(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080910
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】着色繊維体の製造方法および複合体
(51)【国際特許分類】
B27N 3/04 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B27N3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194266
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】牛山 智幸
(72)【発明者】
【氏名】柳 仙妹
(72)【発明者】
【氏名】粂田 宏明
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260BA04
2B260BA07
2B260DA14
(57)【要約】
【課題】セルロース繊維および生物由来の色材を含む着色繊維体を、製造過程における生物由来の色材の無駄を抑制しつつ好適に製造することができる着色繊維体の製造方法を提供すること、また、前記着色繊維体の製造に好適に用いることができる複合体を提供すること。
【解決手段】本発明の着色繊維体の製造方法は、セルロース繊維と、複合体と、を含む混合物を気流によって堆積させる堆積工程と、前記混合物を加湿する加湿工程と、加湿された前記混合物を加熱および加圧することで繊維体を得る成形工程と、を含む着色繊維体の製造方法で、前記複合体は、水分を付与されることにより前記セルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と、複合体と、を含む混合物を気流によって堆積させる堆積工程と、
前記混合物を加湿する加湿工程と、
加湿された前記混合物を加熱および加圧することで繊維体を得る成形工程と、を含む着色繊維体の製造方法で、
前記複合体は、水分を付与されることにより前記セルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子を含む、着色繊維体の製造方法。
【請求項2】
前記結合材料は、澱粉である、請求項1に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項3】
前記生物由来の色材は、水溶性である、請求項1または2に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項4】
前記生物由来の色材は、水に対して不溶性である、請求項1または2に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項5】
前記複合粒子は、前記生物由来の色材の分散剤をさらに含む、請求項4に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項6】
前記分散剤は、生物由来のものである、請求項5に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項7】
前記複合粒子は、無機粒子をさらに含む、請求項1または2に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項8】
前記複合粒子は、可塑剤をさらに含む、請求項1または2に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項9】
前記可塑剤は、生物由来のものである、請求項8に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項10】
前記複合粒子の平均粒径は、1.0μm以上50μm以下である、請求項1または2に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項11】
前記成形工程に供される前記混合物中における含水率が12質量%以上40質量%以下である、請求項1または2に記載の着色繊維体の製造方法。
【請求項12】
セルロース繊維を含む着色繊維体の製造に用いられる複合体であって、
水分を付与されることにより前記セルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子を含む、複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色繊維体の製造方法および複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の地下資源の消費削減がますます強く求められている。
紙やパルプ成形体等の繊維体は木材等の生物由来資源が主原料であるが、それを着色する色材は地下資源から合成されたものが多く用いられている。
【0003】
特許文献1では、生物由来の色材で着色した繊維体として、天然色素で染色されたパルプを湿式抄紙することにより製造するカラーライナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生物由来の色材は合成色素と比較してコスト安定性や供給安定性に劣る場合がある。また、生物由来の色材は食品の着色や衣料品の染色等で近年その活用が急速に拡大しており、今後は原料となる生物の食料利用との競合も懸念される。したがって、生物由来の色材は必要最小限の量を無駄なく用いることが求められる。この点において、上記の特許文献に記載の技術では、パルプスラリーに天然色素を添加し、湿式抄紙法により紙を成形しているので、一部の天然色素しか紙の着色に利用されず、大部分の着色に利用されなかった天然色素は白水、すなわち、抄紙工程で発生した廃液に混入して廃棄物となってしまうため、天然色素の利用効率が低かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
【0007】
本発明の適用例に係る着色繊維体の製造方法は、セルロース繊維と、複合体と、を含む混合物を気流によって堆積させる堆積工程と、
前記混合物を加湿する加湿工程と、
加湿された前記混合物を加熱および加圧することで繊維体を得る成形工程と、を含む着色繊維体の製造方法で、
前記複合体は、水分を付与されることにより前記セルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子を含む。
【0008】
本発明の適用例に係る複合体は、セルロース繊維を含む着色繊維体の製造に用いられる複合体であって、
水分を付与されることにより前記セルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の複合体の好適な実施形態を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、好適な実施形態の着色繊維体の製造装置の構成を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す着色繊維体の製造装置が実行する工程を順に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の着色繊維体の製造方法、複合体について説明する。
【0011】
[1]着色繊維体の製造方法
本発明の着色繊維体の製造方法は、セルロース繊維と、複合体と、を含む混合物を気流によって堆積させる堆積工程と、前記混合物を加湿する加湿工程と、加湿された前記混合物を加熱および加圧することで繊維体、特に着色繊維体を得る成形工程と、を含む。そして、複合体は、水分を付与されることにより前記セルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子を含む。
【0012】
これにより、セルロース繊維および生物由来の色材を含む成形体としての着色繊維体を、製造過程における生物由来の色材の無駄を抑制しつつ好適に製造することができる着色繊維体の製造方法を提供することができる。特に、少量の水を用いるだけで、所望の形状を有する着色繊維体を好適に製造することができる。すなわち、少量の水を用いるだけなので、生物由来の色材が廃液等に多く含まれること等による生物由来の色材等の無駄を効果的に防止することができる。また、乾式の成形方法に好適に適用することができ、着色繊維体の生産性や生産コスト、省エネルギー、着色繊維体の製造設備の小型化等の観点からも有利である。なお、本明細書において、乾式の成形方法とは、着色繊維体を製造する過程において、着色繊維体製造用原料を、水を含む液体中に浸漬することのない方法のことを言い、少量の水を用いる方法、例えば、着色繊維体製造用原料等に水を含む液体を噴霧する方法等も、乾式の成形方法に含まれることとする。
【0013】
また、上記のような構成により、強度に優れた着色繊維体を安定的に製造することができる。より具体的には、水分を付与されることにより結合力を発揮する結合材料を含む複合粒子を用いることにより、着色繊維体製造用原料の保存時や、着色繊維体の製造過程において、着色繊維体製造用原料中で不本意な凝集が生じることを効果的に防止することができ、安定的に着色繊維体を製造することができる。また、それとともに、着色繊維体の製造過程における加湿による水分付与により、結合力を発揮することができるため、着色繊維体中における結合材料とセルロース繊維との密着性を優れたものとすることができ、着色繊維体の強度を優れたものとすることができる。
【0014】
なお、上記のように、結合材料は、水分を付与されることによりセルロース繊維同士を結合する結合力を発揮するものであればよいが、ここでの「結合力を発揮する」とは、水分を付与しなかった場合に比べて明らかに結合力が増すことを意味し、例えば、水分を付与しなかった場合に比較的弱い結合力が得られる場合を排除するものではない。
【0015】
[1-1]堆積工程
堆積工程では、セルロース繊維および複合体を含む混合物を気流によって堆積させる。
【0016】
本工程でのセルロース繊維と複合体との混合比率は、特に限定されないが、本工程で得られる混合物中における複合体の含有量は、1質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上45質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以上40質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0017】
これにより、最終的に得られる着色繊維体中におけるセルロース繊維の含有率を十分に高いものとしつつ、当該着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。また、着色繊維体の製造過程における複合体の搬送をより円滑に行うことができる。
【0018】
本工程で、複合体と混合されるセルロース繊維は、例えば、後述する加湿工程、すなわち、混合物に対する加湿処理を行う工程に先立ち、予め加湿処理が施されたものであってもよい。また、セルロース繊維は、複合体との混合から、この混合により得られる混合物の堆積の間に、加湿されるものであってもよい。
