(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080895
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】制動トルク推定装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/171 20060101AFI20240610BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B60T8/171 Z
B60T13/74 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194237
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 信治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH68
3D048QQ07
3D048RR01
3D048RR02
3D048RR04
3D048RR11
3D048RR13
3D048RR25
3D048RR29
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA02
3D246EA05
3D246EA18
3D246GA25
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA13A
3D246HA26A
3D246HA28A
3D246HA35C
3D246HA38A
3D246HA41A
3D246HA64A
3D246HA81A
3D246HA93A
3D246HC04
3D246KA13
3D246KA15
3D246LA13Z
(57)【要約】
【課題】低コストで高精度に制動トルクを推定できる制動トルク推定装置を提供する。
【解決手段】本発明による制動トルク推定装置20は、タイヤが設けられた複数の車輪7を備える車両10に設置可能であり、車輪7の制動トルクTbiを算出する制動トルク算出部26を備え、車輪7の車輪速Vwiと、車両10の前後方向の加速度である前後加速度axとを入力する。制動トルク算出部26は、車輪速Vwiと、車輪7のタイヤ荷重Fziと、前後加速度axと、車輪7のタイヤ特性とに基づいて、車体速Vbと、車輪7のタイヤ前後力Fxiと、車輪7のスリップ率とを算出するとともに、算出したタイヤ前後力Fxiに基づいて制動トルクTbiを算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが設けられた複数の車輪を備える車両に設置可能であり、
前記車輪の制動トルクを算出する制動トルク算出部を備え、
前記車輪の車輪速と、前記車両の前後方向の加速度である前後加速度とを入力し、
前記制動トルク算出部は、前記車輪速と、前記車輪のタイヤ荷重と、前記前後加速度と、前記車輪のタイヤ特性とに基づいて、車体速と、前記車輪のタイヤ前後力と、前記車輪のスリップ率とを算出するとともに、算出した前記タイヤ前後力に基づいて前記制動トルクを算出する、
ことを特徴とする制動トルク推定装置。
【請求項2】
前記前後加速度を用いて前記タイヤ荷重を算出するタイヤ荷重推定部を備える、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項3】
スリップ率と摩擦係数との関係を前記タイヤ特性として求めるタイヤ特性推定部を備える、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項4】
前記タイヤ特性推定部は、前記タイヤ特性として、前記スリップ率と前記摩擦係数との間の比例係数である制動係数を求め、前記制動係数を、前記車両の加速時での前記前後加速度と前記車輪速と前記タイヤ荷重とに基づいて求める、
請求項3に記載の制動トルク推定装置。
【請求項5】
前記車両は、制駆動力を発生させる電動機又は内燃機関と、制動力を発生するブレーキ装置とを備え、
前記制動トルク算出部は、
1)前記車両の前記前後加速度が予め設定した範囲内にあること、
2)前記車輪速が予め設定した範囲内にあり、前記車両が直進走行中であること、
3)前記車両が走行する路面が予め設定した状況であること、
4)前記電動機によるトルクが予め設定した閾値より小さいこと、
5)前記内燃機関によるトルクが予め設定した閾値より小さいこと、
6)前記ブレーキ装置が動作中であること、
の6つの条件のうち少なくとも1つの条件を満たす場合に前記制動トルクを算出する、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項6】
前記車両は、制駆動力を発生させる電動機又は内燃機関と、制動力を発生するブレーキ装置とを備え、
