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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080796
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】監視用システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
E02D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194029
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
(72)【発明者】
【氏名】坪田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳勝
(72)【発明者】
【氏名】スウ ガイキ
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050EE01
2D050EE17
(57)【要約】
【課題】杭施工の状況を適切に監視するための監視用システムを提供する。
【解決手段】杭施工の状況を監視するための監視用システムSが、杭施工が行われている場所に設置された表示器の画面を撮影する撮影機器と、杭施工の様子を録画するWebカメラ18と、撮影機器により撮影された画面の画像と、録画機器により録画された様子の映像とを取得する解析装置と、監視用表示器16と、を備える。解析装置は、画面の画像を解析して、杭施工中に画面に表示される情報のうち、杭施工の状況に関する管理項目についての数値を管理項目毎に認識する認識処理と、認識された数値を、管理項目と対応付けて記憶装置に記憶する記憶処理と、数値に基づく管理項目についての可視化情報、及び様子の映像の両方を監視用表示器16に表示させる表示処理と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭施工の状況を監視するための監視用システムであって、
前記杭施工が行われている場所に設置された表示器の画面を撮影する撮影機器と、
前記杭施工の様子を録画する録画機器と、
前記撮影機器により撮影された前記画面の画像と、前記録画機器により録画された前記様子の映像とを取得する解析装置と、
監視用表示器と、を備え、
前記解析装置は、
前記画面の画像を解析して、前記杭施工中に前記画面に表示される情報のうち、前記杭施工の状況に関する管理項目についての数値を前記管理項目毎に認識する認識処理と、
認識された前記数値を、前記管理項目と対応付けて記憶装置に記憶する記憶処理と、
前記数値に基づく前記管理項目についての可視化情報、及び前記様子の映像の両方を前記監視用表示器に表示させる表示処理と、を実行する監視用システム。
【請求項2】
前記解析装置は、前記杭施工中に、前記可視化情報及び前記様子の映像の両方を同一画面に表示させる前記表示処理を実行する、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項3】
前記解析装置は、前記杭施工中に、前記可視化情報、前記様子の映像、及び前記画面の画像を同一画面に表示させる前記表示処理を実行する、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項4】
前記録画機器及び前記撮影機器の少なくとも一方が、前記杭施工中の音を録音し、
前記解析装置は、前記記憶処理において、認識された前記数値、前記様子の録画映像、前記画面の撮影画像、及び、前記杭施工中に録音された音の情報の4つを、当該4つの情報を同期させるための同期情報と関連付けて前記記憶装置に記憶する、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項5】
前記解析装置は、基準時刻を特定するための基準時刻情報を取得し、
前記同期情報は、前記基準時刻からの経過時間である、請求項4に記載の監視用システム。
【請求項6】
前記撮影機器及び前記録画機器を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記杭施工の準備中又は前記杭施工中に、前記場所にて取得可能なトリガー情報を取得し、
前記トリガー情報の取得を契機として、前記撮影機器による前記画面の撮影、及び前記録画機器による前記様子の録画を開始させる、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項7】
前記可視化情報は、前記数値の変化を表すグラフを含む、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項8】
前記画面には、前記杭施工中、複数の前記管理項目についての前記数値が表示され、
前記解析装置は、前記認識処理において、前記杭施工中に前記画面に表示される情報のうち、複数の前記管理項目のそれぞれについて前記数値を前記管理項目毎に認識し、
前記解析装置は、前記表示処理において、前記管理項目毎に認識された前記数値のうち、選定された前記管理項目についての前記数値に基づく前記可視化情報を前記監視用表示器に表示させる、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項9】
前記撮影機器及び前記解析装置が、同一の情報端末に搭載されている、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項10】
前記表示器は、前記杭施工に用いられる杭打機の操縦席の前に設置され、前記杭施工中、前記管理項目に関して計測器により得られた計測値を前記画面に表示する、請求項1に記載の監視用システム。
【請求項11】
