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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000808
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6474 20110101AFI20231226BHJP
   H01R 12/73 20110101ALI20231226BHJP
   H01R 12/91 20110101ALN20231226BHJP
【FI】
H01R13/6474
H01R12/73
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099729
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 能康
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA11
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB05
5E021FC23
5E223AB26
5E223AB60
5E223BA01
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CD01
5E223CD02
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB09
5E223DB11
5E223DB23
5E223EA03
(57)【要約】
【課題】同形状の複数のコネクタ端子を用いながらも高速・高周波伝送にかかる複数の伝送規格に適合できるようにして、利便性や汎用性を高めたコネクタおよびコネクタ組立体を提供する。
【解決手段】ハウジング14内に複数のコネクタ端子11、12を幅方向所定間隔に保持させ、複数のコネクタ端子11、12を介して複数の伝送路L1、L2を形成するコネクタであって、複数のコネクタ端子11、12が、所定の伝送路規格のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群p11~p15、p21~p25を構成するとともに、複数の伝送路のうち特定機能の端子群p11、p12、p21、p22で形成される第1の伝送路L1aと他機能の端子群p13~p15、p23~p25で形成される第2の伝送路L1bまたはL1cとが互いに異なるインピーダンスに調整されていることで、異なる複数の伝送路規格に適合可能になっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に複数のコネクタ端子を幅方向所定間隔に保持させ、該複数のコネクタ端子を介して複数の伝送路を形成するコネクタであって、
前記複数のコネクタ端子が、所定の伝送路規格のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群を構成するとともに、前記複数の伝送路のうち第1の伝送路と該第1の伝送路とは対応する端子群が異なる第2の伝送路とが互いに異なるインピーダンスに調整されていることで、異なる複数の伝送路規格に適合可能になっていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記複数組の端子群のうち特定機能の端子群が、他機能の端子群とは異なるインピーダンスに調整されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングが、前記特定機能の端子群を収容する特定の端子収容部と、前記他機能の端子群を収容する他の端子収容部とで、互いに異なる形状を有していることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングに、前記複数のコネクタ端子のうち一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が収納されていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
一方のハウジング内に複数の一方側のコネクタ端子を幅方向所定間隔に保持させたプラグコネクタと、他方のハウジング内に複数の他方側のコネクタ端子を幅方向所定間隔に保持させたレセプタクルコネクタと、を備え、前記プラグコネクタと前記レセプタクルコネクタとが凹凸嵌合するときに、前記複数の一方側のコネクタ端子と前記複数の他方側のコネクタ端子とが導通接触して複数の伝送路を形成するコネクタ組立体であって、
前記複数の一方側のコネクタ端子と前記複数の他方側のコネクタ端子とが、所定の伝送路規格のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群を構成するとともに、前記複数組の端子群のうち特定機能の端子群で形成される第1の伝送路と前記複数組の端子群のうち他機能の端子群で形成される第2の伝送路とが互いに異なるインピーダンスに調整されていることで、異なる複数の伝送路規格に適合可能になっていることを特徴とするコネクタ組立体。
【請求項6】
前記一方のハウジングまたは前記他方のハウジングが、前記特定機能の端子群を収容する特定の端子収容部と、前記他機能の端子群を収容する他の端子収容部とで、互いに異なる形状を有していることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ組立体。
【請求項7】
前記一方のハウジングまたは/および前記他方のハウジングに、前記複数の一方側のコネクタ端子または/および前記複数の他方側のコネクタ端子のうち前記特定機能の端子群を含む一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が収納されていることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ組立体。
【請求項8】
前記プラグコネクタが、それぞれに前記複数の一方側のコネクタ端子が並列配置されるとともに前記端子厚さ方向で相互に離間する複数の一方側の端子並列面を有し、
前記特定機能の端子群が、前記複数の一方側の端子並列面のいずれかである特定の端子並列面に配置されるとともに、
前記特定機能の端子群を含む一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が、前記一方のハウジング内の前記複数の一方側の端子並列面のうち前記端子厚さ方向に隣り合う一対の一方側の端子並列面の間であって、前記特定機能の端子群に近接する側に収納されていることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ組立体。
【請求項9】
前記レセプタクルコネクタが、それぞれに前記複数の他方側のコネクタ端子が並列配置されるとともに前記端子厚さ方向で前記一方側の端子並列面に対面する複数の他方側の端子並列面を有し、
前記特定機能の端子群が、前記レセプタクルコネクタの前記複数の他方側の端子並列面のいずれかに配置されるとともに、
前記特定機能の端子群を含む一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が、前記他方のハウジング内の前記複数の他方側の端子並列面に対し前記端子厚さ方向の外方側に収納されていることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ組立体。
【請求項10】
前記一方のハウジングまたは前記他方のハウジングが、前記特定機能の端子群を収容する特定の端子収容部と、前記他機能の端子群を収容する他の端子収容部とのうち少なくとも片方側に、前記特定機能の端子群または/および前記他機能の端子群のコネクタ端子に隣接する空隙部を有していることを特徴とする請求項6に記載のコネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタ組立体に関し、特に高速デジタル信号伝送等の高速・高周波伝送が可能なコネクタおよび雌雄のコネクタの組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、電子機器類で高速・高周波伝送、例えば数Gbps以上の高速デジタル信号伝送を行う場合に、その伝送路を接続するコネクタとして、基板間を接続する所謂BtoB(登録商標)コネクタ、あるいは、フレキシブル基板(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)を基板に接続するFPCコネクタ等が使用されている。
【0003】
このようなコネクタを有する伝送路では、安定した信号伝送を行うために、伝送路の出力側と入力側のインピーダンスを整合させるとともに、コネクタについても伝送規格で規定された差動インピーダンスの値、例えば、USB(登録商標)3.0や3.1での90Ω、SATA((登録商標);Serial ATA)3.0や2.0での100Ω、PCIe(PCI-Express(登録商標))3.0での85Ω等に揃えるのが一般的である。
【0004】
