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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080861
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194174
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】西澤 直也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 龍憲
(72)【発明者】
【氏名】塩川 浩章
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(57)【要約】
【課題】ペン先側とは反対側の後端側に重心位置を移動して、ペン先側を軽くするような調整を可能とした電子ペンを提供する。
【解決手段】軸心方向の一端側の端部に、位置指示を行うためのペン先が形成されているペン形状の電子ペン本体部と、錘部材とを備える。電子ペン本体部の軸心方向の他端側の端部に、錘部材を着脱自在に取り付けるための取付部が形成されている。電子ペン本体部の軸心方向の他端側の取付部に錘部材を取り付けることで、ペン先側とは反対側の後端側に重心位置を移動して、ペン先側を軽くするような調整を行うことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向の一端側の端部に、位置指示を行うためのペン先が形成されているペン形状の電子ペン本体部と、錘部材とを備え、
前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側の端部に、前記錘部材を着脱自在に取り付けるための取付部が形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記電子ペン本体部の前記軸心方向の他端側の端部の前記取付部を覆うようにして、前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側に着脱自在に係合されるキャップケース部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記キャップケース部は、前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側に係合されたときに前記取付部に取り付けられている前記錘部材を収納する空間部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記取付部には、前記取付部に取り付けられた前記錘部材を前記軸心方向の他端側に付勢する弾性部材が設けられており、前記キャップケース部が前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側に係合された場合に、前記錘部材が軸心方向に移動しないように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記錘部材は、前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側の前記取付部に取り付けられたときに、前記電子ペン本体部の軸心方向に延伸する棒状部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記錘部材の前記棒状部材の軸心方向の一端及び他端の両方に、前記取付部に嵌合される嵌合部が形成されていると共に、前記錘部材の重心位置は、前記棒状部材の軸心方向の中心位置からずれた位置となるように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記錘部材は、前記電子ペン本体部の軸心方向の重心位置を、前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側に変更することが可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記錘部材は、自重を変更することが可能に、及び前記電子ペン本体部の軸心方向の重心位置を、記電子ペン本体部の軸心方向の他端側に変更することが可能に、構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記弾性部材はコイルバネで構成され、前記コイルバネが弾性的に伸縮する方向の前記ペン先側となる一端が、前記電子ペン本体部の取付部に固定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記錘部材には、前記取付部に嵌合される嵌合部が形成されていると共に、
