(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080930
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240610BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20240610BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240610BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H05H1/00 A
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194297
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大輔
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084AA07
2G084BB02
2G084BB05
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2G084CC33
2G084DD04
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2G084HH02
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2G084HH24
2G084HH25
2G084HH30
2G084HH34
2G084HH42
2G084HH52
5F004AA01
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004BD04
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5F004DA25
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5F045AA08
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5F045EH02
5F045EH04
5F045EH07
5F045GB08
5F045GB15
(57)【要約】
【課題】アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を容易に図ることができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置(1)は、真空容器(2)と、高周波窓(3)と、アンテナ部(AP)と、を備える。アンテナ部(AP)は、アンテナ(7)と、第1導体(9a)及び第2導体(9b)と、アンテナ(7)と第1導体(9a)との第1接続角度を変更する第1コンデンサ部(8a)と、アンテナ(7)と第2導体(9b)との第2接続角度を変更する第2コンデンサ部(8b)と、を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を内部に収容する真空容器と、
前記真空容器の内部にプラズマを発生させる高周波磁場を、前記真空容器の内部に導入させる高周波窓と、
アンテナ部と、を備え、
前記アンテナ部は、
前記高周波磁場を発生するバー状のアンテナと、
前記アンテナに高周波電流を供給するための一対の導体である第1導体及び第2導体と、
前記アンテナの一端部と前記第1導体とを接続する部材であって、前記アンテナと前記第1導体との接続角度である第1接続角度を変更可能な第1接続部と、
前記アンテナの他端部と前記第2導体とを接続する部材であって、前記アンテナと前記第2導体との接続角度である第2接続角度を変更可能な第2接続部と、を具備し、
前記アンテナは、前記第1接続角度または前記第2接続角度の少なくともいずれかの変化に伴って、屈曲し得る、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1接続部は、前記第1導体に接続された第1導体側電極と、前記アンテナの前記一端部に接続された第1アンテナ電極と、を有し、前記第1導体側電極と前記第1アンテナ電極とが、ギャップを隔てて相互に回動可能にされた、第1コンデンサ部を構成しており、
前記第2接続部は、前記第2導体に接続された第2導体側電極と、前記アンテナの前記他端部に接続された第2アンテナ電極と、を有し、前記第2導体側電極と前記第2アンテナ電極とが、ギャップを隔てて相互に回動可能にされた、第2コンデンサ部を構成している、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記アンテナ部は、前記第1接続角度を変化させる第1駆動部と、前記第2接続角度を変化させる第2駆動部と、を具備し、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する制御部、をさらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記プラズマが発する光の分光強度の、前記アンテナの長手方向に沿った分布を測定する分光強度分布測定器を、さらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記被処理物に成膜された被膜の、前記アンテナの長手方向に沿った膜厚を測定する膜厚測定器を、さらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記アンテナは、少なくとも2つの直線状部と、前記2つの直線状部の間に設けられた屈曲可能な屈曲部とを有している、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを用いて当該真空容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理装置は、その種別に応じて、発生させたプラズマを用いた所定のプラズマ処理を被処理物に施す。
