(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008093
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109652
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 祐生
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB06
3D333CB13
3D333CB38
3D333CC13
3D333CD10
3D333CD14
3D333CE14
3D333CE15
(57)【要約】
【課題】自動操舵機能を有する作業車両の利便性を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な作業車両は、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールの自動操舵を可能とする自動操舵機構と、前記自動操舵機構に対して熱を供給可能に設けられる熱供給装置と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールの自動操舵を可能とする自動操舵機構と、
前記自動操舵機構に対して熱を供給可能に設けられる熱供給装置と、
を備える、作業車両。
【請求項2】
前記ステアリングホイールを支持するステアリングシャフトを備え、
前記自動操舵機構は、
モータと、
前記ステアリングシャフトに前記モータの回転動力を伝達するギア機構と、
を有し、
前記熱供給装置の少なくとも一部は、前記ギア機構、又は、その周辺に配置される、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記熱供給装置は、前記自動操舵機構を構成する部材に配置される電気ヒータを含み、
前記自動操舵機構の温度が第1温度未満である場合に、前記電気ヒータが熱の供給を開始する、請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記電気ヒータは、前記熱の供給の開始後に前記自動操舵機構の温度が前記第1温度よりも高い第2温度となった場合に、前記熱の供給を停止する、請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記熱供給装置は、前記自動操舵機構に流体を搬送する流体搬送機構を含み、
前記自動操舵機構の温度が所定温度未満である場合に、前記流体搬送機構が熱を供給するための前記流体の搬送を開始する、請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記流体搬送機構は、前記流体の搬送を開始してから所定時間が経過した場合に、前記流体の搬送を停止する、請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記流体搬送機構が搬送する流体は、エンジン冷却用の冷却液である、請求項5に記載の作業車両。
【請求項8】
前記熱供給装置は、
前記自動操舵機構を構成する部材に配置される電気ヒータと、
前記自動操舵機構に流体を搬送する流体搬送機構と、
を含み、
前記流体の温度が所定温度未満である場合、前記電気ヒータを用いた熱の供給が行われ、前記流体の温度が前記所定温度以上である場合、前記流体搬送機構を用いた熱の供給が行われる、請求項1に記載の作業車両。
【請求項9】
前記熱供給装置による熱の供給中は、前記自動操舵が実行不能とされる、請求項1に記載の作業車両。
【請求項10】
前記ステアリングホイールを手動で操作する状態から前記自動操舵の開始を待つ待機状態へと切り替える切替操作部を備え、
前記切替操作部が操作されて前記待機状態に切り替わった場合に、前記熱供給装置が熱の供給を開始する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項11】
前記熱供給装置による熱の供給開始を指示可能とする開始操作部を備え、
前記開始操作部の操作により、前記熱供給装置が熱の供給を開始する、請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の自動操舵を行う自動操舵機構を有する作業車両が知られる(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示される自動操舵機構は、ステアリングモータとギア機構とを備える。ステアリングモータは、車体位置に基づいて、回転方向、回転速度、回転角度等を制御可能なモータである。ギア機構は、ステアリングシャフトに設けられ且つ当該ステアリングシャフトと供回りするギアと、ステアリングモータの回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含んでいる。ステアリングモータの回転軸が回転すると、ギア機構を介して、ステアリングシャフトが自動的に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ギア機構を収容するギアケース内には、ギアの潤滑を目的としてグリスが充填される。低温環境下では、グリスの粘度が上昇し、ステアリング操舵力(モータトルク)が高くなって操作性が低下することが懸念される。また、低温環境下におけるモータトルクの上昇を考慮して、低温環境下では、ステアリングモータを保護すべく、自動操舵機能を利用できなくすることが考えられる。しかし、この場合には利便性の低下が懸念される。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、自動操舵機能を有する作業車両の利便性を向上することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な作業車両は、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールの自動操舵を可能とする自動操舵機構と、前記自動操舵機構に対して熱を供給可能に設けられる熱供給装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、自動操舵機能を有する作業車両の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】トラクタの自動操舵機能に関わる構成を示すブロック図
【
図4】自動操舵機構、および、その周辺の概略の構成を示す側面図
【
図5】ギアケースを取り除いた状態のギア機構の概略の構成を示す斜視図
【
図6】第1実施例の熱供給装置を備えるトラクタの制御系の概略の構成を示すブロック図
