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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080869
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】H形鋼の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/088 20060101AFI20240610BHJP
   B21B 37/00 20060101ALI20240610BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B21B1/088 B
B21B37/00 272
B21C51/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194189
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 由紀雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛人
(72)【発明者】
【氏名】安岡 優一
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
4E002AC03
4E002BA04
4E002BC05
4E002CA15
4E124AA09
4E124AA18
4E124BB01
4E124DD16
4E124EE21
(57)【要約】
【課題】H形鋼の先端部を含めた左右方向の曲がりを適切に抑制することができるH形鋼の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】H形鋼の製造装置において、仕上ユニバーサル圧延機6の出側に設置された、圧下量設定部71で設定された左右の垂直ロール62の圧下量で仕上圧延されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する曲がり測定装置10と、曲がり測定装置10によって測定された曲率に基づいて、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出し、この延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値L’を算出する圧下量修正部72と、圧下量修正値L’に基づいて圧下量設定部71で設定された左右の垂直ロール62の圧下量を修正し、修正された圧下量で左右の垂直ロール62の圧下が行われるように仕上ユニバーサル圧延機6の圧下装置DPを制御する圧下制御部73とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間圧延された被圧延材を製品形状のH形鋼に仕上圧延する仕上ユニバーサル圧延機を備えたH形鋼の製造装置であって、
前記仕上ユニバーサル圧延機の出側に設置された、圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量で仕上圧延された前記H形鋼の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する曲がり測定装置と、
該曲がり測定装置によって測定された曲率に基づいて、左右のフランジの延伸率の差を算出し、この延伸率の差を解消する左右の垂直ロールの圧下量修正値を算出する圧下量修正部と、
該圧下量修正部で算出した前記圧下量修正値に基づいて前記圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量を修正し、修正された圧下量で前記左右の垂直ロールの圧下が行われるように前記仕上ユニバーサル圧延機の圧下装置を制御する圧下制御部とを備えていることを特徴とするH形鋼の製造装置。
【請求項2】
中間圧延された被圧延材を仕上ユニバーサル圧延機により製品形状のH形鋼に仕上圧延する仕上圧延工程を含むH形鋼の製造方法であって、
前記仕上圧延工程の後、前記仕上ユニバーサル圧延機の出側に設置された曲がり測定装置によって、圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量で仕上圧延された前記H形鋼の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する曲がり測定ステップと、
該曲がり測定ステップによって測定された曲率に基づいて、左右のフランジの延伸率の差を算出し、この延伸率の差を解消する左右の垂直ロールの圧下量修正値を算出する圧下量修正ステップと、
該圧下量修正ステップで算出した前記圧下量修正値に基づいて前記圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量を修正し、修正された圧下量で前記左右の垂直ロールの圧下が行われるように前記仕上ユニバーサル圧延機の圧下装置を制御する圧下制御ステップとを含むことを特徴とするH形鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H形鋼の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼の断面形状の一例を図8に示す。図8に示すH形鋼101は、長手方向(図8において紙面に対して直交する方向)かつ長手方向に直交する水平の左右方向(図8における左右方向、ウェブ高さ方向)に延びるウェブ102と、ウェブ102の左右方向の両端に接続された一対のフランジ103とを備えている。そして、各フランジ103はウェブ102が延びる左右方向に対し直交する上下方向(図1における上下方向、ウェブ幅方向)に延びている。
【0003】