【0019】
上記のような場合、本工程に供されるセルロース繊維中における含水率は、0.1質量%以上12質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上9.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
これにより、例えば、本工程前においてセルロース繊維が静電気の悪影響を受けること、例えば、セルロース繊維が着色繊維体の製造装置の壁面等に静電気で付着すること等を効果的に防止するこができ、また、セルロース繊維と複合体とをより均一に混合することができる。
【0021】
[1-1-1]セルロース繊維
セルロース繊維は、通常、本発明の着色繊維体の製造方法を用いて製造される着色繊維体の主成分であり、着色繊維体の形状の保持に大きく寄与するとともに、着色繊維体の強度等の特性に大きな影響を与える成分である。
【0022】
また、豊富な生物由来資源であるセルロース繊維を用いることにより、環境問題や埋蔵資源の節約等により好適に対応することができるとともに、着色繊維体の安定供給、コスト低減等の観点からも好ましい。また、セルロース繊維は、各種繊維の中でも、理論上の強度が特に高いものであり、着色繊維体の強度のさらなる向上の観点からも有利である。
【0023】
セルロース繊維は、通常、主としてセルロースで構成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられる。
また、セルロース繊維としては、漂白等の処理が施されたものを用いてもよい。
【0024】
また、セルロース繊維は、紫外線照射処理、オゾン処理、プラズマ処理等の処理が施されたものであってもよい。これにより、セルロース繊維の親水性をさらに高めることができ、結合材料との親和性を高めることができる。
【0025】
セルロース繊維の平均長さは、特に限定されないが、0.1mm以上50mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上5.0mm以下であるのがより好ましく、0.3mm以上3.0mm以下であるのがさらに好ましい。
【0026】
これにより、製造される着色繊維体の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。
【0027】
セルロース繊維の平均太さは、特に限定されないが、0.005mm以上0.5mm以下であるのが好ましく、0.010mm以上0.05mm以下であるのがより好ましい。
【0028】
これにより、製造される着色繊維体の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、着色繊維体の表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0029】
セルロース繊維の平均アスペクト比、すなわち、平均太さに対する平均長さは、特に限定されないが、10以上1000以下であるのが好ましく、15以上500以下であるのがより好ましい。
【0030】
これにより、製造される着色繊維体の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、製造される着色繊維体の表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0031】
[1-1-2]複合体
以下、セルロース繊維と混合して着色繊維体の製造に用いられる複合体、すなわち、本発明の複合体について詳細に説明する。
図1は、本発明の複合体の好適な実施形態を模式的に示す図である。
【0032】
複合体C10は、セルロース繊維を含む着色繊維体の製造に用いられるものである。そして、複合体C10は、水分を付与されることによりセルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含む複合粒子C1を含んでいる。
【0033】
これにより、セルロース繊維および生物由来の色材を含む成形体としての着色繊維体を、製造過程における生物由来の色材の無駄を抑制しつつ好適に製造することができる着色繊維体の製造方法に好適に用いることができる複合体を提供することができる。特に、少量の水を用いるだけで、所望の形状を有する着色繊維体を好適に製造することができる方法に好適に適用することができる。すなわち、少量の水を用いるだけなので、生物由来の色材が廃液等に多く含まれること等による生物由来の色材等の無駄を効果的に防止することができる。また、乾式の成形方法に好適に適用することができ、着色繊維体の生産性や生産コスト、省エネルギー、着色繊維体の製造設備の小型化等の観点からも有利である。
【0034】
また、強度に優れた着色繊維体の安定的な製造に用いることができる。より具体的には、水分を付与されることにより結合力を発揮する結合材料を含む複合粒子を用いることにより、着色繊維体製造用原料の保存時や、着色繊維体の製造過程において、着色繊維体製造用原料中で不本意な凝集が生じることを効果的に防止することができ、安定的に着色繊維体を製造することができる。また、それとともに、着色繊維体の製造過程における加湿による水分付与により、結合力を発揮することができるため、着色繊維体中における結合材料とセルロース繊維との密着性を優れたものとすることができ、着色繊維体の強度を優れたものとすることができる。
【0035】
[1-1-2-1]複合粒子
複合粒子C1は、複合体C10を構成する粒子であり、水分を付与されることによりセルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を一体となって含んでいる。
【0036】
特に、図示の構成では、複合粒子C1は、結合材料と生物由来の色材とを一体となって含む母粒子としての結合材料色材含有粒子C2と、その表面に付着した無機粒子C3と、を含むものである。
【0037】
[1-1-2-1-1]結合材料色材含有粒子
結合材料色材含有粒子C2は、水分を付与されることによりセルロース繊維同士を結合する結合力を発揮する結合材料と、生物由来の色材と、を含むものである。
【0038】
[1-1-2-1-1-1]結合材料
複合粒子C1を構成する結合材料としては、例えば、澱粉、グリコーゲン、アミロース、ヒアルロン酸、こんにゃく、天然ガム糊(エーテル化タマリンドガム、エーテル化ローカストビーンガム、エーテル化グアガム、アカシアアラビヤ系ガム)、繊維誘導糊(エーテル化カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、海藻類(アルギン酸ソーダ、寒天)、動物性蛋白質(コラーゲン、ゼラチン、加水分解コラーゲン、セリシン)等の天然物由来成分や、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、天然物由来成分であるのが好ましく、澱粉であるのがより好ましい。
【0039】
これにより、石油由来の材料の使用を抑制し、CO2排出量を削減しつつ、前述したような本発明による優れた効果が得られる。また、このような材料は、生分解性にも優れている。
【0040】
特に、澱粉は、水分を付与した後の加熱で、α化が進行することにより、好適に結合力を発揮する材料、すなわち、水分を付与されることによりセルロース繊維同士を結合する結合力を好適に発揮する結合材料である。また、澱粉は、水酸基を有するセルロース繊維との間で、水素結合のような非共有結合で結合力を発揮し、セルロース繊維との結合力に優れ、セルロース繊維に対して優れた被覆性を示すため、複合体C10を用いて製造される着色繊維体の強度等をより優れたものとすることができる。
【0041】
澱粉は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子材料である。
澱粉は、アミロース、アミロペクチンの少なくとも一方を含む。
【0042】
また、澱粉としては、加工澱粉、変性澱粉を用いてもよい。加工澱粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉等のエステル化澱粉、エーテル化澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸物エステル化リン酸架橋澱粉、尿素リン酸化エステル化澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、高アミロースコーンスターチ等が挙げられる。また、変性澱粉としては、例えば、α化澱粉、デキストリン、ラウリルポリグルコース、カチオン化澱粉、熱可塑性澱粉、カルバミン酸澱粉等が挙げられる。
また、澱粉としては、例えば、葛粉、片栗粉等を用いてもよい。
【0043】
特に、結合材料は、重量平均分子量が50,000以上400,000以下の澱粉であるのが好ましい。
【0044】
これにより、結合材料の吸水効率をより優れたものとすることができ、水分付与量がより少ない場合であっても、十分な強度の着色繊維体を製造することができる。より具体的には、少量の水を付与した場合でも、加熱によるα化が好適に進行し、複合体C10を用いた着色繊維体の生産性を優れたものとすることができるとともに、製造される着色繊維体の強度等を優れたものとすることができる。また、上記のような所定の分子量の澱粉は、水分付与による不本意な変性を特に生じにくい。
【0045】
このように重量平均分子量が所定範囲の値となるように制御された澱粉は、例えば、以下のようにして好適に得ることができる。例えば、天然の澱粉を水に懸濁させた後、澱粉が糊化しない条件下で、硫酸、塩酸、あるいは次亜塩素酸ナトリウムを作用させることにより、重量平均分子量が所定範囲の値となるように制御された澱粉を得ることができる。また、例えば、天然の澱粉を直接、あるいはごく少量の塩酸等の揮発酸を水で希釈し加えて、よく混和、熟成、低温で乾燥した後、120~180℃に加熱することにより、重量平均分子量が所定範囲の値となるように制御された澱粉を得ることができる。また、例えば、天然の澱粉を水とともに加熱した糊液を酸または酵素で加水分解するという処理を施すことにより、重量平均分子量が所定範囲の値となるように制御された澱粉を好適に得ることができる。
【0046】
上記のように、結合材料としての澱粉の重量平均分子量は、50,000以上400,000以下であるのが好ましいが、70,000以上300,000以下であるのがより好ましく、80,000以上200,000以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0047】
なお、澱粉の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定から求めることができる。後述する実施例で示す重量平均分子量も、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定から求められた値である。
【0048】
