(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080914
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】蒸着材、蒸着装置、蒸着方法、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/16 20230101AFI20240610BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240610BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20240610BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240610BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240610BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240610BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K59/10
H10K50/11
H10K50/15
H10K50/16
H10K85/60
C23C14/24 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194273
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇毅
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD73
3K107DD76
3K107DD78
3K107FF03
3K107FF05
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG28
3K107GG34
4K029AA09
4K029AA24
4K029CA01
4K029DB06
4K029DB12
4K029DB18
(57)【要約】
【課題】蒸着膜の均一性の向上、または蒸着膜の劣化の低減を達成する。
【解決手段】蒸着材(4)は、蒸発材(41)と、融点が蒸発材の沸点よりも低く、沸点が蒸発材の沸点よりも高く、かつ、蒸発材に対し不活性である溶融材(42)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発材と、
融点が前記蒸発材の沸点よりも低く、沸点が前記蒸発材の沸点よりも高く、かつ、前記蒸発材に対し不活性である溶融材と、を含む蒸着材。
【請求項2】
前記溶融材はフッ素系材料を含む請求項1に記載の蒸着材。
【請求項3】
前記溶融材は常温下において液体である請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項4】
前記蒸発材の沸点と前記溶融材の融点との差は10℃以上である請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項5】
前記蒸発材の沸点と前記溶融材の沸点との差は10℃以上である請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項6】
前記蒸発材の質量に対する前記溶融材の質量は1.5倍以上2.5倍以下である請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項7】
前記蒸発材は有機蛍光材料または有機りん光材料を含む請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項8】
前記蒸発材は正孔輸送性または電子輸送性を有する有機材料を含む請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項9】
前記蒸発材は昇華性を有し、前記蒸発材の沸点は前記蒸発材の昇華点である請求項1または2に記載の蒸着材。
【請求項10】
坩堝と、
前記坩堝の内部を加熱するシーズヒータと、を備え、
前記シーズヒータは、所定の方向における、前記坩堝の第1端と、前記坩堝の前記第1端の反対の側に位置する第2端との間の、一部のみに延伸する蒸着装置。
【請求項11】
物体の表面に蒸着膜を形成するための蒸着方法であって、
前記蒸着膜の材料を含む蒸発材と、融点が前記蒸発材の沸点よりも低く、沸点が前記蒸発材の沸点よりも高く、かつ、前記蒸発材に対し不活性である溶融材と、を含む蒸着材の上方への前記物体の設置と、
前記蒸着材の、前記蒸発材の沸点以上、かつ、前記溶融材の沸点未満への加熱と、を含む蒸着方法。
【請求項12】
第1電極、第2電極、および前記第1電極と前記第2電極との間の少なくとも発光層を含む機能層をそれぞれ有する複数の発光素子を備えた表示装置の製造方法であって、
請求項11に記載の蒸着方法による、前記機能層の少なくとも一部の形成を含む表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸着材、蒸着装置、蒸着方法、および当該蒸着方法を用いた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜の形成法として、坩堝中の材料をヒータにて溶融および蒸発させて、坩堝の上方に位置する物体の表面に接触させて凝固させることにより、当該材料を含む薄膜を物体の表面に形成する蒸着法が知られている。蒸着法においては、形成される薄膜の均一性、または薄膜の劣化の低減等の観点から、坩堝内の材料がより均一に加熱されることが求められる。特許文献1は、坩堝に蒸発材料と当該蒸発材料よりも熱伝導率の高い伝熱媒体とを収容し、坩堝を加熱することにより、蒸発材料をより均一に加熱することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される伝熱媒体の間における熱伝導は、点接触した伝熱媒体同士の間の熱伝導が支配的となる。このため、上述の伝熱媒体を含む材料を用いた蒸着においては、蒸発材料の全体に十分に熱が伝導せず、蒸発材料の加熱の均一性が低減する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る蒸着材は、蒸発材と、融点が前記蒸発材の沸点よりも低く、沸点が前記蒸発材の沸点よりも高く、かつ、前記蒸発材に対し不活性である溶融材と、を含む。
【0006】
本開示の一態様に係る蒸着装置は、坩堝と、前記坩堝の内部を加熱するシーズヒータと、を備え、前記シーズヒータは、所定の方向における、前記坩堝の第1端と、前記坩堝の前記第1端の反対の側に位置する第2端との間の、一部のみに延伸する。
【0007】
本開示の一態様に係る蒸着方法は、物体の表面に薄膜を形成するための蒸着方法であって、前記薄膜の材料を含む蒸発材と、融点が前記蒸発材の沸点よりも低く、沸点が前記蒸発材の沸点よりも高く、かつ、前記蒸発材に対し不活性である溶融材と、を含む蒸着材の上方への前記物体の設置と、前記蒸着材の、前記溶融材の融点以上、かつ、前記溶融材の沸点未満への加熱と、蒸発した前記蒸発材の前記表面における凝固と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
