(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080825
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】検査支援装置、及び検査支援方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240610BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240610BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06Q50/08
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194091
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 訓行
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 匠
(72)【発明者】
【氏名】安江 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁崇
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
【テーマコード(参考)】
2G051
5L049
5L050
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB03
2G051AB07
2G051CA04
2G051ED09
2G051FA02
5L049CC07
5L050CC07
5L096CA02
5L096EA11
5L096GA08
5L096JA03
(57)【要約】
【課題】 検査対象部位の撮影画像に基づいて当該部位の状態を特定する建物の検査を、適切に且つ容易に行うための検査支援装置、及び検査支援方法を提供する。
【解決手段】 検査支援装置10が、建物の検査対象部位を設定する設定部31と、データベースサーバ11に記憶された検査対象部位の仕様に関する仕様情報に基づいて、検査対象部位の撮影に関する支援情報をユーザに対して提示する提示部32と、検査対象部位の撮影画像を取得する取得部33と、撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定する特定部36と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の検査対象部位を設定する設定部と、
記憶装置に記憶された前記検査対象部位の仕様に関する仕様情報に基づいて、前記検査対象部位の撮影に関する支援情報をユーザに対して提示する提示部と、
前記検査対象部位の撮影画像を取得する取得部と、
前記撮影画像を解析して、前記検査対象部位の状態を特定する特定部と、を備える検査支援装置。
【請求項2】
前記支援情報は、前記検査対象部位を撮影する際の撮影範囲に関するガイド情報を含み、
前記提示部は、ユーザが前記検査対象部位を撮影する際に用いる機器の表示画面に前記ガイド情報を表示させる、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項3】
前記記憶装置には、前記仕様情報が、前記建物の部位と関連付けて前記部位毎に記憶されており、且つ、前記部位の仕様に応じた前記支援情報が前記部位毎に記憶されており、
前記提示部は、前記記憶装置に記憶された前記部位毎の前記支援情報のうち、前記検査対象部位と対応する前記支援情報をユーザに提示する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記建物の図面を表示画面に表示させ、ユーザが前記表示画面において前記検査対象部位の位置を指定する指定操作を受け付け、指定された前記位置に応じて前記検査対象部位を設定する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記図面が複数の領域に区画された状態で前記図面を表示し、ユーザが前記複数の領域のうち、前記検査対象部位を含む領域を指定する前記指定操作を受け付け、指定された前記領域の位置に応じて前記検査対象部位を設定する、請求項4に記載の検査支援装置。
【請求項6】
前記仕様情報に基づいて、前記撮影画像のうち、前記検査対象部位の範囲を抽出する抽出部を備え、
前記特定部は、抽出された前記範囲を解析して、前記検査対象部位の状態を特定する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項7】
前記特定部は、第1時点に撮影された前記撮影画像である第1撮影画像と、前記第1時点よりも後の第2時点に撮影された前記撮影画像である第2撮影画像とに基づいて、前記第1時点から前記第2時点までの前記検査対象部位の状態の変化を特定する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項8】
前記第1時点は、前記建物の建設完了時点、又は前記検査対象部位の修繕完了時点、又は前記検査対象部位についての前回の検査時点である、請求項7に記載の検査支援装置。
【請求項9】
前記特定部は、前記検査対象部位の状態の変化として、前記検査対象部位の表面色の変化、又は前記検査対象部位の表面における損傷箇所の変化を特定する、請求項7に記載の検査支援装置。
【請求項10】
前記撮影画像に対して補正処理を実行する補正部を備え、
前記補正部は、前記撮影画像に対して、前記仕様情報に基づいて、前記検査対象部位を正面から見た場合の画像に変換する補正処理を実行し、
前記特定部は、補正後の前記撮影画像を解析して、前記検査対象部位の状態を特定する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項11】
前記撮影画像に対して補正処理を実行する補正部を備え、
前記仕様情報が前記検査対象部位の色に関する情報を含む場合に、前記補正部は、前記撮影画像に対して、前記仕様情報に基づいて前記撮影画像中の前記検査対象部位の色を修正する補正処理を実行し、
前記特定部は、補正後の前記撮影画像を解析して、前記検査対象部位の状態を特定する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項12】
前記撮影画像に対して補正処理を実行する補正部を備え、
前記補正部は、前記撮影画像に対して、前記撮影画像の撮影条件に基づく補正処理を実行し、
前記特定部は、補正後の前記撮影画像を解析して、前記検査対象部位の状態を特定する、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項13】
前記特定部により特定された前記検査対象部位の状態に関する情報を、前記検査対象部位と関連付けて保存する保存部を備える、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項14】
前記特定部により特定された前記検査対象部位の状態に関する情報を、前記検査対象部位と対応付けて出力する出力部を備える、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項15】
前記出力部は、前記建物の図面が表示された表示画面において、前記検査対象部位の状態に関する情報を、前記図面における前記建物の各部位の位置と当該各部位の状態に関する情報の表示位置との位置関係を規定したデータに基づき、前記図面中の前記検査対象部位と対応する位置に表示させる、請求項14に記載の検査支援装置。
【請求項16】
前記特定部により特定された前記検査対象部位の状態に基づいて、前記検査対象部位の修繕費用を算出する算出部をさらに備える、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項17】
前記撮影画像を提供したユーザに対して、ポイントを付与する処理を実行するポイント付与部をさらに備える、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項18】
プロセッサが、
建物の検査対象部位を設定する処理と、
記憶装置に記憶された前記検査対象部位の仕様に関する仕様情報に基づいて、前記検査対象部位の撮影に関する支援情報をユーザに対して提示する処理と、
前記検査対象部位の撮影画像を取得する処理と、
前記撮影画像を解析して、前記検査対象部位の状態を特定する処理と、を実行する検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の検査対象部位を検査する際に利用される検査支援装置及び検査支援方法に係り、特に、検査対象部位の撮影画像から当該部位の状態を特定する検査支援装置及び検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の検査対象部位の状態を検査又は診断する場合、専門知識、経験及び技能が必要であった。そのため、これまでの建物の検査では、専門の検査員が建物の建設地(以下、現地ともいう)を訪れて、検査対象部位の状態を目視で判定していた。
【0003】
一方、建物の検査方法としては、建物の検査対象部位を撮影し、その撮影画像に基づいて当該部位の状態、又は劣化や変状の進行度合いを特定することが、既に知られている。その検査方法を実現するための装置の一例としては、特許文献1に記載の情報処理装置が挙げられる。特許文献1の情報処理装置は、第1の日時において対象物を撮影した第1の画像と、第1の日時とは異なる第2の日時において対象物を撮影した第2の画像を対比し、第1の日時と第2の日時との間の対象物の変化率を求める。これにより、対象物の変化を客観的に評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物の検査対象部位についての検査は、一般的に定期的に実施されるが、検査の実施間隔が長くなってしまうと、当該部位の状態変化に気付きにくく、例えば、前回の検査から長期間が経過した時点で検査を行った場合、その時点では、当該部位の劣化や変状が相当進行している虞がある。そのため、建物の検査の実施頻度については、極力多く設定することが求められる。しかしながら、従来のように専門の検査員に検査を依頼する場合、検査員の人数又は検査費用等の制約から、検査の実施頻度を増やすには限界がある。