この種のコネクタおよびコネクタ組立体としては、例えば複数のコンタクトをインサート成形により一体化したモジュールを備え、そのモジュールが、複数のコンタクトの基板への接触部と接続対象物への接触部との間の本体部に、インサート成形によるモールド被覆部とモールドに覆われず接続対象物への接触部を変位可能に支持するばね部とを有しているものがある。このコネクタでは、複数のコンタクトの本体部のうちモールド被覆部の少なくとも一部の配列方向の幅が、モールドに覆われないばね部の配列方向の幅よりも小さくなっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この場合、隣り合う複数のコンタクト同士の間隔や、接続対象物への接触部の幅が安定確保されることに加え、基板への接触部側のモールド被覆部で比較的高く安定した比誘電率が得られることになり、所要のインピーダンス整合がなされ、高周波数領域での減衰量の増加が有効に抑制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-164884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような従来のコネクタおよびコネクタ組立体においては、モジュールの複数のコネクタ端子(コンタクト)の幅等を調整することでコネクタのインピーダンスを調整する構成であったため、一つのコネクタで一つの伝送規格を満足させるものとなっていた。しかしながら、高速・高周波伝送に対応する規格は複数あり、規格ごとに規定された異なるインピーダンスに整合することが求められるため、特定のインピーダンスに整合されたコネクタを用いて複数種の規格の電気回路の接続を行うと、充分な高速・高周波伝送ができなくなることが懸念されていた。
【0008】
すなわち、この種の伝送路規格で規定されるインピーダンスの整合値が、例えばUSB3.1では90Ω±10Ω、SATA3.0では100Ω±15%の範囲であると考えると、同形状のコネクタ端子でも、これら異なる規格の双方を許容範囲内で満足させ得る可能性があるが、そのような規格とPCIe3.0のように規定されるインピーダンス値が大きく相違してくる規格については、インピーダンスの不整合により異なる規格の双方を満足させることの困難さから、充分な高速伝送ができなくなるという未解決の課題があった。
【0009】
本発明は、かかる未解決の課題に鑑みてなされたもので、同形状の複数のコネクタ端子を用いながらも高速・高周波伝送にかかる複数の伝送規格に適合できるようにして、利便性や汎用性を高めたコネクタおよびコネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコネクタは、上記目的達成のため、(1)ハウジング内に複数のコネクタ端子を幅方向所定間隔に保持させ、該複数のコネクタ端子を介して複数の伝送路を形成するコネクタであって、前記複数のコネクタ端子が、所定の伝送路規格のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群を構成するとともに、前記複数の伝送路のうち第1の伝送路と該第1の伝送路とは対応する端子群が異なる第2の伝送路とが互いに異なるインピーダンスに調整されていることで、異なる複数の伝送路規格に適合可能になっていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明では、所定の一の伝送路規格のピン配置で互いに機能の異なる複数組の端子群が構成されるときのみならず、所定の他の伝送路規格のピン配置で互いに機能の異なる複数組の端子群が構成されるときにも、その伝送規格で規定されたインピーダンス整合値の許容範囲内となるように、コネクタ端子形状で特定されるインピーダンスに対して複数組の端子群のインピーダンスが端子群ごとに調整されている。すなわち、基準となるインピーダンス値が相違する複数の規格であっても、それらの基準となるインピーダンス値の相違に対し、端子形状により特定されるインピーダンス値を各規格に適合し得る方向に調整するように、端子群ごとの局所的なインピーダンス調整構造を採用することで、異なる複数の規格を満足させることが可能となる。なお、ここにいう第1、第2の伝送路は、複数の伝送路規格で要求される機能とピン配列を基に、要求される機能が相違する端子群ごとに異なるインピーダンスに調整させた伝送路とするのがよい。
【0012】
本発明の好ましい実施形態においては、(2)前記複数組の端子群のうち特定機能の端子群が、他機能の端子群とは異なるインピーダンスに調整されている構成とすることができる。この場合、特定機能の端子群で形成される第1の伝送路と他機能の端子群で形成される第2の伝送路とは、複数の伝送路規格で要求されるそれぞれの機能とピン配列を基に、端子群ごとに異なるインピーダンスに調整させた伝送路とすることができる。
【0013】
また、この場合、特定機能の端子群について、複数のうち一の伝送路規格で要求される第1の機能に適したインピーダンスが、複数のうち他の伝送路規格で要求される第2の機能に適したインピーダンスの許容範囲内にあり、他機能の端子群について、複数のうち一の伝送路規格で要求される第3の機能に適したインピーダンスが、複数のうち他の伝送路規格で要求される第4の機能に適したインピーダンスの許容範囲内にあるように、インピーダンスの調整方向および調整量を設定すれば、端子群で異なるインピーダンス調整によって複数の伝送路規格に適合させることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、(3)前記ハウジングが、前記特定機能の端子群を収容する特定の端子収容部と、前記他機能の端子群を収容する他の端子収容部とで、互いに異なる形状を有しているものであってもよい。この場合、端子収容部の形状に応じて端子の周囲の誘電率を調整でき、特定機能の端子群と他の端子群とでインピーダンスを相違させる調整が可能となる。なお、ここにいう端子収容部は、例えば端子挿入穴、コネクタ端子に近接する任意形状の空隙部、もしくはコネクタ端子の長さ方向の一部を絶縁被覆する被覆部であり、それらの組合せであってもい。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、(4)前記ハウジングに、前記複数のコネクタ端子のうち一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が収納されていてもよい。この場合、特定の一部の端子群に対して容量成分を付加することができ、他の端子群とインピーダンスを相違させる調整が容易に可能となる。なお、金属板は、グランド接続してもよく、それによっても特定の一部の端子群に対してインピーダンスを確実に調整可能となる。
【0016】
本発明のコネクタ組立体は、上記目的達成のため、(5)一方のハウジング内に複数の一方側のコネクタ端子を幅方向所定間隔に保持させたプラグコネクタと、他方のハウジング内に複数の他方側のコネクタ端子を幅方向所定間隔に保持させたレセプタクルコネクタと、を備え、前記プラグコネクタと前記レセプタクルコネクタとが凹凸嵌合するときに、前記複数の一方側のコネクタ端子と前記複数の他方側のコネクタ端子とが導通接触して複数の伝送路を形成するコネクタ組立体であって、前記複数の一方側のコネクタ端子と前記複数の他方側のコネクタ端子とが、所定の伝送路規格のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群を構成するとともに、前記複数組の端子群のうち特定機能の端子群で形成される第1の伝送路と前記複数組の端子群のうち他機能の端子群で形成される第2の伝送路とが互いに異なるインピーダンスに調整されていることで、異なる複数の伝送路規格に適合可能になっていることを特徴とする。
【0017】
この構成により、本発明では、プラグコネクタとレセプタクルコネクタの嵌合時に複数の一方側のコネクタ端子と複数の他方側のコネクタ端子とによって複数の伝送路が形成されるとき、それら複数の伝送路のうち第1の伝送路と第2の伝送路とが互いに異なるインピーダンスに調整されている。すなわち、複数の伝送路規格で要求される機能とピン配列を基に、端子形状により特定されるインピーダンスに対して要求される機能に対応する端子群ごとに局所的に適合方向へのインピーダンス調整を行うことで、所定の一の伝送路規格のピン配置で互いに機能の異なる複数の端子群が構成されるときにも、所定の他の伝送路規格のピン配置で互いに機能の異なる複数の端子群が構成されるときにも、伝送規格で規定されたインピーダンス整合値の許容範囲内に抑えることが容易化される。その結果、信号の反射によるノイズ等を有効に抑制できるようにインピーダンス整合がなされることになり、複数の伝送規格に適合可能で、利便性に優れた汎用性の高いコネクタを提供することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、(6)前記一方のハウジングまたは前記他方のハウジングが、前記特定機能の端子群を収容する特定の端子収容部と、前記他機能の端子群を収容する他の端子収容部とで、互いに異なる形状を有していてもよい。この場合、端子収容部の形状に応じて端子の周囲の誘電率を調整でき、特定機能の端子群と他の端子群とでインピーダンスの調整方向や調整量を相違させることが容易に可能となる。なお、ここにいう端子収容部とは、例えば端子挿入穴や端子圧入穴、インサート成形等によりハウジング中でコネクタ端子を貫通させている部分等であり、端子挿入穴に隣接する空隙部が形成されているもの、あるいはモジュール化された複数のコネクタ端子の周囲に誘電体による被覆部が形成されているものでもよい。
【0019】