ここで、H形鋼101の多くは熱間圧延で製造されており、一般的に次のような工程で素材鋼片から製品形状に圧延される。先ず、素材鋼片を加熱炉で加熱した後に、複数の孔型ロールを用いたブレークダウン圧延機で素材鋼片の断面をH形に成形する粗圧延が行われる。続いて、粗ユニバーサル圧延機及びエッジング圧延機を用いて中間圧延が行われる。中間圧延では、複数パスのリバース圧延を行い、ウェブ102とフランジ103の厚さを圧下するとともにフランジ103の幅を制御し、被圧延材を目標製品寸法に近づける。最後に、仕上ユニバーサル圧延機でウェブ102とフランジ103の圧下率が数パーセントの軽圧下(仕上圧延)が行われ、フランジ103の傾斜を垂直に成形して目標とする断面寸法の製品形状となる。
【0004】
中間圧延後の被圧延材を仕上ユニバーサル圧延機で仕上圧延すると、異なる圧延機を使用するために生じるロール設定の違いにより左右のフランジ103の圧下率が不揃いとなり、左右のフランジ103の延伸に差が発生し左右方向の曲がりが生じることがある。曲がりは、図9に示すように、H形鋼101のフランジ103の両端を結んだ直線(長さはL)に対し最も離れたフランジ103の距離δで表される。このような曲がりは、図10(a)に示すように、H形鋼101の先端に生じることが多い。図10(a),(b)において、符号201は、仕上ユニバーサル圧延機、202は水平ロール、203は垂直ロール、204はガイドである。
【0005】
ここで、曲がりが生じたH形鋼101は、仕上圧延の後工程で、プレス機等を用いてまっすぐに矯正する必要があり、矯正費用が発生すると同時に出荷までに要する時間が長くなり、納期遅れ等の問題が生じることがある。従って、仕上ユニバーサル圧延機による仕上圧延では、曲がりを防止してまっすぐなH形鋼101を圧延することが必要である。
仕上ユニバーサル圧延機による仕上圧延において曲がりを防止する技術として、従来、例えば、特許文献1及び特許文献2に示すものが知られている。
【0006】
特許文献1に示すH形鋼の曲がり防止方法は、H形鋼の圧延機の入側および出側の少なくとも一方で、H形鋼の、ウェブ高さ方向への曲がりを防止する。この際に、被圧延材に、ウェブ高さ方向から当接して、被圧延材の移送方向に回転する一対の拘束ローラの間隔を、被圧延材の先端の通過に先立って、被圧延材のウェブ高さ方向の製造寸法基準より大きく設定する。そして、被圧延材の先端が両拘束ローラ間を通過した後、それらの間隔を低減させて製造寸法基準に設定するものである。
【0007】
また、特許文献2に示すH形鋼のユニバーサル圧延方法は、水平ロールと垂直ロールとを備えた仕上ユニバーサル圧延機と、この仕上ユニバーサル圧延機の出側に配設され、圧延された材料のフランジ外面を案内するガイドを有する圧延設備により圧延を行ってH形鋼を製造する。この際に、仕上ユニバーサル圧延機による圧延前の材料の左右のフランジ厚寸法を求め、圧延後に左右のフランジ厚の差が解消される垂直ロール位置の基準位置からの変更量を算出する。そして、この変更量に従い圧延を行った場合に、左右のフランジ厚さ圧下率差によって生じると予測される圧延後の曲がり量を算出し、この曲がり量が解消されるガイド位置の基準位置からの変更量を算出し、これらの変更量に基づいて仕上ユニバーサル圧延機における垂直ロール位置とガイド位置とを修正して圧延を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-276917号公報
【特許文献2】特開2001-30003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら従来の特許文献1に示すH形鋼の曲がり防止方法及び特許文献2に示すH形鋼のユニバーサル圧延方法にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に示すH形鋼の曲がり防止方法の場合、一対の拘束ローラの間隔を調整してH形鋼の左右方向(ウェブ高さ方向)への曲がりを抑制しているが、これら一対の拘束ローラは、仕上ユニバーサル圧延機の圧延ロールから離れた位置に位置するため、H形鋼の先端部では曲がり抑制効果が小さいという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に示すH形鋼のユニバーサル圧延方法の場合、主にガイドによってH形鋼の左右方向の曲がりを抑制しているが、このガイドが、特許文献1の場合と同様に、仕上ユニバーサル圧延機の圧延ロールから離れた位置に位置するため、H形鋼の先端部では曲がり抑制効果が小さいという問題があった。
このように、特許文献1に示すH形鋼の曲がり防止方法及び特許文献2に示すH形鋼のユニバーサル圧延方法の場合には、H形鋼の先端部に発生する左右方向の曲がりに対する抑制効果が限定的であった。
【0011】
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、H形鋼の先端部を含めた左右方向の曲がりを適切に抑制することができるH形鋼の製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るH形鋼の製造装置は、中間圧延された被圧延材を製品形状のH形鋼に仕上圧延する仕上ユニバーサル圧延機を備えたH形鋼の製造装置であって、前記仕上ユニバーサル圧延機の出側に設置された、圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量で仕上圧延された前記H形鋼の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する曲がり測定装置と、該曲がり測定装置によって測定された曲率に基づいて、左右のフランジの延伸率の差を算出し、この延伸率の差を解消する左右の垂直ロールの圧下量修正値を算出する圧下量修正部と、該圧下量修正部で算出した前記圧下量修正値に基づいて前記圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量を修正し、修正された圧下量で前記左右の垂直ロールの圧下が行われるように前記仕上ユニバーサル圧延機の圧下装置を制御する圧下制御部とを備えていることを要旨とする。
【0013】