【0006】
また、建物の検査方法が簡易になれば、検査員以外の者、例えば建物の利用者が自ら検査を実施することができる。ただし、専門知識及び経験がない者が建物の検査を行うために建物の検査対象部位を撮影する場合、検査に慣れていないために、検査対象部位を適切に撮影することができず、そのことが検査結果に影響を及ぼす虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検査対象部位の撮影画像に基づいて当該部位の状態を特定する建物の検査を、適切に且つ容易に行うための検査支援装置、及び検査支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明の検査支援装置によれば、建物の検査対象部位を設定する設定部と、記憶装置に記憶された検査対象部位の仕様に関する仕様情報に基づいて、検査対象部位の撮影に関する支援情報をユーザに対して提示する提示部と、検査対象部位の撮影画像を取得する取得部と、撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定する特定部と、を備えることにより達成される。
本発明の検査支援装置では、ユーザが検査対象部位を撮影する際に、検査対象部位の仕様に応じた支援情報がユーザに提示される。これにより、検査対象部位が適切に撮影され、その撮影画像に基づいて検査対象部位の状態が適切に特定される。この結果、専門知識や経験を必要とせずに、建物の検査を適切に且つ簡単に行うことができる。
【0009】
また、支援情報は、検査対象部位を撮影する際の撮影範囲に関するガイド情報を含み、提示部は、ユーザが検査対象部位を撮影する際に用いる機器の表示画面にガイド情報を表示させてもよい。
上記の構成であれば、撮影範囲に関するガイド情報を提示することで、検査対象部位を適切に撮影できるようにユーザを支援することができる。
【0010】
また、記憶装置には、仕様情報が、建物の部位と関連付けて部位毎に記憶されており、且つ、部位の仕様に応じた支援情報が部位毎に記憶されてもよい。この場合、提示部は、記憶装置に記憶された部位毎の支援情報のうち、検査対象部位と対応する支援情報をユーザに提示してもよい。
上記の構成であれば、検査対象部位を撮影する際にユーザに提示する支援情報を、検査対象部位の仕様に応じて適切に決定することができる。
【0011】
また、設定部は、建物の図面を表示画面に表示させ、ユーザが表示画面において検査対象部位の位置を指定する指定操作を受け付け、指定された位置に応じて検査対象部位を設定してもよい。
上記の構成であれば、ユーザは、建物の図面を見ながら検査対象部位を指定することができる。
【0012】
また、設定部は、図面が複数の領域に区画された状態で図面を表示し、ユーザが複数の領域のうち、検査対象部位を含む領域を指定する指定操作を受け付け、指定された領域の位置に応じて検査対象部位を設定してもよい。
上記の構成であれば、ユーザは、図面を区画する領域の単位で検査対象部位を指定することができる。そして、検査対象部位は、ユーザが指定した領域に応じて設定される。
【0013】
また、本発明の検査支援装置は、仕様情報に基づいて、撮影画像のうち、検査対象部位の範囲を抽出する抽出部を備えてもよい。この場合、特定部は、抽出された範囲を解析して、検査対象部位の状態を特定してもよい。
上記の構成であれば、撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲に基づいて、当該部位の状態を適切に特定することができる。
【0014】
また、特定部は、第1時点に撮影された撮影画像である第1撮影画像と、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像である第2撮影画像とに基づいて、第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定してもよい。
上記の構成であれば、ユーザは、検査対象部位について、第1時点から第2時点までの状態の変化(具体的には、劣化や変状の進行度合い)を把握することができる。
また、上記の構成において、第1時点は、建物の建設完了時点、又は検査対象部位の修繕完了時点、又は検査対象部位についての前回の検査時点であってもよい。
上記の構成であれば、ユーザは、検査対象部位について、建物の建設完了時点、又は検査対象部位の修繕完了時点、検査対象部位についての前回の検査時点からの状態の変化を把握することができる。
【0015】
また、特定部は、検査対象部位の状態の変化として、検査対象部位の表面色の変化、又は検査対象部位の表面における損傷箇所の変化を特定してもよい。
上記の構成であれば、ユーザは、検査対象部位について表面色の変化又は損傷箇所の変化を確認することができる。
【0016】
また、本発明の検査支援装置は、撮影画像に対して補正処理を実行する補正部を備えてもよい。そして、補正部は、撮影画像に対して、仕様情報に基づいて検査対象部位を正面から見た場合の画像に変換する補正処理を実行し、特定部は、補正後の撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定するとよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の撮影画像に基づいて当該部位の状態を特定する際に、台形補正された撮影画像を用いることで、検査対象部位の状態をより適切に特定することができる。
【0017】
また、本発明の検査支援装置は、撮影画像に対して補正処理を実行する補正部を備えてもよい。そして、仕様情報が検査対象部位の色に関する情報を含む場合に、補正部は、撮影画像に対して、仕様情報に基づいて撮影画像中の検査対象部位の色を修正する補正処理を実行し、特定部は、補正後の撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定するとよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の撮影画像に基づいて当該部位の状態を特定する際に、色補正された撮影画像を用いることで、検査対象部位の状態をより適切に特定することができる。
【0018】
また、本発明の検査支援装置は、撮影画像に対して補正処理を実行する補正部を備えてもよい。そして、補正部は、撮影画像に対して、撮影画像の撮影条件に基づく補正処理を実行し、特定部は、補正後の撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定するとよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の撮影画像に基づいて当該部位の状態を特定する際に、撮影条件に応じて補正された撮影画像を用いることで、検査対象部位の状態をより適切に特定することができる。
【0019】
また、本発明の検査支援装置は、特定部により特定された検査対象部位の状態に関する情報を、検査対象部位と関連付けて保存する保存部を備えてもよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の状態に関する情報、すなわち検査結果を保存することにより、それ以降の検査等において、保存された情報を利用することができる。
【0020】
また、本発明の検査支援装置は、特定部により特定された検査対象部位の状態に関する情報を、検査対象部位と対応付けて出力する出力部を備えてもよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の状態に関する情報、すなわち検査結果を出力することで、ユーザ等に、当該検査結果を知らせて確認してもらうことができる。
【0021】
また、上記の構成において、出力部は、建物の図面が表示された表示画面において、検査対象部位の状態に関する情報を、上記図面における建物の各部位の位置と当該各部位の状態に関する情報の表示位置との位置関係を規定したデータに基づき、図面中の検査対象部位と対応する位置に表示させてもよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の状態に関する情報を、建物の図面中の検査対象部位と対応付けて確認することができる。
【0022】
また、本発明の検査支援装置は、特定部により特定された検査対象部位の状態に基づいて、検査対象部位の修繕費用を算出する算出部をさらに備えてもよい。
上記の構成であれば、検査対象部位の修繕費用を、検査対象部位の状態(つまり、劣化や変状の進行度合い)に基づいて見積もることができる。
【0023】
また、撮影画像を提供したユーザに対して、ポイントを付与する処理を実行するポイント付与部をさらに備えてもよい。
上記の構成であれば、撮影画像の提供のインセンティブをユーザに付与することで、検査対象部位の撮影、及びその撮影画像を用いた検査をユーザに積極的に促すことができる。
【0024】
また、前述の課題は、本発明の検査支援方法によれば、プロセッサが、建物の検査対象部位を設定する処理と、記憶装置に記憶された検査対象部位の仕様に関する仕様情報に基づいて、検査対象部位の撮影に関する支援情報をユーザに対して提示する処理と、検査対象部位の撮影画像を取得する処理と、撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定する処理と、を実行することで解決される。
