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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080807
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】金属製缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/02 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B65D8/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194049
(22)【出願日】2022-12-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】591275942
【氏名又は名称】藤井容器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宣彦
【テーマコード(参考)】
3E061
【Fターム(参考)】
3E061AA18
3E061AB04
3E061AD01
3E061BA02
3E061BB05
3E061BB12
3E061DA12
(57)【要約】
【課題】水性塗料を充填した容器本体を蓋体で塞ぎ、製品として出荷・搬送するに際して、搬送時の振動等によって、防錆処理が充分でないカール部の先端面に水性塗料が付着して、カール部の先端面やその周辺を錆びさせてしまい、金属製缶や水性塗料を劣化させたり変質させたりするという問題を解消する。
【解決手段】本願発明の金属製缶1は、筒状の缶胴21の上下両端部に、開口部20を有する天板23と底板22とを巻き締めて構成した容器本体2と、天板23の開口部20を着脱可能に塞ぐ蓋体3とを備える。開口部20の周縁部分には、径方向内向きに突出した内向きフランジ部27を形成する。内向きフランジ部27には、これから延長部分を径方向外側に折り返して内向きに巻き込んだカール部28を形成する。カール部28は少なくとも1つの角部41,42を備える。角部41,42が内向きフランジ部27に当接する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の缶胴の上下両端部に、開口部を有する天板と底板とを巻き締めて構成した容器本体と、天板の開口部を着脱可能に塞ぐ蓋体とを備えた金属製缶であって、
前記開口部の周縁部分には、径方向内向きに突出した内向きフランジ部が形成されており、内向きフランジ部には、当該内向きフランジ部から延長部分を径方向外側に折り返して内向きに巻き込んだカール部が形成されており、
前記カール部は少なくとも1つの角部を備えており、前記角部が内向きフランジ部に当接している、
金属製缶。
【請求項2】
前記天板における前記開口部の外周側には、当該開口部を取り囲む下向き凹状の嵌合凹部が形成されている一方、前記蓋体は、前記天板の前記嵌合凹部に着脱可能に嵌まる下向き凸状の嵌合凸部が形成されており、
前記容器本体を前記蓋体で塞いだ状態では、前記蓋体のうち前記嵌合凸部の内径側の平板部と、前記カール部のうち前記内向きフランジ部から遠い側に形成された湾曲部に当接している、
請求項1に記載した金属製缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料や化学薬品等の収容物を収容する金属製缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料や化学薬品等の容器として用いられる金属製缶は、筒状の缶胴の上下両端部に、開口部を有する天板と底板とを巻き締めて構成した容器本体と、天板の開口部を着脱可能に塞ぐ蓋体とを備えている(例えば特許文献1等参照)。特許文献1に記載された金属製缶では、天板における開口部の周縁部分に、径方向内向きに折り曲げて断面渦巻き状に巻き込んだカール部が形成されている。カール部の先端面は、容器本体の内部側に位置している。この種の金属製缶には通常、防錆処理が施されている。しかし、端面の部分(例えば前述したカール部の先端面等)には防錆剤を十分に塗布できていないことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-37251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、金属製缶に収容される収容物の一例である塗料として、水性塗料が多くなってきている。この場合、水性塗料を充填した容器本体を蓋体で塞ぎ、製品として出荷・搬送するに際して、搬送時の振動等によって、防錆処理が充分でないカール部の先端面に水性塗料が付着して、カール部の先端面やその周辺を錆びさせてしまい、金属製缶や水性塗料を劣化させたり変質させたりするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した金属製缶を提供することを技術的課題としている。