結合材料粒子C2中に占める結合材料の含有率は、40質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがさらに好ましく、95質量%以上であるのが特に好ましい。
【0049】
これにより、製造される着色繊維体の着色濃度を十分に高いものとしつつ、着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。
【0050】
[1-1-2-1-1-2]生物由来の色材
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2は、生物由来の色材を含んでいる。本発明において、生物由来とは、生物から直接的に取得できる成分のほか、生物から直接的に取得できる成分の誘導体も含まれる。ここで、石油等の化石燃料もその起源をたどれば生物由来といえなくもないが、本発明においては、化石燃料に由来するものは、生物由来には含めない。
【0051】
生物由来の色材としては、例えば、有彩色色材と無彩色色材が挙げられ、その中でも、好ましくは、後述する植物炭末色素および生物由来の有彩色色材のうち少なくとも1つを含む。
【0052】
また、本明細書において、「有彩色」であるとは、上質紙等の白色の記録媒体に対して、記録媒体表面に全てインクを付着させることができる最少の付着量を以てインクを付着させたテストパターンに対して、測色機を用いてCIELAB測色を行い、1.0以上の彩度(C*値)を有すること、を意味する。一方で、無彩色色材とは、白色、黒色、および、白と黒の混合により得られる色等の彩度が1.0未満である色材を意味する。
【0053】
生物由来の色材は、水溶性のものであっても、水に対して不溶性のものであってもよい。
【0054】
従来の湿式抄紙法においては、水溶性の色材を用いると、当該色材がパルプスラリー中に溶解してしまい色材の利用効率が特に悪くなりやすく、また、セルロース繊維に染着できるものしか使うことができないという問題があった。これに対し、本発明では、水溶性の色材を用いた場合でも、上記のような問題の発生が十分に防止され、色材の利用効率の向上の効果が特に顕著に発揮され、また、セルロース繊維への染着性が悪い染料も用いることができる。
【0055】
従来の湿式抄紙法においては、水に対して不溶性の色材を用いると、当該色材をパルプスラリー中に分散添加して用いた場合に、最終的に得られる着色繊維体から前記色材が脱離しやすいという問題があった。これに対し、本発明では、水に対して不溶性の色材を用いた場合でも、前記色材と結合材料とを一体となって含む複合粒子を用いるため、製造される着色繊維体において結合材料が繊維に結着されることとなり、着色繊維体から色材が脱離しにくくなる。
【0056】
本明細書において、水に対して不溶性とは、20℃における水に対する溶解度が0.1g/100g水以下であることを意味し、水溶性とは、20℃における水に対する溶解度が0.1g/100g水超であることを意味する。
【0057】
生物由来の色材としての有彩色色材としては、例えば、フラボノイド系色素、キノイド系色素、カロテノイド系色素、およびその他の生物を起源とする色素等が挙げられる。
【0058】
フラボノイド系色素としては、例えば、ベニバナ赤色素、ベニバナ黄色素、ウコン色素、カカオ色素、タマリンド色素、カキ色素、コウリャン色素等が挙げられる。キノイド系色素としては、例えば、コチニール色素、ラック色素、アカネ色素等が挙げられる。カロテノイド系色素としては、例えば、βカロテン、クチナシ色素、トウガラシ色素、アナトー色素(ベニノキ色素)、マリーゴールド色素、トマト色素、等が挙げられる。その他の生物を起源とする色素としては、例えば、クロロフィル色素、ベニコウジ色素、インド藍、ビートレッド等が挙げられる。また、アカビート色素(ビートレッド色素)等のベタニン系色素、アカキャベツ色素、ムラサキイモ色素、アカダイコン色素、ブドウ果皮色素、シソ色素、エルダーベリー色素、ムラサキトウモロコシ色素等のアントシアニン系色素、スピルリナ色素等のフィコシアニン系色素を用いることもできる。
【0059】
生物由来の色材としての無彩色色材としては、例えば、植物炭末色素、イカスミ色素等が挙げられる。植物炭末色素としては、例えば、備長炭、竹炭、活性炭、白炭、黒炭、成形木炭、オガ炭、梅炭、マングローブ炭、もみ殻燻炭、ヤシガラ炭等が挙げられる。植物炭末色素は、好ましくは、備長炭および竹炭よりなる群から選択される少なくとも1種である。これにより、着色繊維体の発色性を向上させることができる。
【0060】
また、生物由来の色材としては、耐熱性に優れる色材を用いるのが好ましい。特に、着色繊維体の製造過程での加熱温度に耐えうる程度の耐熱性、より具体的には、例えば、80℃以上の耐熱性を有する色材を用いるのが好ましい。
【0061】
このような耐熱性を有する色材としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。すなわち、耐熱性を有する黄色系の色材としては、例えば、ウコン色素、クチナシ黄色素、ベニバナ黄色素、βカロテン、マリーtゴールド色素、トウガラシ色素、アナトー色素等が挙げられる。また、耐熱性を有する赤色系の色材としては、例えば、ラック色素、コチニール色素、ベニコウジ色素、アカキャベツ色素、クチナシ色素、ムラサキイモ色素、アカダイコン色素、ブドウ果皮色素、シソ色素、ベニバナ赤色素、トマト色素等が挙げられる。また、耐熱性を有する青色系の色材としては、例えば、クチナシ青色素、クロレラ末、クロロフィル、インド藍等が挙げられる。また、耐熱性を有する黒色系の色材としては、例えば、イカスミ色素、竹炭、備長炭、オガ炭、ヤシガラ炭、もみ殻燻炭等植物炭末色素等が挙げられる。また、耐熱性を有する茶色系の色材としては、例えば、カカオ色素、タマリンド色素、カキ色素、コウリャン色素、カラメル色素、麦芽抽出色素等が挙げられる。
【0062】
複合体C10中における生物由来の色材の含有量は、1.0質量%以上50.0質量%以下であるのが好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であるのがより好ましく、5.0質量%以上11.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0063】
これにより、製造される着色繊維体の強度を十分に優れたものとしつつ、着色繊維体の着色濃度を特に高いものとすることができる。
【0064】
[1-1-2-1-1-3]分散剤
例えば、生物由来の色材が水に対して不溶性である場合、複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2は、生物由来の色材の分散剤をさらに含んでいてもよい。
【0065】
これにより、複合粒子C1中における前記色材と結合材料との均一性をより優れたものとすることができ、不本意な組成のばらつきをより効果的に抑制することができる。その結果、最終的に得られる着色繊維体における不本意な着色むらをより効果的に防止することができる。
【0066】
このような分散剤は、生物由来のものでなくてもよいが、生物由来のものであるのが好ましい。
【0067】
これにより、前述したような分散剤を用いることによる効果を得つつ、地下資源の使用をより効果的に抑制することができる。
【0068】
生物由来の分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩、改質リグニン、レシチン、レシチン誘導体、酵素処理レシチン、サポニン、植物ステロール類、グリセリン脂肪酸エステル、ミリスチン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0069】
中でも、リグニンスルホン酸塩、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1つであるのが好ましい。SEC)「リグニンスルホン酸塩にはナトリウム塩やマグネシウム塩等があり、色材の小粒径化の観点からナトリウム塩が好ましい。
【0070】
これにより、前述した生物由来の色材との相互作用がより優れたものとなり、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0071】
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2が分散剤を含むものである場合、複合体C10中における分散剤の含有量は、3.0質量%以上20.0質量%以下であるのが好ましく、4.0質量%以上18.0質量%以下であるのがより好ましく、5.0質量%以上16.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0072】
これにより、前述したような結合材料を含むことによる効果、生物由来の色材を含むことによる効果、特に、水に対して不溶性の色材を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、分散剤を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0073】
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2が分散剤を含むものである場合、複合体C10中における生物由来の色材の含有量をXC1[質量%]、複合体C10中における分散剤の含有量をXD[質量%]としたとき、0.2≦XD/XC1≦2.0の関係を満たすのが好ましく、0.7≦XD/XC1≦1.8の関係を満たすのがより好ましく、0.9≦XD/XC1≦1.6の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0074】
これにより、最終的に得られる着色繊維体における不本意な着色むらをさらに効果的に防止することができるとともに、着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。
【0075】
[1-1-2-1-1-4]生物由来の色材以外の色材
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2は、生物由来の色材に加えて、生物由来の色材以外の色材をさらに含んでいてもよい。
【0076】
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2がその他の色材を含むものである場合、複合体C10中におけるその他の色材の含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上4.0%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0077】
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2がその他の色材を含むものである場合、複合体C10中における生物由来の色材の含有量をXC1[質量%]、複合体C10中におけるその他の色材の含有量をXC2[質量%]としたとき、0.007≦XC2/XC1≦0.99の関係を満たすのが好ましく、0.016≦XC2/XC1≦0.80の関係を満たすのがより好ましく、0.028≦XC2/XC1≦0.50の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0078】