また、本発明の別の態様に係るH形鋼の製造方法は、中間圧延された被圧延材を仕上ユニバーサル圧延機により製品形状のH形鋼に仕上圧延する仕上圧延工程を含むH形鋼の製造方法であって、前記仕上圧延工程の後、前記仕上ユニバーサル圧延機の出側に設置された曲がり測定装置によって、圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量で仕上圧延された前記H形鋼の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する曲がり測定ステップと、該曲がり測定ステップによって測定された曲率に基づいて、左右のフランジの延伸率の差を算出し、この延伸率の差を解消する左右の垂直ロールの圧下量修正値を算出する圧下量修正ステップと、該圧下量修正ステップで算出した前記圧下量修正値に基づいて前記圧下量設定部で設定された左右の垂直ロールの圧下量を修正し、修正された圧下量で前記左右の垂直ロールの圧下が行われるように前記仕上ユニバーサル圧延機の圧下装置を制御する圧下制御ステップとを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鋼矢板の製造装置及び製造方法によれば、H形鋼の先端部を含めた左右方向の曲がりを適切に抑制することができるH形鋼の製造装置及び製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るH形鋼の製造装置であるH形鋼の熱間圧延設備の概略構成図である。
図2】曲がり測定装置の概略図である。
図3】曲がり測定ステップにおける第1の工程の説明用記号を示す概略図である。
図4】曲がり測定ステップにおける第2の工程で生成した小プロフィールの一例を示す線図である。
図5図4の(a)~(c)を重ね合わせた線図と、該線図に適用した曲がり測定ステップにおける第3の工程による合わせ込みの手順と、導出した推定距離値の一例を示す線図である。
図6】曲がり測定ステップにおける第4の工程によるフランジ中央位置測距値の求め方を示す線図である。
図7】仕上圧延制御部での圧下量制御の手順を示すフローチャートである。
図8】H形鋼の断面図である。
図9】H形鋼の左右方向の曲がりを説明するための図である。
図10】H形鋼の先端部に発生した曲がりを説明するもので、(a)は平面図、(b)は(a)における10b-10b線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係るH形鋼の製造装置であるH形鋼の熱間圧延設備の概略構成が示されており、熱間圧延設備1は、図8に示すH形鋼101を熱間圧延して製造するものである。この熱間圧延設備1は、上流側から下流側に向けて順に、加熱炉2、ブレークダウン圧延機3、粗ユニバーサル圧延機4及びエッジング圧延機5、及び仕上ユニバーサル圧延機6を備えている。
加熱炉2は、連続鋳造された素材鋼片であるスラブやブルームを所定の温度に加熱する。
【0018】
ブレークダウン圧延機3は、複数の孔型をロール胴長方向に沿って形成した上下一対の圧延ロールを用い、加熱炉2で加熱された素材鋼片を断面形状がH形の被圧延材Sに粗圧延する。
粗ユニバーサル圧延機4及びエッジング圧延機5は、粗圧延された被圧延材Sを中間圧延するものであり、この中間圧延では、複数パスのリバース圧延を行い、ウェブ102(図8参照)とフランジ103(図8参照)の厚さを圧下するとともにフランジ103の幅(フランジ103の上下方向の高さ)を制御し、被圧延材Sを目標製品寸法に近づける。
また、仕上ユニバーサル圧延機6は、中間圧延された被圧延材Sを製品形状のH形鋼101に仕上圧延するものであり、ウェブ102とフランジ103の圧下率が数パーセントの軽圧下を行い、フランジ103の傾斜を垂直に成形して目標とする断面寸法の製品形状とする。
【0019】
ここで、仕上ユニバーサル圧延機6は、図10に示す仕上ユニバーサル圧延機201と同様の構成を有し、上下一対の水平ロール61(上下一対の水平ロール202)と、左右一対の垂直ロール62(左右一対の垂直ロール203)とを備えている。そして、上下一対の水平ロール61間にウェブ102を挟んで圧下することで、ウェブ102の厚さの最終圧下を行う。また、左右一対の垂直ロール62によってフランジ103を左右方向から圧下し、上下一対の水平ロール61の側面との間でフランジ103の厚さの最終圧下を行うとともに、フランジ103の角度起こしを行う。
そして、仕上ユニバーサル圧延機6の上下一対の水平ロール61には、図示しない圧下装置が接続され、左右一対の垂直ロール62にも、圧下装置DPが接続されている。水平ロール61に接続された圧下装置は、水平ロール61の圧下量を調整し、垂直ロール62に接続された圧下装置DPは垂直ロール62の圧下量を調整する機能を有する。
【0020】
また、水平ロール61に接続された圧下装置は、図示はしないが、この圧下装置による圧下量の調整を制御する仕上圧延制御部7に接続され、垂直ロール62に接続された圧下装置DPは、図1に示すように、この圧下装置DPによる圧下量の調整を制御する仕上圧延制御部7に接続されている。仕上圧延制御部7は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の演算処理装置によって実現されるものであり、例えば、CPU、ROM、RAMなどを主要構成部品としているとともに、上位コンピュータ8に接続されて情報のやり取りが可能となっている。仕上圧延制御部7の詳細については後述する。
また、仕上ユニバーサル圧延機6の出側には、H形鋼101の先端部を含めた左右方向の曲がりを適切に抑制するために、仕上ユニバーサル圧延機6で仕上圧延されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する曲がり測定装置10が設置されている。ここで、H形鋼101の先端部とは、H形鋼101の先端から10mまでを意味する。
【0021】
この曲がり測定装置10について、図2乃至図5を参照して説明する。