前記制動トルク算出部は、算出した前記制動トルクから前記電動機によるトルク又は前記内燃機関によるトルクを減じることで、前記ブレーキ装置による制動トルクを求める、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項7】
前記車両は、制駆動力を発生させる電動機又は内燃機関と、制動力を発生するブレーキ装置とを備え、
前記制動トルク算出部は、算出した前記制動トルクを前記電動機によるトルク又は前記内燃機関によるトルクとすることで、又は、算出した前記制動トルクから計測された前記ブレーキ装置による制動トルクを減じることで、前記電動機によるトルク又は前記内燃機関によるトルクを求める、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項8】
前記制動トルク算出部は、前記車両が旋回して走行する場合には、前記車両の横方向の加速度と、前記車輪の操舵角と、前記車両の旋回時の横滑り角に依存する前記タイヤ特性とを用いて、前記制動トルクを算出する、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項9】
ブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置に接続されており、
前記ブレーキ装置は、前記車両に設置されており、電動モータを備える電動ブレーキ装置であり、
前記制動トルクを算出するときに、前記ブレーキ制御装置が前記電動モータの電流と前記電動モータの回転位置との少なくとも一方を記憶する、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項10】
前記タイヤ特性推定部は、前記タイヤ特性を求めるときに、前記車両が走行する路面の状況又は前記車両が走行する道路での天候情報を取得する、
請求項3に記載の制動トルク推定装置。
【請求項11】
ブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置に接続されており、
前記ブレーキ装置は、前記車両に設置されており、ブレーキパッドとディスクロータとを備え、
前記制動トルクを算出するときに、前記ブレーキ制御装置が前記ブレーキパッドの温度と前記ディスクロータの回転速度を記憶する、
請求項1に記載の制動トルク推定装置。
【請求項12】
前記車両は、前輪駆動又は後輪駆動であり、
前記タイヤ特性推定部は、前記タイヤ特性として、前記スリップ率と前記摩擦係数との間の比例係数である制動係数を求め、前記制動係数を、前記車両の加速時での前記タイヤ前後力と前記車輪速と前記タイヤ荷重とに基づいて求める、
請求項3に記載の制動トルク推定装置。
【請求項13】
前記車両は、4輪駆動であり、
前記タイヤ特性推定部は、前記タイヤ特性として、前記スリップ率と前記摩擦係数との間の比例係数である制動係数を求め、前記制動係数を、前記車両の加速時での前記前後加速度と、前輪と後輪の駆動力の比と、前記車輪速と、前記タイヤ荷重とに基づいて求める、
請求項3に記載の制動トルク推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動制御に用いられて車両の制動トルクを推定する制動トルク推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両運動制御では、タイヤ前後力、スリップ率、車体速、及び制動トルクを精度よく推定することで、車両に搭載されたアクチュエータをよりきめ細かく制御することが可能である。車両の運動は、例えば制動時には、推定した制動トルクに基づいて制御される。制動トルクは、車両の性能にとって重要な値であり、タイヤ前後力、スリップ率、及び車体速から求めることができる。推力センサ等を使用して制動トルクを推定すると、推定精度を上げることができるが、コストが増大するという課題がある。
【0003】
また、タイヤ前後力を推定する方法として、車体速と車輪速の差によるスリップ率を求める方法がある。この方法には、前後加速度を積分して車体速を推定すると定常偏差の除去が難しいという課題と、センサを付加するとコストがかかるというという課題がある。
【0004】
車体速や推力センサを使用せずに制動力を推定する従来の技術として、例えば特許文献1に記載された技術が提案されている。特許文献1に記載されたブレーキ装置は、車輪の接地荷重を推定する接地荷重推定部と、制動時の車輪の角速度と接地荷重から前後制動力比を推定し、前後制動力比に基づいて車輪の制動力を制御するための前後制動力補正値を演算する前後制動力補正値演算部と、制動時の車輪の角速度から車輪の制動力の左右差を小さくするための左右制動力補正値を演算する左右制動力補正値演算部と、制動力目標値と前後制動力補正値と左右制動力補正値に基づいて制動力指令値を演算する指令値演算部を備える。
【0005】
