(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080763
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】食品切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20240610BHJP
A22C 17/00 20060101ALI20240610BHJP
A22C 17/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B26D3/28 610F
A22C17/00
A22C17/02
B26D3/28 610Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193961
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】越智 一志
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011EA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切断した肉片の商品価値を高めることができ、また、作業能率を高めることのできる食品切断装置を実現すること。
【解決手段】塊状食品を先端部から設定厚さごとに切断し、切断後の食品片を互いに重なるように設定ピッチでずらしながら搬送面上に順次移載して集合体を形成するように構成する。搬送面を昇降自在に構成し、切断後の食品片を支持した状態で下降揺動する揺動部材を設け、この揺動部材に支持された食品片が、搬送面の第1設定位置までの上昇と、揺動部材の第2設定位置までの下降揺動とによって搬送面上に移載される構成とする。第1設定位置まで上昇した搬送面と第2設定位置まで下降揺動した揺動部材との間隔が、これら搬送面と揺動部材との間に存在する食品片の総厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となるように、第1設定位置を自動的に補正する制御手段を設ける。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状食品をその先端部から設定された厚さごとに切断し、切断後の設定数の食品片(m)を、その一部が互いに重なるように設定ピッチ(Pκ)でずらしながら搬送面(5a)上に順次移載し、この搬送面(5a)上に複数の食品片(m)からなる集合体(M)を形成する食品切断装置であって、前記搬送面(5a)を昇降自在に構成するとともに、切断後の食品片(m)を支持した状態で下降揺動する揺動部材(82)を設け、この揺動部材(82)に支持された食品片(m)が、前記搬送面(5a)の第1設定位置までの上昇と、前記揺動部材(82)の第2設定位置までの下降揺動とによって前記搬送面(5a)上に移載される構成とし、前記第1設定位置まで上昇した搬送面(5a)と前記第2設定位置まで下降揺動した揺動部材(82)との間隔(TS1)が、これら搬送面(5a)と揺動部材(82)との間に存在する食品片(m)の総厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となるように、前記第1設定位置を自動的に補正する制御手段(200)を設けたことを特徴とする食品切断装置。
【請求項2】
前記食品片(m)の切断厚さに応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項3】
前記設定ピッチ(Pκ)の変更に応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項2に記載の食品切断装置。
【請求項4】
前記集合体(M)を形成する食品片(m)の設定数に応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項3に記載の食品切断装置。
【請求項5】
前記塊状食品の先端部の縦幅に応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項4に記載の食品切断装置。
【請求項6】
前記揺動部材(82)の先端部によって食品片(m)の縦幅の中間部を支持し、この食品片(m)の両端部を自重で垂れ下げて前記揺動部材(82)の先端部からこの揺動部材(82)の一側および他側に跨る二つ折りの食品片(m)となし、この二つ折りの食品片(m)が、前記搬送面(5a)の第1設定位置までの上昇と、前記揺動部材(82)の第2設定位置までの下降揺動とによって、前記搬送面(5a)上に移載される構成とし、この搬送面(5a)上に移載された二つ折りの食品片(m)の上面部を押圧する第3設定位置と、この食品片(m)の上面部から上方へ離間する位置とにわたって昇降する押圧部材(88)を設け、この押圧部材(88)の前記第3設定位置までの下降によって二つ折りの食品片(m)の上面部を押圧した状態で、前記揺動部材(82)が食品片(m)の間から抜き出る方向へ移動する構成とし、前記第2設定位置に下降揺動した揺動部材(82)の上縁と前記第3設定位置との間隔(TS2)が、この揺動部材(82)の上縁に載った食品片(m)の切断厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となるように、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項7】
前記食品片(m)の切断厚さに応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項6に記載の食品切断装置。
【請求項8】
前記設定ピッチ(Pκ)の変更に応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項7に記載の食品切断装置。
【請求項9】
前記集合体(M)を形成する食品片(m)の設定数に応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項8に記載の食品切断装置。
【請求項10】
前記塊状食品の先端部の縦幅に応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項9に記載の食品切断装置。
【請求項11】
前記食品片(m)の切断厚さに応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項1または請求項6に記載の食品切断装置。
【請求項12】
前記設定ピッチ(Pκ)の変更に応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項11に記載の食品切断装置。
【請求項13】
前記集合体(M)を形成する食品片(m)の設定数に応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項12に記載の食品切断装置。
【請求項14】
前記塊状食品の先端部の縦幅に応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項13に記載の食品切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の食品切断装置として、例えば特許文献1に開示された塊状肉の切断装置が知られている。
この切断装置は、塊状肉を搬送しながら上下揺動する供給部と、この供給部の搬送終端部(先端部)から突出した塊状肉の端部を切断する切断部とを備えている。
さらに、この切断部で切断された肉片を引き継いで移送する引継回転体と、この引継回転体から肉片を引き継いで下降揺動し、搬送部の搬送面に移載する揺動部材とを備えている。
引継回転体から揺動部材へ引き継がれた肉片は、その中間部を揺動部材の先端部で突き上げられるようにして折り畳まれ、揺動部材の下降揺動によって搬送面上へ移載される。
なお、このとき揺動部材は折り畳まれた肉片の間に挟まれるが、搬送面上への移載直後に肉片の間から抜き出る方向へ移動する。
一枚の肉片が移載された後、搬送面が設定ピッチ移動し、次の肉片が移載される。
【0003】
このような肉片の移載を繰り返すことで、各肉片の一部が互いに重なるように設定ピッチごとにずらされながら搬送面上へ順次移載され、この搬送面上に、複数の肉片からなる集合体が形成される。
一つの集合体が形成されると、搬送面が設定距離だけ移動して間隔が置かれた後、次の集合体の形成が開始される。
作業者は、各集合体を道具を使って一気に掬い上げ、トレーに盛り付ける。
集合体が盛り付けられたトレーは、ラッピングされてラベルが貼付され、商品として出荷される。
なお、以上は肉片を折り畳む場合について説明したが、肉片を折り畳まずに搬送面上へ移載して集合体を形成する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術において、揺動部材の下降揺動端の位置が固定的に設定されている場合、肉片の厚さによっては、この肉片を揺動部材によって搬送面に強く押圧することとなりうる。
これによって、肉片に押圧された痕が残り、商品価値が低下する問題が生じる。
なお、このような問題は、肉片を折り畳む場合と折り畳まない場合のいずれの場合でも起こりうる。
また、特に、肉片を折り畳む場合には、搬送面上に移載された肉片の間から揺動部材が抜き出るときに、この肉片が揺動部材に引かれて搬送面上での位置がずれてしまうことが起こりうる。
これによって、集合体の形が崩れ、作業者による手直しを必要として作業能率が低下するような問題が生じる。
