IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

特開2024-80792力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置
<>
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図1
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図2
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図3
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図4
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図5
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図6
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図7
  • 特開-力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080792
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240610BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194024
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好則
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD48
5H730FG01
5H730FG07
5H730FG21
(57)【要約】
【課題】軽負荷時にスイッチング周波数を低減することができる力率改善を実現する。
【解決手段】電源端子対(IN1、IN2)に加わる交流電圧から直流の出力電圧を生成する電源装置(1)において、交流電圧を全波整流することで全波整流電圧を生成する全波整流回路(20)と、出力電圧が加わる出力配線(PL3)と、の間に力率改善回路(30)が設けられる。力率改善回路は、全波整流回路と出力配線との間に挿入されるインダクタ(31)と、インダクタに流れる電流を制御するためのスイッチング素子(Q1)と、を含む。力率改善回路の制御装置(100)は、スイッチング素子をオフしている期間において、スイッチング素子の第1端と第2端との間の電圧の自由振動でのボトムの個数を、スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間に基づき制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子対に加わる交流電圧から直流の出力電圧を生成するように構成された電源装置に設けられる力率改善回路の制御装置であって、
前記力率改善回路は、
前記交流電圧を全波整流することで全波整流電圧を生成するように構成された全波整流回路と、前記出力電圧が加わるように構成された出力配線と、の間に設けられ、
全波整流回路と前記出力配線との間に挿入されるインダクタと、
前記インダクタに流れる電流を制御するためにオン状態とオフ状態とが切り替わるように構成されたスイッチング素子と、を含み、
前記制御装置は、
前記スイッチング素子をオフしている期間において、前記スイッチング素子の第1端と第2端との間の電圧の自由振動でのボトムの個数を、前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間に基づき制御するように構成されている、
制御装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間と相関がある相関値を求めるように構成された検出部と、
前記相関値を保持するように構成された保持部と、
前記保持部によって保持された前記相関値に基づき、前記ボトムの個数を、第1所定値増加させる、変化させない、又は、第2所定値減少させる、のいずれにするかを判断するように構成された判断部と、
前記全波整流電圧が第3所定値より小さい場合は前記検出部での検出を無効とするように構成された条件指定部と、
を備える、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記相関値は、所定の期間における前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間の最小値と相関がある値である、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定の期間は、前記全波整流電圧の1周期である、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子をさらに備え、
前記スイッチング素子は、GaN半導体素子である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記インダクタと、
