(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080862
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】超音波画像処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194176
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青野 尚平
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601GA18
4C601JC11
4C601JC16
4C601JC22
4C601JC23
4C601JC37
4C601KK12
4C601KK24
4C601KK25
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、超音波画像処理装置について、パノラマ画像を取得するための操作およびパノラマ画像を生成する処理を容易にすることである。
【解決手段】情報処理部34は、超音波プローブ12によって取得される画像データに基づいて、超音波プローブ12の状態を判定する処理と、超音波プローブ12の状態に応じて、超音波プローブ12による合成用画像データの取得を開始し、超音波プローブ12の状態に応じて、合成用画像データの取得を終了する処理と、時間経過と共に順次取得された合成用画像データを合成してパノラマ画像データを生成する処理を実行する。情報処理部34は、超音波プローブ12が静止している状態であると判定したときに、合成用画像データの取得を開始し、超音波プローブ12が非搬送状態であると判定したときに合成用画像データの取得を終了する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブによって取得される画像データに基づいて、超音波プローブの状態を判定する処理と、
前記超音波プローブの状態に応じて、前記超音波プローブによる合成用画像データの取得を開始し、前記超音波プローブの状態に応じて、前記合成用画像データの取得を終了する処理と、
時間経過と共に順次取得された前記合成用画像データを合成してパノラマ画像データを生成する処理と、を実行することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
前記合成用画像データが所定フレーム数だけ取得されるごとに前記パノラマ画像データを順次更新する処理を含み、
前記超音波画像処理装置は、
更新された前記パノラマ画像データに基づくパノラマ画像を順次表示する処理を実行することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記超音波プローブが静止している状態であると判定したときに、前記合成用画像データの取得を開始し、
前記超音波プローブが非搬送状態であると判定したときに前記合成用画像データの取得を終了することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データは、
先に取得された前記合成用画像データが示す画像と、後に取得された前記合成用画像データが示す画像の重なり部分について、先に取得された前記合成用画像データによる画像を示すか、または、後に取得された前記合成用画像データによる画像を示すことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域に、予め定められた態様の隙間画像を配置する処理を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域に、一方が他方を透かして見通される透過画像を配置する処理を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項7】
請求項4に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域について近似度を求める処理と、
予め定められた態様の隙間画像を前記遷移領域に配置する処理、または、一方が他方を透かして見通されるような透過画像を前記遷移領域に配置する処理のいずれか一方を、前記近似度に応じて実行する処理を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置に関し、特に、複数の画像を合成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブによって被検体に対して超音波を送受信することで、被検体の超音波画像を取得する超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置については、超音波プローブを手によって移動させながら複数フレームの超音波画像データを取得し、複数フレームの超音波画像データが示す複数の超音波画像を繋ぎ合わせてパノラマ画像を生成する技術がある。また、超音波プローブの動きや状態に応じて、超音波診断装置を制御する技術がある。
