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特開2024-80842小水量供給システムおよび小水量供給方法
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  • 特開-小水量供給システムおよび小水量供給方法 図1
  • 特開-小水量供給システムおよび小水量供給方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080842
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】小水量供給システムおよび小水量供給方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B05B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194129
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布施 幸則
(72)【発明者】
【氏名】冨田 賢吾
【テーマコード(参考)】
4D074
【Fターム(参考)】
4D074AA02
4D074BB03
4D074DD07
4D074DD12
4D074DD13
4D074DD14
4D074DD17
4D074DD18
4D074DD63
4D074DD70
(57)【要約】
【課題】液滴の間欠滴下を防止することができる小水量供給システムおよび小水量供給方法を提供する。
【解決手段】装置12の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給システム10であって、湿度を調整するための水を前記装置12内に給水する給水配管16、24と、前記給水配管16内の水を加振する加振手段22、32とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給システムであって、
湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管と、前記給水配管内の水を加振する加振手段とを備えることを特徴とする小水量供給システム。
【請求項2】
水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器をさらに備え、前記蒸気発生器で発生した水蒸気はチャンバー型の前記装置に供給されることを特徴とする請求項1に記載の小水量供給システム。
【請求項3】
前記加振手段が超音波発生器であることを特徴とする請求項1または2に記載の小水量供給システム。
【請求項4】
装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給方法であって、
湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管内の水を加振することを特徴とする小水量供給方法。
【請求項5】
水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器とを有し、前記蒸気発生器で発生した水蒸気をチャンバー型の前記装置に供給する機構において、前記給水配管内の水を加振することを特徴とする請求項4に記載の小水量供給方法。
【請求項6】
前記給水配管内の水を超音波で加振することを特徴とする請求項4または5に記載の小水量供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小水量供給システムおよび小水量供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型チャンバー内の精度の高い湿度制御などでは、微量な加湿用給水が必要となる場合がある。給水量が小水量の場合、チャンバー内に開口した給水配管出口で表面張力等が働き、間欠的な滴下状態(点滴に似た状態)となることがある。このような間欠滴下となった場合、配管出口から滴下した際に急激にチャンバー内の湿度が上がり、配管出口で液滴が形成されている間はドライな状態となる。このように、給水量が小水量の場合、チャンバー内の湿度は間欠滴下に従って脈動することになるので、制御湿度を一定に保つことは難しい。
【0003】
医療分野では、肺疾患治療のためにネブライザを用いた薬剤吸入治療が行われるが、大量の薬剤を使用するため、室内に霧状になった薬剤が漏洩するおそれがある。また、人工呼吸管理下ではネブライザと患者の気道との間のフィルターまたは人工鼻が結露などによって閉塞し、換気が困難となるおそれがある。
【0004】
また、固体吸着材によるCO吸脱着を行うDAC(Direct Air Capture)メカニズムでは、吸着ガス、脱着ガスの(相対)湿度が重要な要素となる。
【0005】
一方、液滴を滴下させる従来の技術として、滴下原液を収容するノズル本体をその軸線方向に沿ってバイブレーターなどで振動させることにより、ノズル本体の開口部先端から液滴を滴下させる振動滴下法が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-198304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、チャンバー型の試験装置、医療装置、DAC装置などの高い精度での湿度制御が求められる装置において、液滴の間欠滴下を防止することが求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液滴の間欠滴下を防止することができる小水量供給システムおよび小水量供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る小水量供給システムは、装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給システムであって、湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管と、前記給水配管内の水を加振する加振手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の小水量供給システムは、上述した発明において、水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器をさらに備え、前記蒸気発生器で発生した水蒸気はチャンバー型の前記装置に供給されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の小水量供給システムは、上述した発明において、前記加振手段が超音波発生器であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る小水量供給方法は、装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給方法であって、湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管内の水を加振することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の小水量供給方法は、上述した発明において、水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器とを有し、前記蒸気発生器で発生した水蒸気をチャンバー型の前記装置に供給する機構において、前記給水配管内の水を加振することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の小水量供給方法は、上述した発明において、前記給水配管内の水を超音波で加振することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る小水量供給システムによれば、装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給システムであって、湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管と、前記給水配管内の水を加振する加振手段とを備えるので、加振によって給水配管内に霧状の蒸気が発生し、この蒸気が装置内に供給される。供給される蒸気が霧状のため、給水配管の出口での液滴の間欠滴下を防止することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の小水量供給システムによれば、水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器をさらに備え、前記蒸気発生器で発生した水蒸気はチャンバー型の前記装置に供給されるので、給水配管の出口で液滴を形成することなく、ポンプと同じ挙動で水を蒸気発生器に供給することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の小水量供給システムによれば、前記加振手段が超音波発生器であるので、熱や圧力などの加振手段に比べて消費エネルギーが少なくて済むという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る小水量供給方法によれば、装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給方法であって、湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管内の水を加振するので、加振によって給水配管内に霧状の蒸気が発生し、この蒸気が装置内に供給される。供給される蒸気が霧状のため、給水配管の出口での液滴の間欠滴下を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の小水量供給方法によれば、水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器とを有し、前記蒸気発生器で発生した水蒸気をチャンバー型の前記装置に供給する機構において、前記給水配管内の水を加振するので、給水配管の出口で液滴を形成することなく、ポンプと同じ挙動で水を蒸気発生器に供給することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る他の小水量供給方法によれば、前記給水配管内の水を超音波で加振するので、熱や圧力などの加振方法に比べて消費エネルギーが少なくて済むという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る小水量供給システムおよび小水量供給方法の実施の形態を示す概略構成図である。
図2図2は、入口相対湿度の時間変化の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る小水量供給システムおよび小水量供給方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る小水量供給システム10は、チャンバー12(装置)の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給システムであって、水槽14と、水槽14の水を給水配管16に送り出すポンプ18と、蒸気発生器20と、給水配管16内の水を加振する超音波発生器22(加振手段)とを備える。
【0024】
給水配管16は、湿度を調整するための水をチャンバー12側に向けて供給するものである。給水配管16による給水流量は小水量を想定している。給水配管16の出口16Aは蒸気発生器20に連通している。蒸気発生器20は、給水配管16から送られる水を用いて水蒸気を発生するものであり、例えばヒーターやボイラーで構成される。蒸気発生器20で発生した水蒸気は、下流側の給水配管24を通じてガス供給配管26に供給されるようになっている。ガス供給配管26は、送風機28を通じてガス(例えば二酸化炭素を含むガス)をチャンバー12に供給する配管であり、チャンバー12に接続している。下流側の給水配管24は、ガス供給配管26に接続しており、水蒸気はガスと混合してチャンバー12に供給される。なお、チャンバー12には、排気口30が設けられている。
【0025】
超音波発生器22は、給水配管16の外側近傍に設置した超音波振動子32の出力の強弱や振幅の調整、発振周波数の上下への変調などの超音波の制御を行うように構成されている。超音波振動子32は、給水配管16の外周面に取付けてもよい。超音波振動子32は、発振周波数が、超音波振動を発生させる公知の振動子からなり、例えば、電圧を加えると伸び縮みする圧電セラミックやピエゾ素子などの圧電素子で構成することができる。発振周波数は、液状の水から霧状の蒸気を発生可能な周波数であることが望ましく、例えば2MHz程度に設定してもよい。
【0026】
ここで、給水配管16内の液水は、超音波によってマイクロメーター乃至ナノメーターオーダーの液滴径の霧になろうとすることが知られている(例えば、下記の参考文献1を参照)。