前記制御装置に内蔵又は外付け接続される前記スイッチング素子と、
を備える、力率改善回路。
【請求項7】
請求項6に記載の力率改善回路と、
前記全波整流回路と、
前記出力配線と、
を備える、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、力率改善回路の制御装置並びに力率改善回路及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AC電圧をDC電圧に変換する電源装置において、5W以上の照明機器、75W以上の電源機器、及び他の機器に対して高調波歪みに関する規格であるIEC61000-3-2が存在する。
【0003】
上記の機器の高調波歪みを改善するために力率改善回路が用いられる。75W以上の電源機器としては電源アダプタ等が対象となる。電源アダプタ等に力率改善回路が用いられる場合、力率改善回路において電力損失が発生するため、エナジースター6.0等の電力規格の達成が難しくなる。
【0004】
力率改善回路では、臨界モードトポロジーがよく用いられる(例えば特許文献1参照)。臨界モードトポロジーがよく用いられる理由としては、臨界モード力率改善回路では、AC電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を制御することが簡単でありコストを低減し易いこと、及び効率が高いことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-118767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な臨界モード力率改善回路では、AC電圧が高いとき又は軽負荷のときにスイッチング周波数が上昇し、EMI(Electro Magnetic Interference)規格の150kHzを超えてしまうおそれがある。したがって、一般的な臨界型力率改善回路では、EMI規格を達成するために、大型かつ高価なフィルタが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る力率改善回路の制御装置は、電源端子対に加わる交流電圧から直流の出力電圧を生成するように構成された電源装置に設けられる力率改善回路の制御装置である。前記力率改善回路は、前記交流電圧を全波整流することで全波整流電圧を生成するように構成された全波整流回路と、前記出力電圧が加わるように構成された出力配線と、の間に設けられる。前記力率改善回路は、全波整流回路と前記出力配線との間に挿入されるインダクタと、前記インダクタに流れる電流を制御するためにオン状態とオフ状態とが切り替わるように構成されたスイッチング素子と、を含む。 前記制御装置は、前記スイッチング素子をオフしている期間において、前記スイッチング素子の第1端と第2端との間の電圧の自由振動でのボトムの個数を、前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間に基づき制御するように構成されている。
【0008】
本開示に係る力率改善回路は、上記構成の制御装置と、前記インダクタと、前記制御装置に内蔵又は外付け接続される前記スイッチング素子と、を備える。
【0009】
本開示の電源装置は、上記構成の力率改善回路と、前記全波整流回路と、前記出力配線と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、軽負荷時にスイッチング周波数を低減することができる力率改善を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る電源装置1の全体構成を示す図である。
図2図2は、制御装置の外観斜視図である。
図3図3は、臨界モードでのスイッチング素子のドレイン-ソース間電圧及びインダクタ電流の波形例を示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
図5図5は、第1基準時間及び第2基準時間の設定例を示す図である。
図6図6は、図5に示す設定例での力率改善回路の出力電力とスイッチング素子のスイッチング周波数との関係を示す図である。
図7図7は、全波整流電圧の波形を示す図である。
図8図8は、検出部、保持部、判断部、及び条件指定部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電源装置1の全体構成を示す図である。電源装置1は、交流電源2から供給される交流電圧Vacに基づき直流の出力電圧Voutを生成するAC/DCコンバータである。交流電圧Vacは、例えば商用交流電圧である。
【0013】
電源装置1は、電源端子対を形成する電源端子IN1及びIN2と、出力端子対を形成する出力端子OUT1及びOUT2と、フィルタ回路10と、全波整流回路20と、力率改善回路30と、コンデンサ40と、各素子を接続するための配線(後述の配線AL1、BL1、AL2、BL2、PL1、PL2、PL3及びNLを含む)と、を備える。
【0014】
電源端子対に交流電源2からの交流電圧Vacが供給される。即ち、電源端子IN1及びIN2間に交流電源2からの交流電圧Vacが加わる。
【0015】