前記録画機器は、前記杭施工中、杭の埋設箇所、及び前記杭施工に用いられる杭打機が前記録画機器の録画範囲内に入っている状態で前記様子を録画する、請求項1に記載の監視用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視用システムに係り、特に、杭施工の状況を監視するために用いられる監視用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
杭施工の状況を監視する技術は、既に知られており、その一例としては、特許文献1に記載の「施工管理装置を備えた杭打機」が挙げられる。特許文献1に記載の杭打機によれば、施工管理装置が、杭番号と施工実績データを記憶し、記憶された杭番号と施工実績データと杭の位置情報とを外部の表示装置に表示させる。このような技術によれば、例えば、杭施工の状況を、施工現場から離れた遠隔地で監視することができる。また、記録された施工実績データは、杭施工が正常に実施されたことの証拠として利用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-190579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、杭打機(詳しくは、杭打機が備える施工管理装置)の仕様は、その製造メーカ等に応じて異なり、また、同じ製造メーカから提供される装置であっても、年代や型式、バージョン等に応じて仕様が異なる場合がある。その場合、杭施工の状況に関する情報、及び当該情報の表示様式等が杭打機の間で統一されないため、杭施工の状況が監視し難くなる。
【0005】
また、施工状況に関する管理項目を画面に表示する構成において、その表示値が異常な値を示したとしても、その時点での施工状況が実際にどのような状況であるのかは、当該表示値だけでは特定しづらいことがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、杭施工の状況を適切に監視するための監視用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の監視用システムによれば、杭施工の状況を監視するための監視用システムであって、杭施工が行われている場所に設置された表示器の画面を撮影する撮影機器と、杭施工の様子を録画する録画機器と、撮影機器により撮影された画面の画像と、録画機器により録画された様子の映像とを取得する解析装置と、監視用表示器と、を備え、解析装置は、画面の画像を解析して、杭施工中に画面に表示される情報のうち、杭施工の状況に関する管理項目についての数値を管理項目毎に認識する認識処理と、認識された数値を、管理項目と対応付けて記憶装置に記憶する記憶処理と、数値に基づく管理項目についての可視化情報、及び様子の映像の両方を監視用表示器に表示させる表示処理と、を実行することにより解決される。
上記のように構成された本発明の監視用システムでは、杭施工の現場に設置された表示器の画面を撮影した画像から、当該画面に表示された管理項目の数値を認識し、認識された数値を可視化し、その可視化情報と、杭施工の様子の録画映像とを監視用表示器に表示する。これにより、杭施工の状況を適切に監視することが可能となる。
【0008】
また、上記の監視用システムにおいて、解析装置は、杭施工中に、可視化情報及び様子の映像の両方を同一画面に表示させる表示処理を実行すると、好適である。
上記の構成によれば、杭施工の状況をより適切に監視することが可能となる。
【0009】
また、上記の監視用システムにおいて、解析装置は、杭施工中に、可視化情報、様子の映像、及び画面の画像を同一画面に表示させる表示処理を実行すると、より好適である。
上記の構成によれば、杭施工の状況をさらに適切に監視することが可能となる。
【0010】
また、上記の監視用システムは、杭施工中の音を録音する録音機器をさらに有してもよい。この場合、解析装置は、記憶処理において、認識された数値、様子の録画映像、画面の撮影画像、及び、杭施工中に録音された音の情報の4つを、当4つの情報を同期させるための同期情報と関連付けて記憶装置に記憶すると、さらに好適である。
上記の構成によれば、記憶装置に記憶された4つの情報、すなわち、管理項目についての数値、杭施工の様子の録画映像、表示器の画面の撮影画像、及び、杭施工中に録音された音の情報を確認する際に、これらを同期させて確認することができる。
【0011】
また、上記の監視用システムにおいて、解析装置は、基準時刻を特定するための基準時刻情報を取得し、同期情報は、基準時刻からの経過時間であると、なお一層好適である。
上記の構成によれば、上述した4つの情報を同期させて確認することが、より容易になる。
【0012】
また、上記の監視用システムは、撮影機器及び録画機器を制御する制御装置をさらに備えてもよい。この場合、制御装置は、杭施工の準備中又は杭施工中に、上記の場所にて取得可能なトリガー情報を取得し、トリガー情報の取得を契機として、撮影機器による画面の撮影、及び録画機器による様子の録画を開始させると、より一段と好適である。
上記の構成によれば、杭施工の様子の録画、及び表示器の画面の撮影を同じタイミングで開始することができる。これにより、表示器に表示された管理項目についての数値、及び、杭施工の様子の録画映像を同期させて確認することができる。
【0013】
また、上記の監視用システムにおいて、可視化情報は、数値の変化を表すグラフを含んでもよい。
上記の構成によれば、可視化情報としてのグラフを表示することにより、管理項目に関する数値の、杭施工中における変化(推移)を確認することができる。
【0014】
また、上記の監視用システムにおいて、画面には、杭施工中、複数の管理項目についての数値が表示されてもよい。この場合、解析装置は、認識処理において、杭施工中に画面に表示される情報のうち、複数の管理項目のそれぞれについて数値を管理項目毎に認識し、解析装置は、表示処理において、管理項目毎に認識された数値のうち、選定された管理項目に関する数値に基づく可視化情報を監視用表示器に表示させると、好適である。