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決し、食品片およびこの食品片の集合体の商品価値を高めることのできる食品切断装置、および、作業者による集合体の手直しを少なくして作業能率を高めることのできる食品切断装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、塊状食品をその先端部から設定された厚さごとに切断し、切断後の設定数の食品片(m)を、その一部が互いに重なるように設定ピッチ(Pκ)でずらしながら搬送面(5a)上に順次移載し、この搬送面(5a)上に複数の食品片(m)からなる集合体(M)を形成する食品切断装置であって、前記搬送面(5a)を昇降自在に構成するとともに、切断後の食品片(m)を支持した状態で下降揺動する揺動部材(82)を設け、この揺動部材(82)に支持された食品片(m)が、前記搬送面(5a)の第1設定位置までの上昇と、前記揺動部材(82)の第2設定位置までの下降揺動とによって前記搬送面(5a)上に移載される構成とし、前記第1設定位置まで上昇した搬送面(5a)と前記第2設定位置まで下降揺動した揺動部材(82)との間隔(TS1)が、これら搬送面(5a)と揺動部材(82)との間に存在する食品片(m)の総厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となるように、前記第1設定位置を自動的に補正する制御手段(200)を設けたことを特徴とする食品切断装置とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記食品片(m)の切断厚さに応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項1に記載の食品切断装置とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記設定ピッチ(Pκ)の変更に応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項2に記載の食品切断装置とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記集合体(M)を形成する食品片(m)の設定数に応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項3に記載の食品切断装置とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記塊状食品の先端部の縦幅に応じて、前記第1設定位置が自動的に補正される構成とした請求項4に記載の食品切断装置とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記揺動部材(82)の先端部によって食品片(m)の縦幅の中間部を支持し、この食品片(m)の両端部を自重で垂れ下げて前記揺動部材(82)の先端部からこの揺動部材(82)の一側および他側に跨る二つ折りの食品片(m)となし、この二つ折りの食品片(m)が、前記搬送面(5a)の第1設定位置までの上昇と、前記揺動部材(82)の第2設定位置までの下降揺動とによって、前記搬送面(5a)上に移載される構成とし、この搬送面(5a)上に移載された二つ折りの食品片(m)の上面部を押圧する第3設定位置と、この食品片(m)の上面部から上方へ離間する位置とにわたって昇降する押圧部材(88)を設け、この押圧部材(88)の前記第3設定位置までの下降によって二つ折りの食品片(m)の上面部を押圧した状態で、前記揺動部材(82)が食品片(m)の間から抜き出る方向へ移動する構成とし、前記第2設定位置に下降揺動した揺動部材(82)の上縁と前記第3設定位置との間隔(TS2)が、この揺動部材(82)の上縁に載った食品片(m)の切断厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となるように、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項1に記載の食品切断装置とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記食品片(m)の切断厚さに応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項6に記載の食品切断装置とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記設定ピッチ(Pκ)の変更に応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項7に記載の食品切断装置とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記集合体(M)を形成する食品片(m)の設定数に応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項8に記載の食品切断装置とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、前記塊状食品の先端部の縦幅に応じて、前記第3設定位置が自動的に補正される構成とした請求項9に記載の食品切断装置とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、前記食品片(m)の切断厚さに応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項1または請求項6に記載の食品切断装置とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、前記設定ピッチ(Pκ)の変更に応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項11に記載の食品切断装置とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、前記集合体(M)を形成する食品片(m)の設定数に応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項12に記載の食品切断装置とする。
【0019】
請求項14に記載の発明は、前記塊状食品の先端部の縦幅に応じて、前記第2設定位置が自動的に補正される構成とした請求項13に記載の食品切断装置とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、搬送面(5a)に移載された食品片(m)に揺動部材(82)で押圧された痕が残りにくく、食品片(m)およびこの食品片(m)の集合体(M)の商品価値の低下を少なくすることができる。
また、搬送面(5a)上における食品片(m)の位置ずれを少なくし、作業者による集合体(M)の手直しを少なくして作業能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態における食品切断装置の右側面図である。
【
図2】本実施形態における食品切断装置の平面図である。
【
図3】本実施形態における食品切断装置の説明用左側面図である。
【
図4】本実施形態における食品切断装置の伝動構造を示す説明用平面図である。
【
図5】本実施形態における供給部の左側面図である。
【
図6】本実施形態における切断部周辺の説明用平面図である。
【
図7】本実施形態における押圧部材および昇降作動部の正面図である。
【
図8】本実施形態における押圧部材の説明用左側面図である。
【
図9】本実施形態における切断部周辺の説明用左側面図である。
【
図10】本実施形態における食品片の移載状態を示す説明用左側面図である。
【
図11】本実施形態における食品片の押圧状態を示す説明用左側面図である。
【
図13】折り畳まれて移載された食品片の集合体を示す説明用左側面図である。
【
図14】本実施形態における搬送部の後部の説明用右側面図である。
【
図15】本実施形態における搬送部の説明用平面図である。
【
図16】本実施形態における食品切断装置のコントローラーのブロック図である。
【
図17】本実施形態における切断制御のメインフローチャートの前半部である。
【
図18】本実施形態における切断制御のメインフローチャートの後半部である。
【
図19】
図17のメインフローチャートの後半部における搬送面の昇降制御の処理を示すサブフローチャートである。
【
図20】
図17のメインフローチャートの後半部における押圧部材の昇降制御の処理を示すサブフローチャートである。
【
図21】
図17のメインフローチャートの後半部における揺動部材の揺動制御の処理を示すサブフローチャートである。
【
図22】本実施形態における集合体の形成状態を示す説明用の平面図である。
【
図24】塊状食品の高さ変化を示す説明用側面図である。
【
図25】塊状食品の高さと集合体の重量との関係を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、塊状肉(請求項における「塊状食品」)MFを連続的に切断して切り出し、複数枚の肉片(請求項の「食品片」)mの集合体Mを形成して搬送するスライサー(本発明の「食品切断装置」)を実施例として詳述する。
なお、このスライサーによって切り出された肉片mの集合体Mの搬送方向を基準として、上流側を「後側」、下流側を「前側」と定義し、下流側に向いた状態での左手側を「左側」、右手側を「右側」と定義して説明する。
【0023】
(スライサーの全体構成)
図1、
図2に示すように、スライサー1は、基体となる機台2に対して、供給部3と、切断部4と、搬送部5と、制御部7を設けて構成する。
機台2は、平面視で矩形の枠体である。
供給部3は、作業者による塊状肉の投入を受けて前方へ搬送するものである。
切断部4は、供給部3の前端部から前方へ突出した塊状肉の前端部を所定の厚さごとに切断(スライス)し、切断した肉片mを折りたたんで搬送部5の無端ベルト96上に順次移載し、複数の肉片mからなる集合体Mを形成するものである。
搬送部5は、この集合体Mを前方へ搬送する無端ベルト96を有する。
この無端ベルト96によって搬送される集合体Mを、作業者が「へら」のような道具を使って掬い上げ、トレーに盛り付ける。
制御部7には、各部を駆動するモーターやエアシリンダー等の作動状態を制御するコントローラーを備える。
なお、特別に説明しない限り、「モーター」とは電動モーターを意味する。
【0024】
また、機台2の後部左端に支持部1Aを立設し、この支持部1Aの上端前部に支持アーム1Bの基部を上下方向の軸心回りに回動自在に取り付ける。
この支持アーム1Bの自由端部には、タッチパネル式の表示部を有する操作ボックス1Cを取り付ける。
また、支持部1Aの上端後部には、空気供給管1Dを立設する。
この空気供給管1Dの上端部に、工場内の圧縮空気供給設備に繋がる配管が接続される。
【0025】
(供給部)
図3~
図5に示すように、供給部3は、平面視で矩形の枠体8と、投入された塊状肉MFを前方へ搬送する塊状肉搬送装置9を備える。
枠体8の左右両側部には、左右の側壁10を立設し、この左右の側壁10の後端部から、左右の支点軸11の夫々を外側方へ突出する姿勢で固定する。
この左右の支点軸11は、同一軸心上に配置し、その両端部を、左右のベアリング12を介して機台2側の固定部に支持する。
【0026】
(供給部の揺動機構)
図4に示すように、機台2における枠体8の下方の部位に揺動用モーター13を取り付け、この揺動用モーター13の出力軸14にクランクアーム15の一端部を取り付ける。