本発明の好ましい実施形態においては、(7)前記一方のハウジングまたは/および前記他方のハウジングに、前記複数の一方側のコネクタ端子または/および前記複数の他方側のコネクタ端子のうち前記特定機能の端子群を含む一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が収納されている構成とすることができる。この場合、特定機能の端子群を含む一部の端子群に対して容量成分を付加することができ、他の端子群とインピーダンスを相違させる調整が容易に可能となる。金属板は、グランド接続してもよい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態においては、(8)前記プラグコネクタが、それぞれに前記複数の一方側のコネクタ端子が並列配置されるとともに前記端子厚さ方向で相互に離間する複数の一方側の端子並列面を有し、前記特定機能の端子群を含む一部の端子群が、前記複数の一方側の端子並列面のいずれかである特定の端子並列面に配置されるとともに、前記一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が、前記一方のハウジング内の前記複数の一方側の端子並列面のうち前記端子厚さ方向に隣り合う一対の一方側の端子並列面の間であって、前記特定機能の端子群に近接する側に収納されているものであってもよい。この場合、特定の端子並列面に特定機能の端子群を含む一部の端子群を配置し、その近傍でプラグ内に金属板を収納させることで、同端子形状を有する他機能の端子群に対して特定機能の端子群のインピーダンスを的確に低下させることができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においては、(9)前記レセプタクルコネクタが、それぞれに前記複数の他方側のコネクタ端子が並列配置されるとともに前記端子厚さ方向で前記一方側の端子並列面に対面する複数の他方側の端子並列面を有し、前記特定機能の端子群を含む一部の端子群が、前記レセプタクルコネクタの前記複数の他方側の端子並列面のいずれかに配置されるとともに、前記特定機能の端子群を含む一部の端子群に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板が、前記他方のハウジング内の前記複数の他方側の端子並列面に対し前記端子厚さ方向の外方側に収納されている構成とすることができる。この構成により、金属板の近傍の端子群のインピーダンスを有効に低下させることができ、端子群ごとのインピーダンスを相違させる調整が可能となる。また、金属板をグランド接続すれば、安定したインピーダンス調整ができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態においては、(10)前記一方のハウジングまたは前記他方のハウジングが、前記特定機能の端子群を収容する特定の端子収容部と、前記他機能の端子群を収容する他の端子収容部とのうち少なくとも片方側に、前記特定機能の端子群または/および前記他機能の端子群のコネクタ端子に隣接する空隙部を有している。この場合、空隙部を有するコネクタ収容部ではコネクタ端子の周囲の誘電率を低下させることができ、別部品を追加することなく特定機能の端子群と他の端子群のインピーダンスを相違させる調整が容易に可能となる。
【0023】
なお、本発明の好ましい実施形態において、前記空隙部は、前記特定機能の端子群または/および前記他機能の端子群の端子を挿入する端子挿入穴の一部を拡張する形状をなしているものであってもよい。この場合、複数の伝送路に対応するハウジングの複数の端子挿入穴の全てが共通する横断面形状部分を有し、かつ、一部の端子挿入穴が共通する横断面形状部分から外方に拡張された横断面形状部分を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、同形状の複数のコネクタ端子を用いながらも高速・高周波伝送にかかる複数の伝送規格に適合できるようにして、利便性や汎用性を高めたコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタ組立体の要部斜視断面図である。
図2】(a)は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ組立体の嵌合状態をレセプタクルコネクタ側から見たときの外観斜視図であり、(b)は、第1実施形態に係るコネクタ組立体の嵌合状態をプラグコネクタ側から見たときの外観斜視図であり、(c)は、第1実施形態に係るコネクタ組立体のレセプタクルコネクタをプラグコネクタ側から見たときの外観斜視図である。
図3】(a)は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの正面図であり、(b)は、第1実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの背面図である。
図4図3(b)におけるIV-IV矢視断面図である。
図5】(a)は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの可動ハウジングを背面側の下方から見たときの斜視図であり、(b)は、その背面側に開口する複数の端子挿入穴の開口面の部分拡大図である。
図6】(a)は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの可動ハウジングに圧入される上端子列側のコネクタ端子を正面側から見たときの斜視図であり、(b)は、第1実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの可動ハウジングに圧入される下端子列側のコネクタ端子を正面側から見たときの斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るコネクタ組立体の要部斜視断面図である。
図8】(a)は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ組立体の嵌合状態の外観斜視図で、図7とは異なる方向から見たものであり、(b)は、(a)と同方向から見た脱抜状態での外観斜視図である。
図9】(a)は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの背面図であり、(b)は、第2実施形態に係るコネクタにおけるプラグコネクタの平面図であり、(c)は、第2実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタの正面図である。
図10】(a)は、図9(a)におけるXA-XA矢視断面図であり、(b)は、第2実施形態に係るコネクタ組立体におけるプラグコネクタに収納された金属板の平面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るコネクタ組立体の要部側面断面図である。
図12】(a)は、本発明の第3実施形態に係るコネクタ組立体の嵌合状態をレセプタクルコネクタ側から見たときの外観斜視図であり、(b)は、第3実施形態に係るコネクタ組立体の嵌合状態をプラグコネクタ側から見たときの外観斜視図である。
図13】(a)は、第3実施形態に係るコネクタ組立体におけるレセプタクルコネクタの正面図であり、(b)は、第3実施形態に係るコネクタ組立体におけるレセプタクルコネクタの背面図であり、(c)は、図13(a)中のXIIIC-XIIIC矢視断面図である。
図14】(a)は、本発明の第4実施形態に係るコネクタの正面側から見たときの外観斜視図であり、(b)は、第4実施形態に係るコネクタの背面側から見たときの外観斜視図である。
図15】(a)は、本発明の第4実施形態に係るカードエッジ接続タイプのコネクタの背面図であり、(b)は、第4実施形態に係るコネクタの平面図であり、(c)は、第4実施形態に係るコネクタの正面図である。
図16】(a)は、本発明の第4実施形態に係るコネクタのカードエッジ差込状態を示す図15(a)のXVIA-XVIA矢視断面図であり、(b)は、図15(a)のXVIB-XVIB矢視断面図である。
図17】(a)は、本発明の第4実施形態に係るコネクタにおけるハウジングに挿入されるコネクタ端子を背面側から見たときの斜視図であり、(b)は、第4実施形態に係るコネクタにおけるハウジングに挿入されるコネクタ端子を正面側から見たときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1ないし図6は、本発明の第1実施形態に係る水平嵌合型(ライトアングル型)のコネクタ組立体を示している。
【0028】
まず、構成について説明する。
【0029】
図1ないし図3に示すように、本実施形態のコネクタ組立体1は、雌雄のコネクタであるプラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20を具備しており、これらプラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20を着脱可能に凹凸嵌合させることができる。プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20は、それぞれ端子幅方向に離間する上下複数列のプラグ側のコネクタ端子11、12(一方側のコネクタ端子)と上下複数列のレセプタクル側のコネクタ端子21、22(他方側のコネクタ端子)とを有しており、プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20が嵌合するとき、上下複数列のプラグ側のコネクタ端子11、12の先端側部分11a、12aと上下複数列のレセプタクル側のコネクタ端子21、22の先端側部分21a、22aとが、上下に隣接する同士で導通接触する。そして、この導通接触状態で、上列側のコネクタ端子11、21によって複数の第1端子列の伝送路L1が形成されるとともに、下列側のコネクタ端子12、22によって複数の第2端子列の伝送路L2が形成されるようになっている。
【0030】
プラグコネクタ10は、複数のプラグ側のコネクタ端子11、12に加え、一方側のハウジングとして、固定ハウジング13と、固定ハウジング13上に所定の可動範囲内で可動に支持された可動ハウジング14と、可動ハウジング14を固定ハウジング13上の所定の取付け高さに拘束する一対の取付板15と、を含んで構成されている。また、図3および図4に示すように、可動ハウジング14内に、板状のプラグ部10aと、プラグ部10aの周囲を所定間隔を隔てて略長方形に取り囲む嵌合壁部10bとを有している。
【0031】