【
図7】第1実施例の熱供給装置を備えるトラクタにおける制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャート
【
図8】第2実施例の熱供給装置の概略の構成を示すブロック図
【
図9】第2実施例の熱供給装置を備えるトラクタにおける制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャート
【
図10】熱供給装置が電気ヒータと流体搬送機構とを含む場合の両者に使い分け手法を例示するフローチャート
【
図11】熱供給装置を備えるトラクタの第2変形例について説明するためのブロック図
【
図12】熱供給装置を備えるトラクタの第3変形例について説明するためのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に挙げて説明する。ただし、作業車両は、各種の収穫機、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等のトラクタ以外の作業車両であってもよい。
【0010】
また、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、作業車両としてのトラクタが作業時に進行する方向を「前」とし、その逆方向を「後」とする。また、トラクタの進行方向に向かって右側を右とし、左側を左とする。そして、トラクタの前後方向および左右方向に垂直な方向を上下方向とする。このとき、重力方向を下とし、その反対側を上とする。なお、以上の方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係および方向を限定する意図はない。
【0011】
<1.作業車両の概要>
図1は、本発明の実施形態に係るトラクタ1の概略の構成を示す側面図である。
図1に示すように、トラクタ1は、車体2と、エンジン3と、ミッションケース4と、を備える。
【0012】
車体2の前部には、左右一対の前輪5が配置される。車体2の後部には、左右一対の後輪6が配置される。車体2は、前輪5および後輪6によって走行可能である。すなわち、本実施形態のトラクタ1は、ホイルトラクタである。ただし、トラクタ1は、ホイルトラクタに限らず、クローラトラクタ等であってもよい。
【0013】
エンジン3は、車体2の前部に、ボンネット7に覆われて配置される。エンジン3は、トラクタ1の駆動源である。なお、トラクタ1の駆動源は、エンジンに代えて電動モータなどの他の駆動源であってもよい。
【0014】
ミッションケース4は、エンジン3の後方、且つ、運転部8の下方に配置される。ミッションケース4の内部には、動力伝達装置(不図示)が配置される。エンジン3の回転動力は、ミッションケース4内の動力伝達装置を介して、前輪5および後輪6の少なくとも一方に伝達される。
【0015】
運転部8は、車体2におけるエンジン3の後方に設けられる。運転部8は、運転者(オペレータ)が搭乗する部分である。運転部8は、運転座席9およびフロントパネル10を含む。運転座席9は、運転者が座る場所である。フロントパネル10は、運転座席9の前方に配置される。フロントパネル10には、ステアリング11が設けられる。すなわち、運転座席9の前方にステアリング11が配置される。フロントパネル10には、トラクタ1の速度を示すメータ表示部等も設けられる。
【0016】
ステアリング11は、ステアリングホイール12と、ステアリングコラム13と、ステアリングシャフト14(後述の
図2等参照)とを含む。すなわち、トラクタ1は、ステアリングホイール12と、ステアリングコラム13と、ステアリングシャフト14とを備える。ステアリングホイール12は、運転座席9に座る運転者によって操作される。ステアリングコラム13は、ステアリングシャフト14を覆う。ステアリングシャフト14は、ステアリングホイール12を支持する。ステアリングホイール12およびステアリングシャフト14は、ステアリングコラム13内に配置される支持部(不図示)により回転可能に支持される。ステアリングシャフト14は、柱状であり、上下方向に対して下方よりも上方が後方となる向きに傾いて斜めに延びる。ステアリングホイール12は、ステアリングシャフト14の上端部に配置される。ステアリングホイール12の回転操作により、前輪5の向きを変更することができる。
【0017】
運転部8には、その他、例えば、運転者によって操作される各種の操作レバー15およびペダル16が設けられる。各種の操作レバー15には、例えば、主変速レバー、副変速レバー、および、作業レバー等が含まれてよい。また、各種のペダル16には、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、および、クラッチペダル等が含まれてよい。
【0018】
本実施形態では、運転座席9の後部に、ロプスフレーム17が設けられる。ロプスフレーム17により、トラクタ1の転倒時に運転者を保護することができる。なお、トラクタ1は、ロプスフレーム17が設けられるロプス仕様ではなく、運転座席9がキャビンで覆われるキャビン仕様であってもよい。
【0019】
車体2の後部には、3点リンク機構等で構成される作業機連結部18が設けられる。作業機連結部18には、作業機を装着することが可能である。作業機は、例えば、耕耘装置、プラウ、施肥装置、農薬散布装置、収穫装置、又は、刈取装置であってよい。また、車体2の後部には、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置(不図示)が設けられる。昇降装置が作業機連結部18を昇降させることにより、上記作業機を昇降させることができる。また、エンジン3が発生させた動力は、ミッションケース4と、車体2の後部に配置されたパワーテイクオフ軸(PTO軸;不図示)とを介して、作業機連結部18により連結される作業機に伝達することができる。
【0020】
本実施形態においては、トラクタ1は、予め定められた経路に沿うように操舵が自律的に行われる自動操舵機能を有する。すなわち、トラクタ1は、運転者がステアリングホイール12を操作する手動操舵と、自動操舵とのいずれかで走行可能に設けられる。
図2は、本実施形態に係るトラクタ1の自動操舵機能に関わる構成を示すブロック図である。なお、トラクタ1は、操舵に加えて、車速と、作業機による作業とのうちの少なくとも一方が自律的に行われる構成であってもよい。
【0021】