そして、このクランクアーム15の他端部に軸支したベアリング16と、枠体8における支点軸11よりも前側下方の部位に支持したベアリング17を、連動ロッド18の両端に備えた円筒部に内篏させて固定する。
これによって、供給部3は、搬送終端側(先端側)ほど低くなるように、前下がりに傾斜した姿勢で支持される。
揺動用モーター13を駆動すると、供給部3が支点軸11を中心として斜め上下方向に揺動し、供給部3の搬送終端部は、支点軸11を中心とする円弧軌跡上を往復移動する。
【0027】
(供給部の搬送通路)
図2、
図4に示すように、枠体8には、左右両端部に有した側壁10の間に1つの仕切壁19を一体的に備える。
これら2つの側壁10と1つの仕切壁19の間に2つの搬送通路20が形成される。
なお、
図3、
図5に示すように、左右の側壁10を、2つの搬送通路20の上方を跨いで配置された門型またはアーチ形状の補強フレーム21で連結し、剛性を確保する。
【0028】
(供給部のコンベア)
図2~
図4に示すように、塊状肉搬送装置9は、2つの搬送通路20のそれぞれに、塊状肉搬送用の広幅の下部コンベア22を設けて構成する。
この下部コンベア22は、2つの搬送通路20の底部を形成し、塊状肉MFを載せて搬送するものである。
下部コンベア22は、前端ローラー23および後端ローラー24と、これらのローラー23,24間に巻き掛けられる粗雑面を有した下部無端ベルト25と、この下部無端ベルト25に張力を付与する前後方向中間部のテンションローラー26から構成する。
前端ローラー23は、左右のフレーム(図示省略)の前端部に固定された左右方向の軸に対して、回転自在に支持する。
後端ローラー24は、左右のフレームの後端部に軸受された左右方向の下部駆動軸27に固定する。
【0029】
テンションローラー26は、下部無端ベルト25の下側巻回域の上面に当接させ、下方へ弾発付勢する。
これによって、下部無端ベルト25に、搬送に適した張力が付与される。
または、テンションローラー26を弾発付勢する構成に代えて、テンションローラー26の高さを調節して固定する構成としてもよい。
なお、前端ローラー23、後端ローラー24、テンションローラー26、下部無端ベルト25は、左右の側壁10,10の内側面間隔よりも幅広に形成し、その左右両端部の夫々を、左右の側壁10,10の下側に入り込ませる。
また、枠体8における前端ローラー23とテンションローラー26の間、および、テンションローラー26と後端ローラー24の間には、下部無端ベルト25の上側巻回域の下面を摺接支持する摺接板体(図示省略)を取り付ける。
この摺接板体は、左右の側壁10の内側面間にわたる広幅に形成する。
また、下部無端ベルト25の上面は、仕切壁19の直下に、この仕切壁19の下端と当接しない程度の隙間を有した状態で配置する。
これにより、下部無端ベルト25の上面は、上述の2つの搬送通路20,20の底部を形成する。
【0030】
(供給部の押圧板)
図3~
図5に示すように、左右の支点軸11における側壁10とベアリング12の間の部位には、左右の押圧アーム28の基部を軸受支持する。
これによって、左右の押圧アーム28は左右の側壁10の外側に上下揺動自在に配置される。
この左右の押圧アーム28の前端には、搬送通路20の前端部上側に臨む押圧板29をそれぞれ取り付ける。
この押圧板29は、左右の押圧アーム28,28の前端部に取り付けた取付ステー30に対してノブボルト30Nで締結固定する。
なお、この取付ステー30は、押圧アーム28,28の前端部(自由端部)から上方へ延出した後、搬送通路20の上方へ向けて屈折する。
押圧板29は、取付ステー30に締結固定される上面部と、この上面部の前端から前下がり傾斜する斜面部と、この斜面部の前端から前方へ延出する押圧面部を有する。
【0031】
また、
図3、
図5に示すように、枠体8における左右の側壁10からステー30Tを立ち上げ、このステー30Tに左右のエアシリンダー30Sのシリンダー部を左右方向の軸30Yで回動自在に軸支する。
これによって、エアシリンダー30Sは上下方向の姿勢で取り付けられる。
そして、このエアシリンダー30Sのピストンの先端を、左右の押圧アーム28の前部に、左右方向の軸心回りで回動自在に軸着する。
このエアシリンダー30Sのピストンが伸長作動すると、押圧アーム28が下方回動し、押圧板29の押圧面部によって、搬送通路20の前部まで搬送された塊状肉MFの前端部を押圧する。
すなわち、このエアシリンダー30Sのピストンの伸長および短縮のタイミングを、支点軸11を中心とする供給部3の揺動に同調するように制御する。
これにより、供給部3の上昇揺動によって塊状肉MFの前端部が切断部4で切断される直前に、エアシリンダー30Sのピストンが伸長して、この塊状肉の前端部を押圧し、切断時の位置ずれを防止する。
切断後、このエアシリンダー30Sのピストンが短縮して塊状肉の押圧が解除され、下部無端ベルト25の駆動によって、塊状肉の前端が後述する受板に当接するまで送り出される。
【0032】
(供給部の伝動)
図4に示すように、枠体8の下面側に、搬送用電動モーター31を取り付け、この搬送用電動モーター31の左右方向の出力軸に出力ギヤ32を固定する。
そして、この出力ギヤ32を、枠体8の後部に軸受された中間ギヤ33に噛み合わせ、この中間ギヤ33を、下部駆動軸27の左側端部に固定した入力ギヤ34に噛み合わせる。
【0033】
(供給部における切断関連部)
図5、
図9に示すように、枠体8の前端部に、左右の矩形の開口部35を有する枠部材36を締結固定する。
これら左右の開口部35の間には、上下方向の桟部(図示省略)が形成される。
この桟部の前面を含み、枠部材36における左右の開口部35の外側前面には、各開口部35の左右側縁と底部側縁の3縁を連続的に囲う摺接縁部40を前方へ隆起させて形成する。
この摺接縁部40の前面は、側面視で供給部3の支点軸11を中心とした円弧状に形成する。
また、この摺接縁部40の上部前面は後上がりした傾斜面とし、供給部3の上昇揺動時に、後述する無端状帯刃49を摺接縁部40上に摺接案内する。
【0034】
なお、各開口部35の底部側縁は刃物状に形成する。
また、桟部の前面に形成した摺接縁部40の幅方向(左右方向)中央部のみに、上下方向に連続する凹部(図示省略)を形成する。
これによって、凹部の底部の左右両側に摺接縁部40が残存し、この摺接縁部40にも後述する無端状帯刃49の刃先縁部後面が摺接する。
なお、この凹部の底面も、側面視で支点軸11を中心とした円弧状に形成する。
【0035】
(切断部の受板)
図3、
図9に示すように、上述の枠部材36の揺動軌跡の前側に対向する位置に、左右の開口部35から送り出される塊状肉の前端部を受ける受板43を配置する。
この受板43の後面の全面またはその一部の面を、側面視で供給部3の支点軸11を中心とした円弧に沿う曲率に形成する。
これにより、上述の枠部材36の摺接縁部40の前面と、受板43の後面は、側面視において同一または近似した曲率の円弧形状となる。
【0036】
(切断刃)
図4、
図6に示すように、切断部4には、切断用電動モーター44と、この切断用電動モーター44の出力軸45に取り付けた駆動プーリー46と、従動軸47に取り付けた従動プーリー48を備える。
そして、駆動プーリー46と従動プーリー48にわたって、鋼製の無端状帯刃49を巻き掛ける。
切断刃用電動モーター44は、2つの開口部35から左側方へ離れた部位に固定する。
一方、従動軸47は、2つの開口部35から右側方へ離れた位置にベアリング50を介して回転自在に支持し、エアシリンダー(図示省略)の作動によって左右方向へ位置調節できるように機台2側に支持する。
なお、出力軸45と従動軸47は、同一の前上がり傾斜姿勢として平行に保持する。
これにより、エアシリンダーを作動させて駆動プーリー46と従動プーリー48の間隔を縮小すれば、この2つのプーリー46,48に無端状帯刃49の巻き掛け作業および取り外し作業を容易に行うことができる。
【0037】
無端状帯刃49を駆動プーリー46と従動プーリー48に巻き掛けた状態で切断用電動モーター44を起動すると、出力軸45における軸心の前上方延長線方向から見て、駆動プーリー46が反時計回りに駆動回転する。
また、無端状帯刃49を介して従動プーリー48も反時計方向に従動回転する。
これによって、無端状帯刃49の下側巻回域では、無端状帯刃49が従動プーリー48側から駆動プーリー46側へ(右から左へ)周回移動する。
したがって、この下側巻回域では、無端状帯刃49は緊張状態で周回移動することとなり、この無端状帯刃49の下側巻回域を塊状肉の切断作用域として使用する。
また、このように周回移動する無端状帯刃49に塊状肉MFの切断抵抗等によって過負荷が掛かった場合には、従動軸47に出力軸45側へ向かう方向の力が掛かるが、この従動軸47を移動調節するエアシリンダー内の空気が圧縮されることによって、過負荷による破損を防止することができる。
なお、無端状帯刃49の一側縁を鋭利な刃縁に形成する。
【0038】
また、無端状帯刃49を案内する案内部材(図示省略)を、駆動プーリー46と従動プーリー48の間における受板43の上方に配置する。
この案内部材は、左右方向に長尺の板体の下縁部に、下向きに開口した左右方向の溝を形成し、この溝に、無端状帯刃49の刃縁のない側縁部分を左右方向へ摺動自在に嵌入させるものである。
そして、この案内部材の姿勢を固定することで、無端状帯刃49の巻き掛け面が後下がり傾斜した設定姿勢に保持され、この無端状帯刃49の刃縁と受板43の上端との間に間隔部が形成される。
なお、案内部材によって無端状帯刃49の内面と外面が摺接支持されるため、周回移動時の傾斜姿勢が安定する。
【0039】
(切断部の支持、第1支持部材、第3支持部材)
図3に示すように、機台2の上部左右両側に、2つの平板状のレール52を、前後方向に向け、左右方向に間隔をおいて固設する。
平面視で矩形に枠組み形成した第3支持部材53の下部には、その前部の左右両側に、各2個のローラー54を天秤揺動式に支持する。
また、この第3支持部材53の下部における後部の左右両側には、各1個のローラー54を軸支する。
第3支持部材53を機台2上に搭載した状態で、全6個のローラー54が左右のレール52の上面に移載され、第3支持部材53が機台2に対して前後方向へ移動自在に支持される。
【0040】
この第3支持部材53の上側に、平面視で矩形に枠組み形成した第1支持部材55を配置し、この第1支持部材55の前後左右の4箇所に、4つの上部リンクアーム56の上端部を左右方向の上部軸57回りに回動自在に軸着する。
この4つの上部リンクアーム56の下端部は、第3支持部材53における前後方向中央部と後部に軸受支持した左右方向の下部軸58の左右両端部にそれぞれ固定し、左右の上部リンクアーム56が下部軸58回りに一体的に回動するように構成する。