蒸着膜の均一性の向上、または蒸着膜の劣化の低減を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る蒸着装置の概略断面図である。
【
図2】実施形態1に係る蒸着装置の概略斜視図である。
【
図3】実施形態1に係る蒸着装置による蒸着材の加熱の様子を示す、蒸着装置の概略断面図である。
【
図4】実施例および比較例に係る蒸着装置の蒸着レートの測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施形態2に係る蒸着装置の概略断面図である。
【
図6】実施形態3に係る表示装置の概略平面図である。
【
図7】実施形態3に係る表示装置の概略断面図である。
【
図8】実施形態3に係る表示装置の製造方法について示すフローチャートである。
【
図9】実施形態3に係る蒸着工程について示す工程側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
<蒸着装置:概要>
本実施形態においては、自発光素子、特に有機EL素子を複数備えた表示装置の製造過程において、素子の少なくとも一部の層の形成に用いられる蒸着装置を例に挙げて、
図1および
図2を参照して説明する。
【0011】
図2は、本実施形態に係る蒸着装置1を示す概略斜視図である。
図2においては、蒸着装置の、後述する坩堝2の筐体21の外形について、紙面に向かって背面側に位置する部分についても点線にて示している。
【0012】
図1は、
図2に示す断面I、換言すれば、後に詳述するが、坩堝2の底部22または天板24に垂直、かつ、坩堝2の各ノズル25の空洞26を通る断面について、蒸着装置1を示す概略断面図である。ただし、
図1においては、後述するシーズヒータ3が側壁23の内部に位置する例を示すために、シーズヒータ3を一点鎖線にて示している。
【0013】
蒸着装置1は、坩堝2と、ヒータとしてのシーズヒータ3と、蒸着材4と、を備える。蒸着装置1は、例えば、図示しない真空チャンバ内に配置される。蒸着装置1は、後述する方法によって、坩堝2の内部をシーズヒータ3によって加熱し、蒸着材4に含まれる材料を所定の物体の表面に接触かつ凝固させることにより、当該材料の薄膜を物体の表面に形成する装置である。
【0014】
<蒸着装置:坩堝>
坩堝2は、筐体21を有する。筐体21は、例えば、略矩形の底部22と、底部22の端部から略垂直に立設する側壁23と、側壁23の底部22と反対の側に端部に形成された略矩形の天板24とを含む。このため、筐体21は略長方形状の外形を有し、また、略長方形状の空洞を内部に有する。本実施形態において、筐体21は、底部22または天板24と平行な方向に長手方向D1を有する。
図1の各概略断面図においては、長手方向D1を紙面に向かって左右方向として示す。なお、本開示においては、特に断らない限り、筐体21の底部22から天板24への方向を「上」と称し、その逆方向を「下」と称する。
【0015】
坩堝2は、さらに、筐体21の天板24上に位置する複数のノズル25を有する。各ノズル25は略円筒形状を有し、天板24から坩堝2の外部への方向、特に、天板24の上面からさらに上方向に突出する。各ノズル25は、各ノズル25の長手方向、特に上下方向に延伸する空洞26を有し、筐体21の内部と連通する。このため、筐体21の内外は、各ノズル25の空洞26を介して連通している。
【0016】
坩堝2の各部は、蒸着装置の坩堝の壁部として用いられる従来公知の材料を含んでいてもよい。坩堝2の材料として、好適には、チタン等の高耐食性または高耐熱性に優れる材料が挙げられる。
【0017】
<蒸着装置:シーズヒータ>
シーズヒータ3は、坩堝2の内部、特に筐体21の内部を加熱するためのヒータである。シーズヒータ3は、例えば、ニクロム線等の電熱線を酸化マグネシウム等の絶縁粉末を介して金属パイプ等によって覆った線状の構造を有する。シーズヒータ3は、図示しない電源等から電熱線に電流を流すことにより、周囲の物体を加熱する。
【0018】
シーズヒータ3の位置は、坩堝2の内部を加熱できる限り、特に限られない。例えば、シーズヒータ3は筐体21の側壁23の内部に形成されていてもよい。あるいは、シーズヒータ3は筐体21の外部に位置し、側壁23を介して筐体21の内部を加熱してもよい。坩堝2は、筐体21を格納する箱体をさらに有してもよく、シーズヒータ3は当該箱体と筐体21との間に位置してもよい。また、蒸着装置1はシーズヒータ3を複数備えてもよく、例えば、長手方向D1と略平行の2つの側壁23のそれぞれの内部にシーズヒータ3を備えてもよく、他の側壁23の内部にシーズヒータ3を備えてもよい。
【0019】
シーズヒータ3は、ある程度自由に屈曲させることができる。本実施形態において、シーズヒータ3は、上下方向に延伸する複数の直線部31と、2つの直線部31の間を接続する複数の屈曲部32とを有する。複数の直線部31は、例えば、筐体21の長手方向D1に沿って配列される。特に、本実施形態において、シーズヒータ3は、長手方向D1における、坩堝2の第1端に位置する第1側壁27から、坩堝2の第1端の反対の側に位置する第2端に位置する第2側壁28まで延伸する。
【0020】
シーズヒータ3は、上述の通り屈曲させることができ、例えば、長手方向D1に平行な側壁23内部において第1側壁27から第2側壁28まで延伸するように形成できる。このように、シーズヒータ3を備える蒸着装置1は、シーズヒータ3の形状を坩堝2の内部をより均一に加熱するように設計することができる。
【0021】
<蒸着装置:蒸着材:蒸発材>
蒸着材4は、蒸発材41と溶融材42とを含む。例えば、蒸着材4は、坩堝2の筐体21の内部に、蒸発材41と溶融材42とを混合した状態にて収容される。
【0022】
蒸発材41は蒸着装置1によって物体の表面に形成される薄膜の材料を含む。蒸発材41は、シーズヒータ3により坩堝2の内部が加熱されることにより蒸発し、坩堝2の内部を充たす。さらに蒸発材41の蒸発が進行することにより、蒸発した蒸発材41はノズル25の空洞26を通って坩堝2の外部、特に坩堝2の上方に到達する。この状態において、坩堝2の上部、特にノズル25の上方に物体を設置することにより、物体の表面に蒸発した蒸発材41が接触する。物体の表面に接触した蒸発材41が、冷却され凝固することにより、蒸着装置1によって上記表面に蒸発材41を含む薄膜が形成される。
【0023】
ここで、蒸発材41は少なくとも真空下にて昇華性を有する材料を含む。換言すれば、少なくとも真空下における蒸発材41の沸点は昇華点である。また、蒸発材41は真空下かつ常温において固体であってもよい。この場合、坩堝2の内部を加熱することにより、蒸発材41は固体から液体を経ず昇華し気体となる。なお、本開示において、真空とは、1×10-4Pa以下の圧力下を指してもよい。
【0024】