【0003】
以下の特許文献1および2には、パノラマ画像を生成する技術が記載されている。特許文献3および4には、超音波プローブの動きや状態に応じて、超音波診断装置を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-217018号公報
【特許文献2】特開2011-217927号公報
【特許文献3】特開2017-12599号公報
【特許文献4】国際公開第2014/557359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の超音波診断装置には、パノラマ画像を取得する際にボタン等を操作するものがあった。この場合、パノラマ画像を取得するための操作が煩雑となってしまうことがある。また、従来の超音波診断装置では、パノラマ画像を取得している間に超音波プローブの搬送方向がブレてしまい、複数の超音波画像を繋ぎ合わせることが困難となることがある。
【0006】
本発明の目的は、超音波画像処理装置について、パノラマ画像を取得するための操作およびパノラマ画像を生成する処理を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超音波プローブによって取得される画像データに基づいて、超音波プローブの状態を判定する処理と、前記超音波プローブの状態に応じて、前記超音波プローブによる合成用画像データの取得を開始し、前記超音波プローブの状態に応じて、前記合成用画像データの取得を終了する処理と、時間経過と共に順次取得された前記合成用画像データを合成してパノラマ画像データを生成する処理と、を実行することを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記パノラマ画像データを生成する処理は、前記合成用画像データが所定フレーム数だけ取得されるごとに前記パノラマ画像データを順次更新する処理を含み、前記超音波画像処理装置は、更新された前記パノラマ画像データに基づくパノラマ画像を順次表示する処理を実行する。
【0009】
望ましくは、前記超音波プローブが静止している状態であると判定したときに、前記合成用画像データの取得を開始し、前記超音波プローブが非搬送状態であると判定したときに前記合成用画像データの取得を終了する。
【0010】
望ましくは、前記パノラマ画像データは、先に取得された前記合成用画像データが示す画像と、後に取得された前記合成用画像データが示す画像の重なり部分について、先に取得された前記合成用画像データによる画像を示すか、または、後に取得された前記合成用画像データによる画像を示す。
【0011】
望ましくは、前記パノラマ画像データを生成する処理は、時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域に、予め定められた態様の隙間画像を配置する処理を含む。
【0012】
望ましくは、前記パノラマ画像データを生成する処理は、時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域に、一方が他方を透かして見通される透過画像を配置する処理を含む。
【0013】
望ましくは、前記パノラマ画像データを生成する処理は、時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域について近似度を求める処理と、予め定められた態様の隙間画像を前記遷移領域に配置する処理、または、一方が他方を透かして見通されるような透過画像を前記遷移領域に配置する処理のいずれか一方を、前記近似度に応じて実行する処理を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パノラマ画像を取得するための操作およびパノラマ画像を生成する処理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【
図2】パノラマ画像処理で取得されるBモード画像を概念的に示す図である。
【
図3】関心領域について取得されたパノラマ画像を示す図である。
【
図4】2つの関心領域画像と、これらの遷移領域に配置された境界画像を示す図である。
【
図5】リアルタイムパノラマ画像生成処理によって表示される画像の例を示す図である。
【
図6】パノラマ画像処理の第1の例を示すフローチャートである。
【
図7】パノラマ画像処理の第2の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置100の構成が示されている。超音波診断装置100は、送信部10、超音波プローブ12、受信部16、情報処理部34、ディスプレイ28、制御部30および操作部32を備えている。