本発明の検査支援方法を用いることで、専門知識や経験を必要とせずに、建物の検査を適切に且つ容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、検査対象部位の撮影画像に基づいて当該部位の状態を特定する建物の検査を、適切に且つ容易に行うための検査支援装置、及び検査支援方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る検査の大まかな流れを示す図である。
【
図2】本発明の一つの実施形態に係る検査支援装置を含む検査支援システムの構成を示す図である。
【
図3】支援情報の場所誘導情報が表示された画面の一例を示す図である。
【
図4】支援情報のガイド情報が表示された画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一つの実施形態に係る検査支援装置の機能についての説明図である。
【
図6A】検査対象部位を指定する際に表示される建物の図面を示す図である。
【
図6B】建物の図面にて検査対象部位が指定されたときの画面を示す図である。
【
図7】撮影画像から検査対象部位の範囲を抽出する処理についての説明図である。
【
図8】撮影画像に対する第1補正処理についての説明図である。
【
図9】撮影画像に対する第2補正処理についての説明図である。
【
図10】撮影画像に対する第3補正処理についての説明図である。
【
図11】検査対象部位の状態に関する情報が表示された画面の一例を示す図である。
【
図13】撮影補助具を用いて検査対象部位を撮影する様子を示す図である。
【
図14】検査対象部位を指定する手順についての変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、以下の実施形態では、「住宅」を建物の一例として挙げるが、本発明は、住宅以外の建物、例えば、事務所、店舗、病院又は学校等の施設、工場内の建屋等、様々な用途の建物において実施可能である。
【0028】
また、本明細書において、「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置の組み合わせも含まれることとする。
【0029】
また、本実施形態の内容を実現するための基礎的な情報処理技術(通信/伝送技術、情報取得技術、情報記録技術、情報加工技術、情報解析技術、画像処理技術、及び可視化技術等)は、公知の技術であるため、それに関する説明については省略することとする。
【0030】
<<本実施形態に係る検査の概要>>
先ず、本実施形態に係る検査支援装置及び検査支援方法を用いて実施される検査(以下、本検査という)について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本検査の大まかな流れを示す図である。
【0031】
本検査は、住宅の各部位を対象として実施され、本実施形態では、住宅の外観に現れる部位、例えば外壁を構成する外装材を対象として実施される。ただし、本検査の対象部位については、特に限定されず、住宅の外観に現れる部位のうち、外装材以外の部位を本検査の対象としてもよく、あるいは、住宅の内部(屋内)に現れる部位を本検査の対象としてもよい。
【0032】
外装材は、住宅に設置される外壁パネルの外表面をなす化粧材であるが、化粧材間の隙間(目地)に充填されるシーリングを含めて外装材としてもよい。また、外装材は、住宅の各方位に複数配置されており、より詳しく説明すると、住宅の各方位に設けられた外壁では、鉛直方向及び水平方向のそれぞれにおいて複数の外装材が所定のピッチで並べられている。本検査では、いずれか一つの外装材、あるいは、連続して並んだ二つ以上の外装材を検査対象部位として設定する。
【0033】
本実施形態において、本検査は、ユーザが本発明の検査支援装置及び検査支援方法を利用してユーザが自ら実施する検査、すなわちセルフモニタリングである。具体的に説明すると、本検査では、ユーザが検査対象とする外装材(以下、検査対象部位ともいう)を撮影し、その撮影画像に基づいて検査対象部位の状態が特定される。検査対象部位の状態とは、検査対象部位の外観に現れる特徴又は性質であり、経時変化又は経年劣化したり、あるいは、天候や物損事故等の外的要因によって変化したりする。
【0034】
本実施形態では検査対象部位が外装材であり、検査対象部位の状態として、外装材の表面色の異常の有無、又は外装材の表面における損傷箇所の有無、あるいは、これらの両方が特定される。表面色の異常とは、色褪せや藻の付着による変色等である。表面における損傷箇所とは、ひび割れやクラック等の傷、及び破損によって形成された凹部や孔等である。また、外装材の表面に異常又は損傷箇所が存在する場合には、その位置、形状(例えば、ひび割れの延出方向等)、及びサイズ等をさらに特定してもよい。
【0035】
本検査において特定された検査対象部位の状態、すなわち検査結果は出力され、ユーザは、出力された検査結果を確認する。また、ユーザは、出力された検査結果に基づいて、検査対象部位の修繕の要否を検討し、検討結果次第では修繕を業者等に依頼する。
【0036】
ユーザは、本発明の検査支援装置の機能を利用して本検査を実施する者であり、具体的には、検査対象部位が設置された住宅の居住者、あるいは住宅のオーナー等である。そして、ユーザは、本発明の検査支援装置及び検査支援方法により、前述したように、専門業者に依頼することなく、自らが本検査を実施することができる。そのため、本実施形態では、本検査が定期的に実施され、ユーザは、検査対象部位について定点観測を行うことができる。また、同一の部位に対する検査の実施間隔は、比較的短期間に設定され、換言すると、本検査は頻繁に実施される。なお、検査の実施間隔は、任意に設定でき、例えば1週間、数週間毎、1カ月、数カ月又は1年に設定してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、同一の検査対象部位について本検査を定期的に繰り返し実施することで、当該部位の状態の変化を特定することができる。検査対象部位の状態の変化とは、当該部位の状態の良否の時間変化であり、より詳しくは、住宅の建設完了時点(竣工時点)のような過去の一時点からの変化度合いである。すなわち、検査対象部位の状態の変化は、当該部位の状態が変化している傾向を表しており、分かり易くは、当該の劣化や変状の進行度合いや過去の一時点からの差異を表している。
【0038】
なお、本実施形態では、前述したように、検査対象部位が外装材であり、状態の変化として、外装材の表面色の変化、又は外装材の表面における損傷箇所の変化、あるいは、これらの両方が特定される。表面色の変化とは、経時的な色味又は明度の変化であり、例えば色褪せ及び色落ち等である。損傷箇所の変化とは、損傷箇所の位置、形状及びサイズ等の変化である。
【0039】
特定された検査対象部位の状態の変化は出力され、ユーザは、出力された検査対象部位の状態の変化を確認する。これにより、検査対象部位が徐々に劣化又は変状していたとしても、ユーザは、その兆候を早い段階で気づくことができる。
【0040】
また、本実施形態において、本検査においてユーザが撮影した検査対象部位の撮影画像は、検査支援装置に提供される。提供された撮影画像は、データベースサーバ等の記憶装置に、その撮影画像を用いて実施された本検査の検査結果とともに保存され、保存された各種の情報は、データベースとして蓄積される。蓄積された情報は、それ以降の検査、若しくは住宅の維持管理等において利用可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、検査対象部位の撮影画像を提供したユーザに対して、その報酬としてポイントが付与される。ポイントは、商取引等に使用することが可能な有価ポイントである。例えば、ユーザは、住宅のリフォーム又は修繕を業者等に依頼する場合に、その時点で保有するポイントを使用することができる。なお、ユーザの保有ポイント数は、ポイントの使用に伴い、ポイント使用数に応じて減算される。
以上のようなポイント付与は、ユーザにとって、検査対象部位の撮影画像を提供するインセンティブとなる。つまり、ポイントが付与されることで、ユーザによる検査対象部位の撮影、及び、撮影画像を用いた検査(本検査)の実施を積極的に促すことができる。
【0042】
<<検査支援システムの構成について>>
次に、ユーザが本検査を実施する際に利用される検査支援システムSについて、
図2を参照しながら説明する。
検査支援システムSは、
図2に示すように、検査支援装置10と、記憶装置としてのデータベースサーバ11と、ユーザが利用するユーザ端末12とによって構成される。なお、
図2では、ユーザ端末12の台数が1台のみとなっているが、実際には、ユーザの人数に応じた台数のユーザ端末12が存在する。
【0043】
検査支援装置10は、コンピュータからなり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション又はサーバコンピュータ等によって構成される。検査支援装置10は、1台のコンピュータによって構成されてもよく、あるいは並列分散された複数台のコンピュータによって構成されてもよい。また、検査支援装置10を構成するコンピュータがサーバコンピュータである場合、ASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)又はIaaS(Infrastructure as a Service)用のサーバコンピュータであってもよい。この場合、クライアント端末にて必要な情報を入力すると、上記のサーバコンピュータが入力情報に基づいて各種の処理(演算)を実施し、その演算結果がクライアント端末側で出力される。つまり、検査支援装置10であるサーバコンピュータの機能をクライアント端末側で利用することができる。