一般に、同圧力下において、加熱によって固体から液体を経た後に気体に至る物質は、気体の状態から冷却した場合においても一度液体を経た後に固体となる。このため、このような物質が気体の状態において物体の表面に接触した場合、凝固するまでに一度液体となる。このため、当該物質は、液体の状態において、物体の表面を流動する、あるいは、表面から流出する場合があり、蒸着膜の均一性および成膜速度が低下する場合がある。蒸着装置1は、昇華性を有する蒸発材41を含む蒸着材4を備えることにより、気体の蒸発材41が物体の表面において液体を経ず凝固するため、形成される薄膜の均一性および成膜速度を向上させることができる。
【0025】
<蒸着装置:蒸着材:溶融材>
溶融材42は、少なくとも真空下において、融点が蒸発材41の沸点よりも低く、沸点が蒸発材41の沸点よりも高い材料である。このため、蒸着材4は加熱により、少なくとも、蒸発材41が固体であり溶融材42が液体である第1状態を経て、溶融材42が液体のまま蒸発材41が蒸発する第2状態に至る。
【0026】
坩堝2の内部において蒸着材4が加熱され、溶融材42が液体となった状態における蒸着装置1について、
図3を参照して説明する。
図3は、溶融材42が加熱により液体の溶融材43となった状態における蒸着装置1の概略断面図であり、
図1の概略断面図と対応する断面について示す。
【0027】
図3に示すように、蒸着装置1は、シーズヒータ3によって坩堝2の内部を加熱することにより、坩堝2中の蒸着材4を、液体の溶融材43中に固体の蒸発材41が含まれる第1状態とする。蒸着材4が第1状態である場合、液体である溶融材43は、加熱により高温となった部分と加熱が不十分であり低温である部分との間において熱対流する。このため、蒸発材41の間を対流する溶融材43、または、対流する溶融材43と共に移動する蒸発材41は、複数の蒸発材41の間の熱伝導を媒介する。
【0028】
このため、蒸着材4が第1状態である場合、複数の蒸発材41の間の熱伝導は、蒸着材4が蒸発材41のみを含む場合と比較してより効率的に発生する。また、溶融材43の熱対流により、溶融材43自体についても加熱の均一性が向上する。したがって、蒸着材4は、上述した第2状態における蒸発材41の昇華を、坩堝2の位置および加熱のムラ等によらずより均一に発生させる。これにより、蒸着装置1は、ノズル25の空洞26を通って物体の表面に至る蒸発材41の蒸着レートについて、坩堝2の内部における局所的な昇華または瞬間的な突沸等による急峻なレート変動を低減する。
【0029】
本開示において、蒸着レートとは、蒸着装置1を用いて物体の表面に形成される、蒸発材41の材料を含む薄膜の、単位時間当たりの膜厚の増加量であり、換言すれば、蒸着レートは蒸着装置1による蒸着膜の成膜速度に相当する。このため、蒸着装置1を用いて蒸着膜を形成する場合、当該蒸着膜の均一性を向上させ、蒸着工程における空転ロスを低減する観点からは、蒸着レートがある所定値付近にて安定することが求められる。ゆえに、上述した理由から、蒸発材41と溶融材42とを双方含む蒸着材4を備えた蒸着装置1は、蒸着レートの安定性をより長時間確保し、蒸着膜の均一性を向上する。
【0030】
また、液体の溶融材43により蒸発材41の加熱の均一性が向上しているため、蒸着装置1は、全ての蒸発材41を昇華させるための蒸着材4の過度な加熱の必要性が低減する。したがって、蒸着装置1は、蒸発材41を昇華させるために必要な坩堝2の加熱温度を低減させることができる。ゆえに、蒸発材41と溶融材42とを双方含む蒸着材4を備えた蒸着装置1は、蒸発材41を劣化させ得る坩堝2の加熱温度を低減できるため、蒸発材41の熱劣化に伴う蒸着膜の劣化を低減する。
【0031】
蒸発材41が昇華する前に、蒸着材4の全体を十分均一に加熱するために、蒸着装置1は、所定期間以上、蒸着材4を第1状態としつつ蒸着材4の加熱を行ってもよい。このため、蒸着材4の第1状態の維持を容易とする観点から、蒸発材41の沸点と溶融材42の融点との差は10℃以上であってもよく、15℃以上であってもよく、20℃以上であってもよい。
【0032】
蒸着装置1は、蒸着材4を第2状態として蒸着膜の形成を行う。これにより、蒸着材4が含む溶融材42を蒸発させることなく蒸発材41のみを昇華させて蒸着膜の形成を行えるため、蒸着装置1は蒸着膜の品質を向上させる。このため、蒸着材4の第2状態の維持を容易とする観点から、蒸発材41の沸点と溶融材42の沸点との差は10℃以上であってもよく、15℃以上であってもよく、20℃以上であってもよい。
【0033】
なお、本実施形態において、溶融材42は常温下において固体である例を説明したが、気体でない限りこれに限られず、例えば、溶融材42は常温下において液体であってもよい。この場合、溶融材42の熱対流は坩堝2の内部の加熱を開始する時点から発生するため、蒸着装置1は蒸着材4の全体をより均一に加熱できる。また、蒸発材41と溶融材42とのそれぞれは、固体の状態において、紛体であってもよく、板状等の形状を有してもよい。
【0034】
さらに、固体の溶融材42を液体の溶融材43に加熱した後、蒸着膜の形成を停止する等のために蒸着材4の加熱を停止し冷却した場合に、固体に戻った溶融材42は坩堝2の筐体21の形状に沿って凝固してもよい。ここで、液体の溶融材43が冷却され固体の溶融材42となる場合においても、溶融材43の熱対流および蒸発材41の撹拌により、蒸着材4はより均一に冷却される。このため、蒸着装置1は、動作停止時等に蒸着材4を冷却する場合においても、蒸発材41および溶融材42の偏在を低減し、再度蒸着材4を加熱した場合においても均一に蒸着材4を加熱できる。
【0035】
溶融材42は、温度、相、および圧力によらず、蒸発材41に対し不活性である。本開示において、2物質が不活性であるとは、当該2物質の間における反応による、2物質の何れかの組成が変化、および2物質と異なる物質の生成の、何れも生じないことを指す。このため、蒸着材4は、蒸発材41が溶融材42により変質することを低減し、蒸着膜の品質および均質性を向上させる。
【0036】
溶融材42は、例えば、フッ素系材料を含んでもよい。一般に、フッ素系材料は単体における安定性が高いために、他材料との反応性が低い傾向にある。このため、溶融材42がフッ素系材料を含むことにより、蒸着材4は蒸発材41に対する溶融材42の反応性をより低減できる。具体的には、溶融材42は、フルオロカーボン化合物等を含んでもよい。
【0037】
<蒸着材と溶融材との体積比および質量比>
以下、蒸発材41と溶融材42との体積比および質量比について考察するために、第2状態の蒸着材4における蒸発材41の昇華について考察する。第2状態の蒸着材4における蒸発材41は、上述の通り、溶融材43の熱対流により溶融材43と共に撹拌される。ここで、溶融材43の液面から突出した部分を有する蒸発材41は、溶融材43との接触面積が小さいために、溶融材43の内部に位置する蒸発材41よりも低温であると考えられる。このため、第2状態の蒸着材4において、溶融材43の熱対流により、溶融材43の液面から突出した部分を有する蒸発材41は溶融材43中に撹拌誘導され、一方、溶融材43の内部の蒸発材41は溶融材43の液面の側に撹拌誘導される。