【0003】
また、プラズマ処理装置においては、アンテナの位置を移動する移動駆動部を設けたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のプラズマ処理装置は、被処理物との間の距離を変更可能なアンテナを設けたものであるが、アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を図ることについては改善の余地がある。
【0006】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を容易に図ることができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るプラズマ処理装置は、被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部にプラズマを発生させる高周波磁場を、前記真空容器の内部に導入させる高周波窓と、アンテナ部と、を備え、前記アンテナ部は、前記高周波磁場を発生するバー状のアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給するための一対の導体である第1導体及び第2導体と、前記アンテナの一端部と前記第1導体とを接続する部材であって、前記アンテナと前記第1導体との接続角度である第1接続角度を変更可能な第1接続部と、前記アンテナの他端部と前記第2導体とを接続する部材であって、前記アンテナと前記第2導体との接続角度である第2接続角度を変更可能な第2接続部と、を具備し、前記アンテナは、前記第1接続角度または前記第2接続角度の少なくともいずれかの変化に伴って、屈曲し得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を容易に図ることができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。
【
図2】
図1に示したアンテナ部の要部構成を説明する図である。
【
図3】
図2に示した第2コンデンサ部の構成例を説明する図である。
【
図4】上記第2コンデンサ部の別の構成例を説明する図である。
【
図5】上記プラズマ処理装置の動作例を説明する図である。
【
図6】上記プラズマ処理装置の別の動作例を説明する図である。
【
図7】変形例に係るプラズマ処理装置1の動作例を説明する図である。
【
図8】本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置の要部構成を説明する図である。
【
図9】本開示の実施形態3に係るプラズマ処理装置の要部構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、
図1を用いて具体的に説明する。
図1は、本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。
【0011】
なお、以下の説明では、所定のプラズマ処理として、誘導結合性のプラズマを使用したプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相堆積)法により、被処理物H1の表面に所定の被膜を成膜する成膜処理を行うプラズマ処理装置1を例示して説明する。
【0012】
しかしながら、本開示は、所定のプラズマ処理として、例えば、スパッタ法によって被処理物H1に所定の被膜を成膜する成膜処理を行うプラズマ処理装置に適用することができる。また、本開示は、所定のプラズマ処理として、プラズマを用いて、被処理物H1の表面に対して、所定の加工を行う表面加工処理、例えば、エッチング処理あるいはアッシング処理を行うプラズマ処理装置に適用することができる。なお、スパッタ法を行うプラズマ処理装置1においては、ターゲットがプラズマの内部に設置される。
【0013】
<プラズマ処理装置1の構成>
図1に示すように、本実施形態1のプラズマ処理装置1は、真空容器2と、高周波窓3と、電位調整層6と、アンテナ部APと、を備えている。真空容器2の内部には、真空排気され、かつ、ガスが導入される処理室21が形成されている。真空容器2は例えば金属製の筐体である。真空容器2の壁面22には、厚さ方向に貫通する開口部23が形成されている。真空容器2は電気的に接地されている。真空容器2の内部には、被処理物H1が収容される。さらに、プラズマ処理装置1では、被処理物H1は搬送機構によって処理室21内に設けられたステージHと公知のロードロック室との間で搬送される(図示せず)。
【0014】
処理室21に導入されるガスは、処理室21に収容される被処理物H1に施す処理内容に応じたものにすればよい。例えば、プラズマCVD法によって被処理物H1に膜形成を行う場合には、ガスは、原料ガスまたはそれをH2等の希釈ガスで希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4の場合はSi膜を、SiH4+NH3の場合はSiN膜を、SiH4+O2の場合はSiO2膜を、SiF4+N2の場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ被処理物H1上に形成することができる。
【0015】
被処理物H1は、例えば、液晶パネルディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)パネルディスプレイなどに用いられるガラス基板、合成樹脂基板であり得る。また、被処理物H1は、各種用途に用いられる半導体基板であり得る。プラズマ処理装置1は、上記所定のプラズマ処理によってバリア(防湿)膜等の所定の被膜を被処理物H1上に成膜する。
【0016】
<高周波窓3の構成>
