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特開2024-80853管内形状確認装置及び管内形状確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080853
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】管内形状確認装置及び管内形状確認方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
G01B11/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194147
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】597140545
【氏名又は名称】株式会社NTEC
(71)【出願人】
【識別番号】504454060
【氏名又は名称】株式会社アプライド・ビジョン・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 正富
(72)【発明者】
【氏名】糸永 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 芳春
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕信
(72)【発明者】
【氏名】石山 豊
(72)【発明者】
【氏名】水口 祐司
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA53
2F065AA60
2F065AA63
2F065AA65
2F065BB08
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF11
2F065QQ21
2F065QQ28
(57)【要約】
【課題】管の内面の形状をより正確に検出することを目的とする。
【解決手段】発光部21を備えるTOFカメラ20と、TOFカメラ20が固定された台12と、台12に固定され、発光部21から発せられた光の光軸L2の、管11の中心軸L1に対する傾きを計測可能なIMU30と、を備える管内形状確認装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に配置されて管の内部のデータを取得する管内形状確認装置において、
管の内面に向けて光を発する発光部を備え、前記発光部から発せられた光が前記内面で反射して戻るまでの時間に基づき前記内面までの距離を算出することにより、前記内面の形状のデータを取得するTOFカメラと、
前記TOFカメラが固定された台と、
前記台に固定され、前記発光部から発せられた光の光軸の、前記管の中心軸に対する傾きを計測可能な慣性計測装置と、
を備える管内形状確認装置。
【請求項2】
前記発光部から発せられる光の広がりを抑える収束具として、前記発光部から発せられる光が通過するレンズが設けられた、請求項1に記載の管内形状確認装置。
【請求項3】
前記発光部から発せられる光の広がりを抑える収束具として、前記発光部から発せられる光が通過する筒が設けられた、請求項1に記載の管内形状確認装置。
【請求項4】
前記発光部から発せられる光の広がりを抑える収束具として、前記発光部から発せられる光が通過するレンズ及び筒が設けられた、請求項1に記載の管内形状確認装置。
【請求項5】
前記収束具の向きを変更することにより光の進行方向を変える方向変更装置が設けられた、請求項2~4のいずれか1項に記載の管内形状確認装置。
【請求項6】
前記TOFカメラが少なくとも左右1つずつの前記発光部を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の管内形状確認装置。
【請求項7】
前記TOFカメラが少なくとも上下1つずつの前記発光部を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の管内形状確認装置。
【請求項8】
管の内部にデータ取得装置を配置して管の内部のデータを取得する管内形状確認方法において、
管の内面形状のデータを取得する前記データ取得装置としてのTOFカメラと、傾きを計測する慣性計測装置とを同じ台に固定した状態で管の内部に配置するステップと、
前記TOFカメラの発光部から管の内面に向けて発せられた光が前記内面で反射して前記TOFカメラに戻るまでの時間に基づき前記内面までの距離を算出することにより、前記内面の形状のデータを取得するステップと、