また、これら4つの上部リンクアーム56の下端部には、下部リンクアーム59の上端部を連結固定する。これにより、下部リンクアーム59と上部リンクアーム56は、左側面視で逆「く」字形状を呈する。
また、前後の下部リンクアーム59の下端部に設けた左右方向の軸59Pと第3支持部材53前部と後部に設けた軸53Pとの間を、前後の引張スプリング60で夫々連結する。
これによって、この引張スプリング60の収縮方向への弾発力で第1支持部材55を上昇方向へ付勢する。
【0041】
そして、第3支持部材53に、電動モーター61の基部を左右方向の軸心回りに軸支し、この電動モーター61によって回転駆動される螺子軸63に雌螺子部材64を螺合する。
そして、この雌螺子部材64と共に移動する中間部材64aの先端部を、第1支持部材55の前後方向中間部に備えた左右方向のフレーム55a側のステー55bに、左右方向の軸65で回動自在に軸着する。
この電動モーター61の駆動によって螺子軸63が回転すると、これに螺合する雌螺子部材64が螺子軸63の軸心方向に移動する。
そして、中間部材64aを介して第1支持部材55のフレーム55aを押し引きし、第1支持部材55が第3支持部材53に対して移動する。
この第1支持部材55の移動軌跡は、前後の上部リンクアーム56の上端部の揺動軌跡の設定によって決定される。
【0042】
すなわち、4つの上部リンクアーム56の長さは全て同じ長さに形成し、第3支持部材53に対する前側の下部軸58の軸受位置を、第3支持部材53に対する後側の下部軸58の軸受位置よりも高く設定する。
そして、前側の左右の上部リンクアーム56の後下がり傾斜を、後側の左右の上部リンクアーム56の後下がり傾斜よりも緩く設定する。
これによって、第1支持部材55が第3支持部材53に対して接近するほど(下降するほど)、この第1支持部材55の前部側が後部側よりも大きく下降し、第1支持部材55が前下がりに傾斜していく。
【0043】
しかして、第1支持部材55の後部には、左右の側板66を有した後部支持台67の下端部を固定する。
また、この左右の側板66の下部間は、左右方向の丸棒状のフレーム68で連結して補強する。
そして、左右の側板66の上方延出部の間は、左右方向のフレーム(図示省略)で連結する。
また、
図3に示すように、左右の側板66の上部後側の部位に、前上がり傾斜した斜辺部を形成し、この斜辺部に、上述の受板43の前面における左右両端部から前方へ突設したステー70を締結固定する。
これによって、受板43が第1支持部材55上の定位置に固定される。
なお、第3支持部材53を機台2に対して前方へ移動させると、受板43が開口部35から離間し、この受板43と開口部35の間にメンテナンス用の空間が形成される。
この空間を利用して切断部4および後述する搬送部5等のメンテナンスを行なうことができる。
【0044】
(切断される肉片の厚さ調節)
図3において、電動モーター61を駆動すると、第1支持部材55およびこれに一体的に支持された受板43が、上部リンクアーム56の揺動軌跡に拘束される方向に移動する。
すなわち、切断される肉片の厚さを厚くする場合には、第1支持部材55を前方へ移動させることになるが、このとき、第1支持部材55が前下がりに傾斜しながら前側下方へ移動する。
このとき、第1支持部材55に支持された受板43の後面は、前方へ傾倒するように姿勢変化する。
この結果、摺接縁部40の前面と受板43の後面との間隔変化に拘らず、側面視において、受板43の後面が、摺接縁部40の揺動中心である支点軸11を中心とする円弧(仮想上の円弧)上に位置する状態が維持される。
すなわち、支点軸11から受板43の後面の上端までの距離と、支点軸から受板43の後面の下端までの距離が等しい状態を維持しながら、摺接縁部40の前面と受板43の後面との間隔が調節される。
これによって、切断される肉片の厚さが全面にわたって略均一な厚さで調節される。
【0045】
なお、側面視における摺接縁部40の前面の曲率と、受板43の後面の曲率を略等しくしている。
このため、厳密には、上述の厚さ調節を行なうと、支点軸11から受板43の後面の上端および下端までの各距離と、支点軸11から受板43の後面の上下方向中間部までの距離とが僅かに相違したものとなる。
しかしながら、この僅かな相違は、切断された肉片の商品価値に影響するほどのものとはならない。
また、このように受板43を前方へ傾倒させながら前側下方へ移動させる構成は、この実施例におけるスライサーのように、支点軸11を中心とする摺接縁部40の円弧軌跡の下側領域で塊状肉を切断する構成の場合に適用される。
【0046】
(切断部の引継回転体)
図3、
図4、
図6、
図9に示すように、左右の側板66の上部間には、同一軸心上で独立して回転する左右の引継回転体72を設ける。
この左右の引継回転体72は、胴体73の外周部に、多数の鋭利な突起を形成した環状板74を、互いに間隔をおいて多数配列したものである。
この胴体73を、左右の側板66にわたって架設した支持軸75上に回転自在に軸受支持する。
なお、この環状板74の周縁部に形成される突起は、切断後の肉片に突き刺さるほどに尖った尖端を有する。
また、左右の側板66の上部外側面に引継用モーター76を取り付け、この引継用モーター76から駆動される出力軸77を、左右の側板66に穿設した孔を通して各側板66の内側方へ突出させる。
この出力軸77の突出端部に出力ギヤ78を固定し、一方、左右の胴体73の外側端部に入力ギヤ79を固定する。
そして、この出力ギヤ78と入力ギヤ79を噛み合わせる。
【0047】
なお、環状板74の周縁部の一部を、受板43の上部に形成した上下方向のスリットに侵入させ、この周縁部に形成した突起を切断中および切断後の肉片に突き刺すようにして引継回転体72上に引き継ぐように構成する。
この際の開口部35の上動速度と引継回転体72の環状板74の外周速度を同方向および同速度に設定することで、切断された肉片を円滑に引継搬送することができる。
【0048】
(折り畳み装置)
図4、
図6、
図9に示すように、上述の支持軸75の前側下方に、左右の揺動用モーター80によって往復回転する左右の棒状体81を配置する。
この左右の棒状体81には、長手方向に所定の間隔をおいて多数の細杆(請求項の「揺動部材」)82を植設する。
この多数の細杆82は、支持軸75の回動開始前において、前述の隣接する環状板74の間に侵入し、この環状板74の上側周面に係止されて搬送される肉片mに干渉しない待機位置に格納される。
また、左右の揺動用モーター80と左右の棒状体81をユニット化する。
そして、
図6、
図9に示すように、この左右のユニット83を、左右の側板66の外側部に前上がりに傾斜させて平行に取り付けた2本の丸棒状の案内レール83Lに対して、その長手方向に摺動自在に支持する。
【0049】
更に、左右の側板66の外側部に取り付けた左右の出退用モーター84から動力が供給されるギヤケース84Gの出力軸に、クランクアーム85の一端部を取り付ける。
そして、このクランクアーム85の他端部とユニット83にターンバックル式のロッド86の両端部を軸着する。
これにより、左右の棒状体81に植設された多数の細杆82は、左右の揺動用モーター80の作動によって傾斜姿勢が前後方向へ反転するように往復揺動する。
また、これら多数の細杆82は、左右の出退用モーター84の作動によって、ユニットごと案内レール83Lに案内されながら、前上がり傾斜方向へ往復摺動する。
【0050】
(押圧装置)
図4、
図6、
図7、
図8に示すように、左右の側板66の上部間を連結する左右方向のフレーム(図示省略)の中央部に保持部材87Hを取り付け、この保持部材87Hに電動シリンダー87のシリンダー部87Sを斜め上下方向に向けて取り付ける。
このシリンダー部87Sの上端部には、連動ケース87Kを介して昇降用モーター87Mを取り付ける。
この昇降用モーター87Mの出力軸を、連動ケース87K内の連動機構を介してシリンダー部87S内の螺子軸(図示省略)に連動する。
これにより、昇降用モーター87Mの出力軸が正回転すると、シリンダー部87S内の螺子軸の正回転によってピストン87Pが斜め下方へ伸長作動する。
一方、昇降用モーター87Mの出力軸が逆回転すると、シリンダー部87S内の螺子軸の逆回転によってピストン87Pが斜め上方へ短縮作動する。
また、このピストン87Pの先端部(下端部)に、支持板87Tの中央部を固定する。
また、2本の案内ロッド87Rを、保持部材87Hに摺動自在に遊嵌支持し、この案内ロッド87Rの各先端部(下端部)を支持板87Tに固定する。
これにより、電動シリンダー87のピストン87Pが伸縮すると、支持板87Tは2本の案内ロッド87Rによってその姿勢を保持された状態で、斜め方向へ往復移動する。
【0051】
そして、
図7、
図8に示すように、この支持板87Tの下面に、略逆L字状に形成した第1ステー87S1を螺子部材87B1で締結固定し、この第1ステー87S1の縦辺部に、L字状の第2ステー87S2を螺子部材87B2で締結固定する。
更に、この第2ステー87S2の側面に、逆L字状の第1支持部材87S3の左右方向の一端部を溶接固定する。
この第1支持部材87S3は左右方向に延在し、その縦辺部の下端に、左右方向に所定の長さを有する断面円形の押圧棒(請求項の「押圧部材」)88を溶接固定する。
【0052】
また、第1支持部材87S3の上辺部の上側に、逆L字状の第2支持部材87S4の上辺先端部を平行に配置する。
そして、この第2支持部材87S4の上辺先端部を、第1支持部材87S3の上辺部に対して蝶ボルト87SBで締結固定する。
なお、第1支持部材87S3の上辺部の上面には、蝶ボルト87SBが螺合するウエルドナット87Wを溶接固定している。
また、第2支持部材87S4の縦辺部の内側面に支持ピン87SPの基部を固定し、この支持ピン87SPの先端部を、第1支持部材87S3の縦辺部に形成した孔に挿通する。
そして、この支持ピン87SPの挿通端部にナット87Nを螺合して固定する。
この支持ピン87SPに線状のバネ部材89の一端部を巻回状態で取り付け、このバネ部材89の他端部を、第2支持部材87S4の上辺部に形成した貫通孔に、斜め上下方向へ摺動自在に挿通する。
この挿通端部はループ状に形成し、抜け止めする。
【0053】
なお、
図7に示すように、前述の第2ステー87S2は、第1ステー87S1に対して左右対称に2つ設け、各第1支持部材87S3と各押圧棒88と各第2支持部材87S4とを、左右相反する方向へ延在させる。
前述のバネ部材89は、正面視で略逆直角三角形に湾曲形成し、各第2支持部材87S4に対して2対設ける。
この状態において、各2つのバネ部材89どうしが正面視で交錯し、4つのバネ部材89の湾曲部が下端に位置する姿勢となる。