曲がり測定装置10は、搬送中のH形鋼の曲がり測定において、H形鋼101の動的な挙動(蛇行、斜行、傾く)の影響及びフランジ直角度の変動(フランジ倒れ)の影響を軽減するように構成されている。曲がり測定装置10は、ウェブ102を寝かせた姿勢、即ち水平面とした状態で仕上ユニバーサル圧延機6から搬送されてくるH形鋼101の片側のフランジ103の外面を、フランジ幅方向の上下2位置でH形鋼101の搬送方向に同一長さ値の間隔ΔXをあけて3台直列に配置した距離センサ14で測距する上フランジ測距手段11及び下フランジ測距手段12を備えている。また、曲がり測定装置10は、H形鋼101のウェブ102の上面を、上方に1台配置した距離センサ14で測距するウェブ測距手段13を備えている。そして、上フランジ測距手段11及び下フランジ測距手段12と、ウェブ測距手段13とを用いて、以下の第1~第5の工程により、搬送中のH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定する。
【0022】
図3は、第1の工程の説明用記号を示す概略図であり、(a)は部分平面図、(b)は正面図である。図3に示すように、H形鋼101の内部点の長手方向位置を、H形鋼101の搬送方向の先端LEからの距離Xで表し、X位置という。上フランジ測距手段11及び下フランジ測距手段12のそれぞれの距離センサ14を搬送方向下流側から順に距離センサA,A,A及び距離センサB,B,Bという。あるいは、j=1,2,3として、距離センサA,Bともいう。距離センサA,Bのフランジ幅方向位置は、基線BLからの高さで夫々Z,Zである。測距のしやすさの観点からフランジ幅方向の被測距点がフランジ幅方向の一端部と他端部のそれぞれから内側にΔZ=フランジ幅×(0.1~0.3)の位置となるようにZ,Zを設定するとよい。
【0023】
[第1の工程について]
第1の工程では、H形鋼101の搬送中に、上フランジ測距手段11及び下フランジ測距手段12で順次測距する。そして、測距時点別毎の上下別の3点フランジ測距値として、上の距離センサA,A,Aで夫々の上の測距値A(T,X),A(T,X+ΔX),A(T,X+2ΔX)を取得する。また、下の距離センサB,B,Bで夫々の下の測距値B(T,X),B(T,X+ΔX),B(T,X+2ΔX)を取得する。ここで、Xは、自然数iで順序付けした時刻Tの時点の距離センサA,Bでの被測距点のX位置値である。また、2ΔXは、係数(例えば2)×変数(例えばΔX)を意味する。また、時刻Tの時点の距離センサA,Bでの被測距点のX位置値Xは、0(mm)以上ΔX(mm)以下の範囲から適宜選定できるが、測定対象のH形鋼101の先端LE、すなわち、X=0とすることが好ましい。また、基線BLから上方距離Hcの位置に配置したウェブ測距手段13での測距も順次行い、ウェブ測距値Z(X)を、測距時点でのウェブ測距手段13の距離センサ14での被測距点のX位置を変数とする関数Z(X)とし、ZFC(X)=Hc-Z(X)、という計算式により、X位置でのフランジ幅中央位置値ZFC(X)として取得する。
【0024】
[第2の工程について]
次に、第2の工程では、前記測距時点別毎の上下別の3点のフランジ測距値を該3点のX位置と対応付けて、測距時点別毎の上下別の小プロフィールを作成する。ここで、プロフィールとは、一般に、物体断面の輪郭線を意味する。第2の工程で生成した小プロフィールの一例を図4に示す。小プロフィールは各X位置での測距値をX位置順に線分で結んだ折れ線で表される。図4では上の測距値Aに係る小プロフィールを示したが、下の測距値Bに係る小プロフィール(図示せず)も同様に表される。
【0025】
この例では、ΔT=[ΔX/搬送速度]とし、図4(a)に、時刻Tでの位置X,X,X(間隔はΔX)におけるそれぞれの側距値A11,A21,A31からの小プロフィールSPF1を示す。また、図4(b)に、時刻T=T+ΔTでの位置X,X,X(間隔はΔX)におけるそれぞれの側距値A12,A22,A32からの小プロフィールSPF2を示す。更に、図4(c)に、時刻T=T+ΔTでの位置X,X,X(間隔はΔX)におけるそれぞれの側距値A13,A23,A33からの小プロフィールSPF3を示す。なお、i≧4での時刻T=T1-1+ΔTでの位置X,Xi+1,Xi+2(間隔はΔX)におけるそれぞれの側距値A1i,A2i,A3iからの小プロフィールSPFiについては図示していない。
【0026】
図4の(a)~(c)を重ね合わせた線図として図5に示すように、一般に、搬送中のH形鋼101では測距時点が異なれば、被測距区間が同一であっても測距値は相違する。例えば、同じ被測距区間[X,X]に対する時刻Tでの測距値A21,A31と、時刻Tでの測距値A12,A22とは相違する。この相違は、H形鋼101の動的な挙動(蛇行、斜行、傾き)の影響によるものである。しかし、各小プロフィール内では時間変化がないから、各小プロフィールはH形鋼101の動的な挙動(蛇行、斜行、傾き)の影響は含んでいない。
【0027】
[第3の工程について]
そこで、第3の工程では、前記測距時点別毎の上下別の小プロフィールを用い、上下別に、測距時点が相前後し被測距区間に相互重複部を有する1番目の小プロフィールを第1対象、2番目の小プロフィールを第2対象とし、第1対象と第2対象との合わせ込みにより第2対象の被測距区間内且つ第1対象との相互重複部分外における第1対象の推定測距値を導出する。そして、この推定測距値を前記第1対象の測距値として追加してなる小プロフィールを第1対象とし、前記第2対象の次番目の小プロフィールを第2対象として、第1対象と第2対象との合わせ込みを順次繰り返し、最終的な第1対象の小プロフィールを全プロフィールとすることとした。
【0028】
図5には、図4の(a)~(c)を重ね合わせた線図に適用した第3の工程による合わせ込みの手順と、求めた推定測距値の一例を示しており、図5を参照して、前記合わせ込みの手順を説明する。なお、図5では、上下別のうち上の小プロフィールを用いる場合を示しているが、下の小プロフィールを用いる場合(図示せず)も同様である。