複数のプラグ側のコネクタ端子11、12は、それぞれ端子幅方向である図2(b)中のW方向に所定間隔を隔てるとともに図1中の上下に離間する第1、第2の端子列となっており、上下の各端子列内では、互いに同じ導体(例えば銅合金、金メッキ)で同一の端子形状を有している。
【0032】
図4に示すように、複数のプラグ側のコネクタ端子11は、プラグコネクタ10の正面側(図4中の左側)に延びる先端側部分11aが、複数のプラグ側のコネクタ端子12の先端側部分12aよりも同図中の上側に位置する一方、プラグコネクタ10の背面側(同図中の右側)に位置する基端側部分11bが、複数のプラグ側のコネクタ端子12の基端側部分12bよりも背面側に位置している。また、プラグ側のコネクタ端子11の先端側部分11aおよびプラグ側のコネクタ端子12の先端側部分12aは、プラグ部10aの両面側に位置するように、可動ハウジング14の複数の端子挿入穴、例えば図5(a)に例示する上下複数列の平行な端子圧入穴14U、14Lに挿入されている。
【0033】
すなわち、複数のプラグ側のコネクタ端子11、12は、それぞれの先端側部分11a、12aが可動ハウジング14に一定間隔で平行に嵌入される一方、それぞれの基端側部分11b、12bが固定ハウジング13に一定間隔で嵌入され並列保持されている。
【0034】
また、複数のプラグ側のコネクタ端子11、12は、それぞれの先端側部分11a、12aと基端側部分11b、12bとの間に端子厚さ方向に屈曲したばね部分11c、12cを有しており、コネクタ差込方向の力や脱抜方向の力に応じて、ばね部分11c、12cが弾性変形したり弾性回復したりして、固定ハウジング13に対し可動ハウジング14を所定の可動範囲内で相対変位させたり所定位置に復帰させたりすることができるようになっている。
【0035】
固定ハウジング13は、図2(a)中のD方向をプラグコネクタ10の前後方向、図2(b)中のW方向をプラグコネクタ10の横幅方向とするとき、図2ないし図4に示すように、横幅方向に延びる板状ベース部13aの拡幅した両端部分13b、13cに、左右各一対の前後のストッパ部13d、13eが一体に設けられている。そして、板状ベース部13aは、横幅方向両側の後ろ側のストッパ部13eの間で前後一定の奥行幅を有する端子保持部13fにて、複数のプラグ側のコネクタ端子11、12の基端側部分11b、12bを相互絶縁状態に整列させつつ保持している。
【0036】
また、複数のプラグ側のコネクタ端子11は、図6(a)に示すように、それぞれ可動ハウジング14の複数の端子圧入穴14Uに挿入されてプラグ部10aの片面側に延びる先端側部分11aの前端部11d、基端部11eおよび接触部11fをそれぞれ端子幅方向で端子圧入穴14Uの穴径と略同一幅に拡幅した形状を有しており、先端側部分11aの基端部11eから下方に延びる垂直部11gと後方側の端子保持部13fへの圧入部11jとの間に、斜下方向に延びるばね部分11cが配置され、基端側部分11bの下端に基板への接続端11kが設けられている。ここで、コネクタ端子11の先端側部分11aは、比較的長いので、前端部11d、基端部11eおよび接触部11f以外の部分は端子幅を相対的に狭くして、圧入の容易化を図るとともに、この端子の収容部分に空隙を形成することで、インピーダンスを低下させる調整構造となっている。
【0037】
同様に、複数のプラグ側のコネクタ端子12は、図6(b)に示すように、それぞれ可動ハウジング14の複数の端子圧入穴14Lに挿入される先端側部分12aの前端部12d、基端部12eおよび接触部12fを端子幅方向で端子圧入穴14Lの穴径と略同一幅に拡幅した形状を有しており、先端側部分12aの基端部12eから下方に延びる垂直部12gと後方側の端子保持部13fへの圧入部12jとの間に、斜下方向に延びるばね部分12cが配置され、基端側部分12bの下端に基板への接続端12kが設けられている。
【0038】
プラグコネクタ10は、このように、一方のハウジングである可動ハウジング14内に複数のコネクタ端子11、12を幅方向所定間隔に保持させた構成を有しており、そのプラグ部10aにおいて、これらコネクタ端子11、12の先端側部分11a、12aは可動ハウジング14の板状の内突部14p(図4参照)の両面側に形成された平行な保持溝(例えば、端子圧入穴14Uの全てに共通する後述の長方形の横断面形状部分であってプラグ部10aの両面側に開いた溝)内に保持されている。
【0039】
これに対し、相手側のレセプタクルコネクタ20は、プラグ嵌合凹部24aを有する他方のハウジング24内に、複数のコネクタ端子21、22の先端側部分21a、22aを幅方向所定間隔に保持させた構成となっており、複数のコネクタ端子21、22は、プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20の嵌合時に複数のコネクタ端子11、12の接触部11f、12fに接触するよう、先端側部分21a、22aの一部に曲げ加工された接触部21f、22fを有している。なお、複数のコネクタ端子21、22は、接触部21f、22fに所定の接触圧を生じさせるべく、先端側部分21a、22aに所要の板ばね機能を持たせているので、比較的幅広となり、端子形状により特定されるインピーダンスが比較的大きくなる。
【0040】
プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20においては、複数組のコネクタ端子11、12およびコネクタ端子21、22のうち上列側のコネクタ端子11、21は複数の第1端子列の伝送路L1を形成し、下列側のコネクタ端子12、22は複数の第2端子列の伝送路L2を形成している。そして、これら第1、第2の伝送路L1、L2は、複数のコネクタ端子11、12、21、22の端子形状により特定されるインピーダンスに対して、これら端子の収容部分に、所定の複数種の伝送路規格に適合し得る方向へのインピーダンス調整構造が採用されている。
【0041】
ここで、所定の伝送路規格とは、例えば、USB(登録商標)3.0もしくは3.1、USB Type-C(登録商標)、SATA((登録商標)Serial ATA)3.0もしくは2.0、HDMI(登録商標)1.4b、PCIe(PCI-Express(登録商標))3.0のいずれかを含む複数の伝送規格である。
【0042】
また、上列側のコネクタ端子11、21によって形成される複数の第1端子列の伝送路L1および下列側のコネクタ端子12、22によって形成される複数の第2端子列の伝送路L2は、共に、所定の一の伝送路規格、例えばUSB3.0あるいはSATA3.0のピン配置で互いに機能の異なる複数組の端子群が構成可能であるとともに、所定の他の伝送路規格、例えばUSB Type-CあるいはPCIe3.0のピン配置で互いに機能の異なる複数組の端子群を構成し得るようになっている。
【0043】
具体的には、図3(a)および図3(b)に示すように、図示の便宜上、ピン配置を特定せずに機能分けして例示すると、上列側のコネクタ端子11、21によって形成される複数の第1端子列の伝送路L1は、複数組の上列側のコネクタ端子11、21のうち特定機能の端子群p11、p12で形成される第1の伝送路L1aと、他機能の端子群p13、p14またはp14、15で形成される第2の伝送路L1bまたはL1cとを構成している。
【0044】
また、下列側のコネクタ端子12、22によって形成される複数の第2端子列の伝送路L2は、複数組の下列側のコネクタ端子12、22のうち特定機能の端子群p21、p22で形成される第1の伝送路L2aと、複数組の端子群のうち他機能の端子群p23、p24またはp24、p25で形成される第2の伝送路L2bまたはL2cとを構成している。
【0045】
あるいは、複数の第1端子列の伝送路L1のうち一部の第1端子列の端子群p11と複数の第2端子列の伝送路L2のうち対応する一部の端子群p21とで形成される特定の差動伝送路ds1と、他の端子群p12、p13、p14、p15のいずれかと対応する端子群p22、p23、p24、p25のいずれかとで形成される他の差動伝送路ds2、ds3、ds4またはds5とが、構成されていてもよい。
【0046】
より具体的には、複数組の端子群p11~p15、p21~p25は、所定の複数の伝送路規格のうち一の伝送路規格、例えばUSB3.0もしくは3.1またはSATA3.0に対応させるべく、それぞれピン番号順に4つずつに分けた各端子群毎に、例えば2本の電源と2本の電源グランド、2本の信号と電源または/およびグランド等の組合せを有することで、所定の機能を発揮できるようになっている。
【0047】
また、端子群p11~p15、p21~p25は、所定の伝送路規格のうち他の伝送路規格、例えばUSB Type-CまたはPCIeに対応させるべく、それぞれピン番号順に4つずつに分けた端子群毎に、例えば2本の第1電圧の電源と2本の電源グランド、2本の第2電圧の電源と電源グランド、システムのチェックもしくは制御信号の組合せ、他の入力、受信または送信データと電源グランド等の組合せを有することで、所定の機能を発揮できるようになっている。
【0048】
端子群p11~p15、p21~p25は、ここでは全て4ピンずつの端子群に分けて説明するが、異なるピン数の単位で端子群を設定し、機能分けすることも考えられる。また、第1、第2の伝送路L1、L2は、それぞれ2つの端子群の端子で機能分けされるものとしたが、1つの端子群単位であってもよいし、3つ以上の端子群や、多数列の端子群のうち特定の端子列の単位であってもよい。
【0049】
ところで、所定の複数の伝送路規格のうち一の伝送路規格に適合させる場合と、所定の複数の伝送路規格のうち他の伝送路規格に適合させる場合では、各規格によって規定されるインピーダンスの基準値が一致しないということが生じ得る。
【0050】