また、非特許文献1には、オブザーバを用いてスリップ率を推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-70022号公報
【非特許文献1】Thanh Vo-Duy、 Minh C. Ta、Slip Ratio Estimation for Traction Control of Electric Vehicles、 2018 IEEE Vehicle Power and Propulsion Conference (VPPC)、p.1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術には、制動トルクを精度よく推定することが難しいという課題があり、特に、制動トルクを推定するのに必要なタイヤ前後力、スリップ率、及び車体速を精度よく推定するのが困難である。
【0008】
特許文献1に記載の技術では、推定された車輪の接地荷重を用いて前後制動力を制御し、前輪と後輪の少なくとも一方で左右の制動力がほぼ等しい場合にタイヤ前後力を推定する。この技術では、左右の車輪に制動力の差がある場合には、タイヤ前後力を推定するのが困難である。
【0009】
非特許文献1に記載の技術では、車輪速とその微分値と前後加速度からスリップ率をオブザーバによって推定する。この技術では、オブザーバを用いることで推定の収束性が保障されるが、時々刻々の精度が保障されない点と、車輪速の微分値が必要な点が課題であり、また、車両運動制御に必要な値のうちスリップ率以外の値を推定できるか不明である。
【0010】
このように、従来の技術では、タイヤ前後力、スリップ率、及び車体速を精度よく推定するのが困難であり、制動トルクを精度よく推定するのが難しいという課題がある。また、制動トルクセンサや推力センサ等を使用すると制動トルクの推定精度を上げることができるが、コストの増大を防ぐために、これらのセンサを用いずに車両が一般的に備えるセンサのみを用いて制動トルクを精度よく推定したいという要望がある。
【0011】
本発明の目的は、低コストで高精度に制動トルクを推定できる制動トルク推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による制動トルク推定装置は、タイヤが設けられた複数の車輪を備える車両に設置可能であり、前記車輪の制動トルクを算出する制動トルク算出部を備え、前記車輪の車輪速と、前記車両の前後方向の加速度である前後加速度とを入力する。前記制動トルク算出部は、前記車輪速と、前記車輪のタイヤ荷重と、前記前後加速度と、前記車輪のタイヤ特性とに基づいて、車体速と、前記車輪のタイヤ前後力と、前記車輪のスリップ率とを算出するとともに、算出した前記タイヤ前後力に基づいて前記制動トルクを算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、低コストで高精度に制動トルクを推定できる制動トルク推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1による制動トルク推定装置を備える車両の構成例を示す図。
【
図2】実施例1による制動トルク推定装置の構成を示すブロック図。
【
図3】タイヤ特性である、スリップ率と摩擦係数との関係の例を示す図。
【
図4】横滑り角が変化したときの、スリップ率と摩擦係数との関係の例を示す図。
【
図5】本発明の実施例4による制動トルク推定装置の構成を示すブロック図。
【
図7】ブレーキ制御装置に接続された制動トルク推定装置を示す図である。
【
図8】本発明の実施例8におけるブレーキ制御装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による制動トルク推定装置は、タイヤが設けられた複数の車輪を備える車両に設置可能であり、車輪の車輪速と車両の前後加速度を用いてタイヤ特性(例えば、制動係数)とタイヤ荷重を推定でき、推定したタイヤ特性とタイヤ荷重を用いて車体速、スリップ率、タイヤ前後力、及び制動トルクを低コストで高精度に推定できる。スリップ率、タイヤ前後力、及び制動トルク等は、ブレーキ装置とタイヤによって個体差があり、ブレーキ装置とタイヤの摩耗等による経年変化によって変動する。本発明による制動トルク推定装置では、車体速、スリップ率、タイヤ前後力、及び制動トルクを、制動トルクセンサや推力センサを用いずに、車両が一般的に備えるセンサのみを用いて、低コストで精度よく推定することができる。本発明による制動トルク推定装置を用いると、車両の運動を低コストで高精度に制御することができる。
【0016】
以下、本発明の実施例による制動トルク推定装置を、図面を使用して説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一の又は対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0017】
