(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080754
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】真空注型品及びその製造方法、並びに、真空注型用ポリオールプレミックス
(51)【国際特許分類】
B29C 39/42 20060101AFI20240610BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240610BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240610BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B29C39/42
C08K7/06
C08L75/04
C08G18/08 038
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193949
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521127033
【氏名又は名称】株式会社光アルファクス
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
(72)【発明者】
【氏名】高見 正光
(72)【発明者】
【氏名】近藤 禎久
【テーマコード(参考)】
4F204
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4F204AA42
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4J034QD06
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン及び充填材を含む新規な真空注型品及びその製造方法、並びに、このような真空注型品を製造するための新規な真空注型用ポリオールプレミックスを提供すること。
【解決手段】真空注型品は、ポリウレタンと、前記ポリウレタン内に分散しているカーボンミルドファイバーを備えている。真空注型用ポリオールプレミックスは、ポリオールと、樹脂化触媒と、カーボンミルドファイバーとを備えている。さらに、真空注型品の製造方法は、ポリオールと、樹脂化触媒と、カーボンミルドファイバーとを備えた真空注型用ポリオールプレミックスを準備する第1工程と、前記真空注型用ポリオールプレミックスにイソシアネートを加えて混合し、原料混合物を得る第2工程と、前記原料混合物を型内に真空注型し、前記原料混合物を硬化させる第3工程とを備えている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンと、
前記ポリウレタン内に分散しているカーボンミルドファイバーと
を備えた真空注型品。
【請求項2】
前記カーボンミルドファイバーの含有量が1.0mass%以上35.0mass%以下である請求項1に記載の真空注型品。
【請求項3】
ポリオールと、
樹脂化触媒と、
カーボンミルドファイバーと
を備えた真空注型用ポリオールプレミックス。
【請求項4】
前記カーボンミルドファイバーの含有量が5.0mass%以上80.0mass%以下である請求項3に記載の真空注型用ポリオールプレミックス。
【請求項5】
消泡剤、及び/又は、脱水剤をさらに備えている請求項3に記載の真空注型用ポリオールプレミックス。
【請求項6】
ポリオールと、樹脂化触媒と、カーボンミルドファイバーとを備えた真空注型用ポリオールプレミックスを準備する第1工程と、
前記真空注型用ポリオールプレミックスにイソシアネートを加えて混合し、原料混合物を得る第2工程と、
前記原料混合物を型内に真空注型し、前記原料混合物を硬化させる第3工程と
を備えた真空注型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空注型品及びその製造方法、並びに、真空注型用ポリオールプレミックスに関し、さらに詳しくは、ポリウレタン及び短繊維状の充填材を含む真空注型品及びその製造方法、並びに、このような真空注型品を製造するための真空注型用ポリオールプレミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンとは、ウレタン結合(-NH-C(O)O-)を有する高分子化合物をいう。ポリウレタンは、一般に、ポリオールの水酸基(-OH)と、多官能イソシアネートのイソシアネート基(-NCO)とを重合させることにより得られる。ポリウレタンは、ポリオール及び/又はイソシアネートの種類を最適化することにより、多様な性質を示すことが知られている。そのため、ポリウレタンは、各種自動車部品、合成皮革、塗料、接着剤などに応用されている。
【0003】
しかしながら、ポリウレタンのみを用いて各種の部材を製造した場合、部材の機械的特性が不足する場合がある。このような場合、ポリウレタンに各種の充填材を添加し、機械的特性を向上させることが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、
(a)ポリイソシアナートのホモポリマーの混合物、
(b)ポリオール、及び、
(c)エポキシシランで処理されたシリカ等からなる充填材
を含む硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
同文献には、
(A)このような樹脂組成物を80℃で3時間、120℃で3時間、及び、160℃で10時間加熱すると、樹脂組成物を硬化させることができる点、及び、