これに対し、本実施形態では上列側である第1端子列のコネクタ端子11、21と下列側である第2端子列のコネクタ端子12、22のそれぞれにおいて、図3(a)および図3(b)に示す複数の端子群p11~p15、p21~p25の各端子群が、対応する各伝送規格で規定されたピン配置に対応する機能を満足するように、コネクタ端子形状で特定される各伝送路のインピーダンスに対して、端子群ごとに複数の規格に適合する方向にインピーダンス調整されている。
【0051】
具体的には、複数の端子群p11~p15、p21~p25は、コネクタ組立体1が対応する複数の伝送路規格により要求される機能とピン配列を基に、各伝送路規格で要求される機能が相違する端子群ごとに端子収容部構造が相違したり、端子形状からインピーダンスが大きくなる部分に近接して金属を配置したりすることで、複数の規格で規定されるインピーダンス値の許容範囲内となる適合側に調整されている。その結果、例えば特定機能の端子群p11、p12で形成される第1の伝送路L1aと、他機能の端子群p13、p14またはp14、p15で形成される第2の伝送路L1bまたはL1cとが互いに異なるインピーダンスに調整され、特定機能の端子群p21、p22で形成される第1の伝送路L2aと、他機能の端子群p23、p24またはp24、p25で形成される第2の伝送路L2bまたはL2cが、複数の伝送路規格の適合範囲内で互いに異なるインピーダンスに調整された構成となっている。
【0052】
あるいは、例えば第1端子列の伝送路L1のうち一部の第1端子列の端子群p11と第2端子列の伝送路L2のうち対応する一部の端子群p21とで形成される特定の差動伝送路ds1と、他の端子群p12、p13、p14、p15のいずれかと対応する端子群p22、p23、p24、p25のいずれかとで形成される他の差動伝送路ds2、ds3、ds4またはds5とが、端子収容部構造の相違や部分的な金属配置により、複数の伝送路規格の適合範囲内で互いに異なるインピーダンスに調整されている。
【0053】
ここにいうインピーダンス(差動インピーダンス)の調整は、例えばUSB3.0、3.1で規定されるインピーダンス値90Ωと、SATA3.0で規定されるインピーダンス値100Ωと、USB Type-CまたはPCIe3.0で規定されるインピーダンス値85Ωとを考慮し、端子形状で特定される基本的なインピーダンス値に対して、端子群ごとに各規格の許容範囲内となるよう、適合側へのインピーダンスの調整方向および調整量を設定することであり、そのような調整をなす端子収容部構造やその近傍構成とすることである。
【0054】
次に、同形状の端子群p11~p15あるいはp21~p25を用いながら、端子群間でインピーダンスを相違させることができるようにするインピーダンス調整構造について説明する。
【0055】
まず、プラグコネクタ10の可動ハウジング14においては、上列側の第1端子列のコネクタ端子11のうち特定機能の端子群p11、p12を収容する特定の端子収容部h11、h12と、他機能の端子群p13、p14またはp14、p15を収容する他の端子収容部h13、h14またはh14、h15とで、互いに異なる穴断面形状を有している。これにより、端子群p11、p12の各端子の先端部分11a、12aの周囲における誘電体層(絶縁層)や空気層の厚さを穴形状に応じて相違させることができ、インピーダンス値を規格適合側へと端子群ごとに調整できる。
【0056】
また、可動ハウジング14は、下列側の第2端子列のコネクタ端子12についても、特定機能の端子群p21、p22を収容する特定の端子収容部h21、h22と、他機能の端子群p23、p24またはp24、p25を収容する他の端子収容部h23、h24またはh24、h25とで、互いに異なる穴断面形状を有しており、端子群p21~p25の各端子の先端側部分21a、22aの周囲における誘電体層(絶縁層)や空気層の厚さを穴形状に応じて相違させることで、インピーダンス値を規格適合側へと端子群ごとに調整できるようになっている。
【0057】
より具体的には、例えば図5(a)および図5(b)に示すように、端子収容部h11では、端子群p11を通す4つの略長方形断面の圧入穴haが形成されているのに対し、端子収容部h12では、端子群p12を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し垂直方向両側に及ぶ縦長長方形断面穴hbが一体に形成されている。また、端子収容部h13では、端子群p13を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し縦長長方形断面穴hbと略同一の横幅で垂直方向上方側にのみ広がる上溝穴hcが一体に形成されており、端子収容部h14では、端子群p14を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し縦長長方形断面穴hbと略同一の横幅で垂直方向下方側に広がる下溝穴hdが一体に形成されており、端子収容部h15では、端子収容部h12と略同様に、端子群p15を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し縦長長方形断面穴heが一体に形成されている。
【0058】
下列側の端子収容部h21では、端子群p21を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し垂直方向両側に及ぶ縦長長方形断面穴hfが一体に形成されている。また、端子収容部h22では、端子群p22を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し縦長長方形断面穴hbと略同一の横幅で垂直方向上下にわずかに広がる溝穴hgが一体に形成されており、端子収容部h23、h24、h25では、それぞれ端子収容部h21と同様に、端子群p23、p24、p25を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し縦長長方形断面穴hfと略同一の嵌合穴が一体に形成されている。以下、可動ハウジング14に複数の形状の異なる空隙部を形成する縦長長方形断面穴hb、he、hf、上溝穴hc、下溝穴hdおよび溝穴hgを、総称して、空隙部hb~hgともいう。
【0059】
図5に例示する端子収容部h11~h15、h21~h25は、例えば端子圧入穴であるが、圧入を要しない固定方式の端子挿入穴であってもよいし、インサート成形等により可動ハウジング14(一方のハウジング)中でコネクタ端子を貫通させている部分等であってもよい。また、図5に例示する端子収容部h12~h15、h21、h23~h25のように各端子挿入穴haに隣接する空隙部が形成されているものであってもよいが、モジュール化された複数のコネクタ端子11、12の周囲に誘電体による被覆部が一体的に形成され、その被覆部の厚さが相違するものや被覆部に穴や溝等の空隙部が形成されるものであってもよい。ここでは、可動ハウジング14の端子収容部h11~h15、h21~h25は、端子群p11~p15、p21~p25を構成する複数のコネクタ端子11、12の先端側部分11a、12aを収容するとともに、プラグ部10aの両面側で少なくとも接触部11f、12fを露出させるように、それぞれ圧入穴の先端側で溝状に形成されているものとする。
【0060】
本実施形態では、また、図1ないし図4に示すように、レセプタクルコネクタ20を構成する他方のハウジング24には、複数の上列側のコネクタ端子21のうち少なくとも一部の端子群p35に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板25が収納されている。この金属板25は、特定機能の端子群p21、p22あるいは他の端子群p23、p24またはp24、p25を含む一部の端子群p35に対して、少なくとも容量成分の負荷を加えることでインピーダンスを低下させ得るようになっている。
【0061】
すなわち、レセプタクルコネクタ20は、図4(b)に示すように、複数の上列側のコネクタ端子21の先端側部分21aが並列配置される一方側の端子並列面R1を有するとともに、端子厚さ方向で一方側の端子並列面R1に対面する複数の他方側の端子並列面R2を有しており、他方側の端子並列面R2に複数の下列側のコネクタ端子22の先端側部分22aが並列配置されている。そして、複数のコネクタ端子21、22のうち一部の端子群p35が、レセプタクルコネクタ20の上列側の端子並列面R1に配置されるとともに、一部の端子群p35に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板25が、他方のハウジング24内の複数の他方側の端子並列面R1、R2に対し端子厚さ方向の外方側となる上方側に配置されている。なお、インピーダンス調整を安定させるために、金属板25は、グランド接続されるのがよい。
【0062】
また、本実施形態では、前述のように、プラグコネクタ10の可動ハウジング14が、上列側のコネクタ端子11のうち特定機能の端子群p11、p12を収容する特定の端子収容部h11、h12と、他機能の端子群p13、p14、p15を収容する他の端子収容部h13、h14、h15とのうち少なくとも片方側に、特定機能の端子群p12または/および他機能の端子群p13、p14、p15のコネクタ端子11の先端部分11aに隣接する空隙部hb、hc、hd、heを有している。さらに、可動ハウジング14が、下列側のコネクタ端子12のうち特定機能の端子群p21、p22を収容する特定の端子収容部h21、h22と、他機能の端子群p23、p24、p25を収容する他の端子収容部h23、h24、h25とのうち少なくとも片方側に、特定機能の端子群p21、p22または/および他機能の端子群p23、p24、p25のコネクタ端子12の先端側部分12aに隣接する空隙部hf、hgを有している。
【0063】