前記嵌合部は、前記コイルバネの内径より大きい外径部の先端側に前記コイルバネの内径よりも小さい小径部を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、用紙などの筆記媒体に筆記跡や描画跡を書き込み入力する鉛筆やボールペンなどの筆記具に代わって、筆記跡や描画跡を筆記入力データや描画入力データとして保存することができる電子ペンが賞用されている。電子ペンは、位置検出装置と共に用いられる。位置検出装置は、電子ペンにより指示された指示位置を検出する位置検出センサを備え、位置検出センサで検出した電子ペンによる指示位置の時系列データとして、筆記入力データや描画入力データを生成する。
【0003】
位置検出装置を備えた電子機器としては、表示装置の機能を有しないペンタブレット端末装置と呼ばれるものや、表示画面を備え、表示画面上で電子ペンにより位置指示入力をすることができるように構成されているタブレット型情報処理端末、また、最近は、IWB(Interactive White Board:電子ホワイトボード)なと、種々の態様のものが提供されている。
【0004】
電子ペンの使用者は、これらの電子機器に搭載されている位置検出センサの検出領域に対応して設けられている入力面に、電子ペンのペン先を接触あるいは近づけて、筆記入力あるいは描画入力の操作を行う。この場合に、使用者は、鉛筆、ボールペン、万年筆などの筆記具と同様に、ペン形状の電子ペンを、その軸心方向において、ペン先側に近い部分を手の指で把持して使用する。
【0005】
ところで、この種の電子ペンは、種別や用途ごとに違いはあるが、自重や重心の位置は、一般的には、それぞれ定められた固定的なものとされている。しかし、電子ペンの使用者の使用時間の長短、使用者の好み(使用者が電子ペンを把持して操作するときの操作感の好み)の違いに応じて、電子ペンの自重や重心の位置を調整したいとする要求がある。ところが、電子ペンの自重や重心の位置が固定されている場合には、その要求に対応することができないという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、ペン形状の電子ペンの、使用者が電子ペンを把持する位置近傍からペン先側の位置の部分に、重さ調製部材を設けて、電子ペンの自重及び重心の位置を調整することができるようにした電子ペンが提案されている(特許文献1(特許第5235472号)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5235472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子ペンの使用者による要求は、上述したような使用時間の長短や使用者の好みに応じた調整のみではなく、例えば描画入力における細部の描画をする場合には、ペン先側をできるだけ軽く、できれば、電子ペンの重心位置を使用者による把持部よりも後端側にしたいという要求もある。また、筆記入力や通常の描画入力の際には、使用者は、上述のように、電子ペンを、ペン先側に近い部分を手の指で把持して使用するが、背景を塗り潰すなどの描画入力の場合には、絵筆の後端側を把持するのと同様に、電子ペンを把持する位置を後端側に移動して軽く握って操作するようにする。その場合には、電子ペンの重心位置は、ペン先側よりも後端側にした方が使い勝手が良い。
【0009】
さらには、例えばIWBを用いてプレゼンテーションなどをする場合には、電子ペンをIWB上の位置指示具として使用すると共に、筆記入力または描画入力する文字や図形も比較的大きいものとするので、使用者は電子ペンの軸心方向の後端側を把持し、ペン先側を軽くするような操作をしたいという要求がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1に示された発明においては、重さ調製部材は、電子ペンの電子ペン本体部の軸心方向において使用者が電子ペンを把持する位置近傍からペン先側の位置の部分に設けられている。このため、特許文献1に示された発明においては、電子ペンの軸心方向の中央部からペン先の部分における重さ及び重心位置の調整が可能になるだけであって、調整範囲が狭く、上述のような電子ペンのペン先側とは反対側の後端側に重心位置を移動して、ペン先側を軽くするような調整は困難である。
【0011】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、
軸心方向の一端側の端部に、位置指示を行うためのペン先が形成されているペン形状の電子ペン本体部と、錘部材とを備え、