上記の構成によれば、杭施工の監視をより簡便に行うことができる。
【0015】
また、上記の監視用システムにおいて、撮影機器及び解析装置が、同一の情報端末に搭載されてもよい。
上記の構成によれば、監視用システムの構成がより簡素化する。
【0016】
また、上記の監視用システムにおいて、表示器は、杭施工に用いられる杭打機の操縦席の前に設置され、杭施工中、管理項目に関して計測器により得られた計測値を画面に表示してもよい。
上記の構成によれば、杭打機の操縦席の前に設置された表示器の画面に表示される管理項目の計測値を、杭打機から離れた場所にて確認することができる。
【0017】
また、上記の監視用システムにおいて、録画機器は、杭施工中、杭の埋設箇所、及び杭施工に用いられる杭打機が録画機器の録画範囲内に入っている状態で様子を録画してもよい。
上記の構成によれば、杭施工の様子を、その全体像が分かるように録画することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、杭施工の状況を適切に監視するための監視用システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一つの実施形態に係る監視用システムの構成を示す図である。
図2】杭施工が行われる場所に設置される表示器の画面例を示す図である。
図3】監視用表示器の画面例を示す図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る情報端末のハードウェア構成を示す図である。
図5】記憶装置に記憶される情報についての説明図である。
図6】杭施工の状況監視についての流れを示す図である。
図7】本発明の変形例に係る監視用システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書に記載する「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置の組み合わせも含まれることとする。
また、本明細書における「同時」及び「リアルタイム」という概念には、完全な同時及びリアルタイムである場合が含まれるとともに、映像及び音声を監視する際に一般的に許容される程度の遅延が生じるケースも含まれることとする。
【0021】
また、以降の説明では、住宅をはじめとする建物の建設工事を具体例とし、その杭施工について説明する。ただし、本発明は、建物以外の構造物の建設工事において行われる杭施工に対しても適用可能である。
【0022】
<<本発明の一つの実施形態に係る監視用システムの概要について>>
本発明の一つの実施形態に係る監視用システム(以下、監視用システムS)について、その用途及び概略構成等を説明する。
監視用システムSは、杭の埋設工事、すなわち杭施工の状況を監視する目的で利用される。より詳しく説明すると、監視用システムSは、杭施工が行われる場所である施工現場から離れた遠隔地において、杭施工の状況をリアルタイムに監視するために利用される。監視用システムSにより、例えば、互いに離れた複数の施工現場で同時期に実施される複数の杭施工のそれぞれについて、その施工状況を同時に監視することができる。
【0023】
施工現場における杭施工について説明すると、図1に示す杭打機10により、1つ以上の杭1(具体的には、例えば基礎杭)を地面に所定の深さまで埋設する。杭1の埋設箇所、及び、その箇所に埋設される杭1の種類や寸法等は、予め決められており、例えば、杭施工が開始される前段階で確認される。具体的に説明すると、杭施工に用いられる杭1には、識別番号又は二次元バーコードのような識別符号等からなる杭識別情報が割り当てられており、杭施工において、各杭1は、各杭1に割り当てられた杭識別情報と対応する埋設箇所に埋設される。
【0024】
杭打機10には、図1に示すように、コンピュータからなる管理装置12が搭載されている。管理装置12は、杭施工中、杭打機10の各部に取り付けられた計測器としての各種センサ30の計測によって得られた管理値の計測データを随時取得する。また、図1に示すように、杭打機10の操縦席の前には、ディスプレイからなる表示器14が配置されている。管理装置12は、杭施工中、取得した計測データに基づく数値情報、詳しくは管理値の現在値を表示器14の画面に表示する。このとき、表示器14の画面には、施工対象である杭1の杭識別情報(具体的には、杭ナンバー等)が併せて表示される。これにより、杭打機10の操縦者は、杭施工中、表示器14の画面を見て、埋設中の杭1を特定し、画面に表示された管理値から、杭施工の状況、具体的には杭施工の進捗度合いを確認することができる。
【0025】
ここで、管理値とは、杭施工の状況に関する管理項目についての数値であり、詳しくは、管理項目に関してセンサ30(計測器)により得られる計測値のことである。また、管理項目としては、例えば、以下の項目(1)~(5)等が挙げられる。
(1)現時点で杭1が埋設されている深度(掘削深度)
(2)杭1が回転しながら埋設されていく鋼管杭である場合には、回転数、及び施工負荷としての回転トルク
(3)杭1の掘進速度(フィード速度)
(4)セメントミルクを用いる場合には、回転数、積算回転数、及びセメントミルクの積算流量(吐出量)
(5)杭打機10が備えるオーガの引上げ速度等
【0026】
また、本実施形態では、図2に示すように、杭施工中、複数の管理値が表示器14の画面に表示される。表示器14の画面において、どの管理値がどのようなレイアウトにて表示されるかは、杭打機10の製造メーカ、製造年、型式、及び管理装置12内に実装されたプログラムのバージョン等に応じて変わる場合がある。換言すると、表示器14の画面に表示される管理値の内容及び表示位置については、杭打機10の種類等に応じて決定される。
【0027】
