(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080876
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】運転支援方法および運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240610BHJP
F02D 11/10 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B60W30/08
F02D11/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194199
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 明
(72)【発明者】
【氏名】浅川 友太
(72)【発明者】
【氏名】神田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】日原 弘太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
【テーマコード(参考)】
3D241
3G065
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BA70
3D241CD07
3D241CD09
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
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3D241DC20Z
3D241DC25Z
3G065CA17
3G065GA46
3G065GA50
(57)【要約】
【課題】自車両の前方における道路の方位情報を取得できない場合であっても、急なアクセル操作による急加速を適切に抑制できる運転支援方法及び運転支援装置を提供することである。
【解決手段】自車両の向きと対象車両の向きとのなす第1対象角が大きくなるに従って自車両が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度が大きくなるように演算し、誤方向確信度が大きくなるに従って所定の距離閾値が大きくなるように設定する、及び/又は、誤方向確信度が大きくなるに従って所定のアクセル開度閾値及び/又は所定の変化率閾値が小さくなるように設定し、アクセル操作時における自車両と対象車両との距離が所定の距離閾値以下、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上、及び、アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上という条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たす場合、加速を抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラによって実行され、自車両の進行方向に存在する対象車両を認識し、前記自車両のアクセル操作時における前記自車両と前記対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、前記アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たす場合には、前記アクセル操作に基づく加速を抑制する運転支援方法であって、
前記コントローラは、
前記自車両の向きと前記対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算し、
前記第1対象角が大きくなるに従って、前記自車両が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度が大きくなるように、前記誤方向確信度を演算し、
前記誤方向確信度が大きくなるに従って、前記所定の距離閾値が大きくなるように前記所定の距離閾値を設定する、及び/又は、前記誤方向確信度が大きくなるに従って、前記所定のアクセル開度閾値及び/又は前記所定の変化率閾値が小さくなるように前記所定のアクセル開度閾値及び/又は前記所定の変化率閾値を設定する運転支援方法。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記対象車両の周囲に位置する周囲車両を認識し、
前記対象車両の向きと前記周囲車両の向きとのなす角を第2対象角として演算し、
前記第2対象角が小さくなるに従って、前記対象車両が進行すべき方向に進行している可能性の高さを示す適正方向確信度が大きくなるように、前記適正方向確信度を演算し、
前記適正方向確信度が大きくなるに従って、前記第1対象角の増加に対する前記誤方向確信度の増加率が高くなるように、前記増加率を設定する請求項1に記載の運転支援方法。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記対象車両と前記周囲車両との間の領域を対象領域として特定し、
前記自車両の位置及び/又は前記自車両が走行する目標軌道を取得し、
前記対象領域の位置と、前記自車両の位置及び/又は前記目標軌道とに基づいて、前記自車両が前記対象領域内に位置する、又は、前記目標軌道が前記対象領域内を通るか否かを判定し、
前記自車両が前記対象領域内に位置する、又は、前記目標軌道が前記対象領域内を通る場合に、前記適正方向確信度が大きくなるに従って、前記増加率が高くなるように、前記増加率を設定する請求項2に記載の運転支援方法。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記対象車両の周囲に位置する車線の車線境界線を認識し、
前記対象車両の向きと前記車線境界線の向きとのなす角を第3対象角として演算し、
前記第3対象角が小さくなるに従って、前記対象車両が進行すべき方向に進行している可能性の高さを示す適正方向確信度が大きくなるように、前記適正方向確信度を演算し、
前記適正方向確信度が大きくなるに従って、前記第1対象角の増加に対する前記誤方向確信度の増加率が高くなるように、前記増加率を設定する請求項1に記載の運転支援方法。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記車線内の領域を対象領域として特定し、
前記自車両の位置及び/又は前記自車両が走行する目標軌道を取得し、
前記対象領域の位置と、前記自車両の位置及び/又は前記目標軌道とに基づいて、前記自車両が前記対象領域内に位置する、又は、前記目標軌道が前記対象領域内を通るか否かを判定し、
前記自車両が前記対象領域内に位置する、又は、前記目標軌道が前記対象領域内を通る場合に、前記適正方向確信度が大きくなるに従って、前記増加率が高くなるように、前記増加率を設定する請求項4に記載の運転支援方法。
【請求項6】
前記コントローラは、前記対象車両及び/又は前記周囲車両が移動している移動方向を前記対象車両の向き及び/又は前記周囲車両の向きとして取得する請求項2又は3に記載の運転支援方法。
【請求項7】
前記コントローラは、前記対象車両及び/又は前記周囲車両の長手方向を前記対象車両の向き及び/又は前記周囲車両の向きとして取得する請求項2又は3に記載の運転支援方法。
