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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080764
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ラジカル重合性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193962
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】上ヶ島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 崇之
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD181
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF301
4J127BF30Y
4J127BG051
4J127BG101
4J127BG10Z
4J127CB153
4J127CB222
4J127CB251
4J127CC031
4J127CC032
4J127CC092
4J127CC112
4J127CC161
4J127EA07
4J127FA01
(57)【要約】
【課題】大気下、常温硬化系で良好な表面乾燥性を有するラジカル重合性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】重合性単量体であるアリルエーテル化合物を含み、常温硬化性であるラジカル重合性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体であるアリルエーテル化合物を含み、常温硬化性であるラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項2】
飽和一塩基酸を含まない請求項1に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性樹脂組成物がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む、請求項1に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に由来する(メタ)アクリロイル基の量に対する前記アリルエーテル化合物に由来するアリル基の量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)が0.01~0.5である、請求項3に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項5】
前記量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)が0.03~0.5である、請求項4に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項6】
前記量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)が0.08~0.3である、請求項4に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性樹脂組成物が、さらに希釈剤を含む、請求項3に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項8】
ハンドレイアップ成形用である、請求項1~7のいずれか1項に記載のラジカル重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合性樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、表面乾燥性が改善されたラジカル重合性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂に反応性希釈剤として一般的に用いられるスチレンは、VOCの放散等の問題から、環境問題の一つとして注目されている。ノンスチレン樹脂であるラジカル重合性樹脂組成物は、スチレンを使用しないことから、VOC問題の解決手段の一つとして挙げられる。しかしながら、ラジカル重合性樹脂組成物は、空気による硬化阻害を受けやすいという欠点を有している。
特開2000-239332号公報には、不飽和ポリエステル樹脂にアリルエーテル化合物を添加することで酸素阻害を受けにくく表面乾燥性がよくなることが記載されている。しかしながら、光や熱で重合する硬化性組成物に関するものであり、常温硬化系については記載がない。
特開2005-97523号公報には、飽和一塩基酸を含んだビニルエステルと、アリルエーテル基又はベンジルエーテル基を有する酸化重合基含有ポリマーとを含んだビニルエステル樹脂について記載されているが、飽和一塩基酸を含まない樹脂については記載がなく、アリルエーテル化合物が重合性単量体であるものについても記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-239332号公報
【特許文献2】特開2005-97523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大気下、常温硬化系で良好な表面乾燥性を有するラジカル重合性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは検討の結果、ラジカル重合性樹脂組成物に、重合性単量体であるアリルエーテル化合物を含有することで前記課題を解決できることを見いだした。すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]重合性単量体であるアリルエーテル化合物を含み、常温硬化性であるラジカル重合性樹脂組成物。
[2]飽和一塩基酸を含まない[1]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[3]前記ラジカル重合性樹脂組成物がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む、[1]又は[2]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[4]前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に由来する(メタ)アクリロイル基の量に対する前記アリルエーテル化合物に由来するアリル基の量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)が0.01~0.5である、[3]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[5]前記量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)が0.03~0.5である、[4]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[6]前記量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)が0.08~0.3である、[4]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[7]前記ラジカル重合性樹脂組成物が、さらに希釈剤を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
