(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008089
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ダイレクトドライブ駆動クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 11/00 20060101AFI20240112BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240112BHJP
B66C 9/14 20060101ALI20240112BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B66C11/00
H02K7/116
B66C9/14
B66D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109645
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【テーマコード(参考)】
3F203
5H607
【Fターム(参考)】
3F203CA01
3F203CA03
3F203DA02
3F203DA09
3F203FA01
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】クレーンのワイヤドラムに、減速機を介さずにダイレクトにモータを取り付け、コンパクトで製作しやすく、省エネルギでメンテナンス性にも優れたダイレクトドライブ駆動クレーンを提供すること。
【解決手段】クレーンのワイヤドラムWDの両側の軸を軸受BBを介してクラブフレームCFに荷重を支持し、ワイヤドラムWDの軸に、減速機を介さずにダイレクトにモータDMの回転軸が取り付けられ、モータDMの固定子と一体の外フレームは、ワイヤドラムWDに巻かれたワイヤロープWRが繰り出す方向に、モータフレームのベースMBがクラブフレームCFのベースCBに置かれ、ワイヤロープWRが吊り下げる荷重がワイヤドラムWDをワイヤロープWRが繰り出し方向に引っ張る力で、モータフレームのベースMBがクラブフレームCFのベースCBに押し付けられるようにし、荷重が軽い時に、モータフレームのベースMBのクラブフレームCFのベースCBからの浮き上がりを防止する引っ掛かり装置SPを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのワイヤドラムの両側の軸を軸受を介してクラブフレームに荷重を支持し、該ワイヤドラムの軸に、減速機を介さずにダイレクトにモータの回転軸が取り付け、該モータの固定子と一体の外フレームは、該モータフレームのベースが、ワイヤドラムに巻かれたワイヤロープが繰り出す方向のクラブフレームのベースに置かれ、ワイヤロープが吊り下げる荷重がワイヤドラムをワイヤロープが繰り出し方向に引っ張る力で、該モータフレームのベースがクラブフレームのベースに押し付けられることで該モータがクラブフレームにフレキシブルに固定される構造とし、荷重が軽い時に、加減速時に発生する慣性力により、該モータフレームのベースがクラブフレームのベースから浮き上がろうとする力に対して、引っ掛かり装置を設けることで浮き上がりを防止する構造を有することを特徴とするダイレクトドライブ駆動クレーン。
【請求項2】
前記ワイヤドラムの軸に単数或いは複数個のモータを串刺し状に嵌め込み、嵌め込むモータの数を変えることで出力調節を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブ駆動クレーン。
【請求項3】
水平移動用の車輪の軸に、減速機を介さずにダイレクトにモータの回転軸が取り付けられ、該モータの固定子と一体の外フレームは、クレーンのフレームに回り止めアームでフレキシブルに正転方向及び逆転方向への動きを固定する水平移動装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイレクトドライブ駆動クレーン。
【請求項4】