【0027】
[参考文献1] 「超音波霧化によるナノ液滴の発生」、矢野陽子、エアロゾル研究、26巻1号、pp.18-23、2011
【0028】
したがって、超音波振動子32から発振される超音波で振動を付与し、給水配管16内の水を加振すると、給水配管16内に霧状の水蒸気が発生し、この水蒸気が蒸気発生器20内に供給される。供給される水蒸気が霧状のため、水の分子間力、表面張力等により給水配管16の出口16Aで液滴を形成することなく、ポンプ18の流量と同じ挙動で水を蒸気発生器20に供給することが可能となる。これにより、給水配管16の出口16Aでの液滴の間欠滴下を防止することができる。なお、蒸気発生器20内の霧状の水蒸気は、下流側の給水配管24、ガス供給配管26を通じてチャンバー12に供給されることから、ガス供給配管26の出口のチャンバー12内においても液滴の間欠滴下を防止することができる。
【0029】
また、間欠滴下防止のための外部エネルギーとして、熱や圧力ではなく音波を用いるため、消費エネルギーが少ない。また、必要となるものが、アンプ等の超音波発生器と超音波振動子(一体型も含む)のみのため、建築設備上の納まりの自由度が高い。さらに、ホテル給湯のように中~大流量循環系から必要量を取り出す機構ではなく、必要水量のみ搬送されるので、省エネルギーである。
【0030】
(本発明の効果の検証)
本発明の効果を検証するために、上記の小水量供給システム10を用いた場合(本発明の実施例)と、実施例から超音波発生器22を省略した場合(比較例)とで、チャンバー12内の入口相対湿度(ガス供給配管26の出口位置の相対湿度)の時間変化を計測し、比較した。図2に、時間変化の一例を示す。この図に示すように、本実施例の入口相対湿度の時間変化は、比較例に比べて上下変動が小さい。これは、本実施例では超音波発生器22により給水配管16内に霧状の蒸気が生成されたこと、その結果、ガス供給配管26出口での液滴の間欠滴下が防止されたことが要因と考えられる。したがって、本実施例によれば、湿度コントロールのためであれば条件の脈動が無く、一定の条件を推移し続けることができる。
【0031】
上記の実施の形態において、湿度制御対象の装置がチャンバーである場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、固体吸着材によるCO吸脱着を行うDACメカニズムを利用したDAC装置に適用してもよい。この場合、高湿度への固体吸着材の暴露は、その後の吸脱着能の著しい劣化を招くが、本発明を適用することにより、安定したDACの繰返し能力を維持することができる。
【0032】
また、薬剤吸入器具、人工呼吸器具などの医療装置に適用してもよい。気道内もしくは肺胞内に必要な薬剤を局所的に霧状にして吸入投与することができる。薬剤によっては使用量が抑制された結果、現在より安価に治療可能である。
【0033】
また、上記の実施の形態において、加振手段が超音波発生器である場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、熱や圧力などによる加振手段を用いてもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0034】
以上説明したように、本発明に係る小水量供給システムによれば、装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給システムであって、湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管と、前記給水配管内の水を加振する加振手段とを備えるので、加振によって給水配管内に霧状の蒸気が発生し、この蒸気が装置内に供給される。供給される蒸気が霧状のため、給水配管の出口での液滴の間欠滴下を防止することができるという効果を奏する。
【0035】
また、本発明に係る他の小水量供給システムによれば、水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器をさらに備え、前記蒸気発生器で発生した水蒸気はチャンバー型の前記装置に供給されるので、給水配管の出口で液滴を形成することなく、ポンプと同じ挙動で水を蒸気発生器に供給することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明に係る他の小水量供給システムによれば、前記加振手段が超音波発生器であるので、熱や圧力などの加振手段に比べて消費エネルギーが少なくて済むという効果を奏する。
【0037】
また、本発明に係る小水量供給方法によれば、装置の内部の湿度を制御するために用いられる小水量供給方法であって、湿度を調整するための水を前記装置内に給水する給水配管内の水を加振するので、加振によって給水配管内に霧状の蒸気が発生し、この蒸気が装置内に供給される。供給される蒸気が霧状のため、給水配管の出口での液滴の間欠滴下を防止することができる。
【0038】
また、本発明に係る他の小水量供給方法によれば、水槽と、前記水槽の水を前記給水配管に送り出すポンプと、前記給水配管から送られる水を用いて水蒸気を発生する蒸気発生器とを有し、前記蒸気発生器で発生した水蒸気をチャンバー型の前記装置に供給する機構において、前記給水配管内の水を加振するので、給水配管の出口で液滴を形成することなく、ポンプと同じ挙動で水を蒸気発生器に供給することができる。
【0039】
また、本発明に係る他の小水量供給方法によれば、前記給水配管内の水を超音波で加振するので、熱や圧力などの加振方法に比べて消費エネルギーが少なくて済む。
【0040】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る小水量供給システムおよび小水量供給方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「3.すべての人に健康と福祉を」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明に係る小水量供給システムおよび小水量供給方法は、高精度の湿度制御が求められる試験分野、医療分野、DACメカニズムなどの分野に有用であり、特に、湿度制御対象への液滴の間欠滴下を防止するのに適している。
【符号の説明】
【0042】
10 小水量供給システム
12 チャンバー(装置)
14 水槽
16,24 給水配管
16A 出口
18 ポンプ
20 蒸気発生器
22 超音波発生器(加振手段)
26 ガス供給配管
28 送風機
30 排気口
32 超音波振動子
図1
図2