【0017】
操作部32は、ボタン、レバー、キーボード、マウス等を備えてもよい。操作部32は、ディスプレイ28に設けられるタッチパネルであってもよい。制御部30は、ユーザによる操作部32の操作に応じて、超音波診断装置100の全体的な制御を行う。
【0018】
超音波プローブ12は、複数の振動素子を備えている。送信部10は、各振動素子に送信信号を出力する。各振動素子は、送信信号を超音波に変換し、被検体14に送信する。送信部10は、各振動素子から発せられる超音波が特定の方向で強め合うように、各振動素子に出力する送信信号の遅延時間を調整する。これによって、その特定の方向に超音波による送信ビームが形成される。送信部10は、各振動素子に出力する送信信号の遅延時間を変化させ、送信ビームを被検体14に対して走査する。
【0019】
複数の振動素子のそれぞれは、被検体14で反射した超音波を受信し、電気信号に変換して受信部16に出力する。受信部16は、送信ビームの方向から受信された超音波に基づく電気信号が強め合うように、各振動素子から出力された電気信号を整相加算して受信信号を生成し、この受信信号を情報処理部34に出力する。整相加算によって、超音波プローブ12において受信ビームが形成される。ここで、受信ビームとは、受信信号を強め合う超音波が到来する方向を示す指向性パターンをいう。受信ビームに応じた受信信号が、Bモード画像データを生成する信号として受信部16から情報処理部34に出力される。以下の説明では、送信ビームと受信ビームを併せて送受信ビームという。
【0020】
情報処理部34は、Bモード画像生成部18、状態判定部20、画像合成部22、画像メモリ24および表示処理部26を備え、受信信号に基づき画像データを生成する超音波画像処理装置を構成する。情報処理部34は、プログラムを実行することで各構成要素の機能を実現するプロセッサを含んでよい。この場合、プロセッサは、プログラムを実行することで各構成要素(Bモード画像生成部18、状態判定部20、画像合成部22および表示処理部26)を仮想的に構成する。
【0021】
受信部16から出力された受信信号は、Bモード画像生成部18に入力される。Bモード画像生成部18は、送受信ビームの走査方向に対して得られた受信信号に基づいてBモード画像データを生成する。
【0022】
送信部10、超音波プローブ12および受信部16は、被検体14に対する送受信ビームの走査を繰り返し実行する。Bモード画像生成部18は、Bモード画像データを所定のフレームレートで時間経過と共に順次生成する。
【0023】
表示処理部26は、時間経過と共に順次生成されたBモード画像データに基づいて、時間経過と共に順次Bモード画像を示す映像信号を生成し、その映像信号をディスプレイ28に出力する。ディスプレイ28は、映像信号に基づいて、時間経過と共に順次生成されたBモード画像に基づく画像、すなわち、リアルタイムのBモード画像を表示する。
【0024】
超音波診断装置100は、パノラマ画像を表示する処理も実行する。パノラマ画像処理では、被検体14の表面に沿って、ユーザが超音波プローブ12を手によって搬送する。また、Bモード画像生成部18によって時間経過と共に順次生成された一連のBモード画像データが、画像メモリ24に記憶される。画像メモリ24に記憶されるBモード画像データは、パノラマ画像データを生成するための合成用画像データである。
【0025】
画像メモリ24には、最大NフレームのBモード画像データが記憶されてよい。この場合、画像メモリ24が記憶するBモード画像がNフレームに達しており、新たなBモード画像が生成された場合、最古のBモード画像データが画像メモリ24から削除された上で、新たなBモード画像が画像メモリ24に記憶される。
【0026】
画像合成部22は、画像メモリ24に記憶された一連のBモード画像データに基づいて、パノラマ画像データを生成し、表示処理部26に出力する。表示処理部26は、パノラマ画像データに基づいて、パノラマ画像を示す映像信号を生成し、その映像信号をディスプレイ28に出力する。ディスプレイ28は、映像信号に基づいてパノラマ画像を表示する。
【0027】
図2には、パノラマ画像処理で取得されるBモード画像が概念的に示されている。説明を簡単にするため、3フレームのBモード画像が示されている。ユーザが被検体14の表面に沿って超音波プローブ12を搬送すると共に、時間経過と共に順次生成されたBモード画像40-1~40-3が示されている。Bモード画像40-1~40-3は、Bモード画像生成部18がBモード画像データを生成するフレームレートに対し、所定フレーム間隔で、所定フレーム数ごとに生成されたBモード画像データに基づく画像であってよい。
【0028】