水平移動用の車輪に歯車を固定し、該歯車とモータの回転軸に取り付けた小歯車を噛み合わせる構造の水平移動装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイレクトドライブ駆動クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機を介さずにモータから直接負荷を駆動する所謂ダイレクトドライブ駆動機構を採用したクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ等では、ダイレクトドライブ技術を用いることにより、機械室を無くした省スペースエレベータや乗り心地のよい高速エレベータ等が既に一般的に採用され(例えば、特許文献1参照。)、それに伴い大容量のダイレクトドライブ用モータも製作されている。
この大容量のダイレクトドライブ用モータは、クレーンで必要とされる大容量のモータに転用可能なものであり、このような技術的背景より、クレーンにおいても、減速機を無くしたシンプルでコンパクトなダイレクトドライブ駆動クレーンの実現が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クレーンの巻上装置のワイヤドラムにダイレクトドライブ用モータを直結し、このモータにワイヤドラムを支持させると、クレーン操作の地切り操作不良等に起因するワイヤドラムに掛かる衝撃が直接モータフレームに掛かるため、モータフレームに亀裂等の破損が生じるという問題がある。
【0005】
また、クレーンのワイヤドラムに荷重が掛かると、それに伴いワイヤドラムに撓みが発生し、それに伴ってモータ軸とワイヤドラム軸との間に軸芯ズレが発生する。そこで、この軸芯ズレを吸収するためにカップリングを介在させると、ワイヤドラムの外側に大きく張り出す構造となるため、寸法的にカップリングの採用が困難であった。
【0006】
本発明は、上記クレーンの巻上装置のワイヤドラムにダイレクトドライブ用モータを適用する場合の問題点に鑑み、クレーンのワイヤドラムに、減速機を介さずにダイレクトにモータを取り付け、コンパクトで製作しやすく、省エネルギでメンテナンス性にも優れたダイレクトドライブ駆動クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンは、クレーンのワイヤドラムの両側の軸を軸受を介してクラブフレームに荷重を支持し、該ワイヤドラムの軸に、減速機を介さずにダイレクトにモータの回転軸が取り付け、該モータの固定子と一体の外フレームは、該モータフレームのベースが、ワイヤドラムに巻かれたワイヤロープが繰り出す方向のクラブフレームのベースに置かれ、ワイヤロープが吊り下げる荷重がワイヤドラムをワイヤロープが繰り出し方向に引っ張る力で、該モータフレームのベースがクラブフレームのベースに押し付けられることで該モータがクラブフレームにフレキシブルに固定される構造とすることで、モータが荷重が引っ張る方向に回るのを防止し、かつ、モータの発生トルクで荷重を支持し上下に動作させることを可能とする。
また、荷重が軽い時に、加減速時に発生する慣性力により、該モータフレームのベースがクラブフレームのベースから浮き上がろうとする力に対して、引っ掛かり装置を設ける
ことで浮き上がりを防止する構造を有することで浮き上がりを防止する。
これにより、クレーン操作の地切り操作不良等に起因するワイヤドラムに掛かる衝撃が直接モータフレームに掛かるのを防止するのと同時に、ワイヤドラムの撓み寸法は、該モータフレームのベースとクラブフレームのベースの接触位置がズレることで芯振れが無くなり、カップリングが介在しないコンパクトな配置が可能となり、かつ、軸芯合わせ作業が不要になり低コストの作りやすいクレーンを実現できる。
【0008】
この場合において、前記モータが特殊な専用モータとなることから、ワイヤドラムの軸に単数或いは複数個のモータを串刺し状に嵌め込み、嵌め込むモータの数を変えることで出力調節を行うようにすることができる。
これにより、モータの種類を抑えてモータ生産数を確保し、モータの量産効果によりコストを抑制することができるようにし、さらに、モータと制御装置の生産と在庫の確保を容易とし、安定的なクレーン生産を確保するとともに、クレーンの稼働後には、在庫のモータと制御装置により迅速な部品供給を提供することができるものとなる。
【0009】
また、クレーンの横行や走行などの水平移動部分は、水平移動用の車輪の軸に、減速機を介さずにダイレクトにモータの回転軸が取り付けられ、該モータの固定子と一体の外フレームは、クレーンのフレームに回り止めアームでフレキシブルに正転方向及び逆転方向への動きを固定する水平移動装置を備えることができる。
これにより、減速機やカップリングを介さずに、モータで水平移動用の車輪を直接駆動することができ、コンパクトな構造で、かつ、組み立て工数の少ない低コストで作りやすいクレーンを実現できる。
