(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080870
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】漏電遮断器試験用アダプタ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/50 20200101AFI20240610BHJP
H01H 73/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01R31/50
H01H73/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194192
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 達也
【テーマコード(参考)】
2G014
5G030
【Fターム(参考)】
2G014AA16
2G014AB09
5G030XX16
5G030XX17
(57)【要約】
【課題】コンセント極性試験器に疑似的な漏電を発生させる機能を付与し、漏電遮断器の試験も行えるようにする。
【解決手段】コンセント極性試験器100に接続され、疑似的な漏電を発生させる漏電遮断器試験用アダプタであって、コンセント極性試験器の電源プラグ101を差し込んで接続する差し込み口2と、接地線と非接地側電線との間に抵抗を挟む疑似漏電回路7および該疑似漏電回路へ電流を流す漏電発生スイッチ8を有する漏電発生器3と、前記漏電発生器から引き出されたコード42と、コードの先端に設けられた電源プラグ5と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセント極性試験器に接続され、疑似的な漏電を発生させる漏電遮断器試験用アダプタであって、
コンセント極性試験器の電源プラグを差し込んで接続する差し込み口と、
接地線と非接地側電線との間に抵抗を挟む疑似漏電回路および該疑似漏電回路へ電流を流す漏電発生スイッチを有する漏電発生器と、
前記漏電発生器から引き出されたコードと、
前記コードの先端に設けられた電源プラグと、
を備えることを特徴とする漏電遮断器試験用アダプタ。
【請求項2】
前記差し込み口は、前記漏電発生器に直接設けられていることを特徴とする請求項1に記載の漏電遮断器試験用アダプタ。
【請求項3】
前記疑似漏電回路は、複数の抵抗が並列に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の漏電遮断器試験用アダプタ。
【請求項4】
前記漏電発生器は、前記疑似漏電回路に流れる電流の大きさを複数切り替え可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の漏電遮断器試験用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンセント極性試験器に接続され、疑似的な漏電を発生させる漏電遮断器試験用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備工事では、工事完了前の最終確認として各種電気設備の試験が行われる。例えば、コンセント極性試験器を用いて、各コンセントの電圧や極性の正誤確認が行われる。特許文献1には、接地極付コンセントの配線確認を行うために、N線及びE線の誤配線を精度よく判別する試験器が開示されている。また、分電盤の漏電遮断器の動作確認をするために、漏電遮断器に備えられたテストボタンを押す方法の他、漏電遮断器用の専用試験器を用いコンセントを介して試験を行う方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5750313号公報
【特許文献2】特許第4391913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、作業者は、コンセントの極性試験およびコンセントを介した漏電遮断器の試験を行う際に、コンセント極性試験器と漏電遮断器用の専用試験器の2つの試験器を持ち運ぶ必要がある。持ち運ぶ器具が増えるだけでなく、2台の試験器を持ち代えて試験作業を行わなければならないため、作業効率が悪い。
【0005】
コンセント極性試験機能と漏電遮断器試験機能を併せ持つ試験器は、特許文献2に開示されている。しかしながら、近年、コンセント極性試験器は、携帯端末と接続して試験結果をまとめることのできるものなど、新しい機能が追加されたものが次々と上市されているが、そのような新しいコンセント極性試験器の全てに漏電遮断器試験の機能が備えられているわけではない。
【0006】
また、従来のコンセント極性試験器や漏電遮断器試験機能を併せ持つコンセント極性試験器は、試験器本体から電源プラグが突出しており、その電源プラグをコンセントに差し込んで試験を行う。このような従来の試験器を狭所に設けられたコンセントへ差し込んで試験を行う場合、試験器の操作が困難であるため、延長コードを接続する必要がある。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンセント極性試験器に疑似的な漏電を発生させる機能を付与し、作業効率良く漏電遮断器の試験も行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、
コンセント極性試験器に接続され、疑似的な漏電を発生させる漏電遮断器試験用アダプタであって、