まず、相前後する測距時点のうち前時点がないため後時点となれない初回の測距時点(時刻T)の小プロフィールSPF1は、その測距値A11,A21,A31を前記全プロフィールの測距値として採用する。
【0029】
次に、測距時点T,Tが相前後し被測距区間に相互重複部[X,X]を有する1番目の小プロフィールSPF1を第1対象、2番目の小プロフィールSPF2を第2対象とし、第1対象と第2対象との合わせ込みを、次のように行う。
すなわち、第1ステップとして、第2対象(SPF2)について、第2対象(SPF2)の被測距区間[X,X]のうち第1対象(SPF1)のそれと相互重複部[X,X]内の測距値A12,A22とX位置との直線関係を被測距区間[X,X]のうちの非相互重複部(X,X](ここで、(X,X]とは、閉区間[X,X]からXを除外した所謂半開区間を指す。以下同じ)に外挿する。そして、X位置での外挿入値A’32を求め、同じX位置での測距値A32からの偏差δ(;δ=A32-A’32)を求める。
【0030】
第2ステップとして、第1対象(SPF1)について、第1対象(SPTF1)の被測距区間[X,X]のうち第2対象(SPF2)との相互重複部[X,X]内の測距値A21,A31とX位置との直線関係を第2対象(SPF2)の被測距区間[X,X]内の非相互重複部(X,X]に外挿する。そして、X位置での外挿値A’を求め、前記偏差δを加えて、X位置での第1対象の推定測距値C(;C=A’+δ)を導出する。
【0031】
この推定測距値Cは、初回の測定時点(時刻T)でX位置が実際に測距されていたとしたら、その測距結果(測距値Aと記す)に極近いと考えられる。というのは、被測距区間[X,X]内の初回の測距値A21,A31に前記Aを付加したものからの小プロフィールは、同じ被測距区間内の2回目の測距値A12,A22及びA32にからの小プロフィールと同等な偏差を示すと推論されるからである。
そこで、第3ステップとして、推定測距値Cを前記第1対象(SPF1)の測距値A41(X位置での測距値)として追加してなる小プロフィールSPF1を第1対象(SPF1)とし、前記第2対象(SPF2)の次番目の小プロフィールSPF3を第2対象(SPF3)とし、前記第1ステップ、次いで前記第2ステップを行う。
【0032】
すなわち、第1ステップでは、第2対象(SPF3)について、第2対象(SPF3)の被測距区間[X,X]のうち第1対象(SPF1)のそれと相互重複部[X,X]内の測距値A13,A23とX位置との直線関係を被測距区間[X,X]のうちの非相互重複部(X,X]に外挿する。そして、X位置での外挿値A’33を求め、同じX位置での測距値A33からの偏差δ(;δ=A33-A’33)を求める。
【0033】
第2ステップでは、第1対象(SPF1)について、第1対象(SPF1)の被測距区間[X,X]のうち第2対象(SPF3)との相互重複部[X,X]内の測距値A31,A41とX位置との直線関係を第2対象(SPF3)の被測距区間[X,X]内の非相互重複部(X,X]に外挿する。そして、X位置での外挿値A’を求め、前記偏差δを加えて、X位置での第1対象の推定測距値C(;C=A’+δ)を導出する。
【0034】
この推定測距値Cは、前記推定測距値Cのときと同様の推論から、前記推定測距値Cと同様、実際に測距されていたとしたときの測距値に極近いと考えられる。
第3ステップとでは、推定測距値Cを前記第1対象(SPF1)の測距値A51(X位置での測距値)として追加してなる小プロフィールSPF1を第1対象(SPF1)とし、前記第2対象(SPF3)の次番目の小プロフィールSPF4(図示せず)を第2対象(SPF4)とし、前記第1ステップ、次いで前記第2ステップを行う。
【0035】
前記第1~第3ステップを順次所定の回数だけ繰り返し、最終N回で得られた第1対象(SPF1)を、全プロフィールとする。
図5の例は、前述のとおり上下別における上の測距値に係る例なので、求めた全プロフィールは、上の全プロフィールであるが、下の全プロフィールも上の場合と同様の手順で求められる。
これにより、搬送中のH形鋼101の曲がり測定において、H形鋼101の動的な挙動(蛇行、斜行、傾き)の影響を軽減した全プロフィールが得られる。
【0036】
[第4の工程について]
図6は、第4の工程についての説明図であり、X位置(iは1~Nのいずれかである。)におけるフランジ中央位置測距値の求め方を示す線図である。
この図6を用いて第4の工程について説明する。
第4の工程では、前記上下別に得られた上下の全プロフィールにおける上下のフランジ幅方向位置Z,Zと、X位置における上下の測距値Ai1,Bi1とが直線関係にあるとし、この直線関係から、前記フランジ幅中央位置ZFC(X)に対応するフランジ中央位置測距値YFC(X)を求め、これをすべてのiについて行って、最終的な曲がりプロフィールとする。なお、フランジ中央位置測距値YFC(X)を求める計算式は以下の通りである。
FC(X)=[(Ai1-Bi1)/(Z-Z)]×[ZFC(X)-Z]+Bi1
これにより、搬送中のH形鋼101の曲がり測定において、H形鋼101の動的な挙動(蛇行、斜行、傾き)の影響及びフランジ直角度の変動(フランジ倒れ)の影響を両方とも軽減した最終的な曲がりプロフィールが得られる。
【0037】
[第5の工程について]
第5の工程では、第4の工程で得られた最終的な曲がりプロフィールを円弧で近似し、その円弧の曲率半径から曲率κを求める。そして、求められた曲率κは、仕上圧延制御部7の後述する圧下量修正部72に対して出力される。
次に、仕上圧延制御部7は、図1に示すように、圧下量設定部71と、圧下量修正部72と、圧下制御部73とを備えている。
圧下量設定部71は、上位コンピュータ8から仕上圧延する鋼材の仕上圧延前及び仕上圧延後の鋼材の寸法等の情報を取得し、それら取得した情報から仕上ユニバーサル圧延機6の水平ロール61による圧下量及び垂直ロール62による圧下量Lを算出する。なお、圧下量設定部71には、仕上ユニバーサル圧延機6における2本目以降の垂直ロール62による圧下量として、後述する1本前の圧延における垂直ロール62による圧下量を修正した修正圧下量が入力される。そして、圧下量設定部71は、算出された水平ロール61による圧下量及び垂直ロール62による圧下量Lを圧下量修正部72に対し出力する。また、圧下量設定部71は、前述の修正圧下量を2本目以降の垂直ロール62による圧下量Lとして圧下量修正部72に対し出力する。