【0010】
また、クレーンの横行や走行などの水平移動部分の速度が遅いクレーンにおいては、水平移動用の車輪に歯車を固定し、該歯車とモータの回転軸に取り付けた小歯車を噛み合わせる構造の水平移動装置を備えることができる。
これにより、水平移動部分の速度が遅いクレーンにおける、コンパクトな構造で、かつ、組み立て工数の少ない低コストで作りやすいクレーンを実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンによれば、クレーンのワイヤドラムに荷重が掛かることにより生ずる該ワイヤドラム撓みによるワイヤドラム軸とモータ軸との芯ズレの問題を解消し、カップリングを介さずにワイヤドラムとモータをダイレクトに連結することを可能とし、コンパクトで作りやすいクレーンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの巻上装置の構造説明図である。
【
図2】本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの水平動作部分の駆動装置の構造説明図である。
【
図3】本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの水平動作が低速の場合の該水平動作部分の駆動装置の構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの実施の形態について、図面を用いて実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1に、本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの巻上装置の構造説明図を示す。
クレーンのワイヤドラムWDにワイヤロープWRが吊り下げる荷重Wの力が加わると、ワイヤドラムWDの中央が下側に僅かに湾曲し、両側が上に僅かに反りあがる。この時、クラブフレームCFの変形はワイヤドラムWDの支点位置と異なるため、クラブフレーム
CFとワイヤドラムWDの変形が同期せず、クラブフレームCF上に配置された回転機器間の軸の連結部に芯ズレが生じる。
このクラブフレームCF上に配置された回転機器間の軸の連結部の芯ズレは、クラブフレームCFの四隅の車輪WHの接地面であるクレーンガーダCGが完全な平面ではないため、クラブの水平移動に伴いクレーンガーダCGの僅かな形状変化に応じてクラブフレームCFも僅かに変形することでも生じる。
また、建屋のランウエイガーダが完全な平面でない所をクレーンが水平移動をすることでも同じく発生している。
このワイヤドラムの撓みによる変形を生じさせる伝達軸の芯ズレを吸収するために、従来は減速機とワイヤドラムWDの間にカップリングを介したり、ワイヤドラムWDに取り付けられた歯車とそれと組み合わされる小歯車の歯当たり部がズレることで吸収したり、或いは減速機の箱体の強度で、ワイヤドラムの撓みによる変形を無理やり拘束させる方法が取られていた。
【0015】
ところで、ワイヤドラムWDとモータDMを直接連結する方式を既に実用化しているエレベータにおいては、ワイヤドラムWDの変形は、モータの回転子と固定子のギャップで吸収される構造が採用されている。
しかしながら、クレーンのワイヤドラムWDは、ワイヤロープWRの巻き取り量が長いため、ワイヤドラムWDの長さも長く、ワイヤドラムWDの撓み量もそれに伴い大きくなる。
このため、クレーンでエレベータと同様に、モータの回転子と固定子のギャップで吸収する方法を採用すると、ギャップ不均衡による乱調が発生し過電流トリップに至ったり、極端な場合はモータの回転子と固定子が接触する不具合も生じる。
このため、クレーンに適したワイヤドラムWDとモータDMの取り合い方法が求められる。
【0016】
さらに、クレーン特有の問題として、クレーンのワイヤドラムWDに直接モータDMを取り付けてモータDMでワイヤドラムを支持する構造を採用すると、地切り操作を荒く行った時の衝撃荷重や、誤って地上固定物を吊り上げる地球吊りを行った場合等、モータDMにその過大な力が掛かってしまい、モータDMを破損してしまう。
このため、負荷側からの衝撃荷重がモータDMに直接掛からない構造が求められていた。
【0017】
このようなクレーン特有の問題を解消するため、