【0044】
検査支援装置10を構成するコンピュータは、
図2に示すように、プロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、通信用インタフェース24、入力機器25及び出力機器26を有する。
【0045】
プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。
メモリ22は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
【0046】
ストレージ23は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等によって構成される。なお、ストレージ23は、検査支援装置10を構成するコンピュータ本体内に内蔵されてもよく、外付け形式でコンピュータ本体に取り付けてもよい。
【0047】
通信用インタフェース24は、例えばネットワークインターフェースカード、又は通信インタフェースボード等によって構成されるとよい。検査支援装置10を構成するコンピュータは、通信用インタフェース24を介して、インターネット又はモバイル通信回線等に接続された他の機器と通信することが可能である。
【0048】
入力機器25は、例えばキーボード、マウス又はタッチパネル等によって構成される。
出力機器26は、例えばディスプレイ及びスピーカ等によって構成される。
【0049】
また、検査支援装置10を構成するコンピュータには、ソフトウェアとして、オペレーティングシステム(OS)用のプログラム、及び、検査支援用のプログラムがインストールされている。これらのプログラムがプロセッサ21によって読み出されて実行されることで、検査支援装置10を構成するコンピュータが、検査支援装置10としての機能を発揮し、具体的には、本検査に係る一連の情報処理を実行する。
【0050】
データベースサーバ11は、例えば検査支援装置10を利用したサービスの運営会社、具体的には、本検査が行われる住宅の提供会社(住宅メーカ)等によって用意されたクラウド型のサーバであり、本検査に必要な各種の情報(厳密には、データ化された情報)を蓄積する。検査支援装置10は、ネットワークNを通じてデータベースサーバ11と通信可能に接続されており、データベースサーバ11に蓄積された情報を自由に読み出すことができる。
【0051】
データベースサーバ11に蓄積される情報には、ユーザに関する情報、住宅に関する情報、住宅の図面、住宅の各部位の仕様に関する仕様情報、これまでに実施された本検査に関する情報、及び、ユーザから提供された撮影画像等が含まれる。ユーザに関する情報は、ユーザの識別ID、ユーザの名前、住所及び連絡先等の個人情報、及びユーザが現時点で保有するポイント数を含む。ユーザが保有するポイントは、検査対象部位の撮影画像を提供することにより付与されたポイントである。
【0052】
住宅に関する情報は、住宅の建設地の情報、建設完了の年月日、築年数、階数、住宅の構造、修繕履歴、リフォーム履歴、及び住宅の居住者であるユーザの名前や識別ID等を含む。修繕履歴は、修繕の実施回数、並びに各回の修繕箇所及び実施時期等であり、リフォーム履歴は、リフォームの実施の有無、リフォーム箇所、及び実施時期等である。
【0053】
住宅の図面は、例えば平面図及び立面図の図面データであり、住宅における各部位の配置位置及び方位を示している。データベースサーバ11には、本検査が実施される住宅の図面が住宅毎に記憶されている。複数階建ての住宅については、各階の平面図のデータが記憶されている。また、本実施形態において、住宅の図面は、編集可能な状態で記憶されており、具体的には、本検査の検査結果を図面中の所定位置に表示されるように当該図面を編集(上書き)することができる。また、ユーザがコメント等を入力し、入力された情報が図面中に追加されるように当該図面が編集できてもよい。
【0054】
仕様情報は、住宅の部位と関連付けて部位毎に記憶されている。ここで、仕様情報が示す「部位の仕様」には、当該部位の種類や型式、形状、大きさ、材質、色及びその他の外観上の特徴、住宅における当該部位の配置位置及び高さ(レベル)、当該部位が設置された方位、並びに修繕履歴等が含まれる。修繕履歴は、修繕の内容及び実施時期等である。
本実施形態では、住宅に設けられた複数の外装材のそれぞれについて、仕様情報が外装材と関連付けて外装材毎に記憶されている。
【0055】
本検査に関する情報は、これまでに実施された本検査のそれぞれについて、検査毎に記憶されている。本検査に関する情報には、本検査を実施したユーザ、本検査が実施された住宅、本検査の実施年月日、本検査において検査対象部位として設定された外装材の場所、検査に用いられた画像を特定するための情報、並びに、検査結果(厳密には、検査対象部位の状態、又は状態の変化の特定結果)が含まれる。検査に用いられた画像を特定するための情報としては、例えば、その画像ファイルのファイル名等が挙げられる。
【0056】
ユーザから提供された撮影画像は、本検査においてユーザが撮影した検査対象部位の画像である。撮影画像には、少なくとも検査対象部位とその周辺部位が写っており、検査対象部位の場所によっては、撮影画像に背景、つまり住宅の周辺の風景が写っている場合がある。また、撮影画像には、ファイル名が付与される。さらに、撮影画像には、撮影条件に関するタグ情報としてのExif(Exchangeable image file format)情報が組み込まれている。ここで、撮影条件には、露出条件(詳しくは、ISO感度、シャッター速度、及びF値)、撮影日時、撮影時の天候、撮影場所、並びに、撮影時に後述の撮影補助具を用いたか否か等が含まれる。さらにまた、撮影者であるユーザが検査対象部位を見たときの所感や意見をコメントとして入力し、入力されたコメントが撮影画像にさらに組み込まれてもよい。
【0057】
また、データベースサーバ11には、検査対象部位の撮影に関する支援情報が記憶されている。支援情報は、検査対象部位の撮影時にユーザを支援する目的でユーザに提示される情報である。また、本実施形態において、支援情報は、本検査の事前に部位毎に生成されており、データベースサーバ11には、各部位を撮影する場合の支援情報が部位毎に記憶されている。より具体的に説明すると、本実施形態では、住宅の外壁を構成する複数の外装材のそれぞれについて、各外装材に応じた支援情報が外装材毎に用意されている。支援情報については、後の項で詳しく説明する。
【0058】
なお、データベースサーバ11には、上述の情報以外の情報が蓄積されてもよく、例えば、過去の不具合事例に関する情報や、住宅の居住者からの修繕等の申し出に関する情報が蓄積されてもよい。これらの情報は、住宅の各部位について、不具合や修繕の申し出の頻度を特定するために利用することができる。そして、特定された頻度に応じて各部位の重要度を決め、より重要度が高い部位を優先的に検査対象部位に設定してもよい。
【0059】
ユーザ端末12は、本検査時にユーザが利用する情報処理端末であり、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ラップトップ型のパソコン、又はウェアラブル端末等によって構成される。ユーザ端末12は、ディスプレイからなる表示器、及びカメラからなる撮影機器を備える。また、ユーザ端末12は、ネットワークNを通じて検査支援装置10と通信可能であり、表示器が構成する表示画面には、例えば、検査支援装置10から送信される情報が表示される。
【0060】
ユーザ端末12には、検査用のアプリケーションプログラム(以下、検査用アプリ)がインストールされている。本検査において、ユーザは、ユーザ端末12を操作して検査用アプリを起動する。そして、ユーザは、検査用アプリを通じて、住宅における検査対象部位を指定し、指定された検査対象部位を撮影し、その撮影画像を検査支援装置10に送信する。また、ユーザは、検査対象部位を撮影する際に、検査用アプリを通じて支援情報を確認することができる。具体的に説明すると、検査対象部位の撮影に際して、ユーザ端末12の表示画面に支援情報が表示される(
図3及び4参照)。ユーザは、表示された支援情報に従って、検査対象部位を撮影可能な場所へ移動し、その場所にて、支援情報にて指示される方向及び画角で検査対象部位を撮影する。
【0061】
<<支援情報について>>
次に、検査対象部位の撮影時にユーザに提示される支援情報について、
図3及び4を参照しながら説明する。
図3及び4は、支援情報が表示されたユーザ端末12の表示画面を表示している。ただし、これらの図に示す画面例は、あくまでも一例であり、画面のレイアウト及び各情報の表示位置等については、任意に決めてもよい。
【0062】
支援情報は、検査対象部位の撮影場所に関する場所誘導情報と、検査対象部位を撮影する際の撮影範囲に関するガイド情報とを含む。これらの情報は、ユーザが検査対象部位を撮影する際に用いる機器、すなわちユーザ端末12の表示画面に表示される。
【0063】
場所誘導情報は、検査対象部位が撮影可能な場所へユーザを誘導するための情報であり、具体的には、
図3に示すように、その場所を案内するテキストと、その場所から見える検査対象部位の外観を示す画像とを含む。この画像は、検査対象部位を略正面から見た場合の画像であり、検査対象部位を撮影する際の立ち位置や撮影方向を間接的に指示するものである。
ガイド情報は、検査対象部位を撮影する際の撮影範囲を指示するための情報であり、具体的には、
図4に示すように、検査対象部位を撮影するのに適正な画角及びサイズを指示する撮影ガイド用のオブジェクトである。より詳しくは、検査対象部位に対してユーザ端末12の撮影レンズの位置を合わせるためのフレーム又はマークがガイド情報に該当する。
【0064】
ユーザが検査対象部位を撮影する際には、先ず、
