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特開2024-8087半導体モジュールの製造方法及び半導体モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008087
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】半導体モジュールの製造方法及び半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109643
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺島 健史
(57)【要約】
【課題】ベース板固定治具に対する金属ベース板の上下逆入れを防止する。
【解決手段】金属ベース板10は、第1の端部10bに設けられたネジ固定用の第1の貫通孔10dと、第1の端部10bに対向する第2の端部10cに設けられ、第1の貫通孔10dとは形状の異なるネジ固定用の第2の貫通孔10eとを有し、且つ、金属ベース板10のおもて面の中心からずれた位置に、絶縁回路基板の搭載位置10aが設けられている。このような金属ベース板10を、金属ベース板10の外形、第1の貫通孔10d及び第2の貫通孔10eの形状に対応して型取られた凹部(たとえば、凹部20a10)を有するベース板固定治具20の凹部に嵌め込み、その凹部に嵌め込まれた金属ベース板10の上に、半導体チップが搭載された絶縁回路基板をはんだ接合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部に設けられたネジ固定用の第1の貫通孔と、前記第1の端部に対向する第2の端部に設けられ、前記第1の貫通孔とは形状の異なるネジ固定用の第2の貫通孔とを有し、且つ、おもて面の中心からずれた位置に絶縁回路基板の搭載位置が設けられた金属ベース板を、前記金属ベース板の外形、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の形状に対応して型取られた凹部を有するベース板固定治具の前記凹部に嵌め込み、
前記凹部に嵌め込まれた前記金属ベース板の上に、半導体チップが搭載された前記絶縁回路基板をはんだ接合する、
半導体モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1の貫通孔は、平面視で、周囲が閉じられた形状であり、前記第2の貫通孔は、平面視で、周囲の一部が開かれた形状である、請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記金属ベース板の裏面には、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を用いて、冷却器がネジ止めされる、請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記ベース板固定治具には、同一の向きで前記凹部が複数形成されている、請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記金属ベース板の外形は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔の部分以外は点対称である、請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項6】
第1の端部に設けられたネジ固定用の第1の貫通孔と、前記第1の端部に対向する第2の端部に設けられ、前記第1の貫通孔とは形状の異なるネジ固定用の第2の貫通孔とを有し、且つ、おもて面の中心からずれた位置に絶縁回路基板の搭載位置が設けられた金属ベース板と、
前記搭載位置にはんだ接合された前記絶縁回路基板と、
前記絶縁回路基板の上に搭載された半導体チップと、
を有する半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールの製造方法及び半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換用のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチング素子を含む半導体モジュールがある。また、このようなスイッチング素子を含むチップと、スイッチング素子の駆動及び保護機能をもつ集積回路を1つのパッケージに集約したIPM(Intelligent Power Module)と呼ばれる半導体モジュールも知られている。
【0003】
半導体モジュールの製造工程には、放熱用の金属ベース板上に半導体チップが搭載された絶縁回路基板をはんだ接合する工程がある。この工程では、金属ベース板の形状に型取られたベース板固定治具に金属ベース板を嵌め込み、金属ベース板の上にはんだ材を用いて絶縁回路基板が接合される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、従来の半導体モジュールの金属ベース板は、平面視で外形が点対称であるものが用いられている(たとえば、特許文献2,3参照)。また、金属ベース板のおもて面の中心からずれた位置に絶縁回路基板が搭載される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-170731号公報
【特許文献2】特開2008-159857号公報