本発明の実施例1による制動トルク推定装置について説明する。
【0018】
図1は、本実施例による制動トルク推定装置を備える車両10の構成例を示す図である。車両10は、コントローラ5、車輪7、車体8、車輪速センサ1、加速度センサ2、ジャイロセンサ3、操舵角センサ4、制動力を発生するブレーキ装置9、ブレーキペダル11、及び電源14を備え、さらに、図示していないが、制駆動力を発生させる内燃機関又は電動機、操舵装置、及びサスペンション等を備える。
【0019】
コントローラ5は、本実施例による制動トルク推定装置を備え、内燃機関、電動機、ブレーキ装置9、操舵装置、及びサスペンション等を制御する。コントローラ5は、自らが備える機能ごとに分けて設けられてもよく、上位のコントローラと下位のコントローラとに分けて設けられてもよい。本明細書では、このように分けられた複数のコントローラも、まとめてコントローラ5と呼ぶ。なお、コントローラ5は、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、及び通信装置等のハードウェアを備えて車両10を統括制御する計算機で構成することができ、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、様々な機能を実現する。
【0020】
以下の説明では、コントローラ5の上記の構成のような、周知技術の説明を省略することがある。
【0021】
車輪7は、車体8の前後左右の4か所に配置され、タイヤが設けられている。本実施例では、車両10は、4輪車であるとする。
【0022】
車輪速センサ1、加速度センサ2、ジャイロセンサ3、及び操舵角センサ4は、車両10が一般的に備えるセンサである。
【0023】
車輪速センサ1は、車体8の4か所にある車輪7の回転速度を検出する。車輪速センサ1は、例えば、車軸ハブ等に設置された回転部と、ナックルやブレーキキャリア等に設置された固定部との間の相対回転速度(車輪角速度)を検出するセンサで構成することができる。
【0024】
加速度センサ2は、車体8の重心に作用する加速度、すなわち車両10の前後方向の加速度(前後加速度)と横方向の加速度(横加速度)を検出する。
【0025】
ジャイロセンサ3は、車体8の重心周りの回転の角速度であるヨーレイトを検出する。
【0026】
操舵角センサ4は、車両10を運転する運転手の操舵によって生じるステアリングホイールの回転角又は車輪7の舵角である操舵角を検出する。
【0027】
ブレーキ装置9は、例えば電動ブレーキ装置であり、車体8の4か所にある車輪7のそれぞれに設けられる。すなわち、車両10は、左前輪用のブレーキ装置9FL、右前輪用のブレーキ装置9FR、左後輪用のブレーキ装置9RL、及び右後輪用のブレーキ装置9RRを備える。これらのブレーキ装置は、互いに同じ構造を備え、コントローラ5に制御される。以下では、これらのブレーキ装置9FL、9FR、9RL、9RRをまとめてブレーキ装置9と呼ぶ。なお、ブレーキ装置9は、電動ブレーキ装置ではなく、油圧ブレーキ装置でもよい。
【0028】
コントローラ5は、車両10の運転手によるブレーキペダル11の操作、車両10や車輪7の状態、及び車両10の外界についての各種情報等を基に、ブレーキペダル11の操作に応じた制御信号を、通信線12を介してブレーキ装置9に送信する。ブレーキ装置9は、電線13を介して電源14から供給された電力によって駆動する。
【0029】
コントローラ5は、本実施例による制動トルク推定装置の機能を備え、制動トルク推定装置が推定した制動トルクの値等を用いて、車両10を制動する。
図2を用いて、本実施例による制動トルク推定装置について説明する。
【0030】
図2は、本実施例による制動トルク推定装置20の構成を示すブロック図である。制動トルク推定装置20は、タイヤ荷重推定部21、タイヤ特性読込部25、制動トルク等推定部26、タイヤ特性推定部22、及びタイヤ特性記憶部24を備える。
【0031】
タイヤ荷重推定部21は、タイヤ荷重Fziを算出して推定する。タイヤ荷重Fziは、タイヤ上下力Fziとも呼ぶ。タイヤ荷重推定部21がタイヤ荷重Fziを算出する方法については、後述する。
【0032】
なお、添え字iは、車体8の4か所にある車輪7を区別する識別子であり、FL(左前輪)、FR(右前輪)、RL(左後輪)、及びRR(右後輪)のいずれか1つを表す。以下の説明でも、この添え字iを用いる。
【0033】
タイヤ特性読込部25は、タイヤ特性記憶部24が記憶しているタイヤ特性を入力する。このタイヤ特性は、タイヤのスリップ率と摩擦係数との関係を示す値である。タイヤ特性の例としては、後述するように、スリップ率と摩擦係数との間の比例係数である制動係数Kbiを挙げることができる。摩擦係数は、タイヤ接地面でタイヤが受ける前後力(タイヤ前後力Fxi)を、タイヤ接地面でタイヤが受ける上下力(タイヤ荷重Fzi又はタイヤ上下力Fzi)で割った値である。