[1-1-2-1-1-5]可塑剤
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2は、可塑剤をさらに含んでいてもよい。
【0079】
これにより、複合粒子C1が溶融と固化を繰り返しても変性しにくくなり、着色繊維体のリサイクル性をより優れたものとすることができる。
【0080】
このような可塑剤は、生物由来のものでなくてもよいが、生物由来のものであるのが好ましい。
【0081】
これにより、前述したような可塑剤を用いることによる効果を得つつ、地下資源の使用をより効果的に抑制することができる。
【0082】
可塑剤としては、例えば、澱粉等の結合材料が有する官能基との間で水素結合を形成可能な官能基を分子内に複数個有する化合物を好適に用いることができる。
【0083】
水素結合を形成可能な官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0084】
可塑剤の具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリグリセリン、チオジグリコール等のグリコール類、グルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、水あめ、トレハロース、麦芽糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、還元水あめ、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール類、スクラロール等の糖誘導体、酒石酸等のヒドロキシ酸類、ポリビニルアルコール、トレハロース、ポリヒドロキシ(メタ)クリレート、ヒアルロン酸等の多価アルコール;尿素、チオ尿素等の多価アミン;酒石酸等のヒドロキシ酸類、ヒアルロン酸等の多価カルボン酸;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
特に、可塑剤は、多価アルコール、多価アミン、多価カルボン酸のうち少なくとも1種を含むものであるのが好ましく、糖アルコール類であるのがより好ましく、エリスリトールであるのがさらに好ましい。
【0086】
これにより、例えば、製造された着色繊維体に比較的多量の水を付与した場合に、可塑剤が溶解して、セルロース繊維間に比較的大きい隙間が多く設けられた多孔質体となる。その結果、着色繊維体の生分解性を向上させることができる。
【0087】
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2が可塑剤を含むものである場合、複合体C10中における可塑剤の含有量は、5.0質量%以上65.0質量%以下であるのが好ましく、10.0質量%以上60.0質量%以下であるのがより好ましく、20.0質量%以上55.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0088】
これにより、前述したような結合材料を含むことによる効果、生物由来の色材を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、可塑剤を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0089】
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2が可塑剤を含むものである場合、複合体C10中における結合材料の含有量をXB[質量%]、複合体C10中における可塑剤の含有量をXP[質量%]としたとき、0.10≦XP/XB≦3.2の関係を満たすのが好ましく、0.20≦XP/XB≦2.3の関係を満たすのがより好ましく、0.40≦XP/XB≦1.5の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0090】
これにより、前述したような結合材料を含むことによる効果、生物由来の色材を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、可塑剤を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0091】
[1-1-2-1-1-6]その他の成分
複合粒子C1、特に、結合材料色材含有粒子C2は、上記以外の成分をさらに含んでいてもよい。以下、この項目内において、このような成分を「その他の成分」とも言う。
【0092】
その他の成分としては、例えば、繊維材料、凝集防止剤、難燃剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
ただし、複合粒子C1中におけるその他の成分の含有量は、10.0質量%以下であるのが好ましく、7.0質量%以下であるのがより好ましく、5.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0094】
[1-1-2-1-1-7]その他の条件
結合材料色材含有粒子C2の平均粒径は、1.0μm以上50μm以下であるのが好ましく、3.0μm以上40μm以下であるのがより好ましく、5.0μm以上30μm以下であるのがさらに好ましい。
【0095】
これにより、セルロース繊維と複合体C10とをより均一に混合することができるとともに、加湿工程での吸湿がより円滑に進行し、最終的に得られる着色繊維体の強度、信頼性をより優れたものとすることができる。また、このように、結合材料色材含有粒子C2の粒径が比較的小さいものであると、結合材料色材含有粒子C2の質量に対する表面積の比率が大きくなり、結合材料による吸水効率がより優れたものとなる。その結果、水分付与量がより少ない場合であっても、十分な強度の着色繊維体を製造することができる。また、複合体C10の流動性、取り扱いのしやすさがさらに向上する。
【0096】
なお、本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、メディアン径(頻度の累計50%のD50値)のことを指す。平均粒径は、例えば、マイクロトラックUPA(日機装社製)を用いた測定により求めることができる。
【0097】
結合材料色材含有粒子C2は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、結合材料色材含有粒子C2の製造方法としては、例えば、結合材料を含む組成物に生物由来の色材を含浸させる含侵法、結合材料および生物由来の色材を含む組成物を混錬する混練法、結合材料および生物由来の色材を含む液状の組成物を噴霧乾燥するスプレードライ法等が挙げられる。
【0098】
[1-1-2-1-2]無機粒子
複合粒子C1は、結合材料と生物由来の色材とを一体となって含むものであればよいが、図示の構成では、無機粒子をさらに含むものである。より詳しく説明すると、図示の複合粒子C1は、結合材料および生物由来の色材を含む、母粒子としての結合材料色材含有粒子C2と、その表面に付着した無機粒子C3と、を含むものである。
【0099】
これにより、無機粒子C3を含まない場合に比べて、複合体C10の保存時や、着色繊維体の製造過程における複合体C10の搬送時等に、複合粒子C1の不本意な凝集をより効果的に防止することができ、着色繊維体の製造過程において、セルロース繊維と複合粒子C1とをより均一に混合することができる。その結果、製造される着色繊維体における各成分の含有率の不本意なばらつきを抑制することができ、着色繊維体の強度、信頼性をより優れたものとすることができる。
【0100】
複合体C10中に含まれる複合粒子C1は、単一の結合材料色材含有粒子C2の表面に、単一の無機粒子C3が付着したものであってもよいが、複合体C10は、複合粒子C1として、単一の結合材料色材含有粒子C2の表面に、複数個の無機粒子C3が付着した粒子を含むのが好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0101】
無機粒子C3の平均粒径は、1nm以上20nm以下であるのが好ましく、5nm以上18nm以下であるのがより好ましい。
【0102】
これにより、前述したような無機粒子C3を含むことによる効果がより顕著に発揮される。また、無機粒子C3が結合材料色材含有粒子C2の表面に付着した複合粒子C1の表面に過剰な凹凸が生じることを好適に防止することができ、複合体C10の流動性をより優れたものとすることができる。また、結合材料色材含有粒子C2の表面により好適に無機粒子C3を付着させることができ、また、結合材料色材含有粒子C2の表面からの無機粒子C3の不本意な脱落や結合材料色材含有粒子C2内部への無機粒子C3の不本意な埋没等をより好適に防止することができ、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0103】
複合体C10中には、結合材料色材含有粒子C2に付着していない無機粒子C3、言い換えると、複合粒子C1を構成しない無機粒子C3が含まれていてもよいが、複合体C10中に含まれる無機粒子C3全体に占める複合粒子C1を構成する無機粒子C3の割合は、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましく、70質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0104】
無機粒子C3は、主として無機材料で構成されたものであればよい。また、無機粒子C3は、各部位で、実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、組成の異なる部位を有していてもよい。
【0105】
より具体的には、例えば、無機粒子C3は、母粒子が、少なくとも1種の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。言い換えると、無機粒子C3は、無機材料で構成された母粒子と、当該母粒子を被覆する表面処理剤による被覆層と、を有していてもよい。
【0106】
これにより、例えば、結合材料色材含有粒子C2の不本意な凝集をさらに効果的に防止したり、成形工程における結合材料のセルロース繊維表面での濡れ広がりをより良好なものとし、最終的に得られる着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。
【0107】
以下、複合体C10が、無機粒子C3として、無機材料で構成された母粒子と、当該母粒子を被覆する表面処理剤による被覆層と、を有するものを含む場合について、中心的に説明する。
【0108】
[1-1-2-1-2-1]母粒子
無機粒子C3の母粒子、言い換えると、無機粒子C3のうち、表面処理剤により表面処理された母材は、無機材料で構成されたものある。
【0109】
これにより、無機粒子C3の耐熱性をより優れたものとすることができ、前述したような効果がより確実に発揮される。