【特許文献3】特開2021-132234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属ベース板の外形が点対称であると、ベース板固定治具に対して金属ベース板を正しい角度から180度回転させて設置する上下逆入れが可能となってしまう(以下、上下逆入れと記載)。そして、ベース板のおもて面の絶縁回路基板の搭載位置が中心からずれていると、絶縁回路基板の金属ベース板上の搭載位置がずれて組立不良が発生し、製造コストが増える可能性がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ベース板固定治具に対する金属ベース板の上下逆入れを防止可能な半導体モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、第1の端部に設けられたネジ固定用の第1の貫通孔と、前記第1の端部に対向する第2の端部に設けられ、前記第1の貫通孔とは形状の異なるネジ固定用の第2の貫通孔とを有し、且つ、おもて面の中心からずれた位置に絶縁回路基板の搭載位置が設けられた金属ベース板を、前記金属ベース板の外形、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の形状に対応して型取られた凹部を有するベース板固定治具の前記凹部に嵌め込み、前記凹部に嵌め込まれた前記金属ベース板の上に、半導体チップが搭載された前記絶縁回路基板をはんだ接合する、半導体モジュールの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の一観点によれば、第1の端部に設けられたネジ固定用の第1の貫通孔と、前記第1の端部に対向する第2の端部に設けられ、前記第1の貫通孔とは形状の異なるネジ固定用の第2の貫通孔とを有し、且つ、おもて面の中心からずれた位置に絶縁回路基板の搭載位置が設けられた金属ベース板と、前記搭載位置にはんだ接合された前記絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の上に搭載された半導体チップと、を有する半導体モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、ベース板固定治具に対する金属ベース板の上下逆入れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態の半導体モジュールの製造方法の一例を示す平面図である。
図2】本実施の形態の半導体モジュールの製造方法の一例を示す斜視図である。
図3】比較例の半導体モジュールの製造方法を示す平面図である。
図4】絶縁回路基板の搭載例を示す平面図である。
図5】半導体チップの搭載時に用いられる駒治具の例を示す平面図である。
図6】半導体モジュールの製造工程全体の流れを示す図である。
図7】金属ベース板の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図1の金属ベース板10などにおいて、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図1の金属ベース板10などにおいて、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図1の金属ベース板10などにおいて、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図1の金属ベース板10などにおいて、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。たとえば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。
【0013】
図1は、本実施の形態の半導体モジュールの製造方法の一例を示す平面図である。また、図2は、本実施の形態の半導体モジュールの製造方法の一例を示す斜視図である。図1図2では、はんだ接合工程のために、ベース板固定治具20に対して、金属ベース板10を嵌め込み、金属ベース板10を固定する工程の例が示されている。
【0014】
本実施の形態の半導体モジュールの製造方法では、図1に示すような金属ベース板10と、ベース板固定治具20が用いられる。
【0015】
金属ベース板10は、半導体モジュールの放熱用に用いられるものであり、熱伝導性に優れた金属を主成分とする。このような金属として、たとえば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金などがある。金属ベース板10の耐食性を向上させるために、めっき処理が行われていてもよい。この際、用いられるめっき材は、たとえば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0016】
図1には、金属ベース板10を、X-Y面上で180度回転させた例が示されている。この例からわかるように、金属ベース板10のおもて面の中心からずれた位置には、絶縁回路基板の搭載位置10aが設けられている。搭載位置10aは、たとえば、図1のように、4隅に設けられる突起部10a1,10a2,10a3,10a4により規定されている。このような突起部10a1~10a4は、絶縁回路基板のはんだ接合時に、はんだの引けやボイドの発生を抑制し、はんだの濡れ拡がりを向上する機能を有する。
【0017】
突起部10a1~10a4の高さは、たとえば、0.05mm以上、0.5mm以下である。また、突起部10a1~10a4の直径は、たとえば、50μm以上、500μm以下である。また、突起部10a1~10a4は、図2に示したような棒状に限らず、たとえば、半球体状、半楕円球状、立方体状でもよい。または、突起部10a1,10a2の間が連なって絶縁回路基板の辺に沿った凸状の形状でもよい。突起部10a2,10a4、突起部10a4,10a3、突起部10a3,10a1でも同様に、それらの間が連なって絶縁回路基板の辺に沿った凸状の形状でもよい。
【0018】