【請求項8】
前記コントローラは、前記対象車両及び/又は前記周囲車両の車輪の向きを前記対象車両の向き及び/又は前記周囲車両の向きとして取得する請求項2又は3に記載の運転支援方法。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記対象車両及び/又は前記周囲車両の車体に備えられた外装部品を認識し、
前記外装部品の前記車体における位置に基づいて、前記車体の前端面、後端面及び/又は側面を特定し、
特定した前記前端面、前記後端面及び/又は前記側面の向きに基づいて、前記対象車両及び/又は前記周囲車両の向きを推定する請求項2又は3に記載の運転支援方法。
【請求項10】
自車両の進行方向に存在する対象車両を認識し、前記自車両のアクセル操作時における前記自車両と前記対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、前記アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たす場合には、前記アクセル操作に基づく加速を抑制するコントローラを備える運転支援装置であって、
前記コントローラは、
前記自車両の向きと前記対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算し、
前記第1対象角が大きくなるに従って、前記自車両が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度が大きくなるように、前記誤方向確信度を演算し、
前記誤方向確信度が大きくなるに従って、前記所定の距離閾値が大きくなるように前記所定の距離閾値を設定する、及び/又は、前記誤方向確信度が大きくなるに従って、前記所定のアクセル開度閾値及び/又は前記所定の変化率閾値が小さくなるように前記所定のアクセル開度閾値及び/又は前記所定の変化率閾値を設定する運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援方法および運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路地図情報に基づいて、走行車線の前方に交差道路が検出された場合、自車両の進行方向の方位と、道路地図情報に記憶されている交差道路の方位とがなす方位角差分を求め、方位角差分が狭くなるに従い加速抑制度合いを高く設定し、加速抑制度合いに基づいて自車両の目標加速度を抑制する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、地図が整備されていない場所など、自車両の前方における道路の方位情報を取得できない場合に、急加速を抑制する必要のある場所が認識されないため、急加速の発生を適切に抑制できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自車両の前方における道路の方位情報を取得できない場合であっても、急なアクセル操作による急加速を適切に抑制できる運転支援方法及び運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の進行方向に存在する対象車両を認識し、自車両のアクセル操作時における自車両と対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たす場合には、アクセル操作に基づく加速を抑制するコントローラを備え、コントローラは、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算し、第1対象角が大きくなるに従って、自車両が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度が大きくなるように、誤方向確信度を演算し、誤方向確信度が大きくなるに従って、所定の距離閾値が大きくなるように所定の距離閾値を設定する、及び/又は、誤方向確信度が大きくなるに従って、所定のアクセル開度閾値及び/又は所定の変化率閾値が小さくなるように所定のアクセル開度閾値及び/又は所定の変化率閾値を設定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両の前方における道路の方位情報を取得できない場合であっても、急なアクセル操作による急加速を適切に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の運転支援装置を含む運転支援システムを示すブロック図である。
【
図2A】自車両の向きと対象車両の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図2B】自車両の向きと対象車両の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図2C】自車両の向きと対象車両の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図3】第1対象角と誤方向確信度との関係の一例を示す図である。
【
図4A】対象車両の向きと周囲車両の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図4B】対象車両の向きと周囲車両の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図5A】対象車両の向きと車線境界線の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図5B】対象車両の向きと車線境界線の向きとの関係の一例を示す図である。
【
図6】適正方向確信度ごとの、第1対象角と誤方向確信度との関係の一例を示す図である。
【
図7】対象領域と自車両の自車進路との関係の一例を示す図である。
【
図8】対象領域と自車両の自車進路との関係の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る運転支援装置によって加速抑制制御を実行する制御フローのフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、左側通行の法規を有する国にて、車両が左側通行で走行することが前提となっている。右側通行の法規を有する国では、車両が右側通行で走行するため、以下の説明の右と左を対称にして読み替えるものとする。
【0010】
図1は、本発明に係る運転支援システム100を示すブロック図である。
図1に示すように、運転支援システム100は、アクセル開度センサ1と、車速センサ2と、操舵角センサ3と、シフトポジションセンサ4と、車外センサ5と、自車位置センサ6と、運転支援装置7とを含む。運転支援装置7は、コントローラ10と、アクセル制御装置20とを備える。運転支援システム100に含まれる装置は、自車両30に搭載された装置であって、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、互いに情報を授受することができる。
【0011】