図2に示すように、トラクタ1は、ステアリングホイール12の自動操舵を可能とする自動操舵機構20を備える。自動操舵機構20は、モータ201とギア機構202とを有する。ギア機構202は、ステアリングシャフト14にモータ201の回転動力を伝達する。モータ201は、回転方向、回転速度、および、回転角度等を制御可能に設けられる。モータ201の出力軸が回転すると、ギア機構202を介してステアリングシャフト14が自動的に回転する。すなわち、モータ201の駆動により、ステアリングホイール12を自動的に回転させることができる。なお、ギア機構202の詳細については後述する。また、本実施形態では、モータ201およびギア機構202は、ステアリングコラム13内に配置されている。
【0022】
また、
図2に示すように、トラクタ1は制御装置21を備える。制御装置21は、例えば、演算装置、入出力部、および、記憶部を含んで構成されるコンピュータ装置である。演算装置は、例えばプロセッサ又はマイクロプロセッサである。記憶部は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置である。記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶部には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。演算装置は、各種のプログラムを記憶部から読み出してプログラムに従った演算処理を実行する。
【0023】
なお、制御装置21は、単数であっても、複数であってもよい。制御装置21が複数である場合には、複数の制御装置が互いに通信可能に設けられる構成とすればよい。
【0024】
制御装置21は、自動操舵に関わる制御を行う。すなわち、制御装置21は、自動操舵用のコントローラとしての機能を有する。制御装置21は、モータ201と電気的に接続されてモータ201を制御する。モータ201は、制御装置21により決定された電力を供給されて駆動する。上述のように、モータ201の駆動力は、ギア機構202を介してステアリングシャフト14に伝達されるために、モータ201の制御によってステアリングホイール12の制御を行うことができる。別の言い方をすると、モータ201の制御により、前輪5の方向の制御を行うことができる。
【0025】
本実施形態では、制御装置21は、位置取得部22および慣性計測装置23と電気的に接続される。
【0026】
位置取得部22は、測位アンテナ24が測位衛星から受信した測位信号を用いて、トラクタ1の位置を例えば緯度および経度の情報として取得する。位置取得部22は、トラクタ1の位置情報を制御装置21へ出力する。位置取得部22は、例えば、図示しない基準局からの測位信号を適宜の方法で受信した上で、公知のRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS)法を利用して測位を行ってよい。また、例えば、位置取得部22は、DGNSS(Differential GNSS)法を利用して測位を行ってもよい。
【0027】
慣性計測装置23は、3軸の角速度センサと3方向の加速度センサとを含む。慣性計測装置23は、計測した情報を制御装置21へ出力する。慣性計測装置23が設けられることにより、車体2のヨー角、ピッチ角、および、ロール角等の慣性情報の計測が可能になっている。
【0028】
制御装置21は、不図示の操作部を利用したオペレータ(運転者等)の指令に応じて、自動操舵の開始処理や終了処理を行う。また、制御装置21は、例えば、位置取得部22および慣性計測装置23から得られる情報に基づいて、トラクタ1の車体2の位置や向きを求める。また、制御装置21は、例えば、求めた車体2の位置等と、予め定められた自動走行用の経路との関係に応じて自動操舵に関わる演算を行い、上述したモータ201の制御を行う。また、制御装置21は、モータ201の動作情報に応じて次の演算(フィードバック制御用の演算)を行う。
【0029】
ここで、本実施形態のトラクタ1が実行する自動操舵の概要について説明しておく。自動操舵を行うに際して、まず、基準線Lの設定が行われる。
図3は、基準線Lの設定方法の一例を説明するための図である。基準線Lの設定方法は、
図3に示す方法以外であってもよい。
【0030】
基準線Lの設定に際して、まず、トラクタ1が圃場内の適所(図中のA点)に移動され、A点登録が行われる。A点登録は、運転者からの登録指令によって行われる。A点登録の指令が出された時点における、位置取得部22によって得られる車体2の位置が、A点の位置として登録される。
【0031】
A点登録が行われると、運転者が手動操作にてトラクタ1を直進走行させ、所定位置(図中のB点)に移動させる。そして、トラクタ1が所定位置に到達すると、B点登録が行われる。B点登録は、運転者からの登録指令によって行われる。B点登録の指令が出された時点における、位置取得部22によって得られる車体2の位置が、B点の位置として登録される。A点とB点との登録が行われると、A点とB点とを通る直線が基準線Lとして設定される。
【0032】
基準線Lが設定されると、当該基準線Lに平行な線が所定の間隔で自動走行線として生成される。自動操舵時においては、当該自動走行線と、位置取得部22によって取得された車体2の位置とが一致するように、トラクタ1の進行方向の操舵制御が行われる。トラクタ1の進行方向の操舵制御は、モータ201を制御することにより行われる。
【0033】
<2.自動操舵機構の詳細例>
図4は、本実施形態に係るトラクタ1が備える自動操舵機構20、および、その周辺の概略の構成を示す側面図である。
図4に示すように、自動操舵機構20に含まれるギア機構202は、ギアケース2021を有する。
【0034】
ギアケース2021は、ステアリングコラム13内において、不図示の支持部材に支持される。ギアケース2021は、ステアリングシャフト14を回転可能に支持する。本実施形態では、ギアケース2021は、上ケース2021aと下ケース2021bとを有する。上ケース2021aと下ケース2021bとは、互いに重ね合わされて、ボルトとナット等の固定具を用いて固定される。上ケース2021aと下ケース2021bとを重ね合わせることによりできる内部空間に、ギア機構202が有する複数のギア2022(後述の
図5参照)が配置される。
【0035】
なお、モータ201は、上ケース2021aに固定され、大部分が上ケース2021aの外部に配置される。モータ201の出力軸2011(後述の
図5参照)は、ギアケース2021内に突出する。
【0036】
図5は、ギアケース2021を取り除いた状態のギア機構202の概略の構成を示す斜視図である。なお、
図5には、ギア機構202以外の要素も含まれている。
図5に示すように、ギアケース2021内には、ギアケース2021に固定されるシャフトベアリング2023が配置される。ステアリングシャフト14は、シャフトベアリング2023を介してギアケース2021に回転可能に支持される。また、