【0006】
本願発明は、筒状の缶胴の上下両端部に、開口部を有する天板と底板とを巻き締めて構成した容器本体と、天板の開口部を着脱可能に塞ぐ蓋体とを備えた金属製缶であって、前記開口部の周縁部分には、径方向内向きに突出した内向きフランジ部が形成されており、内向きフランジ部には、当該内向きフランジ部から延長部分を径方向外側に折り返して内向きに巻き込んだカール部が形成されており、前記カール部は少なくとも1つの角部を備えており、前記角部が内向きフランジ部に当接しているというものである。
【0007】
本願発明の金属製缶において、前記天板における前記開口部の外周側には、当該開口部を取り囲む下向き凹状の嵌合凹部が形成されている一方、前記蓋体は、前記天板の前記嵌合凹部に着脱可能に嵌まる下向き凸状の嵌合凸部が形成されており、前記容器本体を前記蓋体で塞いだ状態では、前記蓋体のうち前記嵌合凸部の内径側の平板部と、前記カール部のうち前記内向きフランジ部から遠い側に形成された湾曲部に当接しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によると、例えば蓋体の裏面に付着していた液体等の収容物がカール部内に浸入しようとしても、カール部の各角部と内向きフランジ部との当接部分が関所となって収容物の浸入を塞ぎ止めることができる。このため、収容物が水性であったとしても、カール部の先端面に収容物が付着して錆びを生ずるおそれを大幅に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願発明の実施形態の容器本体を示す概略斜視図である。
図2】本願発明の実施形態の容器本体を示す一部切り欠き参考斜視図である。
図3】本願発明の実施形態に係る正面図である。
図4】本願発明の実施形態に係る背面図である。
図5】本願発明の実施形態に係る右及び左側面図である。
図6】本願発明の実施形態に係る平面図である。
図7】本願発明の実施形態に係る底面図である。
図8】本願発明の実施形態に係る断面図である。
図9】本願発明の第1実施例における部分拡大図である。
図10】本願発明の第2実施例における部分拡大図である。
図11】本願発明の第3実施例における部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の説明において上下、左右等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
まず、実施形態の金属製缶1について説明する。図1に示すように、実施形態の金属製缶1は、上向きに開口した筒状の容器本体2と、容器本体2の開口部20を塞ぐ蓋体3とを備えている。容器本体2は、円筒状の缶胴21と、缶胴21の下端部に取り付けた底板22と、缶胴21の上端部に取り付けた天板23とにより構成されている。底板22は、缶胴21の下端部に巻き締めによって連結されている。天板23は、缶胴21の上端部に巻き締めによって連結されている。下端側にある缶胴21と底板22との連結部分が下巻き締め部24に構成されている。上端側にある缶胴21と天板23との連結部分が上巻き締め部25に構成されている。例えば、矩形状の金属板の一端部を他端部に接合して円筒状の缶胴21を形成してから、底板22と天板23とを缶胴21の上下両端部に巻き締めすることによって、容器本体2が組み立てられる。
【0012】
図1及び図9に示すように、天板23の中央側には環状の開口部20が形成されている。開口部20の外周側には、当該開口部20を取り囲む下向き凹状(断面U字状)の嵌合凹部26が折り曲げ形成されている。嵌合凹部26は、天板23の開口部20を取り囲む平面視環状に形成されている。一方、天板23の開口部20を塞ぐ蓋体3は、略円板状に形成されている。蓋体3には、天板23の嵌合凹部26に着脱可能に嵌まる下向き凸状の嵌合凸部36が折り曲げ形成されている。蓋体3の嵌合凸部36も、天板23の嵌合凹部26に対応して平面視環状に形成されている。
【0013】
天板23の嵌合凹部26に蓋体3の嵌合凸部36を上方から嵌め込み、容器本体2の開口部20が蓋体3で塞がれる結果、金属製缶1が密封される(容器本体2が蓋体3で密封される)。このように、実施形態の金属製缶1は、筒状の缶胴21の上下両端部に、開口部20を有する天板23と底板22とを巻き締めて形成した容器本体2と、天板23の開口部20を着脱可能に塞ぐ蓋体3を備えるものである。