図3に示す場所誘導情報がユーザ端末12の表示画面に表示される。ユーザは、場所誘導情報に従って移動することで、検査対象部位を撮影可能な場所、より詳しくは、検査対象部位を正面視することができる位置に到達することができる。
【0065】
その後、
図4に示すガイド情報が、ユーザ端末12の表示画面に表示される。詳しく説明すると、ユーザ端末12の表示画面には、ユーザ端末12が備えるカメラの画角内に存在する被写体のライブビュー画像が表示され、ガイド情報は、そのライブビュー画像に重畳して表示される。そして、ユーザは、表示画面中の検査対象部位がガイド情報に対して適切な位置に至るように、例えば、検査対象部位の外縁とガイド情報としてのフレームが一致するようにユーザ端末12の位置及び姿勢を調整する。ユーザは、このように調整された位置及び姿勢でユーザ端末12を保持しながら、検査対象部位を撮影する。これにより、ユーザは、検査対象部位を適正な構図にて撮影することができる。
【0066】
ガイド情報について補足すると、ガイド情報としてのフレームの表示サイズは、検査対象部位の大きさに応じて設定されるとよい。また、検査対象部位の大きさは、当該部位を対象として判定される検査項目に応じて決められてもよい。具体的には、例えば、藻による変色や色褪せの有無を検査する場合には、検査対象部位を1枚又は2枚分の外装材(パネル)としてもよく、ひび割れの有無を検査する場合には、検査対象部位を2枚分の外装材(パネル)としてもよい。
【0067】
本実施形態において、支援情報は、住宅毎に用意され、詳しくは、各住宅において検査対象部位となり得る部位毎にデータベースサーバ11に記憶されている。より詳しく説明すると、データベースサーバ11には、各住宅について、住宅の各部位を検査対象部位として撮影する場合に利用される支援情報が部位毎に記憶されている。
【0068】
また、部位毎に用意された支援情報は、その部位の仕様に応じた情報となっている。具体的に説明すると、支援情報のうち、場所誘導情報は、住宅の各部位の配置位置、及び各部位が設けられた方位に応じて決定される。また、場所誘導情報は、例えば、本検査が実施される住宅を提供した住宅メーカにより、本検査の実施前に生成される。詳しく説明すると、住宅の建設完了時点等において、住宅メーカの作業員が、住宅の各部位(具体的には、各外装材)について、各部位の配置位置に応じた場所誘導情報を部位毎に生成する。生成された場所誘導情報は、対応する住宅、及び対応する部位のそれぞれと関連付けてデータベースサーバ11に記憶される。そして、本検査では、データベースサーバ11に記憶された部位毎の場所誘導情報のうち、検査対象部位と対応する場所誘導情報が読み出されてユーザに提示される。
なお、場所誘導情報の生成者は、住宅メーカの作業員に限定されず、本検査を実施するユーザが自ら場所誘導情報を本検査の実施前に生成してもよい。
【0069】
支援情報のうち、ガイド情報は、住宅の各部位の種類や型式、形状、大きさ及び材質に応じて決定される。また、ガイド情報は、例えば、本検査が実施される住宅を提供した住宅メーカにより、本検査の実施前に生成される。詳しく説明すると、住宅の建設完了時点等において、住宅メーカの作業員が、住宅の各部位(具体的には、各外装材)について、各部位のサイズや形状等に応じたガイド情報を部位毎に生成する。生成されたガイド情報は、対応する住宅、及び対応する部位のそれぞれに関連付けてデータベースサーバ11に記憶される。そして、本検査では、データベースサーバ11に記憶された部位毎のガイド情報のうち、検査対象部位と対応するガイド情報が読み出されてユーザに提示される。
なお、ガイド情報の生成者は、住宅メーカの作業員に限定されず、本検査を実施するユーザが自らガイド情報を本検査の実施前に生成してもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、支援情報、すなわち、場所誘導情報及びガイド情報が本検査の実施前に生成されるが、このケースには限定されない。例えば、本実施形態において、検査対象部位が設定された段階で、検査対象部位の仕様情報に基づいて、検査対象部位を撮影する際にユーザに提示される支援情報が決定されてもよい。
【0071】
また、支援情報には、場所誘導情報及びガイド情報以外の情報が含まれてもよく、例えば、検査対象部位を撮影する際の撮影条件に関する情報、具体的には、露出条件やγ補正の条件等に関する情報が含まれてもよい。
【0072】
<<本実施形態に係る検査支援装置の機能について>>
次に、本実施形態に係る検査支援装置10の構成について機能面から改めて説明する。検査支援装置10は、
図5に示すように、設定部31、提示部32、取得部33、抽出部34、補正部35、特定部36、出力部37と、保存部38と、算出部39と、ポイント付与部40を有する。これらの機能部は、検査支援装置10を構成するコンピュータが備えるハードウェア機器と、そのコンピュータに搭載されたプログラム(すなわち、ソフトウェア)との協働によって実現される。
以下、それぞれの機能部について説明する。
【0073】
(設定部)
設定部31は、本検査の実施に際して、ユーザによる検査対象部位の指定操作に基づいて、住宅における検査対象部位を設定する。具体的に説明すると、ユーザは、住宅において検査対象となり得る複数の部位、詳しくは複数の外装材の中から、検査対象部位を指定するためにユーザ端末12を操作し、ユーザ端末12は、その操作内容を示すデータを検査支援装置10に向けて送信する。設定部31は、ユーザ端末12から送られてくるデータを受信することでユーザによる指定操作を受け付ける。そして、設定部31は、受信したデータを解析することで、ユーザが指定した部位を特定し、特定された部位を検査対象部位として設定する。
【0074】
本実施形態では、ユーザが指定操作を行うにあたり、設定部31が、住宅の図面をデータベースサーバ11から読み出し、
図6Aに示すように、読み出した図面をユーザ端末12の表示画面に表示させる。表示させる住宅の図面は、平面図でもよく、立面図でもよい。ユーザは、表示画面において検査対象部位の位置を指定し、例えば、
図6Bに示すように、その位置を画面上で選択する。設定部31は、ユーザが検査対象部位の位置を指定する指定操作を受け付け、指定された位置に応じて検査対象部位を設定し、詳しくは、指定された位置に存在する部位(
図6B中、ハッチングされた部位)を検査対象部位として設定する。
【0075】
また、本実施形態において、設定部31は、
図6A及び6B示すように、住宅の図面が等ピッチで複数の領域に区画された状態で当該図面を表示し、具体的には、所定のサイズに規定された複数のグリッドに区切られた状態の図面を表示する。各グリッドのサイズは、検査対象となり得る部位である外装材の大きさに応じて設定されている。そして、ユーザは、表示された図面において検査対象部位を指定する際に、複数のグリッド(領域)のうち、検査対象部位を含むグリッドを指定する。設定部31は、かかる指定操作を受け付け、指定されたグリッドの位置に応じて検査対象部位を設定し、詳しくは、指定されたグリッド内に在る部位を検査対象部位として設定する。
【0076】
以上のように本実施形態では、グリッド単位で検査対象部位を指定することができる。また、検査対象部位を指定する際には、検査対象部位を含むグリッドを指定することにより、住宅における検査対象部位の位置(詳しくは、住宅全体に対する相対位置)を明確に指定することができる。
なお、指定操作は、上記の操作内容に限定されず、例えば、ユーザが検査対象部位を示す文字情報をユーザ端末12にて入力する操作でもよい。
【0077】
(提示部)
提示部32は、データベースサーバ11に記憶された住宅の各部位の仕様情報のうち、検査対象部位の仕様情報に基づいて、前述の支援情報をユーザに対して提示する。具体的には、提示部32は、データベースサーバ11に記憶された部位毎の支援情報のうち、検査対象部位と対応する支援情報をユーザに提示する。ここで、検査対象部位と対応する支援情報とは、検査対象部位の仕様情報に基づいて生成された支援情報であり、詳しくは、仕様情報が示す検査対象部位の配置位置、大きさ、及び形状等に応じて生成された場所誘導情報及びガイド情報である。
【0078】
本実施形態では、設定部31が検査対象部位を設定すると、提示部32が、ユーザ端末12を制御して、検査対象部位と対応する支援情報をユーザ端末12の表示画面に表示させる。より具体的に説明すると、先ず、提示部32は、検査対象部位が撮影可能な場所へユーザを誘導するための場所誘導情報をユーザ端末12の表示画面に表示させる(
図3参照)。その後、ユーザが検査対象部位を撮影可能な場所に到達し、ユーザ端末12で所定の操作、例えば、ユーザ端末12に搭載されたカメラを起動する操作を行う。提示部32は、その操作を契機として、ガイド情報、より詳しくは撮影ガイド用のフレーム又はマークを、ユーザ端末12の画面において、検査対象部位のライブビュー画像に重ねて表示させる(
図4参照)。
なお、ユーザに支援情報を提示する方法は、ユーザ端末12の表示画面に支援情報を表示させる方法に限定されず、例えば、支援情報の内容を表す音声をユーザ端末12のスピーカから発することによって、支援情報をユーザに対して提示してもよい。
【0079】
(取得部)
取得部33は、ユーザにより撮影された検査対象部位の撮影画像を、ユーザから取得する。本実施形態では、撮影画像のデータがユーザ端末12から検査支援装置10に向けて送信され、取得部33は、ネットワークNを通じて撮影画像のデータを受信することで、検査対象部位の撮影画像を取得する。本実施形態において、取得された撮影画像には、撮影条件を示すExif情報が組み込まれている。また、取得された撮影画像は、画像提供者であるユーザ、検査対象部位、及び検査対象部位が設けられた住宅と関連付けられてデータベースサーバ11に記憶される。
【0080】
(抽出部)