【0034】
制動トルク等推定部26は、タイヤ荷重推定部21が算出したタイヤ荷重Fziと、タイヤ特性読込部25が得たタイヤ特性(例えば、スリップ率と摩擦係数との関係を示す値である制動係数Kbi)を用いて、タイヤ前後力、スリップ率、車体速、及び制動トルクを算出して推定する。以下では、タイヤ前後力、スリップ率、車体速、及び制動トルクをまとめて、「制動トルク等」とも呼ぶ。また、制動トルク等推定部26は、制動トルク算出部とも呼ぶ。
【0035】
制動トルク算出部である制動トルク等推定部26が、制動トルク等を算出する方法について説明する。
【0036】
図3は、タイヤ特性である、スリップ率と摩擦係数との関係の例を示す図である。
図3では、横軸がスリップ率で、縦軸が摩擦係数であり、両者の関係が曲線30で表されている。スリップ率と摩擦係数は、一般に、
図3に表すような関係にあることが知られている。
【0037】
スリップ率λiは、制動時は式(1)で表される。
【0038】
【0039】
ここで、Vbは車体速を示し、Vwiは車輪速を示す。車体速Vbは、車体8の速度(車体8の重心の速度)である。車輪速Vwiは、車輪7の回転速度であり、(タイヤ半径Ri×車輪角速度ωi)で求められ、車輪速センサ1で検出することができる。
【0040】
スリップ率λiは、駆動時(加速時)は式(2)で表される。
【0041】
【0042】
図3で、スリップ率が正の場合は、駆動時の摩擦係数を示し、スリップ率が負の場合は、制動時の摩擦係数を示す。すなわち、
図3のグラフにおいて、右上の領域が駆動時の特性を示し、左下の領域が制動時の特性を示す。
【0043】
図3に示すように、摩擦係数は、スリップ率が大きくなるにつれて大きくなるが、あるスリップ率でピークに達し、さらにスリップ率が大きくなると小さくなるという特徴をもつ。スリップ率の絶対値が小さい場合には、スリップ率と摩擦係数との間に線形の関係があり、両者の関係が破線で示した直線31で表される。
【0044】
上述したように、スリップ率の絶対値が小さい範囲では、スリップ率と摩擦係数とが比例の関係にあるので、この比例係数を制動係数Kbiとする。
【0045】
タイヤ前後力Fxiは、式(3)で求められる。
【0046】
【0047】
タイヤ前後力Fxiの全ての車輪7(4輪)についての合計値は、空気抵抗や車両10の傾斜等による重力の影響を除くと、車両10の運動方程式から式(4)で表される。
【0048】
【0049】
ここで、axは車両10の前後加速度であり、axseは加速度センサ2が検出した車体8の重心に作用する前後加速度、mbは乗員等を含めた車両10の質量である。記号Σは、添え字iについての和、すなわち、全ての車輪7(4輪)についての合計を示す。
【0050】
式(4)に示すように、車両10の前後加速度axは、加速度センサ2が検出した値axseであるとしてもよい。但し、車両10の前後加速度axは、前後加速度axseに含まれている車体8のピッチングに伴う重力加速度成分を除去することで、高精度に求めることができる。このため、車両10の前後加速度axは、式(5)を用いて求めることもできる。ここで、θyは車体8のピッチ角を示し、gは重力加速度を示す。
【0051】
【0052】
ピッチ角θyが小さい場合には、式(5)は、式(6)に近似できる。このため、ピッチ角θyが小さいとして、式(5)の代わりに、線形の近似式である式(6)を用いてもよい。
【0053】
【0054】
なお、車両10が傾斜角αで傾斜している場合には、式(4)の運動方程式は、重力の項が追加されて式(7)で表される。
【0055】
【0056】
また、ピッチ角θyと傾斜角αが小さいとすれば、車両10の前後加速度axは、加速度センサ2が検出した前後加速度axseを用いて、式(8)で求められる。
【0057】
【0058】
すると、タイヤ前後力Fxiの全ての車輪7(4輪)についての合計値は、式(7)、(8)から、加速度センサ2が検出した前後加速度axseを用いて、式(9)で求めることができる。
【0059】
【0060】
ここで、ピッチ角θyは、前後加速度とピッチ剛性の関係を用いて算出することができる。
【0061】
また、タイヤ前後力Fxiを計算する際に空気抵抗の影響を考慮する場合には、例えば式(4)の運動方程式を用いて、式(10)のようにタイヤ前後力Fxiの全ての車輪7(4輪)についての合計値が求められる。
【0062】
【0063】
ここで、Aは車両10の前面投影面積、Cは空気抵抗係数、ρは空気の密度である。車体速Vbは、求めたい値(制動トルク等に含まれる値)であるので、式(10)では、直近の過去に求めた値や車輪速Vwiを車体速Vbとする。
【0064】
式(9)又は式(10)を用いることで、タイヤ前後力Fxiの合計値をより精度よく求めることができる。