【0014】
天板23において嵌合凹部26よりも内径側には、径方向内側に突出する内向きフランジ部27が嵌合凹部26に連続して形成されている。実施形態の内向きフランジ部27は、嵌合凹部26のうち径方向内側の内壁部26a上端側から縮径方向へ屈曲形成した横片部27aと、横片部27aから上方へ屈曲形成した縦片部27bとで構成されている。従って、内向きフランジ部27は、横片部27aと縦片部27bとで断面L字状になっている。
【0015】
天板23において嵌合凹部26よりも内径側には、断面渦巻き状のカール部28が内向きフランジ部27上に配置されている。実施形態のカール部28は、内向きフランジ部27における縦片部27bの延長部分を径方向外側に折り返して内向きに巻き込んだ形状(断面渦巻き状)に形成されている。つまり、カール部28は、内向きフランジ部27の縦片部27bに連続して形成されている。カール部28で囲まれた断面内側の第1密閉空間S1(詳細は後述する)には、天板23における内径側の先端面40が位置している。
【0016】
カール部28は、少なくとも1つの角部を有している。実施形態のカール部28は、内向きフランジ部27寄りの箇所に、第1及び第2角部という2つの角部41,42を有している。第1角部41は、内向きフランジ部27の横片部27aに当接している。第2角部42は、内向きフランジ部27の縦片部27bに当接している。第2角部42が内向きフランジ部の縦片部27bに当接しているため、カール部28で囲まれた断面内側の空間S1は、密閉状態になっている(第1密閉空間S1になっている)。天板23における内径側の先端面40は、第1密閉空間S1内に収容されている。また、実施形態では、第2角部42が内向きフランジ部の縦片部27bに当接し、第1角部41が内向きフランジ部の横片部27aに当接しているため、カール部28の第1角部41から第2角部42までの間と内向きフランジ部27とで囲まれた断面内側の空間S2も、密閉状態になっている(第2密閉空間S2になっている)。
【0017】
例えば蓋体3の裏面に付着していた収容物としての液体が嵌合凸部36等を伝ってカール部28外からカール部28内に浸入しようとしても、カール部28の第1角部41と内向きフランジ部27の横片部27aとの当接部分が第1の関所となって液体の浸入を塞き止めできる。さらに、カール部28の第2角部42と内向きフランジ部27の縦片部27bとの当接部分が第2の関所となって液体の浸入を塞き止めできる。従って、カール部28と内向きフランジ部27とで二重の関所を形成できる。収容物としての液体が水性であったとしても、第2密閉空間S2のさらに奥にある第1密閉空間S1内の先端面40に、液体が付着して錆びを生ずるおそれを大幅に抑制できる。仮に第1の関所、すなわちカール部28の第1角部41と内向きフランジ部27の横片部27aとの当接部分を液体が通過したとしても、第2の関所、すなわちカール部28の第2角部42と内向きフランジ部27の縦片部27bとの当接部分が液体の浸入を塞き止めるだけでなく、第2密閉空間S2が液溜りスペースとなって、第1密閉空間S1内にまで液体を浸入させるおそれをより確実に抑制できる。
【0018】
実施形態のカール部28は、内向きフランジ部27の縦片部27bに延長部分(カール部28になる部分)が連接している状態で、縦片部27bの延びる上下方向から上下一対の金型で挟持することによって、縦片部27bの延長部分を径方向外側に折り返しつつカールさせる。そして、上下一対の金型での挟持工程を進行させ、天板23における内径側の先端面40を、内向きフランジ部27の横片部27aから縦片部27bの順に突き当てて折り曲げることによって、横片部27aに当接する第1角部41と、縦片部27bに当接する第2角部42とを折り曲げ形成しながら、カール部28が断面渦巻き状に形成される。
【0019】
カール部28のうち内向きフランジ部27から遠い側には、断面円弧状の湾曲部28aが形成されている。容器本体2を蓋体3で塞いだ状態では、蓋体3の平板部35と嵌合凸部の内壁部36aとがカール部28の湾曲部28aに当接する。湾曲部28aのうち嵌合凸部36の内壁部36aに対峙する側と、天板23における嵌合凹部26の内壁部26aとは同一平面上に位置している。従って、容器本体2を蓋体3で塞いだ状態では、嵌合凸部36の内壁部36aと嵌合凹部26の内壁部26aとが密接すると共に、蓋体3の平板部35と嵌合凸部36の内壁部36aとがカール部28の湾曲部28aに当接する。このため、容器本体2を蓋体3で塞いだ状態では、容器本体2を傾けたり逆さまにしたりしても、容器本体2内の液体が外部に漏れ出すおそれはない。