コンセント極性試験器の電源プラグを差し込んで接続する差し込み口と、
接地線と非接地側電線との間に抵抗を挟む疑似漏電回路および該疑似漏電回路へ電流を流す漏電発生スイッチを有する漏電発生器と、
前記漏電発生器から引き出されたコードと、
前記コードの先端に設けられた電源プラグと、
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、漏電遮断器の試験機能を有しないコンセント極性試験器に対して、疑似的な漏電を発生させる機能を付与することが可能となる。従来のコンセント極性試験器や、新たに上市された高機能なコンセント極性試験器等のあらゆるコンセント極性試験器を用いて漏電遮断器の試験を行うことが可能となり、機能性及び汎用性に優れる。また、漏電発生器からコードが引き出され、そのコードの先端に電源プラグが設けられているため、コンセントが狭所に設けられている場合も別途延長コードを接続する必要がなく、作業性に優れる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記差し込み口は、前記漏電発生器に直接設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、コンセント極性試験器が漏電発生器に直接接続されるので、作業者がコンセント極性試験器と漏電発生器を片手で操作可能となり、作業効率を高めることができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記疑似漏電回路は、複数の抵抗が並列に接続されていることを特徴とする。
【0013】
抵抗は消費電力に比例して大きくなり、消費電力は回路を流れる電流の二乗に比例するため、抵抗を並列に接続する上記の構成によれば、電流を分流させることにより、使用する抵抗器の小型化が可能となり、漏電発生器も小型化できる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記漏電発生器は、前記疑似漏電回路に流れる電流の大きさを複数切り替え可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、例えば、住宅用分電盤でよく採用される漏電遮断器の定格感度電流として、15mAと30mAとを切り換え可能となるため、作業性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、コンセント極性試験器に疑似的な漏電を発生させる機能を付与し、作業効率良く漏電遮断器の試験も行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタの使用状態を示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタの斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタをコンセント極性試験器に接続した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0019】
<第1実施形態>
本発明の漏電遮断器試験用アダプタは、漏電検出機能や疑似的な漏電を発生させる機能を有しないコンセント極性試験器100に接続され、疑似的な漏電を発生させるためのものである。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタの斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタの使用状態を示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、漏電遮断器試験用アダプタ1は、コンセント極性試験器100の電源プラグ101を差し込んで接続する差し込み口2と、漏電発生器3と、第1コード41、第2コード42及び電源プラグ5を備える。
【0021】
差し込み口2は、略直方体状のコンセント6の端面に設けられる。差し込み口2には、コンセント極性試験器100の3P電源プラグ101が差し込まれる。コンセント6は、略直方体状の端部から基部に向かって縮小し、その基部には第1コード41が接続されている。
【0022】
漏電発生器3は、略直方体状の筐体内部に疑似漏電回路7を収容する。漏電発生器3は、筐体の下面から第1コード41が引き出され、上面から第2コード42が引き出される。第1コード41はコンセント6へ延び、第2コード42は電源プラグ5へ延びる。また、漏電発生器3は、筐体の側面に疑似漏電回路7へ電流を流す漏電発生スイッチ8と、電流の大きさを切り替える電流切替スイッチ9とが設けられる。
【0023】
第1コード41及び第2コード42は、30cm~50cm程度の比較的短いコードである。
【0024】
電源プラグ5は、第2コード42の先端に設けられる。電源プラグ5は、建物の壁等に設けられたコンセントXへ差し込まれる部分である。漏電発生器3及びコンセント極性試験器100は、この電源プラグ5を介して商用電源の供給を受ける。電源プラグ5は、一対の電源端子5a及びアースピン5bを有する。
【0025】
疑似漏電回路7は、接地線と非接地側電線(電圧側電線)との間に抵抗を挟んで電気経路を通電させ、疑似的な漏電を発生させるものである。
図3に疑似漏電回路の回路図を示す。