前記慣性計測装置により、前記発光部から発せられた光の光軸の、前記管の中心軸に対する傾きを計測するステップと、
前記TOFカメラが取得した前記内面の形状のデータを、前記慣性計測装置が計測した前記傾きのデータで補正することにより、前記管の中心軸方向から見た場合の前記内面の形状のデータを取得するステップと、
を備える管内形状確認方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内形状確認装置及び管内形状確認方法に関し、特に、通信ケーブル等の通る管の内面の形状を確認するための管内形状確認装置及び管内形状確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信ケーブルや送電線等は管の内部を通っている。その管の内面が変形していないか、観察することが求められている。管の内面の変形の形態としては、管の部分的な変形だけでなく、管の曲がり、腐食による形状の変化、連結部のズレや外れ等がある。しかし、そのような管は内径が小さく、しかも地中に埋められている場合もあるため、人が管内に入る等の方法では観察できない。
【0003】
そのような場合に管の内面の変形を検出する方法として、レーザー光源と単眼カメラあるいはステレオカメラとを使用する方法が考えられる。具体的には、レーザー光源と単眼カメラあるいはステレオカメラとを管内に配置し、管の内面にレーザー光を当てて内面上に明るい照射点を形成し、その照射点までの距離を単眼カメラあるいはステレオカメラで計測し、計測した距離に基づき管の内面の形状を検出する。
【0004】
また、特許文献1では、管の長手方向に複数の光リングを並べ、それらの光リングをカメラで撮影し、各光リングの中心位置のずれから管の曲がりを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-56592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のレーザー光源と単眼カメラあるいはステレオカメラとを使用する方法では、管の内面にレーザー光で形成できる照射点の数に限りがあり(現実には、形成できる照射点の数はせいぜい1000点程度である)、少ない数の照射点までの距離しか計測できないため、内面の細かな形状までは検出できない。また、レーザー光には広がりがあるため、特にレーザー光の照射方向が管の内面に対して平行に近いと、管の内面に形成される照射点が大きくなってしまい、単眼カメラあるいはステレオカメラから照射点までの距離に大きな誤差が生じてしまう。また、狭い管内に入れることのできるステレオカメラは小さく、ステレオカメラの有する2つのカメラの間隔が短いため、計測される距離は誤差が大きいという欠点がある。これらのことから、単眼カメラあるいはステレオカメラを使用する方法では、管の内面に変形があってもそれを正確に検出することが困難である。
【0007】
また、特許文献1の方法は、管の中心位置や管の曲がりを検出する方法としては有効であるが、管の内面の形状までは検出できない。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、管の内面の形状をより正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0010】
[1]管の内部に配置されて管の内部のデータを取得する管内形状確認装置において、管の内面に向けて光を発する発光部を備え、前記発光部から発せられた光が前記内面で反射して戻るまでの時間に基づき前記内面までの距離を算出することにより、前記内面の形状のデータを取得するTOFカメラと、前記TOFカメラが固定された台と、前記台に固定され、前記発光部から発せられた光の光軸の、前記管の中心軸に対する傾きを計測可能な慣性計測装置と、を備える管内形状確認装置。
【0011】
[2]前記発光部から発せられる光の広がりを抑える収束具として、前記発光部から発せられる光が通過するレンズが設けられた、[1]に記載の管内形状確認装置。
【0012】
[3]前記発光部から発せられる光の広がりを抑える収束具として、前記発光部から発せられる光が通過する筒が設けられた、[1]に記載の管内形状確認装置。
【0013】
[4]前記発光部から発せられる光の広がりを抑える収束具として、前記発光部から発せられる光が通過するレンズ及び筒が設けられた、[1]に記載の管内形状確認装置。
【0014】
[5]前記収束具の向きを変更することにより光の進行方向を変える方向変更装置が設けられた、[2]~[4]のいずれかに記載の管内形状確認装置。
【0015】
[6]前記TOFカメラが少なくとも左右1つずつの前記発光部を備える、[1]~[5]のいずれかに記載の管内形状確認装置。
