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  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図1
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図2
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図3
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図4
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図5
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図6
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図7
  • 特開-耐火胴縁を用いた外壁材 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080737
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】耐火胴縁を用いた外壁材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240610BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
E04B1/94 U
E04B2/56 611Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193920
(22)【出願日】2022-12-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】500332984
【氏名又は名称】株式会社ヒロコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 洋
(72)【発明者】
【氏名】小貫 勝代
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA04
2E001FA71
2E001GA59
2E001HA00
2E001JA07
2E001JB01
2E002EA01
2E002EA02
2E002FA00
2E002HA03
2E002MA36
(57)【要約】
【課題】できるだけ金属を使用せずに施工性を維持し耐火性能を向上させた耐火胴縁を用いた外壁材を提供する。
【解決手段】耐火胴縁を用いた外壁材は、柱材の前面に下地板を貼り付けた下地材と、前記下地材の前面に複数の耐火胴縁を間欠的に配置して通気層を確保した上で複数の不燃板を張り付けた不燃材と、を有し、前記耐火胴縁は、貝殻を芯材としてマグネシウムを含ませ岩石を混合して成形されたシェルボードを用いたマグネシウム板が、木胴縁の前面に貼着した上で前記柱材にビス留めされ、隣接する前記不燃板間の目地を塞ぐように前記シェルボードを用いた耐火ジョイナーが前記マグネシウム板に取り付けられる、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱材の前面に下地板を貼り付けた下地材と、
前記下地材の前面に複数の耐火胴縁を間欠的に配置して通気層を確保した上で複数の不燃板を張り付けた不燃材と、を有し、
前記耐火胴縁は、貝殻を芯材としてマグネシウムを含ませ岩石を混合して成形されたシェルボードを用いたマグネシウム板が、木胴縁の前面に貼着した上で前記柱材にビス留めされ、隣接する前記不燃板間の目地を塞ぐように前記シェルボードを用いた耐火ジョイナーが前記マグネシウム板に取り付けられる、
ことを特徴とする耐火胴縁を用いた外壁材。
【請求項2】
前記耐火胴縁は、前記木胴縁の前面及び後面に前記マグネシウム板を貼着する、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐火胴縁を用いた外壁材。
【請求項3】
前記耐火胴縁は、1枚又は複数の前記マグネシウム板を前記柱材にビス留めする、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐火胴縁を用いた外壁材。
【請求項4】
前記マグネシウム板は、内部にガラス繊維ネットを入れて補強される、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐火胴縁を用いた外壁材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火事の際に建物の外壁から下地まで熱が到達するのを抑制する耐火胴縁を用いた外壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物を耐火構造にする場合、外壁の下地材に通気胴縁を介した上で表面に耐火パネル等が貼り付けられる。下地材としては、例えば、柱や間柱を不燃ボード等で挟んだ上で柱間に断熱材などを充填したものがある。特許文献1に記載されているように、隣接する建築板の間にジョイナーを介在させ、その目地に耐火材を入れた上でシーリングする発明も開示されている。