アクセル開度センサ1は、アクセル操作量に対応するアクセル開度を検出する。アクセル操作量は、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み量である。また、アクセル操作量は、自律制御によるアクセル操作に基づく操作量であってもよい。また、アクセル開度センサ1は、アクセル開度の単位時間あたりの変化量をアクセル開度の変化率として検出する。ドライバは、アクセルペダルを踏みこむことで、アクセル操作を行う。アクセル開度センサ1は、アクセル操作の入力があると、アクセル操作量に対応するアクセル開度を検出する。
【0012】
車速センサ2は、自車両30の車速を検出する。操舵角センサ3は、自車両30の操舵角度を検出する。車速センサ2は、自車両30の車速を検出できるセンサであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。同様に、操舵角センサ3としては、自車両30の操舵角度を検出できるセンサであれば特に限定されない。また、シフトポジションセンサ4は、シフトレバーの位置を検出する。
【0013】
車外センサ5は、自車両30の周囲の対象物を検出するためのセンサである。対象物とは、たとえば、道路の車線境界線、センターライン、路面標示、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、交通制限である。また、対象物には、自車両30以外の自動車(他車両)、オートバイ、自転車、歩行者が含まれる。対象物には、自車両30の走行に影響を与える可能性がある障害物も含まれる。
【0014】
車外センサ5は、画像により自車両の周囲の対象物を認識する撮像装置を有する。撮像装置は、たとえば、CCD等の撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどのカメラである。撮像装置は、一台の車両に複数設けることができ、たとえば、車両のフロントグリル部、左右ドアミラーの下部、及びリアバンパ近傍に配置できる。これにより、自車両30の周囲の対象物を認識する場合の死角を減らすことができる。
【0015】
また、車外センサ5は、車両と対象物との相対距離および相対速度を演算するための測距装置を有する。測距装置は、たとえば、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDAR(light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーである。測距装置は、一台の車両に複数設けることができ、たとえば、車両の前方、右側方、左側方、及び後方に配置できる。これにより、自車両30の周囲の対象物との相対距離及び相対速度を正確に演算することができる。
【0016】
車外センサ5の検出結果は、所定の時間間隔で、コントローラ10により取得される。車外センサ5の検出結果は、コントローラ10にて統合又は合成することができ、これにより、検出結果に不足している対象物の情報を補完する。たとえば、後述する自車位置センサ6により取得した、自車両30が走行する位置である自己位置情報と、自車両と対象物の相対位置(距離と方向)により、コントローラ10にて対象物の位置情報を算出することができる。また、これに代えて、地図情報と、オドメトリによる自己位置と、自車両30と対象物の相対位置(距離と方向)とを対応させて、対象物の位置情報を算出してもよい。
【0017】
自車位置センサ6は、自車両の現在位置を取得する。自車位置センサ6は、GPS(Global Positioning System)ユニット、ジャイロセンサ、オドメトリなどを含む測位システムであり、特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、自車位置センサ6は、自車両30の姿勢を検出する。自車位置センサ6は、2台のGPSを備え、自車両の向きを演算してもよいし、方位計をさらに備えて自車両の向きを取得してもよい。本実施形態では、運転支援装置7は、所定の周期で、各種センサから検出情報を取得する。
【0018】
運転支援装置7は、運転支援システム100に含まれる装置を制御して協働させることで自車両30を制御する装置である。特に、本実施形態では、運転支援装置7は、自車両30の加速を抑制する。運転支援装置7は、コントローラ10により加速を抑制することによる運転支援を実現する。ドライバはアクセル操作を行って自車両の急加速をさせることがあるが、自車両の周囲の走行環境によっては、自車両の進行方向前方に交差道路がある場合など、加速を抑制する必要がある場所で誤って急加速をしてしまうことがある。本実施形態では、このようなアクセル操作を誤操作として判定し、誤操作による急加速を抑制できる。誤操作は、例えば、急加速を生じさせる急なアクセル操作や、踏み間違いによるアクセル操作、すなわち、ブレーキペダルを踏もうとしてアクセルペダルを踏んでしまう操作などである。
【0019】
なお、本発明に係る運転支援システム100は、ドライバの手動運転のみならず、自律走行制御にも適用できる。また、運転支援システム100を自車両30の自律走行制御に適用する場合には、速度制御と操舵制御の両方を自律制御するほか、速度制御と操舵制御の一方を自律制御し、他方を手動制御する場合にも適用できる。
【0020】
コントローラ10は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の走行を律する車載機器を電子的に制御する。コントローラ10は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、ROMに格納されたプログラムを実行することで、運転支援装置7として機能するための動作回路であるCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とを備える。コントローラ10は、加速制御を実行するアクセル制御装置20を制御する。コントローラ10は、生成した制御指令に応じて、アクセル制御装置20の動作を自律的に制御する。これにより、自車両30は、自律的に加速制御を実行できる。
【0021】
本実施形態では、コントローラ10は、自車両30の進行方向に存在する対象車両を認識し、アクセル操作の入力があった場合には、所定の加速抑制条件を満たすときに、アクセル操作に基づく加速を抑制する。所定の加速抑制条件は、自車両30のアクセル操作時における自車両30と対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たすことである。
【0022】
コントローラ10は、後述するとおり、地図やセンサから自車両30の進行方向前方の道路の方位情報を取得できない場合に、自車両30の進行方向前方に位置する他車両の向きから道路の方位を推定する。コントローラ10は、自車両30の進行方向前方が急加速を抑制する必要がある場所である場合には、自車両30を急加速させるアクセル操作を誤操作として判定し、自車両30の加速を抑制する。
【0023】
コントローラ10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。コントローラ10は、機能ブロックとして、自車進路取得部11と、周囲認識部12と、対象角演算部13と、確信度演算部14と、閾値設定部15と、誤操作判定部16と、制御指令生成部17とを備える。なお、本実施形態では、コントローラ10の機能を7つのブロックに分けて各機能ブロックの機能を説明するが、各機能を実現できる形態であれば、コントローラ10の機能は必ずしも7つのブロックに分ける必要はない。
【0024】
