(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080738
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】スライス装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B26D3/28 610J
B26D3/28 610Q
B26D3/28 610S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193921
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博志
(57)【要約】
【課題】食品原木の切断面が斜めになったり荒れたりするのを解決できるスライス装置を提供する。
【解決手段】スライス装置は、柱状の食品原木を移送する原木移送ステーションと、記移送される食品原木を、切断刃を用いて所定の厚みにスライスするスライスステーション、スライスされたスライス片を受け止めると共に、当該スライス片の位置を調整する整列ステーションおよび、食品原木が挿通される開口部を有するホルダーを備えている。そのうちホルダーには、食品原木の移送方向と略直交する方向への移動を規制する可動式ガイドが組み込まれており、当該可動式ガイドは、前品原木の移送時には当該食品原木の外面に接し、切断刃によって食品原木がスライスされる際には移動が止められる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の食品原木を移送する原木移送ステーションと、
前記移送される食品原木を、切断刃を用いて所定の厚みにスライスするスライスステーションと、
前記スライスされたスライス片を受け止めると共に、当該スライス片の位置を調整する整列ステーションと、
前記食品原木の切断位置の手前に設置され、当該食品原木が挿通される開口部を有するホルダーと、を備え、
当該ホルダーには、前記食品原木の移送方向と略直交する方向への移動を規制する可動式ガイドが組み込まれており、
当該可動式ガイドは、前記食品原木の移送時には当該食品原木の外面に接し、前記切断刃によって食品原木がスライスされる際には移動が止められることを特徴とするスライス装置。
【請求項2】
前記ホルダーは、
前記食品原木が挿通する四角形状の開口部を有するフレームと、
当該フレームの側面に取り付けられ、前記食品原木の移送方向と略直交する方向にスライド可能な可動式ガイドと、
前記可動式ガイドをスライドさせ、前記食品原木に接する位置まで移送するガイド移送手段と、
前記食品原木の切断時に、前記可動式ガイドの移動を止めるガイド移動規制手段とで構成される、請求項1に記載のスライス装置。
【請求項3】
前記食品原木は、前記原木移送ステーションによる移送時には、底部が前記フレームによって支持され、前記切断刃による切断時には、前記フレームと可動式ガイドによって移送方向と略直交する方向への移動が止められる、請求項2に記載のスライス装置。
【請求項4】
前記ガイド移送手段は、
前記可動式ガイドの表面に取り付けられたピンと、
当該ピンが係合する孔を有する第1のアームと、
当該第1のアームを水平方向に移動させる第1の駆動部材とで構成される、請求項2または3に記載のスライス装置。
【請求項5】
前記第1の駆動部材は、前記食品原木の移送時には、前記可動式ガイドを、前記食品原木が変形しない程度の一定の力で食品原木に接触させる、請求項4に記載のスライス装置。
【請求項6】
前記ガイド移動規制手段は、前記フレームの近傍に設置された第2のアームを備え、当該第2のアームの先端を前記可動式ガイドに接触させることによって、当該可動式ガイドの移動を止める、請求項2に記載のスライス装置。
【請求項7】
前記ガイド移動規制手段は、前記第1の駆動部材の近傍に設置された第2の駆動部材を備え、当該第2の駆動部材を前記第1の駆動部材に当接することによって前記第1のアームの移動を止める、請求項4に記載のスライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハムやベーコン等の食品原木をスライスするスライス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハムやベーコンの製品の多くは、それらの食品原木をスライスした後、パック詰めした状態で販売される。具体的には、一定の速度で回転する切断刃に対して食品原木を移送・供給することにより、先端から順次、所定の厚みにスライスし、複数枚のスライス片を包装用フィルムに封入してスライス食品を製造している。
【0003】
食品原木をスライスする従来のスライス装置においては、原木の後端部をグリッパで把持し、かつ樹脂製の支持レーンでガイドされた状態で、支持レーンの下端から所定の厚さだけ突出した原木の側面に対して切断刃が回転移動(公転+自転)しながら切断している。