【0065】
一方、制動時には、タイヤ前後力Fxiの全ての車輪7(4輪)についての合計値は、式(3)に式(1)を代入することで、式(11)で表される。
【0066】
【0067】
式(11)を車体速Vbについて解くと、車体速Vbを表す式として式(12)が得られる。
【0068】
【0069】
式(12)を式(1)に代入すると、各輪のスリップ率λiを表す式として式(13)が得られる。
【0070】
【0071】
式(13)を式(3)に代入すると、各輪のタイヤ前後力Fxiを表す式として式(14)が得られる。
【0072】
【0073】
以上から、車体速Vb、各輪のスリップ率λi、各輪のタイヤ前後力Fxiは、加速度センサ2が検出した前後加速度axseを用いて算出可能な全ての車輪7についてのタイヤ前後力Fxiの合計値と、それぞれの車輪7のタイヤ荷重Fzi(タイヤ上下力Fzi)と、制動係数Kbiと、車輪速Vwiを用いて求められることがわかる(式(12)-式(14))。
【0074】
なお、制動トルク等推定部26は、制動係数Kbiとして、タイヤ特性読込部25がタイヤ特性記憶部24から入力した値を用い、全ての車輪7のタイヤ荷重Fziとして、タイヤ荷重推定部21が推定した値を用いる。
【0075】
なお、以上の説明では、車両10の全ての車輪7(4輪)の間で制動係数Kbiが異なる場合について述べた。4つの車輪7は、同じタイヤを用いて同じような状況の路面を走行していると考えられる場合には、タイヤ特性に大きな違いがなく、同一の制動係数Kbでタイヤ特性が表されると仮定することができる。全ての車輪7が同一の制動係数Kbを持つとすると、式(12)-(14)は、それぞれ式(15)-(17)のように表される。但し、ΣFziをmb×gに置き換えている。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
すなわち、車体速Vb、各輪のスリップ率λi、各輪のタイヤ前後力Fxiは、各輪の制動係数Kbiに変えて、全ての車輪7に対して同一の値を持つ制動係数Kbを用いて求めることができる。
【0080】
制動時のタイヤ前後力Fxiと制動トルクの関係は、走行抵抗を無視すると、式(18)で表される。
【0081】
【0082】
ここで、Iiは車輪7の慣性モーメントを示し、Tbiは制動トルクを示し、Riはタイヤ半径を示し、ωiは車輪角速度を示す。なお、ωi×Ri=Vwiの関係がある。
【0083】
制動トルクTbiは、式(18)から式(19)のように算出できる。
【0084】
【0085】
式(19)において慣性項を値が小さいので無視すると、制動トルクTbiを表す式として式(20)が得られる。
【0086】
【0087】
ここで、減速時は、タイヤ前後力Fxiが負の値で、制動トルクTbiが正の値としている。
【0088】
制動トルクTbiには、ブレーキ装置9による制動トルクと、電動車両における電動機によるトルクと、内燃機関によるトルクが含まれる。電動機によるトルクは、回生ブレーキトルクと呼ばれ、内燃機関によるトルクは、エンジンブレーキトルクと呼ばれる。回生ブレーキトルクとエンジンブレーキトルクは、駆動トルクと呼ばれる。制動トルク等推定部26は、これらの駆動トルクを既存技術に従って推定することができる。
【0089】
制動トルク等推定部26は、ブレーキ装置9による制動トルクを、制動トルクTbiから駆動トルク(回生ブレーキトルク又はエンジンブレーキトルク)を減じることで求めることができる。
【0090】
また、ブレーキ装置9による制動トルクに比べ、回生ブレーキトルクとエンジンブレーキトルクが十分に小さい場合には、制動トルク等推定部26は、制動トルクTbiの値をブレーキ装置9による制動トルクの値とすることができる。
【0091】
また、ブレーキ装置9が非動作中であり、ブレーキ装置9による制動トルクが発生していない場合には、制動トルク等推定部26は、制動トルクTbiの値を回生ブレーキトルク又はエンジンブレーキトルクの値とすることができる。また、ブレーキ装置9による制動トルクが計測可能である場合には、制動トルク等推定部26は、計測されたブレーキ装置9による制動トルクの値を制動トルクTbiから減じることで、回生ブレーキトルク又はエンジンブレーキトルクを求めることができる。
【0092】
次に、タイヤ荷重推定部21がタイヤ荷重Fzi(タイヤ上下力Fzi)を算出する方法について説明する。タイヤ荷重推定部21は、公知の方法でタイヤ荷重Fziを算出することができる。以下では、一例として、車両10が直線を走行するときのタイヤ荷重Fziを算出する方法について説明する。
【0093】
例えば、加減速がない場合の左右輪の荷重が互いに等しいと仮定すれば、直進走行している場合には、タイヤ荷重Fziは、前輪については式(21)で、後輪については式(22)で算出できる。
【0094】
【0095】
【0096】