【0003】
表面に不燃材などを使用していても、ジョイナーなど金属製の部材を使用していると、熱伝導により内部の木材や樹脂が燃えたり焦げたりする場合がある。特許文献2に記載されているように、表面の耐火パネルから下地材に熱が伝導して内部が燃焼しないような通気胴縁を用いた発明も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-105734号公報
【特許文献2】特許第6607546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、耐火材を使用していても耐火時間を超えて溶けてしまえば、金属部材を介して熱が奥へ伝達してしまうことから、金属自体を使用したくないケースもある。不燃材を何枚も重ねれば、耐火性能は向上するが、重量が大きくなり、厚みも出て施工性が悪くなる。
【0006】
そこで、本発明は、できるだけ金属を使用せずに施工性を維持し耐火性能を向上させた耐火胴縁を用いた外壁材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明である耐火胴縁を用いた外壁材は、柱材の前面に下地板を貼り付けた下地材と、前記下地材の前面に複数の耐火胴縁を間欠的に配置して通気層を確保した上で複数の不燃板を張り付けた不燃材と、を有し、前記耐火胴縁は、貝殻を芯材としてマグネシウムを含ませ岩石を混合して成形されたシェルボードを用いたマグネシウム板が、木胴縁の前面に貼着した上で前記柱材にビス留めされ、隣接する前記不燃板間の目地を塞ぐように前記シェルボードを用いた耐火ジョイナーが前記マグネシウム板に取り付けられる、ことを特徴とする。
【0008】
前記耐火胴縁を用いた外壁材において、前記耐火胴縁は、前記木胴縁の前面及び後面に前記マグネシウム板を貼着する、ことを特徴とする。
【0009】
前記耐火胴縁を用いた外壁材において、前記耐火胴縁は、1枚又は複数の前記マグネシウム板を前記柱材にビス留めする、ことを特徴とする。
【0010】
前記耐火胴縁を用いた外壁材において、前記マグネシウム板は、内部にガラス繊維ネットを入れて補強される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属の使用を最小限にしても施工性を維持したまま耐火性能を向上させることができる。表面の不燃材を薄くしても内部への熱の伝達を抑制することができるので、外壁が軽量化される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材を示す図である。
図2】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材を示す図である。
図3】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材において、ハット型ジョイナーを用いて表面に不燃材を配置した場合を示す図である。
図4】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材において、ハット型ジョイナーを用いて表面に不燃材を配置した場合を示す図である。
図5】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材を使用しない場合と使用した場合を比較した写真である。
図6】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材を使用しない場合と使用した場合を比較した写真図である。
図7】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材を使用しない場合と使用した場合を比較した写真図である。
図8】本発明である耐火胴縁を用いた外壁材において耐火胴縁の構造を変えた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。なお、建物の外側を向く面を前(表)とし、建物の内側を向く面を後(裏)とする。
【実施例0014】
まず、本発明である耐火胴縁を用いた外壁材について説明する。図1は、耐火胴縁を用いた外壁材の(a)平面断面図、(b)正面図であり、図2は、耐火胴縁を用いた外壁材の側面断面図である。なお、図1(b)において、斜線より上は、一番手前の不燃板を透過させた状態を示す。
【0015】
図1及び図2に示すように、外壁材100は、柱材(柱220および間柱230)の前面に下地板240を貼り付けた下地材200と、その下地材200の前面に複数の耐火胴縁400を間欠的に配置して通気層430を確保した上で複数の不燃板320を張り付けた不燃材300とを有する。