前記電子ペン本体部の軸心方向の他端側の端部に、前記錘部材を着脱自在に取り付けるための取付部が形成されている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0013】
上述の構成の電子ペンによれば、電子ペン本体部の軸心方向の他端側の端部の取付部に錘部材を着脱自在に取り付けることができるので、電子ペンの使用者は、電子ペンの後端側に重心を移動させてペン先側を軽くしたい場合に、取付部に錘部材を取り付けることで容易にそれを実現することができて非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明による電子ペンの実施形態の構成例を説明するための図である。
図2】この発明による電子ペンの実施形態において、錘部材を取り付けた状態を示す図である。
図3】この発明による電子ペンの実施形態における錘部材の他の一例を示す図である。
図4】この発明による電子ペンの実施形態における錘部材の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明による電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。図1は、この実施形態の電子ペン1の構成例を説明するための図である。図1(B)は、この実施形態の電子ペン1の外観を示すものである。電子ペン1は、図1(A)に示すような錘部材2を、付属品として有する。
【0016】
この実施形態の電子ペン1は、図1(B)に示すように、細長の、この例では円柱形状のペン形状を備えており、その軸心方向の一端側がペン先側とされている。そして、この実施形態の電子ペン1は、図1(B)~(D)に示すように、軸心方向においてペン先側の、ペン形状の電子ペン本体部11と、軸心方向においてペン先側とは反対側である後端側のキャップケース部12とで構成されている。この例では、図1(C)に示す電子ペン本体部11の後端側に、図1(D)に示すキャップケース部12が被せられ、結合されて電子ペン1が構成される。
【0017】
そして、この実施形態では、図1(D)に示すように、キャップケース部12は、電子ペン本体部11に被されるペン先側に開口12aを有すると共に、後端側は閉塞されていて、内部に空間部121を有する構造となっている。また、図1(C)に示すように、電子ペン本体部11の後端側には、キャップケース部12の内部空間部121に挿入されるキャップケース部係合部(以下係合部と略称する)111が設けられている。
【0018】
この例では、電子ペン本体部11の係合部111には、図1(C)及び図1(E)に示すように、ねじ部112が形成されている。また、キャップケース部12の内部空間部121の内壁面の、係合部111が挿入されたときにねじ部112に対応する位置には、図1(D)に示すように、ねじ部112と螺合するねじ部122が設けられている。
【0019】
キャップケース部12が、電子ペン本体部11の後端側に、係合部111を収納するように被せられ、ねじ込まれることにより、係合部111のねじ部112に、キャップケース部12のねじ部122が螺合され、電子ペン本体部11の後端側に、キャップケース部12が係止されて取り付けられる。キャップケース部12は、ねじ部122と係合部111のねじ部112との螺合を解除するようにすることで、電子ペン本体部11から取り外すことが可能となる。つまり、キャップケース部12は、電子ペン本体部11に対して着脱可能とされている。
【0020】
図1(E)は、後端側を断面として示した電子ペン本体部11を示す図である。この図1(E)に示すように、電子ペン本体部11は、細長の円筒状のペン筐体11Kの中空部内に、位置検出センサとの間で信号のインタラクションを行うインタラクション部113が設けられている。
【0021】
電子ペン本体部11のペン筐体11Kは、図1(B),(C)及び(E)に示すように、軸心方向の一端側がペン先側とされ、徐々に先細となるテーパー形状とされている。そして、電子ペン本体部11のペン筐体11Kのペン先側の先端は開口11a(図1(E)参照)とされており、当該開口11aから芯体13の先端部13aが突出されている。また、電子ペン本体部11のペン筐体11Kの後端側は、上述した係合部111として構成されている。
【0022】
この例の電子ペン1は、電磁誘導方式のものとされており、電子ペン本体部11内のインタラクション部113は、磁性体コア例えばフェライトコアにコイルが巻回されたコイル部材1131と、このコイル部材1131のコイルと接続されて共振回路を構成するコンデンサを含む回路が搭載されている回路基板1132とを備えて構成されている。