ここで、mbは乗員等を含めた車両10の質量、Lfは車両10の重心位置と前輪軸との前後方向の距離、Lrは車両10の重心位置と後輪軸との前後方向の距離、Lbasはホイールベース(Lbas=Lf+Lr)、hycは車両10の重心高さを示す。
【0097】
式(21)と式(22)から、タイヤ荷重Fzi(タイヤ上下力Fzi)も、加速度センサ2が検出した前後加速度axseを用いて算出することができる。前後加速度axは、加速度センサ2が検出した前後加速度axseを用いて求められる(例えば、式(4)、(5)、(6)、(8)を参照)。
【0098】
なお、制動トルク等推定部26は、タイヤ荷重Fziとして、タイヤ荷重推定部21が算出して推定した値ではなく、実測したりサスペンションの変位等から算出したりして求めた値を用いてもよい。
【0099】
次に、タイヤ特性推定部22について説明する。タイヤ特性推定部22は、本実施例では、タイヤ特性として制動係数Kbiを推定して求める。本実施例では、全ての車輪7が同一の制動係数Kbを持つ(すなわち、Kbi=Kb)と仮定し、この制動係数Kbを求める例を示す。
【0100】
図3に示したタイヤ特性は、制動時と駆動時で摩擦係数の符号が異なる以外はほぼ等しいことが知られている。そこで、本実施例では、車両10の加速時である駆動時に制動係数Kbを算出する方法を示す。
【0101】
車両10が前輪駆動で加速する場合を例に挙げて説明する。後輪の駆動力はゼロであり、制動力もゼロである。したがって、後輪のスリップ率λi(iは、RLとRR)をゼロと仮定すると、車体速Vbは、式(2)から得られた式(23)を用いて算出できる。
【0102】
【0103】
式(23)を式(2)に代入すると、左前輪のスリップ率λFLは、式(24)で求まり、右前輪のスリップ率λFRは、式(25)で求まる。
【0104】
【0105】
【0106】
左前輪のタイヤ前後力FxFLと右前輪のタイヤ前後力FxFRは、式(3)から、それぞれ式(26)と式(27)で表される。式(26)と式(27)のスリップ率λFL、λFRには、式(24)と式(25)で得られたスリップ率を用いる。
【0107】
【0108】
【0109】
また、後輪の駆動力と制動力がゼロであるとすると、タイヤ前後力Fxiの全ての車輪7(4輪)についての合計値は、式(28)で表される。
【0110】
【0111】
式(28)の左辺のタイヤ前後力Fxiの合計値は、式(4)等に示すように、加速度センサ2が検出した前後加速度axseを用いて求めることができる。
【0112】
式(28)の右辺に式(26)、(27)を代入し、式(28)を制動係数Kbについて解くと、式(29)が得られる。
【0113】
【0114】
すなわち、制動係数Kbは、加速度センサ2が検出した前後加速度axse(又は、車両10の前後加速度ax)と、式(24)、(25)で用いられる4輪の車輪速Vwiと、前輪のタイヤ荷重FzFL、FzFRを用いて算出できる。
【0115】
以上の説明では、車両10が前輪駆動である例を説明した。車両10が後輪駆動の場合には、上記の説明で前輪と後輪を入れ替えればよい。
【0116】
なお、各輪の駆動力がわかっていれば左前輪のタイヤ前後力FxFLと右前輪のタイヤ前後力FxFRがわかり、一方で式(24)、式(25)から左前輪のスリップ率λFL及び右前輪のスリップ率λFRが求められることから、式(26)、(27)を用いて制動係数Kbを求めることができる。
【0117】
次に、車両10が4輪駆動である例を説明する。4輪駆動での、エンジンや電動機による車輪7の駆動力の前後配分が、式(30)によって検知又は推定可能であると仮定する。
【0118】
【0119】
ここで、FdxFが前輪の駆動力、FdxRが後輪の駆動力を示し、γがこれらの比を示す。
【0120】
前輪のタイヤ前後力FxFL、FxFRは、車両10の運動方程式から式(31)で求められる。
【0121】
【0122】
同様に、左後輪のタイヤ前後力FxRLと右後輪のタイヤ前後力FxRRは、式(32)で求められる。
【0123】
【0124】
一方、式(2)と式(3)から、左前輪(i=FL)に関して式(33)が得られ、左後輪(i=RL)に関して式(34)が得られる(Kbi=Kbと仮定した)。
【0125】
【0126】
【0127】
式(33)と式(34)の連立方程式から車体速Vbと制動係数Kbを未知数として解くと、制動係数Kbを表す式として式(35)が得られる。
【0128】
【0129】
式(35)で表される制動係数Kbは、左前輪についての式(33)と左後輪についての式(34)から求めたが、制動係数Kbは、右前輪についての式と右後輪についての式から求めてもよく、左前輪についての式と右後輪についての式や、右前輪についての式と左後輪についての式から求めてもよい。例えば、制動係数Kbを、右前輪についての式と右後輪についての式から求めると、式(36)が得られる。