【0038】
また、圧下量修正部72は、曲がり測定装置10によって測定された曲率κに基づいて、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出し、この延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値を算出する。
これについて具体的に述べると、圧下量修正部72には、曲がり測定装置10によって測定されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率κが入力される。そして、圧下量修正部72は、先ず、入力された曲率κに基づいて、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出する。左右のフランジ103の延伸率の差Δλは、H形鋼101のウェブ102の高さ(左右方向の長さ)Hと、曲がりの曲率κとの積から次の(1)式により簡単に算出することができる。
Δλ=H×κ ・・・(1)
【0039】
次いで、圧下量修正部72は、この延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値を算出する。
ここで、左右のフランジ103の延伸率の差Δλが発生した主な原因は、左右のフランジ103の圧下率差であると考えられる。また、仕上ユニバーサル圧延機6による仕上圧延では、ウェブ102とフランジ103の厚さの圧下率が非常に小さいため、フランジ103の幅広がりはほとんど発生せず、左右のフランジ103の延伸率の差Δλと左右のフランジ103の圧下率差とはほぼ等しいと考えて良い。そこで、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを解消するには左右のフランジ103の圧下率差を解消すればよく、左右のフランジ103のうち曲がった方向に位置するフランジ103の圧下率をΔλだけ増やすか、あるいは曲がった方向と反対側に位置するフランジ103の圧下率をΔλだけ減らせばよい。あるいは、両者の間で左右のフランジ103の圧下率差がΔλだけ減少するように左右のフランジ103の両方の圧下率を調整すればよい。なお、仕上ユニバーサル圧延後のフランジ103の厚さは、左右とも製品の寸法公差範囲にする必要がある。このため、圧下率変更においては、圧下率変更後の左右のフランジ103の厚さが寸法公差範囲に収まることを確認して、調整を行うことが好ましい。
【0040】
そして、左右のフランジ103の圧下率をどれだけ変更するかが決定すれば、その変更圧下率と、仕上ユニバーサル圧延で次に圧延するH形鋼101のフランジ103の厚さTとから、次の(2)式により延伸率の差でΔλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値L’を算出することができる。
L’=-α・Δλ・T=-α・H・κ・T ・・・(2)
(2)式において、圧下量修正値L’は、圧下を大きくする方向の修正が正方向の修正である。また、αは修正係数であり、圧下修正における仕上ユニバーサル圧延機の剛性、H形鋼の塑性定数および本願に従う制御ゲインを考慮するものである。αの値は通常は、0.5~2となる。
【0041】
左右のフランジ103のうち曲がった方向に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量のみを修正する場合には、この垂直ロール62の圧下量修正値L1’=+L’とする。逆に、左右のフランジ103のうち曲がった方向と反対側に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量のみを修正する場合には、この垂直ロール62の圧下量修正値L2’=-L’とする。左右の垂直ロール62の両方の圧下量を修正する場合には、両方の垂直ロール62の圧下量修正値L1’-L2’=L’となる条件で修正を行う。
【0042】
そして、圧下量修正部72は、前述の圧下量設定部71によって設定された垂直ロール62による圧下量L及び算出した圧下量修正値L’を圧下制御部73に対し出力する。
圧下制御部73は、圧下量修正部72で算出した圧下量修正値L’に基づいて圧下量設定部71で設定された左右の垂直ロールの圧下量Lを修正し、修正された圧下量(修正圧下量)で左右の垂直ロール62の圧下が行われるように仕上ユニバーサル圧延機6の圧下装置DPを制御する。
これにより、次材のH形鋼101を仕上圧延する際に、修正された圧下量(修正圧下量)で左右の垂直ロール62の圧下が行われるので、左右のフランジ103の延伸率に差Δλがなくなり、H形鋼101の先端部を含めた左右方向の曲がりを適切に抑制することができることになる。
【0043】
次に、図7に示すフローチャートを参照して、曲がり測定装置10及び仕上圧延制御部7が仕上ユニバーサル圧延機6に対して左右の垂直ロール62の圧下量制御を行う方法について説明する。
仕上圧延制御部7の圧下量設定部71は、以下で示すステップS1からステップS4までを実行する。また、曲がり測定装置10は、曲がり測定ステップであるステップS5を実行する。更に、圧下量修正部72は、圧下量修正ステップであるステップS6及びステップS7を実行する。また、圧下制御部73は、圧下制御ステップであるステップS8からステップS10までを実行する。
先ず、フローチャートのスイッチSWは、初期値が「0」(ゼロ)に設定されている。
【0044】
そして、ステップS1では、スイッチSWが「1」であるか否かを判定し、スイッチSWが「0」である場合には、ステップS2に移行し、スイッチSWが「1」である場合には、ステップS4に移行する。