【0004】
ところで、切断刃によって食品原木をスライスする際、原木の被切断面との間で生じる水膜現象や真空現象に伴う吸着力によって被切断面が切断刃の刃面に密着し、原木が切断刃に引っ張られて一方向に移動して、切断面が斜めになったり荒れる等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-36176号公報
【特許文献2】特開2008-246669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題を解決するため、特許文献1では、原木の移送方向と直交する方向に樹脂製の受け部材を設置し、原木先端の側面を受け部材に接触させて、それ以上の移動を抑制している。
【0007】
しかし、この方法では、断面が不定形の原木をスライスする際、原木の軸がずれることによって、切断面の角度にムラが生じる。
【0008】
一方、特許文献2では、不定形の断面を有する原木に対応するため、原木の切断面と並行に付勢手段を設置している。
【0009】
しかし、付勢手段では、切断面に加わる強い力に対抗できないため、切断面が斜めになる等の問題を解決するには至っていない。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、切断面が斜めになったり荒れる等の問題を解決できるスライス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明に係るスライス装置は、
柱状の食品原木を移送する原木移送ステーションと、
前記移送される食品原木を、切断刃を用いて所定の厚みにスライスするスライスステーションと、
前記スライスされたスライス片を受け止めると共に、当該スライス片の位置を調整する整列ステーションと、
前記食品原木の切断位置の手前に設置され、当該食品原木が挿通される開口部を有するホルダーと、を備え、
当該ホルダーには、前記食品原木の移送方向と略直交する方向への移動を規制する可動式ガイドが組み込まれており、
当該可動式ガイドは、前記食品原木の移送時には当該食品原木の外面に接し、前記切断刃によって食品原木がスライスされる際には移動が止められることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記ホルダーは、
前記食品原木が挿通する四角形状の開口部を有するフレームと、
当該フレームの側面に取り付けられ、前記食品原木の移送方向と略直交する方向にスライド可能な可動式ガイドと、
前記可動式ガイドをスライドさせ、前記食品原木に接する位置まで移送するガイド移送手段と、
前記食品原木の切断時に、前記可動式ガイドの移動を止めるガイド移動規制手段とで構成されることが好ましい。
【0013】
また前記食品原木は、前記原木移送ステーションによる移送時には、底部が前記フレームによって支持され、前記切断刃による切断時には、前記フレームと可動式ガイドによって移送方向と略直交する方向への移動が止められることが好ましい。
【0014】
前記ガイド移送手段は、前記可動式ガイドの表面に取り付けられたピンと、当該ピンが係合する孔を有する第1のアームと、当該第1のアームを水平方向に移動させる第1の駆動部材とで構成されることが好ましい。
【0015】
前記第1の駆動部材は、前記食品原木の移送時には、前記可動式ガイドを、前記食品原木が変形しない程度の一定の力で食品原木に接触させることが好ましい。
【0016】
前記ガイド移動規制手段は、前記フレームの近傍に設置された第2のアームを備え、当該第2のアームの先端を前記可動式ガイドに接触させることによって、当該可動式ガイドの移動を止めることが好ましい。
【0017】
更に、前記ガイド移動規制手段は、前記第1の駆動部材の近傍に設置された第2の駆動部材を備え、当該第2の駆動部材を前記第1の駆動部材に当接することによって前記第1のアームの移動を止めることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスライス装置では、食品原木の移送時には、可動式ガイドを、原木が変形しない程度の力で原木の外面に押し当て、切断時には、可動式ガイドで原木の移動を阻止し、原木が切断刃に引っ張られて、軸に対して斜めに切断されたり切断面が荒れたりすることを防止している。
【0019】
可動式ガイドは、食品原木の移送中、常に原木に接しているため、原木の切断時に可動式ガイドの移動を止めることで、原木の移動を確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るスライス装置の基本的な構成を示す正面図である。
【