このように、本実施形態においては、一方のハウジング14の端子収容部h11~h15、h21~h25に形成される空隙部hb~hgが、特定機能の端子群p11、p12、p21、p22または/および他機能の端子群p13、p14、p15の端子を挿入する端子挿入穴haの一部を拡張する形状をなしており、複数の伝送路L1、L2に対応するハウジングの複数の端子収容部h11~h15、h21~h25(例えば端子挿入穴)の全てが共通する横断面形状部分haを有し、かつ、一部の端子収容部h12~h15、h21、h23~h25が共通する横断面形状部分haから外方に拡張された横断面形状部分hb、hc、hd、he、hf、hgを有する構成となっている。
【0064】
ここで、空隙部hb~hg内における空気の誘電率は、1.0であり、プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20の雌雄のハウジングである可動ハウジング14やハウジング24に通常用いるLCP(液晶ポリマー)等の成形材料の誘電率は、概ね3.0~4.0である。したがって、共通するフラット形状の端子挿入穴haの場合、コネクタ端子11、12、21、22とハウジング14、24が密着(近接)していれば、成形材料の誘電率(比誘電率)が相対的に大きいので、インピーダンスが低くなるが、共通する端子挿入穴haの上下に空気層を作るように空隙部hb~hgを形成すると、その空隙形状に応じた空気層ができ、その分だけ誘電率が小さくなることで、インピーダンスが高くなる。
【0065】
また、レセプタクルコネクタ20のハウジング24に複数のコネクタ端子21に近接する金属板25を収納させ、グランド接続すれば、金属板25の電位を安定させて確実にインピーダンスを低下させることができ、金属板25から端子群p35までの距離を大きくすると、インピーダンスを高めることができる。
【0066】
本実施形態においては、また、コネクタ組立体1のプラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20をそれらの端子の接続端11k、21k、12k、22kが接続されるプリント基板等の基板Bに対し平行な方向(ここでは水平という)に向けてレセプタクルコネクタ20を開口させ、同水平方向にプラグコネクタ10を嵌合させる基本構成において、プラグコネクタ10のコネクタ端子11、12とレセプタクルコネクタ20のコネクタ端子21、22とが、それぞれ上列側のコネクタ端子11、21と下列側のコネクタ端子12、22とで形状が異なることや規格による要求機能が相違すること等に鑑みて、空隙部hb~hgや金属板25を設置し、端子群ごとに規格適合側への局所的なインピーダンス調整により異なる規格に適合させた伝送路L1、L2が構成されている。
【0067】
次に、作用について説明する。
【0068】
上述のように構成された本実施形態のコネクタ組立体1においては、複数の第1端子列の伝送路L1を形成する上列側のコネクタ端子11、21と複数の第2端子列の伝送路L2を形成する下列側のコネクタ端子12、22とが、それぞれ所定の伝送路規格のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群p11~p15およびp21~p25を構成している。
【0069】
さらに、複数の第1端子列の伝送路L1のうち特定機能の端子群p11、p12で形成される第1の伝送路L1aと、他機能の端子群p13、p14またはp14、p15で形成される第2の伝送路L1bまたはL1cとが、端子形状により特定される基本的なインピーダンスに対して異なる複数の伝送路規格に適合させるべく、端子収容部やその近傍における空隙部や金属の配置によって機能ごとに異なるインピーダンス調整がなされ、複数の第2端子列の伝送路L2のうち特定機能の端子群p21、p22で形成される第1の伝送路L2aと、複数組の端子群のうち他機能の端子群p23、p24またはp24、p25で形成される第2の伝送路L2bまたはL2cとが、規格適合範囲内で互いに異なるインピーダンスに調整されている。
【0070】
例えば、所定の一の伝送路規格であるUSB3.0やSATA3.0のピン配置で互いに機能の異なる複数組の端子群構成が採られるときのみならず、所定の他の伝送路規格であるUSB Type-CやPCIeのピン配置で互いに機能の異なる複数組の端子群構成が採られるときにも、その伝送規格で規定されたインピーダンス整合値の許容範囲内となるように、複数組の端子群p11~p15、p21~p25のインピーダンスがそれらの端子形状で特定される値に対して端子群ごとに局所的に規格適合側に調整される。
【0071】
その結果、インピーダンス値が相違する複数の伝送路規格であっても、それらのインピーダンスの相違を許容範囲内に抑えつつ異なる複数の規格を満足させることが可能で、利便性に優れた汎用性の高いコネクタを提供することができる。
【0072】
本実施形態においては、複数の端子群p11~p15、p21~p25のうち一の伝送路規格で要求される第1の機能部分の端子群に対して、例えば90±15Ωにマッチングさせることができ、複数のうち他の伝送路規格で要求される第2の機能部分に対して例えば100±15Ωにマッチングさせることができる場合に、それらのマッチングの許容範囲の上下限を考慮して、一つの端子群に対し両機能部分として100Ω狙いの調整を行うことができる。さらに、複数の端子群p11~p15、p21~p25のうち端子収容部における空隙部の抑制や金属の近接配置によってインピーダンスを低下させたいずれかの端子群に対して、複数のうち一の伝送路規格で要求される第3の機能部分として例えば差動インピーダンスを85Ωにマッチングさせるとともに、その際の許容範囲内で、複数のうち他の伝送路規格で要求される第4の機能部分としてのインピーダンス調整を行うことができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、端子収容部h11~h15、h21~h25の形状に応じて、コネクタ端子11、12の形状により特定されるインピーダンスに対してその周囲の誘電率を調整でき、特定機能の端子群p11、p12と他の端子群p13、p14、p15とで機能ごとに異なる規格適合側へのインピーダンス調整が容易に可能となる。
【0074】
加えて、本実施形態では、レセプタクルコネクタ20のハウジング24内には、下列側に対してインピーダンスが大きくなる端子形状を有する上列側のコネクタ端子21の少なくとも一部の端子群p35に近接して、端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板25が収納されている。したがって、第1端子列の伝送路L1に容量成分を付加することで、規格適合側へとインピーダンスを低下させ、他の端子群とインピーダンスを相違させる調整が容易に可能となる。
【0075】
また、本実施形態のコネクタ組立体1では、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20の嵌合により複数の伝送路L1、L2が形成されるとき、それら複数の伝送路L1、L2のうち第1の伝送路L1a、L2aと第2の伝送路L1bもしくはL1c、L2bもしくはL2cとが、複数の伝送路規格で要求される機能とピン配列に応じて、互いに異なるインピーダンスに調整されている。したがって、所定の一の伝送路規格であるUSB3.0やSATA3.0のピン配置で互いに機能の異なる複数の端子群が構成されるときにも、所定の他の伝送路規格であるUSB Type-CやPCIeのピン配置で互いに機能の異なる複数の端子群が構成されるときにも、各規格で規定されたインピーダンス整合値の許容範囲内に抑えることができる。その結果、信号の反射によるノイズ等を有効に抑制できるようにインピーダンス整合がなされることになり、複数の伝送規格に適合可能で、利便性に優れた汎用性の高いコネクタ組立体1を提供することができる。
【0076】
本実施形態では、さらに、プラグコネクタ10の可動ハウジング14が、互いに同一形状の複数の上列側のコネクタ端子11について、特定機能の端子群p11、p12、p21、p22を収容する特定の端子収容部h11、h12と、他機能の端子群p13、p14またはp14、p15を収容する他の端子収容部h13、h14またはh14、h15とで、互いに異なる形状を有している。したがって、各端子収容部h11~h15の形状に応じて端子の周囲の誘電率を調整でき、特定機能の端子群と他の端子群とでインピーダンスを相違させる調整が可能となる。複数の下列側のコネクタ端子12についても略同様である。
【0077】
また、本実施形態では、一部の端子群p35に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板25が、レセプタクルコネクタ20のハウジング24内の複数の端子並列面R1、R2に対し端子厚さ方向の外方側に収納されているので、金属板25の近傍の端子群のインピーダンスを有効に低下させることができ、端子群ごとのインピーダンスを相違させる調整が可能となる。
【0078】
加えて、本実施形態では、プラグコネクタ10のハウジング14が、空隙部を有するコネクタ収容部h12~h15、h21、h23~h25ではそれぞれ対応するコネクタ端子11、22の周囲の誘電率を高めることができ、別部品を追加することなく特定機能の端子群p11、p12、p21、p22と他の端子群p13、p14、p15、p23、p24、p25のインピーダンスを相違させる調整が容易に可能となる。
【0079】
また、本実施形態において、空隙部hb~hgは、特定機能の端子群p12または/および他機能の端子群p13~p15のコネクタ端子11を挿入する端子挿入穴形状部分haの一部を拡張する形状をなしている。したがって、複数の伝送路L1、L2に対応する可動ハウジング14の複数の端子挿入穴の全てが共通する横断面形状部分haを有し、かつ、一部の端子挿入穴が共通する横断面形状部分haから外方に拡張された横断面形状部分hb~hgを有する構成とすることができ、インピーダンス調整が容易となる。
【0080】