ステップS2では、初回の圧下量設定処理を行う。この圧下量設定処理は、上位コンピュータ8から仕上圧延する鋼材の鋼種、中間圧延後の鋼材の寸法、中間圧延後の鋼材の板幅方向の温度等の情報を取得し、それら取得した情報から1回目の仕上ユニバーサル圧延機6の水平ロール61による圧下量及び垂直ロール62による圧下量Lを算出する。仕上ユニバーサル圧延機6の水平ロール61による圧下量については、1回目の圧延のみならず2回目以降も同じ圧下量に設定する。
【0045】
次いで、ステップS3では、スイッチSWを「1」に設定し、その後、ステップS5に移行する。
一方、ステップS1でSWが「1」である場合に移行したステップS4では、後述のステップS8で求められる、1本前の圧延における左右の垂直ロール62の修正圧下量を圧下量Lに設定し、ステップS5に移行する。
次に、ステップS5では、曲がり測定装置10が、ステップS2あるいはステップS4で設定された左右の垂直ロール62の圧下量Lで仕上ユニバーサル圧延機6で圧延されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率κを測定する(曲がり測定ステップ)。
【0046】
このステップS5(曲がり測定ステップ)においては、前述した第1~第5の工程を実行し、測定されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率κを圧下量修正部72に出力し、ステップS6に移行する。
そして、ステップS6では、圧下量修正部72は、入力された曲率κに基づいて、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出する。左右のフランジ103の延伸率の差Δλは、H形鋼101のウェブ102の高さ(左右方向の長さ)hと、曲がりの曲率κとの積から前述した式により算出することができる。
【0047】
ステップS7では、圧下量修正部72は、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値L’を算出する。
この際に、前述したように、左右のフランジ103の圧下率差を解消するように、左右のフランジ103のうち曲がった方向に位置するフランジ103の圧下率をΔλだけ増やす。あるいは曲がった方向と反対側に位置するフランジ103の圧下率をΔλだけ減らす。あるいは、両者の間で左右のフランジ103の圧下率差がΔλだけ減少するように左右のフランジ103の両方の圧下率を調整すればよい。
【0048】
そして、左右のフランジ103の圧下率をどれだけ変更するかが決定すれば、その変更圧下率Δhと、仕上ユニバーサル圧延で次に圧延するH形鋼101のフランジ103の厚さTとから、前述の式により延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値L’のそれぞれを算出する。
ステップS8では、圧下制御部73が、ステップS7で算出した圧下量修正値L’に基づいてステップS2あるいはステップS4で設定された左右の垂直ロール62の圧下量Lを修正する。
【0049】
次いで、ステップS9では、圧下制御部73が、仕上圧延において修正された圧下量で左右の垂直ロール62の圧下が行われるような圧下駆動信号を生成する。
そして、ステップS10では、圧下制御部73が、生成した圧下駆動信号を圧下装置DPに対し出力する。
次に、熱間圧延設備1によるH形鋼101の製造方法について図1を参照して説明すると、先ず、加熱炉2で所定温度に加熱された素材鋼片をブレークダウン圧延機3により断面形状がH形の被圧延材Sに粗圧延する(粗圧延工程)。
【0050】
次いで、粗圧延された被圧延材Sを粗ユニバーサル圧延機4及びエッジング圧延機5により中間圧延する(中間圧延工程)。
その後、中間圧延された被圧延材Sを仕上ユニバーサル圧延機6により製品形状のH形鋼101に仕上圧延する(仕上圧延工程)。この仕上圧延工程においては、上下一対の水平ロール61による圧下量は、圧下量設定部71で設定された圧下量とされる。左右の垂直ロール62による圧下量については、1本目の仕上圧延では、圧下量設定部71で設定された圧下量Lで仕上ユニバーサル圧延機6による仕上圧延を行う。2本目以降の仕上圧延における左右の垂直ロール62による圧下量ついては、次のように行われる。
【0051】
前回の仕上圧延工程の後、仕上ユニバーサル圧延機6の出側に設置された曲がり測定装置10によって、圧下量設定部71で設定された圧下量Lで仕上圧延されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率κを測定する(曲がり測定ステップ、ステップS5)。
次いで、仕上圧延制御部7の圧下量修正部72が、曲がり測定ステップによって測定された曲率κに基づいて、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出し、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値L’を算出する(圧下量修正ステップ、ステップS7及びステップS8)。
【0052】
その後、仕上圧延制御部7の圧下制御部73が、圧下量修正ステップで算出した圧下量修正値L’に基づいて圧下量設定部71で設定された左右の垂直ロール62の圧下量Lを修正し、修正された圧下量で左右の垂直ロール62の圧下が行われるように仕上ユニバーサル圧延機6の圧下装置DP5を制御する(圧下制御ステップ、ステップS9及びステップS10)。
そして、仕上圧延工程の後、図示しないホットソーによりH形鋼101を所定長さに切断し、切断されたH形鋼101は、その後の矯正工程等に供される。
【0053】
このように、本実施形態に係るH形鋼の製造装置及び製造方法によれば、仕上ユニバーサル圧延機6の出側に設置された曲がり測定装置10によって、圧下量設定部71で設定された左右の垂直ロール62の圧下量Lで仕上圧延されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率κを測定する。そして、圧下量修正部72において、曲がり測定装置10によって測定された曲率κに基づいて、左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出する。そして、この延伸率の差Δλを解消する左右の垂直ロール62の圧下量修正値L’を算出し、圧下制御部73において、圧下量修正部72で算出した圧下量修正値L’に基づいて圧下量設定部71で設定された左右の垂直ロールの圧下量Lを修正する。そして、修正された圧下量で左右の垂直ロール62の圧下が行われるように仕上ユニバーサル圧延機6の圧下装置DP5を制御する。