[8]ハンドレイアップ成形用である、[1]~[7]のいずれか1項に記載のラジカル重合性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、大気下、常温硬化系で良好な表面乾燥性を有するラジカル重合性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、重合性単量体であるアリルエーテル化合物を含む。前記重合性単量体であるアリルエーテル化合物は、特に限定されるものではないが、例えばトリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジトリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル、ジグリセリンテトラアリルエーテル、エリスリトールトリアリルエーテル、エリスリトールテトラアリルエーテル、キシリトールトリアリルエーテル、キシリトールテトラアリルエーテル、キシリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル、ソルビトールテトラアリルエーテル、ソルビトールペンタアリルエーテル、ソルビトールヘキサアリルエーテル、イノシトールトリアリルエーテル、イノシトールテトラアリルエーテル、イノシトールペンタアリルエーテル、イノシトールヘキサアリルエーテル、フェノールノボラック型ポリアリルエーテル、クレゾール型ポリアリルエーテル、ナフタレン含有ノボラック型ポリアリルエーテル、ジアリルアミノフェノールアリルエーテルなどが挙げられる。化合物中のエーテル濃度が高いと、表面乾燥性の点で有利であるため、前記アリルエーテル化合物としては、化合物中のアリルエーテル濃度が高い点でペンタエリスリトールトリアリルエーテル、エリスリトールトリアリルエーテル、キシリトールテトラアリルエーテルなどが好ましい。
【0008】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む。前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と、アクリル酸とを反応させて得られるアクリレートが挙げられる。前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、好ましくは芳香族エポキシ樹脂のアクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、アクリル酸と反応させて得られるアクリレートである。例えば、ビスフェノールA、又はそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、アクリル酸と反応させて得られるアクリレート、エポキシノボラック樹脂とアクリル酸を反応して得られるアクリレートなどが挙げられる。
また、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と、メタアクリル酸とを反応させて得られるアクリレートが挙げられる。前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、好ましくは芳香族エポキシ樹脂のメタアクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、メタアクリル酸と反応させて得られるメタアクリレートである。例えば、ビスフェノールA、又はそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、メタアクリル酸と反応させて得られるメタアクリレート、エポキシノボラック樹脂とメタアクリル酸を反応して得られるメタアクリレートなどが挙げられる。
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、特にビスフェノールA型エポキシジアクリレートがより好ましい。
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の粘度を低くし、硬化物の耐熱性を高くするために、好ましくは170~1000g/eq.の範囲であり、より好ましくは180~400g/eq.の範囲である。170g/eq.未満のものは、結晶性が強く、ラジカル重合性樹脂組成物から分離沈殿することがあるため好ましくない。また、1000g/eq.を超えるものは、ラジカル重合性樹脂組成物の粘度が高くなり、耐熱性が低くなるため好ましくはい。本発明のラジカル重合性樹脂組成物中の、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは10~90質量%であり、より好ましくは20~80質量%である。
【0009】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物において、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に由来する(メタ)アクリロイル基の量に対する前記アリルエーテル化合物に由来するアリル基の量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)は、好ましくは0.01~0.5である。前記量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)をこのような範囲とすることで、大気下、常温硬化系でより良好な表面乾燥性を発現することができる。前記量(アリル基/(メタ)アクリロイル基)は、より好ましくは0.03~0.5であり、さらに好ましくは0.08~0.3である。
【0010】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、さらに希釈剤を含んでもよい。希釈剤を含むことにより、ラジカル重合性樹脂組成物の粘度を下げ、ラジカル重合性樹脂組成物の強化繊維への含浸性を向上させることができる。前記希釈剤としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、乾燥性、物性等の観点からジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、前記希釈剤として、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることができる。その具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど各種グリコール類の(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