(B)このような樹脂組成物から得られる製品は、中及び高電圧の電気絶縁系製品(例えば、屋外絶縁体、碍管、屋外計器用の変圧器及び配電変圧器、屋外開閉器、リクローザー、負荷開閉器、機関車絶縁体など)に使用することができる点
が記載されている。
【0006】
特許文献2には、
(a)ポリオール、イソシアネート、繊維、及び水分捕捉剤を含むポリウレタン複合材料配合物を作製し、
(b)ポリウレタン複合材料配合物を硬化させ、ポリウレタン基材を形成し、
(c)ポリウレタン基材の表面に金属層を堆積させる
ことにより得られる金属化ポリウレタン複合材料が開示されている。
【0007】
同文献には、
(A)このような方法により、無線周波数(RF)フィルター用途に好適な金属化ポリウレタン複合材料が得られる点、及び
(B)繊維として、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ホウ素繊維、石英繊維、酸化アルミニウム含有繊維、炭化ケイ素繊維などを用いることができる点
が記載されている。
【0008】
樹脂製品の成形方法としては、種々の方法が知られている。これらの中でも、真空注型は、低コストで精度の高い樹脂製品を成形でき、特に、10~15個程度の小ロットの樹脂製品の作製に適している。
ここで、「真空注型」とは、真空減圧した型内に注型用樹脂を流し込んだ後、真空減圧を解除して樹脂を硬化又は固化させる方法をいう。真空注型用の型には、通常、シリコンゴムを用いたゴム型が用いられる。
【0009】
真空注型は、ポリウレタンのみからなる部材の製造にも用いられている。しかしながら、ポリウレタンのみからなる真空注型品は、機械的特性が不足する場合がある。
この問題を解決するために、ポリウレタンを製造するための原料混合物に充填材を添加し、これを用いて真空注型することも考えられる。しかしながら、ポリウレタン及び充填材(特に、短繊維状の充填材)を含む真空注型品、及び、これを製造するのに適した原料混合物が提案された例は、従来にはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2018-537559号公報
【特許文献2】特表2019-527742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ポリウレタン及び充填材を含む新規な真空注型品及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような真空注型品を製造するための新規な真空注型用ポリオールプレミックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る真空注型品は、
ポリウレタンと、
前記ポリウレタン内に分散しているカーボンミルドファイバーと
を備えている。
【0013】
本発明に係る真空注型用ポリオールプレミックスは、
ポリオールと、
樹脂化触媒と、
カーボンミルドファイバーと
を備えている。
【0014】
さらに、本発明に係る真空注型品の製造方法は、
ポリオールと、樹脂化触媒と、カーボンミルドファイバーとを備えた真空注型用ポリオールプレミックスを準備する第1工程と、
前記真空注型用ポリオールプレミックスにイソシアネートを加えて混合し、原料混合物を得る第2工程と、
前記原料混合物を型内に真空注型し、前記原料混合物を硬化させる第3工程と
を備えている。
【発明の効果】
【0015】
ポリオールプレミックスにカーボンチョップドファイバー(長さが3~6mm程度の炭素繊維)を添加した場合、カーボンチョップドファイバーの添加量が少量であっても、ポリオールプレミックスの粘度が著しく増大する。
一方、ポリオールプレミックスにカーボンミルドファイバーを添加した場合、カーボンミルドファイバーの添加量が相対的に多量であっても、ポリオールプレミックスの粘度を真空注型に適した粘度に維持することができる。
【0016】
さらに、ポリオール、樹脂化触媒、及び、カーボンミルドファイバーを含む真空注型用ポリオールプレミックスとイソシアネートとを混合し、得られた原料混合物を真空注型及び硬化させると、ポリウレタン中にカーボンミルドファイバーが分散している真空注型品が得られる。このようにして得られた真空注型品は、カーボンミルドファイバーを含まない真空注型品に比べて、高い機械的特性を示す。また、カーボンミルドファイバーは他の充填材に比べて比重が小さいので、相対的に多量のカーボンミルドファイバーを添加する場合であっても、真空注型品の比重の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 真空注型品]
本発明に係る真空注型品は、
ポリウレタンと、
前記ポリウレタン内に分散しているカーボンミルドファイバーと
を備えている。
【0018】
[1.1. ポリウレタン]
ポリウレタンは、真空注型品のマトリックスを構成する材料であり、ポリオールの水酸基(-OH)と、多官能イソシアネートのイソシアネート基(-NCO)とを重合させることにより得られたものからなる。
本発明において、ポリウレタンの種類(すなわち、ポリオール及び多官能イソシアネートの種類)は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。ポリオール及び多官能イソシアネートの具体例については、後述する。
【0019】
[1.2. カーボンミルドファイバー]
[1.2.1. 定義]
本発明に係る真空注型品において、カーボンミルドファイバーは、ポリウレタン内に分散している。
ここで、「カーボンミルドファイバー」とは、炭素繊維を所定の条件下で粉砕することにより得られる短繊維であって、繊維長が1000μm以下の炭素繊維をいう。
【0020】
一般に、カーボンミルドファイバーの繊維長が短くなるほど、ポリオールプレミックスの粘度増加が抑制される。カーボンミルドファイバーの繊維長は、好ましくは、800μm以下、さらに好ましくは、700μm以下である。