【0038】
なお、溶融材43の内部に位置する蒸発材41は、溶融材43の表面張力により、昇華点を超える温度まで加熱された場合においても昇華しないと考えられる。一方、上述した撹拌誘導により、溶融材43の内部に位置する蒸発材41が溶融材43の液面まで到達した場合、蒸発材41は昇華するものと考えられる。
【0039】
以上より、蒸着材4における蒸発材41の撹拌誘導をより効率的に発生させ、蒸発材41の昇華を効率的に発生させる観点から、坩堝2中の溶融材42の体積に対する蒸発材41の体積の比は所定以下であってもよい。一方、第2状態の蒸着材4においても昇華しない蒸発材41の割合を低減し、蒸発材41の昇華を効率的に発生させる観点から、坩堝2中の溶融材42の体積に対する蒸発材41の体積の比は所定以上であってもよい。
【0040】
蒸着材4における蒸発材41の撹拌誘導と蒸発材41の昇華の効率化とを両立する観点から、坩堝2中の溶融材42の体積に対する蒸発材41の体積は倍程度であってもよい。
【0041】
本実施形態において、蒸発材41として、嵩密度が0.50g/cm3である昇華性材料を採用したとする。また、坩堝2の筐体21の内部空洞は、底面積30cm2の直方形状を有するとする。この場合、筐体21に蒸発材41をその高さが10cmとなるように投入した場合、材料の体積は300cm3であり、重量は150gとなる。この場合、溶融材43の体積に対する蒸発材41の体積を倍とするためには、坩堝2に投入される溶融材43の体積を150cm3とすればよく、換言すれば、筐体21に溶融材43をその高さが5cmとなるように投入すればよい。
【0042】
例えば、溶融材42が、常温において固体であり嵩密度2.06g/cm3の材料である場合、上記において坩堝2に投入される溶融材42は308gとなり、坩堝2中の蒸発材41の質量に対し2.06倍の質量を有する。また、溶融材42が、常温において液体であり密度1.85g/cm3の材料である場合、上記において坩堝2に投入される溶融材42は278gとなり、坩堝2中の蒸発材41の質量に対し1.85倍の質量を有する。
【0043】
上記の通り、蒸着材4における蒸発材41の撹拌誘導と蒸発材41の昇華の効率化とを両立する観点から、蒸発材41の質量に対する溶融材の質量は倍程度であってもよい。特に、蒸発材41の質量に対する溶融材42の質量は、1.5倍以上2.5倍以下であってもよい。
【0044】
<実施例に係る蒸着装置の評価>
本実施形態に係る蒸着材4を備えた蒸着装置1の性能について、実施例に係る蒸着装置と比較例に係る蒸着装置との蒸着膜の形成能力を測定することにより評価した。実施例に係る蒸着装置は、本実施形態に係る蒸着装置1と同一の構成を備え、換言すれば、坩堝2の内部に蒸発材41と溶融材42とを含む蒸着材4を備える。比較例に係る蒸着装置は、坩堝2の内部に、蒸着材4に代えて蒸発材41のみを含む蒸着材を備える点のみを除き、本実施形態に係る蒸着装置1と同一の構成を備える。
【0045】
実施例に係る蒸着装置と比較例に係る蒸着装置とについて、シーズヒータ3の温度、および加熱時間のそれぞれに対する蒸着レートの高さを測定した。
【0046】
実施例および比較例における蒸着レートの測定結果を
図4のグラフにまとめた。はじめに、
図4のグラフG1を参照して実施例および比較例に係る蒸着装置を評価する。グラフG1の横軸は各蒸着装置のシーズヒータ3の温度を表し、縦軸は各蒸着装置の蒸着レートの高さを表す。換言すれば、グラフG1は、各蒸着装置のシーズヒータ3の各温度に対する蒸着レートの高さを表す。グラフG1において、実施例の測定結果は実線、比較例の測定結果は点線にて示す。
【0047】
実施例および比較例において、目標とする蒸着レートの所定値を、グラフG1に示すレートRとする。一般に、蒸発材の熱劣化に伴う蒸着膜の劣化を低減する観点からは、蒸着レートがレートRとなるシーズヒータ3の温度が低いことが求められる。グラフG1に示すように、実施例に係る蒸着装置の蒸着膜の蒸着レートがレートRとなるシーズヒータ3の温度T1は、比較例に係る蒸着装置の蒸着膜の蒸着レートがレートRとなるシーズヒータ3の温度T2よりも低い。このことは、実施例に係る蒸着装置の蒸着材4が、比較例に係る蒸着装置の蒸着材と比較して、より効率的に坩堝2の内部にて加熱されることによるものと考えられる。したがって、同一の蒸着レートにて蒸着を行う場合、実施例に係る蒸着装置は、比較例に係る蒸着装置と比較して、蒸発材の熱劣化に伴う蒸着膜の劣化を低減できる。
【0048】
次に、
図4のグラフG2を参照して実施例および比較例に係る蒸着装置を評価する。グラフG2の横軸は各蒸着装置のシーズヒータ3の温度を略一定としつつ加熱した時間である加熱時間を表し、縦軸は各蒸着装置の蒸着レートの高さを表す。換言すれば、グラフG2は、各蒸着装置のシーズヒータ3の温度を略一定とした場合における、蒸着レートの経時変化を表す。グラフG2においても、実施例の測定結果は実線、比較例の測定結果は点線にて示す。
【0049】
ここで、グラフG2に示す蒸着レートは、実施例に係る蒸着装置のシーズヒータ3の温度をT1、比較例に係る蒸着装置のシーズヒータ3の温度をT2として測定した。このため、蒸着膜の均一性を向上する、および蒸着工程における蒸着レートの変動に伴う空転ロスを低減する観点から、グラフG2に示す蒸着レートはレートRの近傍に安定することが求められる。
【0050】
グラフG2に示すように、比較例に係る蒸着装置の蒸着レートは、レートRから急激に上昇しレートRに戻ることを示すピークPの存在が複数確認できる。ピークPは、比較例に係る蒸着装置の坩堝2の内部における蒸発材41の間の熱伝導について点接触によるものが支配的となり、急激に蒸発材41が加熱される瞬間が発生するために確認されたものと考えられる。
【0051】
一方、グラフG2に示すように、実施例に係る蒸着装置の蒸着レートは、レートRの近傍において安定し、大きなピークが確認されない。このことは、実施例に係る蒸着装置の坩堝2の内部における蒸発材41が溶融材42によってより均一に加熱されることによると考えられる。したがって、実施例に係る蒸着装置は、比較例に係る蒸着装置と比較して、より安定した蒸着レートにて蒸着膜が形成できるため、蒸着膜の均一性を向上させ、また、蒸着工程における蒸着レートの変動に伴う空転ロスを低減する。
【0052】
〔実施形態2〕
<シーズヒータの短縮>
図5は、本実施形態に係る蒸着装置5の概略断面図であり、
図1に示す断面と対応する断面について示す。
図5においては、後述するシーズヒータ6が側壁23の内部に位置する例を示すために、シーズヒータ6を一点鎖線にて示している。
【0053】
本実施形態に係る蒸着装置5は、前実施形態に係る蒸着装置1と比較して、シーズヒータ3に代えてシーズヒータ6を備える点を除き、同一の構成を備える。シーズヒータ6は、シーズヒータ3と比較して、長さを除き同一の構成を備える。特に、本実施形態に係る蒸着装置5は、前実施形態において説明した蒸着材4を坩堝2の内部に備える。
【0054】