操作部32におけるユーザの操作によって、各Bモード画像に対しては、パノラマ画像を表示する関心領域が設定される。
図2には、Bモード画像40-1~40-3に対して、それぞれ、関心領域画像42-1~42-3が示されている。超音波プローブ12が搬送されることでBモード画像が取得される領域が移動し、関心領域画像が移動する様子が概念的に示されている。
【0029】
図3には、関心領域について取得されたパノラマ画像が示されている。本実施形態では、先に取得されたBモード画像データが示す関心領域画像と、後に取得されたBモード画像データが示す関心領域画像の重なり部分については、後に取得されたBモード画像データが示す関心領域画像を表示する。これによって、時間経過と共に順次生成され、被検体14における取得位置が異なる複数の関心領域画像(超音波画像)については、先に取得された関心領域画像の上に後に取得された関心領域画像が重ねられた画像としてパノラマ画像が表示される。
【0030】
なお、先に取得された関心領域画像と、後に取得された関心領域画像との重なり部分は、重なり部分における2つの関心領域画像の近似度合いを示す近似度が大きくなるように、2つの関心領域画像のうちいずれか一方の表示位置(ディスプレイ28に表示される画像における位置)を画像合成部22が調整してよい。この重なり部分における2つの関心領域画像の近似度は、2つの関心領域画像の重なり部分における相関値であってもよい。この場合、例えば、2つの関心領域画像のうち少なくとも一方の表示位置を移動させながら、重なり部分における相関値を求め、相関値が極大となるように各関心領域画像の表示位置を決定する処理を画像合成部22が実行する。
【0031】
パノラマ画像は、先に取得された関心領域画像と、後に取得された関心領域画像との重なり部分に、先に取得された関心領域画像が表示される画像であってもよい。すなわち、パノラマ画像データは、先に取得されたBモード画像データによる関心領域画像と、後に取得されたBモード画像データによる関心領域画像の重なり部分について、先に取得されたBモード画像データによる関心領域画像を示すか、または、後に取得されたBモード画像データによる関心領域画像を示す。
【0032】
先に取得された関心領域画像と、後に取得された関心領域画像との重なり部分における遷移領域には、2つの関心領域画像との繋がりを自然に表現するための境界画像が配置される。ここで、遷移領域とは、先に取得された関心領域画像と後に取得された関心領域画像との境界線から、所定の遷移距離δだけ重なり部分に入り込んだ領域をいう。境界線の曲率半径が遷移距離δよりも短い場合には、境界線のあらゆる位置から重なり部分に遷移距離δだけ入り込んだ領域として遷移領域が定義される。
【0033】
図4には、関心領域画像42-1および42-2と、これらの遷移領域44に配置された境界画像46が示されている。境界画像46は、一方が他方を透かして見通される透過画像であってよい。画像合成部22は、関心領域画像42-1の遷移領域44における各画素の画素値Aと、関心領域画像42-2における各画素の画素値Bについて、次の(数1)で表される透過処理を実行して合成画素値Cを求める。
【0034】
(数1)C=α・A+(1-α)・B
【0035】
ここで、透過率αは、関心領域画像42-1の画素値Aを透過画像の合成画素値Cに寄与させる度合いを示す。透過率αは、遷移領域44の位置に応じて値が決定される。すなわち、透過率αは、遷移領域44上の点P(x、y)の座標値(x,y)に関する関数であり、1以上、0以下の値を有する。ただし、xy座標系は、パノラマ画像が形成される平面上に定義される。透過率αは、関心領域画像42-1と関心領域画像42-2との境界線で値が1となり、境界線から重なり部分の内側に向かうにつれて1から0に近付くように決定されてもよい。
【0036】
画像合成部22は、遷移領域44における関心領域画像42-1および42-2の相関値を求め、相関値が所定の閾値を超えるときは遷移領域44に透過画像を配置し、相関値が所定の閾値以下であるときは、予め定められた態様の隙間画像を配置する処理を実行してもよい。隙間画像には、例えば、予め定められた色彩、予め定められた模様、または予め定められた色彩および模様の画像がある。また、画像合成部22は、相関値に関わらず、遷移領域44に境界画像46として隙間画像を配置する処理を実行してもよい。
【0037】
このように、パノラマ画像における遷移領域44に、境界画像46として透過画像または隙間画像を配置することで次のような効果が得られる。すなわち、ユーザが被検体14の表面に沿って超音波プローブ12を搬送する際に、超音波プローブ12の搬送方向が手ブレなどによって急激に変化した場合であっても、全体像を把握し易いパノラマ画像が形成される。
【0038】