【0054】
(肉片を折り畳むモードでの集合体の形成)
肉片mを折り畳むモードでの集合体Mの形成について説明する。
図9に示すように、前述の揺動用モーター80が作動して多数の細杆82が待機位置から前方へ揺動すると、引継回転体72の環状板74の上側周面に載って搬送されてくる肉片mが、この多数の細杆82に載って環状板74の周面から剥ぎ取られる。
このとき、肉片mを折り畳む場合には、左右方向に並ぶ多数の細杆82の先端部が肉片mの下面の前後方向中央部に当接し、この肉片mの下面の前後方向中央部を突き上げ、更に前下方へ下降揺動する。
これによって、肉片mの前後両端部が自重で垂れ下り、この肉片mは多数の細杆82の先端部が当接した位置で折れ曲がり、二つ折りとなる。
このとき搬送面5aが上昇し、二つ折りとなった肉片mが、この上昇した搬送面5a上に移載される(引き継がれる)。
【0055】
この時点では、
図10に示すように、押圧棒88とバネ部材89は上昇した退避位置にある。
この後、
図11に示すように、電動シリンダー87のピストン87Pが伸長作動し、押圧棒88が下降し、この押圧棒88の下周面によって、二つ折りになった肉片mの上面の一部が押圧される。
このとき、押圧棒88と共に下降したバネ部材89は、肉片mとの接触によって弾性変形し、押圧棒88と同等の高さまで退避する。
そして、このように肉片mの上面の一部を押圧した状態で、出退用モーター84が作動し、左右の棒状体81が、左右の揺動用モーター80ごと後側下方へ摺動する。
これによって、二つ折りの肉片mの上下2辺部間に挟まれていた多数の細杆82が、瞬時に抜き出される。
【0056】
この後、電動シリンダー87のピストン87Pが短縮作動を開始し、バネ部材89の湾曲部で二つ折りの肉片mの上面を下方へ突き離しながら、押圧棒88が上昇退避する。
これによって、肉片mは、押圧棒88に付着して上動することなく、折り畳まれたままの状態で搬送面5a上の移載位置に保持される。
この後、搬送駆動モーター112が駆動して無端ベルト96が所定距離だけ前方移動した後、次の肉片mが移載される。
このような肉片mの折り畳みと移載を繰り返すことによって、
図13に示すように、折り畳まれた複数の肉片m(この実施例では6枚の肉片m)が、その一部どうしが上下に重なるように設定ピッチでずらされながら、搬送作動中の無端ベルト96の搬送面5a上に順次載置され、肉片mの集合体Mが形成される。
そして、一つの集合体Mが形成された後、無端ベルト96の搬送速度を一時的に増速する制御、または、引継回転体72の回転速度と細杆82の揺動タイミングが同期した状態を保ちながら、この細杆82が揺動する時間間隔を断続的に変更する制御が行われる。
これによって、無端ベルト96上における一つの集合体Mと次の集合体Mとの間に、所定の間隔が形成される。
【0057】
(肉片を折り畳まないモードでの集合体の形成)
一方、切断された肉片mを折り畳まず、そのまま無端ベルト96の搬送始端部の搬送面5a上に移載するモードに切り替えることができる。
すなわち、揺動用モーター80が作動して多数の細杆82が待機位置から前方へ揺動すると、引継回転体72の環状板74の上側周面に載って搬送されてくる肉片mが、この多数の細杆82の一側部で支持され、環状板74の周面から剥ぎ取られる。
この多数の細杆82が更に前下方へ下降揺動することによって、この肉片mは多数の細杆82の他側部で案内され、表裏逆転して、搬送面5a上に移載される。
【0058】
このとき、リフト用モーター105は作動せず、搬送面5aは下降位置に保持されている。
また、電動シリンダー87のピストン87Pは伸長作動せず、押圧棒88は上昇した退避位置に保持されている。
肉片mが搬送面5a上に移載された後、揺動用モーター80が逆方向に作動して、細杆82が上昇揺動して退避し、搬送駆動モーター112が駆動して無端ベルト96が所定距離だけ下流側へ移動する。
このような動作を繰り返すことによって、折り畳まれていない複数の肉片mが、その一部どうしが上下に重なるように、所定距離ごとに間歇駆動する無端ベルト96の搬送面5a上に順次移載され、肉片の集合体Mが形成される。
なお、設定枚数の肉片mからなる集合体Mが形成されるごとに、無端ベルト96が増速駆動され、各集合体Mの間に所定の間隔が形成される。
【0059】
(搬送部)
なお、搬送部5について説明する。
図3、
図4に示すように、搬送部5は、従動ローラー90と、従動ローラー群91と、駆動ローラー92及びこの前後に近接して配置した2つの従動ローラー93と、駆動ローラー92の上方に配置した上部従動ローラー92Uとを備える。
また、
図14、
図15に示す往復移動コンベア95を形成する従動ローラー群を備える。
そして、上述のローラーおよびローラー群にわたって無端ベルト96を巻き掛けて搬送部5を構成する。
なお、無端ベルト96の上側巻回域における各ローラー間には、この無端ベルト96の下面を摺接支持する摺接支持板体(図示省略)を設ける。
これによって、搬送始端部から搬送終端部にわたる一連の搬送作用域が形成される。
この一連の搬送作用域には、搬送方向上流側の搬送作用部5Fと、搬送方向下流側の搬送作用部5Rを備える。
【0060】
(搬送方向上手側の搬送作用部)
図3、
図15に示すように、第1支持部材55上に左右の板体97からなる中間部支持台98を搭載する。
この左右の板体97の下端部に固定した前後方向のボス部材を、第1支持部材55の左右両側面部に固定した丸棒状の摺動案内杆に対して前後方向に摺動可能に篏合させる。(ボス部材、摺動案内杆は、いずれも図示省略)
また、摺動案内杆に対するボス部材の摺動位置を固定および固定解除するロック装置(図示省略)を設ける。
ロック装置をロック解除し、中間部支持台98を前方へ摺動させると、無端ベルト96の巻き掛け周長が縮小して無端ベルト96が弛み、この無端ベルト96を脱着可能な状態となる。
【0061】
(搬送面の昇降手段)
しかして、中間部支持台98における左右の板体97に、左右の支持ステー101の基部を固定し、この左右の支持ステー101の延出端部に、左右方向長尺の支持軸102の左右両端部を上下回動自在に軸受支持する。
図3、
図4、
図15に示すように、この支持軸102には、左右方向に広幅に形成した上述の従動ローラー90を回転自在に支持する。
これによって、従動ローラー90は、上述の引継回転体72の前側低位置(下流側低位置)に配置される。
【0062】
また、この支持軸102の左右両端部には、上辺部と下辺部に分岐形成した揺動アーム103の頂部を、それぞれ上下回動自在に軸受支持する。
この揺動アーム103における左右の上辺部の間には、2つの上側従動ローラー91UF,91URを回転自在に軸支する。
また、揺動アーム103における左右の下片部の間に、2つの下側従動ローラー91DF,91DRを回転自在に軸支する。
これによって、上述の従動ローラー群91が形成され、この従動ローラー群91が、従動ローラー90の前側(搬送方向下流側)に配置される。
また、右側の揺動アーム103の頂部から作動アーム104を一体的に垂下させて設ける。
【0063】
一方、
図3、
図4、
図15に示すように、中間部支持台98における右側の板体97の右側面に、リフト用モーター105から伝動されるギヤケース106を固定し、このギヤケース106の出力軸107にクランクアーム108の一端部を取り付ける。
そして、作動アーム104の先端部(下端部)とクランクアーム108の他端部を、連動ロッド109で軸着連結する。
この構成により、リフト用モーター105が正転駆動すると、クランクアーム108と作動アーム104が連動して回動し、左右の揺動アーム103が支持軸102の軸心を中心として上方回動する。
これによって、2つの上側従動ローラー91UF,91URが上昇して無端ベルト96の上側巻回域の内面を押し上げ、この2つの上側従動ローラー91UF,91UR間に支持された無端ベルト96の搬送始端部上の搬送面5aに、前上がりに傾斜する急傾斜面が形成される。
【0064】
この状態からリフト用モーター105が逆転駆動すると、左右の揺動アーム103が支持軸102の軸心を中心として下方回動し、2つの上側従動ローラー91UF,91URが下降して元の位置に復帰する。
これによって、搬送面5aは元の位置まで下がり、緩傾斜面に復帰する。
このとき、下降する2つの下側従動ローラー91DF,91DRによって無端ベルト96の下側巻回域の内面を押し下げ、無端ベルト96の弛みが防止される。
【0065】
(搬送駆動部)
図3、
図4、
図15に示すように、駆動ローラー92は、中間部支持台98における左右の板体97の間に配置し、その回転軸110の左右両端部を左右の板体97に軸受支持する。
右側の板体97の右側面に、搬送駆動モーター112から動力が供給されるギヤケース113を固定し、このギヤケース113の出力軸に駆動ローラー92の回転軸110を連結する。
駆動ローラー92の前後に近接して配置した2つの従動ローラー93は、駆動ローラー92よりも高い位置に配置し、左右の板体97間に軸受支持する。
【0066】
そして、無端ベルト96を、この2つの従動ローラー93の上側周面に巻き掛け、更にこの2つの間に配置した駆動ローラー92の下側周面に巻き掛ける。
これによって、駆動ローラー92の下側周面に巻き掛けられる無端ベルト96の巻き掛け周長が長くなり、駆動ローラー92に対する無端ベルト96の滑りが少なくなる。
また、上述の上部従動ローラー92Uは、中間部支持台98における左右の板体97の上部間に取り付けた左右方向の軸(図示省略)に回転自在に軸受支持し、駆動ローラー92の上方に配置する。
しかして、上述の従動ローラー90から上部従動ローラー92Uにわたる部位を主体として、搬送方向上流側の搬送作用部5Fが形成される。
【0067】
(第2支持部材)
図3、
図15に示すように、上述の第3支持部材53の後端部に、左右の板体115からなる前部支持台116を固設する。
この前部支持台116は、上述の第1支持部材55および中間部支持台98との直接的な連結関係はない。
【0068】
(搬送方向下手側の搬送作用部)
しかして、
図3、
図15に示すように、前部支持台116の上部から、左右の延設板体118を、下流側へ向けて延設する。
また、この左右の延設板体118の各内側面には、この内側面と間隔をおいて、前後方向の丸棒状のガイドレール119を配置し、この左右のガイドレール119の各前後両端部を、延設板体118の内側面に取り付ける。
そして、左右の移動板体121と、この左右の移動板体121の間を連結する前側連結棒122から、枠組みされた移動枠124を形成する。
【0069】
そして、