監視用システムSでは、図3に示すように、表示器14に表示された複数の管理項目のうち、少なくとも一つの管理値が選定され、選定された管理値に基づく可視化情報が、表示器14とは異なる監視用表示器16の画面にリアルタイムで表示される。具体的には、表示器14に表示された複数の管理値のうち、2以上の管理値に基づいて、それぞれの管理値の現在値、及び、その管理値の変化を示すグラフが監視用表示器16に表示される。2以上の管理値としては、杭施工上で特に重要な管理項目、具体的には、深度及び回転トルクの管理値を少なくとも含むとよい。
【0028】
監視用表示器16は、図1に示すように、杭施工の施工現場から離れた遠隔地に設置されたモニタである。また、監視用表示器16の画面には、上述の可視化情報(すなわち、管理値の現在値及びグラフ)とともに、施工対象である杭1の杭識別情報が併せて表示される。これにより、監視者は、杭施工中に監視用表示器16の画面を見ることで、遠隔地に居ながら、どの杭1が埋設中であるかを確認し、また、その施工状況をリアルタイムで監視することができる。この結果、施工現場での立会いが不要となり、監視業務の効率が向上する。
【0029】
なお、管理値の現在値及びグラフが表示される管理項目(例えば、回転トルク)については、その管理値が正常又は異常であるかを判定してもよく、その場合には、図3に示すように、その判定結果が可視化情報として監視用表示器16に表示されてもよい。
【0030】
また、施工中には、表示器14の画面が撮影されるとともに、施工現場における杭施工の様子が録画される。そして、図3に示すように、杭施工中の監視用表示器16には、杭施工の様子の録画映像(詳しくは、リアルタイム映像)と、表示器14の画面の撮影画像(詳しくは、ライブビュー画像)と、上述の可視化情報とが同一画面に表示される。これにより、監視者は、施工現場における杭施工の状況を、より細かく監視することができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、杭施工中の音が録音され、録音された音は、杭施工中、リアルタイムで再生され、その再生音が、監視用表示器16に搭載されたスピーカから出力される。録音される杭施工中の音には、杭施工に従事する作業員が話す音声、及び、杭施工中に杭打機10及びその周辺で発生する作業音や機器の作動音等が含まれる。監視者は、監視用表示器16に表示された可視化情報及び杭施工の様子の録画映像を、スピーカから出力される杭施工中の音とともに視聴することで、杭施工の状況をより一層細かく監視することができる。
【0032】
さらにまた、本実施形態では、可視化情報の生成に用いられた管理値、杭施工の様子の録画映像、表示器14の画面の撮影画像、及び、杭施工中に録音された音の情報を後述の記憶装置20に記憶する。これら4つの情報を記憶することで、杭施工が正常に行われたこと、あるいは杭施工中に異常が発生したことについて、証拠(エビデンス)を残しておくことができる。また、上記4つの情報のそれぞれは、同じタイミングで取得された情報同士が互いに同期するように記憶される。この場合には、記憶された上記4つの情報について、証拠(エビデンス)としての価値が向上する。
【0033】
なお、記憶装置20に記憶された上記4つの情報は、外部の装置によって読み出すことが可能である。そして、読み出された上記4つの情報は、同じタイミングで取得された情報同士を同期させながら表示又は再生される。これにより、4つの情報のそれぞれを、当該4つの情報のうちの残りの情報と照合することができ、この結果、それぞれの情報の証拠能力が担保される。
【0034】
<<本実施形態に係る監視用システムの構成例>>
次に、監視用システムSの構成例について説明する。
監視用システムSは、図1に示すように、杭打機10の管理装置12、監視用表示器16、録画機器としてWebカメラ18、記憶装置20、及び情報端末22によって構成される。これらの機器は、通信ネットワークNを介して互いに通信可能に接続されている。
【0035】
管理装置12は、杭施工中、杭打機10の各部に取り付けられた各種センサ30から計測データを取得し、杭打機10の操縦席の前に配置された表示器14の画面に、計測データが示す管理値(すなわち、センサ30による管理項目の計測値)を表示する。杭施工中の画面には、図2に示すように、複数の管理値と、施工対象(埋設中)の杭1の杭識別情報とが表示される。
なお、センサ30の中には、GPS(Global Positioning System)の受信器が含まれており、管理装置12は、この受信器が受信する信号に基づいて、杭打機10の位置情報、詳しくは、埋設中の杭の杭芯位置を特定することができる。
【0036】
監視用表示器16は、施工現場から離れた遠隔地に設置されており、受信器を有し、且つブラウジング機能を備える。監視用表示器16は、受信器が受信したデータをブラウジング機能によって展開することにより、当該データが示す画像及び映像を表示する。そして、監視用表示器16は、杭施工中、情報端末22から送信される表示データに基づく画像及び映像を表示する。具体的に説明すると、監視用表示器16には、表示器14に表示された管理値に基づく可視化情報、杭施工の様子の録画映像、及び表示器14の画面の撮影画像が表示される。また、監視用表示器16にはスピーカが搭載されており、スピーカからは、情報端末22から送信される音声データに基づいて、杭施工中に施工現場で録音された音が出力される。
なお、遠隔地に設置される監視用表示器16の台数は、1台でもよく、あるいは2台以上でもよい。また、監視用表示器16が2台以上用いられる場合、それぞれの監視用表示器16は、互いに離れた場所に設置されてもよい。
【0037】
Webカメラ18は、杭施工の現場において所定位置に固定され、杭施工中、施工現場の全景映像を録画する。全景映像とは、少なくとも杭1の埋設箇所、及び杭打機10を含む映像である。つまり、Webカメラ18は、杭の埋設箇所、及び杭打機10がWebカメラ18の録画範囲(画角)内に入っている状態で、杭施工の様子を録画する。Webカメラ18により録画された映像(以下、録画映像ともいう)は、情報端末22に向けて送信される。