自車進路取得部11は、自車両30が走行する自車進路を取得する。自車進路は、所定時間の間に自車両30が走行すると予測される軌跡である。自車進路取得部11は、現在時刻から所定時間の間における自車両30の位置を時系列順に予測し、予測した時系列順の自車両30の位置の軌跡を自車進路として取得する。所定時間は、例えば、数秒である。自車進路取得部11は、車速センサ2及び操舵角センサ3から、自車両30の車速及び操舵角を取得し、自車両30の車速及び操舵角に基づいて、自車両30の自車進路を取得する。
【0025】
自車進路取得部11は、シフトポジションセンサ4による検出情報を取得し、自車両30の現在のシフトの位置を判定する。自車進路取得部11は、車速、操舵角及びシフトポジションに基づいて、自車両30の自車進路を取得する。例えば、自車進路取得部11は、シフトポジションが「D」である場合には、自車両30の車速及び操舵角に基づいて、自車両30の前方を進行方向として、進行方向に延びる自車進路を取得する。また、自車進路取得部11は、シフトポジションが「R」である場合には、自車両30の車速及び操舵角に基づいて、自車両30の後方を進行方向として、進行方向に延びる自車進路を取得する。
【0026】
周囲認識部12は、車外センサ5による検出情報に基づいて、自車両30周囲の走行環境を認識する。周囲認識部12は、自車両30の進行方向に存在する対象車両を認識する。周囲認識部12は、車外センサ5による自車両30の周囲環境の検出情報と、自車進路取得部11によって取得された自車進路とに基づいて、自車両30の自車進路付近に存在する他車両を対象車両として認識する。周囲認識部12は、自車進路から所定距離以内の範囲に位置する他車両を対象車両として認識する。例えば、所定距離は、1mである。自車進路から所定距離以内に位置する他車両が複数ある場合には、自車進路から所定距離以内に位置する全ての他車両が対象車両として認識される。対象車両は、自動車、自動二輪車、原動機付き自転車、軽車両を含む。
【0027】
また、周囲認識部12は、対象車両の位置を取得する。対象車両の位置は、例えば、自車両30の現在位置を基準とした相対的な位置である。また、周囲認識部12は、自車両の位置と対象車両の位置とに基づいて、自車両と対象車両との間の対象距離を取得する。
【0028】
また、周囲認識部12は、対象車両の向きを取得する。例えば、周囲認識部12は、対象車両が移動している移動方向を対象車両の向きとして取得する。周囲認識部12は、対象車両の位置を時系列順に記録した移動履歴から、対象車両の移動方向を対象車両の向きとして取得する。周囲認識部12は、対象車両の長手方向を対象車両の向きとして取得する。周囲認識部12は、撮像装置によって取得した対象車両の画像に対して画像認識処理を行って、対象車両の長手方向を認識する。
【0029】
周囲認識部12は、対象車両の車輪の向きを対象車両の向きとして取得する。例えば、周囲認識部12は、撮像装置によって取得した対象車両の画像に対して画像認識処理を行って、対象車両の車輪を認識し、対象車両の車輪の向きを対象車両の向きとして認識する。
【0030】
周囲認識部12は、対象車両の車体に備えられた外装部品を認識し、外装部品の車体における位置に基づいて、車体の前端面、後端面及び/又は側面を特定する。周囲認識部12は、特定した前端面、後端面及び/又は側面の向きに基づいて、対象車両の向きを推定する。外装部品は、例えば、ヘッドライト、テールランプ、ストップランプを含む。外装部品は、種類ごとに、備え付けられている車体の位置が定められている。そのため、周囲認識部12は、認識した外装部品の種類によって、当該外装部品の車体における位置が、車体の前端面、後端面又は側面であるかを特定する。
【0031】
周囲認識部12は、対象車両の周囲に位置する周囲車両を認識する。周囲認識部12は、対象車両から車幅方向及び進行方向にそれぞれ所定距離以内の範囲に位置する他車両を周囲車両として認識する。所定距離は、例えば、5mである。また、周囲認識部12は、周囲車両の位置及び向きを取得する。周囲車両の位置及び向きの取得方法は、対象車両の位置及び向きの取得方法と同様である。
【0032】
周囲認識部12は、対象車両の周囲に位置する車線の車線境界線を認識する。車線境界線は、例えば、白線である。周囲認識部12は、対象車両から車幅方向に所定距離以内の範囲に位置する車線境界線を認識する。また、周囲認識部12は、車線境界線の向きを認識する。
【0033】
対象角演算部13は、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算する。対象角演算部13は、
図2で示されるように、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角のうち鋭角を第1対象角として演算する。すなわち、第1対象角は、0度~90度の範囲の角度である。
図2A、
図2B、
図2Cは、自車両の向きと対象車両の向きとの関係の一例を示す図である。
図2Aは、自車両V1が進行方向D1に走行していて、進行方向D1前方において対象車両V2が進行方向D2に走行している場面を示す。この場面において、進行方向D1を自車両の向き、進行方向D2を対象車両の向きとして、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角θが第1対象角して演算される。
図2Aでは、第1対象角が90度未満となる。
【0034】
例えば、第1対象角が90度未満となる走行シーンの例としては、自車両が走行する自車線前方を走行する対象車両が隣接車線への車線変更のために操舵制御しているシーンや、自車両が走行する道路が、対象車両が走行する交差道路に対して斜めに接続しているシーンである。
【0035】
また、
図2Bは、
図2Aと同様に、自車両V1が進行方向D1に走行していて、進行方向D1前方において対象車両V2が進行方向D2に走行している場面を示す図であるが、第1対象角が直角又は略直角となっている。第1対象角が直角又は略直角となる走行シーンの例としては、例えば、丁字路や十字路など、自車両が走行する道路が、対象車両が走行する交差道路に対して略直角に接続しているシーンが挙げられる。
【0036】
また、
図2Cは、
図2Aと同様に、自車両V1が進行方向D1に走行していて、進行方向D1前方において対象車両V2が進行方向D2に走行している場面を示す図であるが、自車両の向きと対象車両の向きが同じ、すなわち、第1対象角が0度又は0度に近い角度となっている。第1対象角が0度又は0度に近い角度となる走行シーンの例としては、自車両と対象車両とが同じ進行方向の車線上を走行しているシーンが挙げられる。
【0037】
本実施形態では、地図情報やセンサ情報から白線等の自車両の進行方向における道路の方位情報を取得できない場合に、対象車両の向きを、自車両の進行方向における道路の方位として推定し、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角を求めることで、自車両が前方道路の方位に対して誤った方向に進行しているか否かを判定できる。
【0038】
なお、本実施形態では、自車両の向き及び対象車両の向きを示す絶対角をそれぞれ取得し、取得した自車両の向きと対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算してもよいし、自車両の向きを基準とした対象車両の向きを第1対象角として演算してもよい。絶対角は、例えば、北を基準とした時計回り方向の角度である。なお、絶対角の基準となる方位は北以外であってもよい。