パノラマ画像処理では、Bモード画像データを順次生成し記憶する処理を一旦終了し、その後に画像合成部22が、一連のBモード画像データに基づいて、パノラマ画像データを生成してもよい。この場合、Bモード画像データの生成および記憶が終了したときに画像メモリ24に記憶されているBモード画像データに基づくパノラマ画像が表示される。
【0039】
また、パノラマ画像処理では、予め定められたフレーム数FだけBモード画像データが新たに生成されるごとにパノラマ画像データを更新するリアルタイムパノラマ画像生成処理が実行されてもよい。画像合成部22は、Bモード画像生成部18がFフレームのBモード画像データを生成するごとに、画像メモリ24に記憶されたBモード画像データに基づいてパノラマ画像データを生成する。例えば、画像合成部22は、画像メモリ24に記憶された一連のBモード画像データから、Fフレーム間隔でBモード画像データを読み出して、パノラマ画像データを生成する。
【0040】
図5(a)~(c)には、リアルタイムパノラマ画像生成処理によってディスプレイ28に表示される画像の例がそれぞれ示されている。上段にはBモード画像が示されており、下段にはパノラマ画像が示されている。
図5(a)には最初に表示される画像が示されている。
図5(b)には、
図5(a)の画像を示すBモード画像データが生成されてから、さらに、FフレームのBモード画像データが生成されたときに表示される画像が示されている。
図5(c)には、
図5(b)の画像を示すBモード画像データが生成されてから、さらに、FフレームのBモード画像データが生成されたときに表示される画像が示されている。
図5(a)~(c)に示されているように、Fフレームに相当する時間が経過するごとに、順次、新たに生成された関心領域画像によってパノラマ画像が拡張される。
【0041】
リアルタイムパノラマ画像生成処理によれば、ユーザは、順次更新されるパノラマ画像を確認しながら超音波プローブ12を被検体14に沿って搬送させることができる。これによって、適切なパノラマ画像が形成されるように超音波プローブ12の位置を調整しながら超音波プローブ12を搬送させる操作が容易となる。
【0042】
ユーザによる超音波プローブ12の操作に応じて、合成用画像データとしてのBモード画像データの取得を開始し、合成用画像データとしてのBモード画像データの取得を終了する処理について説明する。この処理は、超音波プローブ12の状態を判定することで行われる。すなわち、超音波プローブ12が所定時間に亘って静止していることが検出されたときに、合成用画像データの取得が開始される。そして、超音波プローブ12が非搬送状態にあることが検出されたときに、合成用画像データの取得が終了する。ここで、非搬送状態とは、パノラマ画像を取得するために被検体14の表面に沿って搬送されていた超音波プローブ12が所定時間に亘って静止した、被検体14から離れた、搬送方向が急激に変化した等、超音波プローブ12が被検体14に沿って搬送されていない状態をいう。
【0043】
超音波プローブ12の状態は、
図1に示されている状態判定部20によって判定される。状態判定部20は、Bモード画像生成部18が時間経過と共に順次生成するBモード画像データに基づいて、超音波プローブ12の状態を判定する。
【0044】
状態判定部20は、Bモード画像データが示すBモード画像の輝度が所定の範囲内である場合には、超音波プローブ12が被検体14に接触していると判定する。Bモード画像の輝度は、Bモード画像を構成する複数の画素の画素値の平均値、中央値、最頻値等の統計値によって定義されてよい。例えば、状態判定部20は、輝度が所定の閾値を超えるときは、超音波プローブ12が被検体14に接触していると判定する。状態判定部20は、輝度が所定の閾値以下であるときは、超音波プローブ12が被検体14に接触していないと判定する。状態判定部20は、超音波プローブ12が被検体14に接触しているという判定をした後、次のような処理を実行する。
【0045】
状態判定部20は、例えば、時間軸上で隣接して生成された2つのBモード画像データの近似度を求める。近似度は、2つのBモード画像データが示す2つのBモード画像の相関値で表されてよい。
【0046】
状態判定部20は、時間軸上で隣接して生成された2つのBモード画像データの近似度が所定の閾値以下であり、これら2つのBモード画像データが示す2つのBモード画像の一方を位置を変化させたときに近似度が極大となる位置がある場合には、超音波プローブ12が搬送状態にあると判定する。
【0047】
また、近似度が所定フレーム数に亘って所定の閾値を超える場合には、状態判定部20は、超音波プローブ12が静止したと判定する。
【0048】