【0038】
また、本実施形態に係るWebカメラ18には、収音用マイクが内蔵されており、このマイクにより、杭施工中に施工現場で発生する音が収音され、収音された音がWebカメラ18によって録音される。つまり、本実施形態において、マイク付きのWebカメラ18は、録音機器としての機能を有する。録音された音の情報(以下、音情報)は、録画映像とともに情報端末22に向けて送信され、詳しくは、録画映像に組み込まれた状態で送信される。
【0039】
記憶装置20は、杭施工中に得られる各種の情報を記憶する機器である。記憶装置20は、例えば、データベースサーバやオンラインストレージ等によって構成されてもよい。また、記憶装置20は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等のストレージであってもよい。この場合、ストレージは、例えば情報端末22に内蔵されてもよく、情報端末22に外付け形式で取り付けられてもよく、又はNAS(Network Attached Storage)等でもよい。あるいは、記憶装置20をなすストレージが、監視用表示器16が設置された遠隔地に設けられているコンピュータ(不図示)に内蔵又は外付けされてもよい。
【0040】
情報端末22は、杭施工の現場にて用いられ、例えば、杭施工の作業員又は現場監督者等によって携帯され、利用に際して、杭打機10の操縦席付近にセット(配置)される。情報端末22は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ラップトップ型のパソコン、又はウェアラブル端末等によって構成される。情報端末22は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)等からなるプロセッサ22a、メモリ22b、通信用インタフェース22c、タッチパネル等からなる入力機器22d、及びディスプレイ等からなる出力機器22eを備える。入力機器22dには、撮影用のカメラ22f、及び収音用のマイク22gが含まれる。また、情報端末22には、OS(Operating System)用のプログラムと、施工状況監視用のアプリケーションプログラム(以下、アプリ)がインストールされている。
【0041】
情報端末22は、杭施工中、カメラ22fを制御して表示器14の画面を撮影させ、当該画面の撮影画像を所定の間隔(フレームレート)で取得する。つまり、情報端末22のカメラ22fは、本実施形態において撮影機器に該当し、情報端末22は、杭施工中、カメラ22fの撮影画角内に表示器14の画面全体が収まるように配置される。そして、カメラ22fが画角内の画像を撮影することにより、情報端末22は、カメラ22fによって撮影された表示器14の画面の画像(以下、撮影画像ともいう)を取得する。
なお、撮影画像のフレームレートについては、特に限定されず任意に設定することができるが、杭施工の状況を監視する上で適切な値に設定するのが好ましい。
【0042】
また、情報端末22は、施工中、Webカメラ18から送られてくる録音映像及び音情報を、通信ネットワークNを介して逐次取得(詳しくは、受信)する。また、情報端末22は、杭施工中、マイク22gを制御して、施工現場にて発生する音を収音し、収音した音を録音し、その音情報を所定の間隔で取得する。つまり、本実施形態において、情報端末22は、録音機器としての機能を有し、録音された施工現場の音の情報(音情報)を取得する。
なお、音情報の取得間隔は、特に限定されず任意に設定することができるが、施工の状況を監視する上で適切な値に設定するのが好ましく、例えば、撮影画像のフレームレートと同じ取得間隔に設定してもよい。
【0043】
そして、情報端末22は、取得した撮影画像を解析して、杭施工の状況を監視するための一連の処理を実行する。つまり、本実施形態において、情報端末22は、解析装置として機能する。換言すると、本実施形態では、表示器14の画面を撮影する撮影機器と、撮影画像を解析する解析装置とが同一の情報端末22に搭載されている。
【0044】
情報端末22は、杭施工中、取得処理と、認識処理と、選定処理と、記憶処理と、表示処理とを繰り返し実行する。これらの処理は、情報端末22のプロセッサ22aが上記のアプリを読み取って実行することで実現される。以下、それぞれの処理について説明する。
【0045】
(取得処理)
取得処理では、情報端末22のカメラ22fにより撮影された表示器14の画面の画像(撮影画像)と、Webカメラ18により録画された杭施工中の様子の映像(録画映像)とを取得する。また、本実施形態では、情報端末22のマイク22gにより収音された音を録音するとともに、Webカメラ18側で録音された音の情報(音情報)を取得する。
【0046】
また、本実施形態では、情報端末22が、取得処理の開始に際して、基準時刻を特定するための基準時刻情報を取得する。具体的に説明すると、杭施工の現場では、杭施工の開始時に、号令音(例えば、チャイム又は作業員の掛け声等)が発生する。情報端末22は、その号令音をマイク22gによって検出し、号令音を検出した時刻を基準時刻として特定し、特定された時刻を示す情報を基準時刻情報として取得する。そして、基準時刻情報の取得をトリガーとして、取得処理が一定の間隔で実行され、これにより、基準時間からの経過時間が所定時間ずつ増える度に、撮影画像、録画映像及び音情報が取得される。
【0047】
(認識処理)
認識処理では、取得された撮影画像を解析して、杭施工中に表示器14の画面に表示された情報のうち、杭施工の状況に関する複数の管理項目のそれぞれについての管理値(数値)を管理項目毎に認識する。具体的に説明すると、杭施工中、表示器14の画面には複数の管理値が表示され、それぞれの管理値の表示位置と隣り合う位置には、管理項目の内容を表記する文字情報が表示される。認識処理では、画像中の文字及び数値を認識する画像解析手法を撮影画像に対して適用し、管理値及び管理項目の文字情報を、表示器14の画面に表示された管理値の種類数だけ認識する。さらに、認識処理では、表示器14の画面に管理値とともに表示された杭識別情報を認識する。