シーズヒータ6は、上下方向に延伸し筐体21の長手方向D1に沿って配列される複数の直線部61と、2つの直線部61の間を接続する複数の屈曲部62とを有する。直線部61と屈曲部62とのそれぞれの個数は、直線部31と屈曲部32とのそれぞれの個数よりも少ない。このため、シーズヒータ6は、シーズヒータ3よりも短く、また、坩堝2の長手方向D1における第1側壁27から第2側壁28までの一部のみに延伸する。
【0055】
例えば、シーズヒータ6は、
図5に示すように、シーズヒータ6は、坩堝2の長手方向D1における、坩堝2の中央側に位置してもよい。換言すれば、坩堝2の長手方向D1に平行な側壁23において、第1側壁27と第2側壁28とのそれぞれに近傍に、シーズヒータ6が位置していなくともよい。
【0056】
このため、シーズヒータ6は、坩堝2の所定方向における一部分、例えば、長手方向D1における坩堝2の中央付近のみを加熱することとなる。これにより、シーズヒータ6により蒸着材4を加熱した場合、長手方向D1における坩堝2の中央付近における蒸着材4が先に加熱される。
【0057】
ここで、長手方向D1における坩堝2の中央付近における蒸着材4が含む溶融材42は加熱により液体の溶融材43となり、長手方向D1における坩堝2の両端部側に向かって流動する。このため、シーズヒータ6による蒸着材4の加熱により、長手方向D1における坩堝2の端部付近における蒸着材4が含む溶融材42にも熱が伝導し、液体の溶融材43となる。
【0058】
これにより、本実施形態に係る蒸着装置5の坩堝2の内部においても、シーズヒータ6による蒸着材4の加熱により、液体の溶融材43の熱対流、および当該熱対流による蒸発材41の撹拌が発生する。特に、蒸着装置5の坩堝2の内部においては、温度の高い長手方向D1における坩堝2の中央付近における溶融材43と、温度の低い長手方向D1における坩堝2の端部付近における溶融材43との間において、熱対流が発生する。
【0059】
以上により、所定方向の一部のみに設けられたシーズヒータ6により加熱された場合においても、蒸着材4の蒸発材41の加熱の均一性は維持される。したがって、蒸着装置5は、前実施形態において説明した理由と同一の理由から、蒸着膜の均一性を向上する。
【0060】
本実施形態に係る蒸着装置5は、所定方向の一部のみに設けられたシーズヒータ6を備える。このため、蒸着装置5が備えるシーズヒータ6は、前実施形態に係る蒸着装置1が備えるシーズヒータ3と比較して、長さが短縮される。したがって、シーズヒータ6を備える蒸着装置5は、シーズヒータ3を備える蒸着装置1と比較して、初期コストの削減および構造の簡素化を達成する。
【0061】
また、シーズヒータ6は、直線部61と比較して劣化の進行が早い屈曲部62を、シーズヒータ3の屈曲部32よりも減らすことができる。したがって、シーズヒータ6を備える蒸着装置5は、シーズヒータ3を備える蒸着装置1と比較して、ランニングコストを削減する。また、シーズヒータ6はシーズヒータ3と比較して整備を行うべき箇所が少なくなり、また構造も簡素となるため、蒸着装置5は蒸着装置1と比較してより容易に整備できる。
【0062】
ここで、本実施形態に係る蒸着装置5のシーズヒータ6によって、坩堝2の内部の、溶融材42を含まない蒸着材4を加熱する場合を検討する。この場合、蒸発材41は、坩堝2の長手方向D1における中央近傍に位置するもののみが加熱され、端部付近に位置する蒸発材41の加熱が不十分となる場合がある。一方、上述した通り、蒸発材41と溶融材42とを双方備えた蒸着材4は、蒸着装置5のシーズヒータ6を用いた坩堝2の内部の加熱によっても、坩堝2の長手方向D1における位置によらずより均一に加熱される。したがって、蒸着膜の品質の向上とコストの低減とを両立する観点から、蒸着装置5は蒸着材4を用いた蒸着に特に適する蒸着装置である。
【0063】
〔実施形態3〕
<表示装置:概要>
前述した各実施形態に係る蒸着装置1または蒸着装置5は、例えば、自発光素子を備えた表示装置の製造工程において、当該自発光素子の薄膜の形成に用いることができる。本実施形態においては、自発光素子を備えた表示装置7および当該表示装置7の製造方法を説明することにより、前述した各実施形態に係る蒸着装置1または蒸着装置5による蒸着膜の形成方法について説明する。
【0064】
図6は本実施形態に係る表示装置7の概略平面図である。表示装置7は、例えば、テレビまたはスマートフォン等のディスプレイに用いることのできる装置である。表示装置7は、表示部DAと表示部DAの外周に形成された額縁部NAとを備える。表示装置7は、表示部DAに形成された後述する複数の発光素子のそれぞれからの発光を制御することにより、表示部DAにおいて表示を行う。額縁部NAには、表示部DAの複数の発光素子のそれぞれを駆動するためのドライバ等が形成されてもよい。
【0065】
本実施形態に係る表示装置7の表示部DAの構造について、
図7を参照してより詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る表示装置7の概略側断面図であり、
図6に示すVII-VII線矢視断面図である。特に、
図7は、本実施形態に係る表示装置7の平面視において、後述する青色サブ画素SPB、緑色サブ画素SPG、および赤色サブ画素SPRを通る断面について示す図である。
【0066】
図1に示すように、表示装置7は、基板8と発光素子9とを備える。特に、発光素子9は、基板8上に後述する青色発光素子9B、緑色発光素子9G、および赤色発光素子9Rを含む。表示装置7は、青色発光素子9Bが形成される青色サブ画素SPBと、緑色発光素子9Gが形成される緑色サブ画素SPGと、赤色発光素子9Rが形成される赤色サブ画素SPRとを配列して備える。青色発光素子9B、緑色発光素子9G、および赤色発光素子9Rは、それぞれ、青色光、緑色光、および赤色光を個々に出射する。これにより表示装置7は、例えば、図示しないドライバ等により、上述した発光素子を個々に制御することにより、カラー表示を行う。
【0067】
なお、本実施形態において、青色光とは、例えば、380nm以上500nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光である。また、緑色光とは、例えば、500nm超600nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光のことである。さらに、赤色光とは、600nm超780nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光のことである。
【0068】
<表示装置:基板>
基板8は、ガラス基板またはフィルム基板等を含み、例えば、表示装置7の平面視において、表示部DAと額縁部NAとに重なる位置に形成される。後述する発光素子9は、表示装置7の平面視において、基板8の表示部DAと重なる部分に形成されている。基板8の上面は表示装置7の表示面と略平行であってもよく、換言すれば、基板8の平面視は表示装置7の平面視と略同一であってもよい。
【0069】
<表示装置:発光素子:概要>