【0023】
図示は省略するが、インタラクション部113を構成する回路基板1132は、ボート状形状のホルダーに保持されており、このホルダーのペン先側の部分に筆圧検出部114が設けられている。そして、ホルダーの筆圧検出部を保持する部分のさらにペン先側にコイル部材1131が結合されて取り付けられて、インタラクション部113は、モジュール部品とされている。このモジュール部品とされたインタラクション部113は、電子ペン本体部11のペン筐体11Kの中空部内において、軸心方向に移動しない状態で収納されている。そして、芯体13は、コイル部材1131を構成するフェライトコアに設けられた貫通孔を通して、筆圧検出部114の嵌合部に嵌合されて取り付けられている。芯体13は、筆圧検出部114の嵌合部に対して着脱可能とされている。
【0024】
この実施形態の電子ペン1の電子ペン本体部11の後端部の係合部111は、図1(E)に示すように、当該係合部111の内部の中空空間と連通されている開口111bを有しており、錘部材2の取付部の役割をするように構成されている。
【0025】
錘部材2は、この例では金属で構成されている。錘部材2の素材としては、金属に限られるものではないことは言うまでもない。錘部材2は、この例では、図1(A)に示すように、棒状部材の構成とされており、当該棒状部材の軸心方向の一端及び他端の両方に、取付部を構成する係合部111において後述するように嵌合される嵌合部21及び嵌合部22が形成されている。嵌合部21及び嵌合部22は、共に、軸心方向の長さがL1で、この例では、径がR1の円柱状形状を有している。
【0026】
そして、この例では、図1(A)に示すように、嵌合部21と嵌合部22とは、当該嵌合部21及び嵌合部22の径R1よりも小さい径の細長の連結棒部23に対して、それぞれ鍔部24及び鍔部25を介して連結されている。鍔部24及び鍔部25は、共に径がR1よりも大きい径R2とされた円柱状形状を有するが、この例では、図1(A)に示すように、軸心方向の長さが異ならされている。図1(A)の例では、鍔部25の軸心方向の長さは、鍔部24の軸心方向の長さの数倍とされている。これにより、図1(A)に示すように、錘部材2の重心位置PGは、当該錘部材2の全体の軸心方向の中心位置Pcから、鍔部25側にずれた位置となっている。
【0027】
一方、電子ペン本体部11の後端側の、錘部材2の取付部を構成する係合部111の開口(ケース11Kの開口)111bの径R3は、錘部材2の鍔部24及び25の径R2よりも若干大きく選定されている。このため、錘部材2は、嵌合部21、嵌合部22のみではなく、鍔部24、鍔部25も含めて、係合部111の開口111bから中空空間内に挿入可能である。錘部材2の嵌合部21側又は嵌合部22側が、電子ペン本体部11の係合部111内に挿入されたときには、棒状部材の錘部材2の大部分は、電子ペン本体部11の係合部111から外にはみ出して軸心方向に延伸する状態となる。
【0028】
キャップケース部12の内部空間部121は、この電子ペン本体部11の係合部111から外にはみ出して軸心方向に延伸する状態の錘部材2を、後述する弾性部材のコイルバネ115の弾性と相まって、当該内部空間部121内で錘部材2が軸心方向にガタツクことなく、収納することができる大きさとされている。図1(D)に示すように、この実施形態では、キャップケース部12の内部空間部121の後端側には、錘部材2の嵌合部21又は22が収納される凹部121aが形成されている。
【0029】
そして、この実施形態では、錘部材2の取付部を構成する係合部111の開口111bに連通する中空空間内には、図1(E)に示すように、弾性部材、この例では、コイルバネ115が、当該コイルバネ115が弾性的に伸縮する方向が軸心方向となる状態で収納されている。このコイルバネ115は、内径R4が錘部材2の嵌合部21,22の径R1よりも若干大きく、外径R5(図示は省略)が開口111bの径R3よりも若干小さく選定されている。
【0030】
すなわち、この実施形態においては、錘部材2の嵌合部21及び22の径R1、鍔部24及び鍔部25の径R2、電子ペン本体部11の係合部111の開口111bの径R3、コイルバネ115の内径R4及び外径R5の関係は、
R1<R4<R5<R3であり、また、R4<R2<R3である
とされている。
【0031】