図2】同スライス装置の制御系のブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係るスライス装置のホルダーの構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係るスライス装置のホルダーの構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るスライス装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、円柱状の食品原木(以降、「原木」と略す)をスライスしてスライス食品を生産するものとする。
【0022】
(実施の形態1)
<スライス装置の構成と機能>
最初に、
図1を参照して、スライス装置1の基本的な構成と機能を説明する。なお、
図1ではホルダー2の設置位置がわかるように、スライスステーション12を支える支柱102の一部を切り欠いて示している。
【0023】
スライス装置1は、原木移送ステーション11、スライスステーション12および整列ステーション13で構成されている。本実施の形態で用いるスライス装置1は、1本の原木をスライスする機能を備えているが、複数本の原木を同時にスライスするようにしてもよい。
【0024】
原木移送ステーション11に設けられたガイド部111に収容された原木Wは、矢印で示すように、スライスステーション12の切断刃121に向けて移送され、一定の厚みにスライスされる。スライス片は整列ステーション13のコンベア131上に落下し、コンベア132で整列、すなわち搬送方向およびそれと直交する方向の位置が調節された後、下流に設置された包装機まで搬送される。以下、各ステーションについて具体的に説明する。
【0025】
原木移送ステーション11は、シャーシ100に固定された支柱101および102によってシャーシ100上に傾斜して設置されたガイド部111を備え、ガイド部111には、円柱状のハム原木Wを収容する、断面が円弧状の支持レーン112が設置されている。
【0026】
ガイド部111の上部には、原木Wの上端部を把持した状態で下方に移送するグリッパ113および送り部材114が設置されている。送り部材114は、ガイド部111の上端に取り付けられた駆動部(モータとボールネジで構成)115により、支持レーン112に沿って下方に移動する。送り部材114の移送量は後述するコントローラ3によって調節が可能である。
【0027】
支柱102に支持されたスライスステーション12は、原木Wをスライスする円板状の切断刃121、切断刃121を自転させながら公転させる切断刃駆動部手段122を備えている。切断刃駆動手段122を用いて、切断刃121を自転させながら公転させることにより、支持レーン112上を移送されてきた原木Wは一定の厚さにスライスされる。そのため、切断刃121の回転軸は、回転板123の一端に、切断刃駆動手段122の回転軸より所定距離離した状態で、回転自在に支承されている。
【0028】
切断刃121でスライスされたスライス片が落下する位置には、スライス片Sを受け取ると共に、それを下流のコンベアまで搬送する整列ステーション13が設けられている。
【0029】
整列ステーション13は、2台のコンベア131および132で構成されている。コンベア131、132は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトが捲回されて構成されており、一方のプーリの軸に回転駆動用のモータが取り付けられている。
【0030】
送り部材114によって支持レーン112上を一定のピッチで移送された原木Wは、切断刃121を自転させながら公転させることにより、一定の厚さでスライスされ、コンベア131上に落下する。
【0031】
コンベア131を静止させた状態でスライスを繰り返せば、コンベア上に複数のスライス片が重なった状態で積層される。一方、コンベア131を若干移動させながらスライスを繰り返すと、コンベア上にスライス片がずらした状態で積層される。いずれの形態で積層するかは、包装用フィルムへの実装状態にあわせて決定される。
【0032】
コンベア131上に積層されたスライス片Sは、コンベア132に移送され、搬送方向と直交する方向の位置が調整される。図示しない包装機においてスライス片Sは搬送方向に等間隔に形成された包装用フィルムのポケットに投入された後、包装される。そのため、コンベア132において、搬送方向と直交する方向の位置が調整された後、包装機まで搬送される。
【0033】
図2に、スライス装置1の制御系の構成を示す。原木移送ステーション11、スライスステーション12および整列ステーション13の各部材の動作は、コントローラ3のメモリに格納されたプログラムによって制御される。
図2に示すように、コントローラ3は、各部材に設置された位置センサ41や回転センサ42の出力信号に基づいて、各部材を駆動するモータ43やアクチュエータ44の動作タイミングを調節して、上述の動作を実現している。なお、シリンダ-251および263については後述する。