発光素子9は、基板8上に、第1電極としてのアノード91、機能層92、および第2電極としてのカソード93を、この順に積層して備える。機能層92は、アノード91の側から順に、正孔輸送層94、発光層95、および電子輸送層96を、この順に積層して含む。
【0070】
ただし、本実施形態において、発光素子9の各層の構成は、アノード91とカソード93との間に、少なくとも発光層95を含む機能層92が位置する限り、上記構成に限られない。例えば、発光素子9は、基板8上に、第1電極としてのカソード93、機能層92、および第2電極としてのアノード91を、この順に積層して備えてもよい。この場合、機能層92は、カソード93側から順に、電子輸送層96、発光層95、および正孔輸送層94を、この順に積層して備えてもよい。さらに、機能層92は、アノード91と正孔輸送層94との間の正孔注入層、あるいは、電子輸送層96とカソード93との間の電子注入層を備えていてもよい。
【0071】
発光素子9は、上述した複数のサブ画素のそれぞれに個別に形成されていてもよい。また、表示装置7は、平面視において基板8の額縁部NAと重なる位置に図示しないドライバ等を備えていてもよい。基板8は、各サブ画素に対応する図示しない画素回路を備えていてもよい。画素回路は、発光素子9のアノード91と電気的に接続してもよい。表示装置7は、ドライバ等の制御を介して、各画素回路によるアノード91への電圧印加を制御することにより、各発光素子9からの発光を制御してもよい。
【0072】
<表示装置:発光素子:アノードおよびカソード>
アノード91とカソード93との少なくとも何れか一方は、可視光を透過する透明電極である。透明電極としては、例えば、ITO、InZnO、SnO2、またはFTO等が用いられてもよい。また、アノード91またはカソード93のいずれか一方は反射電極であってもよい。反射電極は、可視光の反射率の高い金属材料を含んでいてもよく、当該金属材料は、例えば、Al、Ag、Cu、またはAuの単独またはこれらの合金であってもよい。
【0073】
<表示装置:発光素子:機能層>
正孔輸送層94は、機能層92の一層であり、アノード91から注入された正孔を発光層95側に輸送する層である。正孔輸送層94は、各アノード91と後述するバンクBKの開口を介して電気的に接続する。正孔輸送層94の材料には、正孔輸送性を有する有機または無機の材料を使用することができる。特に、本実施形態において、正孔輸送層94の材料は、蒸着法により成膜可能な有機の正孔輸送材料を含んでいてもよい。蒸着法により成膜可能な有機の正孔輸送材料としては、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、あるいはこれらの誘導体等が挙げられる。これらの材料についても、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合または積層して用いてもよい。
【0074】
電子輸送層96は、機能層92の一層であり、カソード93から注入された電子を発光層95へと輸送する層である。電子輸送層96は、電子輸送材料として、電子輸送性を有する有機または無機の材料を使用することができる。特に、本実施形態において、電子輸送層96の材料は、蒸着法により成膜可能な有機の電子輸送材料を含んでいてもよい。蒸着法により成膜可能な有機の電子輸送材料としては、リチウムキノラート錯体の他、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10-フェナントロリンまたはこれらの誘導体または金属錯体等が挙げられる。これらの材料についても、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合または積層して用いてもよい。
【0075】
発光素子9が正孔注入層を含む場合、正孔注入層は上述した正孔輸送性を有する材料を有してもよい。発光素子9が電子注入層を含む場合、電子注入層は上述した電子輸送性を有する材料を有してもよい。
【0076】
発光層95は、機能層92の一層であり、アノード91から注入された正孔とカソード93から注入された電子との再結合によって生じる励起子によって励起され発光する発光材料を備える。発光層95からの発光は、例えば、アノード91とカソード93とのうち少なくとも一方の透明電極から取り出される。
【0077】
特に、本実施形態において、発光層95の材料は、蒸着法により成膜可能な有機の発光材料を含んでもよく、例えば、有機蛍光材料または有機りん光材料を含んでもよい。蒸着法により成膜可能な有機の発光材料としては、イリジウム錯体または白金錯体等の、遷移金属元素を含む錯体、あるいは、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体ジトルイルビニルビフェニル等が挙げられる。これらの材料についても、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合または積層して用いてもよい。ただし、発光層95は、アノード91からの正孔とカソード93からの電子とによって発光する発光材料を含む限り、上述した構成に限られず、例えば、量子ドットを発光材料として含んでもよい。
【0078】
<表示装置:バンク>
さらに、発光素子9は、基板8上にバンクBKを備える。バンクBKは、例えば、ポリイミド等を含む絶縁性の樹脂材料を含む。バンクBKにより、発光素子9のアノード91、および発光層95のそれぞれは、基板8の平面視において、赤色サブ画素SPR、緑色サブ画素SPG、および青色サブ画素SPBに区画される。本実施形態においては、正孔輸送層94、電子輸送層96、およびカソード93は、上述した複数のサブ画素に対し共通に形成されている。ただし、正孔輸送層94、電子輸送層96、およびカソード93についても、バンクBKによってサブ画素ごとに区画されてもよい。
【0079】
発光層95は、バンクBKにより、赤色サブ画素SPRに位置し赤色光を発する赤色発光層95R、緑色サブ画素SPGに位置し緑色光を発する緑色発光層95G、および青色サブ画素SPBに位置し青色光を発する青色発光層95Bに区画される。赤色発光層95R、緑色発光層95G、および青色発光層95Bのそれぞれは、発光色を除き互いに同一の構成を備えてもよい。
【0080】
アノード91は、バンクBKにより、赤色サブ画素SPRのアノード91R、緑色サブ画素SPGのアノード91G、および青色サブ画素SPBのアノード91Bに区画される。アノード91は、形成されるサブ画素の発光色によらず同一の構成を有してもよい。
【0081】
したがって、本実施形態において、赤色サブ画素SPRに位置する赤色発光素子9Rは、アノード91R、正孔輸送層94、赤色発光層95R、電子輸送層96、およびカソード93を備える。また、緑色サブ画素SPGに位置する緑色発光素子9Gは、アノード91G、正孔輸送層94、緑色発光層95G、電子輸送層96、およびカソード93を備える。さらに、青色サブ画素SPBに位置する青色発光素子9Bは、アノード91B、正孔輸送層94、青色発光層95B、電子輸送層96、およびカソード93を備える。
【0082】
