(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080808
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0059 20190101AFI20240610BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240610BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20240610BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F24F1/0059
F25B1/00 396B
F25B39/00 D
F25B13/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194050
(22)【出願日】2022-12-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 政ミン
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】多田 修平
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
【テーマコード(参考)】
3L051
3L092
【Fターム(参考)】
3L051BE05
3L092BA12
(57)【要約】
【課題】非共沸混合冷媒を用いた空気調和機において、より簡易に熱交換の効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】非共沸混合冷媒を用いる空気調和機であって、複数列の伝熱管が配置された熱交換器を有し、前記熱交換器が蒸発器として用いられる場合に前記熱交換器に前記冷媒が流入する流入口近傍に対応する位置で、かつ前記流入口よりも風下側の位置に、蒸発器が配置されない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共沸混合冷媒を用いる空気調和機であって、
複数列の伝熱管が配置された熱交換器を有し、
前記熱交換器が蒸発器として用いられる場合に前記熱交換器に前記非共沸混合冷媒が流入する流入口の近傍に対応する位置で、かつ前記流入口よりも風下側の前記位置に、蒸発器が配置されない、空気調和機。
【請求項2】
前記位置に、前記伝熱管が配置されない、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記位置に、凝縮器が配置される、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記流入口を含む前記伝熱管の列の風下側である前記位置に、前記蒸発器が配置されない、請求項1乃至3の何れか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記非共沸混合冷媒は、温度勾配が3℃以上である、請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機において、地球温暖化防止のためにGWP(地球温暖化係数)が低い冷媒を用いることが要望されている。GWPが低い冷媒としては、非共沸混合冷媒が提案されている。非共沸混合冷媒は、単一の組成の冷媒と異なり、温度勾配がある。すなわち、非共沸混合冷媒は、一定の圧力である熱交換器内部において、蒸発(または凝縮)開始温度と終了温度と、が異なる。
図1のp-h線図に、冷凍サイクルにおける非共沸混合冷媒の状態を示す。
図1に示すように、被共沸混合冷媒は、蒸発の工程(D→Aの工程)で、圧力一定のまま、温度が上昇する。
特許文献1には、非共沸混合冷媒を用いた空気調和機において、暖房時、冷房時とも、熱交換器の性能を有効に使うために、熱交換器が凝縮器の場合でも蒸発器の場合でも同じ方向に流れるように冷媒流路を変更する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、暖房時と冷房時とで冷媒の流路を変更するため、流路を変更するための装置を設けることが必要となり、構造が複雑になるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、非共沸混合冷媒を用いた空気調和機において、より簡易に熱交換の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非共沸混合冷媒を用いる空気調和機であって、複数列の伝熱管が配置された熱交換器を有し、前記熱交換器が蒸発器として用いられる場合に前記熱交換器に前記冷媒が流入する流入口近傍に対応する位置で、かつ前記流入口よりも風下側の位置に、蒸発器が配置されない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非共沸混合冷媒を用いた空気調和機において、より簡易に熱交換の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態1に係る空気調和機の外観構成図である。