【0039】
対象角演算部13は、対象車両の向きと周囲車両の向きとのなす角を第2対象角として演算する。また、対象角演算部13は、対象車両の向きと車線境界線の向きとのなす角を第3対象角として演算する。第2対象角及び第3対象角の演算方法は、第1対象角の演算方法と同様である。
【0040】
確信度演算部14は、対象角演算部13によって演算される第1対象角に基づいて、自車両30が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度を演算する。確信度演算部14は、第1対象角が大きくなるに従って誤方向確信度が大きくなるように、誤方向確信度を演算する。
図3は、第1対象角と誤方向確信度との関係の一例を示す図である。第1対象角は、0(deg)~90(deg)の範囲の角度である。
図3で示されるように、確信度演算部14は、第1対象角が大きくなるに従って誤方向確信度が連続的に大きくなるように誤方向確信度を演算する。なお、本実施形態における「誤った方向」とは、自車両30の進行方向前方の道路の向きに沿わない方向を示す。
【0041】
例えば、
図2Cで示されるように第1対象角が小さい場合には、誤方向確信度は小さく演算される。すなわち、自車両30の向きと対象車両の向きとが同じ方向である場合には、自車両が誤った方向に進行している可能性は低いため、誤方向確信度は小さい値になる。一方で、
図2Bで示されるように第1対象角が大きい場合には、誤方向確信度は大きく演算される。すなわち、自車両の向きと対象車両の向きとが大きく異なる場合には、自車両30が自車両の進行方向前方の交差道路に対して誤った方向に進行している可能性が高いため、誤方向確信度は大きい値になる。
【0042】
また、本実施形態では、誤方向確信度は、第1対象角が大きくなるに従って連続的に大きくなるよう演算されることとしているが、これに限らず、誤方向確信度は、第1対象角が大きくなるに従って段階的に大きくなるよう演算されることとしてもよい。確信度演算部14は、第1対象角が所定の閾値以上であるか否かを判定し、第1対象角が所定の閾値以上である場合には、第1対象角が所定の閾値以上ではない場合よりも、誤方向確信度をより大きく演算する。
【0043】
また、確信度演算部14は、対象角演算部13によって演算される第2対象角に基づいて、対象車両が進行すべき方向に進行している可能性の高さを示す適正方向確信度を演算し、演算した適正方向確信度に基づいて、誤方向確信度を演算することとしてもよい。適正方向確信度は、自車両30が誤った方向に進行している可能性を判断するために対象車両の向きを用いることができるか否かを示す指標である。本実施形態では、対象車両の向きが自車両30の進行方向にとって正しい方向であることを前提として、対象車両の向きを基準に誤方向確信度を演算しているが、対象車両自体が正しい方向に進行していない可能性もある。そのため、適正方向確信度を誤方向確信度の演算に用いることで、自車両30が誤った方向に進行している可能性をより正確に判断できる。本実施形態における「正しい方向」とは、自車両30の進行方向前方の道路の向きに沿った方向を示す。
【0044】
確信度演算部14は、対象車両の周辺において周囲車両が認識された場合には、第2対象角が小さくなるに従って適正方向確信度が大きくなるように適正方向確信度を演算する。例えば、確信度演算部14は、対象車両を起点として車幅方向に所定距離の範囲内に周囲車両が位置し、かつ、第2対象角が所定の閾値以下である場合に、第2対象角が小さくなるに従って連続的に適正方向確信度が大きくなるように適正方向確信度を演算する。第2対象角は、対象車両の向きと周囲車両の向きとのなす角である。すなわち、第2対象角が小さい場合には、対象車両は、周囲車両と同じ方向に進行していることになる。複数の車両が同じ方向に進行していると考えられることから、当該方向は正しい方向である可能性が高い。そのため、第2対象角が小さいほど、適正方向確信度が大きく演算される。
【0045】
また、確信度演算部14は、第2対象角が小さくなるに従って段階的に適正方向確信度が大きくなるように適正方向確信度を演算してもよい。確信度演算部14は、第2対象角が所定の閾値以下であるか否かを判定し、第2対象角が所定の閾値以下である場合には、第2対象角が所定の閾値以下ではない場合よりも、適正方向確信度をより大きく演算する。
【0046】
図4A、
図4Bは、対象車両の向きと周囲車両の向きとの関係の一例を示す図である。例えば、
図4A、
図4Bでは、対象車両V2が進行方向D2に走行し、対象車両V2の周辺に周囲車両V3が位置する。
図4Aでは、対象車両V2の進行方向D2を対象車両の向き、周囲車両V3の進行方向D3を周囲車両の向きとして、対象車両の向きと周囲車両の向きとが平行である。このように第2対象角が小さい場合には、適正方向確信度は大きくなる。また、
図4Bでは、対象車両V2の進行方向D2を対象車両の向き、周囲車両V3の進行方向D3を周囲車両の向きとして、対象車両の向きと周囲車両の向きとが大きく異なる。このように第2対象角が大きい場合には、適正方向確信度は小さくなる。
【0047】
また、確信度演算部14は、第2対象角に限らず、第3対象角に基づいて、適正方向確信度を演算してもよい。確信度演算部14は、対象車両の周辺において車線境界線が認識された場合には、第3対象角が小さくなるに従って適正方向確信度が大きくなるように適正方向確信度を演算する。例えば、確信度演算部14は、対象車両を起点として車幅方向に所定距離の範囲内に白線が位置し、かつ、第3対象角が所定の閾値以下である場合に、第3対象角が小さくなるに従って連続的に適正方向確信度が大きくなるように適正方向確信度を演算する。第3対象角は、対象車両の向きと車線境界線の向きとのなす角である。すなわち、第3対象角が小さい場合には、対象車両は、周囲の車線境界線と同じ方向に進行していることになる。対象車両が周囲の車線境界に沿って進行していると考えられることから、対象車両の向きは正しい方向である可能性が高い。そのため、第3対象角が小さいほど、適正方向確信度が大きく演算される。
【0048】
また、適正方向確信度は、第3対象角が大きくなるに従って段階的に大きくなるように演算されることとしてもよい。確信度演算部14は、第3対象角が所定の閾値以下であるか否かを判定し、第3対象角が所定の閾値以下である場合には、第3対象角が所定の閾値以下ではない場合よりも、適正方向確信度をより大きく演算する。
【0049】
図5A、
図5Bは、対象車両の向きと車線境界線の向きとの関係の一例を示す図である。例えば、
図5A、
図5Bでは、複数の対象車両V2が進行方向D2に走行し、対象車両V2の周辺に車線境界線L1とL2が位置する。
図5Aでは、対象車両V2の進行方向D2を対象車両の向き、車線境界線L1及びL2の方向D3を車線境界線の向きとして、対象車両の向きと車線境界線の向きとが平行である。このように第3対象角が小さい場合には、適正方向確信度は大きくなる。
図5Bでは、対象車両V2の進行方向D2を対象車両の向き、車線境界線L1及びL2の進行方向D3を車線境界線の向きとして、対象車両の向きと車線境界線の向きとが大きく異なる。このように第3対象角が大きい場合には、適正方向確信度は小さくなる。