一方、カーボンミルドファイバーの繊維長が短くなりすぎると、真空注型品の機械的特性を向上させる効果が期待しづらい。従って、カーボンミルドファイバーの繊維長は、10μm以上が好ましい。繊維長は、好ましくは、20μm以上、さらに好ましくは、30μm以上である。
【0021】
同様の理由から、カーボンミルドファイバーのアスペクト比は、1.4以上150以下が好ましい。アスペクト比は、好ましくは、2以上120以下、さらに好ましくは、3以上100以下である。
なお、「アスペクト比」とは、カーボンミルドファイバーの直径(d)に対する繊維長(L)の比(=L/d)をいう。
「カーボンミルドファイバーの直径(d)」とは、単繊維の直径をいう。
【0022】
[1.2.2. 含有量]
「カーボンミルドファイバーの含有量」とは、真空注型品の総質量に対する、カーボンミルドファイバーの質量の割合をいう。
本発明において、カーボンミルドファイバーの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な含有量を選択することができる。
【0023】
一般に、カーボンミルドファイバーの含有量が多くなるほど、真空注型品の機械的特性(特に、曲げ弾性率)が向上する。このような効果を得るためには、カーボンミルドファイバーの含有量は、1.0mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、2.0mass%以上、3.0mass%以上、あるいは、5.0mass%以上である。
【0024】
一方、カーボンミルドファイバーの含有量が過剰になると、原料混合物の粘度が過度に増大し、真空注型が困難となる場合がある。従って、カーボンミルドファイバーの含有量は、35.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、30.0mass%以下、25.0mass%以下、20.0mass%以下、15.0mass%以下、あるいは、10.0mass%以下である。
【0025】
[1.3. その他の成分]
本発明に係る真空注型品は、ポリウレタン及びカーボンミルドファイバーを主成分とする。本発明に係る真空注型品は、これらに加えて、その他の成分が含まれていても良い。
その他の成分としては、例えば、
(a)原料混合物に添加された副成分(例えば、樹脂化触媒、消泡剤、脱泡剤など)、
(b)不可避的不純物
などがある。
【0026】
[2. 真空注型用ポリオールプレミックス]
本発明に係る真空注型用ポリオールプレミックス(以下、単に「プレミックス」ともいう)は、
ポリオールと、
樹脂化触媒と、
カーボンミルドファイバーと
を備えている。
【0027】
[2.1. 主成分]
[2.1.1. ポリオール]
本発明に係るプレミックスは、ポリオールを含む。ポリオールは、ポリウレタンを合成するための主原料の1つである。
【0028】
本発明において、ポリオールの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。ポリオールは、エーテル系ポリオールであっても良く、あるいは、エステル系ポリオールであっても良い。ポリオールとしては、具体的には、以下のようなものがある。本発明に係るプレミックスは、以下のいずれか1種のポリオールを含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0029】
[A. エーテル系ポリオール]
エーテル系ポリオールとしては、例えば、
(a)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、
(b)多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール
などがある。
【0030】
[B. エステル系ポリオール]
エステル系ポリオールとしては、例えば、
(a)マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオール、
(b)フタル酸エステルポリオール
などがある。
【0031】
[2.1.2. 樹脂化触媒]
本発明に係るプレミックスは、樹脂化触媒を含む。樹脂化触媒は、ポリオールとイソシアネートとの重合反応を促進させるための触媒である。樹脂化触媒がなくても、ポリオールとイソシアネートとの重合反応は進行する。しかしながら、実用的な時間内に重合反応を終了させるためには、プレミックスに樹脂化触媒を添加するのが好ましい。
【0032】
本発明において、樹脂化触媒の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。樹脂化触媒としては、具体的には、以下のようなものがある。本発明に係るプレミックスは、以下のいずれか1種の樹脂化触媒を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0033】
樹脂化触媒としては、例えば、アミン系触媒、金属触媒などがある。
アミン系触媒としては、例えば、
1,2-ジメチルイミダゾール、
1-メチルイミダゾール、
N・(N',N'-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、テトラメチルグアニジン、
ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、
N-メチル-N'-(2ヒドロキシエチル)-ピペラジン、
N,N,N',N'-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、
N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、