図3に示すように、疑似漏電回路7は、接地線と非接地側電線との間に位置し、第1接続点71と第2接続点72との間に、抵抗73a,73bが並列に接続されている。また、一方の抵抗73aは、スイッチ部74と直列に接続される。抵抗73a,73bを並列に接続するとともに、一方の抵抗と直列にスイッチ部74を接続することで、疑似漏電回路7に流れる電流の大きさを切り替え可能となる。スイッチ部74の切り替えは、電流切替スイッチ9によって切り替える。
【0026】
漏電発生スイッチ8は、使用者が押圧した際にオンになり、疑似漏電回路7へ電流を流すことで疑似漏電を発生させる。そのため、漏電遮断器試験用アダプタ1をコンセント極性試験器100に接続した状態で、コンセント極性試験器100は疑似漏電を発生させない通常の試験を行うことも可能であり、この場合、漏電遮断器試験用アダプタ1は、延長コードとして機能する。
【0027】
<使用方法>
次に、本発明の漏電遮断器試験用アダプタ1の使用方法について説明する。まず、コンセント極性試験器100の電源プラグ101を漏電遮断器試験用アダプタ1のコンセント6の差し込み口2に差し込み、コンセント極性試験器100と漏電遮断器試験用アダプタ1とを接続する。コンセント極性試験器100として、例えば、共立電気計器社製のコンセントテスタ(KEW 4505BT)を使用することが可能である。次に、壁等に設けられたコンセントXへ電源プラグ5を差し込む。この状態において、コンセント極性試験器100は通常の使用方法で使用可能である。そして、漏電遮断器の試験を行う場合は、使用者が漏電発生スイッチ8を押圧することにより、疑似漏電が発生する。
【0028】
<第1実施形態の作用効果>
以上のように構成した第1実施形態の漏電遮断器試験用アダプタは、漏電遮断器の試験機能を有しないコンセント極性試験器に対して、疑似的な漏電を発生させる機能を付与することが可能となる。従来のコンセント極性試験器や、新たに上市された高機能なコンセント極性試験器等、あらゆるコンセント極性試験器に対して漏電遮断器の試験機能を付与することが可能となり、機能性及び汎用性に優れる。また、漏電発生器3からコード42が引き出され、そのコード42の先端に電源プラグ5が設けられているため、コンセントXが狭所に設けられている場合も別途延長コードを接続する必要がなく、作業性に優れる。
【0029】
また、疑似漏電回路7において抵抗が並列に接続されているため、電流を分流させ、使用する抵抗器の小型化が可能となり、漏電発生器3も小型化できる。漏電発生器3を小型化することで、持ち運びやすくなり作業性も向上する。また、疑似漏電回路7において抵抗を並列に接続し、一方の抵抗と直列にスイッチ部74を接続することで、疑似漏電回路7に流れる電流の大きさを切り替え可能となる。例えば、住宅用分電盤でよく採用される漏電遮断器の定格感度電流として、15mAと30mAとを切り換え可能となるため、作業性に優れる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の漏電遮断器試験用アダプタについて説明する。第2実施形態の漏電遮断器試験用アダプタは、第1コード41を備えない点で第1実施形態と異なる。以下の説明において、第1実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図4は、第2実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタの斜視図であり、
図5は、第2実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタをコンセント極性試験器に接続した状態の斜視図である。
図4及び
図5に示すように、第2実施形態に係る漏電遮断器試験用アダプタ1は、電源プラグ5からアース線10が引き出されている。また、コンセント極性試験器100の電源プラグ101を差し込んで接続する差し込み口2が漏電発生器3の筐体に直接設けられている。コンセント極性試験器100へ漏電遮断器試験用アダプタ1を接続すると、漏電発生スイッチ8や電流切替スイッチ9などの操作部が設けられた漏電発生器3が、コンセント極性試験器100の本体に隣接する。
【0032】
<第2実施形態の作用効果>
以上のように構成した第2実施形態によれば、差し込み口2が漏電発生器3の筐体に直接設けられ、コンセント極性試験器100の本体に近接して漏電発生スイッチ8及び電流切替スイッチ9が位置するため、作業者が、コンセント極性試験器100の操作と漏電遮断器試験用アダプタ1の操作を片手で行うことが可能となり、持ち替える必要がないため作業性に優れる。
【0033】
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。例えば、疑似漏電回路において並列に接続される抵抗は2つのみならず、3つ以上であってもよい。また、上記実施形態において、漏電発生スイッチ8は使用者が押圧した際にオンになる構成としているが、例えば、使用者が押圧している間にオンになる構成や、疑似漏電回路へ0.1秒程度の時限回路を組み込み、使用者が押圧してから0.1秒程度所定の大きさの電流が流れるように構成してもよい。また、上記実施形態2では、電源プラグ5からアース線10が引き出されている構成としたが、アース線10を設けるか否かは任意である。
【符号の説明】
【0034】
1 漏電遮断器試験用アダプタ
2 差し込み口
3 漏電発生器
5 電源プラグ
6 コンセント
7 疑似漏電回路
8 漏電発生スイッチ
9 電流切替スイッチ
41 第1コード
42 第2コード
73a 抵抗
73b 抵抗
100 コンセント極性試験器