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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080899
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240610BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194245
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】柚本 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】吉原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓二
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業距離の長さに応じて操作レバーの操作量を調整する技量を持たない非熟練者であっても、アタッチメントを容易に操作することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】駆動対象のアタッチメント30の回動軸から、ニブラ34の先端までの距離を作業距離として算出する作業距離算出手段と、作業距離算出手段が算出した作業距離に基づいて、駆動対象のアタッチメント30の目標速度であって操作手段の操作量に応じた目標速度を設定する目標速度設定手段と、駆動対象のアタッチメント30が、目標速度設定手段が設定した目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメント30を駆動させるアクチュエータを制御する駆動制御手段と、を有する。目標速度設定手段は、作業距離が長いほど、操作手段の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度を設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体と、
前記機械本体に回動可能に取り付けられた下部アタッチメントを含み、互いに回動可能に連結された複数のアタッチメントと、
複数の前記アタッチメント毎に設けられ、前記アタッチメントを駆動させるアクチュエータと、
複数の前記アタッチメントの各々を駆動させるために作業者により操作される操作手段と、
駆動対象の前記アタッチメントの回動軸から、最も先端側の前記アタッチメントである先端アタッチメントの先端までの距離を作業距離として算出する作業距離算出手段と、
前記作業距離算出手段が算出した前記作業距離に基づいて、駆動対象の前記アタッチメントの目標速度であって前記操作手段の操作量に応じた目標速度を設定する目標速度設定手段と、
駆動対象の前記アタッチメントが、前記目標速度設定手段が設定した前記目標速度で駆動されるように、駆動対象の前記アタッチメントを駆動させる前記アクチュエータを制御する駆動制御手段と、
を有し、
前記目標速度設定手段は、前記作業距離が長いほど、前記操作手段の操作量が所定操作量のときの前記目標速度が遅くなるように、前記目標速度を設定することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記作業距離算出手段は、複数の前記アタッチメント毎に前記作業距離を算出し、
前記目標速度設定手段は、複数の前記アタッチメント毎に前記目標速度を設定し、
前記駆動制御手段は、複数の前記アタッチメントの各々が前記目標速度で駆動されるように、複数の前記アクチュエータの各々を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記作業距離算出手段は、前記操作手段への操作開始前に、前記作業距離を算出し、
前記目標速度設定手段は、前記操作手段の操作中に、前記操作手段への操作開始前に算出した前記作業距離に基づいて前記目標速度を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記先端アタッチメントは、被把持物を把持可能であり、
前記先端アタッチメントによる前記被把持物の把持を検出する把持検出装置を有し、
前記目標速度設定手段は、前記先端アタッチメントが前記被把持物を把持している場合に、前記目標速度よりも遅い速度を第2目標速度として設定し、
前記駆動制御手段は、駆動対象の前記アタッチメントが前記目標速度で駆動されるように、駆動対象の前記アタッチメントを駆動させる前記アクチュエータを制御することに代えて、駆動対象の前記アタッチメントが前記第2目標速度で駆動されるように、駆動対象の前記アタッチメントを駆動させる前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記先端アタッチメントは、被把持物を把持可能であり、
前記先端アタッチメントによる前記被把持物の把持を検出する把持検出装置と、
前記先端アタッチメントが把持した前記被把持物の先端の位置を計測する計測装置と、
を有し、
前記作業距離算出手段は、前記先端アタッチメントが前記被把持物を把持している場合に、前記回動軸から前記先端アタッチメントの先端までの距離を前記作業距離として算出することに代えて、前記回動軸から前記被把持物の先端までの距離を前記作業距離として算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記先端アタッチメントは、
前記被把持物を挟むことが可能な一対の把持部と、
前記一対の把持部を開閉させるシリンダと、
を有し、
前記把持検出装置は、前記シリンダの作動圧が閾値を超える場合に、前記一対の把持部が前記被把持物を把持していることを検出し、