【0016】
下地材200は、外壁を仕上げるための下地となる部分で、建物の躯体の一部である。火事などの際に不燃板320を用いて燃えたり焦げたりしないようにする。下地材200は、建物を支えるために所定の間隔で配置された柱220、外壁などを支えるために柱220間に配置された間柱230、それらの柱材の裏側に不燃ボードなどを貼り付けた板材210、柱材の表側に構造用合板などを貼り付けた下地板240などを有する。
【0017】
下地板240は、耐震性、耐風性、気密性、防音性などを向上させるために用いられる。板材210と下地板240を貼ることで、柱220と間柱230の間の空間が塞がれるが、その空間に断熱材などを充填させても良いし、中空のままでも良い。
【0018】
不燃材300は、建物の躯体が火事などで燃えないように、不燃性のある素材を用いて下地材200に炎や熱が到達するのを抑制する。不燃材300は、内側にシェルボードなどの不燃ボードを使用した内板310、外側にセメント系ボードを使用した不燃板320、内板310と不燃板320の間に間欠的に配置した耐火胴縁400などを有する。
【0019】
不燃板320は、難燃材料や準不燃材料よりも防火性および耐火性の高い不燃材料を使用する。例えば、セメント系ボード、石膏ボード、シェルボード、マグネシウムボードなどがあり、石膏や骨材などを芯材とし、ガラス繊維などを埋め込んで補強したものでも良い。重量があるので、複数枚重ねたり厚みを大きくしないことが好ましい。
【0020】
不燃板320と内板310との間には、耐火胴縁400により通気層430を確保する。さらに、下地材200と不燃材300との間には、透湿防水シート250を挟むなどして介在させる。外壁から浸入した雨水を通気層430から排出するとともに、内部の湿気を通気層430から外部へ排出する。
【0021】
耐火胴縁400は、木胴縁410の前面にマグネシウム板420を貼着した上で柱材220、230にビス330留めされ、マグネシウム板420で隣接する不燃板320間の目地340を塞ぐように配置される。
【0022】
木胴縁410は、構造用合板など木材を使用した通気胴縁であり、燃えるのを抑制するために表面にマグネシウム板420を当てる。木胴縁410にマグネシウム板420を接着しても良いし、側面や裏面にも付けて良い。胴縁に金属を用いると、ビス330を留めやすいが、炎で熱せられることで木材などを焦がしてしまう。また、胴縁で樹脂を用いると、高温で溶けてしまう上に、ビス330を固定しづらい。
【0023】
マグネシウム板420は、シェルボードなど貝殻を芯材としてマグネシウム(水酸化マグネシウムや酸化マグネシウム等)を含ませた不燃ボードである。木チップを混入させると軽量化するが、水に弱くなって脆くなるので、岩石などを混合して成形する。軽い石を混入すれば、軽く水にも強く耐火性も向上する。木胴縁410をマグネシウム板420で覆うことにより、炎や熱が木胴縁410に到達しない。
【0024】
耐火胴縁400は、柱220または間柱230の柱材の位置に合わせて配置され、ビス330により木材である柱材まで貫通させて留められる。金属製のビス330は、木材にしっかり固定されるが、熱せられたとしても、細いことから、木胴縁410や柱材を焦がすまでには至らない。
【0025】
複数の不燃板320を張り付けるときに、不燃板320の膨張や収縮、振動などを吸収するために、不燃板320間に所定の間隔の目地340を確保する。目地340の隙間から炎や熱が入り込まないように、耐火胴縁400を裏側から当てて封止する。
【0026】
不燃板320を重ねて目地340の位置をずらすことで炎や熱の侵入を防止した場合、かなりの重量を増すことになる。不燃板320をビス留めする際も、不燃板320の厚みが増すと、ビスに掛かる荷重も大きくなり、不燃板320に空ける孔も多くなると、不燃板320の強度にも影響が出る。
【0027】
耐火胴縁400であれば、不燃板320を重ねる必要はなく、不燃板320を横に並べたときの目地340の部分だけ塞げば良いので、重量のある不燃材料が最小限となり大幅に軽量化される。
【0028】
図3は、耐火胴縁を用いた外壁材において、ジョイナーを用いて表面に不燃材を配置した場合の(a)平面断面図、(b)正面図であり、図4(a)は、平面断面図の一部を拡大した図であり、図4(b)は、側面断面図である。なお、図3(b)において、斜線より上は、一番手前の不燃板を透過させた状態を示す。
【0029】
図3及び図4に示すように、不燃材300は、隣接する不燃板320の間にハット型ジョイナー500を介在させて目地340を塞いでおり、耐火胴縁400は、不燃板320とマグネシウム板420でジョイナー500を挟むように配置される。
【0030】
ジョイナー500は、縦長の板の中央部に突条を形成した金属製の部材であり、突条の左右にそれぞれ不燃板320が配置され、端部に耐火胴縁400を当てることで熱が他に伝達しないように抑止される。なお、突条の表面に不燃性のコーキング剤などの目地剤510を充填してシールしても良い。