そして、時間軸上で隣接して生成された2つのBモード画像データが示す2つのBモード画像の一方の位置を変化させたとしても、近似度が極大とならない場合には、状態判定部20は、超音波プローブ12が特異状態であると判定する。特異状態には、超音波プローブ12が被検体14から離れた状態や、搬送方向が急激に変化した状態がある。超音波プローブ12が静止した状態および特異状態は、超音波プローブ12が被検体14に沿って搬送されていない非搬送状態に含まれる。
【0049】
図6には、パノラマ画像処理の第1の例を示すフローチャートが示されている。この処理例では、超音波プローブ12が所定時間に亘って静止してから、超音波プローブ12が搬送され、非搬送状態となるまでの間に、一連のBモード画像データが画像メモリ24に記憶される。一連のBモード画像データが画像メモリ24に記憶された後に、画像合成部22がパノラマ画像データを生成する。
【0050】
Bモード画像生成部18は、受信部16が出力する受信信号に基づいてBモード画像データを生成する(S101)。表示処理部26は、Bモード画像データに基づいて、Bモード画像をディスプレイ28に表示させる(S102)。
【0051】
状態判定部20は、超音波プローブ12が所定時間に亘って静止したか否かを判定する(S103)。所定時間に亘って超音波プローブ12が静止していないと状態判定部20が判定した場合、超音波診断装置100で実行される処理はステップS101に戻る。超音波プローブ12が所定時間に亘って静止したと状態判定部20が判定した場合、実行される処理は、ステップS104~S107に進み、パノラマ画像を生成するための処理が実行される。
【0052】
処理が開始されてから超音波プローブ12が静止していると状態判定部20が判定するまでの間、ステップS101~S103の処理が繰り返される。これによって、ディスプレイ28にはリアルタイムでBモード画像が表示される。
【0053】
Bモード画像生成部18は、受信部16が出力する受信信号に基づいてBモード画像データを生成する(S104)。画像メモリ24には、Bモード画像データが記憶される(S105)。表示処理部26は、Bモード画像をディスプレイ28に表示させる(S106)。状態判定部20は、超音波プローブ12が非搬送状態であるか否かを判定する(S107)。超音波プローブ12が非搬送状態でないと状態判定部20が判定した場合、超音波診断装置100で実行される処理は、ステップS104の処理に戻る。超音波プローブ12が非搬送状態であると状態判定部20が判定した場合、Bモード画像データの生成、記憶、およびBモード画像の表示は一旦停止され、超音波診断装置100で実行される処理は、ステップS108に進む。
【0054】
画像合成部22は、ステップS107の処理で肯定的な判定をした後、自動的にあるいは操作部32におけるユーザの操作に応じて、画像メモリ24に記憶されたBモード画像データに基づくパノラマ画像データを生成する(S108)。表示処理部26は、パノラマ画像をディスプレイ28に表示させる(S109)。Bモード画像生成部18および表示処理部26は、S108およびS109の処理と共に、時間経過と共に順次生成されるBモード画像(リアルタイムのBモード画像)をディスプレイ28に表示させてもよい。
【0055】
このように、超音波画像処理装置としての情報処理部34は、超音波プローブ12によって取得されるBモード画像データ(画像データ)に基づいて、超音波プローブ12の状態を判定する(S103)。情報処理部34は、超音波プローブ12の状態に応じて、合成用画像データとしてのBモード画像データの取得を開始し、超音波プローブ12の状態に応じて、合成用画像データとしてのBモード画像データの取得を終了する(S104~S107)。情報処理部34は、時間経過と共に順次取得されたBモード画像データ(合成用画像データ)を合成してパノラマ画像データを生成する処理を実行する(S108)。
【0056】
図7には、パノラマ画像処理の第2の例(リアルタイムパノラマ画像生成処理の例)を示すフローチャートが示されている。この処理例では、FフレームのBモード画像データが生成および記憶されるごとに、画像合成部22がパノラマ画像データを更新する点(S201)が、第1の例と異なっている。ここで、パノラマ画像データの更新とは、先に生成されたパノラマ画像データに基づく画像に対して、新たに生成されたBモード画像データが示す関心領域画像を追加する処理をいう。また、Bモード画像と共に、更新されたパノラマ画像が表示される点(S202)が第1の例と異なっている。
【0057】
ステップS104からステップS107が繰り返される最初のループにおけるステップS202の処理では、画像合成部22は、最初に生成されたBモード画像データに基づいて、パノラマ画像データを生成する。このパノラマ画像データは、最初の1枚の関心領域画像をパノラマ画像として示す。2回目以降のループにおけるステップ202の処理では、画像合成部22は、FフレームのBモード画像データが生成および記憶されるごとに、パノラマ画像データを更新する。
【0058】