N,N,N',N",N"-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、
N,N'-ジメチルピペラジン、
N,N,N',N'-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、
N,N,N',N",N"-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、
N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、
エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、
N-メチル-N'-(2ジメチルアミノ)エチルピペラジン
などがある。
【0034】
金属触媒としては、例えば、
(a)スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒、
(b)フェニル水銀プロピオン酸塩、
(c)オクテン酸鉛
などがある。
【0035】
[2.1.3. カーボンミルドファイバー]
本発明に係るプレミックスは、カーボンミルドファイバーを含む。カーボンミルドファイバーの詳細については、上述したとおりであるので、説明を省略する。
【0036】
[2.2. 副成分]
本発明に係るプレミックスは、副成分が含まれていても良い。副成分としては、例えば、消泡剤、脱水剤などがある。
【0037】
[2.2.1. 消泡剤]
消泡剤は、プレミックスの混合時に泡の形成を遅らせる抑泡性、プレミックスの混合時に形成された泡を消す破泡性、及び/又は、プレミックスの混合時に形成された泡を溶解させる溶泡性を有する添加剤である。プレミックスに消泡剤を添加すると、混合に起因する泡の少ない真空注型品を得るのが容易化する。
【0038】
本発明において、消泡剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、ビニル系消泡剤などがある。シリコーン系消泡剤は、オイル型、溶液型、オイルコンパウンド型、エマルジョン型、自己乳化型のいずれであっても良い。
本発明に係るプレミックスは、これらのいずれか1種の消泡剤を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0039】
[2.2.2. 脱水剤]
脱水剤は、プレミックス中に混入した水を捕捉するための添加剤である。プレミックス中に水が混入している場合、プレミックスとイソシアネートとを混合した時に水とイソシアネートとが反応し、CO2が発生する。プレミックスに脱水剤を添加すると、イソシアネートと水との反応に起因する泡の少ない真空注型品を得るのが容易化する。
【0040】
本発明において、脱水剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。脱水剤としては、例えば、モレキュラーシーブ(ゼオライト)、オキサゾリン系水分除去剤などがある。
本発明に係るプレミックスは、これらのいずれか1種の脱水剤を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0041】
[2.3. 主成分の含有量]
[2.3.1. 樹脂化触媒の含有量]
「樹脂化触媒の含有量」とは、プレミックスの総質量に対する樹脂化触媒の質量の割合をいう。
【0042】
樹脂化触媒の含有量が少なくなりすぎると、実用的な時間内にポリオールとイソシアネートの重合反応を終了させるのが困難となる場合がある。従って、樹脂化触媒の含有量は、0.03mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.05mass%以上、さらに好ましくは、0.07mass%以上である。
【0043】
一方、必要以上に樹脂化触媒を添加すると、硬化が速く成型に支障が出る場合がある。従って、樹脂化触媒の含有量は、1.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.7mass%以下、さらに好ましくは、0.5mass%以下である。
【0044】
[2.3.2. カーボンミルドファイバーの含有量]
「カーボンミルドファイバーの含有量」とは、プレミックスの総質量に対するカーボンミルドファイバーの質量の割合をいう。
【0045】
一般に、プレミックス中のカーボンミルドファイバーの含有量が多くなるほど、カーボンミルドファイバーの含有量が多い真空注型品、すなわち、機械的特性に優れた真空注型品を得ることができる。このような効果を得るためには、カーボンミルドファイバーの含有量は、5.0mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、10.0mass%以上、あるいは、15.0mass%以上である。
【0046】
一方、カーボンミルドファイバーの含有量が過剰になると、プレミックスの粘度が過度に増大し、真空注型が困難となる場合がある。従って、カーボンミルドファイバーの含有量は、80.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、70.0mass%以下、60.0mass%以下、50.0mass%以下、あるいはは、40.0mass%以下である。
【0047】
[2.4. 副成分の含有量]
[2.4.1. 消泡剤の含有量]
「消泡剤の含有量」とは、プレミックスの総質量に対する消泡剤の質量の割合をいう。
【0048】