【0054】
これにより、2本目以降のH形鋼101を仕上圧延する際に、修正された圧下量(修正圧下量)で左右の垂直ロール62の圧下が行われるので、左右のフランジ103の延伸率に差Δλがなくなり、H形鋼101の先端部を含めた左右方向の曲がりを適切に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0055】
例えば、曲がり測定装置10は、仕上圧延されたH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定できるものであればよく、図2乃至図6で示した、上フランジ測距手段11及び下フランジ測距手段12と、ウェブ測距手段13とを用いて、前述の第1~第5の工程により、搬送中のH形鋼101の先端部の左右方向の曲がりの曲率を測定するものに限られない。例えば、曲がり測定装置10は、圧延されたH形鋼101の画像を上方から撮像し、その撮像画像からH形鋼101の曲がりの曲率を検出するようにしてもよい。
【実施例0056】
本発明の実施例を比較例とともに以下に説明する。
熱間圧延設備としては、図1に示す熱間圧延設備1を用い、1本目の熱間圧延を比較例とし、2本目の熱間圧延を実施例とした。
比較例である1本目の熱間圧延により得られたH形鋼101の寸法は、ウェブ高さ600mm、フランジ幅200mm、フランジ厚17mmであった。そして、H形鋼101の先端から5mでの曲がり量は31mmであった。
次に、実施例である2本目の熱間圧延について説明する。この2本目のH形鋼の公称寸法は、1本目と同様に、ウェブ高さ600mm、フランジ幅200mm、フランジ厚17mmである。
1本目の熱間圧延における仕上ユニバーサル圧延機6の出側でのH形鋼101の先端部の曲がりの曲率を曲がり測定装置10により測定し、その曲率は1.0×10-5であった。
【0057】
圧下量修正部72では、測定された曲率1.0×10-5から左右のフランジ103の延伸率の差Δλを算出し、その値は、0.6%となった。
そして、圧下量修正部72では、この延伸率の差0.6%を解消するのに左右のフランジ103のうち曲がった方向に位置するフランジ103の圧下率を0.3%増やし、左右のフランジ103のうち曲がった方向と反対側に位置するフランジ103の圧下率を0.3%減らすこととした。なお、本実施例では修正係数αを1.0としている。そして、そのときの曲がった方向に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量修正値L’と、曲がった方向と反対側に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量修正値L’とを算出した。この際に、2本目の仕上圧延におけるH形鋼101のフランジ103の厚さTが17mmであることから、曲がった方向に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量修正値L’として+0.05mm、曲がった方向と反対側に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量修正値L’として-0.05mmとした。なお、本H形鋼のフランジ厚さは、JIS G3136に従い、公称厚さ17mmに対し+2.3mm~-0.7mmが公称範囲であり、上記の圧下量修正値L’は、公称公差上、全く問題ない調整量である。
【0058】
そして、圧下制御部73では、曲がった方向に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量修正値L’=+0.05mmに基づいて、1本目の曲がった方向に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量を修正して、曲がった方向に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下位置を0.05mm閉める。また、曲がった方向と反対側に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量修正値L’=-0.05mmに基づいて、1本目の曲がった方向と反対側に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下量を修正して、曲がった方向と反対側に位置するフランジ103側の垂直ロール62の圧下位置を0.05mm開く圧下設定変更を行い、2本目のH形鋼101の仕上圧延を行った。
【0059】
その結果、曲がり量が、1本目の仕上圧延ではH形鋼101の先端から5mで31mmであったのに対し、2本目の仕上圧延ではH形鋼101の先端から5mで8mmに低減した。
これにより、本発明の実施例では、比較例に対して、H形鋼101の先端部に発生する左右方向の曲がりを効果的に減少させることができることを確認した。
【符号の説明】
【0060】
1 熱間圧延設備
2 加熱炉
3 ブレークダウン圧延機
4 粗ユニバーサル圧延機
5 エッジング圧延機
6 仕上ユニバーサル圧延機
7 仕上圧延制御部
8 上位コンピュータ
10 曲がり測定装置
11 上フランジ測距手段
12 下フランジ測距手段
13 ウェブ測距手段
14 距離センサ
61 水平ロール
62 垂直ロール
71 圧下量設定部
72 圧下量修正部
73 圧下制御部
101 H形鋼
102 ウェブ
103 フランジ
DP 圧下装置
S 被圧延材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10