高周波窓3は、金属板4と、誘電体板5と、を有する。高周波窓3は、真空容器2の処理室21の内部にプラズマを発生させる高周波磁場を、開口部23を介して真空容器2の処理室21の内部に導入させる。金属板4及び誘電体板5は、真空容器2の開口部23の上方に配置されている。
【0017】
金属板4は、開口部23を塞ぐように真空容器2の壁面22に設けられている。金属板4には、金属板4を貫通する複数のスリット41が形成される。金属板4は、被処理物W1の表面と実質的に平行になるように配置されている。金属板4は、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、錫、ケイ素、チタン、鉄、クロム、ニオブ、炭素、モリブデン、タングステン、あるいはコバルトを含んだ群から選択される1つの金属、またはそれらの合金を用いて構成されている。
【0018】
誘電体板5は、複数のスリット41を塞ぐように真空容器2の外部側から金属板4に接して設けられるとともに、金属板4のアンテナ部AP側の表面に重なっている。これにより、誘電体板5が金属板4によって支持されることになり、誘電体板5が変形することを抑制し、誘電体板5の強度を実質的に向上することができる。
【0019】
誘電体板5の全体は、誘電体物質で構成されており、誘電体板5は、平板状を成すものである。誘電体板5を構成する材料は、アルミナ、炭化ケイ素もしくは窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、または、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂のような樹脂材料であってもよい。
【0020】
アンテナ部APから生じた高周波磁場は、誘電体板5、電位調整層6、及び複数のスリット41を透過して処理室21の内部に供給される。なお、真空容器2の開口部23を塞ぐ金属板4と、複数のスリット41を塞ぐ誘電体板5とによって、処理室21の内部の真空が保持される。
【0021】
<電位調整層6の構成>
電位調整層6は、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、錫、ケイ素、チタン、鉄、クロム、ニオブ、炭素、モリブデン、タングステン、あるいはコバルトを含んだ群から選択される1つの金属、またはそれらの合金を用いて構成されている。電位調整層6は、アンテナ7側の誘電体板5の表面に形成される。つまり、電位調整層6は、誘電体板5の金属板4と接する側とは反対側の表面に形成される。具体的には、電位調整層6は、真空蒸着法またはメッキ法により、誘電体板5の表面全体を覆うように膜状に形成されている。
【0022】
但し、電位調整層6は、複数のスリット41の全てを覆うように、誘電体板5の表面に形成されていればよく、誘電体板5の表面のうち一部を除く範囲に形成されていてもよい。また、電位調整層6が誘電体板5の表面のうち一部を除く範囲に形成された場合には、電位調整層6のサイズを小さくすることができ、プラズマ処理装置1の製造コストを削減することができる。
【0023】
電位調整層6は、所定の電位、例えば、グランドG1と接続されて接地されている。これにより、誘電体板5が複数のスリット41を覆うように金属板4に重なっている点とも相まって、電位調整層6は、アンテナ部APから処理室21の内部に向かう電界を効率よく、かつ、より確実に遮断することができる。よって、処理室21の内部に発生するプラズマP1とアンテナ部APとの間に静電結合が生じることを抑制することができる。
【0024】
このように本実施形態1では、電位調整層6により、静電結合が生じることを抑制できるため、静電結合性成分を抑制したプラズマP1を生成することができる。従って、静電結合によるプラズマの発生が抑制され、誘導結合によるプラズマに、静電結合によるプラズマが混成することを抑制できる。よって、静電結合によって発生するプラズマと高周波窓3との間の電位勾配による荷電粒子の流れと、その流れによる真空容器2の内壁でのエネルギー損失を軽減でき、処理室21の内部に高密度のプラズマP1を生成できる。また、当該電位勾配で運動エネルギーを付与される荷電粒子を減少させることができ、被処理物W1の表面への不要なエネルギーの流入が減少し、成膜やエッチング時において被処理物W1の表面の損傷を減少させることが可能となる。
【0025】
なお、電位調整層6が誘電体板5に形成されていない場合、当該静電結合を十分に抑制することができないおそれがある。換言すれば、金属板4は、アンテナ部APから生じた高周波磁場を処理室21の内部に透過させるとともに、処理室21の外部から処理室21の内部への電界の入り込みを低減し得る。しかしながら、電位調整層6が誘電体板5に形成されていない場合、アンテナ部APから生じた電界が誘電体板5及び複数のスリット41を透過して、処理室21の内部に発生するプラズマP1とアンテナ部APとの間に静電結合が生じる。
【0026】
また、誘電体板5上に電位調整層6が設けられているので、金属板4に形成されるスリット41のサイズに関係なく、電位調整層6によりアンテナ部APから生じた電界を遮断することができる。これにより、スリット41のサイズが大きい場合でも、アンテナ部APから生じた電界が処理室21の内部に入り込むことを防ぐことができる。このため、金属板4に十分大きいスリット41を形成することができ、アンテナ部APから生じた高周波磁場をスリット41から処理室21の内部に効率良く供給することができ、プラズマP1の生成効率を向上することができる。
【0027】
なお、電位調整層6の代わりに、金属ではない材質のもの、例えば、酸化物系の透明導電膜を用いてもよい。その場合、当該透明導電膜とガラス製の誘電体板5との組み合わせにより、アンテナ部AP側からプラズマ発光分布の確認が可能になり、プラズマ密度分布またはプラズマ処理の進行状況の確認も可能になる。例えば、エッチングの進行状況を確認することができる。
【0028】
<アンテナ部APの構成>
図2も用いて、本実施形態のアンテナ部APの要部構成例について具体的に説明する。
図2は、
図1に示したアンテナ部の要部構成を説明する図である。なお、