この場合に、この実施形態の電子ペン本体部11においては、係合部111の中空部の内壁の所定の位置には、コイルバネ115の外径R5よりも小さい内径の貫通孔を有するリング状の凸部116が形成されている。このため、コイルバネ115は、当該コイルバネ115が弾性的に伸縮する方向のペン先側となる一端が、このリング状の凸部116に衝合して、それ以上、ペン先側に動かないようにされている。そして、この実施形態では、当該コイルバネ115が弾性的に伸縮する方向のペン先側となる一端は、接着剤などにより、リング状の凸部116に固定されている。なお、係合部111の中空部の内壁の所定の位置のコイルバネ115を軸心方向に移動させなうようにするための部材としては、リング状の凸部116ではなく、複数個の突起や、中空空間部とペン先側の空間部とを仕切る隔壁であってもよい。
【0032】
以上説明したように、この実施形態の電子ペン1においては、電子ペン本体部11の後端側のキャップケース部12との係合部111を、錘部材2の取付部として構成し、この係合部111に、錘部材2を着脱自在に取り付けることができるように構成している。したがって、電子ペン1の使用者は、電子ペン1の後端側に重心を移動させてペン先側を軽くしたい場合に、取付部としての電子ペン本体部11の係合部111に錘部材2を取り付けることで容易にそれを実現することができる。
【0033】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、錘部材2は棒状部材の構成として、その軸心方向の一方及び他方の端部に、係合部111に対して嵌合する嵌合部21及び嵌合部22を備えていると共に、嵌合部21を係合部111に嵌合させた場合と、嵌合部22を係合部111に嵌合させた場合とで、錘部材2の軸心方向の重心位置を異ならせる構成としている。したがって、電子ペン1の使用者は、錘部材2により電子ペン1の後端側に重心を移動させる場合に、2通りの重心位置を選択することができて便利である。
【0034】
図2は、錘部材2を電子ペン本体部11の後端側の取付部を構成する係合部111に取り付けた状態を示す図を示すものである。図2(A)は、電子ペン本体部11の後端側の係合部111の中空空間内に、錘部材2の嵌合部21を挿入した状態を示す図であり、図2(B)は、図2(A)のように錘部材2を嵌合させた電子ペン本体部11に対して、キャップケース部12を被せて螺合させた状態を示す図である。
【0035】
また、図2(C)は、電子ペン本体部11の後端側の係合部111の中空空間内に、錘部材2の嵌合部22を挿入した状態を示す図であり、図2(D)は、図2(C)のように錘部材2を嵌合させた電子ペン本体部11に対して、キャップケース部12を被せて螺合させた状態を示す図である。
【0036】
図2(A)及び図2(C)に示すように、錘部材2を、その嵌合部21又は嵌合部22を、電子ペン本体部11の係合部111の中空部内に挿入すると、嵌合部21及び嵌合部22の径R1は、コイルバネ115の内径R4よりも小さいので、錘部材2の嵌合部21又は嵌合部22は、係合部111の中空部内のコイルバネ115の内径R4の空間内に挿入嵌合される。そして、錘部材2の鍔部24及び鍔部25の径R2は、コイルバネ115の内径R4よりも大きいので、錘部材2の嵌合部21と鍔部24との段差部、又は、嵌合部22と鍔部25との段差部で、コイルバネ115の後端側の端部と衝合する。これにより、錘部材2は、コイルバネ115により、電子ペン本体部11に対して、常に軸心方向の他端側に付勢される状態となる。
【0037】
そして、図2(A)及び図2(C)に示す状態から、電子ペン本体部11の後端側の係合部111に対してキャップケース部12を螺合させると、図2(B)及び図2(D)に示す状態となる。すなわち、電子ペン本体部11の係合部111に取り付けられた錘部材2は、図2(B)の場合には、錘部材2の嵌合部21がコイルバネ115の内径の空間内に収納(嵌合)される共に、嵌合部22がキャップケース部12の内部空間部121の凹部121a内に収納され、かつ、コイルバネ115の弾性により、錘部材2がキャップケース部12の内部空間部121内で軸心方向に移動しないように規制されている。同様に、図2(D)の場合には、錘部材2の嵌合部22がコイルバネ115の内径の空間内に収納(嵌合)される共に、嵌合部21がキャップケース部12の内部空間部121の凹部121a内に収納され、かつ、コイルバネ115の弾性により、錘部材2がキャップケース部12の内部空間部121内で軸心方向に移動しないように規制されている。
【0038】
錘部材2の軸心方向の全長L2(図1(A)参照)は、図2(B)及び図2(D)に示すように、電子ペン本体部11に対してキャップケース部12を螺合して結合した場合に、嵌合部21又は嵌合部22がキャップケース部12の内部空間部121の凹部121aに入り、かつ、錘部材2によりコイルバネ115が押圧されて弾性的に収縮するような長さとされている。
【0039】