上下方向における前記先端アタッチメントの向きに応じて、前記閾値を変化させる閾値変化手段を有することを特徴とする請求項4に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所解体機などの作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高所解体作業を行う高所解体機において、アッパブームの先端高さが高いときには、同一パイロット操作量に対して電磁比例弁を絞り制御することが開示されている。電磁比例弁を絞り制御することで、高所作業ではアッパブームが急激に落下動作しないようにしている。
【0003】
また、特許文献2には、クレーンにおいて、上部旋回体を旋回駆動する旋回駆動装置に対して、上部旋回体の旋回加速度を許容加速度の範囲内に制限することが開示されている。上部旋回体の旋回駆動を適切に制御することで、ブームに加わる旋回トルクが耐旋回トルクを上回ることを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-189921号公報
【特許文献2】特開2022-79903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブーム、アーム、先端アタッチメントなどを備えた長尺のアタッチメントを有する高所解体機のような作業機械では、作業距離が長くなるほど、操作レバーを所定量操作したときの先端アタッチメントの移動量が大きくなる。つまり、作業距離が長くなるほど、操作レバーを所定量操作したときの先端アタッチメントの速度が速くなる。ここで、ブームの回動軸から先端アタッチメントの先端までの距離や、アームの回動軸から先端アタッチメントの先端までの距離を、作業距離としている。
【0006】
特許文献1では、アッパブームの急激な落下を抑制してはいるが、作業距離の長さに応じて先端アタッチメントの速度は変化する。特許文献2では、上部旋回体の旋回加速度を制限してはいるが、作業距離の長さに応じて先端アタッチメントの速度は変化する。
【0007】
熟練者は、作業距離の長さに応じて操作レバーの操作量を調整する技量を持っている場合が多い。しかし、非熟練者では、作業距離の長さに応じて、操作レバーを所定量操作したときの先端アタッチメントの移動量が変化すると、作業が困難になる。
【0008】
本発明の目的は、作業距離の長さに応じて操作レバーの操作量を調整する技量を持たない非熟練者であっても、アタッチメントを容易に操作することが可能な作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、機械本体と、前記機械本体に回動可能に取り付けられた下部アタッチメントを含み、互いに回動可能に連結された複数のアタッチメントと、複数の前記アタッチメント毎に設けられ、前記アタッチメントを駆動させるアクチュエータと、複数の前記アタッチメントの各々を駆動させるために作業者により操作される操作手段と、駆動対象の前記アタッチメントの回動軸から、最も先端側の前記アタッチメントである先端アタッチメントの先端までの距離を作業距離として算出する作業距離算出手段と、前記作業距離算出手段が算出した前記作業距離に基づいて、駆動対象の前記アタッチメントの目標速度であって前記操作手段の操作量に応じた目標速度を設定する目標速度設定手段と、駆動対象の前記アタッチメントが、前記目標速度設定手段が設定した前記目標速度で駆動されるように、駆動対象の前記アタッチメントを駆動させる前記アクチュエータを制御する駆動制御手段と、を有し、前記目標速度設定手段は、前記作業距離が長いほど、前記操作手段の操作量が所定操作量のときの前記目標速度が遅くなるように、前記目標速度を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、駆動対象のアタッチメントの回動軸から先端アタッチメントの先端までの距離である作業距離に基づいて、駆動対象のアタッチメントの目標速度であって操作手段の操作量に応じた目標速度が設定される。このとき、作業距離が長いほど、操作手段の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度が設定される。そして、駆動対象のアタッチメントが、設定された目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメントを駆動させるアクチュエータが制御される。ここで、従来、作業距離が長いほど、操作手段を所定量操作したとき(操作手段の操作量が所定操作量のとき)の先端アタッチメントの移動量が大きくなる。そこで、作業距離が長いほど、操作手段の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度を設定する。これにより、作業距離が長いほど、操作手段を所定量操作したときのアクチュエータの駆動量を抑えることができる。よって、作業距離と目標速度との関係を適切に設定した場合には、操作手段の操作量と先端アタッチメントの移動量との関係を、作業距離の長さに関わらず、同じまたはほぼ同じにすることができる。これにより、作業距離の長さに応じて操作手段の操作量を調整する技量を持たない非熟練者であっても、アタッチメントを容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】作業機械の側面図である。
図2】作業機械の油圧回路の構成図である。
図3】作業機械の電気回路の構成図である。
図4】作業機械を模式的に表した側面図を示す図である。
図5】操作レバーの操作量と目標速度との関係を示す図である。
図6】作業機械を模式的に表した側面図であって、図4に示す姿勢よりもブームを起こした状態を示す図である。
図7】作業機械を模式的に表した側面図であって、ニブラが被把持物を把持している状態を示す図である。
図8】操作レバーの操作量と目標速度との関係を示す別の図である。
図9】作業機械を模式的に表した側面図であって、ニブラが把持する被把持物を撮像している様子を示す図である。
図10】ニブラが下を向いた状態と、ニブラが上を向いた状態とを示す図である。
図11】ニブラの回動角度と作動圧の閾値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(作業機械の構成)