なお、文字及び数値を認識する手法としては、光学文字認識(Optical Character Recognition:OCR)等のような公知の文字認識手法が利用可能である。
【0048】
(選定処理)
選定処理では、認識処理にて管理項目毎に認識された管理値のうち、所定の管理項目の管理値を選定する。所定の管理項目とは、予め決められた管理項目であり、具体的には、杭施工の状況を監視する上で重要な情報、例えば、深度及び回転トルク等である。所定の管理項目は、デフォルトで設定されてもよく、あるいは、監視者によって指定又は変更することができてもよい。また、選定処理にて選定される管理項目の数は、特に限定されず、少なくとも1つ以上であればよい。
【0049】
また、選定処理は、認識処理にて認識された管理項目の文字情報に基づいて行われるが、認識精度の問題等のために、管理項目の文字情報が誤認識され、それが原因となって選定処理において所定の管理項目以外の管理項目が誤って選定される場合があり得る。そのため、監視者に対して選定結果を通知し、選定された管理項目に誤りがある場合には、監視者が管理項目を修正するために行う操作(修正操作)を受け付け、選定処理を再度実行して、当該修正操作に基づいて管理項目を選定し直してもよい。
【0050】
(記憶処理)
記憶処理では、認識処理にて認識された管理値を、その管理値が表す管理項目(つまり、表示器14の画面において管理値の隣に表示された管理項目)と対応付けて記憶装置20に記憶する。ここで、「管理値を管理項目と対応付けて記憶する」とは、図5に示すように、管理値を、その管理項目についての数値(詳しくは、現在値及び計測値)として記憶することである。
【0051】
また、本実施形態の記憶処理では、管理値を、認識処理にて当該管理値とともに認識された杭識別情報と関連付けて記憶装置20に記憶する。ここで、「管理値を杭識別情報と関連付けて記憶する」とは、管理値を、杭識別情報によって識別される杭1の施工状況に関する数値として記憶することである。
【0052】
また、本実施形態の記憶処理では、認識された管理値とともに、取得処理において取得された録画映像、撮影画像、及び、音情報を記憶する。この際、これら4つの情報は、当該4つの情報を同期させるための同期情報と関連付けて記憶装置20に記憶される。ここで、同期情報とは、基準時刻からの経過時間、すなわち、杭施工の開始時からの経過時間である。これにより、杭施工中、同じ時刻に取得された録画映像、撮影画像、及び音情報、並びに、上記の撮影画像の解析によって認識された管理値は、図5に示すように、同期情報を介して互いに関連付けられた状態で記憶装置20に記憶される。
なお、同期情報は、基準時刻からの経過時間に限定されず、例えば、現在時刻でもよい。また、記憶処理において記憶される管理値は、認識処理にて管理項目毎に認識された管理値すべてであってもよく、あるいは、選定処理にて選定された管理項目についての管理値のみでもよい。
【0053】
なお、記憶処理にて記憶装置20に記憶された管理値、録画映像、撮影画像及び音情報は、外部の装置によって読み出すことが可能である。そして、読み出された4つの情報については、同じタイミングで取得された情報同士を同期させながら表示又は再生することが可能である。
【0054】
(表示処理)
表示処理では、認識処理にて認識された管理値に基づく可視化情報、具体的には、管理値の現在値を示す数値情報、及び管理値の変化を表すグラフを監視用表示器16に表示させる。本実施形態において、可視化情報は、選定処理にて選定された管理項目についての管理値に基づいて生成され、図3に示すケースでは、深度及び回転トルクの現在値に基づいて生成される。なお、可視化情報は、選定処理にて選定された管理項目について生成される場合に限定されず、認識処理にて管理項目毎に認識された管理値のそれぞれに基づき、すべての管理項目について可視化情報が管理項目毎に生成されてもよい。
【0055】
また、本実施形態の表示処理では、図3に示すように、可視化情報及び録画映像の両方を同時に監視用表示器16に表示させる。さらに、本実施形態の表示処理では、図3に示すように、リアルタイムの録画映像及び撮影画像と、当該撮影画像を解析して得られる可視化情報とを同一画面に表示させる。さらにまた、本実施形態の表示処理では、録画映像、撮影画像及び可視化情報を表示させるとともに、杭施工中の音情報、すなわち、施工現場で録音されたリアルタイムの音を監視用表示器16のスピーカから出力する。
【0056】
表示処理の具体的な流れについて説明すると、表示処理では、録画映像、撮影画像及び可視化情報を表示させる表示データが情報端末22によって生成される。この表示データには、杭施工中の音情報を出力させる音出力データが組み込まれている。そして、表示データは、情報端末22から送信され、通信ネットワークNを経由して監視用表示器16に受信される。監視用表示器16では、受信された表示データが展開され、その結果、図3に示す監視用ウィンドウWが描画される。
【0057】
監視用ウィンドウWには、録画映像、撮影画像及び可視化情報がリアルタイムに表示される。図3に示す画面例では、領域w1に録画映像が表示され、領域w2に撮影画像が表示され、領域w3に可視化情報としての管理値の現在値が表示され、領域w4に可視化情報としてのグラフが表示されている。また、監視用ウィンドウW中の領域w5には、管理値の現在値が正常であるか否かについての判定結果が表示される。また、監視用ウィンドウWの領域w3には、認識処理にて認識された杭識別情報、すなわち、現時点で施工対象として埋設されている杭1の杭識別情報が併せて表示される。また、監視用ウィンドウWには、図3に示すように、上述した基準時刻からの経過時間がタイムバー形式で表示される。