図2では、図面の簡略化のために、誘電体板5と電位調整層6の図示は省略している。
【0029】
アンテナ部APは、
図1及び
図2に示すように、真空容器2の外部で真空容器2の上方に配置されている。アンテナ部APは、アンテナ7と、一対の導体である第1導体9a及び第2導体9bと、アンテナ7の一端部と第1導体9aとの間に接続された第1コンデンサ部8aと、アンテナ7の他端部と第2導体9bとの間に接続された第2コンデンサ部8bと、を備えている。
【0030】
<アンテナ7の構成>
アンテナ7は、例えば、高周波磁場を発生するバー状の筒体により構成されている。具体的には、アンテナ7は、例えば、銅、アルミニウム、あるいはこれらの合金またはステンレスなどの金属材料を用いた筒状の部材により構成されている。
【0031】
また、アンテナ7は、屈曲し得るように構成されている。具体的には、アンテナ7には、例えば、一端部側から他端部側に沿って、直線状部7a1、屈曲部7b1、直線状部7a2、屈曲部7b2、及び直線状部7a3が順次設けられている。直線状部7a1、直線状部7a2、及び直線状部7a3は、直線状に構成されており、上記長手方向で真空容器2の処理室21の一端部、中央部、及び他端部に対向するように設置されている。また、これらの直線状部7a1、直線状部7a2、及び直線状部7a3は、屈曲し難い構造とされている。
【0032】
屈曲部7b1及び屈曲部7b2は、例えば、蛇腹構造を有している。換言すれば、屈曲部7b1及び屈曲部7b2は、屈曲し易い構造とされている。そして、屈曲部7b1は、直線状部7a1及び直線状部7a2が相互に位置の変化を行うことを許容する。つまり、屈曲部7b1は、
図2に例示するように、直線状部7a1及び直線状部7a2が直線状から非直線状となるのを許容する。また、屈曲部7b2は、直線状部7a2及び直線状部7a3が相互に位置の変化を行うことを許容する。つまり、屈曲部7b2は、
図2に例示するように、直線状部7a2及び直線状部7a3が直線状から非直線状となるのを許容する。
【0033】
なお、上記の説明では、直線状部7a1、直線状部7a2、及び直線状部7a3と屈曲部7b1及び屈曲部7b2とを有するアンテナ7について説明した。しかしながら、本開示のアンテナ7はこれに限定されるものではなく、少なくとも2つの直線状部と、2つの直線状部の間に設けられた屈曲可能な屈曲部とを有するものであればよい。また、このように、アンテナ7が、長手方向に屈曲し得る構成とされているので、アンテナと高周波窓との間の距離を部分的に確実に変化させることができ、アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を確実に図ることができる。
【0034】
また、上記の説明以外に、アンテナ7自体を弾性変形可能な金属材料を用いて構成することもできる。つまり、本開示は、屈曲部を有しないアンテナにおいて、その長手方向の全体を撓むことが可能なアンテナを用いることもできる。
【0035】
<第1導体9a及び第2導体9bの構成>
第1導体9a及び第2導体9bは、例えば、銅、アルミニウム、あるいはこれらの合金またはステンレスなどの金属材料を用いた筒状の部材により構成されている。第1導体9a及び第2導体9bは、アンテナ7に高周波電流を供給するための回路の一部である。具体的にいえば、第1導体9a及び第2導体9bには、高周波電源10が接続され、また第2導体9bは、接地されている。そして、アンテナ部APにおいて、高周波電源10から、例えば、13.56MHzの周波数の高周波電流がアンテナ7に供給されるようになっている。プラズマ処理装置1では、アンテナ7に高周波電流が流れることにより、真空容器2の内部に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマP1が生成される。
【0036】
<第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bの構成>
第1コンデンサ部8aは、アンテナ7の一端部と第1導体9aとを接続する部材であって、アンテナ7と第1導体9aとの接続角度である第1接続角度θ1(後掲の
図5)を変更可能な第1接続部である。第2コンデンサ部8bはアンテナ7の他端部と第2導体9bとを接続する部材であって、アンテナ7と第2導体9bとの接続角度である第2接続角度θ2(後掲の
図5)を変更可能な第2接続部である。
【0037】
第1コンデンサ部8aは、直線状部7a1の一端部に接続された回転部8a1と、第1導体9aに接続された本体部8a2とを備えている。回転部8a1及び本体部8a2は、相互に回転可能に構成されている。同様に、第2コンデンサ部8bは、直線状部7a3の他端部に接続された回転部8b1と、第2導体9bに接続された本体部8b2とを備えている。回転部8b1及び本体部8b2は、相互に回転可能に構成されている。
【0038】
回転部8a1及び回転部8b1には、第1駆動部としてのモータM1と第2駆動部としてのモータM2が図示しない駆動機構を介してそれぞれ接続されている。これらのモータM1及びモータM2は、アンテナ部APに含まれており、各々ステッピングモータまたはブラシレスDCモータ等の公知のモータを用いて構成されている。
【0039】
また、回転部8a1及び回転部8b1は、制御部Cから動作指示に従って、モータM1及びモータM2が駆動することにより、それぞれ本体部8a2及び本体部8b2に対して所定の方向に回転する。これにより、本実施形態1では、回転部8a1及び回転部8b1に応じて、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2が変化する。この結果、アンテナ7は、
図1に示すように、高周波窓3の金属板4に平行な状態から、
図2に示すように、金属板4に対して、屈曲した状態となり得る(詳細は後述。)。
【0040】