【0050】
確信度演算部14は、適正方向確信度を演算した後、演算した適正方向確信度と第1対象角とに基づいて、誤方向確信度を演算する。例えば、確信度演算部14は、適正方向確信度が大きくなるに従って第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率が大きくなるように第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率を設定する。例えば、確信度演算部14は、適正方向確信度が大きくなるに従って段階的に誤方向確信度の増加率が大きくなるように誤方向確信度の増加率を設定する。
図6は、適正方向確信度ごとの、第1対象角と誤方向確信度との関係の一例を示す図である。第1対象角は、0(deg)~90(deg)の範囲の角度である。
図6では、適正方向確信度に応じた、第1対象角と誤方向確信度との関係を表すグラフが示されている。
【0051】
本実施形態では、適正方向確信度が大きさに応じてあらかじめ段階的に区分分けされて、区分ごとに誤方向確信度の増加率が設定されている。例えば、適正方向確信度が大きさに応じて3つの区分(大きい順にC1、C2、C3)に区分され、
図6で示されるように、区分ごとに、第1対象角と誤方向確信度との関係が設定されている。第1対象角と誤方向確信度との関係において、適正方向確信度の区分によって誤方向確信度の増加率が異なる。例えば、区分C1における誤方向確信度の増加率は、区分C2における誤方向確信度の増加率より大きい。また、区分C2における誤方向確信度の増加率は、区分C3における誤方向確信度の増加率より大きい。
【0052】
確信度演算部14は、適正方向確信度を演算した後、演算した適正方向確信度に応じて、該当する適正方向確信度の区分を特定し、特定した区分に対応する第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率と、第1対象角とに基づいて、誤方向確信度を演算する。
【0053】
なお、確信度演算部14は、適正方向確信度に基づいて、第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率を大きく設定することにしているが、これに限らず、第2対象角又は第3対象角が小さくなるに従って、誤方向確信度の増加に対する閾値の増加率を大きく設定することとしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、確信度演算部14は、対象車両の周囲に位置する対象領域を特定し、対象領域の位置と、自車両の位置及び/又は自車進路とに基づいて、自車両が対象領域内に位置する、又は、自車進路が対象領域内を通るか否かを判定する。そして、確信度演算部14は、自車両30が対象領域内に位置する、又は、自車両の自車進路が対象領域内を通る場合に、適正方向確信度が大きくなるに従って誤方向確信度の増加率が高くなるように誤方向確信度の増加率を設定することとしてもよい。対象領域は、例えば、第2対象角が所定の閾値以下であるときの対象車両と周囲車両との間の領域である。すなわち、第2対象角が所定の閾値以下である場合に、対象車両と周囲車両との間に対象領域が特定される。なお、所定の時点における対象車両と周囲車両の位置関係から対象領域の位置が特定されるため、対象車両と周囲車両が移動している場合には、対象領域は、時系列順に特定された対象領域の位置の軌跡であってもよい。
【0055】
図7は、対象領域と自車両の自車進路との関係の一例を示す図である。例えば、
図7で示されるように、対象車両V2と周囲車両V3との間に対象領域A1が位置し、自車両V1の自車進路TLが対象領域A1を通る。このような場合に、確信度演算部14は、適正方向確信度が大きくなるに従って誤方向確信度の増加率が高くなるように誤方向確信度の増加率を設定する。また、自車両V1の自車進路が対象領域A1を通らない場合には、確信度演算部14は、適正方向確信度に基づいて、誤方向確信度の増加率を高く設定しない。
【0056】
また、対象領域は、第3対象角が所定の閾値以下である場合において、対象車両の周囲に位置する車線境界線で規定される車線内の領域である。第3対象角が所定の閾値以下である場合に、対象車両の周囲に位置する車線内の領域が対象領域として特定される。例えば、
図8では、対象車両V2の周囲に位置する車線境界線L1とL2とで規定される車線内に対象領域A1が存在し、自車両V1の自車進路TLが対象領域A1を通る。このような場合に、確信度演算部14は、適正方向確信度が大きくなるに従って誤方向確信度の増加率が高くなるように誤方向確信度の増加率を設定する。
【0057】
閾値設定部15は、アクセル操作が誤操作か否かを判定するための閾値を設定する。誤操作は、例えば、ブレーキペダルを踏もうとしてアクセルペダルを踏んでしまう踏み間違いである。閾値設定部15は、誤方向確信度に基づいて、自車両と対象車両との間の対象距離に対する所定の距離閾値を設定する。閾値設定部15は、誤方向確信度が大きくなるに従って所定の距離閾値が大きくなるように所定の距離閾値を設定する。例えば、閾値設定部15は、誤方向確信度が大きくなるに従って連続的又は段階的に所定の距離閾値が大きくなるように設定する。
【0058】
また、閾値設定部15は、誤方向確信度に基づいて、所定のアクセル開度閾値を設定する。閾値設定部15は、誤方向確信度が大きくなるに従って所定のアクセル開度閾値が小さくなるように所定のアクセル開度閾値を設定する。例えば、閾値設定部15は、誤方向確信度が大きくなるに従って連続的に又は段階的に所定のアクセル開度閾値が小さくなるように所定のアクセル開度閾値を設定する。
【0059】
また、閾値設定部15は、誤方向確信度に基づいて、アクセル開度の所定の変化率閾値を設定する。閾値設定部15は、誤方向確信度が大きくなるに従って所定の変化率閾値が小さくなるように所定の変化率閾値を設定する。例えば、閾値設定部15は、誤方向確信度が大きくなるに従って連続的に又は段階的に所定の変化率閾値が小さくなるように所定の変化率閾値を設定する。
【0060】
誤操作判定部16は、アクセル操作の入力があった場合には、アクセル操作の誤操作を判定するための所定の加速抑制条件を満たすか否かを判定する。例えば、誤操作判定部16は、自車両のアクセル操作時における自車両と対象車両との間の対象距離と、アクセル開度と、アクセル開度の変化率と、それぞれの閾値とに基づいて、所定の加速抑制条件を満たすか否かを判定する。所定の加速抑制条件は、自車両30のアクセル操作時における自車両30と対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たすことである。
【0061】
以上のように、本実施形態では、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角を用いて、自車両30の急加速を抑制する必要がある状況か否かを推定する。そして、自車両30の急加速を抑制する必要がある状況でアクセル操作が実行されたとき、アクセル操作が誤操作であると判定する。そのため、地図情報やセンサ情報を用いて、自車両30の急加速を抑制する必要がある状況か否かを推定できない場合であっても、自車両が誤った方向に進行している可能性を推定することで、アクセル操作が誤操作か否かを判定できる。
【0062】