本発明の実施形態による作業機械は、作業機械1の側面図である図1に示すように、いわゆる高所解体機である。作業機械1は、下部走行体21と上部旋回体22とを備えた機械本体24と、アタッチメント30と、シリンダ40と、操作レバー50と、を有している。なお、作業機械1は、高所解体機に限定されず、バケットを備えた油圧ショベルなどであってもよい。
【0014】
下部走行体21は、作業機械1を走行させる部分であり、例えばクローラを備える。上部旋回体22は、下部走行体21の上部に旋回装置を介して旋回可能に取り付けられる。上部旋回体22の前部には、キャブ(運転室)23が設けられている。
【0015】
アタッチメント30は、ブーム31と、ジブ32と、アーム33と、ニブラ34と、を備える。ブーム31、ジブ32、アーム33、および、ニブラ34は、互いに回動可能に連結されている。
【0016】
ブーム(下部アタッチメント)31は、上下方向に回動可能(起伏可能)に上部旋回体22(機械本体24)に取り付けられたアタッチメント30である。ジブ(中間アタッチメント)32は、上下方向に回動可能にブーム31に取り付けられたアタッチメント30である。アーム(中間アタッチメント)33は、上下方向に回動可能にジブ32に取り付けられたアタッチメント30である。ニブラ(先端アタッチメント)34は、アーム33に回動可能に取り付けられたアタッチメント30である。ニブラ34は、被把持物(金属片など)の、把持、切断などの作業を行う部分である。
【0017】
ニブラ34は、一対の把持部35を有している。この一対の把持部35を開閉させることで、ニブラ34は、被把持物を把持したり、把持していた被把持物を解放したりすることが可能である。
【0018】
シリンダ40は、複数のアタッチメント30毎に設けられ、アタッチメント30を駆動させるアクチュエータである。本実施形態において、シリンダ40は、油圧式の伸縮シリンダである。シリンダ40は、ブームシリンダ41と、ジブシリンダ42と、アームシリンダ43と、ニブラシリンダ44と、把持シリンダ45と、を備える。
【0019】
ブームシリンダ41は、上部旋回体22に対してブーム31を回動させる。ブームシリンダ41の基端部は、上部旋回体22に回動可能に取り付けられる。ブームシリンダ41の先端部は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。
【0020】
ジブシリンダ42は、ブーム31に対してジブ32を回動させる。ジブシリンダ42の基端部は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。ジブシリンダ42の先端部は、ジブ32に回動可能に取り付けられる。
【0021】
アームシリンダ43は、ジブ32に対してアーム33を回動させる。アームシリンダ43の基端部は、ジブ32に回動可能に取り付けられる。アームシリンダ43の先端部は、アーム33に回動可能に取り付けられる。
【0022】
ニブラシリンダ44は、アーム33に対してニブラ34を回動させる。ニブラシリンダ44の基端部は、アーム33に回動可能に取り付けられる。ニブラシリンダ44の先端部は、ニブラ34に回動可能に取り付けられる。
【0023】
把持シリンダ(シリンダ)45は、一対の把持部35に対してそれぞれ設けられている。把持シリンダ45は、一対の把持部35を開閉させる。把持シリンダ45の基端部は、ニブラ34に回動可能に取り付けられる。把持シリンダ45の先端部は、把持部35に回動可能に取り付けられる。
【0024】
操作レバー(操作手段)50は、キャブ23内に複数設けられている。操作レバー50は、複数のアタッチメント30をそれぞれ駆動させるために作業者により操作される。つまり、操作レバー50は、ブーム31、ジブ32、アーム33、ニブラ34、および、一対の把持部35をそれぞれ駆動させるために作業者により操作される。
【0025】
また、作業機械1は、傾斜角センサ60を有している。傾斜角センサ60は、アタッチメント30の姿勢を検出する。傾斜角センサ60は、ブーム傾斜角センサ61と、ジブ傾斜角センサ62と、アーム傾斜角センサ63と、ニブラ傾斜角センサ64と、を備える。
【0026】
ブーム傾斜角センサ61は、ブーム31に取り付けられ、ブーム31の姿勢を検出する。ブーム傾斜角センサ61は、水平線に対するブーム31の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、ブーム傾斜角センサ61は、ブームフットピン(ブーム基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、ブームシリンダ41のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0027】
ジブ傾斜角センサ62は、ジブ32に取り付けられ、ジブ32の姿勢を検出する。ジブ傾斜角センサ62は、水平線に対するジブ32の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、ジブ傾斜角センサ62は、ジブ連結ピン(ジブ基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、ジブシリンダ42のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0028】
アーム傾斜角センサ63は、アーム33に取り付けられ、アーム33の姿勢を検出する。アーム傾斜角センサ63は、水平線に対するアーム33の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、アーム傾斜角センサ63は、アーム連結ピン(アーム基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、アームシリンダ43のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0029】