【0016】
[7]前記TOFカメラが少なくとも上下1つずつの前記発光部を備える、[1]~[6]のいずれかに記載の管内形状確認装置。
【0017】
[8]管の内部にデータ取得装置を配置して管の内部のデータを取得する管内形状確認方法において、管の内面形状のデータを取得する前記データ取得装置としてのTOFカメラと、傾きを計測する慣性計測装置とを同じ台に固定した状態で管の内部に配置するステップと、前記TOFカメラの発光部から管の内面に向けて発せられた光が前記内面で反射して前記TOFカメラに戻るまでの時間に基づき前記内面までの距離を算出することにより、前記内面の形状のデータを取得するステップと、前記慣性計測装置により、前記発光部から発せられた光の光軸の、前記管の中心軸に対する傾きを計測するステップと、前記TOFカメラが取得した前記内面の形状のデータを、前記慣性計測装置が計測した前記傾きのデータで補正することにより、前記管の中心軸方向から見た場合の前記内面の形状のデータを取得するステップと、を備える管内形状確認方法。
【発明の効果】
【0018】
上記の管内形状確認装置及び管内形状確認方法によれば、TOFカメラで管の内面上の多数の点までの距離を計測することができ、しかもTOFカメラの傾きを慣性計測装置で計測してTOFカメラの計測データを慣性計測装置の計測データで補正することができるので、管の内面の変形等の形状をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を左右方向から見た図。(b)は管内形状確認装置を前から見た図。
図2】第1実施形態において取得されたデータを可視化した図。(a)は管内形状確認装置の左右方向から表示した図。(b)は管内形状確認装置の前から表示した図。
図3】第2実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を左右方向から見た図。(b)はTOFカメラを前から見た図。(c)はTOFカメラを左右方向から見た図。
図4】第2実施形態において取得されたデータを可視化した図。(a)は管内形状確認装置の左右方向から表示した図。(b)は管内形状確認装置の前から表示した図。
図5】第3実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を左右方向から見た図。(b)はTOFカメラを前から見た図。(c)はTOFカメラを左右方向から見た図。
図6】第4実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を左右方向から見た図。(b)はTOFカメラを前から見た図。(c)はTOFカメラを左右方向から見た図。
図7】第5実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を左右方向から見た図。(b)はTOFカメラを前から見た図。(c)はTOFカメラを左右方向から見た図。
図8】第6実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を上から見た図。(b)はTOFカメラを前から見た図。(c)はTOFカメラを左右方向から見た図。
図9】第6実施形態において取得されたデータを可視化した図。(a)は管内形状確認装置の上から表示した図。(b)は管内形状確認装置の前から表示した図。
図10】第7実施形態の管内形状確認装置を示す図。(a)は管内形状確認装置を左右方向から見た図。(b)はTOFカメラを前から見た図。(c)はTOFカメラを左右方向から見た図。
図11】第7実施形態において取得されたデータを可視化した図。(a)は管内形状確認装置の右から表示した図。(b)は管内形状確認装置の前から表示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0021】
[第1実施形態]
まず、管内形状確認装置10の構成について説明する。
【0022】
図1は、第1実施形態の管内形状確認装置10が管11の内部に配置された様子を示す図である。管内形状確認装置10は、TOFカメラ20及びIMU30が1つの台12に固定されたものである。
【0023】
管11は、内部を通信ケーブルや送電線等が通る管である。そのような管11は、例えば、道路等の下に水平に埋められている。管11の直径は、1m以下であり、小さなものは100mm以下(例えば50mm)である。管内形状確認装置10は、そのような管11の内部の形状を確認するための装置である。
【0024】