図15に示すように、左右の移動板体121の間に架設した支持軸126に、屈折部従動ローラー127を回転自在に篏合する。
また、左右の移動板体121の前端部に、左右の斜設板体125を共締めして固定する。
さらに、左右の斜設板体125の前端部外側に、左右の支持アーム131を取り付け、この左右の支持アームの前端部間を連結軸132で連結する。
この連結軸132に従動ローラー133を回転自在に軸受支持する。
【0070】
また、
図3に示すように、左右の移動板体121の後部下側の部位を前下方へ延設し、この左右の延設端部間に架設した軸149に移動ローラー150を回転自在に軸支する。
この移動ローラー150は、移動枠124と共に移動し、従動ローラー133の前後移動によって生じる無端ベルト96の巻き掛け周長の変化を吸収する。
しかして、左右の移動板体121の外側面における前後2箇所にボス部材134を取り付け、このボス部材134を上述の左右のガイドレール119に前後方向摺動自在に篏合する。
【0071】
また、前部支持台116における右側の板体115の右側面に伸縮用電動モーター135から動力が供給されるギヤケース136を固定する。
このギヤケース136の出力軸137における左右両端部に、上下方向姿勢の揺動アーム138の下端部を固定する。
この揺動アーム138の上端部と、前側連結棒122における移動板体121から外側への突出端部に、連動ロッド139の前後両端部を軸着連結する。
以上により、伸縮用電動モーター135が駆動すると、移動枠124側に支持された屈折部従動ローラー127と従動ローラー133が一体で前後方向に移動し、無端ベルト96の搬送終端部(前端部)が前後方向に位置変更する。
【0072】
この無端ベルト96における屈折部従動ローラー127から従動ローラー133にわたる部位を、上述の往復移動コンベア95と称する。
また、
図3に示すように、前部支持台116における左右の板体115の上部後側の部位に、テンションアーム140の基部(後端部)を、回動軸141を中心として上下回動自在に軸支する。
このテンションアーム140の自由端部(前端部)には、テンションローラー142を回転自在に軸支する。
【0073】
また、
図3に示すように、上述の第1支持部材55の前端部左右両側の部位に、支持ステー145を締結固定し、この左右の支持ステー145間に下部従動ローラー148を軸支する。
前述のように、切断される肉片の厚さが増すように調節するとき、第1支持部材55が第3支持部材53に対して接近するほど(下降するほど)、この第1支持部材55の前部側が後部側よりも大きく下降し、第1支持部材55が前下がりに傾斜していく。
このとき、無端ベルト96の巻き掛け周長が短縮され、無端ベルト96が弛むことになるが、この第1支持部材55側に設けられた下部従動ローラー148が前下方へ移動することで、無端ベルト96の周長変化が吸収される。
【0074】
しかして、上述の往復移動コンベア95を主体として、搬送部5における搬送方向下手側の搬送作用部5Rが形成される。
なお、上述の搬送方向上流側の搬送作用部5Fから、この搬送方向下流側の搬送作用部5Rにわたって、無端ベルト96による一連の搬送作用域が形成される。
なお、上述の各ローラー間には、無端ベルト96における上側巻回域の下面を下から支える摺接板体(図示省略)を設けている。
この往復移動コンベア95の搬送終端部から、左右2列の集合体Mが次工程(図示省略)へ移載される。
なお、この往復移動コンベア95を設けない構成としてもよい。
【0075】
(切断処理)
以上の構成を備えたスライサー1による塊状肉MFの切断処理について説明する。
まず、切断する塊状肉MFの種類や状態等に応じて作動条件を設定し、各部の設定条件等を変更し、後述する起動操作具201をON操作する。
これによって、切断部4の無端状帯刃49の周回移動と、搬送部5の搬送駆動が開始される。
この初期状態において、供給部3は揺動範囲の下限に位置しており、この状態で供給部3に塊状肉MFを投入し、フィードスイッチをON操作すると、塊状肉搬送装置9が駆動を開始する。
これによって、投入された塊状肉MFは塊状肉搬送装置9の搬送作用を受けて前方へ搬送され、この塊状肉MFの前端部が受板43の後面に当接し、塊状肉MFの前端部の位置が規制される。
【0076】
そして、この状態から供給部3が上昇揺動するにつれて、塊状肉MFにおける左右の開口部35から突出した前端部に、右側から左側へ周回移動する無端状帯刃49の刃縁が上側から切り込んでいく。
このとき、塊状肉MFの前端部が受板43によって位置規制されているため、無端状帯刃49によって塊状肉MFの前端部が均一な厚みに切断される。
供給部3が揺動範囲の上限近くの位置まで上昇揺動すると、塊状肉MFの前端部が無端状帯刃49によって切り離される。
そして、この所定の厚さに切断された肉片mが、受板43の上端と無端状帯刃49の下端との間に形成された間隔部を通過して、受板43の前側に配置された左右の引継回転体72の環状板74の上側周面に引き継がれる。
また、供給部3は揺動範囲の下限位置まで下降揺動し、初期状態に復帰し、この後、供給部3は再び上昇揺動し、上述の塊状肉の切断が繰り返される。
【0077】
このようにして間隔部を通過して引継回転体72の環状板74の上側周面に引き継がれた肉片mは、上述のようにして無端ベルト96の搬送始端部の搬送面5a上に順次移載され並列される。
このような切断作業において、切断される肉片mの厚さを調節するために、肉厚調節用の電動モーター61を作動させて受板43を開口部35に対して位置調節すると、この受板43と、搬送方向上流側の搬送作用部5Fを支持する第1支持部材55が前後方向に移動する。
しかし、搬送方向下流側の搬送作用部5Rを支持する前部支持部材116は、機台2側の第3支持部材53に一体的に取り付けられているため、受板43の位置調節の影響を受けて前後方向に移動することはない。
【0078】
このため、切断する肉片mの厚さを調節しても、搬送部5における搬送方向下流側の搬送作用部5Rの位置が変化しないので、この搬送作用部5Rの搬送終端部から収容部への肉片mないし肉片mの集合体Mの引き継ぎ位置が安定する。
また、受板43と搬送部5における搬送方向上流側の搬送作用部5Fとの位置関係が変化しないので、切断されて折り畳まれた肉片mは、搬送作用部5Fに円滑に引き継がれて搬送される。
【0079】
(スライサーの制御回路)
しかして、
図16に示すように、制御部7に備えたコントローラー(請求項の「制御手段」)200に対して、その入力側に、起動操作具201と、並列枚数自動制御入り切り操作具202と、並列枚数基準設定操作具203と、並列長さ設定操作具204と、切断厚み設定操作具205と、塊状肉縦幅基準値設定操作具206と、並列ピッチ基準設定操作具207と、左右の塊状肉縦幅計測センサ208とを接続する。
さらに、このコントローラー200の入力側に、供給部揺動角度計測用ポテンショメータ209と、下部無端ベルト移動距離計測用センサ210と、左右の引継回転体回転位相計測用ポテンショメータ211と、棒状体回動角度検出用ポテンショメータ212と、電動シリンダー伸縮位置計測用ポテンショメータ213と、揺動アーム角度検出用ポテンショメータ214とを接続する。
また、このコントローラー200の入力側に、コンベア移動距離計測用センサ215と、コンベア後端部進退位置計測用センサ216と、折り畳み可否選択操作具217を接続する。
なお、これらの操作具は、操作ボックス1Cに備えたタッチパネル式の表示部に図形表示され、タッチ操作によって操作するものとしてもよい。
【0080】
一方、コントローラー200の出力側には、切断用モータードライバー218と、揺動用モータードライバー219と、搬送用モータードライバー220と、左右の引継用モータードライバー221と、左右の揺動用モータードライバー222と、左右の出退用モータードライバー223と、昇降用モータードライバー224と、搬送駆動用モータードライバー225と、リフト用モータードライバー226と、伸縮用モータードライバー227を接続する。
【0081】
(入力側に接続されたスイッチ/センサ類の説明)
上述のコントローラー200の入力側に接続された起動操作具201は、スライサー1全体を起動するためのものであり、コントローラー200の出力側から各モータードライバー等へ指令信号を出力可能な状態に切り替えるためのものである。
この起動操作具201の入り操作によって、コントローラー200の出力側から、まず、切断用モータードライバー218と、揺動用モータードライバー219と、搬送用モータードライバー220と、左右の引継用モータードライバー221とへ指令信号が出力され、切断部4と供給部3と搬送部5の駆動が開始される。
並列枚数自動制御入り切り操作具202は、集合体Mを形成する肉片mの数と、この肉片mを並列させるピッチを自動的に制御する機能を、有効状態と無効状態とに切り替えるものである。
【0082】
並列枚数基準設定操作具203は、切断作業を開始する前に、一つの集合体Mを形成する肉片mの数の基準値(並列枚数基準設定値N)を手動設定するためのものである。
並列長さ設定操作具204は、切断作業を開始する前に、切断後の肉片mの並列長さ(集合体Mの全長、並列長さ設定値L)を手動で変更設定するためのものである。
切断厚み設定操作具205は、切断作業を開始する前に、切断する肉片mの厚みを設定するためのものである。
塊状肉縦幅基準値設定操作具206は、切断前の塊状肉MFの縦幅(横向き姿勢での高さ)を目視で判断して入力(設定)するためのものである。
並列ピッチ基準設定操作具207は、切断した肉片mを並列させるうえでの基準となるピッチを設定するためのものである。
左右の塊状肉縦幅計測センサ208は、左右の搬送通路20の前部に配置された押圧板29の上下動位置を計測するためのものであり、これによって左右の搬送通路20に投入された塊状肉MFの先端部の高さが計測される。
【0083】
供給部揺動角度計測用ポテンショメータ209は、供給部3の上下揺動角度を計測するものである。
下部無端ベルト移動距離計測用センサ210は、搬送用電動モーター31の回転数等から、供給部3における下部無端ベルト25の移動距離(塊状肉MFの搬送距離)を計測するものである。
左右の引継回転体回転位相計測用ポテンショメータ211は、左右の引継回転体72の回転角度を個別に計測するものである。
左右の棒状体回動角度検出用ポテンショメータ212は、多数の細杆82を備えた左右の棒状体81の回転角度を計測するものである。
電動シリンダー伸縮位置計測用ポテンショメータ213は、押圧棒88を上下動させる電動シリンダー87のピストン87Pの伸縮位置を計測するものである。
揺動アーム角度検出用ポテンショメータ214は、搬送部5の始端部に設けられた揺動アーム103の上下揺動角度を計測するものである。