消泡剤は、必要に応じて添加することができる。すなわち、消泡剤の含有量は、0mass%であっても良い。一般に、消泡剤の含有量が多くなるほど、混合に起因する泡の少ない真空注型品を得ることができる。このような効果を得るためには、消泡剤の含有量は、0.1mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.2mass%以上、さらに好ましくは、0.3mass%以上である。
【0049】
一方、消泡剤を必要以上に添加しても、効果に差が無く、実益がない。従って、消泡剤の含有量は、1.35mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、1.2mass%以下、さらに好ましくは、1.0mass%以下である。
【0050】
[2.4.2. 脱水剤の含有量]
「脱水剤の含有量」とは、プレミックスの総質量に対する脱水剤の質量の割合をいう。
【0051】
脱水剤は、必要に応じて添加することができる。すなわち、脱水剤の含有量は、0mass%であっても良い。一般に、脱水剤の含有量が多くなるほど、水とイソシアネートとの反応に起因する泡の少ない真空注型品を得ることができる。このような効果を得るためには、脱水剤の含有量は、0.9mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、1.2mass%以上、さらに好ましくは、1.4mass%以上である。
【0052】
一方、脱水剤を必要以上に添加しても、効果に差が無く、実益がない。従って、脱水剤の含有量は、5.0mass%以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、4.0mass%以下、さらに好ましくは、3.0mass%以下である。
【0053】
[3. 真空注型品の製造方法]
本発明に係る真空注型品の製造方法は、
ポリオールと、樹脂化触媒と、カーボンミルドファイバーとを備えた真空注型用ポリオールプレミックスを準備する第1工程と、
前記真空注型用ポリオールプレミックスにイソシアネートを加えて混合し、原料混合物を得る第2工程と、
前記原料混合物を型内に真空注型し、前記原料混合物を硬化させる第3工程と
を備えている。
【0054】
[3.1. 第1工程]
まず、ポリオールと、樹脂化触媒と、カーボンミルドファイバーとを備えた真空注型用ポリオールプレミックスを準備する(第1工程)。真空注型溶ポリオールプレミックスの詳細については、上述したとおりであるので、説明を省略する。
【0055】
[3.2. 第2工程]
次に、真空注型用ポリオールプレミックスにイソシアネートを加えて混合し、原料混合物を得る(第2工程)。
【0056】
[3.2.1. イソシアネートの種類]
イソシアネートは、ポリウレタンを合成するための主原料の他の1つである。
【0057】
本発明において、イソシアネートの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。イソシアネートは、芳香族系、脂環式、脂肪族系のいずれであっても良い。また、イソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネートを有する2官能のイソシアネートであっても良く、あるいは、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する多官能のイソシアネートであっても良い。イソシアネートとしては、具体的には、以下のようなものがある。本発明に係る原料混合物は、以下のいずれか1種のイソシアネートを含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0058】
2官能の芳香族系イソシアネートとしては、例えば、
2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、
m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、
4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI)、
2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'-MDI)、
2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2'-MDI)、
キシリレンジイソシアネート、
3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソネート、
3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、
ナフタレン-1,5-ジイソシアネートなどがある。
【0059】
2官能の脂環式イソシアネートとしては、例えば、
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、
ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、
メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどがある。
【0060】
2官能の脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、
ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、
イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート
などがある。2官能以上のイソシアネートとしては、ポリメリックMDI、3官能以上のイソシアネートなどがある。
【0061】
3官能以上のイソシアネートとしては、例えば、
1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、