【
図3】空気調和機の冷凍サイクルを説明する図である。
【
図6】非共沸混合冷媒を用いる際に生じる事態を説明する図である。
【
図7】温度勾配と熱交換の効率との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0010】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る空気調和機1の外観構成を示す図である。本実施形態では、空気調和機1に用いられる冷媒は、非共沸混合冷媒である。本実施形態の空気調和機1に用いられる非共沸混合冷媒は、熱交換のための性能を確保するための冷媒(例えば、R32、R125等)と、GWPが比較的低い既定の冷媒(例えば、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1123、HFO1132a、HFO-1132(E)R744、R290、R600a、CF3I(トリフルオロヨードメタン)等)と、が混合された冷媒である。本実施形態の空気調和機1に用いられる非共沸混合冷媒は、熱交換のための性能を確保するための冷媒と、GWPが比較的低い冷媒と、が温度勾配を3℃以上とするような割合で、混合された冷媒である。ここで、温度勾配とは、冷媒の蒸発(又は凝縮)開始温度と蒸発(又は凝縮)終了温度との差である。
【0011】
図2に示すように、空気調和機1は、室内に設置される室内機10と、屋外に設置される室外機20と、ユーザによって操作されるリモコン30と、を備えている。
【0012】
室内機10は、リモコン通信部11を備えている。リモコン通信部11は、赤外線通信等によって、リモコン30との間で所定の信号を送受信する。例えば、リモコン通信部11は、運転/停止指令、設定温度の変更、運転モードの変更、タイマの設定等の信号をリモコン30から受信する。また、リモコン通信部11は、室内温度の検出値等をリモコン30に送信する。なお、
図1では省略しているが、室内機10と室外機20とは、冷媒配管を介して接続されるとともに、通信線を介して接続されている。
【0013】
図3は、第1の実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路Qを示す図である。なお、
図3に示す実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。また、
図3に示す破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
【0014】
室内機10は、リモコン通信部11のほかに、室内熱交換器12と、室内ファン14とを備えている。室内熱交換器12において、その伝熱管を通流する冷媒と、室内ファン14から送り込まれる室内空気と、の間で熱交換が行われる。室内熱交換器12は、後述の四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。本実施形態では、室内機10は、3つの室内熱交換器12を備える。室内ファン14は、室内熱交換器12の付近に設置されている。室内ファン14は、モータの駆動によって、室内熱交換器12に室内空気を送り込む。
【0015】
室外機20は、圧縮機21と、室外熱交換器22と、室外ファン23と、室外膨張弁24(膨張弁)と、四方弁25とを備えている。圧縮機21は、圧縮機モータ21aの駆動によって、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。室外熱交換器22において、その伝熱管を通流する冷媒と、室外ファン23から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる。室外熱交換器22は、四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。
【0016】
室外ファン23は、
図3に示すように、室外熱交換器22の付近に設置されている。室外ファン23は、モータの駆動によって、室外熱交換器22に外気を送り込む。室外膨張弁24は、「凝縮器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、室外膨張弁24において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の他方)に導かれる。
【0017】
