接領域の類似度を算出し、閾値によって判定する。図5A図5Hにおける、ハッチングは基準領域を示し、〇印は基準領域の振動と類似領域を示し、×印は基準領域の振動と非類似領域を示している。また、領域内の1~8で表す数字は、判定する順番を示している。
【0027】
図5A図5Cは、基準領域に対して類似領域がない判定結果を示している。図5Aに示すように、まず領域(0,a)を基準領域とし、それに対する隣接領域(1,a)との類似度を算出する。ここで類似度の算出には、上述の振動情報(時系列画像情報からの変位」と「周波数特性」との両方)を用いる。
例えば、まず基準領域(0,a)の変位と隣接領域(1,a)の変位から、DTW(動的時間伸縮法)によって類似度を算出する。この類似度は波形が似ているほど小さい数値となる。よって、類似度に対して閾値を設けることで類似しているかどうかの判定が行える。ここでは類似度が閾値以下であれば、同一振動領域と判定し、類似度が閾値を越えていれば、同一振動領域ではないと判定する。
同様に基準領域(0,a)の周波数特性と隣接領域(1,a)の周波数特性から、ユークリッド距離によって類似度を算出する。この類似度も波形が似ているほど小さい数値となる。よって、類似度に対して閾値を設けることで類似しているかどうかの判定が行える。ここでは類似度が閾値以下であれば、同一振動領域と判定し、類似度が閾値を越えていれば、同一振動領域ではないと判定する。
変位と周波数特性の両方が同一振動領域と判定された場合は、類似領域と判定し、一方でも同一振動領域ではないと判定された場合は、非類似領域と判定する。
図5Aは、基準領域(0,a)に対して、その右側の隣接領域(1,a)は非類似領域と判定され、次の基準領域に対する隣接の領域は、下側の領域(0,b)となり、その領域(0,b)も非類似領域と判定された結果を示している。基準領域(0,a)に対する隣接の領域(図5Aでは2ヶ所)の判定が完了したら、次に、図5Bに示すように、基準領域を右隣の領域(1,a)とし、それに対する隣接の領域(図5Bでは2ヶ所)の判定を同様にしていく。以下、隣接領域とは、図5を正面視した場合、上下方向、左右方向とし、領域周りの上下左右の各1領域をいい、斜め方向は除している。
【0028】
図5Bは、図5A同様、基準領域(1,a)に対して、その右側の隣接領域(2,a)とその下側の隣接領域(1,b)とも非類似領域と判定された結果を示している。留意点は、基準領域に対して、判定されていない隣接の領域のみを判定している点である。すなわち、基準領域(1,a)に対して、左側の隣接領域(0,a)も隣接領域に該当しているが、図5Aの際に既に判定した領域であるため、判定をしていない。
以下、図示しないが、同様に基準領域を(2,a)、(3,a)、(4,a)、(5,a)、(0,b)と変更していき、各々での基準領域に対し、判定していない隣接の領域のみを判定していく。
【0029】
図5Cは、図5A及び図5B同様、基準領域(1,b)に対して、判定されていない隣接領域のみを判定した結果を示している。すなわち、基準領域(1,b)に対して、右側の隣接領域(3,b)と下側の隣接領域(2,c)とも非類似領域と判定された結果を示している。
【0030】
次に図5D図5Hは、基準領域に対して、隣接領域に類似領域があった場合の手順を示し、類似領域をグルーピングした模式図である。留意点は、基準領域に対して、隣接領域が類似領域と判定された場合、次に類似領域の隣接領域と基準領域とを判定し、非類似領域と判定されるまで次の隣接領域を判定していく点である。
【0031】
図5Dは、基準領域(2,b)に対して、その右側の1番と付された隣接領域(3,b)とその下側の2番と付された隣接領域(2,c)とも類似領域であると判定された結果を示している。
【0032】
図5Eは、類似領域と判定された場合、類似領域の隣接領域を判定する手順を示している。図5Eに示すように、まず、類似領域と判定された領域(3,b)に対して、その右側の隣接領域(4,b)は基準領域(2,b)に対して、非類似領域と判定され、その下側の隣接領域(3,c)は基準領域(2,b)に対して、類似領域であると判定された結果を示している。次に、類似領域と判定された領域(2,c)に対して、その左側の隣接領域(1,c)は基準領域(2,b)に対して、非類似領域と判定され、その下側の隣接領域(2,d)も基準領域(2,b)に対して、非類似領域と判定された結果を示している。留意点は、基準領域に対して、類似領域がある場合、次のステップとして、その類似領域に対して、判定されていない隣接領域を判定する点である。そして、隣接領域が非類似領域と判定されるまで隣接領域を判定していく点である。
【0033】