【0130】
【0131】
制動係数Kbは、上述したように複数の式で得ることができる。そこで、複数の式(例えば、式(35)、式(36)の2つの式)から得られた制動係数Kbの平均値を制動係数Kbの値とすることで、制動係数Kbをより精度よく求めることもできる。
【0132】
以上のようにして、タイヤ特性推定部22は、タイヤ特性である制動係数Kb(又は制動係数Kbi)を算出する。なお、タイヤ特性推定部22は、タイヤ特性が経年で変化することを考慮し、予め定めた所定の時間ごとに制動係数Kbを推定してもよい。また、タイヤ特性推定部22は、複数回推定して得られた制動係数Kbを平均し、平均して得られた値を制動係数Kbの値とすることで、制動係数Kbの精度を高めるようにしてもよい。
【0133】
タイヤ特性記憶部24は、タイヤ特性推定部22が求めたタイヤ特性を記憶する。本実施例では、タイヤ特性記憶部24は、制動係数Kb(又は制動係数Kbi)をタイヤ特性として記憶する。
【0134】
本実施例による制動トルク推定装置20は、車両10の車輪7の車輪速Vwiと前後加速度ax(前後加速度axse)を用いて、タイヤ特性である制動係数Kb(Kbi)、及びタイヤ荷重Fzi(タイヤ上下力Fzi)を推定でき、推定した制動係数Kb(Kbi)やタイヤ荷重Fziを用いて、車体速Vb、スリップ率λi、タイヤ前後力Fxi、及び制動トルクTbiを算出できる。コントローラ5は、制動トルク推定装置20が算出したこれらの値を用いて車両10の運動を制御する。本実施例による制動トルク推定装置20を用いると、低コストで高精度に制動トルクを推定でき、車両10の運動も低コストで高精度に制御することができる。
本発明の実施例2による制動トルク推定装置について説明する。実施例1では、車両10が主に直線を走行する例について説明した。本実施例では、車両10が旋回して走行する場合について説明する。車両10が旋回して走行すると、例えばタイヤ荷重Fziの推定方法が、車両10が直線を走行する場合と異なる。以下では、車両10が旋回する場合において、タイヤ荷重推定部21がタイヤ荷重Fziを算出する方法について説明する。
また、各車輪速から、ばね上重心位置における車両10の前後方向の速度に換算した車輪速は、各車輪速に旋回運動によって生じる実舵角δやヨーレイトrに基づく各輪の速度差を加減算することで求められる。車輪速センサ1で計測される車輪速をVwsiとすると、ばね上重心位置における車両10の前後方向の速度に換算した車輪速Vwiは、式(41)-(44)で表される。
制動係数Kbは、車両10の旋回時の横滑り角βによって変化する。横滑り角βがゼロから大きくなっていくと、スリップ率の絶対値が小さい範囲では、スリップ率の変化に対する摩擦係数の変化が小さくなっていく。このため、スリップ率と摩擦係数との比例係数である制動係数Kbは、横滑り角βの増加に伴って小さくなっていく。このような横滑り角βの値に依存する制動係数Kbを、Kb(β)と表記する。
タイヤ特性読込部25は、制動係数Kbを、横滑り角βの関数Kb(β)として、タイヤ特性記憶部24から入力する。横滑り角βは、操舵角(実舵角δ)と車体速Vbを用いて、既存の方法で算出できる。
制動トルク等推定部26は、制動係数KbをKb(β)に置き換えるとともに、車輪速Vwiとして、ばね上重心位置における車両10の前後方向の速度に換算した車輪速Vwi(式(41)-(44))の値を入力すると、式(12)-(20)を用いて、車体速Vb、スリップ率λi、タイヤ前後力Fxi、及び制動トルクTbiを算出できる。
なお、実施例1では、タイヤ特性推定部22は、横滑り角βがゼロの場合の制動係数Kb(0)を求めている。この制動係数Kb(0)を基にして、横滑り角βがゼロから変化したときの制動係数Kbの値の変化(すなわち、制動係数Kbの値の、Kb(0)からの変化)を実験や数値シミュレーション等で求めることができる。このようにして横滑り角βと制動係数Kbとの関係を予め求めておくと、タイヤ特性推定部22は、この関係を制動係数Kb(β)として記憶することもできる。
また、車両10の旋回時にタイヤ荷重Fziを推定したときの横滑り角β1を求めておいて、この横滑り角β1に対応する制動係数Kb(β1)を求め、この制動係数Kb(β1)を基にして、横滑り角βがβ1から変化したときの制動係数Kbの値の変化(すなわち、制動係数Kbの値の、Kb(β1)からの変化)を実験や数値シミュレーション等で求め、横滑り角βと制動係数Kbとの関係を予め求めておくこともできる。タイヤ特性推定部22は、この関係を制動係数Kb(β)として記憶することもできる。
本実施例によれば、車両10の直線走行時だけでなく旋回時にもタイヤ特性(制動係数Kb)や制動トルク等(車体速Vb、スリップ率λi、タイヤ前後力Fxi、及び制動トルクTbi)を算出することができ、車両10の走行状態によらず低コストで高精度に制動トルクTbiを推定できる。