TOF(Time-of-Flight)カメラ20は、上下左右90°程度の範囲の多数箇所の距離を極めて短時間に同時に計測し3次元距離データを取得するためのデータ取得装置の一種である。TOFカメラ20は、発光部21及び受光部22を有している。TOFカメラ20は、発光部21から光を発し、その光が管11の内面13で反射して受光部22に戻ってくるまでの時間を計測し、計測した時間と光速に基づき内面13上の各点(光の反射点)までの距離を算出するカメラである。
【0025】
複数の発光部21が、TOFカメラ20の前面に設けられている。詳細には、4つの発光部21が、それらを結ぶと長方形になるように配置されている。これらの発光部21は同時に点灯して光を発する。4つの発光部21から発せられる光の光軸は平行である。発光部21から発せられる光は、限定されないが、例えば近赤外光である。発光部21から発せられる近赤外光の波長は、例えば800nm~1000nmであり、さらに具体的には例えば850nmや940nmである。
【0026】
受光部22は、TOFカメラ20の前面における、複数の発光部21に囲まれた場所に設けられている。受光部22は、発光部21から発せられ管11の内面13で反射した反射光を受光する。受光部22には、例えば5万~30万個(例えば横600個×縦400個)程度の受光素子が並んでいる。
【0027】
TOFカメラ20においては、この受光素子ごとに、光の反射点までの距離と、その光が向かって来た方向とが求まる。そのため、多数の反射点の位置のデータを取得することができ、そのデータに基づき多数の反射点の位置を3次元の情報として可視化することができる。多数の反射点は管11の内面13上の各点であるため、多数の反射点の位置のデータを取得することにより、管11の内面13の形状のデータを取得することになる。また、多数の反射点の位置を3次元的に可視化したもの(「可視化情報」とする)は、管11の内面13の形状を、多数の点の集合の形で3次元の立体画像としたものとみなすことができる。なお、可視化情報の生成は後述する3次元データ処理用コンピュータにおいて実行される。
【0028】
IMU(Inertial Measurement Unit)30は慣性計測装置とも呼ばれる。IMU30は、基準に対する傾きの方向を検出しその角度を計測することができる。TOFカメラ20が固定されている台12にIMU30も固定されているので、IMU30は、TOFカメラ20の発光部21が発する光の光軸の、管11の中心軸に対する傾きの方向と角度を計測することができる。そのため、TOFカメラ20が管11の内部で傾いていたとしても、TOFカメラ20が取得したデータをIMU30の計測データで補正することにより、発光部21が発する光の光軸が管11の中心軸と同じ方向を向いていたと仮定した場合の光の反射点の位置のデータ(管11の内面13の形状のデータ)を取得することができる。
【0029】
TOFカメラ20やIMU30とは別に、3次元データ処理用コンピュータ(図示省略)が準備されている。3次元データ処理用コンピュータの配置場所は、限定されないが、例えば台12の上である。TOFカメラ20及びIMU30により取得されたデータは、3次元データ処理用コンピュータに送られる。3次元データ処理用コンピュータは、TOFカメラ20が取得したデータに基づき、多数の光の反射点の位置を3次元的に表示した可視化情報を生成する。この可視化情報の生成過程において、3次元データ処理用コンピュータは、IMU30の計測データを使用した上記の補正を行う。そのため、3次元データ処理用コンピュータが生成する可視化情報は、発光部21が発する光の光軸が管11の中心軸と同じ方向を向いていたときの可視化情報とみなすことができる。3次元データ処理用コンピュータには、IMU30の計測データを使用した補正や可視化情報の生成を実行するためのソフトウェアがインストールされている。
【0030】
次に、以上の構成の管内形状確認装置10を使用した管内形状確認方法について説明する。
【0031】
第1実施形態の管内形状確認方法においては、作業者が、以上の構成の管内形状確認装置10を図1に示すように管11の内部に配置する。このとき、作業者は、管11の内面13の形状を確認したい部分にTOFカメラ20の前面を向けて配置する。またこのとき、作業者は、台12が管11の中心軸に対してできるだけ傾かないように、かつ、発光部21が発する光の光軸が管11の中心軸とできるだけ同じ方向を向くように、管内形状確認装置10を管11の内部に配置する。
【0032】
そのように配置された状態で、TOFカメラ20による3次元データ取得が行われる。なお、TOFカメラ20による3次元データ取得中、管内形状確認装置10は管11の内部で動かない。
【0033】