錘部材2の重心位置PGは、当該錘部材2の軸心方向の中心位置よりも嵌合部22側に寄った位置となっているので、図2(B)及び図2(D)に示すように、錘部材2の嵌合部21を電子ペン本体部11の係合部111に嵌合させた場合と、錘部材2の嵌合部22を電子ペン本体部11の係合部111に嵌合させた場合とでは、電子ペン1の軸心方向において、錘部材2の重心位置PGは異なることになる。したがって、電子ペン1あるいは電子ペン本体部11の軸心方向の重心位置も、錘部材2の嵌合部21を電子ペン本体部11の係合部111に嵌合させた場合と、錘部材2の嵌合部22を電子ペン本体部11の係合部111に嵌合させた場合とで異ならせることができ、使用者は、いずれの状態にするかを選択することができて便利である。
【0040】
そして、図2(B)又は図2(D)に示す状態から、キャップケース部12を電子ペン本体部11から取り外せば、錘部材2が露出しており、しかも、嵌合部21又は嵌合部22は、コイルバネ115の内径の空間部に遊嵌された状態で収納されているので、容易に係合部111から引き抜くことができる。
【0041】
以上のように、この実施形態の電子ペン1においては、錘部材2は、電子ペン本体部11に対して容易に着脱することができると共に、嵌合部21と嵌合部22のどちら側を電子ペン本体部11に対して嵌合させるかで、後端側の重心位置を2通りに選択することができて便利である。また、この実施形態では係合部111(取付部)に設けた弾性部材の例としてのコイルバネにより、錘部材2をキャップケース部12の内部空間部121内で軸心方向に動かないようにすることでき、使い勝手が良い。
【0042】
さらに、上述の実施形態の電子ペン1においては、電子ペン本体部11の係合部111内に設けた弾性部材の例としてのコイルバネ115が、錘部材2の嵌合部21又は嵌合部22が挿入嵌合される嵌合凹部の役割をしているので、コイルバネ115とは別に嵌合部21又は嵌合部22と嵌合する凹部を別途形成する必要がない。そして、キャップケース部12の内部空間部121の後端側には、嵌合部21又は嵌合部22が収納される凹部121aが形成されているので、錘部材2は、軸心方向に動かないだけでなく、軸心方向に交差する方向にも殆ど動かず、キャップケース部12の内部空間部121内で、ガタツクことが殆どないという効果がある。
【0043】
[上述の実施形態の変形例]
上述の実施形態の電子ペン1では、キャップケース部12を電子ペン本体部11から着脱可能とする構成としては、キャップケース部12を電子ペン本体部11に螺合する構成としたが、このような構成に限られるものではない。例えば、キャップケース部12を、螺合ではなく、電子ペン本体部11に圧入嵌合するような構成であってもよい。その場合に、電子ペン本体部11の係合部111の外周部にリング状の凸条あるいは凹溝を設けると共に、キャップケース部12の内部空間部121の内壁面に、係合部111のリング状の凸条あるいは凹溝に係合するリング状の凹溝あるいは凸条を設けて、クリック的に結合することができるようにしてもよい。
【0044】
また、電子ペン本体部11の取付部に設ける弾性部材は、上述のようなコイルバネ115に限定される訳ではなく、板バネやクッション部材を用いることできる。要は、錘部材2の軸心方向の動きを規制して、ガタつかないようにすることができればどのようなものでもよい。
【0045】
また、錘部材は、上述したような構成の錘部材2に限られるものではないことは言うまでもない。図3及び図4に、錘部材の変形例を示す。以下に説明する例の錘部材も金属で構成されているが、素材はどのようなものであってもよい。
【0046】
図3の例の錘部材2Aにおいて、上述した錘部材2と同一の部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。この例の錘部材2Aにおいては、嵌合部22と連結されている鍔部25Aの軸心方向の長さは、嵌合部21と連結されている鍔部24の軸心方向の長さと同じとされ、軸心方向の両端の重さは同一とされている。
【0047】
この例の錘部材2Aにおいては、鍔部24と鍔部25Aとの間の連結棒部23Aには、軸心方向において鍔部25A側のほぼ半分の範囲には、ねじ部23Aaが形成されている。そして、連結棒部23Aのねじ部23Aaに、このねじ部23Aaに螺合する移動部材26が取り付けられている。移動部材26は、連結棒部23Aのねじ部23Aaにおいて回動させることで、連結棒部23Aの軸心方向に移動することが可能となっている。この例では、図3に示すように、移動部材26は、連結棒部23Aの軸心方向の鍔部25A側の半分の長さDの範囲内で軸心方向に移動可能とされている。
【0048】