フィルタ回路10は、電源端子対と全波整流回路20との間に配置され、交流電圧Vacに重畳されるノイズを低減する。
【0016】
フィルタ回路10によるノイズ低減後の交流電圧Vacは、配線AL2及びBL2間に加わる。
【0017】
全波整流回路20は、フィルタ回路10によるノイズ低減後の交流電圧Vacを全波整流することで全波整流電圧VHaを生成する。全波整流回路20は、4つのダイオード21~24から成るダイオードブリッジ回路である。具体的には、ダイオード21のアノード及びダイオード23のカソードが配線AL2に共通接続され、ダイオード22のアノード及びダイオード24のカソードが配線BL2に共通接続され、ダイオード21及び22の各カソードが配線PL1に共通接続され、ダイオード23及び24の各アノードが配線NLに共通接続される。
【0018】
全波整流電圧VHaは、配線NL及びPL1間に加わる。この際、配線NLに負側の電位が加わり、配線PL1に正側の電位が加わる。配線PL1及びNLにコンデンサ40が接続される。
【0019】
分圧抵抗41及び42から成る分圧回路は、全波整流電圧VHaを分圧する。具体的には、分圧抵抗41の第1端は、配線PL1に接続され、分圧抵抗41の第2端は分圧抵抗42を介して配線NLに接続される。分圧抵抗41及び42間の接続ノードに全波整流電圧VHaの分圧Vdが生じる。全波整流電圧VHaの分圧Vdは、後述の制御装置100に供給される。
【0020】
力率改善回路30は、全波整流電圧VHaから出力電圧Voutを生成する昇圧型のコンバータであり、交流電圧Vacの位相と交流電源から出力される交流電流の位相が一致するよう動作することで電源装置1の力率を改善する。力率改善回路30は、インダクタ31及び32と、Nチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されたスイッチング素子Q1と、還流ダイオード33と、平滑コンデンサ34と、分圧抵抗35及び36と、制御装置100と、を備える。
【0021】
本実施形態では、スイッチング素子Q1は、GaN半導体素子である。スイッチング素子Q1がGaN半導体素子である場合、スイッチング素子Q1での発熱が低減できるため、制御装置100にスイッチング素子Q1を内蔵することが可能となる。したがって、本実施形態では、制御装置100がスイッチング素子Q1を備える。なお、本実施形態とは異なり、スイッチング素子Q1は、制御装置100に外付け接続されてもよい。スイッチング素子Q1が制御装置100に外付け接続される場合、スイッチング素子Q1は、GaN半導体素子であってもよく、シリコン半導体素子であってもよい。
【0022】
インダクタ31の一端は配線PL1に接続され、配線PL1を通じてダイオード21及び22の各カソードに接続される。インダクタ31の他端は配線PL2に接続され、配線PL2を通じてスイッチング素子32のドレインと還流ダイオード33のアノードに共通接続される。スイッチング素子32のソースは、グランド電位が加わる配線NLに接続される。
【0023】
還流ダイオード33のカソードは配線PL3に接続される。配線PL3は出力電圧Voutが加わる出力配線である。出力電圧Voutはグランド電位から見た電圧であって、グランド電位よりも高い電位を持つ。なお、本実施形態とは異なり、還流ダイオード33の代わりに同期整流トランジスタが還流素子として用いられてもよい。この場合、制御装置100の制御の下、スイッチング素子32がオン状態であるときに同期整流トランジスタをオフ状態とし、スイッチング素子32がオフ状態であるときに同期整流トランジスタをオン状態とすればよい。
【0024】
平滑コンデンサ34の第1端は、配線PL3に接続される。平滑コンデンサ34の第2端は、配線NLに接続される。分圧抵抗35及び36から成る分圧回路は、出力電圧Voutを分圧することで帰還電圧Vfbを生成する。具体的には、分圧抵抗35の第1端は、配線PL3に接続され、分圧抵抗35の第2端は分圧抵抗36を介して配線NLに接続される。分圧抵抗35及び36間の接続ノードに帰還電圧Vfbが生じる。帰還電圧Vfbは、制御装置100に供給される。出力端子OUT1は配線PL3に接続され、出力端子OUT2は配線NLに接続される。
【0025】
インダクタ32は、インダクタ31と磁気結合する。インダクタ32は、インダクタL1に流れる電流Ip(以下、インダクタ電流Ipと称す)に応じた電圧を発生させる。インダクタ電流Ipに応じた電圧は、制御装置100に供給される。
【0026】
制御装置100は、図2に示すような、半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)である。制御装置100の筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には図1に示される端子が含まれ、それ以外の端子も上記複数の外部端子に含まれうる。尚、図2に示される制御装置100の外部端子の数及び制御装置100の外観は例示に過ぎない。
【0027】
制御装置100は、帰還電圧Vfbに基づき、出力電圧Voutを所定の目標電圧に安定化させる出力安定化制御と、インダクタ電流Ipの調整を通じて電源装置1の力率を高める力率改善制御と、を実行する。
【0028】