バンクBKは、各アノード91の端部を覆う位置に形成されていてもよい。換言すれば、バンクBKは、基板8の平面視において、各アノード91と重なる部分の一部に開口を有してもよい。この場合、バンクBKは、各発光素子9におけるアノード91の端部における電界集中がアノード91から発光層95への正孔の注入に与える影響を低減できる。
【0083】
<表示装置:補記>
なお、表示装置7は、発光素子9の上層に、発光素子9を封止するための有機または無機の封止層、または、発光素子9からの光の取り出し効率を向上させるためのキャッピングレイヤ等を備えていてもよい。また、表示装置7は、発光素子9の上層に、表示装置7をタッチパネルディスプレイとして機能させるためのタッチパネルユニットを備えていてもよい。
【0084】
<表示装置の製造方法:バンクの形成まで>
図8を参照して本実施形態に係る表示装置7の製造方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る表示装置7の製造方法のフローチャートである。
【0085】
本実施形態に係る表示装置7の製造方法においては、はじめに、基板8を用意する(ステップS1)。基板8の用意は、例えば、ガラス基板またはフィルム基板等を所定の形状に切り出すことにより実行してもよい。あるいは、大判の基板8を用意し、各工程の実行後に基板8を切り出すことにより複数の表示装置7に分断してもよい。ステップS1は、基板8の各サブ画素に対応する位置に画素回路を形成する工程を含んでよく、また、基板8にドライバ等を形成する工程を含んでよい。
【0086】
次いで、基板8上にアノード91を形成する(ステップS2)。アノード91は、例えば、金属材料等の薄膜をスパッタ法等により基板8上に成膜した後、ドライエッチング等によってパターニングすることにより形成してもよい。
【0087】
次いで、基板8上およびアノード91上にバンクBKを形成する(ステップS3)。バンクBKは、例えば、感光性樹脂材料を基板8上およびアノード91上に塗布成膜した後、フォトリソグラフィ等によって基板8の平面視においてアノード91と重なる位置に開口を設けることにより形成してもよい。
【0088】
<表示装置の製造方法:機能層の蒸着>
次いで、機能層92の形成工程を実行する。本実施形態においては、機能層92の各層を、前述の蒸着装置1または蒸着装置5を用いて蒸着する蒸着方法を例に挙げ、
図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る機能層92の形成工程、換言すれば蒸着工程について説明するための工程断面図である。
図9においては、上述した蒸着装置1を用いて機能層92を形成する方法を例に挙げて説明するが、本実施形態においてはこれに限られず、蒸着装置5を用いた場合においても同一の方法によって機能層92を形成できる。なお、
図9は、蒸着装置1について、
図1に示す断面と同一の断面を示している。
【0089】
蒸着工程においては、はじめに、
図9に示すように、基板8上にアノード91およびバンクBKが形成された積層体Lおよび蒸着マスクMを、蒸着装置1の上方に設置する(ステップS4)。ステップS4においては、積層体Lを、基板8からアノード91への方向が下向きとなるように設置する。このため、蒸着装置1の上方に設置された積層体Lは、アノード91が形成された側の面を下面、換言すれば、蒸着装置1に向けられた面として設置される。
【0090】
また、ステップS4においては、積層体Lと蒸着装置1との間、特に、坩堝2の上方に蒸着マスクMを設置する。蒸着マスクMは、積層体Lの基板8の平面視において、積層体Lに形成する蒸着膜の形状と対応する形状を有する開口を備えたマスクであり、例えば金属材料を含むメタルマスクである。蒸着装置1から積層体Lへの方向において、蒸着マスクMは積層体Lの下面のうち一部を遮蔽する。後工程において積層体Lと蒸着マスクMとの間からの蒸発材41の侵入を低減するため、蒸着マスクMは積層体Lに可能な限り近接させてもよく、蒸着マスクMと積層体Lとは互いに一部接触してもよい。
【0091】
次いで、蒸着装置1により機能層92のうちの一層を蒸着により形成する(ステップS5)。バンクBKの形成工程に次いで実行されるステップS5において、蒸着装置1は、蒸発材41に蒸着膜の材料を含む蒸着材4を坩堝2の内部に格納しており、シーズヒータ3により坩堝2の内部を加熱し、蒸着材4を加熱する。特に、ステップS5において、蒸着装置1は、シーズヒータ3による坩堝2の内部の加熱を通じて、蒸着材4を蒸発材41の沸点以上、かつ、溶融材42の沸点未満に加熱する。これにより、蒸発材41は昇華し、ノズル25の空洞26を通って坩堝2の外部、特に坩堝2の上方に排出される。
【0092】
ここで、上述した通り、坩堝2の上方には蒸着マスクMが設置されている。このため、ノズル25の空洞26を通って坩堝2の外部に排出された蒸発材41は、蒸着マスクMの開口を通過したもののみが積層体Lの下面に到達する。換言すれば、蒸発材41は、積層体Lの下面のうち蒸着マスクMにより遮蔽された部分には接触しない。以上により、積層体Lの下面のうち蒸着マスクMの開口に対応する位置にのみ蒸発材41が接触する。積層体Lの下面と接触した蒸発材41が積層体Lにて凝固することにより、蒸発材41を含む蒸着膜が積層体Lの下面に形成される。
【0093】
本実施形態において、ステップS4とステップS5とは、形成する機能層92の材料または位置に応じて繰り返し実行してもよい。例えば、本実施形態に係る蒸着工程においては、蒸着装置1により、アノード91の側から順に、換言すれば、正孔輸送層94、発光層95、および電子輸送層96の順に形成することにより、機能層92を形成する。
【0094】
例えば、正孔輸送層94および電子輸送層96の形成工程におけるステップS4において、蒸着マスクMは、開口が積層体Lの下面のうち表示装置7の表示部DAに対応する位置と重なるように設置される。続くステップS5において、蒸着装置1が坩堝2の内部に収容する蒸着材4の蒸発材41は、例えば、正孔輸送性または電子輸送性を有する有機材料を含む。
【0095】
また、発光層95の形成工程は、赤色発光層95R、緑色発光層95G、および青色発光層95Bのそれぞれの形成工程に分けて実行される。各発光層の形成工程におおけるステップS4において、蒸着マスクMは、開口が積層体Lの下面のうち各サブ画素に対応する位置と重なるように設置される。続くステップS5において、蒸着装置1が坩堝2の内部に収容する蒸着材4の蒸発材41は、例えば、有機蛍光材料または有機りん光材料を含む。
【0096】
繰り返しステップS4およびステップS5を実行する場合、それぞれのステップS4において、積層体Lは複数の蒸着装置1の間を移動してもよい。この場合、各蒸着装置1は、機能層92の各層に対応する材料を蒸発材41に含む蒸着材4を坩堝2の内部に備えていてもよい。また、蒸着マスクMは、各蒸着装置1の上方に位置し、各材料に対応する位置に開口を備えていてもよい。複数の蒸着装置1および蒸着マスクMは、それぞれ真空チャンバ内に格納されていてもよく、この場合、それぞれのステップS4において、積層体Lは真空チャンバの間をコンベア等の不図示の移動手段により移動してもよい。