また、制御部Cは、図示しない操作入力部に対する、ユーザから操作指示に従って、例えば、モータM1及びモータM2を同じ回転量だけ同時に回転駆動するように構成されている。これにより、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2は同じ角度だけ変化する。
【0041】
なお、上記の説明以外に、アンテナ7の構造や材質などによっては、制御部Cは、ユーザからの指示に従って、モータM1またはモータM2に一方のみを駆動して、第1接続角度θ1または第2接続角度θ2の一方のみを変更する構成でもよい。
【0042】
第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bは、それぞれアンテナ7の一端部側及び他端部側に左右対称となるように設けられており、同一の構造からなる。なお、第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bは、何れも筒状の構造となっており、冷却水Wが各々の内部を循環可能となっている。それゆえ、以下の説明では、
図3を用いて、主に第2コンデンサ部8bについて具体的に説明する。
図3は、
図2に示した第2コンデンサ部8bの構成例を説明する図である。
【0043】
図3において、第2コンデンサ部8bの回転部8b1及び本体部8b2は、例えば、ポリフェニレンスルファイドなどの合成樹脂、またはアルミナなどのセラミックを用いて筒状に構成されている。回転部8b1及び本体部8b2は、ガスケットgを介して相互に回転可能に構成されている。回転部8b1の内部には、筒状の接続部材C4が設けられており、アンテナ7の他端部である直線状部7a3の端部が接続部材C4に接続されている。第2コンデンサ部8bは、接続部材C4を介してアンテナ7の他端部に接続された筒状の第2アンテナ電極C2を有している。つまり、第2アンテナ電極C2は、回転部8b1の内部から本体部8b2の内部に延伸されて配置されている。
【0044】
本体部8b2の内部には、筒状の接続部材C3が設けられており、第2導体9bの端部が接続部材C3に接続されている。第2コンデンサ部8bは、接続部材C3を介してアンテナ7の他端部に接続された筒状の第2導体側電極C1を有している。第2コンデンサ部8bでは、第2導体側電極C1と第2アンテナ電極C2とは、相対位置を保ってギャップを隔てた状態で回転できるように構成されている。このため、第2コンデンサ部8bは、アンテナ7への高周波電流の供給を可能にしつつ、アンテナ7と第2導体9bとの第2接続部の相互回転、つまり第2接続角度θ2を調整することができる。
【0045】
同様に、第1コンデンサ部8aは、第1導体9aに接続された第1導体側電極と、アンテナの一端部である直線状部7a1に接続された第1アンテナ電極と、を有している。また、第1コンデンサ部8aは、回転部8a1と本体部8a2とが相互に回転する。従って、第1コンデンサ部8aでは、第1導体側電極と第1アンテナ電極とは、相対位置を保ってギャップを隔てた状態で回転できるように構成されている。このため、第1コンデンサ部8aは、アンテナ7への高周波電流の供給を可能にしつつ、アンテナ7と第1導体9aとの第1接続部の相互回転、つまり第1接続角度θ1を調整することができる。
【0046】
本実施形態1のプラズマ処理装置1では、上述したように、アンテナ部APの各部、つまり、第1導体9a、第1コンデンサ部8a、アンテナ7、第2コンデンサ部8b、及び第2導体9bが筒状に構成されている。このため、アンテナ部APでは、図示しないチラーを用いて、冷却媒体としての冷却水Wを循環可能に構成されている。これにより、本実施形態1では、アンテナ部APの各部を所定温度に適切に冷却することができ、プラズマ処理装置1をより適切に動作することができる。
【0047】
また、第2コンデンサ部8bでは、第2導体側電極C1と第2アンテナ電極C2との間のギャップを流れる冷却水が第2コンデンサ部8bの誘電体層として機能する。すなわち、第2コンデンサ部8bでは、第2導体側電極C1と第2アンテナ電極C2との対向長さがコンデンサ長さを構成している。同様に、第1コンデンサ部8aでは、第1導体側電極と第1アンテナ電極との間のギャップを流れる冷却水が第1コンデンサ部8aの誘電体層として機能する。すなわち、第1コンデンサ部8aでは、第1導体側電極と第1アンテナ電極との対向長さがコンデンサ長さを構成している。
【0048】
なお、上記の説明以外に、筒状の誘電体材料からなる絶縁層を第1導体側電極と第1アンテナ電極との間のギャップ及び第2導体側電極C1と第2アンテナ電極C2との間のギャップに設置して、第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bの各誘電体層を構成してもよい。
【0049】
但し、上記のように、冷却水Wを用いて第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bの各誘電体層を構成する場合の方が、誘電体層を別途設ける場合に比べて、コスト安価にプラズマ処理装置1を構成できる点で好ましい。
【0050】
<第2コンデンサ部8bの別の構成>
次に、
図4も用いて、第2コンデンサ部8bの別の構成例について具体的に説明する。
図4は、上記第2コンデンサ部8bの別の構成例を説明する図である。
【0051】
図4に示すように、第2コンデンサ部8bにおいて、第2導体側電極C1は、例えば、筒状の電極部分C1aと、円板状の電極部分C1bと、を備えている。電極部分C1aは、接続部材C3を介して第2導体9bに接続されている。電極部分C1bは、電極部分C1aの端部に固定されている。
【0052】
第2アンテナ電極C2は、例えば、筒状の電極部分C2aと、円板状の電極部分C2bと、を備えている。電極部分C2aは、接続部材C4を介してアンテナ7の他端部である直線状部7a3に接続されている。電極部分C2bは、電極部分C2aの端部に固定されている。電極部分C1bと電極部分C2bとは、本体部8b2の内部において、所定のギャップを介して互いに対向している。第2コンデンサ部8bでは、電極部分C1bと電極部分C2bとの間の空間に存在する冷却水Wが第2コンデンサ部8bの誘電体層として機能する。