ニブラ傾斜角センサ64は、ニブラ34に取り付けられ、ニブラ34の姿勢を検出する。ニブラ傾斜角センサ64は、水平線に対するニブラ34の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、ニブラ傾斜角センサ64は、ニブラ連結ピン(ニブラ基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、ニブラシリンダ44のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0030】
また、作業機械1は、把持検出装置55(図3参照)を有している。把持検出装置55は、一対の把持部35による被把持物の把持を検出する。把持検出装置55は、把持シリンダ45のロッドの先端位置を検出するセンサや、把持シリンダ45の作動圧を検出するセンサ、一対の把持部35の開閉角度を検出するセンサなどを含む。把持検出装置55は、把持シリンダ45の作動圧が閾値を超える場合に、一対の把持部35が被把持物を把持していることを検出する。
【0031】
また、作業機械1は、撮像装置58を有している。撮像装置58は、カメラやLiDARなどであり、ニブラ34(一対の把持部35)が把持する被把持物を撮像する。本実施形態において、撮像装置58は、作業機械1の前方を向くように上部旋回体22に取り付けられているが、ニブラ34の先端の方を向くようにニブラ34に取り付けられていてもよい。
【0032】
(油圧回路の構成)
作業機械1の油圧回路の構成図である図2に示すように、作業機械1は、第1油圧ポンプ71と、第2油圧ポンプ72と、第1レギュレータ73と、第2レギュレータ74と、ブーム制御弁75と、ジブ制御弁76と、アーム制御弁77と、を有している。なお、図2には図示していないが、作業機械1は、ニブラ制御弁と、把持部制御弁と、を有している。
【0033】
第1油圧ポンプ71および第2油圧ポンプ72は、容量を可変な可変容量形ポンプであり、エンジン(図示せず)で駆動される。第1油圧ポンプ71は、アームシリンダ43を駆動させるための圧油をアームシリンダ43に供給する。第2油圧ポンプ72は、ブームシリンダ41を駆動させるための圧油をブームシリンダ41に供給するとともに、ジブシリンダ42を駆動させるための圧油をジブシリンダ42に供給する。また、第1油圧ポンプ71および第2油圧ポンプ72の少なくとも一方は、ニブラシリンダ44(図1参照)および把持シリンダ45(図1参照)を駆動させるための圧油をこれらに供給する。
【0034】
第1レギュレータ73は、第1油圧ポンプ71の容量を変更する。具体的には、第1レギュレータ73は、第1油圧ポンプ71が有する斜板71aの傾転角を変更することで、第1油圧ポンプ71の容量を変更する。第2レギュレータ74は、第2油圧ポンプ72の容量を変更する。具体的には、第2レギュレータ74は、第2油圧ポンプ72が有する斜板72aの傾転角を変更することで、第2油圧ポンプ72の容量を変更する。
【0035】
ブーム制御弁75は、ブームシリンダ41のボトム側とロッド側とで、第2油圧ポンプ72からの圧油の供給先を切り替える。ブームシリンダ41のボトム側に圧油が供給されると、ブームシリンダ41のロッドが進出する。これにより、ブーム31が地面から離れる方に回動する(ブーム上げ動作)。一方、ブームシリンダ41のロッド側に圧油が供給されると、ブームシリンダ41のロッドが後退する。これにより、ブーム31が地面に近づく方に回動する(ブーム下げ動作)。
【0036】
ジブ制御弁76は、ジブシリンダ42のボトム側とロッド側とで、第2油圧ポンプ72からの圧油の供給先を切り替える。ジブシリンダ42のボトム側に圧油が供給されると、ジブシリンダ42のロッドが進出する。これにより、ジブ32が地面から離れる方に回動する(ジブ上げ動作)。一方、ジブシリンダ42のロッド側に圧油が供給されると、ジブシリンダ42のロッドが後退する。これにより、ジブ32が地面に近づく方に回動する(ジブ下げ動作)。
【0037】
アーム制御弁77は、アームシリンダ43のボトム側とロッド側とで、第1油圧ポンプ71からの圧油の供給先を切り替える。アームシリンダ43のボトム側に圧油が供給されると、アームシリンダ43のロッドが進出する。これにより、アーム33がジブ32の方に回動する(アーム引き動作)。一方、アームシリンダ43のロッド側に圧油が供給されると、アームシリンダ43のロッドが後退する。これにより、アーム33がジブ32とは反対の方に回動する(アーム押し動作)。
【0038】
ニブラ制御弁(図示せず)には、第1油圧ポンプ71および第2油圧ポンプ72の少なくとも一方から圧油が供給される。ニブラ制御弁は、ニブラシリンダ44のボトム側とロッド側とで、圧油の供給先を切り替える。ニブラシリンダ44のボトム側に圧油が供給されると、ニブラシリンダ44のロッドが進出する。これにより、ニブラ34がアーム33の方に回動する(ニブラ下げ動作)。一方、ニブラシリンダ44のロッド側に圧油が供給されると、ニブラシリンダ44のロッドが後退する。これにより、ニブラ34がアーム33とは反対の方に回動する(ニブラ上げ動作)。
【0039】
把持部制御弁(図示せず)には、第1油圧ポンプ71および第2油圧ポンプ72の少なくとも一方から圧油が供給される。把持部制御弁は、把持シリンダ45のボトム側とロッド側とで、圧油の供給先を切り替える。把持シリンダ45のボトム側に圧油が供給されると、把持シリンダ45のロッドが進出する。これにより、把持部35が閉じる方に回動する(ニブラ閉じ動作)。一方、把持シリンダ45のロッド側に圧油が供給されると、把持シリンダ45のロッドが後退する。これにより、把持部35が開く方に回動する(ニブラ開き動作)。
【0040】
また、図2に示すように、作業機械1は、ブーム比例弁87a,87bと、ジブ比例弁88a,88bと、アーム比例弁89a,89bと、コントローラ80と、パイロットポンプ85と、を有している。なお、図2には図示していないが、作業機械1は、ニブラ比例弁と、把持部比例弁と、を有している。
【0041】
操作レバー50は、ブーム上げ操作を受けると、ブーム上げ操作およびその操作量に対応するブーム上げ指令信号をコントローラ80に入力する。同様に、操作レバー50は、ブーム下げ操作を受けると、ブーム下げ操作およびその操作量に対応するブーム下げ指令信号をコントローラ80に入力する。