図1に示す本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの巻上装置の構造は、ワイヤドラムWDを両側で軸受BBを介してクラブフレームCFにより支持することで、地切り操作を荒く行った時の衝撃荷重や、誤って地上固定物を吊り上げる地球吊りを行った場合でも、高価なモータDMにその力が直接掛からないようにしている。
そして、ワイヤドラムWDの軸にモータDMの回転子側である中空ボスを嵌め込み、キー或いはスプラインなどにより回転方向に固定し、モータDMの固定子側であるモータフレームは、モータフレームのベースMBの面を、クラブフレームCFのベースCB、すなわち、クラブフレームCF側に設けたモータ受け用のベースCBの面に当てる形で固定をせずに設置する。この時、モータフレームのベースMBとクラブフレームCF側に設けたモータ受け用のベースCBの当たる面は、荷重WがワイヤロープWRを引っ張った時に発生する回転力を押さえる方向に接している。荷重WがワイヤロープWRを引っ張る力でモータフレームのベースMBがクラブフレームCF側に設けたモータ受け用のベースCBに押さえ付けられることでモータDMは固定されるが、ボルトなどで固定をせずに、ただ置かれているだけなので、ワイヤドラムWDが荷重Wの力で撓むことでワイヤドラム軸が反りあがることに連動してモータDMも移動し軸ズレは生じない。この時、モータフレームのベースMBとクラブフレームCF側に設けたモータ受け用のベースCBの接する面が僅
かにズレることでワイヤドラムWDの変形に連動するモータDMの位置ズレが解消される。
この構造を採用することにより、モータDMに過大な力が機械構造的に掛からない構造としモータが破損することを防止している。
さらに、本構造において、負荷から過大な力が加えられようとしても、モータDMのトルクリミッタ値に抑えられ、モータDMの固定子と回転子との間でスリップすることで、各部に過大な力が掛かることを電気制御的に防止される。
【0018】
クレーンの巻上装置の負荷、すなわち、クレーンのワイヤドラムWDに掛かる負荷は、ワイヤロープWRに掛かる荷重が引っ張る力WFが一方向のみにしか掛からないのが特徴で、
図1に示すようにモータDMをクラブフレームCFにボルト等で固定しなくても、モータフレームのベースMBがクラブフレームCF側に設けたモータ受け用のベースCBに一方向に押し付けられて固定される。
しかしながら、荷重Wが軽い時、巻き取り方向の回転を減速させる時と、巻き下げ方向の回転を加速する時に、ワイヤドラムWDとモータDMのロータ部が持つ慣性力が、荷重Wが引っ張る力WFより大きい時は、その大きい分の力がモータフレームのベースMBを、クラブのモータ受けベースCBから浮き上がらせる力として作用する。この浮き上がりの力を抑えるために、浮き上がり防止SPが設けてあり、この浮き上がり防止SPはワイヤドラムWDの撓み等による芯ブレを許容するために、僅かなガタ寸法を設けて取り付けるようにしている。
このガタ寸法はワイヤドラムWDの撓み等による軸芯のズレを許容する最小の寸法に調節されており、かつ、皮材やゴム材等の緩衝材により隙間を埋めることにより、モータの微動を許容しながら浮き上がり力が生じた時の衝撃を無くしている。
【0019】
クレーンの巻上装置は吊り上げられる荷重値や巻上速度が様々であることから、様々な容量のモータDMが必要となる。しかしながら、ダイレクトにワイヤドラムWDを駆動できるモータDMは専用特殊モータとなり、生産台数が少ないと割高になってしまう。
そこで、
図1に示すように、ワイヤドラムWDの軸に複数台のモータDM(本実施例では3台。)を串刺し状に取り付ける構造とすることにより、モータ容量の種類を減らし、同一のモータの生産台数を増やし、量産効果によりコストを抑制することができるようにし、さらに、モータと制御装置の生産と在庫の確保を容易とし、安定的なクレーン生産を確保するとともに、クレーンの稼働後には、在庫のモータと制御装置により迅速な部品供給を提供することできるものとなる。
なお、1つの軸にキー等で串刺し状態にすることで、使用するモータが同期モータであったとしても、串刺しされている各モータの回転子の磁極位置を精度よく同一位置に合わせることが可能となり、固定子側を止めているクラブフレームCF側に設けたモータ受け用のベースCBを一体機械加工により同一レベル高さに精度よく加工することと、浮き上がり防止装置を同じ隙間寸法とすることで、各モータの回転子と固定子の相対位置を同一とすることができる。
これにより、並列に串刺し配置された同期モータも円滑に並列駆動をすることができる。