四方弁25は、空気調和機1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。四方弁25の切り替えにより、冷房運転時には、破線矢印で示すように、圧縮機21、室外熱交換器22(凝縮器)、室外膨張弁24、及び室内熱交換器12(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。また、四方弁25の切り替えにより、暖房運転時には、実線矢印で示すように、圧縮機21、室内熱交換器12(凝縮器)、室外膨張弁24、及び室外熱交換器22(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。すなわち、圧縮機21、「凝縮器」、室外膨張弁24、及び「蒸発器」を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路Qにおいて、前記した「凝縮器」及び「蒸発器」の一方は室外熱交換器22であり、他方は室内熱交換器12である。
【0018】
図4は、室内機10における室内熱交換器12及び室内ファン14の室内機10の背面に垂直でかつ室内機10の上下方向に平行な断面図である。室内熱交換器12は、3つのユニットに分かれ、それぞれ室内ファン14の上部から前面までを覆うように配置されている。以下、
図4に示すような3次元座標におけるx軸方向(紙面の奥行方向)を室内機10の横方向、y軸方向(紙面の縦方向)を室内機10の上下方向(紙面上側が上方向)、z軸方向(紙面の横方向)を室内機10の奥行き方向とする。
【0019】
室内機10は、背面が壁に面するように、部屋の天井近くに設置される。
図4においては、紙面の左下側に被空調空間としての部屋が広がっており、室内ファン14は、部屋の温度を調整するように風を流す構造となっている。
【0020】
空気は、室内ファン14の駆動により、室内機10の上部側から室内機10に吸い込まれ、フィルター装置(図示せず)によって大きな埃などが除去され、室内熱交換器12へ流入し、通過する。この際、室内熱交換器12を流れる冷媒と、室内熱交換器12を通過する空気と、の間で熱交換が行われる。室内ファン14は、室内熱交換器12により熱交換が行われた空気を被空調空間に送風する。
【0021】
図5に、本実施形態の室内熱交換器12の構成を示す。室内熱交換器12は、空気調和の際に空気が流れる方向に沿って配置された複数列(本実施形態では、2列)の伝熱管を備える。室内熱交換器12に含まれる伝熱管の列のうち風上側の列を風上列121とする。また、室内熱交換器12に含まれる伝熱管の列のうち風下側の列を風下列122とする。各伝熱管の周囲には、フィンが接続されている。フィンは、厚さ0.1mm程度のアルミ板であり、1mm程度の間隔で、室内熱交換器12の横方向に連なっている。フィンと伝熱管は密着しており、伝熱管の内部を冷媒が通過する。
図4、5において室内熱交換器12の内部に示された複数の円12aは、伝熱管を示している。また、
図5において、冷媒の複数の流入口をE1で示し、冷媒の複数の流出口をE2で示す。
【0022】
本実施形態では、風上列121の伝熱管それぞれは、一方の端部に、室内熱交換器12が蒸発器として用いられる場合(冷房運転の場合)における冷媒の流入口E1を備える。以下では、室内熱交換器12が蒸発器として用いられる場合の冷媒の流入口E1を、単に流入口E1とする。また、風上列121の伝熱管それぞれの他方の端部は、風下側に配置された風下列122の伝熱管それぞれにU字管(不図示)で接続されている。このように、本実施形態の室内熱交換器12では、風上列121に含まれる各伝熱管に設けられた複数の流入口E1それぞれから、風下列122の各伝熱管に設けられた複数の流出口E2まで延びる、伝熱管の数と同様の数の複数の冷媒の流路(パス)が形成される。
【0023】
室外機20から流出した冷媒は、分配されて、室内熱交換器12それぞれに向かう。そして、室内熱交換器12に向かった冷媒は、
図5に示すように、分配されて、風上列121の伝熱管それぞれの流入口E1から室内熱交換器12に流入する。流入した冷媒は、
図5の細矢印が示すように、風上列121の伝熱管及び接続された風下列122の伝熱管を通過し、流出口E2から流出し、室外機20に向かう。
【0024】
本実施形態の室内熱交換器12は、冷媒の流入口E1の近傍に対応する位置で、かつこの流入口E1よりも風下側(室内熱交換器12から空気が流出する方向)の位置に、蒸発器を配置しないよう構成されている。ここで、流入口の近傍に対応するに位置とは、流入口E1の近傍の領域を通過した風が通過する領域である。本実施形態では、
図5のように、風上列121における流入口E1の近傍の領域から見て、風下方向には、風下列122の伝熱管自体が配置されていない。また、風上列121における流入口E1の近傍の領域から見て、風下方向には、蒸発器として機能する伝熱管以外の部材(フィン、ヘッダ、集合管等)についても配置されていない。本実施形態では、流入口E1の近傍の領域とは、流入口E1を備える伝熱管における領域であって、流入口E1である端部と、この端部から他方の端部の方向に所定の距離(例えば、伝熱管の半分以下の長さ、5cm等)進んだ位置と、の間の領域である。
【0025】