また、本実施形態において、レセプタクルコネクタ20のコネクタ端子21同士、コネクタ端子22同士がそれぞれ同一形状であり、プラグコネクタ10のコネクタ端子11同士、コネクタ端子12同士がそれぞれ同一形状であっても、それらのコネクタ端子11、12がハウジングに装着される圧入穴等の装着穴であるコネクタ収容部h11~h15、h21~h25の形状は、可動ハウジング14の成型(例えば射出成型)時に容易に端子群ごとに相違させることができる。
【0081】
このように、本実施形態においては、同形状の複数のコネクタ端子を用いながらも、それらの端子形状により特定されるインピーダンスに対して端子収容部やその近傍の構造により複数の伝送規格に適合できるよう端子群ごとに局所的に調整しているので、利便性や汎用性を高めたコネクタ組立体1を提供することができるものである。
【0082】
<第2実施形態>
図7ないし図10は、本発明の第2実施形態に係るストレート嵌合型のコネクタ組立体2を示している。なお、以下の各実施形態の説明において、説明済みの実施形態と同様な構成についてはその参照符号を使用して、重複する説明を省略する。
【0083】
図7および図8に示すように、本実施形態のコネクタ組立体2は、雌雄のコネクタであるプラグコネクタ30およびレセプタクルコネクタ40を具備しており、これらプラグコネクタ30およびレセプタクルコネクタ40を基板Bに対し垂直な方向に着脱可能に凹凸嵌合させることができる。
【0084】
プラグコネクタ30およびレセプタクルコネクタ40は、それぞれ端子幅方向に離間する複数列のプラグ側のコネクタ端子31、32(一方側のコネクタ端子)と複数列のレセプタクル側のコネクタ端子41、42(他方側のコネクタ端子)とを有しており、プラグコネクタ30およびレセプタクルコネクタ40が嵌合するとき、複数列のプラグ側のコネクタ端子31、32と複数列のレセプタクル側のコネクタ端子41、42とが端子厚さ方向に隣接する同士で、導通接触するようになっている。そして、この導通接触状態で、端子厚さ方向の片方側のコネクタ端子31、41によって複数の第1端子列の伝送路L1が形成されるとともに、端子厚さ方向の他の片方側のコネクタ端子32、42によって複数の第2端子列の伝送路L2が形成されている。
【0085】
複数列のプラグ側のコネクタ端子31、32および複数列のレセプタクル側のコネクタ端子41、42は、水平嵌合のために直角曲げされた第1実施形態とは異なり、端子厚さ方向に対向する列同士が同一の端子形状を有しており、基本的には、端子厚さ方向の片方側のコネクタ端子31、41と端子厚さ方向の他の片方側のコネクタ端子32、42とは端子自体では同等なインピーダンスとなる。
【0086】
図9に示すように、プラグコネクタ30は、複数のプラグ側のコネクタ端子31、32を、略板状のプラグ側のハウジング34の平行な複数の端子挿入穴34A、34Bに挿入したものである。複数のプラグ側のコネクタ端子31、32は、それぞれ端子幅方向である図9中の左右方向に所定間隔を隔てるとともに図9(a)中の上下に離間する第1、第2の端子列となっており、各端子列内および端子列間で、互いに同一の端子形状を有している。
【0087】
図9(b)および図9(c)に示すように、複数のプラグ側のコネクタ端子31、32は、プラグコネクタ30の正面側に延びるそれらの先端側部分31a、32aが、プラグコネクタ30の両面側に少なくとの導通接触位置で露出するように配置されており、その露出部分では複数列の平行な端子挿入穴34A、34Bが溝状になっている。
【0088】
図7および図8に示すように、レセプタクルコネクタ40は、端子幅方向Wに延びる固定ハウジング43と、その固定ハウジング43上に所定の可動範囲内で可動に支持された可動ハウジング44と、可動ハウジング44を固定ハウジング43上の所定の取付け高さに拘束する一対の取付板45と、を含んで構成されている。
【0089】
さらに、レセプタクルコネクタ40は、複数のレセプタクル側のコネクタ端子41、42の先端側部分41a、42aが可動ハウジング44の内側の複数の嵌合溝部分44aに一定間隔で平行に嵌入される一方、それぞれの基端側部分41b、42bが固定ハウジング43の内側の複数の嵌合溝部分43gに一定間隔で嵌入され、並列保持されている。
【0090】
そして、複数のレセプタクル側のコネクタ端子41、42は、それぞれの先端側部分41a、42aと基端側部分41b、42bとの間に屈曲したばね部分41c、42cを有しており、コネクタ差込方向の力や脱抜方向の力に応じて、ばね部分41c、42cが弾性変形したり弾性回復したりして、固定ハウジング43に対し可動ハウジング44を所定の可動範囲内で相対変位させたり所定位置に復帰させたりすることができるようになっている。
【0091】
また、固定ハウジング43は、プラグコネクタ30の先端面に対向するリブ状の下側ストッパ部43aと、可動ハウジング44の端子厚さ方向への変位を規制する厚さ方向両側ストッパ部43b、43cと、を有している。
【0092】
プラグコネクタ10は、また、複数の一方側のコネクタ端子31、32が端子厚さ方向で相互に離間する複数のプラグ側の端子並列面R3a、R3b(図9(a)参照)を形成しており、片側、例えば第1列側のコネクタ端子32で構成される一部の端子群p45が、複数の端子並列面R3a、R3bのうち特定の端子並列面R3aに配置されている。
【0093】
そして、少なくとも一部の端子群p45に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる金属板35が、プラグコネクタ30のハウジング34内で端子厚さ方向に隣り合う一対の端子並列面R3a、R3bの間であって、第1列側の一部の端子群p45に近接するよう端子厚さ方向の一方側に収納・配置されている。金属板35は、複数の一方側のコネクタ端子31、32と同一の接続高さ位置で、基板側にグランド接続可能である。
【0094】
本実施形態においても、プラグコネクタ30とレセプタクルコネクタ40の嵌合により複数列の伝送路L1、L2が形成されるとき、それら複数列の伝送路L1、L2のうち特定列の第1の伝送路L1と他の列の第2の伝送路L2とが、複数の伝送路規格で要求される機能とピン配列に応じて、端子形状によるインピーダンス値をその端子収容部の調整構造によって適合側に調整している。また、第1実施形態の可動ハウジング14のように、ハウジング34の端子挿入穴34A、34Bと一体の空隙部を設けることもできる。よって、インピーダンス値が相違する複数の伝送路規格であっても、それらのインピーダンスの不整合を許容範囲内に抑えつつ異なる複数の規格を満足させることが可能で、利便性に優れた汎用性の高いコネクタを提供することができる。
【0095】
しかも、本実施形態では、特定の端子並列面R3aに特定機能の端子群p31、p32を含む少なくとも一部の端子群p45を配置し、その近傍でプラグコネクタ30内に金属板35を収納させることで、同端子形状を有する他機能の端子群に対して、インピーダンスを下げたい一部の端子群p45のインピーダンスを的確に低下させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、基板B上で垂直方向に開口するレセプタクルコネクタ40に対して同垂直方向にプラグコネクタ30を嵌合させるが、レセプタクルコネクタ40のコネクタ端子41、42同士が同一形状であり、プラグコネクタ30のコネクタ端子31、32同士が同一形状であっても、それらのコネクタ端子31、32、41、42がハウジング34に装着される圧入穴34A、34B等の端子挿入穴(装着穴)の形状は、ハウジング成型(例えば射出成型)時に容易に端子群ごとに相違させることもできる。
【0097】
<第3実施形態>
図11ないし図13は、本発明の第3実施形態に係る水平嵌合型のコネクタ組立体3を示している。
【0098】
本実施形態のコネクタ組立体3は、第1実施形態のコネクタ組立体1における金属板25に代えて、一対の帯状のグランド接続部26、27を金属板25と略同サイズの方形の金属板本体28に一体に設けて金属板29としたものであり、他の構成は、第1実施形態と全く同様である。
【0099】
ここで、レセプタクルコネクタ20は、ハウジング24のプラグ嵌合凹部24a内に複数のコネクタ端子21、22の先端側部分21a、22aを幅方向所定間隔に保持させるとともに、金属板29の金属板本体28をコネクタ端子21の先端側部分21aに近接配置した構成となっている。また、複数のコネクタ端子21、22は、プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20の嵌合時に複数のコネクタ端子11、12の接触部11f、12fに接触するよう、先端側部分21a、22aの一部に曲げ加工された接触部21f、22fを有するとともに、基板B側に接続するコネクタ端子21、22の接続端21k、22kと、グランド接続部26、27の下端26a、27aを有している。
【0100】
本実施形態においては、金属板29の近傍の複数のコネクタ端子21の少なくとも一部の端子群のインピーダンスを有効に低下させることができ、例えば上列側の複数のコネクタ端子21のインピーダンスを低下させ、端子群ごとのインピーダンスを相違させる調整を行うことができる。また、金属板29をグランド接続することで、金属板29の電位を安定させて、的確なインピーダンス調整を行うことができる。
【0101】
<第4実施形態>
図14ないし図17は、本発明の第4実施形態に係るコネクタを示している。
【0102】
本実施形態のコネクタ4は、FPCコネクタ型のもので、カードエッジ型のフレキシブル基板5が着脱可能に嵌合するようになっている。
【0103】
本実施形態のFPCコネクタ4は、図14ないし図17に示すように、フレキシブル基板5が挿入される基板受入口51を有するハウジング54と、ハウジング54に平行に挿入されて保持された複数のコネクタ端子55とを具備しており、基板受入口51に挿入されたフレキシブル基板5のカードエッジ部分5a(例えば折り曲げ補強された接続部分)に配置された複数のコンタクト部分がコネクタ端子55を介して基板Bの図示しないプリント接続端子に電気的に接続されるようになっている。