【0020】
図9~11を参照して、第1~3実施例について説明する。なお、内向きフランジ部27以外の構成及び作用については、上記実施形態で説明したとおりであるため、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0021】
<第1実施例>
第1実施例の内向きフランジ部27は、嵌合凹部26のうち径方向内側の内壁部26a上端側から縮径方向斜め下向きに屈曲形成した横片部27aと、横片部27aから上方へ垂直に屈曲形成した縦片部27bとで構成されている。このため、仮に、第2密閉空間S2内にまで液体が浸入したとしても、横片部27aが縮径方向斜め下向きに延びると共に縦片部27b上向きに延びていることで、液体は第2密閉空間S2内に溜まることになる。従って、収容物としての液体が水性であったとしても、第1密閉空間S1内にまで液体を浸入させるおそれをより確実に抑制できる。
【0022】
<第2実施例>
第2実施例の内向きフランジ部27は、嵌合凹部26のうち径方向内側の内壁部26a上端側から縮径方向平行に屈曲形成した横片部27aと、横片部27aから上方へ垂直に屈曲形成した縦片部27bとで構成されている。このため、仮に、第2密閉空間S2内にまで液体が浸入したとしても、縦片部27bが上向きに延びていることで、液体は第2密閉空間S2内に溜まることになる。従って、収容物としての液体が水性であったとしても、第1実施例と同様に、第1密閉空間S1内にまで液体を浸入させるおそれを抑制できる。
【0023】
<第3実施例>
第3実施例の内向きフランジ部27は、嵌合凹部26のうち径方向内側の内壁部26a上端側から縮径方向斜め上向きに屈曲形成した横片部27aと、横片部27aから上方へ垂直に屈曲形成した縦片部27bとで構成されている。このため、仮に、第2密閉空間内にまで液体が浸入したとしても、横片部27aが縮径方向斜め上向きに伸びていることで、液体が横片部27aを縮径方向へ登るように浸入することがない。従って、液体は第2密閉空間S2内にも溜まることがなく、収容物としての液体が水性であったとしても、第1及び第2実施例と同様に、第1密閉空間S1内にまで液体を浸入させるおそれをより確実に抑制できる。
【0024】
以上のことから明らかなように、実施形態によると、例えば蓋体3の裏面に付着していた収容物としての液体が嵌合凸部36等を伝ってカール部28外からカール部28内に浸入しようとしても、カール部28の各角部41,42と内向きフランジ部27との当接部分が関所となって液体の浸入を塞ぎ止めできる。従って、収容物としての液体が水性であったとしても、第1密閉空間S1内の先端面40に、液体が付着して錆びを生ずるおそれを大幅に抑制できる。仮に、カール部28の各角部41,42と内向きフランジ部27との当接部分(関所)を液体が通過したとしても、第2密閉空間S2が液溜りスペースとなって、第1密閉空間S1内にまで液体を浸入させるおそれをより確実に抑制できる。
【0025】
さらに、本実施形態によると、容器本体2を蓋体3で塞いだ状態では、嵌合凸部36の内壁部36aと嵌合凹部26の内壁部26aとが密接すると共に、蓋体3の平板部35と嵌合凸部36の内壁部36aとがカール部28の湾曲部28aに当接する。従って、容器本体2を蓋体3で塞いだ状態では、容器本体2を傾けたり逆さまにしたりしても、容器本体2内の液体が外部に漏れ出すおそれはない。
【0026】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば、他の実施例として、カール部28は、内向きフランジ部27寄りの箇所に、第1~第n角部という2つ以上(n≧2)の角部を有していてもよい。即ち、第1~第n角部は、内向きフランジ部27の横片部27a又は縦片部27bに各々当接していればよい。また、容器本体2は角筒状等であっても構わない。蓋体3も角筒状等であっても構わない。容器本体2に収容される収容物の種類も特に問わない。
【符号の説明】
【0027】
1 金属製缶
2 容器本体
3 蓋体
20 開口部
21 缶胴
22 底板
23 天板
24,25 巻締め部
26 嵌合凹部
26a 内壁部
27 フランジ部
27a 横片部
27b 縦片部
28 カール部
28a 湾曲部
35 平板部
36 嵌合凸部
36a 内壁部
40 先端面
41 第1角部
42 第2角部
S1 第1密閉空間
S2 第2密閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11