【0034】
<ホルダーの構成と機能>
図1に示したように、本実施の形態に係るスライス装置1は、上述の構成に加えて、原木Wの切断位置の手前にホルダー2が設置されており、後述する可動ガイド23によって、原木Wの移送方向と略直交する方向への移動を規制している。
【0035】
図3~
図5を参照して、原木Wの位置を規制するホルダー2の構成と動作を説明する。
図3は、原木1の軸と直交する方向に設置されたホルダー2の斜視図、
図4は同正面図、
図5はホルダー2の動作を説明する平面図である。
【0036】
なお、図では、煩雑さを避けるため、ホルダー2を取り付けた支柱102を省略している。また図には、部材同士を固定する多くの締結部材が含まれているが、これらの部材は、発明と直接的には関係しないため、符号を付さず、説明も省略する。
【0037】
最初に、ホルダー2の構成と、それに組み込まれた可動式ガイド23について説明する。ホルダー2は、移送中および切断中の原木Wの位置を規制するもので、四角形状の開口部22を有するフレーム21、原木Wの位置を規制する可動式ガイド23、カバー24、ガイド移送手段25およびガイド移動規制手段26で構成されている。
【0038】
ホルダー2のフレーム21には、原木Wを挿通させる四角形状の開口部22が形成され、同フレーム21はU字状の固定枠20に支持されている。
図1に示すように、固定枠20は、傾いた状態で支柱102に取り付けられている。
【0039】
またフレーム21と略U字状の金属板で形成されたカバー24との間に、若干の厚みを持った平板状の可動式ガイド23が組み込まれており、後述するように、可動式ガイド23は水平方向にスライドすることができる。
【0040】
次に、ガイド移送手段25について説明する。フレーム21の右下には、可動式ガイド23を左右にスライドさせる第1のシリンダー251が配置されており、ロッドホルダー253で支持されたピストンロッド252の先端には、縦方向に長い孔255が形成されたアーム254が取り付けられている。図示しないが、ロッドホルダー253は、締結治具によって固定枠20に支持されている。
【0041】
一方、カバー24には、横方向に長い孔241が形成され、更に、可動式ガイド23には、両孔255および241と係合するピン231が取り付けられている。シリンダー251のピストンロッド252が前進または後退することによって、ガイド移送手段25のアーム254が左右に移動すると、ピン231がカバー24に形成された孔241の中を左右に移動し、これに伴って可動式ガイド23が左右にスライドする。
【0042】
図3に示すように、開口部22に原木Wが挿通されていない場合、もしくは原木Wが挿通されていても、スライス動作が行われていない場合、可動式ガイド23は、シリンダー251のピストンロッド252が後退して、右端の位置で待機している。
【0043】
一方、
図4に示すように、原木Wが開口部22に挿通され、かつ送り部材114による原木Wの移送が行われているが、切断動作が行われていない場合、ピストンロッド252は、シリンダー251によって左方向に付勢され、白抜きの矢印で示したように可動式ガイド23が、原木Wの外面に接触する位置までスライドする。
【0044】
本実施の形態では、第1のシリンダー251として、ピストンロッド252を一定の力で付勢できるシリンダーを採用しており、かつ弱い力でピストンロッド252を付勢する。従って、原木Wは、可動式ガイド23によって、原木Wの軸と直交する方向に、変形しない程度の力で、常時付勢される。
【0045】
次に、ガイド移動規制手段26について説明する。フレーム21の右上には、原木Wの切断時に、可動式ガイド23の移動を止めて原木Wの移動を阻止するガイド移動規制手段26が設置されている。
【0046】
ガイド移動規制手段26は、固定枠20に取り付けられた支点262周りに旋回する、略直交する2つのアーム261a、261b(以降、総称して「アーム261」とも云う)を備えている。一方のアーム261aの先端は、可動式ガイド23に接触して可動式ガイド23の移動を規制し、他方のアーム261bは、ロッドホルダー265に支持された第2のシリンダー263のピストンロッド264に当接している。
【0047】
第2のシリンダー263のピストンロッド264を前進させて、ピストンロッド264の先端をアーム261bに当接させると、アーム261が、支点262を中心として時計回りに旋回し、アーム261aの先端に取り付けられた突起266が可動式ガイド23に接触して可動式ガイド23の動きを止める。
【0048】
前述の
図2に示したように、シリンダー251および263はコントローラ3によって制御され、ピストンロッド251および264を前進または後退させる。ピストンロッド251が前進した場合、可動式ガイド23が左方向にスライドし、可動式ガイド23の左端が原木Wに接触する。一方、ピストンロッド264が前進した場合、アーム261aの先端に取り付けられた突起266が可動式ガイド23に接触し、可動式ガイド23の動きを止める。