出力安定化制御及び力率改善制御は、スイッチング素子32の状態(オン/オフ状態)を制御することにより実現される。制御装置100は、スイッチング素子32にゲート信号を供給し、ゲート信号をハイレベル及びローレベル間で切り替えることでスイッチング素子32をスイッチングさせる。ゲート信号がハイレベルであるときスイッチング素子32はオン状態となり、ゲート信号がローレベルであるときスイッチング素子32はオフ状態となる。
【0029】
スイッチング素子32をオンにしている期間において、インダクタ電流Ipはスイッチング素子32を介して配線NLへと流れる。スイッチング素子32をオフにしている期間において、インダクタ電流ILが流れるとき(インダクタ31にエネルギが蓄積されているとき)、インダクタ電流ILは還流ダイオード33を介して配線PL3へと流れる。
【0030】
出力電圧Voutを受け取る負荷が軽負荷である場合、即ち力率改善回路30の出力電力が所定値以下である場合、制御装置100は、臨界モード(Boundary-Conduction Mode)で動作する。また、出力電圧Voutを受け取る負荷が軽負荷でない場合、制御装置100は、臨界モードで動作してもよく、連続モード(Continuous-Conduction Mode)で動作してもよい。
【0031】
図3は、臨界モードでのスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vds及びインダクタ電流Ipの波形例を示す図である。なお、図3では、スイッチング素子Q1の状態(オン/オフ状態)も合わせて図示されている。図3に示す例では、各スイッチング周期において、スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動でのボトムbtmの個数は3個である。
【0032】
出力電圧Voutを受け取る負荷が軽負荷である場合、制御装置100は、スイッチング素子Q1をオフしている期間において、スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動でのボトムの個数を、スイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswに基づき制御する。
【0033】
具体的には、制御装置100は、スイッチング素子Q1をオフしている期間において、スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動でのボトムの個数を、スイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswが短い程多くするように制御する。例えば、期間Tswが8.5μsより長いときに、制御装置100は、ボトムの個数を1個にする。そして、期間Tswが8.5μs以下であり7.5μsより長いときに、制御装置100は、ボトムの個数を2個にする。そして、期間Tswが7.5μs以下であり6.5μsより長いときに、制御装置100は、ボトムの個数を3個にする。そして、期間Tswが6.5μs以下であり5.5μsより長いときに、制御装置100は、ボトムの個数を4個にする。そして、期間Tswが5.5μs以下であるときに、制御装置100は、ボトムの個数を5個にする。
【0034】
上述した制御装置100の制御によって、出力電圧Voutを受け取る負荷が軽負荷であるときに、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を低減することができる。
【0035】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る電源装置1は、第1実施形態に係る電源装置1と比較して、制御装置100の具体的な制御内容が異なり、それ以外の部分は第1実施形態に係る電源装置1と同様である。
【0036】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、出力電圧Voutを受け取る負荷が軽負荷である場合、制御装置100は、スイッチング素子Q1をオフしている期間において、スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧の自由振動でのボトムの個数を、スイッチング素子Q1のターンオンから自由振動の開始までの期間Tswに基づき制御する。
【0037】
第1実施形態では、期間Tswが短い程ボトムの個数は多くなる。したがって、出力電圧Voutを受け取る負荷に応じてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数が変化し、インダクタ電流のピーク値が変化する。その結果、出力電圧Voutを受け取る負荷の変動が大きい場合に、THD(Total Harmonic Distortion)が悪化してしまう。
【0038】
本実施形態に係る電源装置1は、ボトムの個数が大きく変化することを防止することでTHDの悪化を抑制することができる。
【0039】
図4は、本実施形態に係る制御装置100の概略構成を示す図である。本実施形態に係る制御装置100は、検出部101と、保持部102と、判断部103と、条件指定部104と、ゲート信号生成部105と、を備える。