TOFカメラ20による3次元データ取得においては、4つの発光部21が点灯し、発光部21から管11の内部へ向かって光が発せられる。発光部21から発せられた光は、光軸に対して広がりながら管11の内部を進み、管11の内面13で反射して受光部22に戻る。TOFカメラ20は、それぞれの受光素子が受光した光について、反射点(管11の内面13上の各点)までの距離と、その光が向かって来た方向とを求める。求まったデータは、多数の反射点の位置について(従って管11の内面13の形状について)TOFカメラ20が取得したデータとして、3次元データ処理用コンピュータに送られる。
【0034】
ここで、多くの場合、発光部21が発する光の光軸が、管11の中心軸に対して傾いている。図1に、管11の中心軸L1(一点鎖線で示す)に対し、発光部21が発する光の光軸L2(破線で示す)が傾いている様子を示す。IMU30は、少なくともTOFカメラ20による3次元データ取得が行われている間、その傾きを計測している。IMU30による計測データは、3次元データ処理用コンピュータに送られる。
【0035】
3次元データ処理用コンピュータは、TOFカメラ20が取得した多数の反射点の位置についての(従って管11の内面13の形状についての)データを、IMU30による計測データで補正する。補正後のデータは、発光部21が発する光の光軸が、管11の中心軸と同じ方向を向いていた場合にTOFカメラ20により取得される計測データと一致する。
【0036】
3次元データ処理用コンピュータは、上記の補正後のデータに基づき、多数の光の反射点の位置を3次元的に表示した可視化情報を生成する。光の反射点は管11の内面13上にあるため、この可視化情報は、管11の内面13の形状を多数の点の集合の形で表した画像とみなすことができる。そして、多数の点の集合の形から、管11の内面13の形状を検出することができる。
【0037】
図2は、3次元データ処理用コンピュータにより生成された可視化情報を簡略化して示す図であり、(a)は管内形状確認装置10の左右方向から表示した図、(b)は管内形状確認装置10の前から表示した図である。なお、図中の破線は管11を示しているが、実際に3次元データ処理用コンピュータにより生成される可視化情報には管11は表示されない。この図において、グレーの丸印が光の反射点を表している。従って、グレーの丸印の集合が、管11の内面13の形状を表していると言える。なお、反射点は実際には例えば30万点あるが、この図では小数の反射点のみ示している。
【0038】
反射点の集合において、いずれかの位置に段差、突起、凹み等の特殊形状部分がある場合は、実際の管11の内面13におけるその位置にその特殊形状の変形があることを意味している。また、反射点の集合が曲がっている場合は、実際の管11が曲がっていることを意味している。このように、反射点の集合の形から、実際の管11の内面13の形状、変形を検出することができる。
【0039】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0040】
以上のように、第1実施形態では、TOFカメラ20を使用して管11の内部の3次元データを取得することにより、管11の内面13の形状をより正確に検出することができる。例えば、管11の内径が小さく、管11の内部に入るような小さなステレオカメラ等では、内面13までの距離の計測値に大きな誤差が生じてしまい内面13の形状を正確に検出することが困難な場合でも、TOFカメラ20を使用することにより形状をより正確に検出することができる。また、管11の部分的な変形だけでなく、管11の曲がり、腐食による形状の変化、連結部のズレや外れも、より正確に検出することができる。
【0041】
さらに上記のように、TOFカメラ20を備える管内形状確認装置10が、さらにIMU30も備えている。そのため、IMU30によって、TOFカメラ20の発光部21から発せられた光の光軸の、管11の中心軸に対する傾きの方向を検出しその角度を計測することができる。ここで、TOFカメラ20とIMU30が1つの台12に固定されているため、発光部21から発せられた光の光軸の傾きの角度を正確に計測することができる。そして、TOFカメラ20が取得したデータをIMU30による計測データで補正することにより、発光部21が発する光の光軸が、管11の中心軸と同じ方向を向いていたと仮定した場合の可視化情報を生成することができる。
【0042】
[第2実施形態]
図3(a)は、第2実施形態の管内形状確認装置110が管11の内部に配置された様子を示す図である。この管内形状確認装置110は、図3(b)、(c)に示すように、発光部21の前にレンズ40が設けられている点で、第1実施形態の管内形状確認装置10と異なる。なお、前とは発光部21から発せられた光が進む方のことである。
【0043】