【0049】
次に、
図5を参照して、可動式ガイド23の動作を説明する。
図5(a)は、原木Wが切断刃121によって切断される直前の状態を示し、
図5(b)は、切断刃121による切断が開始された直後の状態を示す。
【0050】
図5(a)に示す原木Wの移送時(非切断時)には、コントローラ3の指示に従い、シリンダー251のピストンロッド252が前進してアーム254の孔255に係合したピン231で可動式ガイド23は左側にスライドする。そして可動式ガイド23の先端が原木Wに接触した時点で動きが止まり、その後は、原木Wを変形させない程度の弱い力で原木Wを押し、原木Wの外面に沿う形で変位する。この際、アーム261aの突起266は、可動式ガイド23から離れている。
【0051】
一方、
図5(b)に示す原木Wの切断時には、位置センサ41の出力信号によって切断刃121による原木Wの切断が開始される直前に、コントローラ3の指示に従って、シリンダー263のピストンロッド264が前進し、アーム261aが時計回りに旋回して可動式ガイド23に接触し、可動式ガイド23の移動を止める。その後、切断刃121による切断に抗して原木Wの移動を阻止する。
【0052】
上述した様に、本実施の形態に係るスライス装置1では、原木Wの切断位置の手前に、原木Wの移送方向と略直交する方向に移動可能な可動式ガイド23を設置している。そして、原木Wの移送時には、可動式ガイド23を、原木Wが変形しない程度の力で原木の外面に押し当てる。
【0053】
その一方で、原木Wの切断時には、ガイド移動規制手段26で可動式ガイド23の移動を規制して原木Wの移動を阻止し、原木Wが切断刃121に引っ張られ、軸に対して斜めに切断されることを防止している。
【0054】
図4に示したように、原木Wは常に底部がフレーム21の開口部22の底辺にとって支持され、かつ右側側部が可動式ガイド23に接しているため、原木Wの切断時に、可動式ガイド23の移動を止めるだけで、移送方向と直交する方向への原木の移動を確実に阻止することができる。
【0055】
(実施の形態2)
実施の形態1では、断面が略L字状のアーム261の先端を可動式ガイド23に押し付けることで原木Wの移送方向と略直交する方向への移動を規制していたが、原木Wの移動を規制する手段は、これに限定されない。
【0056】
図6に、本実施の形態に係るホルダー2Aの構成を示す。
図6において、実施の形態1で説明した構成部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
本実施の形態では、ガイド移送手段25Aを構成する第1のシリンダー251の近傍に、ピストンロッド252と直交する方向にピストンロッド268が配置された第3のシリンダー267を設置し、当該シリンダーでガイド移動規制手段26Aを構成している。
【0058】
そして第3のシリンダー267のピストンロッド268を、第1のシリンダー251のピストンロッド252に接触させ、かつ押し付けて、ロッドの移動を停止させることによって、可動式ガイド23の移動を規制している。
【0059】
本実施の形態に係るガイド移動規制部材26Aは、実施の形態1のように可動式ガイド23の移動を直接阻止するものではないが、断面が略L字状のアーム261が不要であり、構成が簡単になる。その一方、ピストンロッド268の材質として、ピストンロッド252の移動を止めることができるものを用いる必要がある。
【0060】
なお、本実施の形態では、第1のシリンダー251のピストンロッド252を2つのロッドホルダー253と256で支持しているが、これは、ピストンロッド252の付根付近にかかる負荷を軽減するためである。
【0061】
ガイド移動規制手段として、実施の形態1の手段26または実施の形態2の手段26Aのいずれを用いるかは、他の部材の配置や構成を考慮して、いずれかを選択すればよい。
【0062】
なお、上述した各実施の形態では、ガイド移送手段およびガイド移動規制手段を駆動する部材としてシリンダーを用いたが、これに限定されない。シリンダーの代わりにモータを用いてラックピニオンやボールネジを駆動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
S スライス片
W 原木
1 スライス装置
2 ホルダー
3 コントローラ
11 原木移送ステーション
12 スライスステーション
13 整列ステーション
21 フレーム
22 開口部
23 可動式ガイド
24 カバー
25、25A ガイド移送手段
26、26A ガイド移動規制手段
112 支持レーン
121 切断刃
122 切断刃駆動手段
131、132 コンベア
251、263、267 シリンダー
252、264、268 ピストンロッド
254、261 アーム
262 支点