【0058】
他方、監視用ウィンドウWにて録画映像、撮影画像及び可視化情報が表示される間、表示データ中に組み込まれた音出力データが展開され、その結果、杭施工中の音情報が監視用表示器16のスピーカから出力される。
【0059】
<<本実施形態に係る監視フローについて>>
次に、監視用システムSを用いて杭施工の状況を監視するプロセスの流れ(以下、監視フロー)について、図6を参照しながら説明する。
監視フローの開始前には、杭施工の施工現場にて杭施工の準備が行われる。この準備において、情報端末22を杭打機10の操縦席付近に設置し、具体的には、情報端末22のカメラ22fの画角内に表示器14の画面全体が収まるように情報端末22を設置する。その後、施工現場の作業員が、情報端末22を操作してカメラ22fを起動させ、カメラ22fによる撮影を開始させる。また、撮影開始に連動する形で、情報端末22による施工現場での音の録音が開始される。
【0060】
また、杭施工の準備では、Webカメラ18を施工現場の所定箇所に設置し、具体的には、杭の埋設箇所、及び杭打機10がWebカメラ18の録画範囲(画角)内に入るようにWebカメラ18を設置する。その後、施工現場の作業員が、Webカメラ18による映像の録画を開始させる。また、録画開始に連動する形で、Webカメラ18による施工現場での音の録音が開始される。
【0061】
また、杭施工の準備では、杭施工に用いられる杭1に付与された杭識別情報を不図示のリーダによって読み取り、読み取った杭識別情報に基づいて施工現場の場所を特定する。一方、施工現場に配置された杭打機10のGPS機能により施工現場の位置、特に杭1の杭芯位置を特定する。そして、杭識別情報に基づいて特定される施工現場の場所と、杭打機10のGPS機能により特定される施工現場の位置とを照合し、これらが一致することを条件として監視フローが開始される。
【0062】
開始フローが開始されると、杭打機10の管理装置12が起動して、各センサ30から計測データを取得し、当該計測データが示す管理値の現在値(計測値)を表示器14の画面に表示させる。
【0063】
また、監視フローの開始に際して、杭施工開始の号令音が発せられ、情報端末22が、その号令音をマイク22gによって検出し、号令音を検出した時刻を基準時刻とし、その時刻を示す基準時刻情報を取得する(S001)。これを契機として、情報端末22は、前述の取得処理を一定の間隔で繰り返し実行する(S002)。これにより、表示器14の画面を撮影した画像(撮影画像)、杭施工中の様子を録画した映像(録画映像)、及び、杭施工中に録音された音の情報(音情報)が、杭施工中、一定時間毎に取得される。
【0064】
また、情報端末22は、上述した認識処理及び選定処理を実行する(S003、S004)。これにより、撮影画像に写る表示器14の画面中、複数の管理項目のそれぞれの数値(数値)が管理項目毎に認識されるとともに、同画面に表示された杭識別情報が認識される。また、選定処理において、認識処理にて管理項目毎に認識された管理値のうち、所定の管理項目、例えば深度及び回転トルクの管理値が選定される。
【0065】
その後、情報端末22は、記憶処理及び表示処理を実行する(S005、S006)。なお、図6に示す流れでは、記憶処理の後に表示処理を実行することになっているが、これに限定されず、表示処理の後に記憶処理を実行してもよいし、記憶処理及び表示処理を併行して実行してもよい。
【0066】
記憶処理では、認識処理にて認識された管理値を、その管理項目と対応付け、且つ、認識処理にて当該管理値とともに認識された杭識別情報と関連付けて記憶装置20に記憶する。また、本実施形態において、記憶処理では、認識された管理値とともに、取得処理にて取得された録画映像、撮影画像、及び、音情報を記憶装置20に記憶する。より詳しく説明すると、記憶処理では、管理値、録画映像、撮影画像、及び音情報の4つを、当該4つの情報を同期させるための同期情報と関連付けて記憶装置20に記憶する。これにより、杭施工の状況についての証拠(エビデンス)、詳しくは、杭識別番号が認識された杭1が確実に埋設されたことを証明する情報を残すことができる。
【0067】
表示処理では、録画映像、撮影画像及び可視化情報を表示させる表示データを生成し、通信ネットワークN経由で監視用表示器16に向けて送信する。この表示データには、杭施工中の音情報を出力させる音出力データが組み込まれている。表示データを受信した監視用表示器16では、図3に示す監視用ウィンドウWが描画され、監視用ウィンドウWには、録画映像、撮影画像及び可視化情報が、認識処理にて認識された杭識別情報とともに表示される。監視用表示器16が設置された場所に居る監視者は、監視用ウィンドウWに表示された各種の情報を見て、杭施工の状況を確認することができる。
【0068】
具体的に説明すると、監視者は、可視化情報を見ることで、選定処理にて選定された管理項目(詳しくは、深度及び回転トルク)についての管理値が正常な数値であるか否かを確認することができる。ここで、可視化情報は、表示器14の画面の撮影画像を解析することで認識された管理値に基づく情報であり、杭打機10の管理装置12が取得した情報そのものではない。そのため、杭打機10の製造メーカ等に応じて表示器14の画面に表示される情報や画面レイアウトが変わったとしても、深度及び回転トルク等の重要な管理項目については、杭打機10(詳しくは、管理装置12)の仕様に拘わらず、管理値を適切に確認することができる。この結果、表示器14の画面に表示される管理値の情報を、有効に活用することができる。
【0069】
また、可視化情報は、表示器14の画面に現在表示されている管理値、すなわち管理値の現在値に基づく情報であるため、監視者は、監視用表示器16を通じて、杭施工の状況をリアルタイムで把握することができる。これにより、施工現場で杭打機10内の表示器14を監視する必要がなく、安全に且つ効率よく杭施工の状況を監視することができる。