【0104】
図16に示すように、FPCコネクタ4のハウジング54は、底板52と、底板52に少なくとも両端側で支持されたカバー部53とで形成されており、底板52およびカバー部53を合成樹脂等の絶縁材からなる絶縁ハウジングとして一体に構成されている。
【0105】
また、ハウジング54の基板受入口51は、基板挿入方向に対して手前側に位置するとともに、横長に開口しており、フレキシブル基板5の接続エッジ部5aを着脱可能に挿入し嵌合接続することができるようになっている。
【0106】
ここで、FPCコネクタ4のコネクタ端子55は、それらの端子幅方向に所定ピッチで離間しており、FPCコネクタ4およびフレキシブル基板5のカードエッジ部分5aが嵌合するとき、フレキシブル基板5のカードエッジ部分5aに配置された複数のコンタクト部分が対応する複数のコネクタ端子55と導通接触するようになっている。そして、この導通接触状態で、フレキシブル基板5のカードエッジ部分5aの複数のコンタクト部分と複数のコネクタ端子55とにより、複数の伝送路Lが形成されている。
【0107】
本実施形態のFPCコネクタ4は、ハウジング54内に複数のコネクタ端子55を幅方向所定間隔に保持させ、それら複数のコネクタ端子55を介して複数の伝送路Lを形成するものであって、複数のコネクタ端子55が、所定の伝送路規格(例えばUSB3.1またはSATA3.0)のピン配置に対応可能で互いに機能の異なる複数組の端子群p51、p52、p53、p54、p55およびp56を構成している。また、複数のコネクタ端子55で構成される複数の伝送路Lのうち特定機能の第1の伝送路L5aと複数の伝送路Lのうち他機能の第2の伝送路L5bまたはL5cとが、端子形状により特定されるインピーダンスに対し端子収容部のインピーダンス調整構造により端子群ごとに調整され、各規格での許容範囲内で互いに異なるインピーダンスに調整され、異なる複数の伝送路規格(例えばUSB3.1またはSATA3.0およびPCIe3.0)に適合可能になっている。
【0108】
本実施形態においても、FPCコネクタ4のハウジング54は、特定機能の端子群p51を収容する特定の端子収容部h51と、他機能の端子群p52、p53、p54またはp55を収容する他の端子収容部h52、h53、h54またはh55とで、互いに異なる形状を有している。
【0109】
具体的には、例えば図15に示すように、端子収容部h51では、端子群p51を通す4つの略長方形断面の挿入穴hfaが形成されているのに対し、端子収容部h52の一部および端子収容部h53では、端子群p52またはp53のいずれかを通す挿入穴hfaと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し垂直方向上方側に広がる上方溝穴hfbが一体に形成されている。また、端子収容部hf54では、端子群p54を通す圧入穴haと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し上方溝穴hfbと略同一の横幅で更に垂直方向上方側に広がる上深溝穴hfcが一体に形成されており、端子収容部h55では、端子群p55を通す挿入穴hfaと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し上方溝穴hfbと略同一の横幅で垂直方向上方側に貫通する開口溝hfdが一体に形成されており、端子収容部h56では、端子収容部h53と略同様に、端子群p56を通す挿入穴hfaと同サイズの共通の横長長方形断面穴に対し上方溝穴hfeが一体に形成されている。
【0110】
本実施形態においては、さらに、ハウジング54内の端子収容部h56の形成範囲内に、所定機能の一部の端子群p56の複数のコネクタ端子55に対し端子厚さ方向に所定間隔を隔てる略方形の金属板65が収納されている。また、金属板65には、プリント基板等の基板Bのグランド部分に接続されるグランド接続部66、67が設けられている。
【0111】
図17に示すように、複数のコネクタ端子55は、それぞれハウジング54の複数の端子収容部h51~h56のいずれかに挿入される下面が円曲したガイド機能を有する先端側コンタクト部分55aと、各端子収容部h51~h56の挿入穴hfaに端子幅方向両側で圧入される圧入固定部55bと、圧入固定部55bから下方に延びる垂直部55cと、垂直部55cの下端側に配置された基板Bへの接続端55kとを有している。
【0112】
本実施形態においても、FPCコネクタ4とフレキシブル基板5のカードエッジ部5aとの嵌合により複数の伝送路Lが形成されるとき、例えば複数の伝送路Lのうち特定機能の端子群p51、p52で形成される第1の伝送路L5aと他機能の端子群p53、p54またはp54、p55で形成される第2の伝送路L5bまたはL5cとが、複数の伝送路規格で要求される機能とピン配列に応じて、互いに異なるインピーダンスに調整され、対応する規格の許容範囲内に整合されている。よって、インピーダンス値が相違する複数の伝送路規格L5a、L5b、L5cであっても、それらのインピーダンスの不整合を許容範囲内に抑えつつ異なる複数の規格を満足させることが可能で、利便性に優れた汎用性の高いFPCコネクタ4を提供することができる。
【0113】
しかも、本実施形態では、一部の端子群p56に対応する所定幅領域内の複数のコネクタ端子55の近傍で、コネクタ54内に金属板65を収納させているので、同端子形状を有する他機能の端子群p51~p55に対して、インピーダンスを下げたい一部の端子群p56のインピーダンスを的確に低下させることができる。
【0114】
以上の各実施形態について説明したように、本発明においては、端子収容部の空隙部等の形状に応じて端子の周囲の誘電率を調整でき、特定機能の端子群と他の端子群とでインピーダンスを相違させる調整が可能となる。また、金属板をハウジング内に配置し、インピーダンスを低下させた端子群に対して容量成分を付加することで、他の端子群とインピーダンスを相違させる調整が可能となる。さらに、コネクタ端子のハウジングへの挿入条件や挿入穴の成形条件を共通化し易く、製造コストの増加を抑えたインピーダンス調整が可能となる。
【0115】
このように、本発明は、同形状の複数のコネクタ端子を用いながらも高速・高周波伝送にかかる複数の伝送規格に適合できるようにして、利便性や汎用性を高めたコネクタを提供することができるものであり、高速デジタル信号伝送等の高速・高周波伝送が可能なコネクタおよび雌雄のコネクタの組立体全般に有用である。
【符号の説明】
【0116】
1、2、3 コネクタ組立体
4 FPCコネクタ(コネクタ)
5 フレキシブル基板
5a カードエッジ部分(接続エッジ部)
10 プラグコネクタ(コネクタ)
10a プラグ部
10b 嵌合壁部
11 コネクタ端子(一方側のコネクタ端子、上列側のコネクタ端子)
11a、12a、21a、22a、31a、32a、41a、42a 先端側部分
11b、12b、41b、42b 基端側部分
11c、12c、41c、42c ばね部分
11d、12d 前端部
11e、12e 基端部
11f、12f、21f、22f 接触部
11g、12g、55c 垂直部
11j、12j 圧入部
11k、12k、21k、22k、55k 接続端
12 コネクタ端子(一方側のコネクタ端子、下列側のコネクタ端子)
13 固定ハウジング(一方のハウジング)
13a 板状ベース部
13b、13c 両端部分
13d、13e ストッパ部
13f 端子保持部
14 可動ハウジング(一方のハウジング)
14L 端子圧入穴(上列側の端子圧入穴)
14U 端子圧入穴(下列側の端子圧入穴)
14p 内突部
15 取付板
20 レセプタクルコネクタ(コネクタ、他方側のコネクタ)
21 コネクタ端子(他方側のコネクタ端子、上列側のコネクタ端子)
22 コネクタ端子(他方側のコネクタ端子、下列側のコネクタ端子)
24 ハウジング(他方のハウジング)
24a プラグ嵌合凹部
25、29、35、65 金属板
26、27、66、67 グランド接続部
26a、27a 下端
28 金属板本体
30 プラグコネクタ
31、32 コネクタ端子(プラグ側のコネクタ端子、一方側のコネクタ端子)
34 ハウジング(プラグ側のハウジング、一方側のハウジング)
40 レセプタクルコネクタ
41、42 コネクタ端子(レセプタクル側のコネクタ端子、他方側のコネクタ端子)
43 固定ハウジング(他方のハウジング)
43a 下側ストッパ部
43b、43c 厚さ方向両側ストッパ部
44 可動ハウジング(他方のハウジング)
45 取付板
51 基板受入口
52 底板
53 カバー部
54 ハウジング
55 コネクタ端子
ds1、ds2、ds3、ds4 差動伝送路
h11、h12、h21、h22 端子収容部(特定の端子収容部、端子挿入穴、端子圧入穴)
h13、h14、h15、h23、h24、h25 端子収容部(他の端子収容部、端子挿入穴、端子圧入穴)
ha 圧入穴(共通する横断面形状部分)
hb、hc、hd、he、hf、hg 空隙部(拡張された横断面形状部分)
L、L1、L2 伝送路(複数の伝送路)
L1a、L2a 第1の伝送路
L1b、L1c、L2b、L2c 第2の伝送路
p11、p12、p21、p22、p31、p32 端子群(特定機能の端子群)
p13、p14、p15、p23、p24、p25 端子群(他機能の端子群)
p35、p45 端子群(少なくとも一部の端子群、特定機能の端子群)
p51、p52、p53、p54、p55、p56 端子群
R1、R3b 端子並列面(特定の端子並列面)
R2、R3a 端子並列面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17