抽出部34は、取得部33により取得された撮影画像から、検査対象部位の範囲を抽出する。詳しく説明すると、撮影画像には、検査対象部位以外の部位や背景が写っている場合があり、抽出部34は、
図7に示すように、そのような撮影画像の中から、検査対象部位の範囲の画像を抽出する。この際、抽出部34は、検査対象部位の仕様情報が示す当該部位の大きさ及び形状等に基づき、公知の画像処理技術を利用して撮影画像の中から検査対象部位の範囲を特定して当該範囲を抽出する。
【0081】
なお、撮影画像の中から検査対象部位の範囲を特定する方法は、特に限定されないが、例えば、検査対象部位に現れる柄や目地等のパターンが予め登録されている場合には、撮影画像のうち、そのパターンと一致又は類似する範囲を検査対象部位の範囲として特定してもよい。あるいは、検査対象部位の基準位置、例えば当該部位の隅又は中央の位置を撮影画像の中で見つけて、その位置から所定距離以内にある範囲を検査対象部位の範囲として特定してもよい。ここで、所定距離は、目地m個分(mは自然数)のように、検査対象部位を特定するのに適した単位を用いて規定するとよい。また、撮影画像の中から検査対象部位の範囲を特定する際に、AI(Artificial Intelligence)を活用して当該範囲を特定してもよい。
【0082】
(補正部)
補正部35は、検査対象部位の撮影画像に対して補正処理を実行する。厳密に説明すると、補正部35は、抽出部34が撮影画像から抽出した検査対象部位の範囲に対して補正処理を実行する。本実施形態において補正部35が実行する補正処理は、第1補正処理、第2補正処理、第3補正処理、又はこれらの組み合わせである。
【0083】
第1補正処理は、
図8に示すように、撮影画像(厳密には、撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲)を、検査対象部位の仕様情報に基づいて、検査対象部位を正面から見た場合の画像に変換する補正処理であり、より詳しくは台形補正である。
【0084】
第2補正処理は、検査対象部位の仕様情報が検査対象部位の色に関する情報を含む場合に、当該仕様情報に基づいて撮影画像(厳密には、撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲)中の検査対象部位の色を修正する補正処理であり、詳しくは色補正である。具体的には、第2補正処理では、
図9に示すように撮影画像中の検査対象部位の色を、検査対象部位の仕様情報が示す色に変換する。また、第2補正処理では、例えば住宅の建設完了時点などの過去の一時点における検査対象部位の色に変換してもよい。また、第2補正処理では、検査対象部位における色の平均値が住宅の建設完了時点の色と同値になるように、検査対象部位の各部の色を補正してもよい。
【0085】
第3補正処理は、撮影画像の撮影条件に基づく補正処理である。具体的には、例えば複数の撮影画像同士を対比する場合、第3補正処理では、
図10に示すように、それぞれの撮影画像(厳密には、撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲)を、その撮影条件が撮影画像の間で揃うように修正した場合の画像に変換する。
【0086】
本実施形態において、補正部35が補正処理を実行する画像には、本検査において撮影された検査対象部位の撮影画像の他に、同じ検査対象部位を過去に撮影したときの撮影画像が含まれる。つまり、補正部35は、過去に取得された検査対象部位の撮影画像をデータベースサーバ11から読み出し、読み出した撮影画像(厳密には、撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲)に対して上記の補正処理を実行することができる。
【0087】
(特定部)
特定部36は、検査対象部位の撮影画像を解析して、検査対象部位の状態を特定する。本実施形態において、特定部36は、抽出部34により撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲を解析して、検査対象部位の状態を特定する。具体的には、検査対象部位における表面色の異常の有無、又は検査対象部位の表面における損傷箇所の有無が特定部36によって特定される。また、検査対象部位の表面に損傷箇所が存在する場合、特定部36は、検査対象部位における損傷箇所の位置、損傷箇所のサイズ及び形状等を特定する。例えば、検査対象部位の表面に損傷箇所としてのひび割れが存在する場合、特定部36は、そのひび割れが検査対象部位に対して形成されているか、具体的には、検査対象部位が矩形状である場合にはひび割れが短辺と長辺とを繋いでいるか、短辺同士を繋いでいるか、あるいは長辺同士を繋いでいるか等を特定する。
【0088】
また、検査対象部位に対して補正部35による補正処理が実行された場合には、特定部36は、補正された検査対象部位の範囲を解析して、検査対象部位の状態を特定する。以下では、補正された検査対象部位の範囲を、便宜的に「補正後の撮影画像」と呼ぶこととする。
なお、補正後の撮影画像に基づいて検査対象部位の状態を特定する方法は、特に限定されず、例えば、公知の画像解析手法を利用して検査対象部位の状態を特定すればよい。また、このとき、特定部36は、検査対象部位の仕様情報を参照し、撮影画像の解析結果と仕様情報とに基づいて検査対象部位の状態を特定してもよい。
【0089】
また、特定部36は、第1時点に撮影された撮影画像である第1撮影画像と、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像である第2撮影画像とに基づいて、第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定することができる。具体的には、第1時点から第2時点までの期間における検査対象部位の表面色の変化、又は、検査対象部位の表面における損傷箇所の変化が特定部36によって特定される。
【0090】
ここで、第1時点は、例えば、住宅の建設完了時点(竣工時点)であり、第1撮影画像は、その時点における検査対象部位の撮影画像である。第1撮影画像は、第1時点において住宅メーカ等により撮影された画像でもよく、ユーザが自ら撮影した画像でもよい。第1撮影画像は、住宅及び検査対象部位と関連付けられてデータベースサーバ11に記憶されている。
また、第2時点は、例えば、新たに本検査が実施される時点、つまり今回の本検査の実施時点であり、第2撮影画像は、今回の本検査における検査対象部位の撮影画像である。第1撮影画像及び第2撮影画像に写る検査対象部位は、同一の部位である。
【0091】
また、本実施形態では、特定部36が検査対象部位の状態の変化を特定するのに際して、抽出部34が、第1撮影画像及び第2撮影画像のそれぞれから、検査対象部位の範囲を抽出し、補正部35が、それぞれの撮影画像から抽出された検査対象部位の範囲に対して、上記の補正処理を実行する場合がある。この場合、特定部36は、補正後の第1撮影画像及び第2撮影画像に基づいて、第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定する。
なお、補正後の第1撮影画像及び第2撮影画像に基づいて検査対象部位の状態の変化を特定する方法は、特に限定されず、例えば、補正後の第1撮影画像及び第2撮影画像の間の差分を求め、その差分から検査対象部位の状態の変化を特定してもよい。このとき、特定部36は、検査対象部位の仕様情報を参照し、上記の差分と仕様情報とに基づいて検査対象部位の状態の変化を特定してもよい。
【0092】
(出力部)
出力部37は、特定部36により特定された検査対象部位の状態に関する情報を本検査の結果としてユーザに対して出力する。特定部36が第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定した場合、出力部37が出力する情報には、特定された検査対象部位の状態の変化が含まれ得る。
【0093】
本実施形態において、出力部37は、ユーザ端末12を制御し、検査対象部位の状態に関する情報を、検査対象部位と対応付けてユーザ端末12の表示画面に表示させる。具体的に説明すると、出力部37は、本検査が実施された住宅の図面、詳しくは検査対象部位を含んだ図面を表示画面に表示させる。そして、出力部37は、
図11に示すように、図面が表示された表示画面において、検査対象部位の状態に関する情報を、図面中の検査対象部位と対応する位置に表示させる。図面中の検査対象部位と対応する位置とは、検査対象部位の近辺、検査対象部位と重なる位置、若しくは、検査対象部位から延びた引き出し線の先端と隣り合う位置等である。
【0094】
より詳しく説明すると、出力部37は、検査対象部位の仕様情報に基づき、図面中の検査対象部位の位置を特定する。また、図面において、住宅の各部位の位置と、その部位の状態に関する情報の表示位置とは、予め関連付けられており、例えば、その位置関係を規定したテーブルデータがデータベースサーバ11に記憶されている。そして、出力部37は、特定された検査対象部位の位置に応じた表示位置を、上記のテーブルデータに基づいて決定し、決定された表示位置に、検査対象部位の状態に関する情報を表示させる(
図11参照)。
なお、画面に表示される住宅の図面は、
図11に示すように立面図でもよく、あるいは検査対象部位が存在する階の平面図でもよい。
【0095】
以上のように、本検査の結果が検査対象部位と対応付けて表示されることにより、例えば、検査対象部位の状態(現状)を把握し易く、変色箇所や損傷箇所等のような異常箇所が存在する場合には、その位置を特定することが容易になる。その場合、異常箇所の付近に、検査対象部位の状態に関する情報、詳しくは異常箇所に関する情報を表示するのが好ましい。
【0096】