【0084】
コンベア移動距離計測用センサ215は、搬送駆動モーター112の回転数等から、搬送部5における無端ベルト96の移動距離量(搬送距離)を計測するものである。
コンベア後端部進退位置計測用センサ216は、伸縮用電動モーター135の回転数等から、搬送部5の搬送方向下流側の搬送作用部(第2搬送作用部)5Rの搬送終端部の移動位置を計測するものである。
折り畳み可否選択操作具217は、切断された肉片mを折り畳んで無端ベルト96の搬送始端部の搬送面5a上に移載し並列させるモードと、この肉片mを折り畳まずに搬送始端部の搬送面5a上に移載し並列させるモードに切り替えるものである。
【0085】
(出力側に接続されたドライバ等の説明)
また、上述のコントローラー200の出力側に接続された切断用モータードライバー218は、切断用電動モーター44に電力を供給して、無端状帯刃49を駆動制御するものである。
揺動用モータードライバー219は、揺動用モーター13に電力を供給して、供給部3を斜め上下方向に揺動駆動制御するものである。
搬送用モータードライバー220は、搬送駆動モーター112に電力を供給して、搬送部5を駆動制御するものである。
左右の引継用モータードライバー221は、左右の引継用モーター76に電力を供給して、左右の引継回転体72を駆動制御するものである。
左右の揺動用モータードライバー222は、左右の揺動用モーター80に電力を供給して、多数の細杆82を備えた左右の棒状体81を回転制御するものである。
【0086】
左右の出退用モータードライバー223は、左右の出退用モーター84に電力を供給して、左右の棒状体81ごと細杆82を出退駆動制御するものである。
昇降用モータードライバー224は、電動シリンダー87の昇降用モーター87Mを作動させて、バネ部材89を備えた押圧棒88を上下動制御するものである。
搬送駆動用モータードライバー225は、搬送駆動モーター112に電力を供給して、搬送部5の無端ベルト96を駆動制御するものである。
リフト用モータードライバー226は、リフト用モーター105に電力を供給して、揺動アーム103を上下揺動制御するものである。
伸縮用モータードライバー227は、伸縮用電動モーター135に電力を供給して、搬送部5の搬送方向下流側の搬送作用部5Rの搬送終端部を前後方向に移動制御するものである。
【0087】
(移載制御・集合体形成制御)
しかして、
図9~
図13を参照しながら、
図17~
図21に示すフローチャートに沿って、折り畳まれた肉片mの移載制御および集合体Mの形成制御について説明する。
なお、各設定値は、特に算出方法を説明するものを除き、予めコントローラー200に記憶されている。
図17に示すように、まず、各種の設定値および基準値が取得される。
すなわち、前述の並列枚数基準設定操作具203によって手動設定された並列枚数基準設定値Nと、並列長さ設定操作具204によって手動設定された並列長さ設定値Lと、切断厚み設定操作具205によって手動設定された切断厚み設定値Dと、塊状肉縦幅基準値設定操作具206によって手動設定された塊状肉縦幅基準値Hと、並列ピッチ基準設定操作具207によって手動設定された並列ピッチ基準設定値P
Oとが取得される(STEP1)。
なお、リフト用モーター105の回転量の基準値として設定されるリフト用モーター基準回転量X
Aと、昇降用モーター87Mの回転量の基準値として設定される昇降用モーター基準回転量Y
Bと、揺動用モーター80の回転量の基準値として設定される揺動用モーター基準回転量Z
γは、コントローラー200に固定値として予め設定されている。
また、これらの基準回転量X
A,Y
B,Z
γの夫々に、細杆82の厚さ(丸棒の場合は断面直径)に対応する回転量が含まれている。
【0088】
そして、折り畳み可否選択操作具217によって折り畳みを行うモードに切り替え、起動操作具201を入り操作すると、コントローラー200の出力側から、切断用モータードライバー218と、揺動用モータードライバー219と、搬送用モータードライバー220へ作動指令信号が出力され、切断部4の駆動と供給部3の揺動と搬送部5の駆動が開始される。
ここで、供給部3へ投入された塊状肉MFの先端部の縦幅(横向き姿勢で投入された塊状肉の先端部の高さ)が塊状肉縦幅計測センサ208で計測され、塊状肉縦幅計測値Hmが取得される(STEP2)。
【0089】
そして、並列枚数自動制御入り切り操作具202の操作によって、枚数制御機能が有効状態に切り替わっているか否かが判定され(STEP3)、有効状態に切り替わっている場合に、補正後の並列枚数Nκの演算(STEP4)に移行する。
すなわち、STEP1で取得した塊状肉MFの縦幅基準値Hと、STEP2で取得した塊状肉縦幅計測値Hmから、以下の演算式で補正後の並列枚数Nκを算出する。
Nκ=N×(Hm/H)×κ
κ:定数
なお、STEP3において、枚数制御機能が無効になっていると判定された場合には、上述のSTEP4の処理は行わず、並列枚数基準設定値Nを補正後の並列枚数Nκとして代入する(STEP4-2)。
【0090】
そして、補正後の並列枚数Nκを得た後、並列ピッチPκの演算(STEP5)に移行する。
すなわち、STEP1で取得された並列長さ設定値Lと、STEP4で算出された補正後の並列枚数Nκから、以下の演算式で並列ピッチPκを算出する。
Pκ=(L-H
m)/(Nκ-1)
なお、折り畳まれた肉片mを、この並列ピッチPκごとにずらしながら、その一部どうしが重なるように、搬送作動中の無端ベルト96の搬送面5a上に順次並列させ、
図13に示す肉片mの集合体Mが形成される。
【0091】
また、この集合体Mの形成にあたって、以下の演算式で並列させた肉片mの重なり枚数Qを算出する(STEP6)。
Q=H
m/Pκ×S
S:定数
この演算式は、折り畳まれて搬送面5a上に移載された1枚の肉片mの縦幅(搬送方向の長さ)内に、並列ピッチPκがいくつ含まれるかを算出するものである。
すなわち、例えば
図12に示すように、搬送面5a上に先に移載された肉片mの上に重なるように、所定の縦幅を有する次の肉片mが、並列ピッチPκだけずれて移載される。
このため、先に移載された肉片mの上下2辺部を含め、次の肉片mにおいて押圧棒88で押圧される部位と搬送面5aとの間に介在する肉片mの数(折り畳まれた肉片mの辺部の数)が、この肉片mの縦幅H
mと並列ピッチPκによって算出される。
【0092】
図12に示す状態では、折り畳まれて移載された1枚目の肉片mの上辺部および下辺部と、次に移載された2枚目の肉片mの下辺部とが細杆82と搬送面5aの間に存在し、2枚目の肉片mの上辺部が細杆82の上に載った状態で存在している。
この場合、重なり枚数Qの算出結果が4あるいは4に近い値として算出されるように、定数S等を設定する。
なお、前述のように、細杆82の厚さは固定値であり、上述のリフト用モーター基準回転量X
A、昇降用モーター基準回転量Y
B、揺動用モーター基準回転量Z
γの夫々に予め含めて設定しているため、以下の演算式には含まれていない。
ただし、この細杆82の厚さを以下の演算式に含むものとしてもよい。
しかして、重なり枚数Qの算出後、
図18に示すように、並列枚数N
mを1ずつ加算(インクリメント)しながら、塊状肉MFの切断と肉片mの並列作動とを行う(STEP7)。
【0093】
(リフト用モーター目標回転量の演算)
この肉片mの並列作動においては、リフト用モーター105の目標回転量Xの演算を行う(STEP8)。
まず、
図19に示すように、各演算要素が取得される(STEP9)。
すなわち、STEP7で得られた並列枚数N
mと、STEP1で設定した切断厚み設定値Dと、STEP2で取得した塊状肉縦幅計測値H
mと、STEP5で演算された並列ピッチPκと、固定設定されたリフト用モーター基準回転量X
Aおよび定数K
αと、STEP6で演算された並列肉の重なり枚数Qが取得される。
【0094】
これに基づいて、次式により、補正係数αを演算する(STEP10)。
α=Nm×D×Hm×Pκ×Q×Kα
そして、この補正係数αを、リフト用モーター目標回転量の補正係数閾値Aと比較する(STEP11)。
この結果、補正係数αよりも補正係数閾値Aの方が大きいと判定された場合に、リフト用モーター目標回転量Xを次式で補正する(STEP12)。
X=XA×α
一方、補正係数αが補正係数閾値A以上であると判定された場合には、次式のように、リフト用モーター基準回転量XAを、リフト用モーター目標回転量Xとして代入する(STEP13)。
X=XA
そして、補正後のリフト用モーター目標回転量Xを、コントローラー200からリフト用モータードライバー226へ出力する(STEP14)。
【0095】
これによって、搬送面5aの上昇端位置(請求項の「第1設定位置」)が自動的に補正される。
そして、上述のようにして上昇端位置まで上昇した搬送面5a上に、下降揺動する細杆82によって肉片mが移載される。
なお、上述のSTEP10における補正係数αの演算式に肉片mの切断厚み設定値Dが要素として含まれており、これによって、搬送面5aの上昇端位置は、肉片mの切断厚さに応じて自動的に補正されることとなる。
また、同STEP10における補正係数αの演算式に並列ピッチPκが要素として含まれており、これによって、搬送面5aの上昇端位置は、並列ピッチ(請求項の「設定ピッチ」)の変更に応じて自動的に補正されることとなる。
また、同STEP10における補正係数αの演算式に並列枚数Nmが要素として含まれており、これによって、搬送面5aの上昇端位置は、並列枚数(請求項の「集合体を形成する食品片の設定数」)に応じて自動的に補正されることとなる。
【0096】
また、同STEP10における補正係数αの演算式に塊状肉縦幅計測値H
mが要素として含まれており、これによって、搬送面5aの上昇端位置は、塊状肉MFの先端部の縦幅に応じて自動的に補正されることになる。
図12に示すように、搬送面5aの上昇端位置が自動的に補正されることによって、この上昇端位置に到達した搬送面5aと下降端位置まで下降揺動した細杆82との間隔TS1は、これら搬送面5aと細杆82との間に存在する食品片mの総厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となる。
これによって、搬送面5a上に移載された肉片mの上辺部を細杆82が過度に押圧せず、この肉片mに細杆82で押圧された痕が残りにくくなり、肉片mおよび集合体Mの商品価値の低下を少なくすることができる。
【0097】
(昇降用モーター目標回転量の演算)
また、肉片mの並列作動においては、昇降用モーター87Mの目標回転量Yの演算を行う(STEP15)。なお、このSTEP15~STEP21は、肉片mを折り畳まない場合には実行されない。