図5Fは、図5Eで類似領域と判定された隣接領域(3,c)に対して、その領域の隣接領域を判定した模式図である。図5Fに示すように、類似領域と判定された4番領域(3,c)に対して、その右側の隣接領域(4,c)とその下側の隣接領域(3,d)は、基準領域(2,b)に対して、両方とも非類似領域と判定された。これによって、基準領域(2,b)に対して、類似領域がこれ以上ないため、基準領域に対する類似判定は終了となる。そして、基準領域(2,b)及び類似領域(3,b)、(2,c)、(3,c)の4領域をグルーピング(太線枠)している。
【0034】
図5G及び図5Hは、図5D図5Fの基準領域(2,b)を(4,b)にして、それに対する隣接領域の判定手順を示した模式図である。図5Gは、図5Fに示すグルーピングが完了後、次の類似判定をする際に、基準領域をどの領域から始めるかを示している。すなわち、次の基準領域は、図5Fをラスタスキャン順序で行う場合、非類似領域と判定された領域(4,b)(類似領域(3,b)の右隣領域)となる。
【0035】
図5Gは、基準領域(4,b)に対して、その右側の隣接領域(5,b)は非類似領域と判定され、その下側の隣接領域(4,c)は類似領域と判定された。
【0036】
図5Hは、図5Gで類似領域であると判定された隣接領域(4,c)に対して、その領域の隣接領域を判定した模式図である。図5Hに示すように、類似領域と判定された領域(4,c)に対して、その右側の隣接領域(5,c)とその下側の隣接領域(4,d)は、基準領域(4,b)に対して、両方とも非類似領域と判定された。これによって、基準領域(4,b)に対して、類似領域がこれ以上ないため、基準領域に対する類似判定は終了となる。そして、基準領域(4,b)及び類似領域(4,c)の2領域をグルーピング(太線枠)している。
【0037】
このように類似判定部では、基準領域を変えていきながら、その隣接領域の類似判定を行い、基準領域と類似領域とをグルーピングする処理を行う。
尚、グルーピングは、これに限らない。例えば、各領域の振動に対し、SVM(サポートベクターマシン)を用いることで、類似する振動特性を持つ領域ごとにグルーピングしてもよい。
【0038】
〈解析条件決定部〉
解析条件決定部33dは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。解析条件決定部33dは、類似判定部33cでグルーピングされた結果を基に、解析条件を決定可能に構成される。具体的には、解析条件決定部33dは、解析位置及び/又は解析範囲を決定する。以下、図6及び図7を用いて、詳細に説明する。図6は解析位置を決定した模式図、図7は解析範囲を決定した模式図を夫々示している。図6及び図7では、説明の便宜上、グルーピングされた類似領域を太線で表し、解析する領域(解析領域)をハッチングで表し、ハッチングの種類で、3つのグルーピングの振動が異なっていることを表している。
【0039】
図6に示すように、解析位置の決定は、各グルーピングされた類似領域の中から全ての領域を解析するのではなく、所定の領域を選定し、その選定領域の位置を記憶部32に記憶させる。これにより解析する領域の数を減らすことができ、それによってスピードアップ化が図れる。具体的には、類似領域(1,b)~(4,b)及び(1,c)~(4,c)の中から、(2,b)、(4,b)、(1,c)、(3,c)の領域を選定している。すなわち、この類似領域では、8つの領域の中から、4つの領域(半分)を解析領域とし、その4つの解析領域の位置を記憶部32に記憶させる。類似領域の中から解析する解析領域の特定数は特に限定するものではない。好ましくは、解析速度に応じて決めればよい。例えば、カメラの撮影速度が100fpsの場合は、解析速度が100fps以上になるようにすればよい。また、類似領域内の解析領域の位置も特に限定するものではない。好ましくは、市松模様のように、ハッチングを交互に配するとよい。同様に、2つ目の異なる類似領域(2,d)、(3,d)の場合は、(3,d)の領域を選定している。同様に、3つ目の異なる類似領域(1,e)~(4,e)、(1,f)~(4,f)、及び(1,g)~(4,g)の場合は、(2,e)、(4,e)、(2,f)、(4,f)、(2,g)、(4,g)の6つ(半分)の領域を選定している。そして、いずれも記憶部32にその解析領域の位置を記憶させる。
【0040】