なお、検査対象部位の状態に関する情報を出力する方法は、上記の方法以外の方法でもよく、例えば、検査対象部位の状態に関する情報を紙等にプリントしてもよく、あるいは、検査対象部位の状態に関する情報を表す音声をユーザ端末12にて再生してもよい。
【0097】
(保存部)
保存部38は、特定部36により特定された検査対象部位の状態に関する情報を、検査対象部位と関連付けて保存し、具体的には、データベースサーバ11に記憶させる。特定部36が第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定した場合、保存部38によって保存される情報には、特定された検査対象部位の状態の変化が含まれ得る。
保存された検査対象部位の状態に関する情報は、データベースサーバ11にアクセスすることで読み出してユーザ端末12等に表示することができ、また、それ以降に実施される本検査において利用することができる。
【0098】
(算出部)
算出部39は、特定部36により特定された検査対象部位の状態、詳しくは、第1時点から第2時点までの状態の変化に基づいて、検査対象部位の修繕費用を算出する。具体的に説明すると、算出部39は、検査対象部位の位置から足場組立等の作業費用を見積るとともに、検査対象部位の状態の変化から修繕内容、修繕に用いる部品及び工数等を割り出し、これらに応じた費用を見積もる。そして、算出部39は、これら諸々の費用を合算して修繕費用を算出する。また、算出部39は、算出された修繕費用をユーザに通知し、例えば、修繕費用の算出結果をユーザ端末12の表示画面に表示させる。これにより、ユーザは、ユーザ端末12にて修繕費用を確認した上で、検査対象部位について修繕の依頼を検討することができる。
【0099】
(ポイント付与部)
ポイント付与部40は、本検査において検査対象部位の撮影画像を提供したユーザに対し、その報酬としてのポイントを付与する処理を実行する。ポイントを付与する処理では、ユーザに付与されたポイントを、その時点でユーザが保有するポイント数に合算し、詳しくは、データベースサーバ11に記憶されているユーザのポイント数を、合算後のポイント数に更新する。
【0100】
<<本実施形態に係る本検査フローについて>>
次に、上述した検査支援装置10を用いたデータ処理フローである本検査フローについて説明する。本検査フローは、本発明の検査支援方法を採用しており、
図12に示す流れに沿って進行する。つまり、
図12に図示のフロー中の各ステップは、本発明の検査支援方法を構成する各要素に該当する。
なお、
図12に示すフローは、あくまでも一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、ステップの実施順序を入れ替えてもよい。
【0101】
以下では、本検査フローについて分かり易く説明する理由から、住宅Hの居住者であるユーザAが、外装材Pgを検査対象部位として本検査を実施するケースを具体例に挙げて説明する。
【0102】
本検査フローは、ユーザAがユーザ端末12にて検査用アプリを起動することを契機として開始される。本検査フローの各ステップでは、検査支援装置10を構成するコンピュータのプロセッサ21が、各ステップと対応する処理を実行する。
【0103】
本検査フローでは、先ず、プロセッサ21が、検査対象部位を設定する処理を実行する(S001)。具体的に説明すると、プロセッサ21は、データベースサーバから住宅Hの図面を読み出し、当該図面をユーザ端末12の表示画面に表示させる。ユーザAは、表示された図面において、外装材Pgの位置を指定する。このとき、住宅の図面は、複数のグリッド(領域)に区画された状態で表示されており、ユーザAは、外装材Pgが存在するグリッドを指定する。これにより、ユーザAにより指定された位置、つまり、指定されたグリッドの位置を示すデータがユーザ端末12により生成され、そのデータが検査支援装置10に向けて送信される。プロセッサ21は、当該データを受信することでユーザの指定操作を受け付け、その指定操作に基づいて検査対象部位を設定する。この結果、ユーザAに指定されたグリッド内に在る外装材Pgが検査対象部位として設定される。
【0104】
次に、プロセッサ21は、データベースサーバ11に記憶された住宅Hの各部位の仕様情報のうち、検査対象部位として設定された外装材Pgの仕様情報に基づいて、支援情報をユーザAに提示する処理を実行する(S002)。具体的に説明すると、データベースサーバ11には、住宅Hの各部位について支援情報が記憶されており、プロセッサ21は、外装材Pgと対応する支援情報を読み出し、読み出した支援情報をユーザ端末12に表示させる。ユーザAは、ユーザ端末12に表示された支援情報(詳しくは、場所誘導情報)に従って、外装材Pgを撮影可能な場所に移動し、外装材Pgを正面視することができる位置に到達する。
【0105】
上記の位置にて、ユーザがユーザ端末12のカメラの撮影レンズを外装材Pgにかざすと、ユーザ端末12の表示画面に外装材Pgのライブビュー画像が表示される。この際、ユーザ端末12に搭載されたAR(Augmented Reality)機能や被写体認識機能等を利用して、ライブビュー画像に写った住宅Hの部位を識別できてもよい。この場合には、識別された部位が検査対象部位であるかを照合することができる。
あるいは、住宅Hの各外装材にRFID(Radio Frequency Identification)やIC(Integrated Circuit)タグ等の記憶媒体が埋め込まれており、ユーザが対面する外装材に埋め込まれた記憶媒体に記憶された情報をユーザ端末12で読み取ってもよい。そして、読み取った情報から、ユーザが対面する外装材が検査対象部位(すなわち、外装材Pg)であるかを照合できてもよい。
【0106】
また、ユーザ端末12の表示画面には、支援情報のうちのガイド情報がライブビュー画像に重畳して表示される。ユーザAは、ガイド情報に従ってユーザ端末12の位置及び姿勢を調整してから、調整後の位置及び姿勢を保持しつつ、ユーザ端末12のカメラで外装材Pgを撮影する。このとき、周辺の照明条件等の撮影条件を統一させる目的で、
図13に示す撮影補助具Tを用いて撮影してもよい。
【0107】
撮影補助具Tは、略直方体形状の箱であり、箱が有する四つの側面のうちの一つが開口になっており、開口とは反対側の側面の中央には撮影穴が形成されている。外装材Pgを撮影する際には、撮影補助具Tの開口が外装材Pgに向いた状態で撮影補助具Tを外装材Pgの表面に押し当てる。これにより、撮影補助具T内に暗室が形成され、暗室への入射光が遮られる。また、撮影補助具Tの内部には照明用光源(不図示)が設けられ、この光源が点灯した状態で、
図13に示すように上記の撮影穴を通じて外装材Pgの表面を撮影する。これにより、外装材Pg周辺の環境(詳しくは、外光)の影響を排除し、統一された撮影条件の下で外装材Pgを撮影することができる。
【0108】
ユーザAが撮影した外装材Pgの撮影画像のデータは、検査支援装置10に向けて送信され、プロセッサ21は、その画像データを受信して外装材Pgの撮影画像を取得する処理を実行する(S003)。取得された撮影画像は、ユーザA、検査対象部位である外装材Pg、及び住宅Hと関連付けられてデータベースサーバ11に記憶される。
【0109】
次に、プロセッサ21は、データベースサーバ11に記憶された外装材Pgの仕様情報を参照し、取得された撮影画像の中から、検査対象部位の範囲、すなわち外装材Pgが写っている範囲を抽出する処理を実行する(S004)。
【0110】
また、プロセッサ21は、取得された撮影画像、厳密には、撮影画像から抽出された外装材Pgの範囲に対して、前述の補正処理を実行する(S005)。なお、補正処理が不要である場合には、ステップS005を省略してもよい。
【0111】
次に、プロセッサ21は、撮影画像、又は補正後の撮影画像を解析して外装材Pgの状態を特定する処理を実行する(S006)。ステップS006において、プロセッサ21は、外装材Pgの状態として、外装材Pgの表面色における異常、例えば色褪せや藻の発生による変色等の有無を特定してもよい。そして、画像解析により、外装材Pgの表面において色むら又は色味の変化が存在することが判明した場合、プロセッサ21は、外装材Pgの表面色に異常が発生していることを特定する。
【0112】
また、ステップS006において、プロセッサ21は、外装材Pgの状態として、外装材Pgの表面における損傷箇所の有無を特定してもよい。そして、画像解析により、外装材Pgの表面においてひび割れ等の損傷箇所が存在することが判明した場合、プロセッサ21は、外装材Pgの仕様情報に基づいて損傷箇所のサイズ(大きさ)や形状等を特定する。
【0113】
また、ステップS006において、プロセッサ21は、住宅Hの建設完了時点から現時点までの外装材Pgの状態の変化、詳しくは、住宅Hの建設完了時点から現時点までの期間における外装材Pgの表面色の変化、又は損傷箇所の変化を特定してもよい。この場合、プロセッサ21は、データベースサーバ11から、住宅Hの建設完了時点に撮影された外装材Pgの撮影画像を読み出し、読み出した撮影画像から、外装材Pgの範囲を抽出し、抽出された範囲に対して、適宜、補正処理を実行する。そして、今回の本検査にて取得された撮影画像から抽出された外装材Pgの範囲と、住宅Hの建設完了時点に撮影された撮影画像から抽出された外装材Pgの範囲とを比較し、双方の差分から外装材Pgの状態の変化を特定してもよい。
【0114】
次に、プロセッサ21は、ステップS006で特定された外装材Pgの状態に関する情報をユーザに対して出力する処理を実行する(S007)。具体的には、プロセッサ21は、外装材Pgの状態に関する情報を、外装材Pgと対応付けてユーザ端末12の表示画面に表示させる。詳しく説明すると、ステップS007では、住宅Hの図面がユーザ端末12に表示されており、外装材Pgの状態に関する情報が、図面中の外装材Pgと対応する位置、例えば、外装材Pgの近辺に表示される(
図11参照)。