また、金属ベース板10の第1の端部10bにはネジ固定用の第1の貫通孔10dが設けられており、第1の端部10bに対向する第2の端部10cにもネジ固定用の第2の貫通孔10eが設けられている。第1の貫通孔10d及び第2の貫通孔10eは、金属ベース板10の裏面に、たとえば、冷却器をネジ止めするために設けられている。冷却器として、フィン、または、複数のフィンから構成されるヒートシンク、水冷による冷却装置などを適用することができる。
【0019】
ここで、第1の貫通孔10dと第2の貫通孔10eとは形状が異なっている。図1の例では、第1の貫通孔10dは、平面視で、周囲が閉じられた形状であり、第2の貫通孔10eは、平面視で、周囲の一部が開かれた形状である。したがって、金属ベース板10の外形は、第1の貫通孔10dと第2の貫通孔10e以外の部分は点対称だが、第1の貫通孔10dと第2の貫通孔10eとの形状の差異によって、全体としては点対称とはなっていない。
【0020】
なお、金属ベース板10の外形をこうした点対称に近い構造(略点対称)とするメリットとしては、反りを考慮した設計が容易であることが挙げられる。オフセットを気にせず、金属ベース板10のセンター部分を中心に反りを考慮した設計を行えばよいからである。
他のメリットとしては、部材の共通化が容易であるということが挙げられる。外形が略点対称である場合、他の半導体モジュールの製造の際にも流用が可能であり、部材の共通化によるコストダウンが可能であるからである。たとえば、異なる半導体モジュールの間で、金属ベース板10は共通として、絶縁回路基板や金属ベース板10に接着する端子ケースの形状を変えることが考えられる。
【0021】
ベース板固定治具20は、はんだ接合装置に含まれる部品の1つであり、金属ベース板10を固定するための治具である。ベース板固定治具20は、耐熱性に優れた材質により構成されている。このような材質は、たとえば、複合セラミック材料、カーボンである。ベース板固定治具20のおもて面には、金属ベース板10を嵌め込んで固定するための凹部20a1~20a12が設けられている。凹部20a1~20a12の深さは、たとえば、金属ベース板10の厚み程度である。このように、複数の凹部20a1~20a12を設けることで、複数の半導体モジュールのはんだ接合を同時に行える。なお、凹部20a1~20a12の数は、12個に限定されるものではない。
【0022】
凹部20a1~20a12は、金属ベース板10の外形、第1の貫通孔10d及び第2の貫通孔10eの形状に対応して型取られている。
【0023】
このような金属ベース板10と、ベース板固定治具20を用いることで、たとえば、金属ベース板10を180度回転させた場合、凸部20bが邪魔をして金属ベース板10が凹部20a10に嵌まらなくなる。図1中では、180度回転させた金属ベース板10が凹部20a10に嵌まらなくなることが、“NG”と表記されている。以上のことから、ベース板固定治具20に対する金属ベース板10の上下逆入れを防止できる。
【0024】
また、凹部20a1~20a12は、ベース板固定治具20において、同一の向きで形成されている。図1の例では、凹部20a1~20a12のそれぞれの中心に対して、金属ベース板10の第1の貫通孔10dに対応する部分が+X方向、第2の貫通孔10eに対応する部分が-X方向に位置するように凹部20a1~20a12が形成されている。
【0025】
このように、ベース板固定治具20において、凹部20a1~20a12を同一の向きに形成することで、全ての凹部20a1~20a12に対して、同じ向きで金属ベース板10を嵌め込むことができる。これにより、凹部20a1~20a12ごとに、金属ベース板10を回転させるような手間をなくせる。
【0026】
(比較例)
図3は、比較例の半導体モジュールの製造方法を示す平面図である。
図3において、金属ベース板30のおもて面には、図1に示した金属ベース板10と同様に、4隅に設けられる突起部30a1,30a2,30a3,30a4により規定された、絶縁回路基板の搭載位置30aが中心からずれた位置に設けられている。しかし、図1に示した金属ベース板10と異なり、金属ベース板30の第1の端部30bと第2の端部30cに設けられたネジ固定用の貫通孔30d,30eは形状が同じである。したがって、金属ベース板30の外形は、点対称となっている。
【0027】
また、図3において、ベース板固定治具40に設けられた凹部40a1~40a12のそれぞれは、金属ベース板30の外形に対応して型取られている。
【0028】
このような金属ベース板30と、ベース板固定治具40を用いた場合、金属ベース板30を180度回転させた場合でも凹部40a10に嵌め込むことができる。このため、ベース板固定治具40に対する金属ベース板10の上下逆入れが発生する可能性がある。
【0029】
これに対して、図1図2に示したような金属ベース板10及びベース板固定治具20を用いる場合、上記のように、金属ベース板10を180度回転させると、凹部20a10に嵌まらなくなる。このため、ベース板固定治具20に対する金属ベース板10の上下逆入れを防止できる。
【0030】
(はんだ接合工程)
図1図2に示した工程により、金属ベース板10をベース板固定治具20により固定した後、絶縁回路基板及び半導体チップの搭載工程が行われる。
図4は、絶縁回路基板の搭載例を示す平面図である。なお、図4では、図1図2に示したような金属ベース板10が、ベース板固定治具20の凹部20a1~20a12のそれぞれに、嵌め込まれた例が示されている。
【0031】
絶縁回路基板11a1~11a12は、絶縁板と絶縁板の裏面に設けられた金属板と絶縁板のおもて面に設けられた回路パターンとを含んでいる。絶縁板及び金属板は、平面視で矩形状である。また、角部がR形状や、C形状に面取りされていてもよい。金属板のサイズは、平面視で、絶縁板のサイズより小さく、絶縁板の内側に形成されている。絶縁板は、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。このようなセラミックスは、たとえば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素である。金属板は、熱伝導性に優れた金属により構成されている。このような金属は、たとえば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。