【0040】
検出部101は、スイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswと相関がある値を求める。具体的には、検出部101は、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値と相関がある値を検出する。
【0041】
所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値の代わりに、例えば、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最大値が用いられてもよい。
【0042】
また、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値の代わりに、例えば、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値に比例する値が用いられてもよい。
【0043】
また、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値の代わりに、例えば、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最大値に比例する値が用いられてもよい。
【0044】
上述した所定の期間は、全波整流電圧VHaの1周期であることが望ましい。上述した所定の期間は、全波整流電圧VHaの1周期であれば、全波整流電圧VHaの1周期においてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数が変化しないため、THDの悪化を抑制する効果が大きくなる。
【0045】
保持部102は、検出部101で求められた相関値を保持する。
【0046】
判断部103は、保持部102によって保持された相関値に基づき、ボトムの個数を、第1所定値増加させる、変化させない、又は、第2所定値減少させる、のいずれにするかを判断する。
【0047】
出力電圧Voutを受け取る負荷が軽くなると、スイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswが短くなる。そのため、例えば、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値が第1基準時間Tupxxより短くなると、判断部103は、ボトムの個数を第1所定値増加させる。第1所定値は自然数であればよいが、1であることが望ましい。第1所定値が1であれば、ボトムの個数の増加変化を最小限に抑えることができ、THDの悪化を抑制する効果が大きくなるからである。
【0048】
一方、出力電圧Voutを受け取る負荷が重くなると、スイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswが長くなる。そのため、例えば、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値が第2基準時間Tdnxxより長くなると、判断部103は、ボトムの個数を第2所定値減少させる。第2所定値は自然数であればよいが、1であることが望ましい。第2所定値が1であれば、ボトムの個数の減少変化を最小限に抑えることができ、THDの悪化を抑制する効果が大きくなるからである。
【0049】
また、例えば、所定の期間におけるスイッチング素子Q1のターンオンからスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsの自由振動の開始までの期間Tswの最小値が第1基準時間Tupxx以上第2基準時間Tdnxx以下であれば、判断部103は、ボトムの個数を変化させない。
【0050】
図5は、第1基準時間Tupxx及び第2基準時間Tdnxxの設定例を示す図である。図6は、図5に示す設定例での力率改善回路30の出力電力とスイッチング素子Q1のスイッチング周波数との関係を示す図である。図6から分かるように、本実施形態に係る電源装置1は、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数が大きく変化することを防止しているため、THDの悪化を抑制することができる。
【0051】
条件指定部104は、全波整流電圧VHaが第3所定値V3より小さい場合即ち図7に示す期間P1のときは、検出部101での検出を無効とする。
【0052】
全波整流電圧VHaが小さい場合はスイッチング素子Q1のオン時間が長くなるため、出力電圧Voutを受け取る負荷にかかわらず、必ずボトムの個数が最大値に収束してしまうという不具合が生じる。制御装置100が条件指定部104を備えることで、当該不具合を防止することができる。
【0053】
ゲート信号生成部105は、帰還電圧Vfbと、インダクタ32から供給される電圧V32と、判断部103の出力と、に基づいて、ゲート信号を生成する。
【0054】
図8は、検出部101、保持部102、判断部103、及び条件指定部104の構成例を示す図である。
【0055】
検出部101は、定電流を出力する電流源CS1と、コンデンサC1と、放電用スイッチであるトランジスタQ2と、抵抗R1~R9と、コンパレータCOMP1~COMP8と、フリップフロップFF1~FF8と、を備える。