この例の錘部材2Aも、上述した錘部材2と同様に、電子ペン本体部11の係合部111に対して、嵌合部21側と嵌合部22側との両側を用いて挿入して用いることができる。そして、その場合に、嵌合部21側を電子ペン本体部11の係合部111に挿入した場合には、移動部材26の、連結棒部23Aの長さDの範囲における位置を調整することで、連結棒部23Aの後端側の半分の領域における任意の位置に移動部材26を調整することができる。つまり、移動部材26の位置を錘部材2Aの重心位置を連結棒部23Aの後端側の半分の領域における任意の位置に調整することできる。また、嵌合部22側を電子ペン本体部11の係合部111に挿入した場合には、連結棒部23Aの長さDの範囲における移動部材26の位置を調整することで、錘部材2Aの連結棒部23Aのペン先側の半分の領域における任意の位置に移動部材26を調整することができる。つまり、移動部材26の位置を錘部材2Aの重心位置を連結棒部23Aのペン先側の半分の領域における任意の位置に調整することできる。
【0049】
したがって、この例の錘部材2Aを用い、電子ペン本体部11の係合部111に対して嵌合部21側と嵌合部22側のいずれを挿入かを選択すると共に、長さDの範囲における移動部材26の位置を調整することで、錘部材2Aの重心位置を、連結棒部23Aの軸心方向の任意の位置に調整することが可能となり、電子ペン1あるいは電子ペン本体部11の重心位置の細かい調整が可能となる。
【0050】
なお、この例では、錘部材2Aは、錘部材2と同様に、軸心方向の両端に嵌合部21,22を設けて、嵌合部21,22のいずれをも電子ペン本体部11の係合部111に挿入して取り付けることができるように構成したが、嵌合部は、軸心方向の一端側のみであってもよい。その場合には、連結棒部23Aの全体にねじ部23Aaを設けて、移動部材26を連結棒部23Aの軸心方向の全体に亘って移動可能とするように構成する。
【0051】
次に、図4の例の錘部材2Bにおいても、上述した錘部材2と同一の部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。この例の錘部材2Bにおいては、図4(A)に示すように、軸心方向の一端側の嵌合部21B及び鍔部24Bには、連結棒部23Bの軸心方向の一端側を圧入嵌合する凹部27が設けられており、嵌合部21B及び鍔部24Bは、連結棒部23Bに対して取り外しが可能とされている。そして、この例の錘部材2Bにおいても、嵌合部22と連結されている鍔部25Bの軸心方向の長さは、嵌合部21Bと連結されている鍔部24Bの軸心方向の長さと同じとされ、軸心方向の両端の重さは同一とされている。
【0052】
そして、この例の錘部材2Bにおいては、自重及び重心位置調整用の複数個の錘片28と、ストッパ29とが付属品として付随されている。錘片28は、連結棒部23Bの径よりも若干大きい径の貫通孔28aを有する円形リング状に構成されている。ストッパ29は、錘片28とほぼ同形状のリング状の部品であるが、弾性材料、例えば弾性ゴムで構成されていると共に、貫通孔29Aの径が、連結棒部23Bの径よりも若干小さい径とされている。
【0053】
錘部材2Bの使用者は、錘部材2Bが望む自重及び重心位置となるように、取り付ける錘片28の個数を選定する。そして、嵌合部21B及び鍔部24Bを連結棒部23Bから取り外し、その取り外した端部側から、選定した個数の錘片28のそれぞれを、その貫通孔28a内に連結棒部23Bを通すようにして装着する。その後、図4(C)に示すように、ストッパ29を連結棒部23Bに圧入装着して、連結棒部23Bに装着した複数個の錘片28が連結棒部23Bの軸心方向に動かないように位置規制する。なお、この例では、錘片28は、連結棒部23Bの軸心方向の全部の長さ分が埋まる個数が用意され、その中から使用する個数が選定される。
【0054】
この例の錘部材2Bも、上述した錘部材2,2Aと同様に、電子ペン本体部11の係合部111に対して、嵌合部21B側と嵌合部22B側との両側を用いて挿入して用いることができる。そして、その場合に、嵌合部21B側を電子ペン本体部11の係合部111に挿入した場合には、錘片28の個数を調整することで、錘部材2Bの自重を調整することができると共に、錘部材2Bの重心位置を連結棒部23Bの後端側の半分の領域における任意の位置に調整することできる。また、嵌合部22B側を電子ペン本体部11の係合部111に挿入した場合には、錘片28の個数を調整することで、錘部材2Bの自重を調整することができると共に、錘部材2Bの重心位置を連結棒部23Bのペン先側の半分の領域における任意の位置に調整することできる。
【0055】