図5に示すように、ギアケース2021内には、ギアケース2021に固定配置されるベアリング(不図示)に回転可能に支持される2つの回転軸2024、2025が配置される。
【0037】
図5に示すように、ギア機構202は複数のギア2022を含む。複数のギア2022には、第1ギア2022aと、第2ギア2022bと、第3ギア2022cと、第4ギア2022dと、第5ギア2022eと、第6ギア2022fとが含まれる。
【0038】
第1ギア2022aは、モータ201の出力軸2011に取り付けられ、当該出力軸2011と共に回転する。第2ギア2022bは、第1回転軸2024に取り付けられ、第1回転軸2024と共に回転する。第2ギア2022bは、第1ギア2022aと噛み合う。すなわち、第1ギア2022aが回転すると第2ギア2022bも回転する。第3ギア2022cは、第2ギア2022bと同じ第1回転軸2024に取り付けられ、第1回転軸2024と共に回転する。すなわち、第2ギア2022bが回転すると、第3ギア2022cも回転する。
【0039】
第4ギア2022dは、第2回転軸2025に取り付けられ、第2回転軸2025と共に回転する。第4ギア2022dは、第3ギア2022cと噛み合う。すなわち、第3ギア2022cが回転すると第4ギア2022dも回転する。第5ギア2022eは、第4ギア2022dと同じ第2回転軸2025に取り付けられ、第2回転軸2025と共に回転する。すなわち、第4ギア2022dが回転すると、第5ギア2022eも回転する。第6ギア2022fは、ステアリングシャフト14に取り付けられ、ステアリングシャフト14と共に回転する。第6ギア2022fは、第5ギア2022eと噛み合う。すなわち、第5ギア2022eが回転すると、第6ギア2022fも回転する。以上からわかるように、モータ201が駆動して出力軸2011が回転すると、当該回転力が複数のギア2022を介してステアリングシャフト14に伝達され、ステアリングシャフト14が回転する。
【0040】
<3.熱供給装置>
複数のギア2022を収容するギアケース2021内には、ギア2022の潤滑を目的としてグリス(不図示)が充填されている。当該グリスは、低温環境下では、粘度が上昇し易く、当該グリスの粘度の上昇は、ステアリングホイール12の手動操舵および自動操舵時に好ましくない影響を与える。この点を考慮して、本実施形態のトラクタ1は、自動操舵機構20に対して熱を供給可能に設けられる熱供給装置30を備える。
【0041】
熱供給装置30が備えられることにより、トラクタ1が低温環境下で使用される場合においても、ギアケース2021に収容されるグリスに熱を与えて温めることができる。すなわち、低温環境下でも、ギアケース2021内のグリスの粘度が高くなることを抑制できる。この結果、低温環境下でも、ステアリングホイール12の操作性が低下することを抑制できる。また、低温環境下でも、モータ201に過度に負荷がかかるという状況を避けて、自動操舵機能を利用することができる。本実施形態の構成によれば、自動操舵機能を有するトラクタ1の利便性を向上することができる。
【0042】
なお、熱供給装置の少なくとも一部は、ギア機構202、又は、その周辺に配置されることが好ましい。これにより、ギア機構202に熱を供給し易くことができる。また、これにより、ギア機構202を構成するギアケース2021内に充填されるグリスに対して近くから熱を供給することができる。すなわち、効率良くグリスに対して熱を与えることができる。ただし、熱供給装置30は、モータ201、又は、その近傍に配置されてもよい。これによれば、モータ201を効率良く温めることができる。すなわち、熱供給装置30はモータ201に熱を供給する構成であってもよい。
【0043】
[3-1.第1実施例]
図4は、第1実施例の熱供給装置30Aを示す。本例では、熱供給装置30Aは、自動操舵機構20を構成する部材に配置される電気ヒータ31を含む。電気ヒータ31は、例えば平板状である。本例では、電気ヒータ31は、ギアケース2021に配置される。詳細には、電気ヒータ31は、ギアケース2021の外面に配置される。電気ヒータ31は、下ケース2021bの下面に配置される。ただし、電気ヒータ31は、ギアケース2021の内部に配置されてもよい。また、電気ヒータ31は、上ケース2021aの外面に配置されてもよい。
【0044】
電気ヒータ31は、ギアケース2021内に充填されるグリスに熱を与えやすい状態で配置されることが好ましい。電気ヒータ31は、ギアケース2021に直接接触した状態で取り付けられるか、熱伝導性の良い部材を介して取り付けられることが好ましい。なお、ギアケース2021は、例えば金属等の熱伝導性の良い部材で構成されることが好ましい。
【0045】
電気ヒータ31は、好ましい形態として、ヒータ自体が所定の温度範囲を保つように動作する自己制御型ヒータである。自己制御型ヒータは、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータであり、電流を流すと発熱して抵抗が増大する特性を有する。発熱により抵抗が増大すると流れる電流が減少して、ヒータ自体の温度が低下する。ヒータ自体の温度が低下すると、抵抗が小さくなって電流の流れが多くなる。このように、自己制御型ヒータは、特別に制御装置を設けなくても、所定の温度範囲となるように自己温度制御作用を有する。自己制御型ヒータとして構成される電気ヒータ31は、例えば0℃から20℃の温度範囲を保つように動作する構成等であってよい。なお、所定の温度範囲の下限温度(例えば上述の0℃)は、例えば、グリスの粘度がステアリングホイール12の操作性に悪影響を及ぼさないと想定される温度帯の下限温度であってよく、実験等により決められてよい。また、所定の温度範囲の上限温度は、例えば下限温度より5℃以上高い温度等とされる。
【0046】
例えば、トラクタ1が、0℃未満の低温環境下に置かれているとする。この場合、ギア機構202やその周辺の温度も、通常、0℃未満となる。すなわち、ギアケース2021に配置される電気ヒータ31自体の温度も0℃未満となる。このために、自己制御型ヒータとして構成される電気ヒータ31が発熱を行う。当該発熱によりギアケース2021に熱が供給され、ギアケース2021が温められる。これにより、ギアケース2021内に充填されるグリスを温めることができる。電気ヒータ31自体の温度が所定の温度範囲の上限(例えば20℃等)に到達すると、電気ヒータ31を流れる電流の減少により、電気ヒータ31の発熱が停止される。
【0047】