レンズ40は、発光部21から発せられた光の広がりを抑える(広がる範囲を狭くする)収束具である。発光部21から発せられレンズ40を通過した光は、レンズ40より前方において、図3(a)に矢印で示すようにレンズ40がない場合よりも収束されて進む。発光部21の前にレンズ40がない場合、発光部21から発せられた光の、光軸に対する広がりの角度は例えば45°程度である。しかし、発光部21の前にレンズ40があり、発光部21から発せられた光がレンズ40を通過する場合、レンズ40を通過後の光の、光軸に対する広がりの角度は、例えば20~30°である。
【0044】
このように発光部21から発せられた光の広がりが抑えられることにより、図4に示すように、光が届く範囲では光の当たる点が密になる。そのため、光が届く範囲についてより多くのデータを取得することができ、管11の内面13のより小さな形状まで検出することができる。また、発光部21から発せられた光の広がりが抑えられることにより、その光が管11の内部においてより遠くまで届くことになる。そのため、管11の長距離の形状を確認することができる。
【0045】
[第3実施形態]
図5(a)は、第3実施形態の管内形状確認装置210が管11の内部に配置された様子を示す図である。この管内形状確認装置210は、図5(b)、(c)に示すように、発光部21の前に遮蔽筒41が設けられている点で、第1実施形態の管内形状確認装置10と異なる。遮蔽筒41は筒であり、その中心軸が前後方向に延びるように設けられている。なお、前後とは、発光部21から発せられた光が進む方を前、その反対を後ろとしたときの表現である。
【0046】
遮蔽筒41は、前から見て円形の円筒でも良いし、前から見て四角形の角筒でも良い。いずれにしても、遮蔽筒41は、中空で前後両端が開放された筒である。
【0047】
遮蔽筒41は、発光部21から発せられる光の広がりを抑える(広がる範囲を狭くする)収束具である。発光部21から発せられた光は、遮蔽筒41の内側を通過して前へ進む。光は、光軸を中心に広がりを持っているが、遮蔽筒41の内側において遮蔽筒41の内面に当たるとそこで反射して前方へ方向付けされる。そのため、遮蔽筒41を通過した光は、遮蔽筒41より前方において、遮蔽筒41がない場合よりも収束されて進む。
【0048】
第2実施形態の場合と同様に、このように発光部21から発せられた光の広がりが抑えられることにより、図4の場合と同様に、光が届く範囲では光の当たる点が密になる。そのため、光が届く範囲についてより多くのデータを取得することができ、管11の内面13のより小さな形状まで検出することができる。また、発光部21から発せられた光の広がりが抑えられることにより、その光が管11の内部においてより遠くまで届くことになる。そのため、管11の長距離の形状を確認することができる。
【0049】
[第4実施形態]
図6(a)は、第4実施形態の管内形状確認装置310が管11の内部に配置された様子を示す図である。この管内形状確認装置310は、図6(b)、(c)に示すように、発光部21の前にレンズ40及び遮蔽筒41が設けられている点で、第1実施形態の管内形状確認装置10と異なる。詳細には、第2実施形態の場合と同様に、発光部21の前にレンズ40が設けられている。さらに、そのレンズ40を囲う形で遮蔽筒41が設けられている。遮蔽筒41は、レンズ40の場所からレンズ40よりも前方の場所へ向かって、その中心軸が前後方向に延びるように設けられている。
【0050】
発光部21から発せられレンズ40及び遮蔽筒41を通過した光は、レンズ40及び遮蔽筒41より前方において、レンズ40及び遮蔽筒41のいずれか一方しか設けられていない場合よりも収束されて進む。
【0051】
こうして発光部21から発せられた光の広がりが抑えられることにより、光が届く範囲では光の当たる点が第2実施形態や第3実施形態の場合よりもさらに密になる。そのため、光が届く範囲についてさらに多くのデータを取得することができ、管11の内面13のさらに小さな形状まで検出することができる。また、発光部21から発せられた光の広がりが抑えられることにより、その光が管11の内部においてさらに遠くまで届くことになる。そのため、管11の長距離の形状を確認することができる。
【0052】
[第5実施形態]
図7(a)は、第5実施形態の管内形状確認装置410が管11の内部に配置された様子を示す図である。この管内形状確認装置410は、図7(b)、(c)に示すように、発光部21の前にレンズ40及び遮蔽筒41が設けられている点、さらにそのレンズ40を動かす方向変更装置42が設けられている点、及び発光部21が受光部22の上に1つだけ設けられている点で、第1実施形態の管内形状確認装置10と異なる。
【0053】