【0097】
なお、本実施形態においては、機能層92を何れも蒸着装置1による蒸着により形成する例について説明したが、これに限られない。例えば、機能層92の正孔輸送層94、発光層95、および電子輸送層96のうち少なくとも一層が蒸着装置1によって形成されていれば、他の層は蒸着法と異なる方法、例えば塗布法、フォトリソグラフィ法等により形成されてもよい。特に、発光層95は、赤色発光層95R、緑色発光層95G、および青色発光層95Bのうち少なくとも一層が蒸着装置1によって形成されていればよく、他の層は蒸着法と異なる方法により形成されてもよい。さらに、機能層92は蒸着装置1に代えて蒸着装置5によって形成されてもよい。
【0098】
<表示装置の製造方法:カソードの形成工程以降>
機能層92の形成に次いで、機能層92上にカソード93を形成する(ステップS13)。カソード93は、例えば、金属材料等の薄膜をスパッタ法等により機能層92上に成膜することにより形成してもよい。あるいは、カソード93は蒸着手法によって形成されてもよい。以上により、表示装置7の製造工程が完了する。
【0099】
<表示装置の製造方法が奏する効果>
本実施形態において、表示装置7の発光素子9が備える機能層92のうち少なくとも一部は、蒸着装置1または蒸着装置5を用いた蒸着により形成される。このため、上述した理由から、機能層92のうち蒸着装置1または蒸着装置5を用いた蒸着により形成された層は、均一性が向上し、また、劣化が低減する。
【0100】
特に、本実施形態において、機能層92は、水等の異物により劣化が進行しやすい有機の材料を含む。このため、機能層92を蒸着装置1または蒸着装置5を用いた蒸着により形成することにより、機能層92の材料の劣化が低減し、発光素子9の発光効率が改善する。したがって、本実施形態に係る表示装置7の製造方法は、製造された表示装置7の寿命を長期化し、また、消費電力を低減する。
【0101】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る蒸着材4は、蒸発材41と、融点が蒸発材41の沸点よりも低く、沸点が蒸発材41の沸点よりも高く、かつ、蒸発材41に対し不活性である溶融材42と、を含む。
【0102】
上記の構成によれば、より均一に蒸発材41が加熱されるために、蒸着装置による蒸発材41を含む蒸着膜の蒸着工程において、当該蒸着膜の均一性の向上、または蒸着膜の劣化の低減を達成する。
【0103】
本開示の態様2に係る蒸着材4は、上記態様1において、溶融材42がフッ素系材料を含んでもよい。
【0104】
上記の構成によれば、溶融材42の蒸発材41に対する活性をより低減できる。
【0105】
本開示の態様3に係る蒸着材4は、上記態様1または2において、溶融材42が常温下において液体であってもよい。
【0106】
上記の構成によれば、蒸着材4の加熱がより均一となる。
【0107】
本開示の態様4に係る蒸着材4は、上記態様1から3の何れかにおいて、蒸発材41の沸点と溶融材42の融点との差が10℃以上であってもよい。
【0108】
上記の構成によれば、蒸発材41が蒸発せず溶融材42が溶融している状態である蒸着材4の第1状態の維持を容易とし、蒸着材4をより均一に加熱できる。
【0109】
本開示の態様5に係る蒸着材4は、上記態様1から4の何れかにおいて、蒸発材41の沸点と溶融材42の沸点との差が10℃以上であってもよい。
【0110】
上記の構成によれば、蒸発材41が蒸発し溶融材42が蒸発しない状態である蒸着材4の第2状態の維持を容易とし、蒸着膜に溶融材42が混合することを低減し、蒸着膜の品質をより改善する。
【0111】
本開示の態様6に係る蒸着材4は、上記態様1から5の何れかにおいて、蒸発材41の質量に対する溶融材42の質量が1.5倍以上2.5倍以下であってもよい。
【0112】
上記の構成によれば、溶融材42の体積に対する蒸発材41の体積が倍程度となり、蒸着材4における蒸発材41の撹拌誘導と蒸発材41の昇華の効率化とを両立できる。
【0113】
本開示の態様7に係る蒸着材4は、上記態様1から6の何れかにおいて、蒸発材41が有機蛍光材料または有機りん光材料を含んでもよい。
【0114】
上記の構成によれば、一般にフォトリソグラフィ法、塗布法等による成膜に適さない有機蛍光材料または有機りん光材料を含む発光層を蒸着法により成膜できる。
【0115】
本開示の態様8に係る蒸着材4は、上記態様1から7の何れかにおいて、蒸発材41が正孔輸送性または電子輸送性を有する有機材料を含んでもよい。
【0116】
上記の構成によれば、一般にフォトリソグラフィ法、塗布法等による成膜に適さない正孔輸送性または電子輸送性を有する有機材料を含む電荷輸送層を蒸着法により成膜できる。
【0117】
本開示の態様9に係る蒸着材4は、上記態様1から8の何れかにおいて、蒸発材41が昇華性を有し、蒸発材41の沸点が蒸発材41の昇華点であってもよい。
【0118】
上記の構成によれば、蒸着膜を形成する物体の表面において蒸発材41が液体となることによる蒸発材41の流動または流出を低減し、蒸着膜の均一性および成膜速度を向上させる。
【0119】
本開示の態様10に係る蒸着装置5は、坩堝2と、坩堝2の内部を加熱するシーズヒータ6と、を備え、シーズヒータ6が、所定の方向(長手方向D1)における坩堝2の第1端と、坩堝2の第1端の反対の側に位置する第2端との間の、一部のみに延伸する。
【0120】
上記の構成によれば、蒸着装置5は、蒸着材4の加熱の均一性を維持しつつ、コストの低減、構造の簡素化、および整備性の改善を達成する。
【0121】
本開示の態様11に係る蒸着方法は、物体(積層体L)の表面に蒸着膜を形成するための蒸着方法であって、蒸着膜の材料を含む蒸発材41と、融点が蒸発材41の沸点よりも低く、沸点が蒸発材41の沸点よりも高く、かつ、蒸発材41に対し不活性である溶融材42と、を含む蒸着材4の上方への物体の設置(ステップS4)と、蒸着材4の、蒸発材41の沸点以上、かつ、溶融材42の沸点未満への加熱(ステップS5)と、を含む。
【0122】
上記の構成によれば、均一性が向上したまたは劣化が低減した、蒸発材41の材料を含む蒸着膜を形成できる。
【0123】
本開示の態様12に係る表示装置の製造方法は、第1電極(アノード91)、第2電極(カソード93)、および第1電極と第2電極との間の少なくとも発光層95を含む機能層92をそれぞれ有する複数の発光素子9R、9G、9Bを備えた表示装置7の製造方法であって、上記態様11の蒸着方法による、機能層92の少なくとも一部の形成を含む。
【0124】
上記の構成によれば、機能層92の品質が向上した発光素子9R、9G、9Bを備えた表示装置7を製造できる。
【0125】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0126】
1、5 蒸着装置
2 坩堝
3、6 シーズヒータ(ヒータ)
4 蒸着材
7 表示装置
9 発光素子
41 蒸発材
42、43 溶融材
91 アノード(第1電極)
92 機能層
93 カソード(第2電極)
95 発光層