【0110】
無機粒子C3の母粒子の構成材料としては、例えば、各種金属材料、各種金属化合物、各種ガラス材料、各種炭素材料等が挙げられる。
【0111】
金属材料としては、例えば、Fe、Al、Cu、Ag、Ni等の単体金属やこれらのうちの少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。
【0112】
金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。
【0113】
ガラス材料としては、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0114】
炭素材料としては、例えば、ダイヤモンド、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン等が挙げられる。
【0115】
中でも、無機粒子C3の母粒子の構成材料としては、シリカが好ましい。言い換えると、無機粒子C3は、シリカを含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
【0116】
これにより、母粒子に対する表面処理剤による表面処理をより好適に行うことができ、母粒子と表面処理剤との密着性をより優れたものとすることができる。その結果、前述したような効果がより顕著に発揮される。また、シリカは、複合体C10を用いて製造される着色繊維体への色味への悪影響を与えにくい材料である。特に、着色繊維体が紙である場合、このような効果はより顕著に発揮される。
【0117】
無機粒子C3の母粒子は、主として前記無機材料で構成されたものであればよく、前記無機材料に加えて、有機材料を含んでいてもよい。
【0118】
ただし、無機粒子C3の母粒子中に占める前記無機材料の含有量は、90質量%以上であるのが好ましく、92質量%以上であるのがより好ましく、95質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0119】
[1-1-2-1-2-2]表面処理剤
上述したように、無機粒子C3は、無機材料で構成された母粒子と、当該母粒子を被覆する表面処理剤による被覆層と、を有しているのが好ましい。
【0120】
好ましい表面処理剤としては、例えば、フッ素含有化合物、ケイ素含有化合物等が挙げられる。このような表面処理剤を用いることにより、結合材料色材含有粒子C2や複合粒子C1の凝集がより好適に防止される。また、上記のような表面処理剤による表面処理が施された無機粒子C3を含むことにより、複合体C10の流動性、取り扱いのしやすさが向上する。これにより、着色繊維体の生産性を特に優れたものとすることができる。また、無機粒子C3の表面自由エネルギーをより効率よく低下させることができる。その結果、成形工程において、複合体C10はセルロース繊維の表面でより好適に濡れ広がりやすくなる。これにより、最終的に得られる着色繊維体において、セルロース繊維と結合材料との密着性がより優れたものとなり、着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。
【0121】
前記フッ素含有化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0122】
また、前記ケイ素含有化合物としては、例えば、トリメチルシリル末端を有するポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ末端を有するポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等の各種シリコーンオイル等が挙げられる。
【0123】
中でも、前記表面処理剤は、トリメチルシリル末端を有するポリジメチルシロキサンであるのが好ましい。言い換えると、無機粒子C3は、表面にトリメチルシリル基を有するものであるのが好ましい。
【0124】
これにより、複合粒子C1、結合材料色材含有粒子C2、無機粒子C3の凝集をより効果的に防止することができる。
【0125】
表面処理剤を用いる場合、1種の表面処理剤を用いてもよいし、複数種の表面処理剤を用いてもよい。
【0126】
複数種の表面処理剤を用いる場合、単一の母粒子について複数種の表面処理剤を用いてもよいし、複合体C10が無機粒子C3として互いに異なる表面処理剤で処理された粒子を含んでいてもよい。
【0127】
複合体C10中に含まれる無機粒子C3の母粒子:100質量部に対する表面処理剤の含有量は、0.5質量部以上7質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上5質量部以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0128】
[1-1-2-1-3]その他の条件
複合粒子C1の平均粒径は、1.0μm以上50μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上45μm以下であるのがより好ましく、3.0μm以上40μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0129】
[1-1-2-2]その他の構成
複合体C10は、前述した複合粒子C1を含むとともに、さらに、他の構成を含んでいてもよい。例えば、複合体C10は、前述した複合粒子C1とともに、結合材料色材含有粒子C2に付着していない無機粒子C3を含んでいてもよいし、結合材料を含みかつ生物由来の色材を含まない粒子を含んでいてもよい。
【0130】
ただし、複合体C10中における複合粒子C1の含有量は、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0131】
[1-1-2-3]その他の条件
複合体C10は、以下のような条件を満たすものであるのが好ましい。
【0132】
例えば、複合体C10中における結合材料色材含有粒子C2の含有量は、90.0質量%以上99.9質量%以下であるのが好ましく、95.0質量%以上99.7質量%以下であるのがより好ましく、97.0質量%以上99.4質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0133】
また、複合体C10中における無機粒子C3の含有量は、0.1質量%以上10.0質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上5.0質量%以下であるのがより好ましく、0.6質量%以上3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0134】
これにより、前述したような無機粒子C3を含むことによる効果がより顕著に発揮され、例えば、複合体C10の流動性をより優れたものとすることができ、最終的に得られる着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。
【0135】
[1-2]加湿工程
加湿工程では、堆積した前記混合物、すなわち、セルロース繊維および複合体C10を含む混合物を加湿する。
【0136】
これにより、後述する成形工程で、セルロース繊維と結合材料との接合強度、および、澱粉を介したセルロース繊維同士の接合強度を優れたものとすることができ、最終的に得られる着色繊維体の強度等を十分に優れたものとすることができる。また、成形工程での成形を比較的穏やかな条件で好適に行うことができる。
【0137】
前記混合物を加湿する方法は、特に限定されないが、前記混合物に対して非接触で行うのが好ましく、例えば、前記混合物を高湿度雰囲気下に置く方法、前記混合物を高湿度空間を通過させる方法、前記混合物に水を含む液体のミストを吹きかける方法、前記混合物を水を含む液体のミストが浮遊する空間を通過させる方法等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。より具体的には、前記混合物の加湿は、例えば、気化式、超音波式等の各種加湿器等を用いて行うことができる。前記混合物の加湿は、例えば、着色繊維体を製造する過程において、複数の段階で行ってもよい。なお、水を含む液体中には、例えば、防腐剤、防カビ剤、殺虫剤等が含まれていてもよい。
【0138】
[1-3]成形工程
成形工程では、加湿工程で加湿された前記混合物を加熱および加圧する。これにより、着色繊維体が得られる。なお、加湿工程と成形工程とは、同時進行的に行ってもよい。
【0139】
成形工程に供される混合物中における含水率は、12質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、13質量%以上38質量%以下であるのがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0140】
これにより、従来の抄造法と比べて、顕著に少ない水分で、十分な強度の着色繊維体を製造することができ、本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0141】
成形工程における加熱温度は、特に限定されないが、60℃以上250℃以下であるのが好ましく、70℃以上200℃以下であるのがより好ましく、80℃以上170℃以下であるのがさらに好ましい。
【0142】
これにより、セルロース繊維や複合体C10の構成成分の不本意な劣化、変性等を効果的に防止しつつ、セルロース繊維の表面で複合体C10をより好適に濡れ広がらせることができる。その結果、製造される着色繊維体の強度、信頼性をより優れたものとすることができる。また、省エネルギーの観点からも好ましい。特に、複合体C10が結合材料として澱粉を含む材料で構成されたものである場合、吸水している澱粉のα化を好適に進行させることができるとともに、着色繊維体の構成材料が不本意に劣化してしまうこと等を効果的に防止することができる。
【0143】
成形工程において前記混合物に加えられる圧力は、特に限定されないが、0.1MPa以上100MPa以下であるのが好ましく、0.3MPa以上80MPa以下であるのがより好ましい。
【0144】
これにより、セルロース繊維の表面で複合体C10をより好適に濡れ広がらせることができる。その結果、製造される着色繊維体の強度をより優れたものとすることができる。
本工程は、例えば、熱プレス、熱ローラー等を用いて行うことができる。
【0145】
本発明の着色繊維体の製造方法は、例えば、以下に述べる着色繊維体の製造装置を用いて好適に実行することができる。
【0146】
[2]着色繊維体の製造装置
次に、本発明に係る着色繊維体の製造装置について説明する。
【0147】
図2は、好適な実施形態の着色繊維体の製造装置の構成を示す概略側面図である。
図3は、
図2に示す着色繊維体の製造装置が実行する工程を順に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、
図2中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」または「上流側」、右側を「右」または「下流側」と言うことがある。