ラジカル重合性樹脂組成物中の前記希釈剤の含有量は、好ましくは20~40質量%であり、より好ましくは25~35質量%である。
【0011】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、さらに芳香族アリルエステル化合物を含んでもよい。芳香族アリルエステル化合物としては、ジアリルフタレートなどが挙げられる。芳香族アリルエステル化合物は、硬化物の耐熱性を高くする機能を有する。ラジカル重合性樹脂組成物中の芳香族アリルエステル化合物の含有量は、好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。
【0012】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、さらにメタクリル酸変性アルコキシ化ビスフェノールを含んでもよい。メタクリル酸変性アルコキシ化ビスフェノールとしては、エトキシ化ビスフェノールA型ジメタクリレートなどが挙げられる。メタクリル酸変性アルコキシ化ビスフェノールは、ラジカル重合性樹脂組成物を低粘度化できる機能を有する。メタクリル酸変性アルコキシ化ビスフェノールは、公知の製法にてビスフェノールにアルキレンオキシドを重付加反応させ、さらにメタクリル酸と縮合反応させるか、又はメタクリル酸メチルとエステル交換反応させることにより得ることができる。また、メタクリル酸変性アルコキシ化ビスフェノールとして、市販のものを使用することができる。アルキレンオキシドの重付加モル数は、特に限定されないが、1分子中に好ましくは2~10であり、より好ましくは2~4である。ラジカル重合性樹脂組成物中のメタクリル酸変性アルコキシ化ビスフェノールの含有量は、好ましくは10~30質量%であり、より好ましくは15~25質量%である。
【0013】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、その他の成分として、硬化遅延剤、硬化剤、硬化促進剤、硬化助促進剤、光ラジカル開始剤等を含有していてもよい。これらは、用途に応じて、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の合成中に添加してもよいし、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と重合性単量体を混合する際に同時に混合してもよいし、ラジカル重合性樹脂組成物に配合してもよいし、使用直前にラジカル重合性樹脂組成物に配合してもよい。特に硬化を遅延する硬化遅延剤は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の合成中、又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂と重合性単量体を混合する際に混合することが好ましく、硬化剤、硬化促進剤、硬化助促進剤、光ラジカル開始剤は、使用直前に配合することが好ましい。
【0014】
硬化遅延剤は、製造時のゲル化防止、成形時の可使時間確保、貯蔵安定性の向上のために配合される。好適に使用できる硬化遅延剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルカテコール等の多価フェノール系硬化遅延剤、パラベンゾキノン、トルキノン等のキノン系硬化遅延剤が挙げられる。硬化遅延剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂組成物中、好ましくは0.001~0.5質量%であり、より好ましくは0.005~0.15質量%である。
【0015】
硬化剤、硬化促進剤、硬化助促進剤、光ラジカル開始剤は、成形時に、均質な硬化物を速やかに得るために用いられる。これらの種類及び量は用途によって使い分ければよい。
硬化剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイドなどジアルキルパーオキサイド系等が挙げられる。硬化剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂組成物中、好ましくは0.05~5質量%である。
硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類;バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類;アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4-(N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N-置換アニリン、N,N-置換-p-トルイジン、4-(N,N-置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類等が挙げられる。硬化促進剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂組成物中、好ましくは0.05~5質量%である。
硬化助促進剤としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅など金属石けん類;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジメドンなどβ-ジケトン類;ジメチルアニリンなど芳香族3級アミン類:トリフェニルホスフィン、2-エチルへキシルホスファイトなどのりん化合物類等が挙げられる。硬化助促進剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂組成物中、好ましくは0.001~1.0質量%である。
光ラジカル開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。光ラジカル開始剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂組成物中、好ましくは0.1~5質量%である。
【0016】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には、さらにワックスを含有してもよい。ワックスとしては、飽和脂肪酸や飽和脂肪酸エステルに代表される酸化ワックス、パラフィンワックスに代表される石油ワックス、天然ワックス、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。ワックスの含有量は、ラジカル重合性樹脂組成物中、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