図7に示すように、解析範囲の決定は、複数の領域から構成される類似領域を少なくとも一つの集合体とし、その集合体の振動を解析可能に記憶部32に記憶させる。具体的には、類似領域(1,b)~(4,b)及び(1,c)~(4,c)である8つの領域を一つの集合体とし、その集合体の振動を解析可能に記憶部32に記憶させる。これにより解析する領域の数を減らすことができ、それによってスピードアップ化が図れる。ここでは、8つの領域をまとめて一つの集合体としているが、集合体(まとめる領域の数)が多すぎると解析時間が逆に長くなる場合がある。この場合は、事前に集合体内の領域の数が設定値以上の場合、分割するように設定すればよい。例えば、図7では設定値を4とすれば、2分割(2つの集合体)となる。同様に、2つ目の異なる類似領域(2,d)、(3,d)である2つの領域を一つの集合体とし、その集合体の振動を解析可能に記憶部32に記憶させる。同様に、3つ目の異なる類似領域(1,e)~(4,e)、(1,f)~(4,f)、及び(1,g)~(4,g)である12個の領域を一つの集合体とし、その集合体の振動を解析可能に記憶部32に記憶させる。上述の分割を行う場合は、3分割(3つの集合体)となる。。
【0041】
解析位置の決定と解析範囲の決定の選定は、事前に少なくともどちらか一方を選定していてもよいし、解析実行中に選定してもよい。事前に選定する場合は、解析範囲に応じた解析速度を事前に計測し、それを基に各種条件を決めればよい。一方、解析実行中に選定する場合は、解析位置と解析範囲をそれぞれ変更した条件で解析を実行し、解析速度を比較した上で求める解析速度を満たす条件に決定すればよい。また、解析条件の選定は、一度のみでなく、例えば、事前に決定しておいた時間ごとに複数回選定してもよい。これによって、類似領域と判定されたものが別の振動領域に変化したとしても、正確な振動解析が継続的にできるようになる。
【0042】
〈第2の振動解析部〉
第2の振動解析部33eは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。第2の振動解析部33eは、解析条件決定部33dで決定された解析位置及び/又は解析範囲の振動を解析可能に構成される。具体的には、第2の振動解析部33eは、解析条件部33dで決定された解析位置及び/又は解析範囲の振動を解析して、振動情報を記憶部32に記憶させる。振動解析は、第1の振動解析部33bの解析と同様に行うとよい。
【0043】
2.振動解析方法
次に、振動解析方法について、図3を参照して説明する。図3は、本発明に係る振動解析方法を示すフローチャートである。ただし、振動解析方法は、以下の順序で実行されることに限定されない。
まず、下準備として、撮像装置2及びコンピュータ3を設置する。コンピュータ3の設置は、特に限定はせず、撮像装置2の近傍(有線ケーブルが届く範囲)が好ましいが、遠隔地に設置して無線通信を行っても構わない。
次いで、振動を解析したい対象物Wの全体(または必要な箇所)が撮像できる画角に撮像装置2を調整する。好ましくは、対象物Wの振動を解析可能な最低限の画素分解能を確保しつつ、可能な限り広い画角に撮像装置2を調整する。
【0044】
[開始]
所定の画角で連続画像を撮像する(ステップS1)。
このとき、撮像した画像はコンピュータ3に送られる。撮像枚数は、次工程で行われる振動解析に必要な枚数でよい。例えば、振動解析をFFTにより行う場合、画像枚数は、カメラ20のフレームレートと要求する周波数分解能とから、以下の公知の式1で求めるとよい。尚、フレームレートと周波数分解能は、対象物Wに応じて予め決めるとよい。
画像枚数 = フレームレート/周波数分解能 ・・・(式1)
【0045】
次いで、解析は1回目か否か?で1回目の場合は“YES”へ進み、2回目以降の場合は“NO”に進む(ステップS2)
【0046】
次いで、ステップS2において、“YES”の場合、各画像を格子状の領域に分割する(ステップS3)。一方、“NO”の場合、後述のステップS6の条件で第2の振動を解析する(ステップS7)。
【0047】
次いで、ステップS3において、分割した各領域の時系列画像情報から第1の振動を解析する(ステップS4)。
【0048】
次いで、ステップS4の領域毎の解析から、隣接領域における振動の類似性を判定する(ステップS5)。
【0049】
次いで、ステップS5より、2回目以降の解析条件を決定する(ステップS6)。これによって、2回目以降の撮像による振動解析は、解析時間が速くなりリアルタイム化が実現可能となり、2回目以降は、ステップS1、S2、及びS7が繰り返される。
【0050】
以上より、非接触で微小な変位の振動をリアルタイムに解析することができる。
【0051】
最後に、本発明に係る実施形態及び変形例を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…振動解析システム, 2…撮像装置, 3…コンピュータ, 20…カメラ,
21…光学部, 22…駆動部, 23…三脚, 30…通信バス, 31…通信部,
32…記憶部, 33…制御部, 33a…領域分割部, 33b…第1の振動解析部,
33c…類似判定部, 33d…解析条件決定部, 第33e…第2の振動解析部, R,R2…撮像範囲, W…対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7