【0042】
ブーム比例弁87a,87bは、例えば電磁比例弁である。ブーム比例弁87a,87bは、コントローラ80から入力される制御指令(指令電流)に応じてパイロットポンプ85からの圧油を減圧し、制御指令に対応するパイロット圧をブーム制御弁75に出力する。コントローラ80が出力する制御指令には、操作レバー50の操作量の情報が含まれている。
【0043】
コントローラ80がブーム上げ操作を受けると、コントローラ80からの制御指令がブーム比例弁87aに入力される。ブーム比例弁87aは、制御指令に応じたパイロット圧を生成し、生成されたパイロット圧は、ブーム制御弁75の図中左側のパイロットポートに供給される。ブーム制御弁75が備えるスプールは、供給されたパイロット圧に対応する変位量(中立位置からのシフト量)でシフトする。これにより、ブーム制御弁75は、前記の変位量に対応する開度(開口量)に調節される。その結果、第2油圧ポンプ72からの圧油が前記の変位量に対応する流量でブームシリンダ41のボトム側に供給され、ブーム上げ動作が行われる。
【0044】
コントローラ80がブーム下げ操作を受けると、コントローラ80からの制御指令がブーム比例弁87bに入力される。ブーム比例弁87bは、制御指令に応じたパイロット圧を生成し、生成されたパイロット圧は、ブーム制御弁75の図中右側のパイロットポートに供給される。ブーム制御弁75が備えるスプールは、供給されたパイロット圧に対応する変位量(中立位置からのシフト量)でシフトする。これにより、ブーム制御弁75は、前記の変位量に対応する開度(開口量)に調節される。その結果、第2油圧ポンプ72からの圧油が前記の変位量に対応する流量でブームシリンダ41のロッド側に供給され、ブーム下げ動作が行われる。
【0045】
操作レバー50がジブ上げ操作またはジブ下げ操作を受けた場合のジブ比例弁88a,88bの動作、および、操作レバー50がアーム引き操作またはアーム押し操作を受けた場合のアーム比例弁89a,89bの動作については、操作レバー50がブーム上げ操作またはブーム下げ操作を受けた場合のブーム比例弁87a,87bの動作と同様であるので、その説明を省略する。ニブラ比例弁は、ブーム比例弁87a,87bと同様に、制御指令に応じたパイロット圧をニブラ制御弁に供給する。把持部比例弁は、ブーム比例弁87a,87bと同様に、制御指令に応じたパイロット圧を把持部制御弁に供給する。ニブラ比例弁および把持部比例弁の動作は、ブーム比例弁87a,87bの動作と同様である。
【0046】
なお、本実施形態では、上記のように、コントローラ80が、操作レバー50の操作量に対応する制御指令を比例弁に出力し、比例弁は、制御指令に応じてパイロットポンプ85からの圧油を減圧し、制御指令に対応するパイロット圧を制御弁に出力しているが、この方式に限定されず、従来の油圧パイロット方式を用いてもよい。従来の油圧パイロット方式では、操作レバー50の操作量に応じて、パイロットポンプ85からの圧油が適宜減圧されたパイロット圧で、制御弁が制御される。
【0047】
(電気回路の構成)
作業機械1の電気回路の構成図である図3に示すように、作業機械1は、上述のコントローラ80と、記憶装置83と、を有している。
【0048】
コントローラ80には、ブーム傾斜角センサ61が検出した、ブーム31の姿勢に関する情報が入力される。また、コントローラ80には、ジブ傾斜角センサ62が検出した、ジブ32の姿勢に関する情報が入力される。また、コントローラ80には、アーム傾斜角センサ63が検出した、アーム33の姿勢に関する情報が入力される。また、コントローラ80には、ニブラ傾斜角センサ64が検出した、ニブラ34の姿勢に関する情報が入力される。
【0049】
また、コントローラ80には、操作レバー50からの各種の指令信号が入力される。また、コントローラ80には、把持検出装置55からの各種情報(把持シリンダ45の作動圧の値など)が入力される。また、コントローラ80には、撮像装置58が撮像した、被把持物の画像が入力される。
【0050】
コントローラ(作業距離算出手段)80は、駆動対象のアタッチメント30の回動軸からニブラ34の先端までの距離を作業距離として算出する。コントローラ80は、傾斜角センサ60が検出した複数のアタッチメント30の各々の姿勢に基づいて、駆動対象のアタッチメント30の作業距離を算出する。ここで、駆動対象のアタッチメント30とは、操作レバー50の操作により駆動される対象のアタッチメント30である。
【0051】
作業機械1を模式的に表した側面図を図4に示す。本実施形態において、作業距離とは、ブーム31の回動軸からニブラ34の先端までの距離や、アーム33の回動軸からニブラ34の先端までの距離である。
【0052】
駆動対象のアタッチメント30がブーム31の場合、ブーム31の回動軸からニブラ34の先端までの距離が作業距離Rbとして算出される。駆動対象のアタッチメント30がジブ32の場合、ジブ32の回動軸からニブラ34の先端までの距離が作業距離Rjとして算出される。駆動対象のアタッチメント30がアーム33の場合、アーム33の回動軸からニブラ34の先端までの距離が作業距離Raとして算出される。
【0053】
ここで、駆動対象のアタッチメント30がブーム31の場合、作業距離Rbは、例えば以下のような式(1)から算出される。
Rb2=Lb2+Lj2+La2+Lt2+2Lb・Lj・cos(A-B)+2Lb・La・cos(A+C)+2Lb・Lt・cos(A+D)+2Lj・La・cos(B+C)+2Lj・Lt・cos(B+D)+2La・Lt・cos(C-D) ・・・式(1)
【0054】
ここで、Lbはブーム31の基準長さであり、Ljはジブ32の基準長さであり、Laはアーム33の基準長さであり、Ltはニブラ34の基準長さである。また、水平線に対するブーム31の角度をθb、ブーム31の長手方向に対するジブ32の角度をθj、ジブ32の長手方向に対するアーム33の角度をθa、アーム33の長手方向に対するニブラ34の角度をθtとすると、A~Dは以下のようになる。