【0017】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、強化繊維への含浸性の観点から、25℃での粘度は、好ましくは100~1500mPa・sであり、より好ましくは100~1300mPa・sである。
前記強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維などが挙げられる。また、炭素繊維とガラス繊維又はアラミド繊維を組み合わせたハイブリッドタイプの繊維も使用することができる。前記繊維の形状は、チョップドストランド又はそれをマット化したもの、ロービング又はロービングを編んだロービングクロス、一方向に繊維を揃えたもの等であってもよい。これらの繊維は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、強化繊維に含浸させたものを種々の成型方法で成型することができる。前記成形法としては、ハンドレイアップ成形法、スプレイアップ成形法、注型法、フィラメントワインディング成形法、レジントランスファー成形法、バック成形法、引き抜き成形法、プリフォームドマッチドダイ成形法、コールドプレス法などが挙げられる。本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、好ましくはハンドレイアップ成形用として用いられる。
【0019】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、種々の硬化反応によって硬化することができる。前記硬化法としては、常温硬化、熱硬化、光硬化などが挙げられる。本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、硬化に特別な加熱、光照射等の設備や操作を要しない点で常温硬化が好ましい。本発明のラジカル重合性組成物は、重合性単量体であるアリルエーテル化合物を含有する。アリルエーテル化合物は、空気中の酸素と酸化重合を行うことで表面乾燥性を向上させる効果を有するが、本発明では当該単量体を用いることにより、反応機構は明らかではないが常温硬化が速やかに進行する効果を見出したものである。
【実施例0020】
製造例(エポキシアクリレート樹脂の製造)
温度計、撹拌器、還流冷却器、及びガス導入管を備えた2L四つ口フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン850、大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量188)686g、メタクリル酸314g(三菱ガス化学株式会社製)、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.2gを加え、乾燥空気をバブリングしながら90℃で、均一になるまで撹拌し、混合物を得た。該混合物を60℃まで冷却し、2-メチルイミダゾール2.0gを加え、130℃に加熱し、3時間反応して、エポキシアクリレート樹脂を得た。
【0021】
(実施例1)
得られたエポキシアクリレート樹脂500gにエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPE-100、新中村化学工業株式会社製)180g、ジアリルフタレート(ダイソーダップモノマー、株式会社大阪ソーダ製)60g、ベンジルメタクリレート(メタクリル酸ベンジル、三菱ガス化学株式会社製)260g、NPS-8070(日本精蝋株式会社製)0.5g、ジプレニルグリセリンエーテル(DPNG)(クラレ製)5.0gを添加してラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、509mPa・sであった。
【0022】
(実施例2)
DPNGの添加量を10.0gとした以外は実施例1と同様にしてラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、372mPa・sであった。
【0023】
(比較例1)
DPNGを添加しないこと以外は実施例1と同様にしてラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、871mPa・sであった。
【0024】
(実施例3)
DPNGに代えてポリエチレングリコールジアリルエーテル(PKA-6206)(日油株式会社製:平均分子量800)を添加した以外は実施例1と同様にしてラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、604mPa・sであった。
【0025】
(実施例4)
PKA-6206の添加量を10.0gとした以外は実施例3と同様にしてラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、483mPa・sであった。
【0026】
(実施例5)
DPNGに代えてペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ネオアリルP-30)(株式会社大阪ソーダ製)2.0gを添加した以外は実施例1と同様にしてラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、615mPa・sであった。
【0027】
(実施例6)
ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を5.0gとした以外は実施例5と同様にしてラジカル重合性樹脂組成物を調合した。得られたラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、575mPa・sであった。
【0028】
実施例1~6及び比較例1について、表面乾燥性とバーコル硬度を評価した。具体的には、調合したラジカル重合性樹脂組成物100質量部に対して、硬化促進剤として8%オクチル酸コバルト0.3質量部、硬化剤(製品名:日油株式会社製 パーメックN)を1.0質量部添加して硬化剤含有ラジカル重合性樹脂組成物を調合し、PETフィルム上に、10cm×10cmのチョップドストランドマット(#450:日東紡績株式会社製)に対して硬化剤含有ラジカル重合性樹脂組成物31.5g(ガラス含有率30質量%)で積層し、25℃で硬化した。表面乾燥性は積層12時間後、1日後、2日後の表面状態を指で触って確認した。バーコル硬度は、積層12時間後、JIS K 6911に準じて確認した。なお、ラジカル重合性樹脂組成物の25℃での粘度は、次のようにして測定した。ラジカル重合性樹脂組成物を225mLガラス瓶に180g測り取り、25℃に温調した水浴に30分間以上漬け、温度計でラジカル重合性樹脂組成物の温度が25℃になっていることを確認後、B型回転粘度計で測定した。測定方法は、JIS K 6901「粘度」に準拠した。