1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、
ビフェニル-2,4,4'-トリイソシアネート、
ジフェニルメタン-2,4,4'-トリイソシアネート、
メチルジフェニルメタン-4,6,4'-トリイソシアネート、
4,4'-ジメチルジフェニルメタン-2,2',5,5'テトライソシアネート、
トリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネート、
などがある。
【0062】
[3.2.2. イソシアネートの配合量]
「イソシアネートの配合量」とは、真空注型用ポリオールプレミックス100質量部に対する、イソシアネートの質量部をいう。
【0063】
イソシアネートの配合量が少なくなりすぎると、未反応の水酸基が多量に残留し、ポリウレタンの硬度や強度が低下する場合がある。従って、イソシアネートの配合量は、100質量部以上が好ましい。イソシアネートの配合量は、さらに好ましくは、120質量部以上、さらに好ましくは、160質量部以上である。
【0064】
一方、イソシアネートの配合量が過剰になると、未反応のイソシアネート基が多量に残留し、ポリウレタンの硬度や強度が低下する場合がある。従って、イソシアネートの配合量は、300質量部以下が好ましい。イソシアネートの配合量は、さらに好ましくは、280質量部以下、さらに好ましくは、260質量部以下である。
【0065】
[3.3. 第3工程]
次に、原料混合物を型内に真空注型し、原料混合物を硬化させる(第3工程)。これにより、本発明に係る真空注型品が得られる。
真空注型の条件、及び、原料混合物の硬化条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
【0066】
[4. 作用]
ポリオールプレミックスにカーボンチョップドファイバー(長さが3~6mm程度の炭素繊維)を添加した場合、カーボンチョップドファイバーの添加量が少量であっても、ポリオールプレミックスの粘度が著しく増大する。
一方、ポリオールプレミックスにカーボンミルドファイバーを添加した場合、カーボンミルドファイバーの添加量が相対的に多量であっても、ポリオールプレミックスの粘度を真空注型に適した粘度に維持することができる。
【0067】
さらに、ポリオール、樹脂化触媒、及び、カーボンミルドファイバーを含む真空注型用ポリオールプレミックスとイソシアネートとを混合し、得られた原料混合物を真空注型及び硬化させると、ポリウレタン中にカーボンミルドファイバーが分散している真空注型品が得られる。このようにして得られた真空注型品は、カーボンミルドファイバーを含まない真空注型品に比べて、高い機械的特性を示す。また、カーボンミルドファイバーは他の充填材に比べて比重が小さいので、相対的に多量のカーボンミルドファイバーを添加する場合であっても、真空注型品の比重の増大を抑制することができる。
【実施例0068】
(実施例1~4、比較例1)
[1. 試料の作製]
表1に示す組成となるように、真空注型用ポリオールプレミックス(以下、「A液」ともいう)を調製した。
カーボンミルドファイバー(MF)には、日本ポリマー産業(株)製、CFMP-30Xを用いた。
ポリオールには、岡畑産業(株)製、OKオール(登録商標)93を用いた。
樹脂化触媒には、BASF製、ルプラゲンDMIを用いた。
消泡剤には、サンノプコ(株)製、ダッポー(登録商標)SN-348を用いた。
脱水剤には、東ソー(株)製、ゼオラム(登録商標)A-4パウダーを用いた。
【0069】
【0070】
次に、A液に対してイソシアネート(以下、「B液」ともいう)を加え、原料混合液を得た。B液の質量部に対するA液の質量部の比(配合比 A/B)は、100/200(比較例1)、100/180(実施例1)、100/160(実施例2)、100/140(実施例3)、又は、100/120(実施例4)とした。
イソシアネートには、東ソー(株)製、ミリオネートMTL-Cと、三洋化成工業(株)製、サンニックス(登録商標)PP-3000とを反応させたプレポリマーを用いた。
【0071】
次に、シリコンゴムを用いてゴム型を作製した。次いで、原料混合液をゴム型に真空注型し、原料混合液を硬化させた。硬化条件は、60℃、45分とした。硬化後、ゴム型から真空注型品を取り出した。
【0072】
[2. 試験方法]
[2.1. 引張試験]
JIS K7161に準拠して引張試験を行い、引張強度、引張弾性率、及び、伸びを求めた。
【0073】
[2.2. 曲げ試験]
JIS K7171に準拠して曲げ試験を行い、曲げ強度及び曲げ弾性率を求めた。
【0074】
[2.3. 熱変形温度]
JIS K7191 A法(荷重:1.82MPa)に準拠して、熱変形温度(荷重たわみ温度)を測定した。
【0075】
[3. 結果]
表2に、結果を示す。表2より、以下のことが分かる。
(1)カーボンMFの含有量が多くなるほど、機械的特性が向上した。具体的には、カーボンMFの含有量が多くなるほど、引張強度、引張弾性率、曲げ強度、及び、曲げ弾性率が大きくなった。
(2)配合比A/Bが大きくなるほど(すなわち、イソシアネートインデックスが同一である場合において、A液に含まれるカーボンMFの含有量が多くなるほど)、引張強度が高くなる傾向が見られた。
(3)カーボンMFの含有量が10mass%の時に、伸びは最大となった。
(4)カーボンMFの含有量が多くなるほど、熱変形温度は高くなった。
【0076】
【0077】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る真空注型品及びその製造方法、並びに、真空注型用ポリオールプレミックスは、小ロットの製品の製造、各種部品の試作品の製造などに使用することができる。