以上、本実施形態では、室内熱交換器12は、冷房運転の場合(室内熱交換器12が蒸発器として機能する場合)の冷媒の流入口E1の近傍の領域からみて、風下方向には伝熱管を配置しないよう構成される。
【0026】
ここで、
図6を用いて、流入口の近傍の領域に対応する位置の風下方向にも伝熱管が配置されるように構成された室内熱交換器12を用いる場合に生じうる事態を説明する。
図6は、風上列121と風下列122とを、伝熱管の延伸方向及び風上列121と風下列122との並ぶ方向に垂直な方向から見た様子を示す。
図6の例では、風上列121の各伝熱管の風下側には、同様の伝熱管が風下列122として配置されている。
図6の例では、冷房運転の場合の冷媒の流入口の近傍の領域から見て、風下側にも伝熱管が配置されている。
図6の伝熱管中の矢印は、冷房運転の場合における冷媒の流れる方向を示す。冷媒は、流入口E1から流入し、風上列121を流れた後風下列122に流れ込み、流出口E2から流出する。本実施形態の冷媒は、非共沸混合冷媒であるため、冷房運転の際に室内熱交換器12に流入した冷媒の温度は、流入口E1に近いほど低く、流出口E2に近いほど高くなる。すなわち、冷媒の温度は、冷媒の流入口近傍で、他の位置よりも低くなる。そのため、冷媒の流入口近傍では、空気が最も冷やされる。
【0027】
図6の例では、室内熱交換器12における冷媒の流入口近傍では、冷媒の温度が-1℃であるのに対し、冷媒の流出口近傍では、冷媒の温度が5℃である。ここで、7℃の空気が室内熱交換器12に流入する場合、室内熱交換器12における冷媒の流入口近傍では、空気の冷却の度合いが最も大きいため、次のような事態が生じうる。すなわち、風上列121の伝熱管及びフィンにより冷やされた空気の温度(
図6の例では、3℃)が、風下側に存在する伝熱管及びフィンの温度(
図6の例では、5℃)よりも低くなる。これにより、風下側に存在する伝熱管及びフィンは、風上列121の伝熱管及びフィンを通過した空気から熱を奪うのではなく、奪われてしまう。すなわち、伝熱管内で冷媒の蒸発ではなく凝縮が起こってしまう。結果として、蒸発器として機能する室内熱交換器12における熱交換の効率が低下する。
【0028】
本実施形態のように、流入口の近傍の領域から見て、風下方向に伝熱管を配置しないよう構成された室内熱交換器12を用いることで、以下のようになる。すなわち、冷媒の流入口近傍で熱を奪われた空気は、風下列122を通らず、したがって、温度が上がることなく、被空調空間に吹き出される。このように、空気調和機1は、蒸発器として機能する室内熱交換器12における熱交換の効率を向上させることができる。また、本実施形態の空気調和機1は、暖房運転の場合と冷房運転の場合とで(室内熱交換器12が凝縮器である場合と蒸発器である場合とで)、室内熱交換器12における冷媒の流れを同じ方向にすることを要しない。そのため、本実施形態の空気調和機1は、これらの場合で冷媒流路を切り換えるための装置を要さず、構造を複雑にせず、より簡易に、室内熱交換器12における熱交換の効率を向上させることができる。また、本実施形態では、流入口の近傍の領域に対応するに位置に伝熱管自体を配置しないととした。これにより、本実施形態の空気調和機1は、配置する伝熱管を削減でき、コストを低減できる。
【0029】
さらに、
図6を参照しつつ説明した、風上列121及び風下列122の各位置における冷媒温度の変化から、例えば、風上列121の長さ、すなわち風上列121の伝熱管の長さの少なくとも半分までの範囲に蒸発器が配置されないことが好ましい。
【0030】
また、本実施形態では、冷媒として温度勾配が3℃以上の非共沸混合冷媒が用いられるとした。
図6と同様の構成の室内熱交換器12を備える空気調和機1に対して、温度勾配の値が異なる様々な非共沸混合冷媒を用いて、冷房運転の際に室内熱交換器12で凝縮がどの程度起こるかの調査結果を
図7に示す。
図7のグラフは、横軸が冷媒の温度勾配を示し、縦軸が風下列122の伝熱管において冷媒の凝縮が起こった範囲の大きさを示す。
図7に示されるように、冷媒の温度勾配が3℃以上になると、凝縮が起こる範囲も大きくなる。そのため、冷媒として温度勾配が3℃以上の非共沸混合冷媒が用いられる場合に、冷媒の流出口近傍の領域から見て風下側に伝熱管を配置しないようにすることで、より効率的に熱交換の効率の低下を抑制できる。
【0031】
(付記)
室内熱交換器12は、流入口の近傍領域に対応した、風下側に蒸発器が配置されない構成であればよく、そのための具体的な構成は、実施形態に限定されるものではない。例えば、室内熱交換器12は、風上列121に含まれる伝熱管の一部に、冷媒の流入口が設けられ、不図示のU字管により、風上列121における他の伝熱管に接続された後で、風下列122に流れ込む、冷媒が2パスで流れる構成であってもよい。例えば、
図8に示すように、冷媒が、風上列121の伝熱管のうち最上段と上から2段目の2つの伝熱管から、室内熱交換器12に流入するようにしてもよい。