A=θb
B=θb-θj
C=θa-θb+θj
D=θa―θb+θj+θt
【0055】
また、駆動対象のアタッチメント30がジブ32の場合、作業距離Rjは、例えば以下のような式(2)から算出される。
Rj2=Lj2+La2+Lt2+2Lj・La・cos(B+C)+2Lj・Lt・cos(B+D)+2La・Lt・cos(C-D) ・・・式(2)
【0056】
また、駆動対象のアタッチメント30がアーム33の場合、作業距離Raは、例えば以下のような式から算出される。
Ra2=La2+Lt2+2La・Lt・cos(C-D) ・・・式(3)
【0057】
なお、作業機械1の外部に設けられたカメラで複数のアタッチメント30を撮像し、その画像に基づいて複数のアタッチメント30の各々の姿勢をコントローラ80で検出して、駆動対象のアタッチメント30の作業距離をコントローラ80で算出してもよい。
【0058】
コントローラ(目標速度設定手段)80は、自身が算出した作業距離に基づいて、駆動対象のアタッチメント30の目標速度(第1目標速度)を設定する。この目標速度は、操作レバー50の操作量に応じた速度である。ここで、コントローラ80は、作業距離が長いほど、操作レバー50の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度を設定する。コントローラ80は、設定した目標速度を記憶装置83に記憶させる。
【0059】
駆動対象のアタッチメント30がブーム31の場合、目標速度Vbは、例えば以下のような式(4)から算出される。ここで、Lbはブーム基準長さ、vbはブーム基準速度である。
Vb=vb・Lb/Rb ・・・式(4)
【0060】
なお、ブーム基準速度vbは、ブーム基準速度vbと操作レバー50の操作量との関係を示すマップを用いて決定される。
【0061】
コントローラ(駆動制御手段)80は、駆動対象のアタッチメント30が、自身が設定した目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメント30を駆動させるシリンダ40を制御する。これにより、駆動対象のアタッチメント30は目標速度で駆動される。
【0062】
操作レバー50の操作量と目標速度との関係を図5に示す。図5からわかるように、作業距離が長いほど、目標速度が遅く設定される。
【0063】
従来、作業距離が長いほど、操作レバー50を所定量操作したとき(操作レバー50の操作量が所定操作量のとき)のニブラ34の移動量が大きくなる。そこで、作業距離が長いほど、操作レバー50の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度を設定する。これにより、作業距離が長いほど、操作レバー50を所定量操作したときのシリンダ40の駆動量を抑えることができる。よって、作業距離と目標速度との関係を適切に設定した場合には、操作レバー50の操作量とニブラ34の移動量との関係を、作業距離の長さに関わらず、同じまたはほぼ同じにすることができる。これにより、作業距離の長さに応じて操作レバー50の操作量を調整する技量を持たない非熟練者であっても、アタッチメント30を容易に操作することができる。
【0064】
ここで、作業機械1においては、複数のアタッチメント30が2つ以上同時に駆動される複合動作が行われる場合がある。そこで、コントローラ(作業距離算出手段)80は、複数のアタッチメント30毎に作業距離を算出する。そして、コントローラ(目標速度設定手段)80は、複数のアタッチメント30毎に目標速度を設定する。コントローラ(駆動制御手段)80は、複数のアタッチメント30の各々が目標速度で駆動されるように、複数のシリンダ40の各々を駆動させる。これにより、複合動作においても、操作レバー50の操作量とニブラ34の移動量との関係を、作業距離の長さに関わらず、同じまたはほぼ同じにすることができる。
【0065】
また、コントローラ(作業距離算出手段)80は、操作レバー50への操作開始前に、作業距離を算出する。コントローラ(目標速度設定手段)80は、操作レバー50の操作中に、操作レバー50への操作開始前に算出した作業距離に基づいて目標速度を設定する。操作レバー50の操作量とシリンダ40の駆動量との関係が、操作レバー50の操作中に変化すると、作業者が操作しにくい場合がある。そこで、操作レバー50の操作中に、操作レバー50への操作開始前に算出した作業距離に基づいて目標速度を設定する。これにより、操作レバー50の操作量とシリンダ40の駆動量との関係が、操作レバー50の操作中に変化しない。よって、非熟練者は、アタッチメント30をより容易に操作することができる。
【0066】
ここで、作業機械1を模式的に表した側面図であって、図4に示す姿勢よりもブーム31を起こした状態を図6に示す。図6に示す姿勢では、図4に示す姿勢よりもブーム31が起こされている一方、ジブ32の回動軸を起点にジブ32、アーム33、および、ニブラ34が一体的に回動されることで、ジブ32、アーム33、および、ニブラ34の姿勢に変化はない。図4に示す姿勢よりもブーム31を起こすことで、ブーム31の回動軸からニブラ34の先端までの距離である作業距離Rbは小さくなる。そのため、図4に示す姿勢の場合よりも、ブーム31の目標速度は速くなる。これに対して、図4に示す姿勢に対してジブ32、アーム33、および、ニブラ34の姿勢に変化はないので、ジブ32の回動軸からニブラ34の先端までの距離である作業距離Rjや、アーム33の回動軸からニブラ34の先端までの距離である作業距離Raに変化はない。よって、ジブ32やアーム33の目標速度は、図4に示す姿勢の場合と同じである。
【0067】
ここで、操作レバー50への操作によって、ブーム上げ動作とジブ上げ動作とが同時に行われる場合を考える。このような複合動作の場合、ブーム上げ動作だけでなく、ジブ上げ動作によっても、ブーム31の作業距離Rbが増加し、ブーム31の目標速度が変化する。そこで、このような複合動作の場合には、ブーム上げ動作の開始前に、ブーム31の作業距離Rbを算出し、この作業距離Rbに基づいて、ブーム31の目標速度を設定する。このような複合動作の場合、ジブ上げ動作の開始前に、ブーム31の作業距離Rbを算出してもよいが、この場合、ジブ32やアーム33の動きを考慮しなければならず、煩雑である。そこで、上記のように、ブーム上げ動作の開始前に、ブーム31の目標速度を設定する。