【0148】
以下の説明では、着色繊維体の製造装置の一例として、着色繊維体としてシートを製造するシート製造装置の例を挙げて説明する。
【0149】
図2に示すように、着色繊維体の製造装置であるシート製造装置100は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、ほぐし部18と、第2ウェブ形成部19と、シート形成部20と、切断部21と、ストック部22とを備えている。また、シート製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234とを備えている。
【0150】
シート製造装置100が備える各部の作動は、図示しない制御部によって制御されている。
【0151】
図3に示すように、本実施形態では、着色繊維体であるシートの製造方法は、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、ほぐし工程と、第2ウェブ形成工程と、加湿工程と、シート形成工程と、切断工程とを有する。そして、シート製造装置100がこれらの工程を順に実行することができる。
【0152】
以下、シート製造装置100が備える各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕部12にシート状材料M1を供給する原料供給工程を行う部分である。このシート状材料M1としては、セルロース繊維を含むシート状材料である。
【0153】
粗砕部12は、原料供給部11から供給されたシート状材料M1を空気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行う部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、ホッパー122とを有している。
【0154】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間でシート状材料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0155】
ホッパー122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、ホッパー122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0156】
また、ホッパー122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、ホッパー122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含む図示しないフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってホッパー122等に付着するのを抑制することができる。
【0157】
ホッパー122は、流路である管241を介して、解繊部13に接続されている。ホッパー122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0158】
解繊部13は、粗砕片M2を空気中等の気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行う部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数のセルロース繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0159】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、ローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0160】
また、解繊部13は、ローターの回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0161】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0162】
選別部14は、解繊物M3を、セルロース繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行う部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊されたセルロース繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0163】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0164】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
【0165】
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている流路である管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側すなわち上流側が管241と接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0166】
また、ドラム部141からの第1選別物M4-1は、空気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する分離部である第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行う部分である。第1ウェブ形成部15は、分離ベルトであるメッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0167】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0168】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0169】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、原料供給部11から粗砕部12にシート状材料M1を供給した際に、シート状材料M1とともに混入することがある。この塵や埃は、メッシュベルト151の目開きよりも小さい。これにより、塵や埃は、メッシュベルト151を通過して、さらに下方に落下する。
【0170】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引することができる。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0171】
また、吸引部153は、流路である管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0172】
回収部27には、流路である管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0173】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0174】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0175】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行う部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161に第1ウェブM5が巻き込まれることにより、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0176】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0177】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と前述した複合体C10とを混合する混合工程を行う部分である。この混合部17は、複合体供給部171と、流路である管172と、ブロアー173とを有している。
【0178】
管172は、細分部16のハウジング部162と、ほぐし部18のハウジング部182とを接続しており、細分体M6と複合体C10との混合物M7が通過する流路である。
【0179】
管172の途中には、複合体供給部171が接続されている。複合体供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、複合体C10を管172に供給することができる。管172に供給された複合体C10は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0180】
なお、複合体供給部171からは、複合体C10とともに、例えば、セルロース繊維の凝集や複合体C10の凝集を抑制するための凝集抑制剤、セルロース繊維等を燃えにくくするための難燃剤等が含まれていてもよい。
【0181】
また、管172の途中には、複合体供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173は、ほぐし部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と複合体C10とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と複合体C10とが均一に分散した状態で、ほぐし部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0182】
ほぐし部18は、混合物M7における、互いに絡み合ったセルロース繊維同士をほぐすほぐし工程を行う部分である。ほぐし部18は、ドラム部181と、ドラム部181を収納するハウジング部182とを有する。
【0183】
ドラム部181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部181には、混合物M7が流入してくる。そして、ドラム部181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さいセルロース繊維等が、ドラム部181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされることとなる。
【0184】
また、ドラム部181でほぐされた混合物M7は、空気中に分散しつつ落下して、ドラム部181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行う部分である。本実施形態での第2ウェブ形成工程は、セルロース繊維と複合体C10とを含む混合物を気流によって堆積させる堆積工程である。第2ウェブ形成部19は、分離ベルトであるメッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0185】