なお、モータDMとワイヤドラムWDの軸の取り合いをスプラインとする場合は、組み立て時にスプラインの歯がズレないようにマーキングを施すなどの配慮が必要となる。
【0020】
横行や走行などクレーンの水平移動部分を減速機を用いずに車輪WHをダイレクトにモータDMで駆動する構造説明図を
図2に示す。
車輪WHの両側を軸受BBで支持された車輪WHの軸にモータDMの回転子側である中空ボスを嵌め込み、キー或いはスプラインなどにより回転方向に固定し、モータDMの固定子側であるモータDMのフレームは、モータDMの回転子が駆動力を発することによる反力で固定子に生じる正転側或いは逆転側への回転力に対し固定子を固定するために、回
り止めアームARによりモータDMの固定子を、若干のガタを持たせてクレーンフレームGFに固定されている。
このガタは、クレーンの水平移動によるクレーンフレームGFの僅かな変形に対応するものである。なお、モータDMの速度制御装置により加速時は低速から起動し線形加速を行い、減速時は線形減速で低速に減速後に停止させることで、このガタによる起動停止時のガタツキやショックは生じない。
図2の構造を採用することで、車輪軸とモータ軸のカップリングが不要なコンパクトな構造とすることが可能となり、製作組み立て時には車輪軸とモータ軸の芯合わせが不要で、製作しやすい安価な構造とすることができる。
【0021】
横行や走行などクレーンの水平移動部分の車輪WHを駆動する場合の方法として、その水平移動部分の速度が遅い場合には、
図3に示すように、車輪WHと一体固定された車輪歯車GRを、モータDMの出力軸に組み込まれた小歯車PNと噛み合わせることで駆動することができる。この場合、クレーンフレームGFの僅かな変形は車輪歯車GRと小歯車PNの噛み合わせ状態が僅かにズレることで吸収される。
この時、車輪歯車GRと小歯車PNの歯面形状を、歯幅方向に僅かに曲面を付けるクラウニング加工を行うことにより、車輪歯車GRと小歯車PNの噛み合わせのズレが円滑に行われる。
【0022】
クレーンを製造する時の組み立て作業においては、回転軸の継ぎ合わせ部の芯だし作業に、多くの時間を費やしている。
本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンの構造は、その芯だし作業の負担を解消することができる構造で、組み立てやすい構造を実現している。
また、減速機を無くすことにより、減速機の噛み合わせ部で生じる音や振動を解消し、高速運転にも対応しやすい構造となる。
また、減速機部分では約10~15%の機械ロスが発生しており、この減速機のロスが機械ロスの大部分を占めており、省エネルギに有効である。
そして、クレーンの巻上減速機には大量の潤滑油が入れられており、定期的に行う必要のあった油交換作業の負担を、減速機を無くしたことにより、解消することができる。
また、クレーンの巻上減速機はクレーンの機械部品の最も主たる部品であるが、減速機を無くしたことにより、機械故障リスクの低い信頼性の高いクレーンを実現できる。
【0023】
また、ダイレクトドライブ用のモータは、専用特殊モータであり緊急入手性に難点があるが、モータ容量の種類を限定し、モータの数でモータ容量を調節する方式を採用することで、モータと制御装置のロット生産と、クレーン生産のための在庫を容易とし、安定的なクレーン生産を可能とするとともに、該クレーンの稼働後においては、該クレーンを使用する顧客の要求に応じて即時にサービス部品の提供を在庫部品より行う体制を取ることができる。
【0024】
以上、本発明のダイレクトドライブ駆動クレーンについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明ダイレクトドライブ駆動クレーンによれば、コンパクトで組み立てやすく、省エネルギで定期的に出る減速機油の廃油処理も不要で、機械故障リスクも低く、歯車の噛み合いによる振動や騒音が無くなり、高速化の対応も容易になり、従来構造のクレーンには実現できなかった性能のクレーンを実現することができ、産業上有効に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
WD ワイヤドラム
DM ダイレクトドライブモータ
WR ワイヤロープ
W 荷重
CF クラブフレーム
WH 車輪
BB 軸受
BR ブレーキ
MB モータフレームのベース
CB クラブフレームのベース
CG クレーンガーダ
SP 浮き上がり防止
LS リミットスイッチ
WF 吊荷が引っ張る力
AR 回り止めアーム
GF クレーンフレーム
GR 車輪歯車
PN 小歯車