【0053】
<制御部Cの構成>
制御部Cは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じてプラズマ処理装置1の各部の制御を行う機能ブロックである。具体的には、制御部Cは、例えば、図示しない操作入力部に対して、ユーザが入力した指示に基づいて、モータM1及びモータM2の回転駆動を制御する駆動制御を実行する。
【0054】
<動作例>
次に、
図5及び
図6も用いて、本実施形態1のプラズマ処理装置1の動作例について具体的に説明する。
図5は、上記プラズマ処理装置1の動作例を説明する図である。
図6は、上記プラズマ処理装置1の別の動作例を説明する図である。なお、
図5及び
図6では、図面の簡略化のために、真空容器2、モータM1、モータM2、及び制御部Cの図示は省略している。
【0055】
本実施形態1のプラズマ処理装置1では、アンテナ7が屈曲していない場合、アンテナ7は、高周波窓3に対して、
図5に示す状態となる。すなわち、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2が、各々初期角度、例えば、90°となるように調整されている。この場合、アンテナ7は、
図5に示すように、屈曲せずに直線状の形態で高周波窓3と対向する。このため、アンテナ部APでは、例えば、直線状部7a1と電位調整層6との間の離間距離L1、直線状部7a2と電位調整層6との間の離間距離L2、及び直線状部7a3と電位調整層6との間の離間距離L3は、全て同じ値、例えば、1.0mmとなる。なお、アンテナ7には、例えば、1500mmの長さを有するものが用いられている。
【0056】
すなわち、アンテナ7では、高周波窓3に対する、その一端部、中央部、及び他端部での離間距離が同一であるため、
図5に示すように、プラズマPD1が生成される。この場合、プラズマPD1の密度は、アンテナ7の長手方向で不均一なものとなる。具体的には、アンテナ7の一端部及び他端部において、アンテナ7からの高周波パワーが中央部に比べて低下することが要因となって不均一となる。
【0057】
これに対して、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部CがモータM1及びモータM2を制御することにより、
図6の方向R1及び方向R2に示すように、本体部8a2及び本体部8b2に対してそれぞれ回転部8a1及び回転部8b1を回転させる。また、本実施形態1では、
図6に示すように、回転部8a1及び回転部8b1の回転に伴って、本体部8a2及び本体部8b2も回転することから、第1導体9a及び第2導体9bも撓んで回転する。これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2は、上記初期角度から小さい値(例えば、89°)に変化する。
【0058】
この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、アンテナ7は、屈曲した状態で高周波窓3と対向する。このため、アンテナ部APでは、
図7に示すように、電位調整層6と第1コンデンサ部8a側の直線状部7a1との間の離間距離L4は、例えば、1.0mmとなる。また、電位調整層6と屈曲部7b1側の直線状部7a1との間の離間距離L5は、例えば、1.8mmとなる。つまり、アンテナ7の一端部側である、直線状部7a1では、屈曲部7b1に近付くにつれて、高周波窓3との離間距離が大きくなる。
【0059】
また、電位調整層6と屈曲部7b1側の直線状部7a2との間の離間距離L6は、例えば、2.5mmとなる。また、電位調整層6と屈曲部7b2側の直線状部7a2との間の離間距離L7は、例えば、2.5mmとなる。つまり、アンテナ7の中央部である、直線状部7a2では、高周波窓3に対する離間距離は同一の値となって、高周波窓3に対して直線状の形態で対向する。
【0060】
また、電位調整層6と屈曲部7b2側の直線状部7a3との間の離間距離L8は、例えば、1.8mmとなる。また、電位調整層6と第2コンデンサ部8b側の直線状部7a3との間の離間距離L9は、例えば、1.0mmとなる。つまり、アンテナ7の他端部側である、直線状部7a3では、第2コンデンサ部8bに近付くにつれて、高周波窓3との離間距離が小さくなる。
【0061】
以上の動作により、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、
図6に示すように、高周波パワーが比較的大きい、アンテナ7の中央部が、アンテナ7の一端部及び他端部よりも高周波窓3から離間される。この結果、プラズマPD2の密度は、アンテナ7の長手方向で均一なものとし得る。具体的にいえば、本実施形態のプラズマ処理装置1ではアンテナ7の長さ方向の中央部と端部のプラズマ密度の差異を調整することができる。この結果、本実施形態1では、アンテナ7の長手方向でのプラズマの密度の均一化を容易に図ることができるプラズマ処理装置1を構成することができる。
【0062】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bがそれぞれ第1接続部及び第2接続部を構成している。これにより、本実施形態1では、アンテナ7のインダクタンス成分による電位上昇を緩和することができ、プラズマ処理装置1のコンパクト化を容易に図ることができる。
【0063】
<変形例>
ここで、
図7を用いて変形例のプラズマ処理装置1の別の動作例について具体的に説明する。
図7は、変形例に係るプラズマ処理装置1の動作例を説明する図である。なお、
図7では、図面の簡略化のために、真空容器2、モータM1、モータM2、及び制御部Cの図示は省略している。
【0064】
本変形例と上記実施形態1との主な相違点は、モータM1及びモータM2を用いて第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2を変化させたときに、回転部8a1及び回転部8b1のみ回転させ、かつ本体部8a2及び本体部8b2を回転させずに、第1導体9a及び第2導体9bを撓ませない点である。