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0186】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0187】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引することができる。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0188】
吸引部193には、流路である管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0189】
ハウジング部182は、加湿部234と接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング部182内を加湿することができ、よって、混合物M7がハウジング部182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0190】
メッシュベルト191上における第2ウェブM8の搬送方向の下流側には搬送部195が配置される。搬送部195は、メッシュベルト191上の第2ウェブM8を、メッシュベルト191から剥がして加圧部201に向けて搬送する。搬送部195は、メッシュベルト195aと、張架ローラー195bと、吸引部195cと、を有する。メッシュベルト195aは、張架ローラー195bによって張架され、空気を通す構成となっている。メッシュベルト195aは、張架ローラー195bの自転により移動可能に構成される。吸引部195cは、メッシュベルト195aを挟んで第2ウェブM8に対して対向する位置に配置される。吸引部195cは、ブロアーを備え、ブロアーの吸引力によってメッシュベルト195aに上向きの気流を発生させる。この気流によって第2ウェブM8を吸引する。
【0191】
これにより、第2ウェブM8をメッシュベルト191から剥がし、メッシュベルト191から剥がされた面の反対側の面を、メッシュベルト195aに吸着させることができる。メッシュベルト195aに吸着した第2ウェブM8は、メッシュベルト195aに接触した状態で搬送される。
【0192】
搬送部195の下方には加湿部236が配置されている。加湿部236は、前述した加湿工程を行う部位であり、メッシュベルト195aに接触している第2ウェブM8に向けて水分を付与する。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、最終的に得られる着色繊維体としてのシートSにおけるセルロース繊維と結合材料との結合力を好適なものとすることができる。また、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。加湿部236では、水分としては、例えば、水蒸気またはミストを第2ウェブM8に付与する。これにより、第2ウェブM8に均一に水分を付与することができる。
【0193】
加湿部236は、第2ウェブM8の下方から水分を付与する。加湿部236は、例えば、水を貯留可能な容器と、当該容器の底部に配置された圧電振動子と、を備えるものとすることができる。例えば、前記容器の上部は開口され、当該開口が第2ウェブM8側に向くように前記容器が配置されている。圧電振動子を駆動させることで、水中に超音波が発生し、前記容器内にミストが発生する、発生したミストは前記容器の開口を介して第2ウェブM8に供給される。第2ウェブM8の下方から水分を付与することで、加湿部236やその付近に結露が発生した場合でも、水滴が第2ウェブM8に落下することがない。すなわち、例えば、第2ウェブM8に対して上方から水分を付与した場合、加湿部236やその付近に水分が付着し、水滴として落下し、水滴がウェブに付着するおそれがある。この場合、第2ウェブM8に対する水分の付与が不均一となるが、上記のような構成により、水滴の落下等が抑制され、着色繊維体としてのシートSの品質に影響を及ぼすことが効果的に防止される。
【0194】
また、搬送部195の吸引部195cは、メッシュベルト195aを挟んで加湿部236と対向する位置に配置されている。これにより、吸引部195cにより加湿部236で発生した水分を含む気流が第2ウェブM8の内部を通過し、第2ウェブM8の内部まで水分を付与することができる。これにより、第2ウェブM8をメッシュベルト191から剥がしてメッシュベルト195aに吸着させる機能と、第2ウェブM8の内部まで水分を付与する機能とを共通の吸引部195cで担うことができる。したがって、シート製造装置100の構成を簡素化できる。
【0195】
メッシュベルト195aに接触している第2ウェブM8の面とは反対側の面側から水分を付与されることにより、メッシュベルト195aに接触している側の面はその反対側の面に比べ粘着力が弱い状態で搬送可能となる。このため、水分が付与された第2ウェブM8がメッシュベルト195aに張り付くことを抑制できる。
【0196】
第2ウェブ形成部19の下流側には、シート形成部20が配置されている。シート形成部20は、第2ウェブM8からシートSを形成する成形工程であるシート形成工程を行う部分である。このシート形成部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0197】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、これらの間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0198】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、これらの間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、複合体C10が溶融して、この溶融した複合体C10を介してセルロース繊維同士が結着する。これにより、着色繊維体としてのシートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0199】
シート形成部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行う部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0200】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断するものである。
【0201】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。
【0202】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の大きさの着色繊維体としてのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0203】
[3]着色繊維体
次に、本発明に係る着色繊維体について説明する。
【0204】
本発明に係る着色繊維体は、前述した本発明の着色繊維体の製造方法を用いて製造されたものである。
【0205】
これにより、セルロース繊維を含みかつ強度に優れた着色繊維体を提供することができる。
【0206】
本発明に係る着色繊維体が含む各成分は、上記[1-1-1]、上記[1-1-2-1-1]、上記[1-1-2-1-2]で説明したのと同様の条件を満たすものであるのが好ましい。
【0207】
本発明に係る着色繊維体の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、ブロック状、球状、三次元立体形状等、いかなるものであってもよいが、本発明に係る着色繊維体は、シート状をなすものであるのが好ましい。なお、ここでいうシート状とは、厚さが30μm以上30mm以下、密度が0.05g/cm3以上1.5g/cm3以下となるように成形された着色繊維体を指すとする。
【0208】
これにより、例えば、着色繊維体を記録媒体等として好適に用いることができる。また、前述したような装置を用いることにより、より効率よく製造することができる。
【0209】
本発明に係る着色繊維体がシート状の記録媒体である場合、その厚さは、30μm以上3mm以下であるのが好ましい。
【0210】
これにより、着色繊維体を記録媒体としてより好適に用いることができる。また、前述したような装置を用いることにより、より効率よく製造することができる。
【0211】
本発明に係る着色繊維体がシート状の記録媒体である場合、その密度は、0.6g/cm3以上0.9g/cm3以下であるのが好ましい。
これにより、着色繊維体を記録媒体としてより好適に用いることができる。
【0212】
本発明に係る着色繊維体は、その少なくとも一部が前述した本発明の着色繊維体の製造方法を適用して製造されたものであればよく、さらに、他の部位を有していてもよい。また、本発明の着色繊維体の製造方法で述べた工程の後に、後処理が施されたものであってもよい。
【0213】
本発明に係る着色繊維体の用途は、特に限定されず、例えば、記録媒体、液体吸収体、緩衝材、吸音材等が挙げられる。
【0214】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0215】
例えば、前述した実施形態では、複合体が結合材料色材含有粒子の表面に無機粒子が付着した複合粒子を含むものである場合について中心的に説明したが、複合体は、結合材料と生物由来の色材とを一体となって含む複合粒子を含むものであれば、無機粒子を含まないものであってもよい。
【0216】
また、前述した実施形態では、複合体を構成する無機粒子が、無機材料で構成された母粒子に表面処理剤による表面処理を施したものである場合について中心的に説明したが、無機粒子は、表面処理剤による表面処理が施されていないものであってもよい。この場合、無機粒子は、上記[1-1-2-1-2-1]で説明したのと同様の条件を満たすものであるのが好ましい。
【0217】
また、シート製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0218】
また、本発明に係る着色繊維体は、上述した装置を用いて製造されるものに限定されず、いかなる装置を用いて製造されたものであってもよい。
【実施例0219】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[4]複合体の調製
(実施例A1)
まず、水に対して不溶性の生物由来の色材としてのウコン色素:10.0質量部と、色材の分散剤としてのミリスチン酸デカグリセリル:10.0質量部と、水:80.0質量部とを混合した後、ビーズミルを用いて処理して、色材の分散液を得た。ビーズミルを用いた処理は、粉砕メディアとしてφ0.3mmのジルコニアビーズを用いて、アジテータ周速:12m/s、60分間という条件で行った。このようにして得られた色材の分散液中に含まれるウコン色材の平均粒径は、185μmであった。なお、ミリスチン酸デカグリセリルは、生物由来の分散剤である。