以上からわかるように、本例では、自動操舵機構20の温度が第1温度未満である場合に、電気ヒータ31が熱の供給を開始する。電気ヒータ31による熱の供給で自動操舵機構20が温められる。詳細には、ギア機構202の周辺温度が第1温度未満である場合に、電気ヒータ31が熱の供給を開始する。電気ヒータ31による熱の供給により、ギア機構202が温められ、グリスの粘度の上昇を抑制することができる。なお、第1温度は、例えば、グリスの粘度がステアリングホイール12の操作性に悪影響を及ぼさないと想定される温度帯の下限温度である。
【0048】
また、電気ヒータ31は、熱の供給の開始後に自動操舵機構20の温度が第1温度よりも高い第2温度となった場合に、熱の供給を停止する。第1温度と第2温度との差は、例えば5℃以上である。このような構成とすると、自動操舵機構20が不必要に温められることを抑制できる。このような構成とすると、消費電力を低く抑えることができる。
【0049】
なお、本例のように熱の供給に電気ヒータ31が用いられる構成では、電気ヒータ31の利用を考慮して、エンジン3の発電量を大きくすることが好ましい。
【0050】
また、本例では、自動操舵機構20の温度は、自己制御型ヒータとして構成される電気ヒータ31を利用した推定の温度となっている。このように、自動操舵機構20の温度は、自動操舵機構20を構成する部材の温度を直接測定して得られる温度だけでなく、自動操舵機構20の周辺から得られる温度情報を用いた推定温度であってよい。
【0051】
また、熱供給装置30Aが含む電気ヒータ31は、自己制御型ヒータ以外のヒータであってもよい。この場合には、電気ヒータ31は、自動操舵機構20の温度を直接的、或いは、間接的に測定する温度センサからの情報に応じてオンオフ制御される構成であってよい。
【0052】
自動操舵機構20の温度を直接的に測定して電気ヒータ31をオンオフ制御する構成においては、例えば、モータ201やギア機構202の温度が直接測定されてよい。当該構成では、例えば、温度センサから得られる温度情報によって自動操舵機構20の温度が第1温度(例えば0℃)未満と判定される場合に電気ヒータ31がオンとされ、第2温度(例えば20℃)以上と判定される場合に電気ヒータ31がオフとされる構成としてよい。
【0053】
また、自動操舵機構20の温度を間接的に測定して電気ヒータ31をオンオフ制御する構成においては、例えば、自動操舵機構20の外気温やキャビン内温度が測定されてよい。当該構成では、例えば、温度センサから得られる温度情報によって自動操舵機構20の温度が第1温度(例えば0℃)未満と推定される場合に電気ヒータ31がオンとされ、所定時間が経過した後に電気ヒータ31がオフとされる構成としてよい。所定時間は、例えば、ギアケース2021内に充填されるグリスを十分に温めることができる時間であり、実験等によって適宜決定されてよい。所定時間は、推定される自動操舵機構20の温度に応じて変更されてよく、温度が低いほど長くされてよい。
【0054】
図6は、第1実施例の熱供給装置30Aを備えるトラクタ1の制御系の概略の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置21は、熱供給装置30Aに含まれる電気ヒータ31の動作情報を取得可能に設けられる。動作情報は、例えば通電情報であり、詳細には電流値情報であってよい。
【0055】
制御装置21は、熱供給装置30Aの状態に応じて各種の制御処理を行う。例えば、各種の制御処理には、自動操舵機能の利用の可否に関する処理が含まれてよい。また、例えば、各種の制御処理には、熱供給装置30Aの動作状況や、自動操舵機能の利用の可否を知らせる報知処理が含まれてよい。報知装置40は、制御装置21における報知処理に応じて、適宜、トラクタ1の運転者等に知らせるべき内容の報知を実行する。報知装置40を用いた報知は、必須ではない。
【0056】
報知装置40は、例えば、報知内容を画面に表示する表示装置であってよい。また、報知装置40は、例えば、報知内容をアナウンスする音声出力装置であってもよい。その他、報知装置40は、報知内容を発光で知らせる発光装置や、報知内容を振動で知らせる振動発生装置等であってもよい。例えば、報知装置40は、トラクタ1の車体2に設けられる構成と、トラクタ1と通信可能な携帯通信端末(不図示)に設けられる構成とのうち、少なくともいずれか一方の構成であってよい。
【0057】
図7は、第1実施例の熱供給装置30Aを備えるトラクタ1における制御装置21が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7に示す制御処理は、例えば、トラクタ1のエンジン3が始動された場合に開始される。エンジン3の始動により、自己制御型ヒータとして構成される電気ヒータ31は、自動的に動作状態(電源オン)とされる。
【0058】
ステップS1では、制御装置21が熱供給装置30Aによる熱の供給が行われているか否かを判定する。熱の供給が行われているか否かは、例えば、電気ヒータ31の電流値の取得により判定することができる。熱の供給が行われていると判定された場合(ステップS1でYes)、次のステップS2に処理が進められる。熱の供給が行われていないと判定された場合(ステップS1でNo)、
図7に示すフローが終了される。
【0059】
ステップS2では、制御装置21が自動操舵機能を利用不可とすることに決定する。当該決定が行われると、運転者等が自動操舵を開始する指令を行っても自動操舵は開始されない。また、自動操舵機能を利用した自動運転が自動的に開始されることもない。すなわち、熱供給装置30Aによる熱の供給中は、自動操舵機能が実行不可とされる。これにより、グリスの粘度が高い状態で自動操舵が行われることを避けられる。すなわち、モータ201に大きな負荷が加わることを避けられる。自動操舵機能を利用不可とすることが決定されると、次のステップS3に処理が進められる。
【0060】
ステップS3では、制御装置21が報知装置40を制御して、自動操舵機能の利用が不可であることを運転者等に知らせる報知処理が行われる。例えば、自動操舵機能が利用できないことが画面に表示される。また、例えば、自動操舵機能が利用できないことが音声案内される。なお、自動操舵が利用できないことに加えて、或いは、代えて、熱供給装置30Aによって自動操舵機構20が温められていることが報知されてもよい。報知処理が行われると、次のステップS4に処理が進められる。
【0061】
ステップS4では、制御装置21が熱供給装置30Aによる熱の供給の完了を監視する。熱の供給が完了したか否かは、例えば、電気ヒータ31の電流値の取得により判定することができる。熱の供給が完了したと判定された場合(ステップS4でYes)、次のステップS5に処理が進められる。熱の供給が完了していないと判定された場合(ステップS4でNo)、ステップS4の監視が続けられる。