【0068】
次に、ニブラ34が被把持物を把持している場合を考える。作業機械1を模式的に表した側面図であって、ニブラ34が被把持物90を把持している状態を図9に示す。ニブラ34が被把持物90を把持すると、機械本体24から最も遠い位置は被把持物90の先端になる場合がある。この場合、被把持物90の分だけ作業距離が長くなったとみなして目標速度を設定するのが妥当である。そこで、コントローラ(目標速度設定手段)80は、ニブラ34が被把持物90を把持している場合に、目標速度(第1目標速度)よりも遅い速度を第2目標速度として設定する。
【0069】
この場合、コントローラ(駆動制御手段)80は、駆動対象のアタッチメント30が第1目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメント30を駆動させるシリンダ40を制御することに代えて、駆動対象のアタッチメント30が第2目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメント30を駆動させるシリンダ40を制御する。
【0070】
操作レバー50の操作量と目標速度との関係を図8に示す。図8からわかるように、ニブラ34が被把持物90を把持している場合に設定される第2目標速度は、作業距離に基づいた第1目標速度よりも遅く設定される。
【0071】
ニブラ34が被把持物90を把持している場合に、ニブラ34が被把持物90を把持していない場合よりも、目標速度を遅くする。これにより、操作レバー50の操作量と、アタッチメント30を駆動したときに最も速く移動すると想定される部分の移動量との関係を、ニブラ34が被把持物90を把持している場合と把持していない場合とで同等にすることができる。
【0072】
また、コントローラ(計測装置)80は、撮像装置58が被把持物90を撮像した画像に基づいて、ニブラ34が把持した被把持物90の先端の位置を計測する。作業機械1を模式的に表した側面図であって、ニブラ34が把持する被把持物90を撮像している様子を図9に示す。図9では、上部旋回体22に取り付けられた撮像装置58の撮像範囲100を図示している。なお、図9では、撮像装置58がニブラ34に取り付けられている場合の撮像範囲101も合わせて図示している。
【0073】
コントローラ(作業距離算出手段)80は、ニブラ34が被把持物90を把持している場合に、駆動対象のアタッチメント30の回動軸からニブラ34の先端までの距離を作業距離として算出することに代えて、駆動対象のアタッチメント30の回動軸から被把持物90の先端までの距離を作業距離として算出する。つまり、ニブラ34が被把持物90を把持している場合には、ブーム31の回動軸から被把持物90の先端までの距離が作業距離RBとして算出され、ジブ32の回動軸から被把持物90の先端までの距離が作業距離RJとして算出され、アーム33の回動軸から被把持物90の先端までの距離が作業距離RAとして算出される。
【0074】
この場合においても、コントローラ(目標速度設定手段)80は、自身が算出した作業距離に基づいて、複数のアタッチメント30毎に目標速度を設定する。コントローラ(駆動制御手段)80は、複数のアタッチメント30の各々が目標速度で駆動されるように、複数のシリンダ40の各々を駆動させる。
【0075】
被把持物90の大きさを加味して作業距離を算出することで、操作レバー50の操作量と、アタッチメント30を駆動したときに最も速く移動すると想定される部分の移動量と、の関係を、ニブラ34が被把持物90を把持している場合と把持していない場合とで同等にすることができる。よって、より適切な目標速度を設定することができる。これにより、非熟練者は、アタッチメント30をより容易に操作することができる。
【0076】
ここで、コントローラ(閾値変化手段)80は、上下方向におけるニブラ34の向きに応じて、把持シリンダ45の作動圧の閾値を変化させる。上述したように、把持検出装置55(図3参照)は、把持シリンダ45の作動圧が閾値を超える場合に、一対の把持部35が被把持物を把持していることを検出する。
【0077】
ニブラ34が下を向いた状態と、ニブラ34が上を向いた状態とを図10に示す。ニブラ34が下を向いているとき、把持部35の自重は、把持部35を閉じる方向に把持シリンダ45に作用する場合がある。一方、ニブラ34が上を向いているとき、把持部35の自重は、把持部35を閉じる方向とは逆方向(把持部35を開く方向)に把持シリンダ45に作用する場合がある。よって、これらの場合には、ニブラ34が下を向いている方が、ニブラ34が上を向いているよりも、把持部35を閉じる向きに把持シリンダ45を作動させる際の作動圧は小さくなる。よって、ニブラ34が下方を向くほど、小さな作動圧で被把持物90を把持することができる。
【0078】
そこで、コントローラ(閾値変化手段)80は、ニブラ34が下方を向くほど、把持シリンダ45の作動圧の閾値を小さくする。ニブラ34の回動角度と作動圧の閾値との関係を図11に示す。ニブラ34の回動角度が大きくなるほど、ニブラ34は上方を向く。ニブラ34が下方を向くほど、把持シリンダ45の作動圧の閾値を小さくすることで、一対の把持部35が被把持物90を把持していることを精度よく検出することができる。