方向変更装置42の動作によってレンズ40及び遮蔽筒41の向きを変えることができるため、発光部21から発せられた光を任意の方向に向けることができる。そのため、光を向けた任意の方向のデータを取得することができる。
【0054】
なお、収束具としてレンズ40及び遮蔽筒41の一方しかなく、方向変更装置42がその収束具の向きを変える構成であっても良い。また、発光部21の数は1つでなくても良く、例えば第1実施形態と同様に4つでも良い。
【0055】
[第6実施形態]
図8(a)は、第6実施形態の管内形状確認装置510を上から見たときの図である。図8(b)、(c)に示すように、この管内形状確認装置510においては、2つの発光部21がTOFカメラ20の前面に設けられている。発光部21は、受光部22の左右両側にそれぞれ1つずつ設けられている。また、発光部21の前には、レンズ40及び遮蔽筒41が設けられている。管内形状確認方法の実施時には、2つの発光部21を結ぶ線が水平になるようにして管内形状確認装置510を配置する。
【0056】
このように、発光部21が左右両側にそれぞれ1つずつ設けられているため、管11の内面13における左右方向への変形のデータを正確に取得しやすい。具体的に説明すると、管11には、図8(a)に示すように左右方向への曲がりや、左右の内面13に生じた段差といった、左右方向への変形が生じている場合がある。そのような左右方向への変形があるにもかかわらず、発光部21が左右方向の1箇所にしか設けられていない場合、発光部21から発せられた光が左右方向への変形部分に十分に当たらないおそれがあり、当たったとしても受光部22に向かって反射しないおそれがある。
【0057】
しかし、本実施形態のように発光部21が左右両側にあることにより、一方の発光部21からの光が変形部分に当たりにくいとしても他方の発光部21からの光が変形部分に当たりやすく、また変形部分に当たった光が受光部22に向かって反射しやすい。そのため、管11の内面13における左右方向への変形のデータを正確に取得しやすい。
【0058】
具体例として、管11が光の進行方向を向いて右に曲がっている場合に、3次元データ処理用コンピュータにより生成される可視化情報を図9に示す。この図において、白抜きの丸印が左側の発光部21aから発せられた光の反射点を表し、グレーの丸印が右側の発光部21bから発せられた光の反射点を表している。なお、反射点は実際には例えば30万点あるが、この図では小数の反射点のみ示している。
【0059】
図9に示すように、右側の発光部21bから発せられた光の反射点(グレーの丸印)は、左側で多く、右側で少ない。一方、左側の発光部21aから発せられた光の反射点(白抜きの丸印)は、左側でも多いが、右側においても比較的多い(少なくとも、右側の発光部21bから発せられた光の反射点より多い)。従って、管11が図9のように右に曲がっている場合、左側の発光部21aから発せられる光が、管11の内面13の形状を捉えるために有効である。一方、図示省略するが、管11が左に曲がっている場合は、右側の発光部21bから発せられる光が有効である。これらのことから、管11が左右方向に曲がっている場合は、左右両側に発光部21が設けられていることが、管11の内面13の形状を捉えるために有効であることがわかる。
【0060】
なお、図8では発光部21の数が2つのみであるが、さらに多くの発光部21が設けられていても良い。また、レンズ40及び遮蔽筒41の一方又は両方がなくても良い。また、発光部21の前に収束具としてレンズ40及び遮蔽筒41の少なくとも一方が設けられている場合において、第5実施形態と同様に収束具の向きを変える方向変更装置42が設けられても良い。
【0061】
[第7実施形態]
図10(a)は、第7実施形態の管内形状確認装置610を左右方向から見たときの図である。図10(b)、(c)に示すように、この管内形状確認装置610においては、2つの発光部21がTOFカメラ20の前面に設けられている。発光部21は、受光部22の上下にそれぞれ1つずつ設けられている。なお、発光部21の前には、レンズ40及び遮蔽筒41が設けられている。管内形状確認方法の実施時には、2つの発光部21を結ぶ線が鉛直になるようにして管内形状確認装置610を配置する。
【0062】
このように、発光部21が上下にそれぞれ1つずつ設けられているため、管11の内面13における上下方向への変形のデータを正確に取得しやすい。具体的に説明すると、管11には、上下方向への曲がりや、上下の内面13に生じた段差等の、上下方向への変形が生じている場合がある。そのような上下方向への変形があるにもかかわらず、発光部21が上下方向の1箇所にしか設けられていない場合、発光部21から発せられた光が上下方向への変形部分に十分に当たらないおそれがあり、当たったとしても受光部22に向かって反射しないおそれがある。