図8では、流入口をE1で示し、冷媒の流出口をE2で示す。この場合、2つの流入口E1を入口とする冷媒流路は、風上列121の伝熱管を、不図示のU字管を介して、順に下に流れ、最下段と下から2段目に続くように接続される。各冷媒流路は、続いて、風下列122の最下段と下から2段目に接続され、冷媒が風下列122の伝熱管を順に上に流れ、2つの流出口E2に到達するように接続される。
【0032】
また、
図9に示すように、風上列121の伝熱管のうち、最上段と2段目の2つの伝熱管と、上から5段目と6段目の2つの伝熱管に流入口が設けられた、4パスの構成であってもよい。
図9では、流入口をE1で示し、冷媒の流出口をE2で示す。
図9の例では、最上段と、2段目に設けられた流入口E1を入口とする冷媒流路は、風上列121の4、3段目の伝熱管に接続され、続いて、風下列122の4、3段目に接続され、風下列122の最上段と、2段目の流出口E2に到達するように接続される。
図9に示す、5、6段目の流入口は、同様に風上列121の8、7段に接続され、風下列122の8、7段目に接続され、さらに、風下列122の5、6段目に接続される。このように、冷媒の流入口となる伝熱管同士は、風上列121内で離れていても(隣接しなくても)よい。
【0033】
いずれの場合も、例えば、室内熱交換器12には、流入口から流入した冷媒が全ての伝熱管を通るように冷媒の流路が形成される。より具体的には、伝熱管同士をU字管で接続することで、冷媒の流路が形成される。冷媒の流路は、任意であるが、例えば、冷媒が風上列121の伝熱管を通過した後で、風下列122の伝熱管を通り、室内熱交換器12の外部へ流出するような流路が形成されてもよい。また、冷媒の流路として、冷媒が風上列121の伝熱管と、風下列122の伝熱管と、を交互に通り、風上列121の伝熱管又は風下列122の伝熱管から外部へ流出するような流路が形成されてもよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、流入口の近傍の領域は、流入口を備える伝熱管における領域であって、流入口である端部から、この端部から他方の端部の方向に既定の距離進んだ位置までの領域であるとした。ただし、流入口の近傍の領域は、流入口(室外機20から流入する流入口)を備える伝熱管における少なくとも一部の領域であれば、他の領域でもよい。例えば、流入口の近傍の領域は、伝熱管における冷媒の温度が既定の温度(例えば0℃等)以下となる範囲の領域であってもよい。また、流入口の近傍の領域は、室外機20から冷媒が流入した伝熱管の全領域であってもよい。この場合、例えば、
図10に示すように、室外機20から冷媒が流入した伝熱管の列の風下側には、室内熱交換器12(風下列122の伝熱管)が配置されないこととしてもよい。ここで、伝熱管の列とは、流入口が設けられた伝熱管の一端(流入口側)から他端までの間である。これにより、
図5のように、冷媒の流入口を備える伝熱管の風下側に、他の伝熱管よりも短い伝熱管を配置しなくてもよくなる。このため、他の伝熱管よりも短い伝熱管の製造の手間が軽減できる。
【0035】
また、上述の実施形態では、室内熱交換器12は、冷房運転の場合の冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下側に蒸発器として機能する部材が配置されないよう構成されるとした。ただし、室内熱交換器12は、蒸発器として機能しない部材(伝熱管、フィン、ヘッダ、集合管等)であれば、凝縮器を冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下側に配置されるよう構成されてもよい。例えば、蒸発器でなく凝縮器として用いられる伝熱管であれば、冷房運転の場合の冷媒の流入口の近傍の領域に対応する位置に配置されてもよい。この場合、室内熱交換器12は、
図11のように構成されてもよい。
図11では、風上列121における流入口を備える伝熱管の風下側に配置された風下列122の伝熱管は、流入口の近傍の領域から見て風下側に配置される部分(第1部分)122aと、その他の部分(第2部分)122bと、で構成される。
図11の例では、第1部分122aと第2部分122bとを接続する配管と、第1部分122aと室外機20とを接続する配管と、の間をバイパスする配管(バイパス管)123が設けられている。バイパス管123には、第1部分122aと室外機20とを接続する配管から、第1部分122aと第2部分122bとを接続する配管への冷媒の流れを防止する逆止弁124が設けられている。また、第1部分122aと室外機20とを接続する配管において、バイパス管123との接続部分と第1部分122aとの間には、バイパス管123との接続部分から第1部分122aへの冷媒の流れを防止する逆止弁125が設けられている。これにより、冷房運転の場合(室内熱交換器12が蒸発器として機能する場合)、第1部分122aに冷媒が流れないため、上述の実施形態と同様に、熱交換効率を向上させる効果が得られる。また、暖房運転の場合(室内熱交換器12が凝縮器として機能する場合)、第1部分122aに冷媒が流れ、第1部分122aにおいても熱交換が行われ空気を暖めることができ、暖房効果を向上できる。