例えば、1フレームのBモード画像データについてS104およびS105の処理が実行されるごとにカウント値を1だけ増加させる処理を画像合成部22が実行する。カウント値がFに達したときに、画像合成部22はパノラマ画像データを更新し、カウント値を0とする。
【0059】
このように、情報処理部34は、リアルタイムパノラマ画像生成処理を実行することで、合成用画像データとしてのBモード画像データが所定フレーム数Fだけ取得されるごとに、パノラマ画像データを順次更新する(S201)。情報処理部34は、更新されたパノラマ画像データに基づくパノラマ画像を順次表示する処理を実行する。
【0060】
図7に示されている処理によれば、超音波プローブ12が被検体14に沿って搬送されている間、FフレームのBモード画像データが生成されるごとに、パノラマ画像データが生成または更新される。そして、
図5に示されるように、各パノラマ画像データに基づくパノラマ画像がディスプレイ28に表示される。
【0061】
これによって、ユーザは、順次更新されるパノラマ画像を確認しながら超音波プローブ12を被検体14に沿って搬送させることができる。これによって、適切なパノラマ画像が形成されるように超音波プローブ12の位置を調整しながら超音波プローブ12を搬送させる操作が容易となる。
【0062】
本発明の構成を以下に示す。
【0063】
構成1:
超音波プローブによって取得される画像データに基づいて、超音波プローブの状態を判定する処理と、
前記超音波プローブの状態に応じて、前記超音波プローブによる合成用画像データの取得を開始し、前記超音波プローブの状態に応じて、前記合成用画像データの取得を終了する処理と、
時間経過と共に順次取得された前記合成用画像データを合成してパノラマ画像データを生成する処理と、を実行することを特徴とする超音波画像処理装置。
構成2:
構成1に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
前記合成用画像データが所定フレーム数だけ取得されるごとに前記パノラマ画像データを順次更新する処理を含み、
前記超音波画像処理装置は、
更新された前記パノラマ画像データに基づくパノラマ画像を順次表示する処理を実行することを特徴とする超音波画像処理装置。
構成3:
構成1または2に記載の超音波画像処理装置において、
前記超音波プローブが静止している状態であると判定したときに、前記合成用画像データの取得を開始し、
前記超音波プローブが非搬送状態であると判定したときに前記合成用画像データの取得を終了することを特徴とする超音波画像処理装置。
構成4:
構成1から3のいずれか1つに記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データは、
先に取得された前記合成用画像データが示す画像と、後に取得された前記合成用画像データが示す画像の重なり部分について、先に取得された前記合成用画像データによる画像を示すか、または、後に取得された前記合成用画像データによる画像を示すことを特徴とする超音波画像処理装置。
構成5:
構成4に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域に、予め定められた態様の隙間画像を配置する処理を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
構成6:
構成4に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域に、一方が他方を透かして見通される透過画像を配置する処理を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
構成7:
構成4に記載の超音波画像処理装置であって、
前記パノラマ画像データを生成する処理は、
時間軸上で隣接して取得された前記合成用画像データが示す2つの超音波画像の重なり部分における、当該2つの超音波画像の遷移領域について近似度を求める処理と、
予め定められた態様の隙間画像を前記遷移領域に配置する処理、または、一方が他方を透かして見通されるような透過画像を前記遷移領域に配置する処理のいずれか一方を、前記近似度に応じて実行する処理を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
【符号の説明】
【0064】
10 送信部、12 超音波プローブ、14 被検体、16 受信部、18 Bモード画像データ生成部、20 状態判定部、22 画像合成部、24 画像メモリ、26 表示処理部、28 ディスプレイ、30 制御部、32 操作部、34 情報処理部(超音波画像処理装置)、40-1~40-3 Bモード画像、42-1~42-3 関心領域画像(超音波画像)、44 遷移領域、46 境界画像、100 超音波診断装置。