【0115】
次に、プロセッサ21は、ステップS006で特定された外装材Pgの状態に関する情報を、ユーザA、外装材Pg、及び住宅Hと関連付けて保存する処理を実行する(S008)。これにより、外装材Pgの状態に関する情報、すなわち本検査の検査結果が外装材Pgと関連付けてデータベースサーバ11に記憶(蓄積)される。
【0116】
また、プロセッサ21は、ステップS006で特定された外装材Pgの状態、又は、住宅Hの竣工時点から現時点までの外装材Pgの状態の変化に基づいて、外装材Pgの修繕費用を算出する処理を実行する(S009)。算出された修繕費用は、ユーザ端末12に表示されてユーザAに提示される。
【0117】
さらに、プロセッサ21は、本検査において外装材Pgの撮影画像を提供してユーザAに対して、その報酬としてのポイントを付与する処理を実行する。
以上までの一連の工程が終了した時点で本検査フローは終了する。また、本実施形態では、本検査が定期的に行われるため、本検査フローは、本検査が行われる度に繰り返し実施されることになる。
【0118】
<<本実施形態の有効性について>>
本実施形態の検査支援装置10及び検査支援方法を用いることにより、住宅の検査対象部位の状態に関する検査、すなわち本検査を適切に且つ容易に行うことができる。
【0119】
より詳しく説明すると、『発明が解決しようとする課題』の項で説明した通り、住宅各部位の状態に関する検査は、一般的に定期的に実施されるが、検査の実施間隔が長くなってしまうと、検査対象部位の状態変化に気付きにくい。そのため、例えば、前回の検査から長期間が経過した時点で検査を行った場合、その時点では劣化や変状が相当進行している虞がある。この場合、劣化又は変状した部位の修繕に多大な手間を要するため、修繕費用が嵩んでしまう可能性がある。
【0120】
以上の理由から、住宅の検査の実施頻度を極力多く設定することが求められるが、専門の検査員に検査を依頼する場合には、検査の実施頻度を増やすには限界がある。また、定点カメラやセンサ等を設置して検査対象部位の状態を常時モニタリングすることが考えられるが、住宅において検査対象となる部位は、通常複数存在し、部位毎にモニタリング用の機器を設置することは、コストの観点から考えて困難である。
【0121】
一方、検査員以外の者、例えば住宅の居住者又はオーナー等が自ら検査を実施すれば、検査の実施頻度を確保することができる。ただし、専門知識及び経験がない者が検査を行うために検査対象部位を撮影する場合、検査に慣れていないために、検査対象部位を適切に撮影することができず、そのことが検査結果に影響を及ぼす可能性がある。また、検査対象部位を好適なタイミングで撮影する機会を逃さないように、検査対象部位を連続撮影することが考えられるが、撮影画像の枚数が必要以上に多くなり、画像の管理が困難になり、また、多数の撮影画像の中から検査に用いる画像を選定するのに手間を要する。
【0122】
これに対して、本実施形態では、ユーザが検査対象部位を撮影する際に、検査対象部位の仕様に応じた支援情報がユーザに提示される。ユーザは、提示された支援情報に従って検査対象部位を適切に撮影することができる。これにより、検査対象部位の撮影画像として、検査に用いるのに十分な品質の画像が得られ、その画像に基づいて検査対象部位の状態が適切に特定されるようになる。また、支援情報に基づいて検査対象部位を適切に撮影できることにより、検査対象部位を連続撮影する必要がなく、多数の撮影画像を管理する手間が省けて、検査を効率よく行うことができる。
【0123】
以上により、ユーザは、専門知識や経験を必要とせずに、検査対象部位の検査を適切に且つ容易に行うことができ、この結果、十分な実施頻度で定期的に検査を行うことができる。また、検査対象部位の撮影画像を解析することで特定された検査対象部位の状態は、ユーザに対して出力されるため、ユーザは、検査対象部位の状態を良好に把握することができる。また、本実施形態では、撮影画像に対して補正処理が適宜実行され、補正された撮影画像に基づいて検査対象部位の状態が特定されるため、検査対象部位の状態を精度よく特定することができる。
【0124】
また、本実施形態では、検査対象部位の状態として、検査対象部位における表面色の異常又は損傷箇所の有無が特定される。これにより、ユーザは、検査実施時点における検査対象部位における表面色の異常又は損傷箇所の有無を認識することができ、異常又は損傷箇所がある場合には、検査の結果に基づいて修繕の要否を検討することができる。さらに、本実施形態では、特定された検査対象部位の状態に基づいて修繕費用が算出されるため、ユーザは、修繕の要否を検討する際に、算出された修繕費用を参考にすることができる。なお、修繕費用に関する情報は、ユーザが将来的に検査対象部位の修繕を含めて住宅のリフォームを計画する場合に、その計画を立案する際に有効に利用し得る。
【0125】
また、本実施形態では、検査対象部位の状態の変化、具体的には第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定することができる。これにより、検査対象部位の状態変化の傾向、より詳しくは劣化や変状の進行度合い、及び進行速度等を把握することができる。これにより、ユーザは、検査対象部位における異常の兆候を把握し、機器に異常が発生する前に適切な対策を講じることができる。この結果、検査対象部位の修繕費用を、当該部位に異常が発生した場合に掛かる費用よりも抑えることができる。
【0126】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の検査支援装置、及び検査支援方法に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0127】
上記の実施形態では、建物の利用者、具体的には、住宅の居住者又はオーナーが本発明の検査支援装置及び検査支援方法を用いて検査対象部位を検査するケースについて説明した。ただし、本発明の検査支援装置及び検査支援方法は、当然ながら、上記以外の者、例えば、専門業者等の検査員によって利用されてもよい。
【0128】
また、上記の実施形態では、本検査に必要な各種の情報が蓄積された記憶装置が、検査支援装置10とは別機器であるデータベースサーバ11によって構成されていることとした。ただし、これに限定されず、上記の記憶装置が検査支援装置10に備えられてもよく、具体的には、検査支援装置10のストレージ23に、本検査に必要な各種の情報が蓄積されてもよい。
【0129】
また、上記の実施形態では、検査対象部位がユーザの指定操作に基づいて設定されることとしたが、これに限定されず、例えば、住宅を提供する住宅メーカ等が所定の選定ルールに従って、あるいは、所定の検査スケジュールに基づいて選定した部位を検査対象部位として設定してもよい。この場合、住宅メーカ等によって選定された検査対象部位は、検査用アプリを通じてユーザに通知され、ユーザは、通知された検査対象部位について本検査を実施するとよい。
【0130】
また、上記の実施形態では、第1時点に撮影された第1撮影画像と、第1時点よりも後の第2時点に撮影された第2撮影画像とに基づいて、第1時点から第2時点までの検査対象部位の状態の変化を特定することとした。また、上記の実施形態では、第1時点が、住宅の建設完了時点(竣工時点)であることとした。ただし、これに限定されず、例えば、検査対象部位が、過去に修繕されたことがある部位である場合には、その検査対象部位の修繕完了時点を第1時点として設定してもよい。また、検査対象部位についての前回の検査時点を第1時点として設定してもよい。
【0131】
また、上記の実施形態では、住宅の図面を表示する際に、所定のサイズに規定された複数のグリッドに区切られた状態の図面を表示することとした。そして、ユーザは、表示された図面において検査対象部位を指定する際に、複数のグリッドのうち、検査対象部位を含むグリッドを指定することとした。ただし、検査対象部位の指定は、グリッド単位ではなく、各部材の仕様情報、詳しくは仕様情報が示す部材のサイズに従って行われてもよい。
具体的に説明すると、例えば、
図14に示すように、図面において、検査対象の候補となる複数の部位(以下、候補部位)が、それぞれ色分けされた状態で表示されてもよい。図面中の各候補部位は、各部位の仕様に関する仕様情報に基づき、当該仕様情報が示すサイズに区画されて表示される。この際、複数の候補部位のそれぞれのサイズは、一回の検査において抽出される検査対象部位の範囲の大きさに応じて決定され、また、
図14に示すように候補部位の間で異なってもよい。
そして、ユーザは、色分けられた複数の候補部位のうちの一つを検査対象部位として指定する。設定部31は、かかる指定操作を受け付け、指定された候補部位を検査対象部位として設定する。このように、仕様情報(厳密には、仕様情報が示す大きさ)に応じて区画された複数の候補部位の中から、いずれか一つの候補部位を検査対象部位として指定してもよい。
【0132】
また、上記の実施形態では、検査支援装置10を構成するコンピュータが、ユーザ端末12から送られてくるデータを取得し、そのデータを用いて検査支援装置10としての機能を発揮することとした。ただし、これに限定されず、検査支援装置10の機能の一部がユーザ端末12に備わってもよい。あるいは、ユーザ端末12が本発明の検査支援装置を構成し、検査支援装置としての機能すべてを発揮することができてもよい。
【符号の説明】
【0133】
10 検査支援装置
11 データベースサーバ(記憶装置)
12 ユーザ端末
21 プロセッサ
22 メモリ
23 ストレージ
24 通信用インタフェース
25 入力機器
26 出力機器
31 設定部
32 提示部
33 取得部
34 抽出部
35 補正部
36 特定部
37 出力部
38 保存部
39 算出部
40 ポイント付与部
N ネットワーク
Pg 外装材
S 検査支援システム
T 撮影補助具