【0062】
ステップS5では、制御装置21が自動操舵機能を利用可とすることに決定する。当該決定が行われると、運転者等が自動操舵を開始させることができる。また、自動操舵機能を利用した自動運転を自動的に開始させることができる。自動操舵機能を利用可とすることが決定されると、次のステップS6に処理が進められる。
【0063】
ステップS6では、制御装置21が報知装置40を制御して、自動操舵機能を利用できることを知らせる報知処理が行われる。例えば、自動操舵機能が利用できることが画面に表示される。また、例えば、自動操舵機能が利用できることが音声案内される。なお、自動操舵が利用できることに加えて、或いは、代えて、熱供給装置30Aによって自動操舵機構20を温める処理が完了したことが報知されてもよい。
【0064】
ステップS6の完了により、
図7に示す処理は終了する。
図7に示す処理の終了後、再度、
図7に示すステップS1以降の処理が繰り返されてよい。
【0065】
[3-2.第2実施例]
図8は、第2実施例の熱供給装置30Bの概略の構成を示すブロック図である。
図8において、太い黒線は、流体が流れる経路を示す。また、白抜きの矢印は、流体が流れる方向を示す。
【0066】
図8に示すように、熱供給装置30Bは、自動操舵機構20に流体を搬送する流体搬送機構32を含む。熱供給装置30Bは、流体搬送機構32を用いた流体の搬送により、自動操舵機構20に熱を供給する。本例では、流体搬送機構32は、エンジン3を冷却する冷却液を循環させる冷却液循環機構50を利用して、自動操舵機構20に冷却液を搬送する。すなわち、本例では、流体搬送機構32が搬送する流体は、エンジン冷却用の冷却液(以下、エンジン冷却液)である。エンジン冷却液は、例えば水等であってよい。エンジン冷却液を利用することにより、トラクタ1に既に備えられる構成を利用して熱供給装置30Bを構成することができ、新たな部品等の追加を極力低減することができる。
【0067】
なお、本例では、流体搬送機構32により搬送される流体がエンジン冷却液であるが、これは例示である。流体搬送機構32により搬送される流体流体は、液体ではなく気体であってもよい。流体搬送機構32は、エンジン3における排気や、空調システムで生成される暖気を取り出して、自動操舵機構20に熱供給用の気体を搬送する構成であってもよい。
【0068】
図8に示すように、冷却液循環機構50は、ポンプ51を駆動させることにより、エンジン冷却液の循環を行う。エンジン3で温められたエンジン冷却液は、ラジエータ52で冷却され、再び、エンジン3に送られてエンジン3の冷却を行う。なお、冷却液循環機構50は、エンジン冷却液の温度を測定する冷却液温度センサ53を有する。エンジン3の始動時に低温であるエンジン冷却液は、通常、エンジン3の始動から時間が経過するにつれて温度が上昇する。
【0069】
流体搬送機構32は、冷却液循環機構50で循環されるエンジン冷却液を、冷却液循環機構50から取り出し、自動操舵機構20に搬送する。そして、流体搬送機構32は、自動操舵機構20に対して熱の供給源として利用されたエンジン冷却液を冷却液循環機構50に戻す。詳細には、流体搬送機構32は、ジャケット321とバルブ322とを含む。
【0070】
ジャケット321は、自動操舵機構20を構成する部材の少なくとも一部を覆うように設けられる。本例では。ジャケット321は、ギアケース2021の少なくとも一部を覆うように設けられる。ジャケット321は、内部にエンジン冷却液を流す流路を有する。バルブ322は、流体搬送機構32を用いたエンジン冷却液の搬送状態と非搬送状態とを切り替える。バルブ322が開かれている場合に搬送状態となり、バルブ322が閉じられている場合に非搬送状態となる。バルブ322は、電磁弁等で構成され、制御装置21によって開閉制御可能に設けられる。
【0071】
図9は、第2実施例の熱供給装置30Bを備えるトラクタ1における制御装置21が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示す制御処理は、例えば、トラクタ1のエンジン3が始動された場合に開始される。
【0072】
ステップS11では、制御装置21が、冷却液温度センサ53から入力される温度が所定温度未満であるか否かを判定する。所定温度は、例えば、グリスの粘度がステアリングホイール12の操作性に悪影響を及ぼさないと想定される温度帯の下限温度であってよく、実験等によって適宜決められてよい。所定温度は、例えば0℃等であってよい。本例では、冷却液温度センサ53の温度が、自動操舵機構20の温度の推定値として利用されている。ただし、冷却液温度センサ53の温度の代わりに、自動操舵機構20を構成する部材の温度や、その周辺の温度が利用されてもよい。冷却液温度センサ53の温度が所定温度未満である場合(ステップS11でYes)、次のステップS12に処理が進められる。冷却液温度センサ53の温度が所定温度以上である場合(ステップS11でNo)、
図9に示すフローが終了される。
【0073】
ステップS12では、制御装置21がバルブ322を制御して、バルブ322が開いた状態とされる。バルブ322が開かれることにより、ジャケット321内をエンジン冷却液が流れる。これにより、エンジン3の始動により徐々に温められるエンジン冷却液から、ギアケース2021に熱の供給が開始される。すなわち、自動操舵機構20の温度が所定温度未満である場合に、流体搬送機構32が、熱を供給するための流体の搬送を開始する。なお、本例では、上述のように自動操舵機構20の温度は推定値である。ただし、自動操舵機構20の温度は、自動操舵機構20を構成する部材の温度を測定して得られる実測値であってもよい。バルブ322が開いた状態とされると、次のステップS13に処理が進められる。
【0074】
ステップS13では、制御装置21が自動操舵機能を利用不可とすることに決定する。ステップS13の処理に関する説明は、第1実施例の
図7におけるステップS2の処理の場合と同様であるために、詳細な説明は省略する。自動操舵機能を利用不可とすることが決定されると、次のステップS14に処理が進められる。
【0075】
ステップS14では、制御装置21が報知装置40(
図6参照)を制御して、自動操舵機能の利用が不可であることを知らせる報知処理が行われる。ステップS14の処理に関する説明は、第1実施例の
図7におけるステップS3の処理と同様であるために、詳細な説明は省略する。報知処理が行われると、次のステップS15に処理が進められる。
【0076】