【0032】
絶縁回路基板11a1~11a12の裏面に設けられた金属板の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、たとえば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。回路パターンは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、たとえば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。
【0033】
同様に、絶縁回路基板11a1~11a12のおもて面に設けられた回路パターンの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、たとえば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。このような回路パターンは、絶縁板のおもて面に金属層を形成し、この金属層に対してエッチングなどの処理を行って得られる。または、予め金属層から切り出した回路パターンを絶縁板のおもて面に接合してもよい。このような部品により構成される絶縁回路基板11a1~11a12に、たとえば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いることができる。
【0034】
絶縁回路基板11a1~11a12の搭載の際には、金属ベース板10の上における絶縁回路基板11a1~11a12の位置合わせのために、枠治具51a1~51a12が用いられる。
【0035】
枠治具51a1~51a12は、平面視で金属ベース板10と同様のサイズであって、搭載位置10aに対応する領域に、搭載位置10aのサイズよりも一回り広い開口部51b1~51b12が形成されている。また、枠治具51a1~51a12は耐熱性に優れた材質により構成されている。このような材質は、たとえば、複合セラミック材料、カーボンである。枠治具51a1~51a12のそれぞれは、金属ベース板10またはベース板固定治具20に対して、ネジ止めされていてもよい。
【0036】
金属ベース板10にセットした枠治具51a1~51a12の開口部51b1~51b12によって露出する搭載位置10aの突起部10a1~10a4に支持されるように、板はんだ(後述の図6の板はんだ11b1に相当)がセットされる。そして、板はんだ上に絶縁回路基板11a1~11a12が配置される。
【0037】
図5は、半導体チップの搭載時に用いられる駒治具の例を示す平面図である。
駒治具52a1~52a12は、絶縁回路基板11a1~11a12上に配置される。駒治具52a1~52a12は、たとえば、枠治具51a1~51a12の開口部51b1~51b12に嵌め込めるような構成となっている。駒治具52a1~52a12も枠治具51a1~51a12と同様に、耐熱性に優れた材質により構成されている。このような材質は、たとえば、複合セラミック材料、カーボンである。
【0038】
駒治具52a1~52a12のそれぞれには、絶縁回路基板11a1~11a12上において、半導体チップを搭載する位置を露出するための開口部が設けられている。たとえば、駒治具52a1には、複数の開口部52b1~52b12が設けられている。
【0039】
駒治具52a1~52a12を絶縁回路基板11a1~11a12上に配置した状態で、開口部51b1~51b12によって露出する絶縁回路基板11a1~11a12上に板はんだ群(後述の図6の板はんだ群12b1に相当)が配置され、板はんだ群上に半導体チップ群(図6の半導体チップ群12a1に相当)が配置される。
【0040】
半導体チップは、スイッチング素子を含んでいる。スイッチング素子は、たとえば、IGBT、パワーMOSFETである。半導体チップがIGBTである場合には、裏面に主電極としてコレクタ電極を、おもて面に、ゲート電極及び主電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。半導体チップがパワーMOSFETである場合には、裏面に主電極としてドレイン電極を、おもて面に、ゲート電極及び主電極としてソース電極をそれぞれ備えている。上記の半導体チップは、その裏面が絶縁回路基板11a1~11a12の回路パターン上にはんだ接合される。半導体チップのおもて面の主電極、ゲート電極に対しては、配線部材が電気的、機械的に適宜接続される。配線部材は、たとえば、ボンディングワイヤ、リードフレーム、ピン状またはリボン状の部材である。
【0041】
また、半導体チップは、ダイオードを含む。ダイオードは、たとえば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオードなどをFWD(Free Wheeling Diode)としてスイッチング素子に対して逆並列に設けてもよい。このような半導体チップは、裏面に主電極として出力電極(カソード電極)を、おもて面に主電極として入力電極(アノード電極)をそれぞれ備えている。
【0042】
また、スイッチング素子の駆動及び保護機能をもつ集積回路である半導体チップが、絶縁回路基板11a1~11a12上に搭載されてもよい。
【0043】
半導体チップの配置後、加熱処理が行われる。これにより、金属ベース板10と絶縁回路基板11a1~11a12との間の板はんだ及び、絶縁回路基板11a1~11a12と半導体チップとの間の板はんだが溶融される。そして、加熱処理を停止することで溶融はんだが固化され、金属ベース板10と絶縁回路基板11a1~11a12がはんだ接合され、絶縁回路基板11a1~11a12と半導体チップがはんだ接合される。