例えば、本実施形態では、自車両30の進行方向前方の道路に白線がない場合や、白線があっても白線が検出できない場合にも、アクセル操作が誤操作であるか否かを判定できる。白線がない場合は、例えば、高速道路料金所の手前の道路など、白線はないが、料金所に向かって車両の流れができているような場合である。また、白線が検出できない場合は、例えば、白線がかすれている場合、光環境などで白線がセンサで認識しにくい場合、路面が雪で覆われていて白線が認識できない場合である。
【0063】
また、本実施形態では、白線が検出できる場合であっても、車両の挙動が白線に沿っていないが、車両の挙動のほうが正しいときに、アクセル操作が誤操作であるか否かを判定できる。例えば、他車両の進行方向前方に工事現場、事故車両等の障害物がある場合、他車両の進行方向前方に車線規制、車線の引き直しがある場合など、他車両がリアルタイムの周囲の道路状況に応じて、白線に沿わない挙動をしているときに、アクセル操作が誤操作であるか否かを判定できる。また、白線を誤検出していて、車両の挙動のほうが正しい場合にも、アクセル操作が誤操作であるか否かを判定できる。
【0064】
また、例えば、LIDARで検出する場合には、白線のような路面標示よりも立体物のほうが検出しやすい。本実施形態に係る運転支援装置7は、自車両周囲の他車両を検出して他車両の向きに基づいて、自車両が誤った方向に進行している可能性を推定するため、LIDARで白線を検出して、自車両が誤った方向に進行している可能性を推定するような技術よりも、誤った判定が生じることが少ない。また、ミリ波レーダーやソナーは、そもそも白線を検出できない上に、検出対象となった立体物が静止物である場合に、当該立体物の向きは判定できず、移動物の向きも正確に判定できない。
【0065】
また、本実施形態に係る運転支援装置7は、地図を用いて自車両が誤った方向に進行している可能性を推定する技術よりも、リアルタイムな周辺状況や地図が整備されていない場所でも対応できる。例えば、私有地、駐車場、高精度地図でないと対応できないような局所的な白線形状のある場所、地図の更新が遅れていて地図情報が現状の状況とは異なっている場所において、本実施形態に係る運転支援装置7は、より正確に自車両が誤った方向に進行している可能性を推定できる。
【0066】
制御指令生成部17は、誤操作判定部16によって所定の加速抑制条件を満たすと判定された場合には、アクセル制御装置20による加速を抑制する加速抑制指令を生成し、加速抑制指令をアクセル制御装置20に出力する。加速抑制指令は、例えば、加速度が加速度の最大値以下となるように自車両30を加速させる制御指令である。制御指令生成部17は、加速度の最大値を設定し、加速度が最大値以下となる加速抑制指令を生成する。加速抑制の方法は、加速度の抑制に限らず、速度、アクセル開度、アクセル開度の変化率のいずれかの抑制であってもよい。また、制御指令生成部17は、誤操作判定部16によって所定の加速抑制条件を満たさないと判定された場合には、アクセル操作に基づく加速制御を実行する制御指令を演算する。
【0067】
アクセル制御装置20は、コントローラ10から入力された制御指令に基づいて、自車両の走行速度を自律的に制御する。アクセル制御装置20は、コントローラ10から加速抑制指令が出力された場合には、加速度又は車速が最大値以下となるように自車両30のスロットルを制御する。また、アクセル制御装置20は、スロットル開度が通常のスロットル開度よりも小さくなるように制御してもよいし、スロットル開度の変化率が最大値以下になるように制御してもよい。
【0068】
次に、運転支援装置7によって実行される加速抑制制御に係る処理を説明する。
図9は、運転支援装置7における加速抑制制御を実行するための制御フローを示すフローチャートである。自車両30が走行を開始すると、コントローラ10は、ステップS1から制御フローを開始する。
【0069】
ステップS1では、コントローラ10は、自車両30の予測進路である自車進路を取得する。ステップS2では、コントローラ10は、対象車両を認識する。例えば、コントローラ10は、ステップS1で取得した自車進路から所定距離の範囲に位置する他車両を対象車両として認識する。ステップS3では、コントローラ10は、認識した対象車両の位置を取得する。ステップS4では、コントローラ10は、認識した対象車両の向きを取得する。
【0070】
ステップS5では、コントローラ10は、自車両30の向きを取得する。ステップS6では、コントローラ10は、第1対象角を演算する。例えば、コントローラ10は、ステップS5で取得した自車両30の向きとステップS4で取得した対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算する。ステップS7では、コントローラ10は、対象車両が進行すべき方向に進行している可能性の高さを示す適正方向確信度を演算する。ステップS8では、コントローラ10は、自車両30が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度を演算する。例えば、コントローラ10は、ステップS6で演算した第1対象角と、ステップS7で演算した適正方向確信度とに基づいて、誤方向確信度を演算する。なお、本実施形態では、適正方向確信度の演算せずに、第1対象角のみに基づいて誤方向確信度を演算してもよい。ステップS9では、コントローラ10は、ステップS8で演算した誤方向確信度に基づいて、アクセルの誤操作を判定するための閾値を設定する。閾値は、例えば、自車両30と対象車両との間の距離に対する所定の距離閾値、所定のアクセル開度閾値及びアクセル開度の所定の変化率閾値を含む。
【0071】
ステップS10では、コントローラ10は、アクセル操作があるか否かを判定する。アクセル操作があると判定した場合には、コントローラ10は、ステップS11に進む。アクセル操作がないと判定した場合には、コントローラ10は、ステップS1に戻り、以下フローを繰り返す。コントローラ10は、アクセル開度センサ1からアクセル操作の入力情報を取得した場合に、アクセル操作があると判定する。なお、本実施形態では、ステップS9で閾値を設定した後に、アクセル操作があるか否かを判定することとしているが、これに限らず、閾値を設定する制御とアクセル操作の有無を判定する制御とを所定の周期で並行して実行してもよい。
【0072】
ステップS11では、コントローラ10は、自車両30と対象車両との距離を検知する。ステップS12では、コントローラ10は、自車両30のアクセル開度を検出する。ステップS13では、コントローラ10は、自車両30のアクセル開度の変化率を検出又は演算する。ステップS14では、コントローラ10は、所定の加速抑制条件を満たすか否かを判定する。所定の加速抑制条件を満たすと判定した場合には、コントローラ10は、ステップS15に進む。所定の加速抑制条件を満たさないと判定した場合には、コントローラ10は、ステップS16に進む。所定の加速抑制条件は、アクセル操作時における自車両と対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たすことである。
【0073】