【0220】
次に、上記のようにして得られた色材の分散液:40.0質量部と、結合材料としての重量平均分子量が80000である澱粉:18.0質量部と、生物由来の可塑剤としてのエリスリトール:18.0質量部と、水:324.0質量部とをビーカー内で混合し、この混合液を入れたビーカーを、電子レンジの庫内に入れ、600Wで4分間マイクロ波を照射し、糊化液を得た。
【0221】
このようにして得られた糊化液をスプレードライで乾燥し、平均粒径が5.3μmである結合材料色材含有粒子の集合体を得た。
【0222】
その後、この結合材料色材含有粒子の集合体をヘンシェルミキサー(日本コークス社製FMミキサー(FM 20C/I))に充填し、結合材料色材含有粒子の集合体:100質量部に対して、無機粒子としての表面にジメチルシリル基を有するフュームドシリカ(トクヤマ社製 DM-10):1質量部を添加して、6000rpmの回転数で1時間撹拌処理を行うことにより、複合体を調製した。
【0223】
このようにして得られた複合体は、無機粒子であるフュームドシリカが、結合材料色材含有粒子である澱粉粒子の表面に付着した複合粒子を含むものであった。複合体中に含まれる無機粒子の平均粒径は14nmであり、複合体中に含まれる結合材料色材含有粒子の平均粒径は3.0μmであった。
【0224】
(実施例A2~A4)
色材の分散液の調製に用いる成分の種類、使用量を表1に示すように変更し、糊化液の調製に用いる各成分の使用量を表2に示すようにした以外は、前記実施例A1と同様にして、複合体を調製した。
【0225】
(実施例A5)
まず、水溶性の生物由来の色材としての青色クチナシ色素:20.0質量部と、水:80.0質量部とを混合して、色材の溶液を得た。
【0226】
次に、上記のようにして得られた色材の溶液:20.0質量部と、結合材料としての重量平均分子量が200000である澱粉:18.0質量部と、生物由来の可塑剤としてのエリスリトール:18.0質量部と、水:344.0質量部とをビーカー内で混合し、この混合液を入れたビーカーを、電子レンジの庫内に入れ、600Wで4分間マイクロ波を照射し、糊化液を得た。
【0227】
このようにして得られた糊化液をスプレードライで乾燥し、平均粒径が10.2μmである結合材料色材含有粒子の集合体を得た。
【0228】
その後、この結合材料色材含有粒子の集合体をヘンシェルミキサー(日本コークス社製FMミキサー(FM 20C/I))に充填し、結合材料色材含有粒子の集合体:100質量部に対して、無機粒子としての表面にジメチルシリル基を有するフュームドシリカ(トクヤマ社製 DM-10):1質量部を添加して、6000rpmの回転数で1時間撹拌処理を行うことにより、複合体を調製した。
【0229】
このようにして得られた複合体は、無機粒子であるフュームドシリカが、結合材料色材含有粒子である澱粉粒子の表面に付着した複合粒子を含むものであった。複合体中に含まれる無機粒子の平均粒径は14nmであり、複合体中に含まれる結合材料色材含有粒子の平均粒径は3.0μmであった。
【0230】
(実施例A6、A7)
色材の溶液の調製に用いる成分の種類、使用量を表1に示すように変更し、糊化液の調製に用いる各成分の使用量を表2に示すようにした以外は、前記実施例A5と同様にして、複合体を調製した。
【0231】
前記各実施例での複合体の調製に用いた色材の分散液、色材の溶液の構成を表1にまとめて示し、前記各実施例での複合体の調製に用いた糊化液の成分を表2にまとめて示した。なお、前記各実施例では、いずれも、複合体中に含まれる結合材料色材含有粒子全体に占める複合粒子を構成する結合材料色材含有粒子の割合が90質量%以上であり、複合体中に含まれる無機粒子全体に占める複合粒子を構成する無機粒子の割合が90質量%以上であった。
【0232】
【0233】
【0234】
[5]着色繊維体としてのシートの製造
(実施例B1)
本実施例では、前記実施例A1で調製した複合体を用いて、以下のようにして着色繊維体としてのシートを製造した。
【0235】
まず、
図2に示すようなシート製造装置を用意し、セルロース繊維源としての市販コピー用紙(富士ゼロックス社製、GR70-W)をシート状材料として用意した。
【0236】
次に、シート製造装置の原料供給部に上記のシート状材料を供給するとともに、複合体供給部に前記実施例A1で調製した複合体を供給して、シート製造装置の運転を行い、粗砕工程、解繊工程、選別工程、第1ウェブ形成工程、分断工程、混合工程、ほぐし工程、堆積工程である第2ウェブ形成工程、加湿工程、成形工程であるシート形成工程、切断工程の処理を施し、着色繊維体としてのA4サイズのシートを製造した。得られたシートの坪量は、90g/m2であった。また、得られたシートは、目視において、色むらのない均一な黄色を呈するものであった。
【0237】
このとき、最終的に得られる着色繊維体としてのシートが、原料として、セルロース繊維:90質量部に対して、複合体を10質量部含むものとなるように調整した。また、加湿工程において、当該加湿工程に供される混合物:100質量部に対して、20質量部の水分を付与するように調整した。また、加熱部で加熱加圧を行う際の加熱温度を80℃、加熱部で加熱加圧を行う際の圧力を70MPa、加熱部で加熱加圧を行う際の加熱加圧時間を15秒間とした。
【0238】
(実施例B2~B9)
複合体として表2に示すものを用いた以外は、前記実施例B1と同様にして着色繊維体としてのA4サイズのシートを製造した。実施例B2~B9で得られたシートは、いずれも、目視において、色むらのないものであった。特に、実施例B2で得られたシートは、黒色を呈するものであり、実施例B3で得られたシートは、赤色を呈するものであり、実施例B4で得られたシートは、藍色を呈するものであり、実施例B5で得られたシートは、青色を呈するものであり、実施例B6で得られたシートは、黄色を呈するものであり、実施例B7で得られたシートは、赤色を呈するものであった。
【0239】
[6]評価
[6-1]着色繊維体の強度
前記実施例B1~B9で製造された着色繊維体としてのシートから、100mm×20mmの短冊を切り出し、当該短冊の長手方向について破断強度を測定した。破断強度の測定には、島津製作所社製のオートグラフAGS-1Nを使用し、20mm/secの引張速度で破断強度を測定し、そこから比引張強度を算出し、以下の基準に従い評価した。比引張強度が大きいほど、強度に優れていると言える。
【0240】
A:比引張強度が25Nm/g以上である。
B:比引張強度が20Nm/g以上25Nm/g未満である。
C:比引張強度が15Nm/g以上20Nm/g未満である。
D:比引張強度が10Nm/g以上15Nm/g未満である。
E:比引張強度が10Nm/g未満である。
【0241】
[6-2]流動性
前記実施例B1~B9で着色繊維体の製造に用いた複合体について、粉体特性評価装置(パウダテスタPT-X、ホソカワミクロン社製)を用いて、安息角、圧縮度を測定した。
【0242】
これらの測定結果から、安息角[°]と圧縮度[%]の積である流動性値を求め、以下の基準に従い評価した。流動性値が小さいほど、流動性に優れていると言える。
【0243】
A:流動性値が10未満である。
B:流動性値が10以上12未満である。
C:流動性値が12以上14未満である。
D:流動性値が14以上17未満である。
E:流動性値が17以上である。
これらの結果を表3にまとめて示す。
【0244】
【0245】
表3から明らかなように、本発明では優れた結果が得られた。また、前記実施例B1~B9では、いずれも、原料として用いた色材を効率よく利用することができ、用いた色材を、廃液等、シートの構成成分以外の形態で、シート製造装置の外部に排出することはなかった。
【0246】
また、堆積工程で得られる混合物中における複合体の含有量が1質量%以上50質量%以下となるように堆積工程でのセルロース繊維と複合体との混合比率を種々変更した以外は、前記実施例B1~B9と同様にして着色繊維体としてのシートを製造し、これらのシートについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0247】
また、セルロース繊維と複合体との混合物が堆積して形成された第2ウェブに対する水分の付与量、すなわち、加湿工程において混合物に対して付与する水分量を、加湿工程終了時点における前記混合物中における含水率が12質量%以上40質量%以下となるように種々変更した以外は、前記実施例B1~B9と同様にして着色繊維体としてのシートを製造し、これらのシートについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0248】
また、成形工程における加熱温度を60℃以上250℃以下の範囲内で種々変更した以外は、前記実施例B1~B9と同様にして着色繊維体としてのシートを製造し、これらのシートについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0249】
また、成形工程において前記混合物に加える圧力を0.1MPa以上100MPa以下の範囲内で種々変更した以外は、前記実施例B1~B9と同様にして着色繊維体としてのシートを製造し、これらのシートについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0250】
また、成形工程における加熱加圧時間を1秒間以上60秒間以下の範囲内で種々変更した以外は、前記実施例B1~B9と同様にして着色繊維体としてのシートを製造し、これらのシートについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
100…シート製造装置、11…原料供給部、12…粗砕部、121…粗砕刃、122…ホッパー、13…解繊部、14…選別部、141…ドラム部、142…ハウジング部、15…第1ウェブ形成部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、16…細分部、161…プロペラ、162…ハウジング部、17…混合部、171…複合体供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、18…ほぐし部、181…ドラム部、182…ハウジング部、19…第2ウェブ形成部、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、195…搬送部、195a…メッシュベルト、195b…張架ローラー、195c…吸引部、20…シート形成部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、21…切断部、211…第1カッター、212…第2カッター、22…ストック部、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、27…回収部、C10…複合体、C1…複合粒子、C2…結合材料色材含有粒子、C3…無機粒子、M1…シート状材料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、S…シート