したがって、この例の錘部材2Bを用い、電子ペン本体部11の係合部111に対して嵌合部21側と嵌合部22側のいずれを挿入かを選択すると共に、錘片28の個数を調整することで、錘部材2Bの自重を調整することができると共に、重心位置を、連結棒部23Bの軸心方向の任意の位置に調整することが可能となり、電子ペン1あるいは電子ペン本体部11の重心位置の細かい調整が可能となる。
【0056】
なお、図4の例の錘部材2Bにおいては、錘片28は、連結棒部23Bの軸心方向の他方の端部の鍔部25Bに押し付けるように片寄せて装着するようにしたが、ストッパ29を2個用い、その2個のストッパで、1~複数個の錘片28を挟んで、連結棒部23Bの任意の位置に係止させるように構成することもできる。その場合には、錘部材は、嵌合部を軸心方向の一端側のみに設ける構成としてもよい。
【0057】
また、図4の例の錘部材2Bにおいても、嵌合部は軸心方向の一方の端部にのみ設けるようにしてもよい。
【0058】
[その他の実施形態又は変形例]
なお、上述の実施形態では、電子ペン本体部の後端側の取付部を構成する係合部に弾性部材の例としてのコイルバネを設けると共に、キャップケース部を係合部に係合させることで、錘部材をキャップケース部とコイルバネとで軸心方向に動かないよう構成した。しかし、このような構成は必須ではなく、例えば電子ペン本体部の後端側の取付部の例としての係合部内にねじ部を設けると共に、錘部材の嵌合部にねじ部を形成しており、錘部材を係合部にねじ込むことで取り付けるようにしてもよい。その場合には、弾性部材は不要となると共に、キャップケース部は、錘部材を収納することができる空間部を備えればよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、電子ペンを電子ペン本体部とキャップケース部とからなるものとしたが、電子ペン本体部のみの構成としてもよい。その場合に、錘部材は、電子ペン本体部の後端側の取付部にねじ込み式に取り付けるなどの構成とすることができる。この場合には、電子ペンは、錘部材を露出したまま使用されることになる。なお、この場合には、電子ペン本体部の後端側は、錘部材を取り付けないときには、着脱自在の蓋部を取り付けるようにしておけばよい。
【0060】
また、錘部材は、上述の例では棒状の部材としたが、棒状の部材に限られる訳ではないことは言うまでもない。特に、電子ペンがキャップケース部を備えず、電子ペン本体部のみからなり、錘部材を露出させて使用するような場合には、種々の形状の錘部材を用いることが可能である。
【0061】
なお、上述の例の電子ペンは、位置検出センサとのインタラクション方式として電磁誘導方式を用いるものの構成として説明したが、この発明による電子ペンは、位置検出センサとのインタラクション方式に関係なく、種々のものに適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…電子ペン、2…錘部材、11…電子ペン本体部、12…キャップケース部、13…芯体、111…係合部、112…ねじ部、113…インタラクション部、115…コイルバネ、121…内部空間部、122…ねじ部、21,22…嵌合部、23…連結棒部、24,25…鍔部、PG…錘部材2の重心位置
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
図示は省略するが、インタラクション部113を構成する回路基板1132は、ボート状形状のホルダーに保持されており、このホルダーのペン先側の部分に筆圧検出部114が設けられている。そして、ホルダーの筆圧検出部114を保持する部分のさらにペン先側にコイル部材1131が結合されて取り付けられて、インタラクション部113は、モジュール部品とされている。このモジュール部品とされたインタラクション部113は、電子ペン本体部11のペン筐体11Kの中空部内において、軸心方向に移動しない状態で収納されている。そして、芯体13は、コイル部材1131を構成するフェライトコアに設けられた貫通孔を通して、筆圧検出部114の嵌合部に嵌合されて取り付けられている。芯体13は、筆圧検出部114の嵌合部に対して着脱可能とされている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
そして、この例の錘部材2Bにおいては、自重及び重心位置調整用の複数個の錘片28と、ストッパ29とが付属品として付随されている。錘片28は、連結棒部23Bの径よりも若干大きい径の貫通孔28aを有する円形リング状に構成されている。ストッパ29は、錘片28とほぼ同形状のリング状の部品であるが、弾性材料、例えば弾性ゴムで構成されていると共に、貫通孔29の径が、連結棒部23Bの径よりも若干小さい径とされている。