ステップS15では、コントローラ10は、加速抑制制御を実行する。例えば、コントローラ10は、所定の最大加速度を設定し、所定の最大加速度以下の加速で加速制御を実行する。ステップS16では、コントローラ10は、アクセル操作に基づく加速制御を実行する。本実施形態では、自車両が走行している間、閾値を更新し続け、アクセル操作があった場合に、その時点で設定されている閾値に基づいて、アクセル操作が所定の加速抑制条件を満たすか否かを判定する。これにより、加速を抑制する必要がある場面で、誤ったアクセル操作による加速を抑制できる。
【0074】
以上のように、本実施形態では、コントローラによって実行され、自車両の進行方向に存在する対象車両を認識し、自車両のアクセル操作時における自車両と対象車両との距離が所定の距離閾値以下であるという条件、アクセル開度が所定のアクセル開度閾値以上であるという条件、及び、アクセル開度の変化率が所定の変化率閾値以上であるという条件のうち少なくともいずれかひとつの条件を満たす場合には、アクセル操作に基づく加速を抑制する運転支援方法であって、コントローラは、自車両の向きと対象車両の向きとのなす角を第1対象角として演算し、第1対象角が大きくなるに従って、自車両が誤った方向に進行している可能性の高さを示す誤方向確信度が大きくなるように、誤方向確信度を演算し、誤方向確信度が大きくなるに従って、所定の距離閾値が大きくなるように所定の距離閾値を設定する、及び/又は、誤方向確信度が大きくなるに従って、所定のアクセル開度閾値及び/又は所定の変化率閾値が小さくなるように所定のアクセル開度閾値及び/又は所定の変化率閾値を設定する。これにより、自車両の前方における道路の方位情報を取得できない場合であっても、急なアクセル操作による急加速を適切に抑制できる。
【0075】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両の周囲に位置する周囲車両を認識し、対象車両の向きと周囲車両の向きとのなす角を第2対象角として演算し、第2対象角が小さくなるに従って、対象車両が進行すべき方向に進行している可能性の高さを示す適正方向確信度が大きくなるように、適正方向確信度を演算し、適正方向確信度が大きくなるに従って、第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率が高くなるように、増加率を設定する。これにより、対象車両の向きに加えて、対象車両以外の周囲の車両の向きを用いて自車両が誤方向に進行している可能性を評価できるので、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。なお、本実施形態では、適正方向確信度を求めずに、第1対象角に基づいて、誤方向確信度を演算することとしてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両と周囲車両との間の領域を対象領域として特定し、自車両の位置及び/又は自車両が走行する目標軌道を取得し、対象領域の位置と、自車両の位置及び/又は目標軌道とに基づいて、自車両が対象領域内に位置する、又は、目標軌道が対象領域内を通るか否かを判定し、自車両が対象領域内に位置する、又は、目標軌道が対象領域内を通る場合に、適正方向確信度が大きくなるに従って、増加率が高くなるように、増加率を設定する。これにより、対象車両以外の周囲の車両の向きに加えて、対象車両の位置と周囲の他車両の位置と自車両の位置又は目標軌道とを用いて自車両が誤方向に進行している可能性を評価できるので、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0077】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両の周囲に位置する車線の車線境界線を認識し、対象車両の向きと車線境界線の向きとのなす角を第3対象角として演算し、第3対象角が小さくなるに従って、対象車両が進行すべき方向に進行している可能性の高さを示す適正方向確信度が大きくなるように、適正方向確信度を演算し、適正方向確信度が大きくなるに従って、第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率が高くなるように、増加率を設定する。対象車両周囲の白線の向きを用いて自車両が誤方向に進行している可能性を評価できるので、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0078】
また、本実施形態では、コントローラは、車線内の領域を対象領域として特定し、自車両の位置及び/又は自車両が走行する目標軌道を取得し、対象領域の位置と、自車両の位置及び/又は目標軌道とに基づいて、自車両が対象領域内に位置する、又は、目標軌道が対象領域内を通るか否かを判定し、自車両が対象領域内に位置する、又は、目標軌道が対象領域内を通る場合に、適正方向確信度が大きくなるに従って、第1対象角の増加に対する誤方向確信度の増加率が高くなるように、増加率を設定する。これにより、対象車両の周囲の白線の向きに加えて、白線と自車両の位置又は目標軌道とを用いて自車両が誤方向に進行している可能性を評価できるので、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0079】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両及び/又は周囲車両が移動している移動方向を対象車両の向き及び/又は周囲車両の向きとして取得する。これにより、対象車両の向きを簡易に取得できるので、処理負荷を増大させることなく、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0080】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両及び/又は周囲車両の長手方向を対象車両の向き及び/又は周囲車両の向きとして取得する。これにより、対象車両の向きを簡易に取得できるので、処理負荷を増大させることなく、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0081】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両及び/又は周囲車両の車輪の向きを対象車両の向き及び/又は周囲車両の向きとして取得する。これにより、対象車両の向きを簡易に取得できるので、処理負荷を増大させることなく、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0082】
また、本実施形態では、コントローラは、対象車両及び/又は周囲車両の車体に備えられた外装部品を認識し、外装部品の車体における位置に基づいて、車体の前端面、後端面及び/又は側面を特定し、特定した前端面、後端面及び/又は側面の向きに基づいて、対象車両及び/又は周囲車両の向きを推定する。これにより、対象車両の向きを簡易に取得できるので、処理負荷を増大させることなく、アクセル操作が踏み間違いか否かをより適切に判定できる。
【0083】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0084】
100…運転支援システム
7…運転支援装置
10…コントローラ
11…自車進路取得部
12…周囲認識部
13…対象角演算部
14…確信度演算部
15…閾値設定部
16…誤操作判定部
17…制御指令生成部
20…アクセル制御装置