ステップS15では、制御装置21が所定時間の経過を監視する。所定時間は、例えば、エンジン冷却液を用いた熱の供給により、ギアケース2021内に充填されるグリスを十分に温めることができる時間であり、実験等によって適宜決定されてよい。所定時間は、例えば、冷却液温度センサ53を用いて得られる温度に応じて変更されてよく、当該温度が低いほど長くされてよい。所定時間が経過したと判定された場合(ステップS15でYes)、次のステップS16に処理が進められる。所定時間が経過していないと判定された場合(ステップS15でNo)、ステップS15の監視が続けられる。
【0077】
ステップS16では、制御装置21がバルブ322を制御して、バルブ322が閉じられた状態とされる。バルブ322が閉じられると、熱を供給に利用されるエンジン冷却液の搬送が停止される。すなわち、流体搬送機構32は、流体の搬送を開始してから所定時間が経過した場合に、流体の搬送を停止する。流体の搬送の停止により、熱の供給が停止される。なお、バルブ322が閉じられるタイミングでは、ギアケース2021内に充填されるグリスは十分に温められており、ステアリングホイール12の操作性は良好になっている。バルブ322が閉じた状態とされると、次のステップS17に処理が進められる。
【0078】
ステップS17では、制御装置21が自動操舵機能を利用可とすることに決定する。ステップS17の処理に関する説明は、第1実施例の
図7におけるステップS5の処理の場合と同様であるために、詳細な説明は省略する。自動操舵機能を利用可とすることが決定されると、次のステップS18に処理が進められる。
【0079】
ステップS18では、制御装置21が報知装置40を制御して、自動操舵機能を利用できることを知らせる報知処理が行われる。ステップS18の処理に関する説明は、第1実施例の
図7におけるステップS6の処理の場合と同様であるために、詳細な説明は省略する。ステップS18の完了により、
図9に示す処理は終了する。
図9に示す処理の終了後、再度、
図9に示すステップS1以降の処理が繰り返されてよい。
【0080】
なお、本例においては、エンジン冷却液が高温となった場合には、流体搬送機構32によるエンジン冷却液の搬送が自動的に停止される構成であってもよい。ここで、高温とは、所定温度(0℃等)よりも極度に高い温度を指し、例えば80℃以上の温度であってよい。
【0081】
<4.変形例>
[4-1.第1変形例]
以上においては、熱供給装置30が、電気ヒータ31と流体搬送機構32とのうち、一方のみを含む構成とした。ただし、熱供給装置30は、電気ヒータ31と流体搬送機構32とを含む構成であってもよい。
【0082】
図10は、熱供給装置30が電気ヒータ31と流体搬送機構32とを含む場合の両者に使い分け手法を例示するフローチャートである。
図10に示すフローは、例えば、トラクタ1のエンジン3が始動された場合に開始される。なお、本変形例では、電気ヒータ31は、エンジン3の始動により即座に動作状態(電源オン)とはされない。
【0083】
ステップS21では、制御装置21が、自動操舵機構20の温度が所定温度未満であるか否かを判定する。所定温度は、上述の第2実施例と同様に、グリスの粘度がステアリングホイール12の操作性に悪影響を及ぼさないと想定される温度帯の下限温度であってよく、例えば0℃等である。自動操舵機構20の温度は、例えば、モータ201やギア機構202等の自動操舵機構20を構成する部材の温度を直接測定する温度センサから得られる構成であってよい。また、自動操舵機構20の温度は、例えば、外気温やキャビン内温度等の自動操舵機構20の温度を推定可能とする温度センサにより得られる温度であってもよい。自動操舵機構20の温度が所定温度未満である場合(ステップS21でYes)、次のステップS22に進められる。自動操舵機構20の温度が所定温度以上である場合(ステップS21でNo)、熱供給装置による熱の供給が不要のために、
図10に示すフローは終了する。
【0084】
ステップS22では、制御装置21が、冷却液温度センサ53から得られる温度が所定温度未満であるか否かを判定する。当該温度が所定温度未満である場合(ステップS22でYes)、次のステップS23に処理が進められる。当該温度が所定温度以上である場合(ステップS22でNo)、ステップS24に処理が進められる。
【0085】
ステップS23では、電気ヒータ31の電源がオンとされ、電気ヒータ31を用いた熱の供給が開始される。この後の処理は、
図7に示す処理と同様であってよい。ステップS24では、流体搬送機構32を用いた熱の供給が開始される。この後の処理は、
図9に示すステップS12以降の処理と同様であってよい。
【0086】
すなわち、本変形例では、流体の温度が所定温度未満である場合、電気ヒータ31を用いた熱の供給が行われ、流体の温度が所定温度以上である場合、流体搬送機構32を用いた熱の供給が行われる。このような使い分けを行うことにより、低温環境下において自動操舵機構20に効率良く熱を供給することができる。
【0087】
[4-2.第2変形例]
図11は、熱供給装置30を備えるトラクタ1の第2変形例について説明するためのブロック図である。本変形例では、運転者等のオペレータが指令を入力するための操作部25が、ステアリングホイール12を手動で操作する状態から自動操舵の開始を待つ待機状態へと切り替える切替操作部251を有する。すなわち、本変形例のトラクタ1は、ステアリングホイール12を手動で操作する状態から自動操舵の開始を待つ待機状態へと切り替える切替操作部251を備える。待機状態は、手動から自動へと切り替えるに際しての準備期間であってよい。待機状態においては、例えば、上述のA点およびB点(
図3参照)の登録が可能に設けられてよい。また、待機状態においては、その他の自動操舵に関わる設定が可能に設けられてよい。
【0088】
なお、切替操作部251を含む操作部25は、トラクタ1の車体2に設けられる構成と、トラクタ1と通信可能な携帯通信端末(不図示)に設けられる構成とのうち、少なくともいずれか一方の構成であってよい。また、切替操作部251は、ハードスイッチとソフトスイッチとのいずれであってもよい。
【0089】
このような切替操作部251が設けられる構成では、切替操作部251が操作されて待機状態に切り替わった場合に、熱供給装置30が熱の供給を開始する構成としてよい。詳細には、熱供給装置30による熱の供給は、自動操舵機構20の温度が所定温度(0℃等)未満である場合に開始されることが好ましい。
【0090】
なお、本変形例の熱供給装置30は、例えば、第1実施例の熱供給装置30Aや、第2実施例の熱供給装置30B等であってよい。また、本変形例においても、熱供給装置30を利用した熱の供給が行われている場合には、その旨や、自動操舵機能を用いた自動操舵を開始できない旨が報知装置40により報知されてよい。