まず、
図20に示すように、各演算要素が取得される(STEP16)。
すなわち、STEP7で得られた並列枚数N
mと、STEP1で設定した切断厚み設定値Dと、STEP2で取得した塊状肉縦幅計測値H
mと、STEP5で演算された並列ピッチPκと、固定設定された昇降用モーター基準回転量Y
Bおよび定数K
βと、STEP6で演算された並列肉の重なり枚数Qが取得される。
【0098】
これに基づいて、次式により、補正係数βを演算する(STEP17)。
β=Nm×D×Hm×Pκ×Q×Kβ
そして、この補正係数βを、昇降用モーター目標回転量の補正係数閾値Bと比較する(STEP18)。
この結果、補正係数βよりも補正係数閾値Bの方が大きいと判定された場合に、昇降用モーター目標回転量YBを次式で補正する(STEP19)。
Y=YB×β
一方、補正係数βが補正係数閾値B以上であると判定された場合には、次式のように、昇降用モーター基準回転量YBを、昇降用モーター目標回転量Yとして代入する(STEP20)。
Y=YB
そして、補正後の昇降用モーター目標回転量Yを、コントローラー200から昇降用モータードライバー224へ出力する(STEP21)。
【0099】
これによって、押圧棒88の下降端位置(請求項の「第3設定位置」)が自動的に補正される。
そして、この下降端位置まで下降した押圧棒88によって、搬送面5a上に移載された二つ折りの肉片mの上辺部の上面が押圧される。
なお、上述のSTEP17における補正係数βの演算式に肉片mの切断厚み設定値Dが要素として含まれており、これによって、押圧棒88の下降端位置は、肉片mの切断厚さに応じて自動的に補正されることとなる。
また、同STEP17における補正係数βの演算式に並列ピッチPκが要素として含まれており、これによって、押圧棒88の下降端位置は、並列ピッチ(請求項の「設定ピッチ」)の変更に応じて自動的に補正されることとなる。
また、同STEP17における補正係数βの演算式に並列枚数Nmが要素として含まれており、これによって、押圧棒88の下降端位置は、並列枚数(請求項の「集合体を形成する食品片の設定数」)に応じて自動的に補正されることとなる。
【0100】
また、同STEP17における補正係数βの演算式に塊状肉縦幅計測値H
mが要素として含まれており、これによって、押圧棒88の下降端位置は、塊状肉MFの先端部の縦幅に応じて自動的に補正されることになる。
図12に示すように、押圧棒88の下降端位置が自動的に補正されることによって、下降揺動端位置まで揺動した細杆82の上縁と、下降端位置まで下降した押圧棒88の下端との間隔TS2は、この細杆82の上縁に載った肉片mの切断厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となる。
これによって、細杆82の上縁に載った肉片mの上辺部の上面を押圧棒88で過度に押圧せず、この肉片mに押圧棒88で押圧された痕が残りにくくなり、肉片mおよび集合体Mの商品価値の低下を少なくすることができる。
また、押圧棒88によって細杆82上の肉片mの上辺部上面を適度な力で押圧した状態で、細杆82を二つ折りの肉片mの間から抜き出る方向へ移動させても、この細杆82による肉片mの姿勢の崩れや位置ずれが少なくなる。
これにより、作業者による集合体Mの手直しを少なくして作業能率を高めることができる。
【0101】
(揺動用モーター目標回転量の演算)
また、肉片mの並列作動においては、揺動用モーター80の目標回転量Zの演算を行う(STEP22)。
まず、
図21に示すように、各演算要素が取得される(STEP23)。
すなわち、STEP7で得られた並列枚数N
mと、STEP1で設定した切断厚み設定値Dと、STEP2で取得した塊状肉縦幅計測値H
mと、STEP5で演算された並列ピッチPκと、固定設定された揺動用モーター基準回転量Z
γおよび定数K
γと、STEP6で演算された並列肉の重なり枚数Qが取得される。
【0102】
これに基づいて、次式により、補正係数γを演算する(STEP24)。
γ=Nm×D×Hm×Pκ×Q×Kγ
そして、揺動用モーター目標回転量の補正係数閾値Cを、この補正係数γと比較する(STEP25)。
この結果、補正係数γよりも揺動用モーター目標回転量の補正係数閾値Cの方が大きいと判定された場合に、揺動用モーター目標回転量Zを次式で補正する(STEP26)。
Z=Zγ×γ
一方、補正係数γが揺動用モーター目標回転量の補正係数閾値C以上であると判定された場合には、次式のように、揺動用モーター基準回転量Zγを、揺動用モーター目標回転量Zとして代入する(STEP27)。
Z=Zγ
そして、補正後の揺動用モーター目標回転量Zを、コントローラー200から揺動用モータードライバー222へ出力する(STEP28)。
【0103】
これによって、細杆82の下降揺動端位置(請求項の「第2設定位置」)が自動的に補正される。
そして、上昇端位置まで上昇した搬送面5a上に、下降揺動端位置まで揺動した細杆82によって肉片mが移載される。
なお、上述のSTEP23における補正係数γの演算式に肉片mの切断厚み設定値Dが要素として含まれており、これによって、細杆82の下降揺動端位置は、肉片mの切断厚さに応じて自動的に補正されることとなる。
また、同STEP23における補正係数γの演算式に並列ピッチPκが要素として含まれており、これによって、細杆82の下降揺動端位置は、並列ピッチ(請求項の「設定ピッチ」)の変更に応じて自動的に補正されることとなる。
また、同STEP23における補正係数γの演算式に並列枚数Nmが要素として含まれており、これによって、細杆82の下降揺動端位置は、並列枚数(請求項の「集合体を形成する食品片の設定数」)に応じて自動的に補正されることとなる。
【0104】
また、同STEP23おける補正係数γの演算式に塊状肉縦幅計測値H
mが要素として含まれており、これによって、細杆82の下降揺動端位置は、塊状肉MFの先端部の縦幅に応じて自動的に補正されることになる。
図12に示すように、細杆82の下降揺動端位置が自動的に補正されることによって、上昇端位置に到達した搬送面5aと下降揺動端位置まで揺動した細杆82との間隔TS1は、これら搬送面5aと細杆82との間に存在する肉片mの総厚さと同等の間隔か又はやや小さい間隔となる。
これによって、搬送面5a上に移載される肉片mを細杆82が過度に押圧せず、この肉片mに細杆82で押圧された痕が残りにくくなり、肉片mおよび集合体Mの商品価値の低下を少なくすることができる。
以上のようにして切断作動と並列作動を繰り返し(STEP29)、並列枚数N
mが補正後の並列枚数Nκに一致した時点で処理を終了する(STEP30)。
これによって、搬送面5a上に肉片mの集合体Mが形成される。
【0105】
なお、本実施例では、前述したように、搬送面5aの上昇端位置(請求項の「第1設定位置」)の自動補正と、押圧棒88の下降端位置(請求項の「第3設定位置」)の自動補正と、細杆82の下降揺動端位置(請求項の「第2設定位置」)の自動補正との3種の自動補正を実行可能としている。
ただし、これら3種の自動補正の全ての実行を必須とするものではなく、いずれか2種あるいはいずれか1種の自動補正のみを実行するものとしてもよく、実行する自動補正を任意に選択できるものとしてもよい。
【0106】
(集合体間の間隔形成)
なお、上述の集合体Mの形成において、搬送面5a上に移載し並列した枚数は、棒状体回動角度検出用ポテンショメータ212の往復回動回数によって判定する。
そして、この並列した枚数が上述の並列枚数Nκに一致した時点で、集合体間隔形成用のコンベア移動量の演算に移行する。
この集合体間隔形成用のコンベア移動量Pは、無端ベルト96の搬送有効長(コンベア有効長)Eと、並列長さ設定値Lと、集合体の数Rから、次の算定式で算出される。
P=(E-L×R)/(R-1)
このコンベア移動量Pは、隣接する集合体M,Mの間隔となるものであり、コンベア移動距離計測用センサ215によって計測される。
以上のようにして、集合体Mが、無端ベルト96上に集合体間隔Pを置きながら断続的に形成されて搬送される。
【0107】
(集合体の重量の収束)
図22、23に、このようにして形成された肉片mの集合体Mの状態を例示する。
この例では、5枚の肉片mを、少なくともその一部が重なるように並列させて形成した集合体M1と、6枚の肉片mを同様に並列させて形成した集合体M2と、7枚の肉片mを同様に並列させて形成した集合体M3を同時に並べて示している。
ただし、これは説明の便宜上使用するものであり、本発明において、このように肉片枚数の異なる集合体Mが、同一の無端ベルト96上に存在することを限定するものではない。
しかして、集合体M1は、長さ(高さ)H1の肉片m1をピッチP1で5枚並列して、全長Lの集合体を形成している。
また、集合体M2は、肉片m1よりも短い肉片m2を、P1よりも短いピッチで6枚並列して、全長Lの集合体を形成している。
そして、集合体M3は、肉片m2よりも短い肉片m3を、集合体M2よりも短いピッチで7枚並列して、全長Lの集合体を形成している。
【0108】
このように、肉片mの高さに応じて、並列させる枚数とピッチを変更することで、肉片(食品片mの集合体Mの全長や重量が揃う。
すなわち、
図24に示すように、塊状肉MFは、通常、所定の長さを有し、その前端部の高さV1と後端部の高さV2は異なり、前端部から後端部にかけてもその高さが不規則に変化している。
このため、上下方向に一定の厚さで切断(スライス)した場合、切断する部位によって高さの異なる肉片が形成され、この切断された肉片の重量も均一にはならない。
これに対して、上述ように、並列ピッチの制御に加え、並列枚数の制御を行うことによって、
図25に示すように、塊状肉MFの高さ(厚さ)に対する集合体Mの総重量を、ばらつき幅W内に近付けるなど、各集合体Mの総重量のばらつきを少なくすることができる。
【0109】
(適用範囲)
なお、この実施例は、生肉切断用のスライサーに関するものとしたが、この発明は、これに限定されるものではなく、加工肉、魚肉、チーズ、野菜類などの他の食品の切断装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1 スライサー(食品切断装置)
5a 搬送面
82 細杆(揺動部材)
88 押圧棒(押圧部材)
200 コントローラー(制御手段)
MF 塊状肉(塊状食品)
m 肉片(食品片)
M 集合体
Pκ 並列ピッチ(設定ピッチ)
TS1 第1設定位置まで上昇した搬送面と第2設定位置まで下降揺動した細杆(揺動部材)との間隔
TS2 第2設定位置に下降揺動した細杆(揺動部材)の上縁と第3設定位置との間隔