【0063】
しかし、本実施形態のように発光部21が上下にあることにより、一方の発光部21からの光が変形部分に当たりにくいとしても他方の発光部21からの光が変形部分に当たりやすく、また変形部分に当たった光が受光部22に向かって反射しやすい。そのため、管11の内面13における上下方向への変形のデータを正確に取得しやすい。
【0064】
具体例として、管11が下に曲がっている場合に、3次元データ処理用コンピュータにより生成される可視化情報を図11に示す。この図において、白抜きの丸印が上側の発光部21aから発せられた光の反射点を表し、グレーの丸印が下側の発光部21bから発せられた光の反射点を表している。なお、反射点は実際には例えば30万点あるが、この図では小数の反射点のみ示している。
【0065】
図11に示すように、下側の発光部21bから発せられた光の反射点(グレーの丸印)は、上側で多く、下側で少ない。一方、上側の発光部21aから発せられた光の反射点(白抜きの丸印)は、上側でも多いが、下側においても比較的多い(少なくとも、下側の発光部21bから発せられた光の反射点より多い)。従って、管11が図11のように下に曲がっている場合、上側の発光部21aから発せられる光が、管11の内面13の形状を捉えるために有効である。一方、図示省略するが、管11が上に曲がっている場合は、下側の発光部21bから発せられる光が有効である。これらのことから、管11が上下方向に曲がっている場合は、上下両側に発光部21が設けられていることが、管11の内面13の形状を捉えるために有効であることがわかる。
【0066】
なお、図10では発光部21の数が2つのみであるが、さらに多くの発光部21が設けられていても良い。また、レンズ40及び遮蔽筒41の一方又は両方がなくても良い。また、発光部21の前に収束具としてレンズ40及び遮蔽筒41の少なくとも一方が設けられている場合において、第5実施形態と同様に収束具の向きを変える方向変更装置42が設けられても良い。
【符号の説明】
【0067】
10…管内形状確認装置、11…管、12…台、13…内面、20…TOFカメラ、21…発光部、22…受光部、30…IMU、40…レンズ、41…遮蔽筒、42…方向変更装置、110…管内形状確認装置、210…管内形状確認装置、310…管内形状確認装置、410…管内形状確認装置、510…管内形状確認装置、610…管内形状確認装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に配置されて管の内部のデータを取得する管内形状確認装置において、
管の内面に向けて光を発する発光部を備え、前記発光部から発せられた光が前記内面で反射して戻るまでの時間に基づき前記内面までの距離を算出することにより、前記内面の形状のデータを取得するTOFカメラと、
前記TOFカメラが固定された台と、
前記台に固定され、前記発光部から発せられた光の光軸の、前記管の中心軸に対する傾きを計測可能な慣性計測装置と、を備え、
前記発光部から発せられる光を通過させて光の広がりを抑える収束具として、レンズ及び筒の少なくともいずれか一方が設けられた、管内形状確認装置。
【請求項2】
前記収束具の向きを変更することにより光の進行方向を変える方向変更装置が設けられた、請求項に記載の管内形状確認装置。
【請求項3】
前記TOFカメラが少なくとも左右1つずつの前記発光部を備える、請求項に記載の管内形状確認装置。
【請求項4】
前記TOFカメラが少なくとも上下1つずつの前記発光部を備える、請求項に記載の管内形状確認装置。
【請求項5】
管の内部にデータ取得装置を配置して管の内部のデータを取得する管内形状確認方法において、
管の内面形状のデータを取得する前記データ取得装置としてのTOFカメラと、傾きを計測する慣性計測装置とを同じ台に固定した状態で管の内部に配置するステップと、
前記TOFカメラの発光部から管の内面に向けて発せられた光が前記内面で反射して前記TOFカメラに戻るまでの時間に基づき前記内面までの距離を算出することにより、前記内面の形状のデータを取得するステップと、
前記慣性計測装置により、前記発光部から発せられた光の光軸の、前記管の中心軸に対する傾きを計測するステップと、
前記TOFカメラが取得した前記内面の形状のデータを、前記慣性計測装置が計測した前記傾きのデータで補正することにより、前記管の中心軸方向から見た場合の前記内面の形状のデータを取得するステップと、を備え、
前記発光部から発せられた光は、レンズ及び筒の少なくともいずれか一方を通過することにより、広がりが抑えられる、管内形状確認方法。