【0044】
なお、上記の板はんだとして、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、たとえば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、たとえば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。
【0045】
(半導体モジュールの製造工程全体の流れと半導体モジュールの例)
図6は、半導体モジュールの製造工程全体の流れを示す図である。図6において、図1図2図4に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0046】
まず、金属ベース板10、板はんだ11b1、絶縁回路基板11a1、複数の板はんだによる板はんだ群12b1、複数の半導体チップによる半導体チップ群12a1、端子ケース16、制御基板17、蓋18が用意される。
【0047】
板はんだ11b1は、金属ベース板10と絶縁回路基板11a1とをはんだ接合するために用いられるものであり、図1図2に示したような突起部10a1~10a4上に配置される。板はんだ群12b1は、絶縁回路基板11a1と半導体チップ群12a1とをはんだ接合するために用いられるものであり、図5に示した駒治具52a1の開口部52b1~52b12に配置される。制御基板17は、半導体モジュールの動作を制御するための制御回路を搭載した基板である。
【0048】
金属ベース板10、板はんだ11b1、絶縁回路基板11a1、板はんだ群12b1、半導体チップ群12a1は、前述のはんだ接合工程によって一体化され、積層体15が形成される。なお、図1などに示したベース板固定治具20を用いることで、上記のような積層体15を複数(図1の例では12個)同時に作製できる。
【0049】
次に、積層体15は、端子ケース16に接着され、制御基板17も端子ケース16に配置される。そして、ワイヤボンディングなどにより各部の配線が行われた後、端子ケース16内に図示しない絶縁樹脂材が注入され、絶縁樹脂材が硬化される。最後に、蓋18が端子ケース16の上面に接着されることで、半導体モジュール19が完成する。
【0050】
なお、この後、図1に示したような金属ベース板10の第1の貫通孔10d、第2の貫通孔10eを用いて、金属ベース板10の裏面に冷却器19aがネジ止めされる。冷却器19aのネジ穴19a1,19a2は、金属ベース板10の第1の貫通孔10d、第2の貫通孔10eの位置に対応する位置に設けられている。
【0051】
図1図2に示したような金属ベース板10と、ベース板固定治具20を用いることで、上記のような半導体モジュール19を製造する際の、組立不良の発生を防止でき、歩留まりの低下を抑制できる。また、このような組立工程の歩留まりの低下を抑制できるため、製造コストの増加を防げる。なお、このような効果を得るために、新たな製造装置や新たな製造工程の追加は不要である。
【0052】
(金属ベース板の変形例)
ところで金属ベース板は、図1図3に示したような形状に限定されない。以下のような金属ベース板を用いることもできる。
図7は、金属ベース板の変形例を示す平面図である。
金属ベース板60は略矩形の外形を有しており、角部がR形状に面取りされている。金属ベース板60のおもて面の中心からずれた位置には、絶縁回路基板の搭載位置60aが設けられている。搭載位置60aは、図1に示した金属ベース板10と同様に、4隅に設けられる突起部60a1,60a2,60a3,60a4により規定されている。
【0053】
また、金属ベース板60の第1の端部60bにはネジ固定用の第1の貫通孔として、2つの貫通孔60d1,60d2が設けられている。また、第1の端部60bに対向する第2の端部60cにもネジ固定用の第2の貫通孔として、2つの貫通孔60e1,60e2が設けられている。これらの貫通孔60d1,60d2,60e1,60e2は、金属ベース板60の裏面に、たとえば冷却器をネジ止めするために設けられている。
【0054】
ここで、貫通孔60d1,60d2は互いに形状が同じであり、貫通孔60e1,60e2も互いに形状が同じであるが、貫通孔60d1,60d2と貫通孔60e1,60e2とは形状が異なっている。図7の例では、貫通孔60d1,60d2は、平面視で、周囲が閉じられた形状であり、貫通孔60e1,60e2は、平面視で、周囲の一部が開かれた形状である。したがって、金属ベース板60の外形は、略点対称であるものの、貫通孔60d1,60d2と貫通孔60e1,60e2との形状の差異によって、完全な点対称とはなっていない。
【0055】
このような金属ベース板60を用いる場合、ベース板固定治具の凹部も金属ベース板60に対応した形状で形成される。すなわち、凹部は、金属ベース板60の外形、貫通孔60d1,60d2と貫通孔60e1,60e2の形状に対応して型取られることになる。
【0056】
上記のような金属ベース板60、ベース板固定治具を用いた場合も、金属ベース板10、ベース板固定治具20を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0057】
以上、実施の形態に基づき、本発明の半導体モジュールの製造方法及び半導体モジュールの一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
10 金属ベース板
10a 搭載位置
10a1~10a4 突起部
10b 第1の端部
10c 第2の端部
10d 第1の貫通孔
10e 第2の貫通孔
20 ベース板固定治具
20a1~20a12 凹部
20b 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7