【0065】
<動作例>
具体的にいえば、上記実施形態1の説明では、第1コンデンサ部8a及び第2コンデンサ部8bにおいて、それぞれ本体部8a2及び本体部8b2が回転部8a1及び回転部8b1の回転に伴って回転する場合について説明した。換言すれば、実施形態1では、
図6に示したように、回転部8a1及び回転部8b1がそれぞれ本体部8a2及び本体部8b2に対して回転する場合、第1導体9a及び第2導体9bも撓むことにより、アンテナ7の長手方向の寸法の変化を吸収していた。
【0066】
一方、本変形例では、第1導体9a及び第2導体9bが撓まないように構成されている。このため、本変形例では、制御部CがモータM1及びモータM2を制御して、回転部8a1及び回転部8b1を回転させると、
図7に示すように、第1導体9a及び第2導体9bは撓まないで回転せずに、アンテナ7のみが屈曲して、均一な密度を有するプラズマPD2が生成される。換言すれば、本変形例では、回転部8a1及び回転部8b1が回転する場合、屈曲部7b1及び7b2での弾性変形により、アンテナ7の長手方向の寸法の変化をアンテナ7のみで吸収する。また、本変形例でも、実施形態1のものと同様に、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2は、上記初期角度(例えば、90°)から小さい値(例えば、89°)に変化する。
【0067】
以上の構成により、本変形例のプラズマ処理装置1は、実施形態1のものと同様の効果を奏する。
【0068】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、
図8を用いて具体的に説明する。
図8は、本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置1の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0069】
本実施形態2と上記実施形態1との主な相違点は、コサインコレクタS1と分光器S2とを設けて、制御部Cとともに分光強度分布測定器を構成した点である。
【0070】
図8に示すように、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、例えば、6つのコサインコレクタS1が、アンテナ7の長手方向に沿って真空容器2の側面に設けられている。コサインコレクタS1は、真空容器2の内部のプラズマPD2からの光を集光して、光ファイバーを介して、その検知した検知光を分光器S2に出力するように構成されている。なお、コサインコレクタS1はプラズマ発光を光ファイバーに集光するための部材の一例であって、他の集光部材が用いられてもよい。
【0071】
分光器S2は、コサインコレクタS1によって受光した光の波長スペクトルを取得して、制御部Cに出力する。制御部Cは、所要の分光強度(波長スペクトルにおける所要の波長帯の強度)を基に、長手方向に沿って真空容器2の内部に生じたプラズマPD2の発光強度を取得する。
【0072】
また、制御部Cは、発光分光分析装置(Optical Emission Spectrometer)としても機能するようになっており、コサインコレクタS1の検出光に対して、所定の分光分析処理を実行するよう構成されている。これにより、制御部Cでは、真空容器2の内部にプラズマPD2が発生した場合、分光分析結果を基に、そのプラズマPD2に含まれる、元素及び元素の濃度を検知することが可能となる。さらに、制御部Cでは、その検知結果に基づき、プラズマ発生の原因を容易に把握することができる。また、制御部Cは、異常放電が真空容器2の内部に発生した場合でも、分光分析結果に基づき、異常放電の光に含まれる、元素及び元素の濃度を検知することも可能となる。
【0073】
以上の構成により、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、アンテナ7の長手方向に沿って真空容器2の内部に生じたプラズマPD2の発光強度を取得することができる。この結果、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、制御部Cは、取得した発光強度に基づいて、モータM1及びモータM2を制御することが可能となり、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2をより適切に調整して、アンテナ7の長手方向でのプラズマの密度の均一化をより容易に図ることができる。
【0074】
〔実施形態3〕
本開示の実施形態3について、
図9を用いて具体的に説明する。
図9は、本開示の実施形態3に係るプラズマ処理装置1の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0075】
本実施形態2と上記実施形態2との主な相違点は、膜厚測定器S3を設けた点である。
【0076】
図8に示すように、本実施形態3のプラズマ処理装置1では、例えば、3つの膜厚測定器S3が、アンテナ7の長手方向に沿って真空容器2の上面に設けられている。膜厚測定器S3は、エリプソメータなどを用いて構成されており、被処理物H1に成膜された被膜の膜厚を検知する。そして、膜厚測定器S3は、その測定結果を制御部Cに出力する。
【0077】
以上の構成により、本実施形態3のプラズマ処理装置1は、実施形態1のものと同様の効果を奏する。
【0078】
また、本実施形態3のプラズマ処理装置1では、アンテナ7の長手方向に沿って膜厚測定器S3を複数配置している。これにより、本実施形態3のプラズマ処理装置1では、制御部Cが膜厚測定器S3の測定結果を用いることにより、被処理物H1に成膜された被膜の、アンテナ7の長手方向に沿った膜厚を取得することができる。この結果、本実施形態3のプラズマ処理装置1では、制御部Cは、取得した膜厚に基づいて、アンテナ7の高周波電力を調整することが可能となる。従って、被処理物H1の成膜に寄与するプラズマPD2の密度を適切に変更することができ、アンテナ7の長手方向に沿った膜厚の分布を均一なものとして、被処理物H1に対する成膜処理を高精度に行うことができる。