【0056】
コンデンサC1は、各期間Tswにおいて充電される。コンデンサC1の充電電圧は、コンパレータCOMP1~COMP8それぞれにおいて、抵抗R1~R9によって生成される異なる値の基準電圧と比較される。コンパレータCOMP1~COMP8の各出力は、フリップフロップFF1~FF8によって保持される。
【0057】
フリップフロップFF1~FF8は、基本的にスイッチング素子Q1のスイッチング周期毎に時間データを更新する。信号S1は、スイッチング素子Q1のスイッチング周期に応じた信号である。
【0058】
保持部102及び判断部103は、ステートマシンSTM1を備える。ステートマシンSTM1は、現在のステート(ボトム数) に応じて、該当するフリップフロップFF1~FF8の信号を選択し、期間Tswの長さと、現在のステート(ボトム数)に応じた基準時間と、を比較する。そして、ステートマシンSTM1は、基準時間に対して比較時間が長い、短い、または二つの基準時間の間の3状態のどれに当たるかを判定し、判定結果に応じて、次回の期間Tswでの判定に使用するステートを更新する。
【0059】
条件指定部104は、アンドゲートA1を備える。アンドゲートA1は、信号S1と信号S2との論理積を出力する。信号S2は、全波整流電圧VHaが第3所定値V3より小さいときにハイレベルになる信号である。
【0060】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0061】
本開示の制御装置(100)は、電源端子対(IN1、IN2)に加わる交流電圧から直流の出力電圧を生成するように構成された電源装置(1)に設けられる力率改善回路(30)の制御装置であって、 前記力率改善回路は、前記交流電圧を全波整流することで全波整流電圧を生成するように構成された全波整流回路(20)と、前記出力電圧が加わるように構成された出力配線(PL3)と、の間に設けられ、全波整流回路と前記出力配線との間に挿入されるインダクタ(31)と、前記インダクタに流れる電流を制御するためにオン状態とオフ状態とが切り替わるように構成されたスイッチング素子(Q1)と、を含み、 前記制御装置は、前記スイッチング素子をオフしている期間において、前記スイッチング素子の第1端と第2端との間の電圧の自由振動でのボトムの個数を、前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間に基づき制御するように構成されている構成(第1の構成)である。
【0062】
上記第1の構成の制御装置において、前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間と相関がある相関値を求めるように構成された検出部(101)と、前記相関値を保持するように構成された保持部(102)と、前記保持部によって保持された前記相関値に基づき、前記ボトムの個数を、第1所定値増加させる、変化させない、又は、第2所定値減少させる、のいずれにするかを判断するように構成された判断部(103)と、前記全波整流電圧が第3所定値より小さい場合は前記検出部での検出を無効とするように構成された条件指定部(104)と、を備える構成(第2の構成)であってもよい。
【0063】
上記第2の構成の制御装置において、前記相関値は、所定の期間における前記スイッチング素子のターンオンから前記自由振動の開始までの期間の最小値と相関がある値である構成(第3の構成)であってもよい。
【0064】
上記第3の構成の制御装置において、前記所定の期間は、前記全波整流電圧の1周期である構成(第4の構成)であってもよい。
【0065】
上記第1~第4いずれかの構成の制御装置において、前記スイッチング素子をさらに備え、前記スイッチング素子は、GaN半導体素子である構成(第5の構成)であってもよい。
【0066】
本開示の力率改善回路(30)は、上記第1~第5いずれかの構成の制御装置と、前記インダクタと、前記制御装置に内蔵又は外付け接続される前記スイッチング素子と、を備える構成(第6の構成)である。
【0067】
本開示の電源装置(1)は、上記第6の構成の力率改善回路と、前記全波整流回路と、前記出力配線と、を備える構成(第7の構成)である。
【符号の説明】
【0068】
1 電源装置
2 交流電源
10 フィルタ回路
20 全波整流回路
21~24 ダイオード
30 力率改善回路
31、32 インダクタ
33 還流ダイオード
34 平滑コンデンサ
35、36、41、42 分圧抵抗
40 コンデンサ
100 制御装置
101 検出部
102 保持部
103 判断部
104 条件指定部
105 ゲート信号生成部
AL1、BL1、AL2、BL2、PL1、PL2、PL3、NL 配線
IN1、IN2 電源端子
OUT1、OUT2 出力端子
Q1 スイッチング素子
CS1 電流源
C1 コンデンサ
Q2 トランジスタ
R1~R9 抵抗
COMP1~COMP8 コンパレータ
FF1~FF8 フリップフロップ
STM1 ステートマシン
A1 アンドゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8