【0036】
また、上述の実施形態では、空気調和機1は、冷房運転の場合に室外機20からの冷媒が複数の伝熱管に分配されるとした。ただし、空気調和機1は、冷房運転の場合に室外機20からの冷媒が分配されない、1パスの構成であってもよい。
【0037】
また、上述の実施形態では、室内熱交換器12は、空気の流れる方向に2列に並べられた伝熱管を備えるとした。ただし、室内熱交換器12は、空気の流れる方向に並べられた3列以上の伝熱管を備えてもよい。室内熱交換器12において、冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下方向に、蒸発器としての伝熱管が配置されない。そのため、3列目以降の列においても冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下方向の部分については、蒸発器として伝熱管が配置されない。
【0038】
また、上述の実施形態では、室内熱交換器12は、蒸発器として用いられる場合における冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下側に、室内熱交換器12が蒸発器として用いられる場合に熱交換に用いられる伝熱管が配置されないよう構成されるとした。さらに、室外熱交換器22についても、室内熱交換器12と同様に構成されてもよい。すなわち、室外熱交換器22は、蒸発器として用いられる場合(暖房運転の場合)における冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下側に、室内熱交換器12が蒸発器として用いられる場合に熱交換に用いられる伝熱管が配置されないよう構成されてもよい。これにより、暖房運転の際の室外熱交換器22における熱交換の効率の低下を抑制できる。また、室外熱交換器22のみについて、蒸発器として用いられる場合における冷媒の流入口の近傍の領域から見て風下側に、室内熱交換器12が蒸発器として用いられる場合に熱交換に用いられる伝熱管が配置されないよう構成されてもよい。
【0039】
以上、空気調和機について、上述した実施形態をもって詳細に説明してきた。ただし、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 空気調和機
10 室内機
11 リモコン通信部
12 室内熱交換器
121 風上列
122 風下列
123 バイパス管
124 逆止弁
125 逆止弁
14 室内ファン
20 室外機
21 圧縮機
21a 圧縮機モータ
22 室外熱交換器
23 室外ファン
24 室外膨張弁
25 四方弁
30 リモコン
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共沸混合冷媒を用いる空気調和機であって、
複数列の伝熱管が配置された熱交換器を有し、
前記熱交換器が蒸発器として用いられる場合に前記熱交換器に前記非共沸混合冷媒が流入する流入口の近傍に対応する位置で、かつ前記流入口よりも風下側の前記位置に、蒸発器が配置されず、凝縮器が配置される、空気調和機。
【請求項2】
前記位置に、前記伝熱管が配置されない、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記流入口を含む前記伝熱管の列の風下側である前記位置に、前記蒸発器が配置されない、請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記非共沸混合冷媒は、温度勾配が3℃以上である、請求項1に記載の空気調和機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、非共沸混合冷媒を用いる空気調和機であって、複数列の伝熱管が配置された熱交換器を有し、前記熱交換器が蒸発器として用いられる場合に前記熱交換器に前記冷媒が流入する流入口近傍に対応する位置で、かつ前記流入口よりも風下側の位置に、蒸発器が配置されず、凝縮器が配置される。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共沸混合冷媒を用いる空気調和機であって、
複数列の伝熱管が配置された熱交換器を有し、
前記熱交換器が蒸発器として用いられる場合に前記熱交換器に前記非共沸混合冷媒が流入する流入口の近傍に対応する位置で、かつ前記流入口よりも風下側の前記位置に、蒸発器が配置されず、凝縮器が配置される、空気調和機。
【請求項2】
前記流入口を含む前記伝熱管の列の風下側である前記位置に、前記蒸発器が配置されない、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記非共沸混合冷媒は、温度勾配が3℃以上である、請求項1に記載の空気調和機。