【0079】
なお、上記の説明では、第1駆動部及び第2駆動部にモータM1及びモータM2をそれぞれ使用した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、回転部8a1及び回転部8b1の回転操作棒を取り付けて、ユーザが回転操作棒を動作することにより、第1接続角度θ1及び第2接続角度θ2を変更する構成でもよい。
【0080】
但し、上記のように、第1駆動部及び第2駆動部にモータM1及びモータM2それぞれを使用する場合の方が第1接続角度θ1または第2接続角度θ2の少なくともいずれかを精度良く変化させることができ、プラズマの密度の均一化を高精度に図ることができる点で好ましい。
【0081】
また、上記の説明以外に、第1接続角度θ1または第2接続角度θ2のみを変える構成でもよい。
【0082】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の第1態様のプラズマ処理装置は、被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部にプラズマを発生させる高周波磁場を、前記真空容器の内部に導入させる高周波窓と、アンテナ部と、を備え、前記アンテナ部は、前記高周波磁場を発生するバー状のアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給するための一対の導体である第1導体及び第2導体と、前記アンテナの一端部と前記第1導体とを接続する部材であって、前記アンテナと前記第1導体との接続角度である第1接続角度を変更可能な第1接続部と、前記アンテナの他端部と前記第2導体とを接続する部材であって、前記アンテナと前記第2導体との接続角度である第2接続角度を変更可能な第2接続部と、を具備し、前記アンテナは、前記第1接続角度または前記第2接続角度の少なくともいずれかの変化に伴って、屈曲し得る。
【0083】
上記構成によれば、アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を容易に図ることができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【0084】
第2態様のプラズマ処理装置は、第1態様のプラズマ処理装置において、前記第1接続部は、前記第1導体に接続された第1導体側電極と、前記アンテナの前記一端部に接続された第1アンテナ電極と、を有し、前記第1導体側電極と前記第1アンテナ電極とが、ギャップを隔てて相互に回動可能にされた、第1コンデンサ部を構成しており、前記第2接続部は、前記第2導体に接続された第2導体側電極と、前記アンテナの前記他端部に接続された第2アンテナ電極と、を有し、前記第2導体側電極と前記第2アンテナ電極とが、ギャップを隔てて相互に回動可能にされた、第2コンデンサ部を構成してもよい。
【0085】
上記構成によれば、第1接続部及び第2接続部での各電位を低減することができ、プラズマ処理装置のコンパクト化を容易に図ることができる。
【0086】
第3態様のプラズマ処理装置は、第1態様または第2態様のプラズマ処理装置において、前記アンテナ部は、前記第1接続角度を変化させる第1駆動部と、前記第2接続角度を変化させる第2駆動部と、を具備し、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0087】
上記構成によれば、第1接続角度または第2接続角度の少なくともいずれかを精度良く変化させることができ、プラズマの密度の均一化を高精度に図ることができる。
【0088】
第4態様のプラズマ処理装置は、第1態様から第3態様のいずれかの態様のプラズマ処理装置において、前記プラズマが発する光の分光強度の、前記アンテナの長手方向に沿った分布を測定する分光強度分布測定器を、さらに備えてもよい。
【0089】
上記構成によれば、分光強度分布測定器により、長手方向に沿って真空容器の内部に生じたプラズマの発光強度を取得することができる。
【0090】
第5態様のプラズマ処理装置は、第1態様から第4態様のいずれかの態様のプラズマ処理装置において、前記被処理物に成膜された被膜の、前記アンテナの長手方向に沿った膜厚を測定する膜厚測定器を、さらに備えてもよい。
【0091】
上記構成によれば、膜厚測定器の測定結果を用いることにより、被処理物に対する成膜処理を高精度に行うことができる。
【0092】
第6態様のプラズマ処理装置は、第1態様から第4態様のいずれかの態様のプラズマ処理装置において、前記アンテナは、少なくとも2つの直線状部と、前記2つの直線状部の間に設けられた屈曲可能な屈曲部とを有してもよい。
【0093】
上記構成によれば、アンテナと高周波窓との間の距離を部分的に確実に変化させることができ、アンテナの長手方向でのプラズマの密度の均一化を確実に図ることができる。
【0094】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、各実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 プラズマ処理装置
2 真空容器
3 高周波窓
7 アンテナ
8a 第1コンデンサ部(第1接続部)
8b 第2コンデンサ部(第2接続部)
9a 第1導体(一対の導体)
9b 第2導体(一対の導体)
C1 第1アンテナ電極、第2アンテナ電極
C2 第1導体側電極、第2導体側電極
θ1 第1接続角度
θ2 第2接続角度
S1 コサインコレクタ(分光強度分布測定器)
S2 分光器(分光強度分布測定器)
S3 膜厚測定器
C 制御部
M1、M2 モータ
W 冷却水(冷却媒体、誘電体層)