【0091】
[4-3.第3変形例]
図12は、熱供給装置30を備えるトラクタ1の第3変形例について説明するためのブロック図である。本変形例では、運転者等のオペレータが指令を入力するための操作部25Aが、熱供給装置30による熱の供給開始を指示可能とする開始操作部252を有する。すなわち、本変形例のトラクタ1は、熱供給装置30による熱の供給開始を指示可能とする開始操作部252を備える。開始操作部252の操作により、熱供給装置30が熱の供給を開始する。このような構成とすると、運転者等のオペレータが必要と感じるタイミングで自由に自動操舵機構20を温めることができる。
【0092】
なお、開始操作部252を含む操作部25は、トラクタ1の車体2に設けられる構成と、トラクタ1と通信可能な携帯通信端末(不図示)に設けられる構成とのうち、少なくともいずれか一方の構成であってよい。また、開始操作部252は、ハードスイッチとソフトスイッチとのいずれであってもよい。ハードスイッチとして構成される開始操作部252は、ステアリングホイール12またはステアリングコラム13に設けられることが好ましい。
【0093】
また、本変形例の熱供給装置30は、例えば、第1実施例の熱供給装置30Aや、第2実施例の熱供給装置30B等であってよい。また、本変形例においても、熱供給装置30を利用した熱の供給が行われている場合には、その旨や、自動操舵機能を用いた自動操舵を開始できない旨が報知装置40により報知されてよい。
【0094】
また、本変形例の場合も、熱供給装置30による熱の供給は、自動操舵機構20の温度が第1温度(第1実施例参照;例えば0℃等)未満であることが条件とされてよい。すなわち、自動操舵機構20の温度が第1温度以上の場合に開始操作部252の操作をしても熱供給装置30による熱の供給が行われない構成としてよい。また、このような構成では、自動操舵機構20の温度が第1温度未満である場合には、開始操作部252の操作を促す報知が行われてよい。また、自動操舵機構20の温度が第1温度以上である場合には、開始操作部252の操作が無効である旨の報知が行われてよい。また、開始操作部252が操作されて熱供給装置30による熱の供給が開始された後に、自動操舵機構20の温度が第2温度(第1実施例参照;例えば20℃等)となった場合に、熱供給装置30による熱の供給の停止を促す報知が行われてもよい。
【0095】
また、開始操作部252の操作は、上述した切替操作部251(
図11参照)の操作により待機状態に切り替わったことを条件として、許可される構成としてもよい。この場合においても、開始操作部252の操作は、自動操舵機構20の温度が第1温度(第1実施例参照;例えば0℃等)未満であることを条件として許可される構成としてよい。開始操作部252による操作が許可されていない場合には、その旨が報知されてよい。また、開始操作部252による操作が許可された時点で、その旨が報知されてもよい。
【0096】
<5.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0097】
<6.付記>
例示的な本発明の作業車両は、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールの自動操舵を可能とする自動操舵機構と、前記自動操舵機構に対して熱を供給可能に設けられる熱供給装置と、を備える構成(第1の構成)であってよい。
【0098】
上記第1の構成の作業車両は、前記ステアリングホイールを支持するステアリングシャフトを備え、前記自動操舵機構は、モータと、前記ステアリングシャフトに前記モータの回転動力を伝達するギア機構と、を有し、前記熱供給装置の少なくとも一部は、前記ギア機構、又は、その周辺に配置される構成(第2の構成)であってよい。
【0099】
上記第1又は第2の構成の作業車両において、前記熱供給装置は、前記自動操舵機構を構成する部材に配置される電気ヒータを含み、前記自動操舵機構の温度が第1温度未満である場合に、前記電気ヒータが熱の供給を開始する構成(第3の構成)であってよい。
【0100】
上記第3の構成の作業車両において、前記電気ヒータは、前記熱の供給の開始後に前記自動操舵機構の温度が前記第1温度よりも高い第2温度となった場合に、前記熱の供給を停止する構成(第4の構成)であってよい。
【0101】
上記第1又は第2の構成の作業車両において、前記熱供給装置は、前記自動操舵機構に流体を搬送する流体搬送機構を含み、前記自動操舵機構の温度が所定温度未満である場合に、前記流体搬送機構が熱を供給するための前記流体の搬送を開始する構成(第5の構成)であってよい。
【0102】
上記第5の構成の作業車両において、前記流体搬送機構は、前記流体の搬送を開始してから所定時間が経過した場合に、前記流体の搬送を停止する構成(第6の構成)であってよい。
【0103】
上記第5又は第6の構成の作業車両において、前記流体搬送機構が搬送する流体は、エンジン冷却用の冷却液である構成(第7の構成)であってよい。
【0104】
上記第1の構成の作業車両において、前記熱供給装置は、前記自動操舵機構を構成する部材に配置される電気ヒータと、前記自動操舵機構に流体を搬送する流体搬送機構と、を含み、前記流体の温度が所定温度未満である場合、前記電気ヒータを用いた熱の供給が行われ、前記流体の温度が前記所定温度以上である場合、前記流体搬送機構を用いた熱の供給が行われる構成(第8の構成)であってよい。
【0105】
上記第1から第8のいずれかの構成の作業車両において、前記熱供給装置による熱の供給中は、前記自動操舵が実行不能とされる構成(第9の構成)であってよい。
【0106】
上記第1から第9のいずれかの構成の作業車両は、前記ステアリングホイールを手動で操作する状態から前記自動操舵の開始を待つ待機状態へと切り替える切替操作部を備え、前記切替操作部が操作されて前記待機状態に切り替わった場合に、前記熱供給装置が熱の供給を開始する構成(第10の構成)であってよい。
【0107】
上記第1から第10のいずれかの構成の作業車両は、前記熱供給装置による熱の供給開始を指示可能とする開始操作部を備え、前記開始操作部の操作により、前記熱供給装置が熱の供給を開始する構成(第11の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0108】
1・・・トラクタ(作業車両)
3・・・エンジン
12・・・ステアリングホイール
14・・・ステアリングシャフト
20・・・自動操舵機構
30、30A、30B・・・熱供給装置
31・・・電気ヒータ
32・・・流体搬送機構
201・・・モータ
202・・・ギア機構
251・・・切替操作部
252・・・開始操作部