【0031】
高温で目地剤510が燃えたり溶けたりすると、金属製のジョイナー500に熱が伝達するが、不燃板320とマグネシウム板420でジョイナー500を挟みこんでおり、木胴縁410や柱材にまで熱が到達しない。
【0032】
なお、耐火胴縁400を使用すれば、ジョイナー500を使用しなくても目地340における耐熱を確保可能であり、目地340の間隔も狭くすることが可能であるが、ジョイナー500を併用しても問題は無い。
【0033】
図5(a)は、耐火胴縁を用いていない外壁材、図5(b)は、耐火胴縁を用いた外壁材、図6(a)は、ジョイナーを使用した場合の耐火胴縁を用いた外壁材、図6(b)は、その側面断面の写真である。また、図7(a)は、両方の耐火試験の結果であり、図7(b)は、耐火試験後の内部を比較した写真である。
【0034】
図5及び図6に示すように、耐火胴縁を用いていない外壁材と、耐火胴縁を用いた外壁材を用意し、両方に対して1時間くらい炎を当てた後、30分くらい放置した。なお、不燃材300が燃えたとしても、下地材200が燃えなければ良い。
【0035】
図7(a)に示すように、表面の不燃板320を外した状態で、右側の耐火胴縁を用いていない外壁材では、木胴縁410及び内板310がかなり燃えてしまっているが、左側の耐火胴縁400を用いた外壁材100では、木胴縁410及び内板310はあまり燃えていない。
【0036】
図7(b)に示すように、不燃材300を外した状態だと、右側の耐火胴縁を用いていない外壁材では、下地板240に焦げ260が発生しているが、左側の耐火胴縁400を用いた外壁材100では、下地板240に焦げは見当たらない。
【実施例0037】
次に、本発明である耐火胴縁を用いた外壁材において、様々な構造の耐火胴縁について説明する。
【0038】
図8(a)に示すように、外壁材100は、柱220などの柱材の前面に構造用合板などの下地板240を貼り付けた下地材200、下地材200の前面に複数の耐火胴縁400を間欠的に配置して通気層430を確保した上で複数の不燃板320を張り付けた不燃材300等を有する。
【0039】
耐火胴縁400は、貝殻を芯材としてマグネシウムを含ませ岩石を混合して成形されたシェルボードを用いたマグネシウム板420を、構造用合板などを用いた木胴縁410の前面に貼着した上で柱220にビス330で留めるとともに、隣接する不燃板320の間にシェルボードを用いた耐火ジョイナー500aを介在させて目地340を塞ぐ。また、耐火ジョイナー500aは、打ち込まれたビス330の頭部を隠すようにマグネシウム板420に取り付ければ良い。
【0040】
不燃板320は、例えば、サイディングボードであり、耐火胴縁400にサイディング用金具520をビス330aで固定した上で、不燃板320を取り付ける。サイディング用金具520を介在させ、耐火胴縁400と不燃板320の間に金属製のハット型ジョイナーを挟むことができない場合でも、縦長の角材状の耐火ジョイナー500aを挟むことで、熱の伝達が抑制される。
【0041】
なお、耐火胴縁400は、木胴縁410の前面及び後面にマグネシウム板420を貼着しても良い。また、耐火胴縁400は、1枚又は複数のマグネシウム板420を柱220にビス留めしても良い。マグネシウム板420や内板310などの不燃ボードは、ビス330、330aを固定する力が弱いので、柱220など太い柱材までビス330、330aを打ち込んで固定するのが好ましい。
【0042】
図8(b)に示すように、マグネシウム板420は、酸化マグネシウム板の内部にガラス繊維ネット420aを入れて補強したものでも良い。なお、酸化マグネシウム板は、主に酸化マグネシウムを含み、その他に、酸化ケイ素、塩化マグネシウム、塩化ホウ素、酸化カルシウム、酸化ナトリウムなどを含む。
【0043】
本発明によれば、金属の使用を最小限にしても施工性を維持したまま耐火性能を向上させることができる。表面の不燃材を薄くしても内部への熱の伝達を抑制することができるので、外壁が軽量化される。この構造により、45分の準耐火性能だけでなく、1時間の耐火性能を満たすことができるようになる。
【0044】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
100:外壁材
200:下地材
210:板材
220:柱
230:間柱
240:下地板
250:透湿防水シート
260:焦げ
300:不燃材
310:内板
320:不燃板
330:ビス
330a:ビス
340:目地
400:耐火胴縁
410:木胴縁
420:マグネシウム板
420a:ガラス繊維ネット
430:通気層
500:ジョイナー
500a:耐火ジョイナー
510:目地剤
520:サイディング用金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8