【0079】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る作業機械1によれば、図4に示すように、駆動対象のアタッチメント30の回動軸からニブラ34の先端までの距離である作業距離に基づいて、駆動対象のアタッチメント30の目標速度であって操作レバー50の操作量に応じた目標速度が設定される。このとき、作業距離が長いほど、操作レバー50の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度が設定される。そして、駆動対象のアタッチメント30が、設定された目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメント30を駆動させるシリンダ40が制御される。ここで、従来、作業距離が長いほど、操作レバー50を所定量操作したとき(操作レバー50の操作量が所定操作量のとき)のニブラ34の移動量が大きくなる。そこで、作業距離が長いほど、操作レバー50の操作量が所定操作量のときの目標速度が遅くなるように、目標速度を設定する。これにより、作業距離が長いほど、操作レバー50を所定量操作したときのシリンダ40の駆動量を抑えることができる。よって、作業距離と目標速度との関係を適切に設定した場合には、操作レバー50の操作量とニブラ34の移動量との関係を、作業距離の長さに関わらず、同じまたはほぼ同じにすることができる。これにより、作業距離の長さに応じて操作レバー50の操作量を調整する技量を持たない非熟練者であっても、アタッチメント30を容易に操作することができる。
【0080】
また、図4に示すように、複数のアタッチメント30の各々が目標速度で駆動されるように、複数のシリンダ40の各々が駆動される。複数のアタッチメント30が2つ以上同時に駆動される複合動作においても、操作レバー50の操作量とニブラ34の移動量との関係を、作業距離の長さに関わらず、同じまたはほぼ同じにすることができる。
【0081】
また、図4に示すように、操作レバー50への操作開始前に、作業距離が算出される。そして、操作レバー50の操作中に、操作レバー50への操作開始前に算出した作業距離に基づいて目標速度が設定される。操作レバー50の操作量とシリンダ40の駆動量との関係が、操作レバー50の操作中に変化すると、作業者が操作しにくい場合がある。そこで、操作レバー50の操作中に、操作レバー50への操作開始前に算出した作業距離に基づいて目標速度を設定する。これにより、操作レバー50の操作量とシリンダ40の駆動量との関係が、操作レバー50の操作中に変化しない。よって、非熟練者は、アタッチメント30をより容易に操作することができる。
【0082】
また、図7に示すように、ニブラ34が被把持物90を把持している場合に、第1目標速度よりも遅い速度が第2目標速度として設定される。そして、駆動対象のアタッチメント30が第2目標速度で駆動されるように、駆動対象のアタッチメント30を駆動させるシリンダ40が制御される。ニブラ34が被把持物90を把持すると、機械本体24から最も遠い位置は被把持物90の先端になる場合がある。この場合、被把持物90の分だけ作業距離が長くなったとみなして目標速度を設定するのが妥当である。そこで、ニブラ34が被把持物90を把持している場合に、ニブラ34が被把持物90を把持していない場合よりも、目標速度を遅くする。これにより、操作レバー50の操作量と、アタッチメント30を駆動したときに最も速く移動すると想定される部分の移動量との関係を、ニブラ34が被把持物90を把持している場合と把持していない場合とで同等にすることができる。
【0083】
また、図9に示すように、ニブラ34が被把持物90を把持している場合に、アタッチメント30の回動軸から被把持物90の先端までの距離が作業距離として算出される。被把持物90の大きさを加味して作業距離を算出することで、操作レバー50の操作量と、アタッチメント30を駆動したときに最も速く移動すると想定される部分の移動量と、の関係を、ニブラ34が被把持物90を把持している場合と把持していない場合とで同等にすることができる。よって、より適切な目標速度を設定することができる。これにより、非熟練者は、アタッチメント30をより容易に操作することができる。
【0084】
また、図10に示すように、上下方向におけるニブラ34の向きに応じて、把持シリンダ45の作動圧の閾値が変化される。ニブラ34が下を向いているとき、把持部35の自重は、把持部35を閉じる方向に把持シリンダ45に作用する場合がある。一方、ニブラ34が上を向いているとき、把持部35の自重は、把持部35を閉じる方向とは逆方向(把持部35を開く方向)に把持シリンダ45に作用する場合がある。よって、これらの場合には、ニブラ34が下を向いている方が、ニブラ34が上を向いているよりも、把持部35を閉じる向きに把持シリンダ45を作動させる際の作動圧は小さくなる。よって、ニブラ34が下方を向くほど、小さな作動圧で被把持物90を把持することができる。そこで、この場合、ニブラ34が下方を向くほど、把持シリンダ45の作動圧の閾値を小さくする。これにより、一対の把持部35が被把持物90を把持していることを精度よく検出することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
1 作業機械
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 キャブ
24 機械本体
30 アタッチメント
31 ブーム(下部アタッチメント)
32 ジブ
33 アーム
34 ニブラ(先端アタッチメント)
35 把持部
40 シリンダ(アクチュエータ)
41 ブームシリンダ
42 ジブシリンダ
43 アームシリンダ
44 ニブラシリンダ
45 把持シリンダ(シリンダ)
50 操作レバー(操作手段)
55 把持検出装置
58 撮像装置
60 傾斜角センサ
61 ブーム傾斜角センサ
62 ジブ傾斜角センサ
63 アーム傾斜角センサ
64 ニブラ傾斜角センサ
71 第1油圧ポンプ
72 第2油圧ポンプ
73 第1レギュレータ
74 第2レギュレータ
75 ブーム制御弁
76 ジブ制御弁
77 アーム制御弁
80 コントローラ(作業距離算出手段、目標速度設定手段、駆動制御手段、計測装置、閾値変化手段)
83 記憶装置
85 パイロットポンプ
87a,87b ブーム比例弁
88a,88b ジブ比例弁
89a,89b アーム比例弁
90 被把持物
100,101 撮像範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11