【0070】
また、監視者は、施工中の様子の映像(録画映像)をリアルタイムで確認することができる。これにより、例えば、可視化情報が示す管理値が異常値である場合に、施工現場ではどのような状況になっているか、また、管理値が異常である原因の事象等を、録画映像から特定することができる。これにより、杭打機10に不具合が生じた場合に、その不具合を早期に発見し、不具合の内容を確認して早急な対策を講じることができる。
また、本実施形態では、録画映像が全景映像であるため、監視者は、施工現場の様子、特に、杭の埋設箇所及びその周辺の状況を容易に確認することができる。
【0071】
また、表示処理では、杭施工中の音情報、つまり、施工現場で録音されたリアルタイムの音を監視用表示器16のスピーカから出力する。これにより、監視用ウィンドウWに表示された可視化情報、録画映像及び撮影画像とともに、スピーカから出力される杭施工中の音を視聴することができる。この結果、監視者は、杭施工の状況をより細かく監視することができる。
【0072】
上述した取得処理、認識処理、記憶処理及び表示処理は、施工対象である杭1の埋設が完了するまで繰り返し実行される(S007)。そして、上述した一連のステップS001~S007は、施工現場にて埋設される複数の杭のそれぞれの杭施工について実行され(S008)、複数の杭すべての埋設が完了した時点で監視フローが終了する。
【0073】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の監視用システムに関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。また、上述した表示器14及び監視用表示器16の画面例は、あくまでも一例であり、画面の仕様(具体的には、画面レイアウト、表示する情報の内容等)については、ユーザの操作性や使い易さ等を考慮して自由に設計してもよい。
【0074】
上記の実施形態では、記憶処理において、管理値、録画映像、撮影画像、及び音情報の4つを、当該4つの情報を同期させるための同期情報と関連付けて記憶装置20に記憶することとした。また、上記の実施形態では、基準時刻情報を取得し、基準時刻からの経過時間を同期情報として用いることとした。ただし、これに限定されず、他の実施形態が考えられる。
本発明の他の実施形態について説明すると、例えば、図7に示すように、監視用システムSには、制御装置24が備えられてもよい。制御装置24は、撮影機器であるカメラ22fを含む情報端末22、及び録画機器であるWebカメラ18を制御する。制御装置24は、杭施工の準備中又は杭施工中にトリガー情報を取得すると、これを契機として情報端末22及びWebカメラ18を制御して、表示器14の画面の撮影、杭施工中の様子の録画、及び杭施工中の音の録音を開始させる。この構成によれば、録画映像、撮影画像、及び音情報の取得を同時に開始することができ、この結果、同期情報を用いなくとも上記4つの情報を同期させることができる。
なお、上記のトリガー情報は、杭施工の現場にて取得(検出)可能な情報であり、例えば、上述した号令音、杭施工開始時に点滅するランプの画像、あるいは、杭施工開始時に行われる作業員の動作の映像等をトリガー情報として取得してもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、監視用表示器16が、杭施工の現場とは異なる遠隔地に設置されていることとしたが、これに限定されない。例えば、施工現場ではあるが、杭打機10から離れた場所、具体的には、杭打機10に搭載された表示器14を確認できない場所に監視用表示器16が設置されてもよい。この場合には、施工現場にて杭打機10から離れた場所にて、表示器14の画面に表示されている管理値を確認することができる。ただし、杭施工の現場とは異なる遠隔地に監視用表示器16が設置されている場合には、本発明の監視用システムをより有効に利用することができる。具体的には、複数の施工現場にて同時期に行われる杭施工の状況を、それぞれ、リアルタイムで監視することができるため、監視業務の効率が向上する。
【0076】
また、上記の実施形態では、録画機器としてのWebカメラ18、及び、撮影機器としてのカメラ22fを搭載した情報端末22の両方が、杭施工中の音を録音することとした。ただし、これに限定されず、Webカメラ18又は情報端末22のいずれか一方が、杭施工中の音を録音してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、撮影機器と解析装置が、同一の情報端末22に搭載されていることとしたが、これに限定されるものではない。撮影機器と解析装置が、互いに別の装置によって構成されてもよい。例えば、撮影機器が、通信機能を備えるデジタルカメラ又はスマートフォン等に内蔵されたカメラでもよい。一方、解析装置は、一般的なコンピュータ(具体的には、クライアント端末又はサーバコンピュータ等)によって構成され、撮影機器から分離されたものでもよい。この場合、撮影機器としてのカメラは、杭施工中、杭打機10の操縦席付近に設置され、解析装置をなすコンピュータは、上記のカメラにより撮影された画像のデータを、上記のカメラと通信することで取得するとよい。ただし、監視用システムの構成がより簡素化(シンプル)になる点では、上記の実施形態の方が好ましい。
【符号の説明】
【0078】
1 杭
10 杭打機
12 管理装置
14 表示器
16 監視用表示器
18 Webカメラ
20 記憶装置
22 情報端末
22a プロセッサ
22b メモリ
22c 通信用インタフェース
22d 入力機器
22e 出力機器
22f カメラ
22g マイク
24 制御装置
30 センサ
N 通信用ネットワーク
S 監視用システム
W 監視用ウィンドウ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7